説明

床暖房用パネル

【課題】面状発熱体の発熱による構成各部の変形を抑制してフローリング材の隆起や繋ぎ目部分のめくれ上がりを防止する。
【解決手段】床暖房用パネルは、上下に重ねられかつ外周縁が接合された2枚の絶縁シート2a,2bの一方の内面に発熱部と電極部とから成る導電領域8A〜8Lが形成された面状発熱体2と、面状発熱体2の上面に重ねられる上部板材と、面状発熱体2の下面に木質部を有する断熱材層を介して重ねられる下部板材とが一体化されて成る。面状発熱体2の各導電領域8A〜8Lに、スポット状であって他方の絶縁シート2bに接合された非導電領域81がそれぞれ形成されている。非導電領域81に形成した貫通孔11に接着剤が充填され、接着剤により上部板材が断熱材層の木質部に接合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、下地床上に暖房床を構築するのに用いられる床暖房用パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の暖房床として、図7に示すように、下地床上に複数枚の床暖房用パネル101を整列して並べ、その上にフローリング材110を敷設して構成されたものがある。その種の床暖房用パネル101として、図8に示すように、面状発熱体102の上面に上部板材103を重ね、面状発熱体102の下面に断熱材107と木質部106とから成る断熱材層104を介して下部板材105を重ねて、全体を一体化したものが用いられている。
【0003】
面状発熱体102は、表面に発熱部と電極部とから成る複数の導電領域が印刷により形成された絶縁シート上に他の絶縁シートを重ねかつ外周縁を接合して形成されている。隣り合う導電領域間には帯状の非導電領域を介在させており、断熱材層104の各非導電領域が対応する位置に、釘111の打ち込みが可能な木質部106を設けている。各非導電領域の位置に釘111を打ち、上部板材103と面状発熱体102と木質部106と下部板材105とを一体化する。
【0004】
上部板材103の表面には、図9に示すように、前記非導電領域に対応する位置に、釘打ちが可能であることをインキで示した帯状の表示領域108が設けてある。これらの表示領域108の複数箇所に釘111を打ち込むことで、面状発熱体102と上下の各板材103,105と木質部106とが一体化される。この場合に、面状発熱体102の導電領域や断熱材層104の断熱材107を釘111が貫通することがなく、釘111により導電領域が短絡したり断熱材107が損傷したりすることがない。
【0005】
上記の床暖房用パネル101では、2枚の絶縁シートの外周縁が互いに接合されているので、面状発熱体102が発熱すると、絶縁シート間の隙間の空気が膨張して面状発熱体102が上部板材103を押圧して変形させ、さらに、上部板材103の熱変形も加わるため、フローリング材110が隆起し、フローリング材110の繋ぎ目部分がめくれ上がるという問題がある。
【0006】
この問題を解決するために、出願人は先般、面状発熱体102の発熱による構成各部の変形を押さえ付けてフローリング材の隆起や繋ぎ目部分のめくり上がりを防止した床暖房用パネルを提案した(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−139294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の床暖房用パネルは、面状発熱体102の各導電領域の領域内に、スポット状であって他方の絶縁シートに接合された非導電領域112(図9において一点鎖線で示す。)をそれぞれ形成するとともに、断熱材層104の各非導電領域112が対応する位置にそれぞれ木質部を設けたもので、各非導電領域111に釘を打つことにより上部板材103を押さえ付け、これにより上部板材103の変形を抑えている。
【0009】
この床暖房用パネルでは、面状発熱体102の発熱部が発熱すると、絶縁シート間の隙間の空気が膨張するが、上部板材103は、特に、導電領域内に設けられた非導電領域111に釘が打たれて押さえ付けられているので、面状発熱体102の膨張による押圧を受けて変形したり、熱変形したりするのが抑制される。
