説明

床用化粧材

【課題】薄膜化された単層表刷り化粧シートを使用した場合においても、耐傷性及び耐衝撃性に優れた床用化粧材を提供する。
【解決手段】木質基材上に化粧シートが積層された床用化粧材であって、
(1) 前記木質基材は、1層の木質層又は2層以上の木質層からなり、前記化粧シートと接している木質層の表面密度が0.7g/cm以上であり、
(2) 前記化粧シートは基材シート、絵柄模様層及び表面保護層を順に有し、
(3) 前記基材シートの引張弾性率が1000MPa以上であり、
(4) 前記表面保護層の厚さが15〜60μmであり、
(5) 前記表面保護層のマルテンス硬さが90〜240N/mmである、
床用化粧材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜化された単層表刷り化粧シートを使用した場合においても、耐傷性及び耐衝撃性に優れた床用化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、家屋の床用化粧材としては、各種合板又は木質繊維板からなる木質基材のおもて面に天然木の意匠を有する化粧シートを貼着したものが知られている(特許文献1等)。このような床用化粧シートは装飾性能以外に耐傷性の特性が優れることが要求される。床用化粧シートとしては、例えば、基材シートに設けられた絵柄層上に、耐傷性の特性を発現させるため透明樹脂層、更には表面保護層が順に設けられていることが知られている。
床用化粧シートの製造において、製造工程数が多くなれば、それに伴い当然生産コスト、及びロスが増加するため製造工程数を少なくすることが求められている。
【0003】
また一方で、従来の床用化粧材では、実加工切削部と溝切削部に塗料を塗布する際、塗料が化粧シート切削端面に付着されにくく、これにより化粧シート切削部断面に沿った線状の欠点が発生し外観品質を損ねるという問題がある。そこで、上記欠点が発生しないために、床用化粧シートの薄膜化が望まれている。
【0004】
製造工程数を少なくし薄膜化された床用化粧シートとしては、例えば、単層裏刷り仕様の床用化粧シートが考えられるが、上記化粧シートの裏面に積層される基材を隠蔽するために、多量の顔料を含むインキを使用することが必要となる。かかるインキの使用は、化粧シートと基材との間の密着性を悪化させ、結果として化粧シートの剥離が発生し易くなる(特許文献2等)。
【0005】
他方、製造工程数を少なくし薄膜化された床用化粧シートとしては、例えば、単層表刷り仕様の床用化粧シートが考えられるが、上記化粧シートは高荷重の引掻きによって絵柄が取られ易くなり、耐傷性が大きく低下する。この問題は、上記化粧シートが薄膜であるため、荷重が分散されないことに起因する。そして、この問題を解消する目的で、表面比重の低い木質基材に上記化粧シートを積層する場合、耐傷性は向上するが、耐衝撃性が悪化する。
【0006】
よって、木質基材と化粧シートの双方のバランスを考慮し、薄膜化された単層表刷り化粧シートを使用した場合においても、耐傷性及び耐衝撃性に優れた床用化粧材の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−97321号公報
【特許文献2】特開2001−181985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、薄膜化された単層表刷り化粧シートを使用した場合においても、耐傷性及び耐衝撃性に優れた床用化粧材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、化粧シートの最表層である表面保護層、基材シート、及び木質基材の物性を特定範囲に設定することにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記の床用化粧材に関する。
1. 木質基材上に化粧シートが積層された床用化粧材であって、
(1) 前記木質基材は、1層の木質層又は2層以上の木質層からなり、前記化粧シートと接している木質層の表面密度が0.7g/cm以上であり、
(2) 前記化粧シートは基材シート、絵柄模様層及び表面保護層を順に有し、
(3) 前記基材シートの引張弾性率が1000MPa以上であり、
(4) 前記表面保護層の厚さが15〜60μmであり、
(5) 前記表面保護層のマルテンス硬さが90〜240N/mmである、
床用化粧材。
2. 前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂を含有する、上記項1に記載の床用化粧材。
3. 前記表面保護層は、電子線硬化型樹脂を含有する、上記項1又は2に記載の床用化粧材。
4. 前記基材シートの引張弾性率が1200MPa以上である、上記項1〜3のいずれかに記載の床用化粧材。
5. 前記表面保護層の厚さが20〜40μmである、上記項1〜4のいずれかに記載の床用化粧材。
【0011】
以下、本発明の床用化粧材について詳細に説明する。
【0012】
本発明の床用化粧材
本発明の床用化粧材は、木質基材上に化粧シートが積層された床用化粧材であって、
