説明

【課題】建物の外壁面からの張出し長さの大小に応じた形態の連結金具の製作を容易化し、もって、製作コストの低減を実現した庇を提供する。
【解決手段】庇1は庇板2を上方より支持するアーム5を有する。アーム5は建物の外壁面に取り付けられ支持棒50の上端部を軸支する支持金具6と、庇板2の上板面に取り付けられ支持棒50の下端部が軸支される連結金具7とを備える。連結金具7は押出成形型材を長さ方向に対して直角に寸断して形成され、庇板2の上板面に両側部分がネジ固定される基板70の上面中央部に支持棒50の下端部を軸支するための枢軸9が取り付けられる左右一対の垂直板71,71が一体に突設されている。押出成形型材は寸断によって基板70と垂直板71とが得られるように基板70および垂直板71に対応する帯状の各板部を全長にわたって備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物の外壁面より庇板が前方へ張り出すように設けられる庇に関し、特にこの発明は、庇板を上方または下方より支持するためのアームを有する庇に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の庇は、建物の外壁面に固設した保持具に庇板の後端部が全幅にわたって保持された構造のものが一般的である。庇板として、全体が一体の構成のものの他に、複数の板材を幅方向へ連結して構成されたものも用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4192199号公報
【0004】
特許文献1に記載された庇板は、図8に示すように、側端面を互いに突き合わせるようにして幅方向へ連結される複数の中間板材20と、両側位置の中間板材20の外側端面にそれぞれ装着される側板材21,22とで構成されている。各中間板材20は両側端面が、各側板材21,22は内側端面が、それぞれ他の板材と係脱可能な構造になっている。各板材はアルミニウムの押出成形により形成されており、その内部は中空となっている。庇板2の後端部は全幅にわたって長手状の保持具3により保持されている。
【0005】
上記した構成の庇板2は、建物の外壁面からの張出し長さを自在に設定することが容易であり、保持具3は庇板2の長さが多少大きくても、荷重に十分に耐え得る構造になっているが、張出し長さが特に大きな庇については、図9に示すように、庇板2を例えば上方より支持するためのアーム100が取り付けられている。
【0006】
各アーム100は、支持棒101と、建物の外壁面に取り付けられ支持棒101の上端部を軸支する支持金具102と、庇板2の上面に取り付けられ支持棒101の下端部が軸支される連結金具103とで構成されている。連結金具103には種々の態様のものがあるが、同図の連結金具103は、庇板2の上面に両側部分がボルト106およびナットにより固定される基板104を有し、その基板104の上面中央部に支持棒101の下端部を軸支するための枢軸107が取り付けられる左右一対の垂直板105,105が一体に突設されている。連結金具103は、精度と強度とが要求されるため、例えば、ロストワックス法と呼ばれる精密鋳造により製作されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の庇板2は、内部が中空であるため、庇板2に下方または上方への大きな荷重や風圧がかかると、連結金具103の取付部分に集中荷重を受け、庇板2の上板部が連結金具103の基板104により押圧されて変形したり損傷したりするおそれがある。したがって、連結金具103は、庇板2の張出し長さが大きくなるにしたがって、基板104の長さも大きく設定する必要があり、多種類の連結金具103を製作する必要がある。しかし、連結金具103を精密鋳造により製作する場合、種類毎に鋳型の製作が必要であり、製品がコスト高となるという問題がある。
【0008】
この発明は、上記した問題に着目してなされたもので、庇板を支持するためのアームを有する庇において、アームの上記した連結金具を、押出成形型材を長さ方向に対して直角に寸断して形成することにより、建物の外壁面からの張出し長さの大小に応じた形態の連結金具の製作を容易化し、もって、製作コストの低減を実現した庇を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による庇は、庇板と、庇板を前方へ張り出した状態で庇板の後端部を保持する保持具と、庇板を上方または下方より支持するアームとから成り、前記アームが、支持棒と、建物の外壁面に取り付けられ支持棒の一端部を軸支する支持金具と、庇板の上面に取り付けられ支持棒の他端部が軸支される連結金具とを備えたものである。前記連結金具は、押出成形型材を長さ方向に対して直角に寸断することにより形成され、庇板の板面に両側部分がネジ固定される基板の上面中央部に支持棒の端部を軸支するための枢軸が取り付けられる垂直板が一体に突設されている。前記押出成形型材は、寸断によって前記基板と垂直板とが得られるように基板および垂直板に対応する帯状の各板部を全長にわたって一体に備えている。
