説明

床材の塗装方法

【課題】比較的高価な上塗り塗料の使用量を抑制すると共に、良好に上塗りすることができる床材の塗装方法を提供することである。
【解決手段】下地合板2に表面板3を貼着した床材1を塗装する際に、上塗り塗装を2段階に分けて実施する。下塗りされた床材1に対して、第1段階では、フローコーター8によって安価な塗料を多量に塗布し、第1上塗塗装膜5を形成する。第1上塗塗装膜5は鏡面仕上げする。また、第2段階では、第1上塗塗装膜5の上からロールコーター9によって耐衝撃性や耐摩耗性を有する高価な塗料を少量塗布し、第2上塗塗装膜6を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築材として使用される床材の塗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
床材の塗装を良好に仕上げるために、従来は上塗り工程でフローコーターが使用されている。このような塗装方法が例えば本件出願人の出願である特許文献1に開示されている。特許文献1には、床材に対してロールコーターで下塗りを実施し、下塗りされた塗料を乾燥させた後に、下塗り塗料の上からフローコーターによって上塗りする手順が開示されている。フローコーターとは、床材上に塗料をカーテン状に落として、床材の表面を塗装するものである。
【0003】
特許文献1に開示されている塗装方法を実施することにより、床材の表面の塗装を良好に仕上げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−280807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に床材の上塗り塗料(塗膜)は、下塗りされた塗料(塗膜)を保護する機能を有している必要があり、また、耐衝撃性に優れている必要がある。一方、下塗り塗料(塗膜)は、床材を装飾する機能を有していればよく、上塗り塗料(塗膜)のような耐衝撃性等の機能は無用である。すなわち、上塗り用の塗料は下塗り用の塗料と比較して高価(高品質)である。
【0006】
ところでフローコーターであれば、床材の表面に凹凸があってもこの凹凸に沿って一様に塗料を塗布することができるが、塗料が多量に消費されてしまう。すなわち、上塗り塗料をフローコーターで塗布すると、高価な上塗り塗料が必要以上に消費されてしまい、経済的ではなかった。
【0007】
また、上塗りをロールコーターのみで実施すると、要求されるレベルに仕上がり状態を維持することが困難であった。すなわち、下地の表面の凹凸等により一様な品質の塗膜を形成するのは困難である。
【0008】
そこで本発明は、比較的高価な上塗り塗料の使用量を抑制すると共に、良好に上塗りすることができる床材の塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、基板に表面板を貼着した床材を塗装する方法であって、前記表面板の上塗り塗装をフローコーターで実施した後、アレルギー抑制剤等の機能性材料を混合したアクリルウレタン等の塗料をロールコーターで仕上げ塗装することを特徴とする床材の塗装方法である。
【0010】
請求項1の発明では、上塗り塗装をフローコーターで実施した後、ロールコーターで仕上げることにより、上塗り塗装を鏡面塗装のように仕上げることができる。また、ロールコーターで最終的な仕上げを実施することにより、高価な塗料を多量に使用せずに済み、経済的である。さらに、上塗り塗装においてフローコーターで塗布される塗料は、ロールコーターで塗布される塗料で被覆されるので、耐衝撃性等の機能を有していなくてもよく、比較的安価な塗料を選定することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の床材の塗装方法を実施すると、比較的高価な上塗り用の塗料の使用量を抑制し、さらに上塗り塗装を良好に仕上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】床材の部分拡大側面図であり、本発明を実施して床材を上塗り塗装する際の仮想図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示すように、床材1に上塗塗装膜7を形成する塗装装置20は、フローコーター8とロールコーター9を有する。床材1は、予め下地合板2(無垢単板、集成材、中密度繊維板、パーティクルボード等からなる木質系の基板)に表面板3(突き板等)が接着剤で貼着されている。そして床材1は、表面板3が複数の塗装膜(下塗塗装膜、上塗塗装膜)で被覆される構造を呈する。以下、各塗装膜を形成する手順を説明する。
【0014】
まず、表面板3が貼着された下地合板2が、図示しない搬送装置によって図1の左方から右方へと搬送される。表面板3の上面には木材の毛羽立ちがあり、平滑ではない。この表面板3の上面に対して周知の手法によって下塗りを実施し、下塗塗装膜4を形成する。
【0015】
すなわち、スポンジロール、リバースロール、ナチュラルロール(圧締ロール)、乾燥機(いずれも図示せず)を下地合板2(基板)の搬送経路の上流側から順に配置し、表面板3に対してスポンジロールで塗料を一様に塗布し、リバースロールで余剰の塗料を掻き取り、ナチュラルロール(圧締ロール)で塗装面を平滑に仕上げ、さらに乾燥機で水分を除去する。その結果、下塗塗装膜4が形成される。下塗塗装膜4を形成する塗料の量は、3.0〜4.0[g/尺2]程度である。
【0016】