【0010】
しかしながら、長年の使用により床暖房用パネルに継続して振動などが作用すると、釘が緩んで上部板材103を押さえ付ける力が低下するため、上部板材103は面状発熱体102の膨張による押圧を受けて変形したり、熱変形したりして、フローリング材の隆起や繋ぎ目部分のめくれ上がりを防止することができない。
【0011】
この発明は、上記した問題に着目してなされたもので、床暖房用パネルに継続して振動などが作用しても、上部板材は押さえ付けられた状態に保持され、面状発熱体の膨張による押圧を受けて変形したり、熱変形したりするのが抑制される床暖房用パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明による床暖房用パネルは、上下に重ねられかつ外周縁が接合された2枚の絶縁シートの一方の内面に発熱部と電極部とから成る導電領域が形成された面状発熱体と、面状発熱体の上面に重ねられる上部板材と、面状発熱体の下面に木質部を有する断熱材層を介して重ねられる下部板材とが一体化されて成るものであり、前記面状発熱体の導電領域内に、スポット状であって他方の絶縁シートに接合された少なくとも1個の非導電領域が形成され、その非導電領域に形成した貫通孔に接着剤を充填して、前記接着剤により上部板材が断熱材層の木質部に接合されている。
【0013】
上記した床暖房用パネルでは、導電領域内に形成されたスポット状の非導電領域において、貫通孔に充填された接着剤により上部板材が断熱材層の木質部に接合されているので、床暖房用パネルに振動などが継続して作用しても、上部板材の断熱材層の木質部との接合が維持され、上部板材は押さえ付けられた状態に保持される。したがって、上部板材は導電領域内において面状発熱体の膨張による押圧を受けて変形したり、熱変形したりするのが抑制され、フローリング材が隆起したり繋ぎ目部分がめくれ上がったりするおそれがない。
【0014】
この発明の好ましい実施態様においては、前記面状発熱体は、一方の絶縁シートの内面に帯状の非導電領域により区分された複数の導電領域が形成されており、前記帯状の非導電領域に形成した複数個の貫通孔に接着剤を充填して、前記接着剤により上部板材が断熱材層の木質部に接合されている。
この実施態様によると、隣り合う導電領域を区分する帯状の非導電領域において、貫通孔に充填された接着剤により上部板材が断熱材層の木質部に接合されているので、床暖房用パネルに振動などが継続して作用しても、上部板材の断熱材層の木質部との接合が維持され、上部板材は押さえ付けられた状態に保持される。したがって、上部板材は隣り合う導電領域間において面状発熱体の膨張による押圧を受けて変形したり、自らが熱変形したりするのが抑制され、フローリング材が隆起したり繋ぎ目部分がめくれ上がったりするおそれがない。
【発明の効果】
【0015】
この発明によると、長年の使用などにより床暖房用パネルに継続して振動などが作用しても、上部板材の断熱材層の木質部との接合が維持され、上部板材は押さえ付けられた状態に保持されるので、上部板材が面状発熱体の膨張による押圧を受けて変形したり、熱変形したりするのが抑制され、フローリング材の隆起や繋ぎ目部分のめくれ上がりを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の一実施例である床暖房用パネルの構成各部を順次破断して示した平面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】上側の絶縁シートを破断して示した面状発熱体の平面図である。
【図4】面状発熱体の発熱部の構成を拡大して示す平面図である。
【図5】上部板材の断熱材層の木質部との接合状態を示す拡大断面図である。
【図6】断熱材層の構成を示す平面図である。
【図7】フローリング材を破断して示した暖房床の斜視図である。
【図8】従来の床暖房用パネルの断面図である。
【図9】従来の床暖房用パネルの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1および図2は、この発明の一実施例である床暖房用パネル1の外観と構造を示している。
