説明

【課題】建物躯体への取り付け自由度を向上させることが可能である庇を提供する。
【解決手段】屋根体(10)と、該屋根体を支持可能に一端を屋根体に取り付けられる方杖(20)と、を有する庇(1)であって、方杖は屋根体と回動可能に連結されており、方杖の回動方向には、庇が建物に取り付けられた姿勢で水平方向となる方向が含まれることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に備えられる庇に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅のテラスや店舗の出入り口等の建物開口部には、日よけや雨よけを目的として庇が設けられることが多い。従って、庇は建物開口部の上縁のやや上方に、該縁に沿って配置されるとともに、屋外に突出するように取り付けられるのが通常である。そして庇の下方の建物開口部にはサッシ等の開口部装置が具備される。
【0003】
庇の建物への取り付け構造にはいくつかの種類があるが、その中の1つに方杖構造がある。これは、日よけや雨よけの機能を有する屋根体を支持するために、方杖が用いられる構造であり、方杖の一端が屋根体の下面に取り付けられ、他端は建物に固定されるというものである。
【0004】
特許文献1には従来の方杖構造による庇が開示されている。これによれば、通常の方杖構造であることに加え、支持桿が庇及びブラケットに枢着されることから、支持桿の庇及び壁面に対する鉛直方向における傾斜角度の自由な設定が可能であるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平03−42190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の庇は、サッシ等の開口部装置よりかなり上方の建物壁面に配置され、方杖に相当する部材の建物側端部はサッシ等の開口部装置より上に固定されている。また特許文献1では、方杖に相当する部材の建物側端部は建物の壁面等に固定されている。
【0007】
しかしながら、建物の事情によっては、サッシ等の開口部装置の上方にスペースを大きく取れない場合も多く、庇をサッシ等の開口部装置に近づけて配置することも少なくない。このときには方杖の建物側端部は開口部装置の上縁よりも低い位置で建物に取り付ける必要がある。また、より強固に建物に庇を固定する観点からは、方杖の建物側端部を建物の柱に固定することが好ましい。
【0008】
ところがこのような場合に、方杖を取り付けようとする柱の部分には既にサッシ等の開口部装置の縦枠が固定されており、方杖が延在する方向の柱の部位には既にサッシ等の縦枠が固定されていて、方杖を取り付けることができない場合があった。
【0009】
このような問題を解決するために、従来では方杖を隣の異なる柱に取り付けるため、庇の幅を大きくしたり、新たな柱を設置する等していた。これには費用や施工時間がかかり問題であった。また、このような問題を特許文献1に記載の庇によっても解決することはできなかった。
【0010】
そこで本発明は上記問題に鑑み、建物躯体への取り付け自由度を向上させることが可能である庇を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0012】
請求項1に記載の発明は、屋根体(10)と、該屋根体を支持可能に一端を屋根体に取り付けられる方杖(20)と、を有する庇(1)であって、方杖は屋根体と回動可能に連結されており、方杖の回動方向には、庇が建物に取り付けられた姿勢で水平方向となる方向が含まれることを特徴とする、庇である。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の庇(1)において、方杖(20)は、棒状の部材である方杖本体(21)を有し、該方杖本体の端部のうち屋根体(10)側とは反対側の端部には建物に取り付け可能な躯体側連結部材(25)を備え、方杖本体と躯体側連結部材とは回動可能に連結されており、該方杖本体の回動方向には、庇が建物に取り付けられた姿勢で水平方向となる方向が含まれることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の庇(1)において、屋根体(10)と方杖(20)とは、屋根体に沿って摺動可能に連結されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の庇(1)において、方杖(20)と屋根体(10)との回動軸はボルト(31)により構成され、ボルトと組するナット(32)を有し、ボルト又はナットを緩めることにより、方杖の回動が許容され、ボルト又はナットと締め付けることにより、方杖の回動が禁止されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、庇が建物に取り付けられた姿勢において、方杖が水平面内の回動を含んでおり、いわゆる左右方向に回動できるので、開口部に備えられたサッシとの接触を回避しつつ、該サッシと同じ建物躯体(柱)に方杖を取り付けることができる。これにより方杖を他の柱へ取り付けることや新たな柱を設置する必要がなく利便性の高い庇となる。
