説明

床仕上パネル及びその設置構造

【課題】目地間隙に弾性材が充填されている床仕上パネル設置構造において、弾性材が取れることを長期にわたって確実に防止できるようにすることを目的とする。
【解決手段】躯体床面1上に施工される床仕上パネル2は、下地板3と、該下地板3上に貼り付けられた石質板4と、石質板4の隣接2辺の側面から下地板3の側面3fにかけて接着により取り付けられた弾性材5とを備えている。床仕上パネル2,2の雄実3aと雌実3bとを係合させつつ、下地板3,3同士を突き合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイル、石板等の石質板を下地板に取り付けてなる床仕上パネルと、この床仕上パネルを躯体床面上に設置した床仕上パネル設置構造に係り、特に側面に弾性材を設けた床仕上パネルと、その設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
タイル、天然石板、人工石板などの石質板を下地板に接着剤等によって取り付けた床仕上パネルが特開平3−275343に記載されている。なお、同号公報ではこの床仕上パネルを石質複合板と称している。
【0003】
この特開平3−275343では、下地板同士を突き合わせると石質板同士の間に空の目地間隙が生じるので、下地板が見えてしまい、美観に劣る。また、目地間隙にゴミが溜り易い。
【0004】
特開平1−178659には、合板などよりなる基材の上面にWPC化木材よりなる表面材を貼着した床材において、基材の側面に弾性シーリング材を貼着した床材が記載されている。
【0005】
この特開平1−178659では、目地間隙が弾性シーリング材で埋まるので、下地板が見えない。
【特許文献1】特開平3−275343
【特許文献2】特開平1−178659
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特開平1−178659では、弾性シーリング材が基材の側面にのみ貼着されており、表面材同士の間では挟圧されないので、シーリング材の弾性が経年的に低下してきたときには、シーリング材が目地間隙から取れるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点を解消し、目地間隙に弾性材が充填されている床仕上パネル設置構造において、弾性材が取れることを長期にわたって確実に防止できると共に、目地部、下地板のジョイント部について、止水効果が期待できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の床仕上パネルは、石質板を下地板に取り付けてなる床仕上パネルにおいて、該石質板の側面から下地板の側面にかけて弾性材が設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の床仕上パネルは、請求項1において、該下地板は方形であり、その隣接2辺の側面の上下方向の途中又は下部から雄実が突設されており、前記弾性材は該雄実よりも上側に設けられており、該下地板の残りの2辺の側面には雌実が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3の床仕上パネルは、請求項2において、該下地板の雄実を有する側面のうち該雄実よりも上側は、前記石質板の側面よりも板央側に後退し、該石質板の下側に溝Aが形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4の床仕上パネルは、請求項2又は3において、該下地板の雌実を有する側面のうち該雌実よりも上側は、前記石質板の側面よりも板央側に後退し、該石質板の下側に溝Bが形成されていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5の床仕上パネルは、請求項2ないし4のいずれか1項において、前記石質板のすべての側面は下向きの傾斜面となっていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6の床仕上パネルは、請求項2ないし4のいずれか1項において、該雄実を設けた辺に臨む石質板側面は上向きの傾斜面となっており、雌実を設けた辺に臨む石質板側面は下向きの傾斜面となっていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項7の床仕上パネルは、請求項2において、前記雄実よりも上側の下地板及び石質板の側面は上向き傾斜面となっており、前記雌実よりも上側の下地板及び石質板の側面は下向き傾斜面となっていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項8の床仕上パネル設置構造は、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の床仕上パネルを複数枚突き合わせるように躯体床面に設置し、該床仕上パネル同士の間で前記弾性材を挟圧してなるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の床仕上パネル及びその設置構造にあっては、弾性材が石質板の側面から下地板の側面にかけて設けられているので、この床仕上パネルを躯体床面上に配設した場合、弾性材が下地板及び石質板の側面同士の間で挟圧されるため、弾性材が長期にわたってしっかりと床仕上パネル間に保持される。また、止水効果も期待できる。特に、下地板を合板とした場合、側面の粗度が高く、摩擦係数が大きいので、弾性材が取れることが防止される。
【0017】
請求項2の床仕上パネルによると、弾性材を雄実の上側に設けるので、弾性材の側面への取り付け時の位置決めが容易である。
【0018】
請求項3,4の床仕上パネルによると、弾性材の一部が溝に入り込むことにより、弾性材が極めて取れにくいものとなる。
