説明

床下浸水防止構造

【課題】動作の迅速性および安定性を高めることができるとともに、床下換気孔の換気機能を早期に回復することができる、床下浸水防止構造を提供する。
【解決手段】床下浸水防止構造10は、床下換気孔14に設けられ、建物の床下空間S1と外部空間S2との間で空気を流通させる空気通路Rを確保しつつ、外部空間S2から床下換気孔14を通って床下空間S1に向かう水の流れを堰き止める止水部36と、止水部36で堰き止められた水に浮かぶ「浮力体」としてのフロート部18aと、フロート部18a(浮力体)の浮力で移動されて空気通路Rを液密的に閉塞する「閉塞手段」としての表面層18bとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建物の床下浸水を防止する、床下浸水防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
都市部のように地表面がコンクリートおよびアスファルト等で覆われている地域では、雨水等の水を地盤に吸収させることが困難であり、排水設備(排水溝、河川等)の能力を超える局所的な豪雨が発生した場合には、地表面に溢れ出た水が集まる低地において建物の床下浸水が引き起こされるおそれがある。このため、従来では、水の浸入経路に土嚢や水門を設けて建物を床下浸水から保護することが行われていたが、これらの対策では、人手や機械装置が必要になるため、迅速な対応が困難であった。また、重労働を伴うため、高齢者、女性、子供には負担が大きかった。さらに、豪雨や流水の中での昼夜を問わない作業になるため、事故等の危険もあった。
【0003】
そこで、近年では、床下浸水を迅速、簡単かつ安全に防止する様々な技術が開発されており、たとえば、特許文献1には、水の浸入経路となる床下開口部(A)を自動的に閉塞する装置が記載されている。この装置は、建物の周辺に溜まった水の水位が所定高さまで上昇したときに、水をダクト(10)から扉(3)に設けられたスポンジまたは布(4)に供給し、水を吸収したスポンジまたは布(4)の重量で扉(3)を移動させて通風孔(2a)を閉じるものである。なお、上記括弧内数字等は、特許文献1に記載された参照番号等に対応している(以下同じ。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−13522号公報(特に段落[0016]参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された装置では、スポンジまたは布(4)が水を吸収してその重量が増大するまで通風孔(2a)を閉塞する動作が行われないので、閉塞動作の迅速性に課題があり、局所的な豪雨等で水位が急上昇したときには、対応できないおそれがあった。また、水をダクト(10)からスポンジまたは布(4)に供給していたので、ダクト(10)の一部が異物(虫の巣等)で詰まった場合には、閉塞動作が不安定になるおそれがあった。さらに、天候が回復して水位が下がった場合でも、スポンジまたは布(4)が乾いてその重量が減少するまで通風孔(2a)が開かれないので、床下開口部(A)の換気機能が長期に亘って損なわれるおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、閉塞動作の迅速性および安定性を高めることができるとともに、床下換気孔の換気機能を早期に回復することができる、床下浸水防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明に係る床下浸水防止構造は、建物の基礎部に形成された床下換気孔に設けられる、床下浸水防止構造であって、前記床下換気孔に設けられ、前記建物の床下空間と外部空間との間で空気を流通させる空気通路を確保しつつ、前記外部空間から床下換気孔を通って前記床下空間に向かう水の流れを堰き止める止水部と、前記止水部で堰き止められた水に浮かぶ浮力体と、前記浮力体の浮力で移動されて前記空気通路を液密的に閉塞する閉塞手段とを備える。
【0008】
この構成において、基礎部の周囲に溜まった水(雨水等)の水位が上昇すると、その水が床下換気孔に流入し、止水部で堰き止められる。その後、止水部で堰き止められた水の水位がさらに上昇すると、水に浮かんだ浮力体が上昇し、浮力体の浮力で閉塞手段が移動され、当該閉塞手段で空気通路が閉塞される。つまり、水位の上昇と、浮力体の上昇と、閉塞手段の移動と、空気通路の閉塞とが直接的に関係して円滑に行われ、迅速かつ安定した動作で床下浸水を防止することができる。さらに、止水部で堰き止められた水の水位が降下した際には、それに伴って浮力体が降下し、閉塞手段が空気通路から離間するので、空気通路の通気性を早期に回復することができる。