(1) 前記木質基材は、1層の木質層又は2層以上の木質層からなり、前記化粧シートと接している木質層の表面密度が0.7g/cm以上であり、
(2) 前記化粧シートは基材シート、絵柄模様層及び表面保護層を順に有し、
(3) 前記基材シートの引張弾性率が1000MPa以上であり、
(4) 前記表面保護層の厚さが15〜60μmであり、
(5) 前記表面保護層のマルテンス硬さが90〜240N/mmである、
ことを特徴とする。上記特徴を有する本発明の床用化粧材は、特に、木質基材のうち化粧シートと接している木質層の表面密度が0.7g/cm以上であり、基材シートの引張弾性率が1000MPa以上であり、更に表面保護層の厚さが15〜60μmであり、且つ、表面保護層のマルテンス硬さが90〜240N/mmであることにより、薄膜化された単層表刷り化粧シートを使用した場合においても、耐傷性及び耐衝撃性に優れる。
【0013】
以下、本発明の床用化粧材の各構成について説明する。
≪木質基材≫
本発明で用いる木質基材は、1層の木質層又は2層以上の木質層からなる。即ち、2層以上の場合には、木質層を2層以上積層してなる。 各木質層としては、木材単板、木材合板、木質繊維板、パーティクルボード(PB)等があり、木材単板及び木材合板の場合には、杉、檜、ラワン、チーク、ユーカリ等の樹種がある。木質繊維板には、中密度木質繊維板(MDF)、高密度木質繊維板(HDF)等がある。なかでも、木質基材上に積層する化粧シートの表面に凹凸を映すことなく、フロアの外観品質を損なわないという観点から、MDF、HDF及びパーティクルボードからなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい。
【0014】
なお、木材合板は、厳密には薄板を複数枚接着したものであるが、本明細書では、木材合板自体は1層の木質層を意味する。木質基材は、1種又は2種以上の材質を組み合わせて用いることができる。
【0015】
本発明では、化粧シートと接している木質層として、表面密度が0.7g/cm以上であるものを用いる。即ち、上記表面密度は、1層の木質層からなる場合には当該木質層の物性を意味し、2層以上からなる場合には、最表層(化粧シート側)の木質層の物性を意味する。なお、上記「化粧シートと接している木質層」の記載は、化粧シートに最も近い木質層を意味する記載であり、実際には木質層と化粧シートとの間に接着剤層を介して間接的に接している場合も包含する。
【0016】
化粧シートと接している木質層(以下「当該木質層」とも言う)の表面密度は、0.7g/cm以上であればよい。表面密度は、特に木質繊維板やパーティクルボードの場合には製造方法に由来して木質層の表面付近の密度が中心付近と比べて大きくなることを考慮し、このような密度分布を考慮した上での最大密度を意味する。なお、当該木質層の表面密度が0.7g/cm未満である場合、優れた耐衝撃性が得られないおそれがある。
【0017】
本明細書における表面密度は、図2を参照し、下記の手順により測定した値である。
(1)木質層の平面方向(x方向)に一定量の放射線量のγ線を照射する。厚み1mmに対して25点(即ち図2のように木質層の厚みが12mmの場合には300点)となるように多点に連続的に照射する。
(2)木質層を透過したγ線の放射線量を測定及び記録する。
(3)木質層に照射したγ線の放射線量から(2)の透過後の放射線量を引くことによりγ線の透過損失量を算出する。
(4)上記(3)で算出したγ線の透過損失量を照射方向(x方向)の長さ(L)で割って単位長さ当りの透過損失量を算出する。
(5)既に密度が特定された樹脂板(標準試料:密度1g/cm)に対して(1)〜(4)の操作を行い、標準試料におけるγ線の単位長さ当りの透過損失量を算出する。
(6)木質層の単位長さ当りの透過損失量と標準試料の単位長さ当りの透過損失量を比較換算することにより、木質層の密度を算出する。
(7)算出された多点の密度(木質層の厚みが図2のように12mmの場合には300点)の最大値を表面密度とする。
【0018】
木質基材が2層以上の木質層からなる場合には、最表層を除いた残りの層(下層)の密度等は特に制限されない。
【0019】
木質基材の厚みは特に限定的ではないが、2〜15mm程度が好ましく、6〜12mm程度がより好ましい。
【0020】
≪化粧シート≫
木質基材上には化粧シートが積層されている。化粧シートとしては、基材シート、絵柄模様層及び表面保護層を順に有する限り、特に限定されない。以下、この化粧シートを例示的に説明する。
【0021】
本発明で用いる基材シートは、引張弾性率が1000MPa以上である。好ましい引張弾性率は1200MPa以上であり、さらに好ましくは1200〜6000MPaである。なお、上限値は限定されないが、6000MPa以上の時にロール化できない場合があったり、あるいはロール化した際、巻き癖が強く発生しまう場合があることがある。引張弾性率が1000MPa未満である場合、優れた耐傷性が得られないおそれがある。
【0022】