【0019】
なお、溝A,Bを空所としておき、床仕上パネル同士を突き合わせることにより弾性材が溝A,Bに入り込むように構成した場合には、溝A,Bに食い込むようにして弾性材が圧縮変形するので、弾性材を押し縮めるようにして床仕上パネルを突き合わせるための力が小さくて済み、床仕上パネルの施工効率が高いものとなる。
【0020】
請求項5,6によれば、下向きの傾斜面となっている石質板側面によって弾性材が押圧されるので、弾性材が取れることが防止される。また、弾性材が下方に向って圧縮されるため、弾性材が目地間隙から上方へはみ出すことが防止される。
【0021】
請求項7の構造によると、仮に弾性材と下地板及び石質板の側面との間に隙間が生じても、この隙間は、上方から見えにくく、目立たない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0023】
第1図は実施の形態に係る床パネル設置構造を示す断面図であり、(a)は施工途中図、(b)は施工後の断面図である。第2図〜第4図はそれぞれ別の実施の形態を示す断面図である。
【0024】
第1図(a)の通り、躯体床面1上に施工される床仕上パネル2は、下地板3と、該下地板3上に貼り付けられた石質板4と、石質板4の隣接2辺の側面から下地板3の側面の上部にかけて接着により取り付けられた弾性材5とを備えている。
【0025】
躯体床面1は、合板、コンクリートなどよりなる。
【0026】
下地板3としては、合板、珪酸カルシウム板、スラグ石膏板、スレートボード、木質系繊維板、パーティクルボードなどよりなるものが用いられる。下地板3の厚さは5〜15mm程度が好適である。
【0027】
この実施の形態では、下地板3の隣接する2辺に雄実3aが設けられ、残りの2辺に雌実3bが設けられている。雄実3a及び雌実3bは、下地板3の厚み方向の途中部分に設けられているが、下部に設けられてもよい。なお、実部は図示以外の形状であってもよい。
【0028】
石質板4としては、陶磁器製タイルや、天然石又は人工石よりなる石板が好適である。石質板4の厚さは3〜10mm程度が好適である。
【0029】
なお、石質板4としてタイルを用いる場合、下地板3とタイルの寸法の一例を挙げると、次の通りである。
(1) 300×300mmの下地板に約300×300mmのタイルを張る。
(2) 300×600mmの下地板に約300×300mmのタイルを2枚又は約300×600mmのタイルを1枚張る。
(3) 300×1800mmの下地板に約300×300mmのタイルを6枚又は約300×600mmのタイルを3枚張る。
【0030】
ただし、上記(1)〜(3)の寸法はあくまでも一例であり、本発明を何ら限定するものではない。
【0031】
弾性材5としては、発泡ゴム(例えば発泡EPDM、発泡NR、発泡CR、発泡NBR、発泡シリコーンゴム)、発泡合成樹脂(例えば発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタン、発泡ポリ塩化ビニル)などが好適である。
【0032】
弾性材5は、下地板3の雄実3aよりも上側に、床仕上パネル2の辺の全長にわたって設けられている。弾性材5は、石質板4の上面から下方へ所定距離だけ離隔するように設け、床仕上パネル2,2を突き合わせて施工したときに弾性材5が目地間隙から上方へはみ出すことを防止するのが好ましい。
【0033】
弾性材5の目地幅方向の厚さは、施工完了時における目地間隙寸法の平均値の1.2〜3倍特に1.3〜2倍であることが好ましい。
【0034】
各床仕上パネル2を躯体床面1上に施工するには、躯体床面1上に複数枚の床仕上パネル2を各々の下地板3,3間に間隙があくように載置する。
【0035】
次いで、床仕上パネル2を押して移動させ、床仕上パネル2,2の雄実3aと雌実3bとを係合させつつ、下地板3,3同士を突き合わせる。
【0036】
第1図(b)の通り、下地板3,3同士が当接した後、床仕上パネル2を釘などによって躯体床面1に固定する。
【0037】
なお、予め躯体床面1又は下地板3の下面に接着剤を塗着しておき、床仕上パネル2を接着剤によって躯体床面1に固着させるようにしてもよい。この接着剤張りの場合も、釘留めによる仮留めを併用してもよい。
【0038】
床仕上パネル2,2同士を突き合わせた状態では、それらの間の目地間隙に弾性材5が挟圧された状態で配置されており、下地板3は視認されず、美観が良い。また、目地間隙にゴミ等が溜ることも防止される。さらに、目地部、下地板のジョイント部について、止水効果が期待できる。
【0039】
特に、この実施の形態では、弾性材5が石質板4,4間だけでなく、下地板3の雄実3aよりも上側の側面3fと、雌実3bよりも上側の側面3gとの間で挟圧されているので、弾性材5が取れにくい。また、弾性材5を雄実3aの上面に沿うように設けるので、下地板3及び石質板4の側面に弾性材5を接着するときの位置決めが容易である。
【0040】
第2図の実施の形態では、床仕上パネル2A,2Aの下地板3A,3Aに溝A,Bを設けている。溝Aは、雄実3aよりも上側の側面を石質板4の辺縁よりも好ましくは2〜5mm程度板央側に後退させることにより設けてある。溝Bは、雌実3bよりも上側の側面を石質板4の辺縁よりも好ましくは2〜5mm程度板央側に後退させることにより設けてある。第2図のその他の構成は第1図と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0041】
この第2図の実施の形態でも第1図と同様の効果が奏されると共に、さらに次の効果が奏される。
【0042】