【0009】
前記浮力体と前記閉塞手段とが一体的に形成されていてもよい。
【0010】
この構成では、浮力体と閉塞手段とを1つの部品として取り扱うことができるので、床下浸水防止構造を製造、修理および点検等する際の作業性を向上することができる。なお、「一体的に形成する態様」には、「浮力体と閉塞手段とを渾然一体として形成する態様」と「浮力体と閉塞手段とを別々に形成した後に、これらを接合して一体化させる態様」の両方が含まれる。
【0011】
前記浮力体は、複数の独立気泡を有し、前記閉塞手段は、前記浮力体の表面に形成された球面を有していてもよい。
【0012】
この構成は、「浮力体と閉塞手段とを渾然一体として形成する態様」の一例であり、浮力体と閉塞手段とを発泡樹脂等を用いた一体成形によって簡単に製造することができる。
【0013】
前記閉塞手段を前記空気通路に案内するガイド部をさらに備えていてもよい。
【0014】
この構成では、閉塞手段を空気通路にガイド部によって確実に案内することができる。
【0015】
前記ガイド部は、上方へ向かうにつれて狭くなる内部空間を有する錐状に形成され、前記ガイド部の内面で前記閉塞手段が案内されてもよい。
【0016】
この構成では、錐状(四角錐状、円錐状、三角錐状および五角錐状等を含む。)のガイド部の内面で閉塞手段を空気通路に確実に案内することができる。
【0017】
前記ガイド部は、前記閉塞手段および前記浮力体を回動自在に支持する回動支持部を有していてもよい。
【0018】
この構成では、回動支持部によって閉塞手段および浮力体を支持しつつ回動させて、これを空気通路に確実に案内することができる。
【0019】
前記ガイド部は、前記閉塞手段の移動経路を取り囲む網状または棒状に形成されてもよい。
【0020】
仮に、閉塞手段の移動経路を取り囲むガイド部が板状であれば、ガイド部が壁となって空気や水の流通性が損なわれるおそれがあるが、この構成では、当該移動経路を取り囲むガイド部が網状または棒状であるため、当該移動経路の周囲に空気や水が流れる空間を確保することが可能であり、空気や水の流通性が損なわれるのを防止することができる。
【0021】
前記浮力体と前記閉塞手段とが離間して配置されており、前記浮力体の浮力を前記閉塞手段に伝達する浮力伝達手段をさらに備えていてもよい。
【0022】
この構成では、浮力体と閉塞手段とが離間して配置されているので、これらの形状や配置に関する設計の自由度を高めることができる。
【発明の効果】
【0023】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、地表面に溢れ出た水(雨水等)の水位が上昇して床下浸水のおそれが生じた際に、床下換気孔を迅速かつ安定的に閉塞することができる。また、地表面に溢れ出た水の水位が降下した際に、床下換気孔の換気機能を早期に回復することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、第1実施形態に係る床下浸水防止構造を示す正面図である。
【図2】図2は、図1におけるII−II線断面図である。
【図3】図3は、第1実施形態に係る床下浸水防止構造を示す分解斜視図である。
【図4】図4は、第1実施形態に係る床下浸水防止構造の閉塞動作を示す断面図である。
【図5】図5は、第2実施形態に係る床下浸水防止構造を示す断面図である。
【図6】図6は、第3実施形態に係る床下浸水防止構造を示す断面図である。
【図7】図7は、第4実施形態に係る床下浸水防止構造を示す断面図である。
【図8】図8は、第5実施形態に係る床下浸水防止構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1実施形態)
[床下浸水防止構造の全体構成]
図1は、第1実施形態に係る床下浸水防止構造10を示す正面図であり、図2は、図1におけるII−II線断面図であり、図3は、床下浸水防止構造10を示す分解斜視図である。
【0026】
図1〜3に示すように、床下浸水防止構造10は、住宅等の建物(図示省略)の基礎部12に形成された床下換気孔14から床下空間S1(図2)に水(雨水等)が浸入するのを防止するものであり、床下換気孔14に設けられた止水箱16と、止水箱16の内部に収容された球体フロート18と、床下換気孔14の開口部14aを覆うようにして基礎部12の外側面12aに固定された保護板20とを備えている。