【0010】
上記した構成の庇では、連結金具は押出成形型材を所定の長さに寸断して形成されるので、庇板の張出し長さが大小異なる庇毎に各連結金具を製作するための鋳型を製作するなどの必要がない。連結金具は庇板の張出し長さに応じた長さを有するので、庇板に作用する荷重が庇板の張出し長さに応じて増しても、庇板の上面が連結金具の取付部分からの荷重の集中を受けることがなく、庇板の板面が連結金具の基板により押圧されて変形したり損傷したりするのが防止される。
【0011】
前記庇板は、全体が一体の構成のものであってもよく、側端面を互いに突き合わせるようにして幅方向へ連結される複数の中間板材と、両側位置の中間板材の外側端面にそれぞれ装着される側板材とで構成されたものであって、各中間板材および各側板材が、押出成形された中空の金属板材により構成されたものであってもよい。
後者の実施態様では、建物の外壁面からの庇の張出し長さが自在に設定された中間板材と側板材とを容易に製作できる。
【0012】
この発明の好ましい実施態様においては、前記支持金具は、押出成形型材を長さ方向に対して直角に寸断することにより形成され、建物の外壁面に両側部分がネジ固定される基板の上面中央部に支持棒の端部を軸支するための枢軸が取り付けられる垂直板が一体に突設されている。
この実施態様によれば、同じ押出成形型材より連結金具と支持金具とを製作することができ、庇の製作コストが一層低減できる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によると、アームの支持棒の端部を庇板に連結するための連結金具を、押出成形型材を長さ方向に対して直角に寸断して形成するので、建物の外壁面からの庇の張出し長さに応じた長さの連結金具を製作するのが容易であり、庇の製作コストを低減できる。また、建物の外壁面からの庇の張出し長さに応じて連結金具の長さが設定されるので、庇板の張出し長さに応じて庇板に作用する荷重が増しても、庇板の板面が連結金具の取付部分からの荷重の集中を受けることがなく、庇板の板面が連結金具の基板により押圧されて変形したり損傷したりするのが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明の一実施例である庇の外観を示す側面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う庇板の断面図である。
【図3】アームの取付状態を示す平面図である。
【図4】アームの連結金具の構成を示す正面図である。
【図5】アームの支持金具と連結金具の外観を示す斜視図である。
【図6】支持金具および連結金具を製作するための押出成形型材を示す長さの一部を省略した斜視図である。
【図7】連結金具に作用する力を分解して示す説明図である。
【図8】従来の庇の外観を示す斜視図である。
【図9】アームを有する従来の庇の外観を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、この発明の一実施例である庇1の外観を示している。
この庇1は、建物の外壁面10から前方へ張り出すように設けられるもので、庇板2と、建物の外壁面10に固着され庇板2の基端部を全幅にわたって保持する保持具3と、庇板2の先端縁に全幅にわたって装着される化粧用の縁板4とで構成されている。庇板2、保持具3、および縁板4を構成する各部材はアルミニウムの押出成形型材が用いられている。図示例の庇1は、張出し量が比較的大きな庇であり、庇板2が2本のアーム5によって水平ないしは水平に近い状態に支持されている。2本のアーム5は庇板2の左右対称位置に配置されているが、アーム5の本数は2本に限らず、庇板2の幅に応じて増減することができる。また、図示例では、庇板2はアーム5により上方より支持されているが、同様のアームにより下方より支持することもできる。
【0016】
庇板2は、図2に示すように、側端面を互いに突き合わせるようにして幅方向へ連結される複数の中間板材20と、両側位置の中間板材20の外側端面にそれぞれ装着される側板材21,22とで構成されている。各中間板材20および各側板材21,22は、アルミニウムの押出成形により形成され、それぞれの上板部2Aと下板部2Bとの間は中空になっている。
【0017】