引張弾性率は、JIS K6734の規定に従って測定した値である。具体的には、引張試験機(テンシロン万能試験機RTC−1250A)を用いて、図3に示す形状に打ち抜かれた試験サンプル(基材シート)の両端(図3のA及びB)を、50mm/min.の速度で引っ張った場合の引張弾性率(MPa)を測定することにより求めた値である。
【0023】
基材シートとしては、例えば、熱可塑性樹脂により形成されたものが好適である。具体的には、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリアクリル酸エステル、ポリメタアクリル酸エステル等が挙げられる。これらの樹脂の中から、基材シートの引張弾性率が上記範囲になるように、適宜選択するか又は2種以上の樹脂を組み合わせて使用することができる。
【0024】
基材シートは、着色されていても良い。この場合は、上記のような熱可塑性樹脂に対して着色材(顔料又は染料)を添加して着色することができる。着色材としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄等の無機顔料、フタロシアニンブルー等の有機顔料のほか、各種の染料も使用することができる。これらは、公知又は市販のものから1種又は2種以上を選ぶことができる。また、着色材の添加量も、所望の色合い等に応じて適宜設定すれば良い。基材シートは透明であってもよいが、積層する木質基材を隠蔽する点を考慮すると、着色された基材シートが好ましい。
【0025】
基材シートには、必要に応じて、充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等の各種の添加剤が含まれていても良い。
【0026】
基材シートの厚さは、特に限定されないが、化粧シート断面の実加工において塗料の付着量を抑える、コストを抑える(省資源)等の観点から、100μm以下が好ましい。さらに好ましくは、40〜80μmである。下限値は限定されないが、貼り合わせる木質基材への隠蔽性を考慮した時、40μm程度である。
【0027】
また、基材シートの表面には、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の表面処理が施されていてもよい。
【0028】
絵柄層(絵柄模様層)は、柄インキ層及び/又はベタインキ層から構成される。絵柄層は、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷等の印刷法により形成できる。柄インキ層の模様は、例えば、木目模様、石目模様、布目模様、皮紋模様、幾何学模様、文字、記号、線画、各種抽象模様等が挙げられる。ベタインキ層は、着色インキのベタ印刷により得られる。絵柄層は、柄インキ層及びベタインキ層の片方又は両方から構成される。
【0029】
絵柄層に用いるインキとしては、ビヒクルとして、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂等を1種又は2種以上混合して用い、これに顔料、溶剤、各種補助剤等を加えてインキ化したものが使用できる。この中でも、環境問題、被印刷面との密着性等の観点より、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリアミド系樹脂等の1種又は2種以上の混合物が好ましい。
【0030】
絵柄層の上には、必要に応じてパターン状(例えば、導管模様)低艶印刷層を設けても良い。この低艶印刷層を設けた領域がこれ以外の領域に比べて低艶となり、目の錯覚によりその領域が凹部であるかのように認識される意匠となる。
【0031】
低艶印刷層に用いるインキとしては、ビヒクルとしてポリビニルアセタール系樹脂、ウレタン樹脂等を1種又は2種以上混合して用い、これに顔料、溶剤、各種補助剤等を加えてインキ化したものが使用できる。
【0032】
表面保護層は最表層であり、本発明では、表面保護層の厚さが15〜60μmであり、且つ、マルテンス硬さが90〜240N/mmである。なお、表面保護層の厚さは、耐傷性向上の観点から20μm以上が好ましく、また耐衝撃性の観点から40μm以下が好ましい。15μm未満である場合、優れた耐傷性が得られなかったり、60μmより厚い場合、優れた衝撃性が得られない可能性がある。また、マルテンス硬さは耐傷性の観点から140N/mm以上が好ましく、耐衝撃性の観点から210N/mm以下が好ましい。90N/mm未満である場合、優れた耐傷性が得られなかったり、240N/mmより大きい場合、優れた耐衝撃性が得られない場合がある。
【0033】
表面保護層のマルテンス硬さは、1)異なる硬さを有する2種以上の樹脂を混合する、2)樹脂にエラストマーを混合する等によって適宜調整することができる。また、後述の電離放射線硬化型樹脂を表面保護層に用いる場合には、1分子内に含まれる重合性官能基の数を変更したり異なる官能基数を有する樹脂を混合したりすることにより、マルテンス硬さを所望の値に調整することができる。
【0034】