【0027】
図1および図2に示すように、基礎部12は、建物の土台や柱を支持するコンクリート構造物であり、基礎部12の下端部は地中に埋設されており、上端部は地表面(図示省略)から突出されている。そして、この基礎部12に対して少なくとも1つの床下換気孔14が所定の高さに形成されている。
【0028】
図2に示すように、床下換気孔14は、建物の床下空間S1を換気するために基礎部12に形成された貫通孔であり、一般には、複数の床下換気孔14が所定の間隔を隔てて形成されている。床下換気孔14の形状は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、水平方向に延びる下面14bおよび上面14cを有する断面略四角形に形成されている。また、床下換気孔14の形成位置は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、基礎部12の周囲に溜まった雨水等が床下空間S1に浸入したり、鼠等の小動物が床下空間S1に侵入したりするのを防止するために、床下換気孔14の下面14bが地表面(図示省略)よりも上方に位置するように設計されている。
【0029】
そして、このような床下換気孔14に対して、止水箱16、球体フロート18および保護板20が組み付けられて、床下浸水防止構造10が構成されている。なお、1つの基礎部12に複数の床下換気孔14が形成されている場合には、必ずしも全ての床下換気孔14に床下浸水防止構造10が構成される必要はなく、たとえば、水が入り込む可能性が高い「低地」に位置する床下換気孔14にだけ、床下浸水防止構造10が構成されてもよい。
[止水箱の構成]
図1および図2に示すように、止水箱16は、床下換気孔14の内面に嵌合される止水嵌合部30と、空気通路Rを構成するダクト部32と、球体フロート18を空気通路Rに案内する錐状のガイド部34と、床下空間S1に浸入する水を遮断する止水部36とを有しており、本実施形態では、これらの構成部分が合成樹脂または金属、或いはその他の材料によって一体的に形成されている。
【0030】
止水嵌合部30は、床下換気孔14の内面に沿う外面を有する断面略四角形の筒状の嵌合部本体38を有しており、嵌合部本体38における外部空間S2側の開口部38aの外周面には、基礎部12の外側面12aに当接される鍔部40が形成されている。また、鍔部40には、ボルト42が挿通される複数(本実施形態では8個)の貫通孔44が周方向に間隔を隔てて形成されており、貫通孔44に挿通されたボルト42で鍔部40が基礎部12に固定される。そして、止水嵌合部30の内部空間には、球体フロート18が移動自在に収容されており、この内部空間を球体フロート18が昇降するようになっている。つまり、止水嵌合部30の内部空間が、球体フロート18が昇降する昇降領域S3となっている。
【0031】
ダクト部32は、止水嵌合部30の内部における幅方向(図1の左右方向。以下同じ。)の中央部で、止水嵌合部30の下面30aから上方に離間して設けられた略エルボ状の部分であり、ダクト部32の内部空間が、床下空間S1と外部空間S2との間で空気を流通させる断面略円形の空気通路Rとなっている。ダクト部32の床下空間S1側の開口部32aは、止水嵌合部30の外部の床下空間S1に向けて開かれており、外部空間S2側の開口部32bは、止水嵌合部30の内部の昇降領域S3に向けて開かれている。また、外部空間S2側(すなわち昇降領域S3側)の開口部32bの内径は、球体フロート18の直径よりも大きく設計されており、ダクト部32の開口部32bよりも奥側の部分Q(図2中の格子で示した部分。以下、「座部」という。)の内径は、球体フロート18の直径よりも小さく設計されている。そして、開口部32bには、球体フロート18を空気通路Rに案内する錐状のガイド部34が連続的に形成されている。
【0032】
ガイド部34は、止水部36で堰き止められた水に浮かぶ球体フロート18(すなわち浮力体および閉塞手段)を空気通路Rに案内する略四角錐状の部分であり、ガイド部34の4つの側壁34a〜34dは、その内部空間が上方に向かうにつれて狭くなるように傾斜しており、当該内部空間の上部がダクト部32の開口部32bに収束している。したがって、昇降領域S3を上昇する球体フロート18は、各側壁34a〜34dの内面に沿って空気通路Rに案内され、ダクト部32の開口部32bを通って座部Qに位置決めされる。
