説明

床面施工法、床面施工装置及び床面構造

【課題】固化後のコンクリート表面の脆化や剥離が発生せず、極めて高強度のコンクリート床面を形成することができる床面施工技術を提供する。
【解決手段】固化前に床面施工装置10の粗化部材52で引き掻いて複数の溝53を形成したコンクリート表面C2にコンクリート改質剤を散布した後、ローラ式の転圧装置を用いてコンクリート表面を転動加圧することによって締め固め、コンクリート表面が適度に硬化した時点で床面仕上げ装置を用いて加圧均し及び表面平滑化を行うことによってコンクリートの表層部分に硬化層を形成する。コンクリート表面のレイタンスが改質剤と共にコンクリート表面より下方へ拡散浸透して埋没し、コンクリート中のカルシウムと改質剤との化学反応により生成した緻密な硬化層がコンクリートの表層部分に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート建設物や構造体などのコンクリート床面の施工技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート床面の施工において、床面に打設された後、固化前のコンクリート表面にはブリージング現象によってレイタンスが生じることが多い。レイタンスは、セメント中の石灰石の微粒子や骨材の微粒が、ブリージングとともにコンクリート面に上昇して形成された層膜状の物質である。
【0003】
表面均し作業後のコンクリート表面にレイタンスが存在する状態のまま、その後の仕上げ作業を行うと、固化した後のコンクリート表面の表層部分に、極めて脆く、簡単に割れたり、剥離したりする部分が生じることがある。
【0004】
そこで、このような弊害を防止するため、打設後のコンクリート表面に生じたレイタンスを除去する技術が提案されている(例えば、特許文献1,2,3参照。)。また、固化後のコンクリート表面に強化剤を塗布してコンクリート表面をポリマー化(ポリマーコーティング)することにより、表層部分の脆化や剥離を防止する工法も採用されている。
【0005】
一方、コンクリート色以外の色彩を有するコンクリート床面を形成する工法として、従来、固化前のコンクリート表面に粉粒状の着色剤を散布する工法、固化後のコンクリート表面に着色顔料を含有するワックスを繰り返し塗着する工法(例えば、特許文献4参照。)あるいは生乾き状態のコンクリート表面に塗料を塗る工法(例えば、特許文献5参照。)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−305506号公報
【特許文献2】実開平6−30213号公報
【特許文献3】特開2000−319853号公報
【特許文献4】特開2005−256483号公報
【特許文献5】特開2006−88106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
コンクリート床面施工において特許文献1〜3に記載された技術を採用しても、レイタンスを完全に除去することはできないので、コンクリート表面に残存したレイタンスによるコンクリート床面の表層部分の脆化、剥離の発生を回避することができない。
【0008】
また、固化後のコンクリート表面に表面強化材を塗布する工法は、コンクリート表面のごく薄い領域しか強化されないので、前述と同様、コンクリート表面の脆化、剥離の発生を回避することができない。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、固化した後のコンクリート表面の脆化、剥離が発生せず、極めて高強度のコンクリート床面を形成することができる床面施工技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の床面施工法は、固化前のコンクリート表面にコンクリート改質剤を散布し、固化させることを特徴とする。
【0011】
このような構成とすれば、コンクリートの固化に伴い、緻密な硬化層がコンクリートの表層部分に形成されるため、固化後のコンクリート表面の脆化、剥離が発生せず、極めて高強度のコンクリート床面を形成することができる。その理由については不明な部分も多いが、固化前のコンクリート表面に生じた層膜状のレイタンスがコンクリート改質剤と共にコンクリート表面から拡散浸透して埋没した状態となることによりレイタンスの弊害が防止されるとともに、コンクリート中のカルシウムとコンクリート改質剤との化学反応により生成したガラス状物質を含む緻密な硬化層がコンクリートの表層部分に形成されるためではないかと推測される。
【0012】