また、必要に応じて下塗塗装膜4の上に中塗塗装膜を形成する。例えば1つ又は2以上のナチュラルロールによって塗料が下塗塗装膜4の上に塗布されて中塗塗装膜が形成される。中塗塗装膜4の塗布量は、2.7〜3.2[g/尺2]程度である。この下塗塗装膜4(中塗塗装膜)が形成された床材1を、上塗塗装膜7で被覆する。
【0017】
本発明の特徴的な構成である上塗塗装膜7を形成する塗装装置20は、床材1の搬送経路の上流側にフローコーター8が配置され、下流側にロールコーター9が配置される構成を有する。なお、図1では、フローコーター8とロールコーター9が近接して配置されているように描写しているが、実際にはこのように近接していない。図1では、上塗塗装膜7の形成の手順を説明する上で、視覚的に把握し易くするために両者を近接させて描写している。
【0018】
フローコーター8は、紙面の手前側から奥側へのびる吐出口8aを有する。吐出口8aから床材1(下塗塗装膜4)の上に上塗り用の塗料14がカーテン状に供給され、床材1(下塗塗装膜4)の上には塗料14が塗布される。すなわち、図示しない搬送装置によって床材1を矢印Aで示す方向(左から右)に一定速度で移動させると共に、フローコーター8(吐出口8a)から塗料14を落下供給する。その結果、塗料14は床材1(下塗塗装膜4)の上に一定の厚みで塗布され、第1上塗塗装膜5が形成される。そして、図示しない乾燥機で第1上塗塗装膜5を乾燥させる。塗料14の塗布量は、5.5〜6.5[g/尺2]程度とすることができる。
【0019】
なお、このフローコーター8で塗料14を塗布する前段階で、図示しないスポンジロールとナチュラルロールで予め塗料13及び塗料14と親和性が良好な塗料を塗布しておくのが好ましい。その際の当該塗料の塗布量は、2.3〜2.7[g/尺2]程度とする。
【0020】
次に、第1上塗塗装膜5が形成された床材1が、さらに矢印Aで示す方向に搬送され、ロールコーター9に達する。ロールコーター9は、メインロール10、ドクターロール11、金属ロール15、塗料供給源12を備えている。
【0021】
各ロールは、床材1の搬送速度に合わせて所定の回転速度で各々回転する。メインロール10は、弾性を有する素材(合成ゴム等)で形成されており、第1上塗塗装膜5と接している。ドクターロール11は金属製であり、メインロール10との間に所定の隙間が形成されるように配置されている。また、メインロール10とドクターロール11の間には塗料供給源12から塗料が供給されており、図1では便宜上両ロール10、11の間に符号12を付している。
【0022】
メインロール10の下方には、床材1を挟んで金属ロール15が配置されている。金属ロール15は、床材1(第1上塗塗装膜5)とメインロール10の間に所定の押圧力を作用させるために配置されている。
【0023】
塗料供給源12の塗料13はメインロール10の表面に付着し、メインロール10が回転すると、床材1(第1上塗塗装膜5)に塗布され、第1上塗塗装膜5の上に第2上塗塗装膜6を形成する。そして、第1上塗塗装膜5と第2上塗塗装膜6とで上塗塗装膜7が構成される。第2上塗塗装膜6を形成するのに使用される塗料13の量は、0.7〜1.2[g/尺2]程度である。また、塗料13としては、例えばアクリル樹脂,アミノアルキド,ビニル樹脂,エポキシ樹脂,ポリウレタン樹脂等を選定することができる。
【0024】
ここで第1上塗塗装膜5は、フローコーター8で塗料14を塗布し鏡面仕上げされるが、最終的には第2上塗塗装膜6で被覆される。そのため、第1上塗塗装膜5を構成する塗料14は、耐衝撃性、耐磨耗性等の機能を有する必要性が少なく比較的安価な素材を選定することができる。そしてフローコーター8によって多量の塗料14が床材1(下塗塗装膜4)の上に塗布されて、第1上塗塗装膜5が形成される。
【0025】
また、鏡面仕上げされた第1上塗塗装膜5の上に、ロールコーター9で塗料13が塗布され、第2上塗塗装膜6が形成される。第2上塗塗装膜6は、最も外側(最表面)に形成され、耐衝撃性や床材1(各塗装膜)に傷が付かないように保護する機能、アレルギーを抑制する機能等を保持させるために、比較的高価な塗料で形成されている。ところが、第2上塗塗装膜6はロールコーター9によって塗布されるので、塗装膜を薄く形成することができる。よって、塗料14は高価ではあるが、少量で第2上塗塗装膜6を薄く構成することができる。その結果、第1上塗塗装膜5と第2上塗塗装膜6からなる上塗塗装膜7を良好に仕上げると共に、上塗塗装膜7を安価に形成することができる。第1上塗塗装膜5、第2上塗塗装膜6を形成する塗料に使用される樹脂はアクリルウレタン樹脂が望ましいものである。
【符号の説明】
【0026】
1 床材
2 下地合板(基板)
3 表面板
4 下塗・中塗装膜
5 第1上塗塗装膜
6 第2上塗塗装膜
7 上塗塗装膜
8 フローコーター
9 ロールコーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に表面板を貼着した床材を塗装する方法であって、前記表面板の上塗り塗装をフローコーターで実施した後、アレルギー抑制剤等の機能性材料を混合したアクリルウレタン等の塗料をロールコーターで仕上げ塗装することを特徴とする床材の塗装方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−44124(P2013−44124A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181365(P2011−181365)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】