即ち、この実施の形態にあっては、床仕上パネル2,2同士を突き合わせたときに、弾性材5の一部が溝A,Bに入り込む。そのため、弾性材5が目地から取れにくいものとなり、さらに上面への変形を軽減できる。また、床仕上パネル2,2同士を突き合わせる場合、弾性材5を小さい押圧力にて圧縮変形させることができ、床仕上パネル2,2同士を突き合わせることが容易となり、床仕上パネル2の施工効率が向上する。
【0043】
第3図の実施の形態では、床仕上パネル2Bの石質板4Bの4側面4bは、下向きの傾斜面となっている。この傾斜角度(仰角)θは45〜85°特に55〜75°程度が好ましい。この実施の形態では、石質板側面4bの下縁は、下地板3の上縁よりも板央側に後退しているが、下地板上縁に合致していてもよく、若干突出していてもよい。第3図のその他の構成は第1図と同一であり、同一符号は同一部分を示している。
【0044】
この実施の形態でも、第1図と同様の効果が奏されると共に、さらに次の効果が奏される。
【0045】
即ち、この実施の形態にあっては、石質板4Bの側面4bが下向きの傾斜面となっているので、弾性材5が該側面4bによって下方に向って圧縮される。そのため、弾性材5が目地間隙から上方へ抜け出すことが確実に防止される。
【0046】
第4図の実施の形態では、床仕上パネル2Cの下地板3Cの雄実3aよりも上側の側面3cと、その上側の石質板4Cの側面4cとは、連続した上向きの傾斜面となっている。なお、側面3cは側面4cよりも若干、板央側に後退したり、逆に若干突出していてもよい。
【0047】
また、下地板3Cの雌実3bよりも上側の側面3d及びその上側の石質板4Cの側面4dは、連続した下向きの傾斜面となっている。なお、側面3dは側面4dよりも若干板央側に後退したり、逆に若干突出していてもよい。
【0048】
これらの傾斜面の傾斜角度(仰角)は45〜85°特に55〜75°程度が好適である。弾性材6は側面3c,4cに接着剤によって取り付けられている。弾性材6の材料は弾性材5と同様である。
【0049】
側面3c,4cと側面3d,4dとは平行であることが好ましいが、上側ほど目地幅が小さくなるように構成されてもよい。
【0050】
第4図のその他の符号は第1図と同一部分を示している。
【0051】
この実施の形態でも、第1図と同様の効果が奏されると共に、さらに次の効果が奏される。
【0052】
即ち、この実施の形態では、弾性材6をはさんで一方の側面3c,4cが上向き傾斜面であり、他方の側面3d,4dが下向き傾斜面であるので、仮に弾性材6と側面3c,4c又は側面3d,4d間に切れが生じても、隙間は目立たない。
【0053】
第4図では下地板3Cの側面3c,3dを傾斜面としているが、鉛直面とされてもよく、石質板側面4c,4dとは異なる傾斜角の傾斜面としてもよい。
【0054】
上記実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態とされてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施の形態に係る床仕上パネル及びその設置構造を示す断面図である。
【図2】実施の形態に係る床仕上パネル及びその設置構造を示す断面図である。
【図3】実施の形態に係る床仕上パネル及びその設置構造を示す断面図である。
【図4】実施の形態に係る床仕上パネル及びその設置構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 躯体床面
2,2A,2B,2C 床仕上パネル
3,3A,3C 下地板
4,4B,4C 石質板
5,6 弾性材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石質板を下地板に取り付けてなる床仕上パネルにおいて、
該石質板の側面から下地板の側面にかけて弾性材が設けられていることを特徴とする床仕上パネル。
【請求項2】
請求項1において、該下地板は方形であり、その隣接2辺の側面の上下方向の途中又は下部から雄実が突設されており、
前記弾性材は該雄実よりも上側に設けられており、
該下地板の残りの2辺の側面には雌実が設けられていることを特徴とする床仕上パネル。
【請求項3】
請求項2において、該下地板の雄実を有する側面のうち該雄実よりも上側は、前記石質板の側面よりも板央側に後退し、該石質板の下側に溝Aが形成されていることを特徴とする床仕上パネル。
【請求項4】
請求項2又は3において、該下地板の雌実を有する側面のうち該雌実よりも上側は、前記石質板の側面よりも板央側に後退し、該石質板の下側に溝Bが形成されていることを特徴とする床仕上パネル。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1項において、前記石質板のすべての側面は下向きの傾斜面となっていることを特徴とする床仕上パネル。
【請求項6】
請求項2ないし4のいずれか1項において、該雄実を設けた辺に臨む石質板側面は上向きの傾斜面となっており、雌実を設けた辺に臨む石質板側面は下向きの傾斜面となっていることを特徴とする床仕上パネル。
【請求項7】
請求項2において、前記雄実よりも上側の下地板及び石質板の側面は上向き傾斜面となっており、
前記雌実よりも上側の下地板及び石質板の側面は下向き傾斜面となっていることを特徴とする床仕上パネル。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の床仕上パネルを複数枚突き合わせるように躯体床面に設置し、該床仕上パネル同士の間で前記弾性材を挟圧してなる床仕上パネル設置構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−121322(P2010−121322A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294616(P2008−294616)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】