また、床面施工法においては、固化前のコンクリート表面にコンクリート改質剤を散布する工程と、前記コンクリート改質剤が散布されたコンクリート表面を加圧する工程とを備えることが望ましい。
【0013】
コンクリート改質剤が散布されたコンクリート表面を加圧することにより、固化前のコンクリート表面に対するコンクリート改質剤の浸透性が高まるだけでなく、コンクリート内に残存する空隙を無くすことができるため、高強度の硬化層を形成することができる。
【0014】
ここで、前記コンクリート改質剤を散布する前に、固化前のコンクリート表面を粗化する工程を設けることが望ましい。
【0015】
このような粗化工程を設ければ、コンクリート表面に存在する層膜状のレイタンスが分断、破砕されるとともに、コンクリート表面の粗化された部分へコンクリート改質剤が流れ込むことによってレイタンスの埋没が促進され、コンクリート改質剤がより深い部分まで浸透するため、硬化層の厚みを増大させることができる。
【0016】
この場合、固化前のコンクリート表面を、これより硬質の部材で引き掻くことにより表面を粗化することができる。
【0017】
このような構成とすれば、固化前のコンクリート表面に存在する層膜状のレイタンスを破砕しながら粗化することができるので、コンクリート改質剤の浸透性が高まり、レイタンスの埋没も促進され、硬化層の強度向上に有効である。
【0018】
一方、固化前のコンクリート表面に、これより硬質の部材を押圧することにより表面を粗化することもできる。
【0019】
このような構成とすれば、固化前のコンクリート表面に存在する層膜状のレイタンスを分断若しくは突き破りながら粗化することができるので、コンクリート改質剤の浸透性が高まり、レイタンスの埋没も促進され、硬化層の強度向上に有効である。
【0020】
さらに、前記コンクリート改質剤が散布されたコンクリート表面をローラ式の転圧装置で加圧することが望ましい。
【0021】
このような構成とすれば、転圧装置のローラの加圧力によりコンクリートの表層部分が締め固められ、緻密化されるため、硬化層の強度向上に有効であるとともに、コンクリート表面の凹凸や不陸を無くすことができる。
【0022】
ここで、前記コンクリート改質剤は、エチレン酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、スチレンブタジエンゴムラテックスのポリマーディスパージョンを単数あるいは複数種類含有するものが望ましい。
【0023】
このようなコンクリート改質剤を使用すれば、コンクリート中の成分と反応することにより、コンクリートの表層部分に緻密で強度の高い硬化層を形成することができる。なお、ゴムラテックスとして、前記スチレンブタジエンゴムのほかに、天然ゴムラテックス、クロロプレンゴム、メタクリル酸メチルブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴムを使用することができ、熱可塑性樹脂エマルションとして、前記エチレン酢酸ビニルやポリアクリル酸エステルのほかに、スチレンアクリル酸エステル、ポリプロピオン酸ビニル、ポリプロピレン、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニルバーサテートなどを使用することができ、熱硬化性樹脂エマルションとして、エポキシ樹脂を使用することができ、歴性質エマルションとして、アスファルト、ゴムアスファルト、パラフィンなどを使用することもできる。
【0024】
一方、前記コンクリート改質剤に着色剤を含有させることもできる。
【0025】
このような構成とすれば、固化した後のコンクリート表面の脆化、剥離の発生を防止するとともに、有色のコンクリート床面を形成することができる。
【0026】
次に、本発明の床面施工装置は、固化前のコンクリート表面に沿って移動させながら施工を行う装置であって、コンクリート表面に凹部を形成する手段、コンクリート表面にコンクリート改質剤を散布する手段若しくはコンクリート表面を加圧する手段のうちの2以上の前記手段を備えたことを特徴とする。
【0027】
このような構成とすれば、前記床面施工装置を、コンクリート表面に沿って移動させるだけで、コンクリート表面の粗化、コンクリート改質剤の散布若しくはコンクリート表面の加圧という3つの作業のうちの2以上を連続的に行うことができるため、作業効率を向上させることができる。
【0028】