また、上記のように回動できることから、サッシの種類により方杖の回動の程度を調整することが可能となり、部品の変更も生じないので汎用性も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】1つの実施形態にかかる庇が建物に取り付けられた場面を示す斜視図である。
【図2】庇の斜視図である。
【図3】庇の側面図である。
【図4】梁の断面を説明する図である。
【図5】梁及び方杖に注目した斜視図である。
【図6】躯体側連結部材の断面図(図6(a))と上面図(図6(b))である。
【図7】梁側連結部材の断面図(図7(a))と上面図(図7(b))である。
【図8】庇の建物への取り付けを説明する図である。
【図9】図8にIXで示した部位を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。ただし、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。
【0019】
図1は1つの実施形態にかかる庇1が、建物開口部に具備されたサッシ窓50の上方に取り付けられた場面を示す屋外側から見た斜視図である。このように、庇1はサッシ窓等の開口部装置の上端部に沿って配置され、建物から屋外に突出するように建物に取り付けられる。これにより、当該部分における日除け、雨よけの基本的な機能を発揮する。
【0020】
図2は、図1と同じ視点で庇1のみを表した斜視図、図3は図2の紙面右側から見た庇1の側面図である。図1〜図3及び適宜示す図を参照しつつ庇1について説明する。
庇1は、屋根体10と、該屋根体10を支持する方杖20と、を備えるいわゆる方杖支持構造の庇である。
【0021】
屋根体10は、前枠11、躯体枠12、母屋13、パネル縁部材14、パネル15、及び梁16を備えている。
【0022】
前枠11は、所定の断面を有する長尺の部材で、屋根体10のうち建物から最も離隔する側の縁を構成する。
躯体枠12は、所定の断面を有する長尺の部材で、建物開口部の上方に、該建物開口部の縁に沿った向きを長手方向として建物に固定される。すなわち、屋根体10のうち建物側の縁を構成する。
母屋13も所定の断面を有する長尺の部材で、前枠11及び躯体枠12に略平行に、該前枠11と躯体枠12との間に配置される。
パネル縁部材14も所定の断面を有する長尺の部材である。パネル縁部材14は、前枠11と躯体枠12とを渡すように配置され、このようなパネル縁部材14が複数、所定の間隔を有して並べられる。従って、パネル縁部材14は建物から外に向けて配置され、その内の2つは、屋根体10の左右縁を構成する。
【0023】
パネル15は、面状の部材で、庇1の基本的な機能である日よけや雨よけの機能を発揮する部材である。面材は、上記した前枠11、躯体枠12、及びパネル縁部材14で区画される枠内に配置される。
【0024】
梁16は、図3からよくわかるように、前枠11、母屋13及び躯体枠12の下面側を渡すように配置される。梁16は図1、図2からわかるように、屋根体10のうち、左右両端部のそれぞれに設置されている。図4に、梁16の断面形状がわかる図を示した。図4(a)が斜視図、図4(b)が断面図である。図4からわかるように、梁16は、断面略矩形の中空形状の本体17とカバー18とを備えている。
【0025】
本体17のうち、前枠11や躯体枠12と接する側とは反対側の面(すなわち下面側)には、本体17の長手方向に沿って凹部17aが形成されている。凹部17aには、その対向する片のそれぞれから、互いに近づくように向き合ったレール片17b、17cが突出するように設けられている。これにより後述するように、方杖20が摺動可能にここに取り付けられる。詳しくは後で説明する。
【0026】
カバー18は、本体17の凹部17aが具備される側の面に、該本体17の長手方向に沿って配置される部材である。カバー18は本体17の凹部17aを隠蔽し、装飾部材として機能するとともに、塵埃等の入り込みを抑制している。
【0027】
図1〜図3に戻って方杖20について説明する。方杖20は、屋根体10を下方から支持する支持部材として機能し、その一端が梁16、他端が建物躯体に固定される。図5には梁16及び方杖20に注目した図を示した。図3、図5からわかるように、方杖20は、方杖本体21、躯体側連結部材25、及び梁側連結部材35を有している。