各中間板材20は、一方の側端面に第1の係合部24を、他方の側端面に第2の係合部25を、それぞれ備えている。また、各側板材21,22のうち、一方の側板材21は内側端面に第1の係合部24を備え、他方の側板材22は内側端面に第2の係合部25を備えている。
【0018】
各中間板材20の第1の係合部24は他の中間板材20または側板材22の第2の係合部25と係脱可能である。各中間板材20の第2の係合部25は他の中間板材20または側板材21の第1の係合部24と係脱可能である。
なお、図中、26は中間板材20の内部に一体形成された補強のためのリブであり、27は中間板材20の内部に挿入された補強のためのフラットバーである。
【0019】
前記保持具3は、庇板2の全幅とほぼ一致する長さの保持枠(図示せず)を有し、アンカーボルトにより建物の外壁面に固定されて成るもので、保持枠の前面の上下に対向する板状部(図示せず)間で庇板2を構成する各板材20〜22の基端部が挟持されかつ複数本のボルトおよびナットにより一体化されている。
【0020】
各アーム5は、長さ調節が可能な構成のものであり、図1および図3に示すように、支持棒50と、建物の外壁面10に取り付けられ支持棒50の上端部を枢軸8を介して支持する支持金具6と、庇板2の上面に取り付けられ支持棒50の下端部が枢軸9を介して連結される連結金具7とで構成されている。支持棒50は金属製のパイプより成るアーム本体51の両端にネジ軸52,53が連設されたもので、アーム本体51の両端部の筒部内孔に切られたネジ孔にネジ軸52,53の一端がネジ込まれている。各ネジ軸52,53はネジの方向が逆向きに設定され、アーム本体51を一方向へ回動したとき、各ネジ軸52,53がアーム本体61の両端部より突出して支持棒50の全長が長くなる。また、アーム本体51を反対方向へ回転させたとき、各ネジ軸52,53がアーム本体51の内部へ入り込んで支持棒50の全長が短くなる。
【0021】
各ネジ軸52,53の他端部にはそれぞれ縦向きの連結板54,55が取り付けられている。一方の連結板54には、支持金具6に取付け支持された前記枢軸8を通す孔(図示せず)が、他方の連結板55には、図4に示すように、連結金具7に取付け支持された前記枢軸9を通す孔56が、それぞれ開設されている。各連結板54,55は枢軸8,9に対してそれぞれ回動自由であり、これにより、支持棒50が支持金具6よび連結金具7に対して上下方向へ正逆回動可能となっている。
【0022】
図5は、支持金具6と連結金具7の構成を示している。この実施例では、支持金具6と連結金具7とは同じものが用いられているが、両者が異なる形態のものであってもよい。図示例の支持金具6は、平板矩形状の基板60の上面中央部に左右一対の垂直板61,61が一体に突設された形態のものであり、また、支持金具6も、平板矩形状の基板70の上面中央部に左右一対の垂直板71,71が一体に突設された形態のものであって、いずれも図6に示すアルミニウムの押出成形型材aを長さ方向に対して直角に寸断することにより形成されている。押出成形型材aは、前記の寸断によって基板60,70と一対の垂直板61,71とが得られるように基板60,70および垂直板61,71に対応する帯状板部b,cが全長にわたって一体に備えて成るものである。
【0023】
図6において、一点鎖線は押出成形型材aの帯状板部b,cを寸断する部分を示しており、押出成形型材aの寸断長さd1,d2(d1<d2)は、庇1の張出し長さ、すなわち、庇板2の長さに応じて大小設定される。すなわち、張出し長さがそれほど長くない庇は、寸断長さを小さな値d1に設定することにより基板60,70の長さLが短い支持金具6および連結金具7を製作する。張出し長さが長い庇は、寸断長さを大きな値d2に設定することにより基板60,70の長さLが長い支持金具6および連結金具7を製作する。
【0024】
支持金具6は建物の外壁面10に2本のボルト62およびナット63により取り付けられ、連結金具7は庇板2の上板面に2本のボルト72およびナット73により取り付けられるもので、図5に示されるように、それぞれの基板61,71の両側部分の長さ中央部にボルト62,72を通す円形のボルト通し孔64,74が形成される。
支持金具6の各垂直板61,61には枢軸8を通して取り付けるための円形の取付孔65が、連結金具7の各垂直板71,71には枢軸9を通して取り付けるための円形の取付孔75が、それぞれ高さ中央部に形成される。この実施例では、各枢軸8,9としてボルトが用いてあり、ナットによって取付固定されている。
【0025】
連結金具7の各垂直板71,71は、図4に示されるように、枢軸9に軸支される連結板55が入り込むことが可能な隙間を隔てて対向しており、図示していないが、支持金具6の各垂直板61,61も連結金具7と同様の構成である。