次に、本発明の床面構造は、コンクリート床面の表層部分に、コンクリート改質剤が混在する硬化層または着色剤を含有するコンクリート改質剤が混在する有色硬化層を設けたことを特徴とする。ここで、硬化層、有色硬化層の厚さは1mm〜30mm程度であることが望ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、固化した後のコンクリート表面の脆化、剥離が発生せず、極めて高強度のコンクリート床面を形成することができる床面施工技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態である床面施工装置を示す斜視図である。
【図2】図1におけるA−A線断面図である。
【図3】本発明の実施形態である床面施工法の一部をなす散布工程を示す断面図である。
【図4】床面施工法において使用する転圧装置を示す斜視図である。
【図5】図4に示す転圧装置の使用状態を示す図である。
【図6】その他の実施形態である転圧装置を示す斜視図である。
【図7】床面施工法において使用する床面仕上げ装置を示す側面図である。
【図8】本発明の第2実施形態である床面施工装置を示す斜視図である。
【図9】図8に示す床面施工装置の使用状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1〜図3に基づいて本発明の第1実施形態である床面施工装置及び床面施工法について説明する。図1に示すように、床面施工装置10は、コンクリート打設後、固化前のコンクリート表面を粗化する際に使用する装置である。床面施工装置10は、軸心同士が同一の仮想平面上で互いに平行をなすように配置された3本の加圧ローラ11,12,13と、加圧ローラ11,12,13の両端部をそれぞれ回転自在に保持する一対の保持部材14と、左右の保持部材14の間にローラ11,12,13と平行に配置された平板状の連接部材15と、加圧ローラ11〜13が転動通過する前のコンクリート表面に摺動可能に接触するブラシ18と、加圧ローラ11〜13が転動通過した後のコンクリート表面に複数の溝53を形成する熊手状の粗化部材52と、連接部材15の上面に取り付けられた操作ハンドル19と、を備えている。
【0032】
操作ハンドル19は、作業者が手で把持する水平部19hと、水平部19hの左右から連接部材15に向かって延設された連結部19aと、連結部19a同士を繋ぐ水平補強部19bと、で形成され、連接部材15の上面に接合部材16を介して取り付けられたL字状の連結部材29に対し、連結部19aの前端部が着脱可能に取り付けられている。
【0033】
なお、床面施工装置10において、粗化部材52が取り付けられている方向を前方(または正面)といい、ブラシ18が取り付けられている方向を後方(または背面)といい、操作ハンドル19の後方に、連接部材15に向かった姿勢で起立した作業者を基準に上下及び左右を表示する。
【0034】
加圧ローラ11,12,13は外周面が滑らかな金属で形成された同じサイズの円筒状部材である。加圧ローラ11,12,13は、それぞれの左右両端に突設された支軸11s,12s,13s及び軸受け11a,12a,13aを介して、保持部材14の左右に固着された一対の側面部材14sにそれぞれ回転自在に取り付けられている。
【0035】
保持部材14は、前述した左右一対の側面部材14sと、側面部材14sの前端部同士を連接する正面部材14fと、で形成された平面視略コ字状の部材であり、側面部材14sの後端部同士を連結するように、長尺のブラシ18が着脱可能に取り付けられている。
【0036】
保持部材14の正面材14fの前方に、複数の蝶番20介して、断面L字状の補強部材21が正面材14fと平行に取り付けられ、この補強部材21に沿って粗化部材52が着脱可能に取り付けられている。粗化部材52には、その長手方向(左右方向)に沿って複数の爪材51が所定間隔をおいて配列されている。粗化部材52は補強部材21とともに蝶番20を中心に上下に回動自在であり、保持部材14の正面材14fと補強部材21とが倒立V字状のリンク機構23によって連接されている。リンク機構23に先端部が係止された操作ワイヤ25の基端部が、操作ハンドル19に設けられた操作桿24に係止されている。
【0037】
操作桿24をシリンダ24sに沿って前後移動させると操作ワイヤ25が出入し、これによって粗化部材52が蝶番20を中心に上下回動する。操作桿24をシリンダ24sの前方にセットすると、粗化部材52の爪材51の先端がコンクリート表面に接した状態となり、操作桿24をシリンダ24sに沿って後方に引っ張った後、右側方に倒して操作桿24の基端部をシリンダ24sの湾状部24bに嵌入させると、粗化部材52の爪材51の先端がコンクリート表面から離れた状態でロックされる。
【0038】