【0033】
また、各側壁34a〜34dの下端縁46a〜46dは、止水嵌合部30の下面30aの外周縁に対向して位置しており、外部空間S2側に設けられた側壁34aの下端縁46aと止水嵌合部30の下面30aとの間には、外部空間S2と昇降領域S3とを連通する空気流入口48が止水嵌合部30の幅方向の全長に亘って構成されている。そして、床下空間S1側に設けられた側壁34bの下端縁46bと止水嵌合部30の下面30aとの間には、昇降領域S3に水を溜めるための止水壁50が形成されている。さらに、止水嵌合部30の幅方向両側に向かって延びる側壁34c,34dの下端縁46c,46dは、止水嵌合部30の内側面に接合されている。
【0034】
なお、本実施形態では、ガイド部34が略四角錐状に形成されているが、ガイド部34の形状は、上方へ向かうにつれて狭くなる内部空間を有する錐状であればよく、略円錐状、略三角錐状および略五角錐状等であってもよい。そして、ガイド部34が略円錐状である場合には、ガイド部34の上部に球体フロート18が当接される座部Qが設けられてもよい。つまり、ガイド部34が略円錐状であれば、ダクト部32とガイド部34とを段差無く連続させることができるので、これらを区別する必要はなく、ダクト部32およびガイド部34のいずれ一方に座部Qが設けられていればよい。
【0035】
また、本実施形態では、止水嵌合部30の幅方向中央部に1組のダクト部32およびガイド部34が設けられているが、ダクト部32およびガイド部34の位置や数は適宜変更可能であり、たとえば、止水嵌合部30の幅方向両端部に2組のダクト部32およびガイド部34が設けられてもよい。
【0036】
止水部36は、止水嵌合部30の内部に空気通路Rを確保しつつ、外部空間S2から床下換気孔14(止水嵌合部30の内部空間を含む。)を通って床下空間S1に向かう水の流れを堰き止める部分である。本実施形態では、床下換気孔14の内面に嵌合される止水嵌合部30と、ダクト部32と、ガイド部34(側壁34a〜34d)と、止水壁50とが一体となって止水部36が構成されており、空気通路Rを構成するダクト部32が止水部36の上部に位置している。したがって、止水部36で堰き止められた水は、空気通路Rよりも上流側に位置する昇降領域S3に溜められ、当該水によって球体フロート18が持ち上げられる。
[球体フロートの構成]
図1および図2に示すように、球体フロート18は、発泡樹脂(発泡ウレタン、発泡スチロールおよび発泡ポリプロピレン等)からなる弾性変形可能な球状部材であり、複数の独立気泡を有する「浮力体」としてのフロート部18aと、フロート部18aの表面に形成された滑らかな球面を有する「閉塞手段」としての表面層18bとを備えている。表面層18bの直径(すなわち球体フロート18の直径)は、昇降領域S3における昇降動作を可能にするとともに、空気通路Rを完全に閉塞するために、昇降領域S3の高さよりも小さく、かつ、座部Qの直径よりも大きく設計されている。
【0037】
本実施形態では、複数の独立気泡を有する発泡樹脂を用いて球体フロート18を形成しているので、材料自体が「浮力体」としての機能を有しており、フロート部18aを構成するための特別な工程は不要である。したがって、発泡樹脂で形成された球状部材の表面を滑らかな球面に形成するだけで、球体フロート18を簡単に製造することができる。また、フロート部18aが複数の独立気泡を有しているので、一部の独立気泡が破壊された場合でも、他の独立気泡によって浮力を確保することが可能であり、「浮力体」としての機能を永続的かつ安定的に得ることができる。さらに、「閉塞手段」としての表面層18bが球面を有しており、当該球面の任意の部分を座部Qに当接させることができるので、表面層18bの向きを規制する規制手段を別途設ける必要がなく、構成を簡素化することができる。
【0038】
なお、本実施形態では、発泡樹脂を用いて球体フロート18を形成しているが、これに代えて、非発泡樹脂および金属等を用いて球体フロート(図示省略)を形成してもよい。この場合には、材料自体が「浮力体」としての機能を有さないので、球体フロートの内部に少なくとも1つの気室を意図的に形成する必要があるが、そのような気室は、球体フロートの内部に渾然一体として作り込まれてもよいし、別部品として形成されたフロート(浮力体)を球体フロートの内部に組み込むことによって構成されてもよい。また、金属等の硬質材料を用いて球体フロートを形成する場合には、当該球体フロートが当接する座部Qにシリコーン(silicone)等のゴム弾性材料を設けて液密性を確保するようにしてもよい。