なお、本明細書におけるマルテンス硬さは、表面皮膜物性試験機(PICODENTOR HM-500、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)を用いて測定される値であり、具体的な測定方法は次の通りである。この測定方法では、図1(a)に示されるダイヤモンド圧子(ビッカーズ圧子)を用いて、図1(b)に示すように測定試料にダイヤモンド圧子を押し込み、表面にできたピラミッド形のくぼみの対角線の長さからその表面積A(mm)を計算し、試験荷重F(N)を割ることにより硬さを求める。押し込み条件は、室温(実験室環境温度)において、図1(c)に示される通り、先ず0〜5mNまでの負荷を10秒間で加え、次に5mNの負荷で5秒間保持し、最後に5〜0mNまでの除荷を10秒間で行う。そして、表面積A、試験荷重Fに基づきF/Aにより求められる硬度が前記マルテンス硬さである。なお、本明細書では、表面保護層以外の層の硬度の影響を回避するために表面保護層の断面のマルテンス硬さを測定した。これに際し、化粧シートを樹脂(冷間硬化タイプのエポキシ2液硬化樹脂)で埋包し、室温で24時間以上放置して硬化させた後、硬化した埋包サンプルを機械研磨して表面保護層の断面を露出させ、当該断面に(無機充填材等の微粒子が表面保護層中に含まれる場合には当該微粒子を避けた位置に)ダイヤモンド圧子を押し込むことにより断面のマルテンス硬さを測定した。
【0035】
表面保護層を形成する樹脂としては、所定のマルテンス硬さが得られる範囲で適宜選択可能であるが、熱硬化型樹脂又は電離放射線硬化型樹脂(例えば、電子線硬化型樹脂)等の硬化型樹脂が好ましい。特に、電離放射線硬化型樹脂は高い表面硬度、生産性等の観点から好ましい。
【0036】
熱硬化型樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(2液硬化型ポリウレタンも含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。
【0037】
上記樹脂には、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤を添加することができる。例えば、硬化剤としてはイソシアネート、有機スルホン酸塩等が不飽和ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂等に添加でき、有機アミン等がエポキシ樹脂に添加でき、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物、アゾイソブチルニトリル等のラジカル開始剤が不飽和ポリエステル樹脂に添加できる。
【0038】
熱硬化型樹脂で表面保護層を形成する方法としては、例えば、熱硬化型樹脂の溶液をロールコート法、グラビアコート法等の塗布法で塗布し、乾燥・硬化させる方法が挙げられる。溶液の塗布量としては、固形分で概ね15〜60μm、好ましくは20〜40μm程度である。
【0039】
電離放射線硬化型樹脂は、電離放射線の照射により架橋重合反応を生じ、3次元の高分子構造に変化する樹脂であれば限定されない。例えば、電離放射線の照射により架橋可能な重合性不飽和結合又はエポキシ基を分子中に有するプレポリマー、オリゴマー及びモノマーの1種以上が使用できる。例えば、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等のアクリレート樹脂;シロキサン等のケイ素樹脂;ポリエステル樹脂;エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0040】
電離放射線としては、可視光線、紫外線(近紫外線、真空紫外線等)、X線、電子線、イオン線等があるが、この中でも、紫外線又は電子線が望ましい。
【0041】
紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯の光源が使用できる。紫外線の波長としては、190〜380nm程度である。
【0042】
電子線源としては、例えば、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器が使用できる。電子線のエネルギーとしては、100〜1000keV程度が好ましく、100〜300keV程度がより好ましい。電子線の照射量は、2〜15Mrad程度が好ましい。
【0043】
電離放射線硬化型樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するが、紫外線を照射して硬化させる場合には、光重合開始剤(増感剤)を添加することが好ましい。
【0044】
ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合の光重合開始剤は、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイト、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル−N,N−ジメチルアミノベンゾエート等の少なくとも1種が使用できる。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシスルホキソニウムジアリルヨードシル塩等の少なくとも1種が使用できる。