補強部材21の左右に立設された一対の支柱26にはフランジ状のストッパ27及び緩衝材28が設けられ、緩衝材28の上面側に重錘22が着脱可能に取り付けられている。重錘22は、粗化部材52の爪材51の先端をコンクリート表面に向かって押圧するためのものであり、重錘22の種類や個数を変更することにより、コンクリート表面に対する爪材51の押圧力を調節することができる。なお、重錘22を使用せず、操作ハンドル19に設けたグリップ状の引っ張り手段と粗化部材52とをワイヤで連結し、引っ張り手段に加えた力によって爪材51の押圧力を発生させる機構を採用することもできる。
【0039】
作業対象である固化前のコンクリート表面C1上に床面施工装置10を持ち込み、操作桿24をシリンダ24sの前方にセットすると、重錘22の作用により粗化部材52が下降して爪材51の先端がコンクリート表面C1に刺し込まれる。この状態で作業者が操作ハンドル19を握って後方に引っ張れば、加圧ローラ11,12,13が転動しながら、粗化部材52が後方へ移動し、コンクリート表面C1に複数の溝53が形成される(粗化工程)。この場合、溝53は一定方向の略直線状のものに限定しないので、溝53と交差する方向の溝を追加的に形成したり、曲線状の溝を形成したりすることもできる。
【0040】
図2に示すように、粗化工程において複数の溝53が形成された後のコンクリート表面C2においては、固化前のコンクリート表面C1に生じていた層膜状のレイタンス54が複数の溝53によって分断、破砕された状態となる。溝53の深さは限定しないが、少なくとも1mm〜30mm程度を確保することが望ましい。
【0041】
次に、図3に示すように、粗化工程を終えたコンクリート表面C2に対し液状のコンクリート改質剤55(以下、「改質剤55」という。)を万遍なく散布する。これにより、改質剤55はコンクリート表面C2及び溝53内面を通してコンクリートの表層部分へ浸透する。このとき、分断、破砕された状態にあるレイタンス54は改質剤55に伴ってコンクリート中に埋没される。
【0042】
改質剤55の散布が終わったら、図4に示すようなローラ式の転圧装置30を用いてコンクリート表面C3を加圧する。図5に示すように、コンクリート表面C3上に置いた転圧装置30を後方(矢線R1方向)に移動させると、転圧装置30に設けられた回動自在な3本の加圧ローラ11,12,13でコンクリート表面C3が転動加圧される。これにより、改質剤55とコンクリートとが一体化し、コンクリートの表層部分が締め固められ、緻密化され、固化後のクラックの原因となるブリージングの通り道(空隙)を消失させることができ、コンクリート表面C3の凹凸や不陸を無くすことができる。
【0043】
ここで、図4,図5に基づいて転圧装置30について説明する。なお、転圧装置30において、前述した床面施工装置10と共通する構造、機能を有する部分については、図1中の符号と同じ符号を付して説明を省略する。
【0044】
図4,図5に示すように、転圧装置30は、加圧ローラ11〜13が転動通過する前のコンクリート表面C3に摺動可能に接触するブラシ18と、加圧ローラ11〜13が転動通過した後のコンクリート表面C4に摺動可能に接触する平板状の仕上げ鏝17と、を備えている。ブラシ18はコンクリート表面C3のレイタンス54を破砕したり、改質剤55を拡散させたりする作用を有し、仕上げ鏝17はコンクリート表面C4を平滑化する作用を有する。
【0045】
転圧装置30は、加圧ローラ11,12,13及びブラシ18と、加圧ローラ11〜13が転動通過した後のコンクリート表面C4に摺動可能に接触する平板状の仕上げ鏝17とを備えている。
【0046】
保持部材14の正面材14fの前方に、複数の蝶番20介して正面材14fと平行に取り付けられた補強部材21に沿って仕上げ鏝17が着脱可能に取り付けられている。仕上げ鏝17は補強部材21とともに蝶番20を中心に上下に回動自在であり、保持部材14の正面材14fと補強部材21とが倒立V字状のリンク機構23により連接されている。リンク機構23に先端部が係止された操作ワイヤ25の基端部が、操作ハンドル19に設けられた操作桿24に係止されている。
【0047】
操作桿24をシリンダ24sに沿って前後移動させると操作ワイヤ25が出入し、これによって仕上げ鏝17が蝶番20を中心に上下回動する。操作桿24をシリンダ24sの前方にセットすると仕上げ鏝17が下降してコンクリート表面に接触した状態となり、操作桿24をシリンダ24sに沿って後方に引っ張った後、右側方に倒して操作桿24の基端部をシリンダ24sの湾状部24bに嵌入させると、仕上げ鏝17が上昇してコンクリート表面から離れた状態でロックされる。