[保護板の構成]
図1および図2に示すように、保護板20は、子供の悪戯等によって止水嵌合部30が壊されたり、鼠等の小動物が止水嵌合部30の内部に入り込んだりするのを防止しつつ、空気流入口48への空気の流れを許容するものであり、止水箱16の端部を覆う保護板本体52を有している。
【0039】
保護板本体52は、金属およびプラスチック等からなる略四角形の板状部材であり、保護板本体52における空気流入口48に対応する部分には、少なくとも1つ(本実施形態では7個)の通気孔54が幅方向に間隔を隔てて形成されている。また、保護板本体52の周縁部における止水嵌合部30よりも外側に位置する部分には、ボルト56が挿通される複数(本実施形態では10個)の貫通孔58が間隔を隔てて形成されており、保護板本体52の背面における貫通孔58の外側に位置する部分には、基礎部12の外側面12aに当接される第1当接部60が環状に突出して形成されている。そして、保護板本体52の背面における貫通孔58の内側に位置する部分には、止水嵌合部30の鍔部40に当接される第2当接部62が環状に突出して形成されており、保護板本体52の背面における通気孔54の上方に位置する部分には、ガイド部34を構成する側壁34aの下端縁46aに当接される第3当接部64が線状に突出して形成されている。
【0040】
なお、通気孔54の形状は、特に限定されるものではなく、略四角形の他、略円形、略楕円形、略六角形等であってもよい。また、第1当接部60、第2当接部62および第3当接部64のそれぞれの先端面には、外側面12a、鍔部40および下端縁46aとの間の止水性を高めるために、ゴム等のシール材(図示省略)が設けられてもよい。
[床下浸水防止構造の製造方法]
図3に示すように、床下浸水防止構造10を製造する際には、止水箱16、球体フロート18および保護板20を準備し、止水箱16の空気流入口48から昇降領域S3に球体フロート18を収容する。このとき、球体フロート18の直径が空気流入口48の高さよりも大きい場合には、球体フロート18を弾性変形させながら、これを空気流入口48から昇降領域S3に押し込み、昇降領域S3において元の球形に復元させる。なお、球体フロート18は、予め工場等で昇降領域S3に収容されていてもよい。
【0041】
一方、基礎部12の外側面12aに複数のボルト42に対応する複数のねじ孔42aと、複数のボルト56に対応する複数のねじ孔56aとを形成し、床下換気孔14に止水箱16の止水嵌合部30を嵌合する。そして、止水嵌合部30の鍔部40に形成された貫通孔44にボルト42を挿通し、このボルト42をねじ孔42aに螺合して、鍔部40を基礎部12に固定する。
【0042】
続いて、床下換気孔14および止水箱16を外部空間S2側から覆うようにして、基礎部12の外側面12aに保護板20を配置する。そして、保護板20に形成された貫通孔58にボルト56を挿通し、このボルト56をねじ孔56aに螺合して、保護板20を基礎部12に固定する。
【0043】
本実施形態では、球体フロート18が「浮力体」および「閉塞手段」の両機能を併有しているので、これらの機能を有する異なる2つの部品を止水箱16の内部に着脱する手間を軽減することができ、床下浸水防止構造10を製造、修理および点検等する際の作業性を向上することができる。
[床下浸水防止構造の動作]
床下浸水防止構造10の通常使用状態では、図1および図2に示すように、球体フロート18が重力によって昇降領域S3の最下部に位置しており、球体フロート18の表面層18b(すなわち閉塞手段)が座部Qから離間している。したがって、外部空間S2から空気流入口48を通って昇降領域S3に流入した空気は、ガイド部34の各側壁34a〜34dの内面に沿って空気通路Rに案内され、空気通路Rを通って床下空間S1に供給される。逆に、空気通路Rから昇降領域S3に流入した空気は、空気流入口48から外部空間S2に排出される。これにより、床下空間S1と外部空間S2との間で換気が行われる。
【0044】
一方、図4に示すように、局所的な豪雨等によって基礎部12の周囲の外部空間S2に水W(雨水等)が溜まってくると、床下換気孔14の下面14bに向けて水Wの水位が上昇する。そして、水Wの水位が床下換気孔14の下面14bに達し、さらに、保護板20の通気孔54に達すると、当該水Wが通気孔54および空気流入口48から昇降領域S3に流入し、球体フロート18を持ち上げることによって空気通路Rを閉塞する動作が開始される。