【0028】
方杖本体21は、方杖20の主要部をなす長尺の棒状部材である。その断面形状は特に限定されることはなく通常に適用される断面形状を用いることができる。本実施形態では、軽量化の観点から中空部材が適用されている。
【0029】
躯体側連結部材25は、方杖本体21と建物躯体とを連結する部材である。図6には、図3のうち躯体側連結部材25に注目した断面図(図6(a))、及び上面側から見た図(図6(b))を示した。図6(b)では分かり易さのため、一部の部材を透視して表している。
【0030】
躯体側連結部材25は、建物壁面に面して配置される板状の部材である基板26を備えている。基板26の面のうち一方の面からは、2枚の立設片27、28が所定の間隔を有して互いに面が対向するように略平行に立設されている。立設片27、28は、基板26の面のうち、建物に面して配置される側とは反対側に設けられる。すなわち、立設片27、28が屋根体10に向けられる。また立設片27、28は建物に取り付けられたときに上下方向に配列されている。
【0031】
基板26の立設片27、28が設けられた面うち、立設片27、28間以外の部位を覆うようにカバー29が具備されている。カバー29により、基板26及び立設片27、28の一部を室外視から隠蔽する。
【0032】
立設片27、28間には、該立設片27、28に挟まれるように接続部材30が配置される。接続部材30は、立設片27、28間を渡され、接続部材30を貫通するボルト31、ナット32により立設片27、28間に固定される。従って、接続部材30は図6にVIで示したようにボルト31を中心に回動することが可能である。
【0033】
接続部材30には、基板26側とは反対側に延びるように接続部30aが具備されており、該接続部30aを上記した方杖本体21内に差し込む。従って、接続部材30の回動に追随して方杖本体21も回動可能とされている。
【0034】
梁側連結部材35は、方杖本体21と梁16とを連結する部材である。図7には、図3のうち梁側連結部材35に注目した断面図(図7(a))、及び上面側から見た図(図7(b))を示した。
【0035】
梁側連結部材35は、梁16に配置される部材である梁側部材36を備えている。梁側部材36は、ブロック状の挿入部36aを具備し、その面のうち上面からは下方に向けて、有底の孔36bが設けられている。また、挿入部36aの両側面には、図7(a)では破線で示し、図7(b)ではその端部が表れている溝36cが形成されている。当該溝36cは梁16の長手方向と同じ方向に形成されている。
また、挿入部36aの側面のうち、溝36cが設けられていない側面の1つからは板状の固定部36dが配置されている。当該固定部36dをネジ等の固定部材を用いて梁16に固定することにより、梁側部材36、すなわち梁側連結部材35が梁16に固定される。
【0036】
梁側連結部材35は、梁側部材36の下面側に接するように、方杖側部材37が配置される。方杖側部材37と梁側部材36とは、ボルト38、ナット39により固定される。従って、方杖側部材37は図7にVIIで示したようにボルト38を中心に回動することが可能である。
ここで、方杖側部材37の回動はボルト38、ナット39を緩めることにより可能とされ、ボルト38、ナット39を締め付けることにより回動を禁止することができてもよい。これによれば、回動を自由に許容、禁止することができ、施工性を向上することが可能となる。
【0037】
方杖側部材37には、接続部37aが具備されており、該接続部37aは上記した方杖本体21内に差し込まれる。従って、接続部37aの回動に追随して方杖本体21も回動可能とされている。
【0038】
ここで、梁側連結部材35の梁側部材36に具備された溝36c、36cの内側に上記した梁16の下面に形成されたレール片17b、17c(図4参照)を挿入するように配置する。これにより、梁側連結部材35は梁16の長手方向にレール片17b、17cにガイドされるように摺動可能となる。
【0039】
以上のような庇1によれば、庇1が建物に取り付けられる姿勢で、方杖20の回動方向には水平方向となる方向が含まれる。すなわち、方杖20は建物の左右方向に回動可能である。
【0040】
以上のような構造を有する庇1により、庇1の取り付け自由度が向上する。例えば従来においては、方杖を取り付けるべき躯体(柱)に既にサッシの縦枠が取り付けられており、該縦枠と方杖とが接触してしまい、方杖を取り付けることができない場合があった。このような場合に、従来では他の柱に方杖を取り付けるために、庇自体の幅方向を大きくしたり、新たな躯体(柱)を増設していた。