【0048】
重錘22の種類や個数を変更することにより、コンクリート表面に対する仕上げ鏝17の押圧力を調節することができる。仕上げ鏝17は弾性変形可能な金属板で形成されているため、仕上げ鏝17は重錘22の重さに応じて床面を弾性的に押圧することができる。なお、重錘22を使用せず、操作ハンドル19に設けたワイヤ引っ張り手段により仕上げ鏝17の押圧力を発生させる機構を採用することもできる。
【0049】
図5に示すように、作業対象であるコンクリート表面C3上に転圧装置30を持ち込み、作業者が操作ハンドル19を握って後方(矢線R1方向)へ引っ張れば、加圧ローラ11,12,13が転動しながら転圧装置30全体が移動し、コンクリート表面C3上を順番に転動通過していく複数の加圧ローラ11,12,13により、コンクリート表面C3の不陸が解消され、容易に平準化することができる。また、複数の加圧ローラ11,12,13の加圧作用により、コンクリート表面C3が強く締め固められ、コンクリート中の空隙をなくすことができるため、コンクリート固化後のクラック発生も防止することができる。
【0050】
転圧装置30は3本の加圧ローラ11,12,13を備えているが、加圧ローラの本数は特に限定しないので、施工条件に応じて任意に設定することができるが、作業性、操作性、搬送性、収納性などを考慮すると3本〜5本程度が好適である。
【0051】
また、加圧ローラ11,12,13が転動通過する前のコンクリート表面C3をブラシ18が摺動することにより、コンクリート表面C3上のレイタンス54を破砕、拡散させたり、コンクリート表面C3の凹凸を消したりすることができる。なお、ブラシ18を保持部材14の前方(例えば、正面材14fと仕上げ鏝17との間)に設けることにより、加圧ローラ11,12,13が転動通過した後のコンクリート床面F2に摺動可能に接触する構成とすることもできる。なお、ブラシ18は保持部材14に着脱可能であるため、作業状況に応じて、取り外しておくこともできる。
【0052】
さらに、転圧装置30は、加圧ローラ11,12,13が転動通過した後のコンクリート表面C4に摺動可能に接触する仕上げ鏝17を備えているため、加圧ローラ11,12,13の転動により不陸が解消されたコンクリート表面C4は、当該コンクリート表面C4に沿って摺動していく仕上げ鏝17の滑動作用によってさらに平滑化される。仕上げ鏝17は、矢線R方向へ移動していく際に、重錘22による押圧力でコンクリート表面C3を押圧していくが、蝶番20を中心に仕上げ鏝17が回動自在であるため、保持部材14の振動や揺動の影響を受けることなく、コンクリート表面C3を仕上げていくことができる。
【0053】
なお、転圧装置30は手動操作のみでコンクリート表面C3を加圧するものであるが、図6に示すような動力式の発振手段16を備えた転圧装置40を使用して、加圧ローラ11,12,13を振動させながらコンクリート表面C3に対する加圧作業を行うこともできる。
【0054】
図6に示すように、転圧装置40は、転圧装置30の連接部材15上に発振手段16を設けた構造を有している。発振手段16は、原動機16eと、振動発生機16bと、原動機16eの回転力を振動発生機16bに伝えるベルト16vと、を備えている。振動発生機16bに内蔵されている偏心回転体(図示せず)が原動機16eの駆動によって回転することにより振動が発生する。
【0055】
また、原動機16eの出力回転数を増減するためのスロットルレバー16tが操作ハンドル19に取り付けられ、このスロットルレバー16tを操作することによって振動発生機16bの振動出力を調節することができる。連接部材15は、前後方向(加圧ローラ11,12,13の転動方向)の断面が略コ字状をした厚さ2〜5mm程度の金属板で形成され、発振手段16が発生する振動によって当該連接部材15が共振しやすい材質、形状を具備している。その他の部分の構造、機能は転圧装置30と同じであるため、図4中の符号と同符号を付して説明を省略する。
【0056】
図5に示す転圧装置30と同様に、コンクリート表面C3上に転圧装置40を持ち込み、発振手段16を作動させ、スロットルレバー16t(図6参照)を調節して振動部材15にその固有振動を与えると、振動部材15に共振が生じ、激しく振動するとともに、この振動が保持部材14左右の側面材14sから軸受け11a,12a,13a及び支軸11s,12s,13sを介して加圧ローラ11,12,13に伝えられる。
【0057】