【0045】
つまり、止水部36によって堰き止められた水Wが昇降領域S3に溜まってくると、「浮力体」としてのフロート部18aに浮力が生じて球体フロート18が浮き上がる。そして、表面層18b(すなわち閉塞手段)を含む球体フロート18の全体が浮力で移動されて座部Qに当接され、表面層18bで空気通路Rが液密的に閉塞される。球体フロート18が移動する際には、球体フロート18がガイド部34によって空気通路Rに確実に案内され、座部Qに対して正確に位置決めされるので、信頼性の高い安定した閉塞動作を実現することができる。
【0046】
閉塞動作の後、外部空間S2に溜まった水Wの水位が降下すると、それに伴って昇降領域S3に溜まった水Wの水位も降下し、当該水Wに浮かんだ球体フロート18が降下して、空気通路Rが開かれる。このように、本実施形態では、水位の降下に連動して、空気通路Rの通気性を早期に回復することができるので、床下空間S1の換気を速やかに再開することができる。
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態に係る床下浸水防止構造70を示す断面図である。第1実施形態に係る床下浸水防止構造10では、球体フロート18を空気通路Rに案内するガイド部34(図2)が錐状に形成されているのに対し、第2実施形態に係る床下浸水防止構造70では、フロート72を空気通路Rに案内するガイド部74が、フロート72に設けられた回動軸74aと、フロート72を回動自在に支持する回動支持部74bとを有している。
【0047】
つまり、図5に示すように、床下浸水防止構造70では、空気通路Rを構成するダクト部76の外部空間S2側の開口端に環状の座部Qが設けられており、座部Qの周囲には、止水部78を構成する止水壁78aが設けられている。そして、止水壁78aの内側には、回動支持部74bが設けられており、この回動支持部74bでフロート72が回動自在に支持される。フロート72は、発泡樹脂等のような水に浮く材料からなる「浮力体」としてのフロート本体72aを有しており、フロート本体72aの端縁には、回動軸74aが設けられており、回動軸74aが回動支持部74bに取り付けられている。また、フロート本体72aの一方の表面には、座部Qに当接する滑らかな平坦面が形成されており、この平坦面を有する表面層72bが空気通路Rを閉塞する「閉塞手段」となっている。
【0048】
床下浸水防止構造70において、止水部78で堰き止められた水の水位が上昇すると、フロート本体72aに浮力が発生し、フロート72が回動軸74aを中心として回動しながら上昇し、表面層72bが座部Qに当接して空気通路Rが閉塞される。このように、第2実施形態では、フロート72がガイド部74で回動されながら空気通路Rに確実に案内され、座部Qに対して正確に位置決めされるので、信頼性の高い安定した閉塞動作を実現することができる。また、常に表面層72bの同じ部分を座部Qに当接させることができるので、フロート本体72aの形状の自由度を高めることができる。
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態に係る床下浸水防止構造80を示す断面図である。第2実施形態に係る床下浸水防止構造70(図5)では、フロート本体72aが「浮力体」および「閉塞手段」の両機能を併有しているが、第3実施形態に係る床下浸水防止構造80(図6)では、フロート本体82aが「浮力体」の機能だけを有しており、閉塞部材82bが「閉塞手段」の機能を有している。そして、フロート本体82aおよび閉塞部材82bが、ガイド部74の回動支持部74bで回動自在に支持されている。
【0049】
つまり、床下浸水防止構造80では、フロート本体82aと閉塞部材82bとが完全に独立した部品として別々に構成されており、これらが接着剤、固定ねじおよび締結バンド等の接合手段(図示省略)で接合されている。したがって、フロート本体82aと閉塞部材82bとを異なる材料で形成することが可能であり、材料選択の自由度を高めることができる。
(第4実施形態)
図7は、第4実施形態に係る床下浸水防止構造90を示す断面図である。第1実施形態に係る床下浸水防止構造10では、球体フロート18を空気通路Rに案内するガイド部34(図2)が錐状に形成されているのに対し、第4実施形態に係る床下浸水防止構造90では、球体フロート18を空気通路Rに案内するガイド部92が網状または棒状(第4実施形態では網状)に形成されており、このガイド部92が球体フロート18の移動経路Uを取り囲むように配置されている。そして、ガイド部92の上端部が空気通路Rを構成するダクト部94の開口端94aに接続されている。