なお、支持金具6および連結金具7は、基板60,70の上面にひとつの垂直板61,71を一体に突設した形態のものであってもよく、その場合は、前記連結板54,55はこの実施例のような1枚構成のものの他に、垂直板61,71を両側より挟むような二股状のものを用いることができる。
【0026】
上記した構成の庇1では、連結金具7は押出成形型材aを所定の長さに寸断して形成されるので、鋳造により製作された従来の庇のように、庇板2の張出し長さが大小異なる庇毎に鋳型を製作するなどの必要がない。連結金具7の長さは庇板2の張出し長さに応じた長さに設定されるので、庇板2に作用する荷重が庇板2の張出し長さに応じて増しても、庇板2の上板面が連結金具7の取付部分からの荷重を集中して受けることがなく、庇板2の上板面が連結金具7の基板70より押圧されて変形したり損傷したりするのが防止される。
また、この実施例の支持金具6も、連結金具7を製作するための押出成形型材aを長さ方向に対して直角に寸断して形成されるので、同じ押出成形型材aより連結金具7と支持金具6とを製作でき、庇1の製作コストが一層低減される。
【0027】
図7は、庇板2に下向きの荷重F1や上向きの荷重(例えば風圧)F2が作用したときの状態を示している。庇板2に下向きの荷重F1が作用すると、その荷重F1は連結金具7を経て枢軸9に伝わり、アーム5の支持棒50に沿う方向の分力Fxが支持棒50を引っ張る力として支持棒50に作用する。前記の分力Fxと直交する方向の分力Fyは連結金具7の基板70が庇板2の後端側を押圧する力として作用する。庇板2の長さに応じて基板70の長さを大きく設定してあるので、基板70と庇板2との接触面積が大きく、分力Fyが庇板2に分散して作用し、庇板2の上板部2Aが変形したり破損したりするおそれがない。
【0028】
庇板2に上向きの荷重F2が作用すると、その荷重F2は連結金具7を経て枢軸9に伝わり、アーム5の支持棒50に沿う方向の分力Fxが支持棒50を押す力として支持棒50に作用する。前記の分力Fxと直交する方向の分力Fyは連結金具7の基板70が庇板2の前端側を押圧する力として作用する。庇板2の長さに応じて基板70の長さを大きく設定してあるので、基板70と庇板2との接触面積が大きく、分力Fyが庇板2に分散して作用し、庇板2の上板部2Aが変形したり破損したりするおそれがない。
【符号の説明】
【0029】
1 庇
2 庇板
3 保持具
5 アーム
6 支持金具
7 連結金具
8,9 枢軸
60,70 基板
61,71 垂直板
a 押出成形型材
b,c 帯状板部
20 中間板材
21,22 側板材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
庇板と、庇板を前方へ張り出した状態で庇板の後端部を保持する保持具と、庇板を上方または下方より支持するアームとから成り、前記アームが、支持棒と、建物の外壁面に取り付けられ支持棒の一端部を軸支する支持金具と、庇板の板面に取り付けられ支持棒の他端部が軸支される連結金具とを備えて成る庇において、前記連結金具は、押出成形型材を長さ方向に対して直角に寸断することにより形成され、庇板の板面に両側部分がネジ固定される基板の上面中央部に支持棒の端部を軸支するための枢軸が取り付けられる垂直板が一体に突設されており、前記押出成形型材は、寸断によって前記基板と垂直板とが得られるように基板および垂直板に対応する帯状の各板部を全長にわたって一体に備えて成る庇。
【請求項2】
前記庇板は、側端面を互いに突き合わせるようにして幅方向へ連結される複数の中間板材と、両側位置の中間板材の外側端面にそれぞれ装着される側板材とで構成され、各中間板材および各側板材は、押出成形された中空の金属板材により構成されている請求項1に記載された庇。
【請求項3】
前記支持金具は、押出成形型材を長さ方向に対して直角に寸断することにより形成され、建物の外壁面に両側部分がネジ固定される基板の上面中央部に支持棒の端部を軸支するための枢軸が取り付けられる垂直板が一体に突設されている請求項1に記載された庇。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−46988(P2012−46988A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190864(P2010−190864)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(591181562)株式会社共和 (23)
【Fターム(参考)】