図示例の床暖房用パネル1は、面状発熱体2の上面に上部板材3が重ねられ、面状発熱体2の下面に断熱材層4を介して下部板材5が重ねられて成るものである。
上部板材3および下部板材5にはベニヤ板のような合板が用いられている。断熱材層4は、詳細は後述するが、木質部6,60〜62と発泡合成樹脂より成る断熱材40とで構成されている。
【0018】
面状発熱体2は、図3に示すように、印刷によって矩形状をなす複数の導電領域8A〜8Lが表面に形成された絶縁シート2aと、その絶縁シート2aの印刷された面に重ね合わされる他の絶縁シート2bとから成るもので、2枚の重ね合わされた絶縁シート2a,2bの外周縁は接着剤により接合されている。各絶縁シート2a,2bとして、ポリエステルのような高分子材料から成る可撓性を有する透明フィルムが用いられている。
【0019】
前記の各導電領域8A〜8Lは、図4の拡大図に示すように、導電性樹脂によって形成される発熱部20と、発熱部20に電圧を供給するための櫛歯状の電極部21,22とから成るもので、一端には電極部21,22間に給電するための給電部23A,23Bが形成されている。
【0020】
前記発熱部20を構成する導電性樹脂は、電気抵抗の温度係数が正である特性、すなわち、温度上昇に伴って電気抵抗が増し、温度低下に伴って電気抵抗が減少する特性を有しており、発熱温度を所望の温度幅に維持する自己温度制御機能が付与されている。この導電性樹脂として、高分子材料に対してカーボンブラックなどの導電性炭素粒子を導電性物質として所定の割合で分散せしめてなる導電性エラストマが用いられている。
この実施例では、電源投入時の突入電流を抑えるために、発熱部20の全体に導電性樹脂が一部塗着されていない線状の非導通領域29が複数設けられている。
【0021】
前記の各電極部21,22は、銅やニッケルなどの金属箔を絶縁シート2aの表面に熱溶着して形成されており、太い幅の基部24と細い幅の複数の櫛状部25とを備えている。基部24を互いに対向させかつ櫛状部25を交互に噛み合わせるようにして各電極部21,22が配備されている。前記の線状の非導通領域29は、櫛状部25と隣の櫛状部25や基部24との間の帯状領域に一定間隔毎に設けられている。
【0022】
隣り合う導電領域の中間には帯状の非導電領域80(以下、「第1の非導電領域80」という。)を介在させるとともに、各導電領域8A〜8Lには、スポット状であって他方の絶縁シート2bに接着剤により接合された矩形状の非導電領域81(以下、「第2の非導電領域81」という。)が形成されている。この実施例では、第2の非導電領域81は、各導電領域8A〜8Lの中央部にそれぞれ1個宛設けられているが、導電領域8A〜8Lの面積に応じて2以上設けてもよい。また、第2の非導電領域81は、隣り合う櫛状部25,25間の間隔より小さい幅の矩形状に形成されているが、形状は矩形に限らず、円形その他の形状であってもよく、その形状は問わない。
【0023】
全ての第2の非導電領域81には、図4および図5に示すように、接着剤12を充填するための貫通孔11が形成されている。前記の接着剤12は、面状発熱体2の上面に重ねられる上部板材3と、面状発熱体2の下面に重ねられる断熱材層4に設けられた木質部62との間を接合するためのもので、木材同士を接合するのに好適なものであれば、エポキシ系、ゴム系、ウレタン系などの種々の接着剤を用いることができる。
【0024】
この実施例では、前記の各第1の非導電領域80にも、図3および図4に示すように、前記接着剤12と同様の接着剤を充填するための複数の貫通孔13がそれぞれ形成されている。この接着剤によって面状発熱体2の上面に重ねられる上部板材3と、面状発熱体2の下面に重ねられる断熱材層4に設けられた木質部61との間が接合される。
【0025】
なお、12個の導電領域8A〜8Lを取り囲む外周縁および幅中央部も非導電領域82,83(以下、「第3の非導電領域82」「第4の非導電領域83」という。)であり、第3の非導電領域82に沿って上下の絶縁シート2a,2bが接合されている。
【0026】