【0045】
光重合開始剤の添加量は特に限定されないが、一般に電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して0.1〜10質量部程度である。
【0046】
電離放射線硬化型樹脂で保護層を形成する方法としては、例えば、電離放射線硬化型樹脂の溶液をグラビアコート法、ロールコート法等の塗布法で塗布すればよい。溶液の塗布量としては、固形分として概ね15〜60μm、好ましくは20〜40μm程度である。
【0047】
電離放射線硬化型樹脂から形成された表面保護層に、耐擦傷性、耐摩耗性をさらに付与する場合には、無機充填材を配合すればよい。無機充填材としては、例えば、粉末状の酸化アルミニウム、炭化珪素、二酸化珪素、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、マグネシウムパイロボレート、酸化亜鉛、窒化珪素、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化鉄、窒化硼素、ダイヤモンド、金剛砂、ガラス繊維等が挙げられる。
【0048】
無機充填材の添加量としては、電離放射線硬化型樹脂100質量部に対して1〜80質量部程度である。
【0049】
化粧シートを構成する各層の積層は、例えば、基材シートの一方の面に絵柄層(ベタインキ層、柄インキ層)を順に印刷により形成後、表面保護層を形成する方法により行える。
【0050】
表面保護層側からエンボス加工を施すことにより凹凸模様を形成してもよいが凹凸形状は耐傷性を低下させる恐れがあるため形成しない方が好ましい。
【0051】
上記化粧シートを木質基板に積層する際は公知の接着剤が使用できる。接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、アイオノマー、ブタジエン・アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴム等を有効成分とする接着剤が挙げられる。接着剤層の厚さは限定的ではないが、0.1〜50μm程度が好ましい。
【0052】
≪その他≫
木質基材の裏面には、防湿フィルムを設けてもよい。防湿フィルムは、温度40℃、湿度90%における透湿度が7g/m・24時間以下のものが好ましく、透湿度が5g/m・24時間以下のものがさらに好ましい。
【0053】
防湿フィルムは特に限定されず、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン等のオレフィン系熱可塑性樹脂、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート等のエステル系熱可塑性樹脂などの合成樹脂製フィルムが使用できる。この中でも、特に少なくとも合成樹脂製基材層と蒸着層とを有するものが好ましい。以下、この態様について例示して説明する。
【0054】
合成樹脂製基材層としては、ポリエチレン,ポリプロピレン,エチレン−プロピレン共重合体,エチレン−ビニルアルコール共重合体,これらの混合物等のオレフィン系熱可塑性樹脂;ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート,ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合体,ポリカーボネート,ポリアリレート等のエステル系熱可塑性樹脂;ポリメタアクリル酸メチル,ポリメタアクリル酸エチル,ポリアクリル酸ブチル等のアクリル系熱可塑性樹脂;ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂等の非ハロゲン系熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0055】
合成樹脂製基材層は、一軸又は二軸方向に延伸したシートであっても、未延伸であってもよい。合成樹脂製基材層は、更に蒸着層が積層されることが好ましく、蒸着層が形成される基材としての位置付けから、機械的強度が強く、寸法安定性に優れるなどの理由から二軸方向に延伸したシートが好ましい。合成樹脂製基材層の厚さは、概ね9〜25μmが適当である。
【0056】
蒸着層としては、アルミニウムに代表される金属薄膜からなる無機物の蒸着層、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムに代表される無機酸化物薄膜からなる無機酸化物蒸着層が挙げられる。蒸着層は、真空蒸着法、プラズマ活性化化学反応蒸着法等の周知の蒸着法で、合成樹脂製基材層に形成される。より好ましくは、蒸着層が透明である無機酸化物蒸着層である。
【0057】