しかし、これまでに説明した庇1によれば、サッシ縦枠を避けるように方杖を回動させることができるので、サッシ縦枠が既に取り付けられた躯体(柱)にも方杖を固定させることが可能となる。これについて、以下に例を挙げて説明する。
【0041】
図8は、図1に破線VIII-VIIIで示した線に沿った矢視断面図で、わかりやさすさのため一部の部材は省略している。図8は、庇1の建物への取り付け構造について説明する図である。また図9は、図8のうちIXで示した範囲を拡大した図である。図8、図9では紙面下が屋外側、紙面上が室内側である。
【0042】
図8、図9からわかるように、建物の柱(躯体)60には、サッシ窓50の縦枠54が固定されており、縦枠の一部が屋外側に大きく突出している。これに対して方杖20の方杖本体21を図9に一点鎖線で示した方向(室内外方向)に対して所定の角度を傾ける。これにより方杖20が縦枠54に接触することを回避しつつ、縦枠54と同じ柱60に方杖20を取り付けることが可能となる。
従来の庇では、図9の一点鎖線の方向に方杖が延び、これを移動回動することができなかったので、サッシの縦枠と接触してしまい、他の柱に取り付けるしかなかった。
【0043】
方杖20の建物への取り付けは、方杖20の躯体側連結部材25の基板26(図6参照)を建物の壁61に接触させ、壁61及びその他の部材を貫通する固定部材33により柱60に固定する。このとき、躯体側連結部材25が方杖本体21に対して回動可能とされているので、躯体側連結部材25が建物の壁61の室外側面に沿った向きとなり、適切に面することができる。ただし、これに限定されることなく、躯体側の連結部材が回動できない場合であっても例えば楔形の部材を介すること等により取り付けることは可能である。
【0044】
ここでは1つの例について説明したが、サッシの縦枠の屋外側方向への突出量やその形状はサッシの種類によって異なる。従って、本発明の庇によれば、方杖が回動できるので、多品種のサッシに対して同じ部材で対応することができる。
【0045】
また、本実施形態の庇1では、梁側連結部材35が梁16の長手方向に摺動可能な構造を有していることから、方杖20の角度変化に対して梁側連結部材35と梁16との位置を無段階に移動可能であり、角度の微調整も容易である。ただし、必ずしも方杖と梁とは摺動可能である必要はない。例えば梁の長手方向に複数の連結孔を設けておき、方杖の角度に応じて連結孔を選択して固定することもできる。
【0046】
以上、現時点において実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う庇も本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0047】
1 庇
10 屋根体
11 前枠
12 躯体枠
13 母屋
14 パネル縁部材
15 パネル
16 梁
20 方杖
21 方杖本体
25 躯体側連結部材
35 梁側連結部材
50 サッシ窓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根体と、該屋根体を支持可能に一端を前記屋根体に取り付けられる方杖と、を有する庇であって、
前記方杖は前記屋根体と回動可能に連結されており、前記方杖の回動方向には、前記庇が建物に取り付けられた姿勢で水平方向となる方向が含まれることを特徴とする、庇。
【請求項2】
前記方杖は、棒状の部材である方杖本体を有し、該方杖本体の端部のうち前記屋根体側とは反対側の端部には前記建物に取り付け可能な躯体側連結部材を備え、
前記方杖本体と前記躯体側連結部材とは回動可能に連結されており、前記方杖本体の回動方向は、前記庇が建物に取り付けられた姿勢で水平方向となる方向が含まれることを特徴とする請求項1に記載の庇。
【請求項3】
前記屋根体と前記方杖とは、前記屋根体に沿って摺動可能に連結されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の庇。
【請求項4】
前記方杖と前記屋根体との回動軸はボルトにより構成され、前記ボルトと組するナットを有し、前記ボルト又は前記ナットを緩めることにより、前記方杖の回動が許容され、前記ボルト又は前記ナットと締め付けることにより、前記方杖の回動が禁止されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の庇。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−7435(P2012−7435A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146221(P2010−146221)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】