【0050】
第4実施形態によれば、移動経路Uの周囲に、空気や水を通す空間を網目等によって十分に確保することが可能であり、空気や水の流通性を高めることができる。
(第5実施形態)
図8は、第5実施形態に係る床下浸水防止構造100を示す断面図である。床下浸水防止構造100では、「閉塞手段」としての板状の閉塞部材102と「浮力体」としてのフロート104とが離間して配置されており、閉塞部材102とフロート104とが「浮力伝達手段」としての棒状部材106を介して連結されている。棒状部材106は、略中央部において折り曲げられており、折り曲げられた部分(以下、「支点」という。)106aが回動支持部108に回動自在に支持されている。一方、空気通路Rを構成するダクト部110の開口端には、閉塞部材102が当接する環状の座部Qが設けられている。したがって、フロート104に浮力が発生すると、当該浮力が棒状部材106および回動支持部108を介して閉塞部材102に伝達され、当該浮力で閉塞部材102が回動されて座部Qに当接される。
【0051】
第5実施形態によれば、「浮力体」としてのフロート104と「閉塞手段」としての閉塞部材102とを互いに離間して配置することができるので、これらの形状や配置の自由度を高めることができる。
【符号の説明】
【0052】
Q… 座部
R… 空気通路
S1… 床下空間
S2… 外部空間
S3… 下部空間
U… 移動経路
10… 床下浸水防止構造
12… 基礎部
14… 床下換気孔
16… 止水箱
18… 球体フロート(浮力体、閉塞手段)
20… 保護板
30… 止水嵌合部
32… ダクト部
34a〜34d… 側壁
34… ガイド部
36… 止水部
38… 嵌合部本体
48… 空気流入口
50… 止水壁
52… 保護板本体
54… 通気孔
74,108… 回動支持部
106… 棒状部材(浮力伝達手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の基礎部に形成された床下換気孔に設けられる、床下浸水防止構造であって、
前記床下換気孔に設けられ、前記建物の床下空間と外部空間との間で空気を流通させる空気通路を確保しつつ、前記外部空間から床下換気孔を通って前記床下空間に向かう水の流れを堰き止める止水部と、
前記止水部で堰き止められた水に浮かぶ浮力体と、
前記浮力体の浮力で移動されて前記空気通路を液密的に閉塞する閉塞手段とを備える、床下浸水防止構造。
【請求項2】
前記浮力体と前記閉塞手段とが一体的に形成されている、請求項1に記載の床下浸水防止構造。
【請求項3】
前記浮力体は、複数の独立気泡を有し、
前記閉塞手段は、前記浮力体の表面に形成された球面を有する、請求項2に記載の床下浸水防止構造。
【請求項4】
前記閉塞手段を前記空気通路に案内するガイド部をさらに備える、請求項1ないし3のいずれかに記載の床下浸水防止構造。
【請求項5】
前記ガイド部は、上方へ向かうにつれて狭くなる内部空間を有する錐状に形成され、前記ガイド部の内面で前記閉塞手段が案内される、請求項4に記載の床下浸水防止構造。
【請求項6】
前記ガイド部は、前記閉塞手段および前記浮力体を回動自在に支持する回動支持部を有する、請求項4に記載の床下浸水防止構造。
【請求項7】
前記ガイド部は、前記閉塞手段の移動経路を取り囲む網状または棒状に形成される、請求項4に記載の床下浸水防止構造。
【請求項8】
前記浮力体と前記閉塞手段とが離間して配置されており、
前記浮力体の浮力を前記閉塞手段に伝達する浮力伝達手段をさらに備える、請求項1に記載の床下浸水防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−220048(P2011−220048A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92584(P2010−92584)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【特許番号】特許第4727756号(P4727756)
【特許公報発行日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(599094093)
【Fターム(参考)】