蒸着層のガスバリア性を一層向上させる目的で、蒸着層上に表面コート層を設けてもよい。表面コート層としては、ポリビニルアルコール系樹脂が挙げられる。また、一般式RM(OR(ただし、式中、R、Rは炭素数1〜8の有機基を表し、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数を表し、mは1以上の整数を表し、n+mはMの原子価を表す)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂及び/又はエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、更にゾル−ゲル法触媒、酸、水及び有機溶剤の存在下でゾルゲル法によって重縮合して調製される組成物が挙げられる。また、ポリビニルアルコール及びエチレン・ビニルアルコール共重合体を組み合わせることによって、ガスバリア性、耐水性、耐候性などが著しく向上する。上記組成物にはシランカップリング剤等を添加してもよい。これらの樹脂又は組成物を蒸着層上にロールコート法、グラビアコート法等の周知の塗布方法で塗布することにより表面コート層が得られる。表面コート層は蒸着層の保護層としても機能し、その厚さは概ね1〜10μmが適当である。
【0058】
上記合成樹脂製基材層及び/又は上記表面コート層は、必要に応じて、コロナ処理等の表面処理を施すことができる。このような表面処理によって、更に隣接層との接着強度を高めることができる。
【0059】
本発明では、合成樹脂製基材層と蒸着層との間、並びに防湿フィルムの片面又は両面に更にプライマー層を設けてもよい。従って、防湿フィルムの好適な態様は、例えば、「合成樹脂製基材層/プライマー層/蒸着層/表面コート層」の態様であり、更に、当該防湿フィルムの片面又は両面にプライマー層を設けた態様でも良い。
【0060】
これらのプライマー層は、合成樹脂製基材層と蒸着層との密着性を高めるためや、防湿フィルムを他の層に積層する際の密着性を高めるために設ける。
【0061】
このようなプライマー層に用いる樹脂としては、エステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、ニトロセルロース系樹脂等を挙げることができ、これらの樹脂は単独又は混合して使用できる。プライマー層の形成は、ロールコート法やグラビア印刷法等の適宜の塗布手段を用いて行える。
【0062】
この中でも、プライマー層は、(i)アクリル樹脂とウレタン樹脂との共重合体と(ii)イソシアネートとから形成するのが好ましい。即ち、(i)のアクリル樹脂とウレタン樹脂との共重合体は、末端に水酸基を有するアクリル重合体成分(成分A)、両末端に水酸基を有するポリエステルポリオール成分(成分B)、ジイソシアネート成分(成分C)を配合して反応させてプレポリマーとなし、該プレポリマーに更にジアミンなどの鎖延長剤(成分D)を添加して鎖延長することで得られるものである。この反応によりポリエステルウレタンが形成されると共にアクリル重合体成分が分子中に導入され、末端に水酸基を有するアクリル−ポリエステルウレタン共重合体が形成される。このアクリル−ポリエステルウレタン共重合体の末端の水酸基を(ii)のイソシアネートと反応させて硬化させて形成する。
【0063】
上記成分Aは、末端に水酸基を有する直鎖状のアクリル酸エステル重合体が用いられる。具体的には、末端に水酸基を有する直鎖状のポリメチルメタクリレート(PMMA)が耐候性(特に光劣化に対する特性)に優れ、ウレタンと共重合させるのが容易である点から好ましい。上記成分Aは、共重合体においてアクリル樹脂成分となるものであり、分子量5000〜7000(重量平均分子量)のものが耐候性、接着性が特に良好であるために好ましく用いられる。また、上記成分Aは、両末端に水酸基を有するもののみを用いてもよいが、片末端に共役二重結合が残っているものを上記の両末端に水酸基を有するものと混合して用いてもよい。
【0064】
上記成分Bは、ジイソシアネートと反応してポリエステルウレタンを形成し、共重合体においてウレタン樹脂成分を構成する。上記成分Bは、両末端に水酸基を有するポリエステルジオールが用いられる。このポリエステルジオールとしては、芳香族又はスピロ環骨格を有するジオール化合物とラクトン化合物又はその誘導体、又はエポキシ化合物との付加反応生成物、二塩基酸とジオールとの縮合生成物、及び、環状エステル化合物から誘導されるポリエステル化合物等を挙げることができる。上記ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、メチルペンテンジオール等の短鎖ジオール;1,4−シクロへキサンジメタノール等の脂環族短鎖ジオール等を挙げることができる。また、二塩基酸としては、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等を挙げることができる。ポリエステルポリオールとして好ましいのは、酸成分としてアジピン酸又はアジピン酸とテレフタル酸の混合物、特にアジピン酸が好ましく、ジオール成分として3−メチルペンテンジオール及び1,4−シクロへキサンジメタノールを用いたアジペート系ポリエステルである。
【0065】