断熱材層4は、図6に示すように、複数個に分割された断熱材40を有し、各断熱材40をそれぞれ取り囲むように、外周に沿う木質部6と、幅中央部の木質部60と、面状発熱体2の第1の非導電領域80に対応位置する木質部61とが配備されている。断熱材40には、面状発熱体2の第2の各非導電領域81に対応する位置に、上下方向の矩形孔41が形成され、各矩形孔41に木質部62が設けられている。各木質部6,60〜62は、釘打ちが可能であれば、木材の材質は問わない。
木質部61は平面形状が第1の非導電領域80の外形(帯状)と一致する帯状に形成され、木質部62は平面形状が第2の非導電領域81の外形(矩形状)を含むような矩形状に形成されている。
【0027】
図1に戻って、上部板材3の表面には、第1〜第4の各非導電領域80〜83に対応する位置に、それぞれ釘打ちが可能であることをインキで示した表示領域90〜93が設けてある。各表示領域90〜93に釘を打ち込むことにより、面状発熱体2の導電領域8A〜8Lや断熱材層4の断熱材40を釘が貫通することなく、上部板材3、面状発熱体2、下部板材5、および木質部6,60,61,62が一体化されるもので、導電領域8A〜8Lが短絡したり断熱材層4の断熱材40を損傷したりすることがない。
【0028】
床暖房用パネル1を組み立てるに際し、上部板材3、面状発熱体2、断熱材層4、および下部板材5が順次重ねられる。この場合に、面状発熱体2の全ての第1、第2の非導電領域80,81に形成された貫通孔13,11にそれぞれ接着剤12を充填し、接着剤12により上部板材3を断熱材層4の木質部61,62に接合する。
つぎに、第1〜第4の各非導電領域80〜83の各位置に多数本の釘が打ち込まれて構成各部が一体化される。このとき、釘は面状発熱体2の導電領域8A〜8Lや断熱材層4の断熱材40を貫通することがないので、導電領域8A〜8Lが短絡したり断熱材40が損傷したりすることはない。
【0029】
面状発熱体2の発熱部20が発熱すると、絶縁シート2a,2b間の隙間の空気が膨張するが、上部板材3は、第1、第2の各非導電領域80,81に形成された貫通孔13,11に充填された接着剤12により断熱材層4の木質部61,62に接合されて押さえ付けられているので、上部板材3が押圧や熱により変形するのが抑制され、フローリング材の隆起やフローリング材の繋ぎ目部分をめくれ上がりを防止できる。
【符号の説明】
【0030】
1 床暖房用パネル
2 面状発熱体
2a,2b 絶縁シート
3 上部板材
4 断熱材層
5 下部板材
6,60,61,62 木質部
8A〜8L 導電領域
11,13 貫通孔
12 接着剤
20 発熱部
21 電極部
40 断熱材
80 第1の非導電領域
81 第2の非導電領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に重ねられかつ外周縁が接合された2枚の絶縁シートの一方の内面に発熱部と電極部とから成る導電領域が形成された面状発熱体と、面状発熱体の上面に重ねられる上部板材と、面状発熱体の下面に木質部を有する断熱材層を介して重ねられる下部板材とが一体化されて成る床暖房用パネルにおいて、前記面状発熱体の導電領域内に、スポット状であって他方の絶縁シートに接合された少なくとも1個の非導電領域が形成され、その非導電領域に形成した貫通孔に接着剤を充填して、前記接着剤により上部板材が断熱材層の木質部に接合されて成る床暖房用パネル。
【請求項2】
前記面状発熱体は、一方の絶縁シートの内面に帯状の非導電領域により区分された複数の導電領域が形成されており、前記帯状の非導電領域に形成した複数個の貫通孔に接着剤を充填して、前記接着剤により上部板材が断熱材層の木質部に接合されている請求項1に記載された床暖房用パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−270985(P2010−270985A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124162(P2009−124162)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(399020474)東栄工業株式会社 (3)
【出願人】(501081351)
【出願人】(501420479)
【Fターム(参考)】