上記プライマー層において、上記成分Bと上記成分Cとが反応して形成されるウレタン樹脂成分は、上記プライマー層に柔軟性を与え、接着性向上に寄与する。また、アクリル重合体からなるアクリル樹脂成分は、上記プライマー層において耐候性および耐ブロッキング性に寄与する。ウレタン樹脂において、上記成分Bの分子量は上記プライマー層に柔軟性を十分に発揮可能なウレタン樹脂が得られる範囲であればよく、アジピン酸又はアジピン酸とテレフタル酸の混合物と、3−メチルペンタンジオール及び1,4−シクロへキサンジメタノールからなるポリエステルジオールの場合、500〜5000(重量平均分子量)が好ましい。
【0066】
上記成分Cは、1分子中に2個のイソシアネート基を有する脂肪族又は脂環族のジイソシアネート化合物が用いられる。このジイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4(2,4,4)−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4’−シクロヘキシルジイソシアネート等を挙げることができる。ジイソシアネート成分としては、イソホロンジイソシアネートが物性及びコストの点で好ましい。上記の成分A〜Cを反応させる場合のアクリル重合体、ポリエステルポリオールおよび後述する鎖延長剤の合計の水酸基(アミノ基の場合もある)と、イソシアネート基の当量比はイソシアネート基が過剰となるようにする。
【0067】
上記の三成分A、B、Cを60〜120℃で2〜10時間程度反応させると、ジイソシアネートのイソシアネート基がポリエステルポリオール末端の水酸基と反応してポリエステルウレタン樹脂成分が形成されると共にアクリル重合体末端の水酸基にジイソシアネートが付加した化合物も混在し、過剰のイソシアネート基及び水酸基が残存した状態のプレポリマーが形成される。このプレポリマーに鎖延長剤として、例えば、イソホロンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のジアミンを加えてイソシアネート基を上記鎖延長剤と反応させ、鎖延長することでアクリル重合体成分がポリエステルウレタンの分子中に導入され、末端に水酸基を有する(i)のアクリル−ポリエステルウレタン共重合体を得ることができる。
【0068】
(i)のアクリル−ポリエステルウレタン共重合体に、(ii)のイソシアネートを加えると共に、塗布法、乾燥後の塗布量を考慮して必要な粘度に調節した塗布液となし、グラビアコート法、ロールコート法等の周知の塗布法で塗布することにより上記プライマー層を形成すればよいものである。また、(ii)のイソシアネートとしては、(i)のアクリル−ポリエステルウレタン共重合体の水酸基と反応して架橋硬化させることが可能なものであればよく、たとえば、2価以上の脂肪族ないし芳香族イソシアネートが使用でき、特に熱変色防止、耐候性の点から脂肪族イソシアネートが望ましい。具体的には、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートの単量体、これらの2量体、3量体などの多量体、或いは、これらのイソシアネートをポリオールに付加した誘導体(アダクト体)のようなポリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0069】
なお、上記プライマー層の乾燥後の塗布量としては、1〜20g/mであり、好ましくは1〜5g/mである。また、上記プライマー層は、必要に応じてシリカ粉末などの充填剤、光安定剤、着色剤等の添加剤を添加した層としてもよいものである。
【0070】
防湿フィルムを木質基材の上に積層する際は、公知の接着剤が使用できる。接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、アイオノマー、ブタジエン・アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴム等を有効成分とする接着剤が挙げられる。接着剤層の厚さは限定的ではないが、0.1〜50μm程度が好ましい。
【0071】
本発明の床用化粧材は、各種建築物の床面に施工する床用化粧材及び特殊用途として床暖房用途に用いる床用化粧材として適している。
【発明の効果】
【0072】
本発明の床用化粧材は、特に、木質基材のうち化粧シートと接している木質層の表面密度が0.7g/cm以上であり、基材シートの引張弾性率が1000MPa以上であり、更に表面保護層の厚さが15〜60μmであり、且つ、表面保護層のマルテンス硬さが90〜240N/mmであることにより、薄膜化された単層表刷り化粧シートを使用した場合においても、耐傷性及び耐衝撃性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本明細書におけるマルテンス硬さの測定に用いるダイヤモンド圧子(a)、押し込み操作の模式図(b)及び押し込み荷重と変位の一例(c)を示す図である。
【図2】本明細書における表面密度の算出に用いる木質層に対するγ線の照射方向及び点数(a)、表面密度の概念の一例(b)を示す図である。なお、図2は厚さ12mmの木質層を用いた場合の例示であり、12mmであるため(a)では300点でγ線の照射を行っている。また、(b)は当該300点で測定した密度を、横軸(厚み方向z)及び縦軸(密度g/cm)で表した図である。
【図3】試料の引張弾性率を測定する場合の、試料の形状を示す模式図(上面図)である。図中、R60は湾曲の程度を指す。
【発明を実施するための形態】
【0074】
以下に実施例及び比較例を示して本発明をより詳しく説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0075】
実施例1
引張弾性率が1200MPaであって、厚さが80μmである着色ホモプロピレンフィルム(基材シート)の裏面に、プライマー層(裏面プライマー層)を設けた。次に、基材シートのおもて面に絵柄模様層を印刷により形成し、更に当該絵柄模様層上に下記組成を主成分とする電離放射線硬化型樹脂をロールコート方式により30μm塗工し、次いで酸素濃度200ppm以下の環境下において電子線照射装置を用いて、加速電圧175keV、5Mradの条件で電子線を照射して硬化させることで表面保護層を形成し、化粧シートを作製した。表面保護層の断面方向のマルテンス硬さは140N/mm(10点の測定の平均値)であった。
・2官能ウレタンアクリレートオリゴマー 70質量部
(重量平均分子量:1500、 Tg(ガラス転移温度):25℃、 ポリオール成分がポリエステルジオール)
・6官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー 30質量部
(重量平均分子量:1500、 Tg(ガラス転移温度):200℃以上、 共栄社化学株式会社製)
・マット剤(11μmシリカ) 14質量部
表面密度が1.0g/cmであって、厚さが12mmであるパーティクルボード(木質基材)に、接着剤を介して上記で作製した化粧シートを貼り合わせて、床用化粧材を作製した。
【0076】
実施例2〜14及び比較例1〜6
実施例1の各オリゴマーの含有量を調整したり、各層の構成を変更することにより、表1〜2に示される通りの床用化粧材を作製した。なお、表中、PPはポリプロピレン、PETはポリエチレンテレフタレート、PBはパーティクルボード、MDFは中密度木質繊維板を意味する。
【0077】
試験例1(コインスクラッチ試験)
コイン(10円玉)2枚を45°の角度で接するようにセットし(2点支持)、試験機を各床用化粧材上で移動させた。試験機の荷重(錘)を3kg、5kgまたは7kgとし、試験機を水平方向に引き摺った際における床用化粧材表面の柄取られの有無を評価した。なお、柄取られとは、絵柄模様層まで傷が到達し、目視上、絵柄が消失したように見える状態を言う。評価基準は、次の通りであり、△以上が合格である。
◎:7kg荷重でも著しい柄取られが発生しない
○:7kg荷重で著しい柄取られが発生し、5kg荷重では著しい柄取られが発生しない
△:7kg荷重で著しい柄取られが発生し、3kg荷重では著しい柄取られが発生しない
×:3kg荷重で著しい柄取られが発生する
試験例2(鋼球落下試験)
質量286g、直径4cmの鋼球を100cmの高さから試験片に落下させ、表面割れの有無を評価した。評価基準は、次の通りである。
○:表面割れが発生しない
×:表面割れが発生する
試験例3(鋼球落下試験)
質量286g、直径4cmの鋼球を100cmの高さから試験片に落下させ、凹み量を評価した。なお、試験例3については、実施例12〜14及び比較例6に対してのみ行った。評価基準は、次の通りである。
○:凹み量が300μm未満
×:凹み量が300μm以上
各評価結果を表1及び2に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質基材上に化粧シートが積層された床用化粧材であって、
(1) 前記木質基材は、1層の木質層又は2層以上の木質層からなり、前記化粧シートと接している木質層の表面密度が0.7g/cm以上であり、
(2) 前記化粧シートは基材シート、絵柄模様層及び表面保護層を順に有し、
(3) 前記基材シートの引張弾性率が1000MPa以上であり、
(4) 前記表面保護層の厚さが15〜60μmであり、
(5) 前記表面保護層のマルテンス硬さが90〜240N/mmである、
床用化粧材。
【請求項2】
前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂を含有する、請求項1に記載の床用化粧材。
【請求項3】
前記表面保護層は、電子線硬化型樹脂を含有する、請求項1又は2に記載の床用化粧材。
【請求項4】
前記基材シートの引張弾性率が1200MPa以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の床用化粧材。
【請求項5】
前記表面保護層の厚さが20〜40μmである、請求項1〜4のいずれかに記載の床用化粧材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−72206(P2013−72206A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211383(P2011−211383)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】