これにより、各加圧ローラ11,12,13も激しく振動する状態となるが、当該転圧装置40はコンクリート表面C3に沈下することなく保持されるので、作業者が操作ハンドル19を握って後方に引っ張れば、加圧ローラ11,12,13が回転しながら転圧装置40全体が後方へ移動する。なお、スロットルレバー16tを操作して原動機16eの回転数を増減させると、振動部材15が激しく振動する状態(スロットルレバー16tのセット位置)が見つかるので、連接部材15を容易に固有振動状態に設定することができる。
【0058】
これにより、コンクリート表面C3上を順番に転動通過していく複数の加圧ローラ11,12,13の激しい振動加圧作用により、コンクリート表面C3の不陸が解消され、容易に平滑化することができる。また、複数の加圧ローラ11,12,13の振動加圧作用により、コンクリートが強く締め固められ、コンクリート中の空隙も消失するため、コンクリート固化後のクラック発生も防止することができる。
【0059】
なお、図4に示す転圧装置30または図6に示す転圧装置40による加圧作業の代わりに、若しくは前記加圧作業と前後して、動力で振動する均し板を有する表面均し装置を用いた平準化作業を行うこともできる。前記表面均し装置は限定しないが、例えば、硬化前のコンクリート表面上を滑動可能な均し板と、前記均し板に振動を与えて共振させるため当該均し板上に回転自在に軸支された偏心回転体と、前記均し板上の前記偏心回転体から離れた位置に取り付けられた原動機と、前記原動機の回転を前記偏心体に伝えるベルトと、前記均し板に取り付けられた操作ハンドルと、を備えた表面均し装置を使用することが望ましい。
【0060】
図4に示す転圧装置30や図6に示す転圧装置40による加圧作業あるいは前述した表面均し装置による平準化作業が終わったら、次に、垂直軸を中心にプロペラ状に回転する回転鏝と、この垂直軸を駆動する原動機と、を有する床面施工機(例えば、「トロウェル」などと呼ばれる機材。)を用いてコンクリート表面に対する加圧平準化作業を行う。
【0061】
前記床面施工機(図示せず)による加圧平準化作業が終わり、コンクリート表面が適度な硬さ(例えば、作業者が専用履物を履いてコンクリート表面に入ったとき僅かな足跡しか残らない程度の硬さ)まで固化したら、図7に示すような床面仕上げ装置50を用いて仕上げ作業を行う。床面仕上げ装置50の詳しい構造、機能などについては後述する。
【0062】
図7に示すように、適度な硬さになったコンクリート表面C5上に床面仕上げ装置50を持ち込み、原動機3を始動して平面均し機5の回転鏝4を回転させ、仕上げ鏝8の方を向いた姿勢で操作ハンドル9側に立った作業者が操作ハンドル9を両手で握ったまま後退することにより、回転鏝4が仕上げ鏝8より先行する状態を保ちながら、床面仕上げ装置30全体をコンクリート表面C5に沿って矢印R2方向へ水平移動させていく。これにより、回転しながらコンクリート表面C5上を移動していく回転鏝4でコンクリート表面C5の加圧均しが行われ、その後に続いて、コンクリート表面C6上を摺動していく仕上げ鏝8によって最終仕上げが行われる。
【0063】
床面仕上げ装置50による最終仕上げ作業が終了すると、コンクリートの硬化に伴い、緻密な硬化層がコンクリートの表層部分に形成されるため、固化後のコンクリート表面の脆化、剥離が発生せず、極めて高強度のコンクリート床面を形成することができる。
【0064】
固化前のコンクリート表面C1を粗化して強化剤55を散布し、固化させることにより、固化後のコンクリート表面の脆化、剥離が発生せず、極めて高強度のコンクリート床面を形成することができる理由については不明な部分も多いが、固化前のコンクリート表面C1に存在する層膜状のレイタンス54が粗化工程で破砕、分断された後、改質剤55と共にコンクリート表面C1より下方へ拡散浸透して埋没されることでレイタンスの弊害が防止されるとともに、コンクリート中のカルシウムと改質剤55との化学反応により生成したガラス状物質を含む緻密な硬化層がコンクリートの表層部分に形成されるためではないかと推測される。
【0065】
本実施形態では、改質剤55を散布する前に、固化前のコンクリート表面C1を床面施工装置10で粗化する工程を設けたことにより、コンクリート表面C1の粗化された部分(溝53)へ改質剤55が流れ込み、コンクリート表面C1より深い部分まで浸透するため、硬化層の厚みを増大させることができる。なお、図1に示す粗化工程を省略し、固化する前のコンクリート表面C1に改質剤55を散布した後、加圧して固化させることもできる。
【0066】
また、固化前のコンクリート表面C1を、これより硬質の複数の爪材51で引き掻いて粗化することにより、固化前のコンクリート表面C1に存在する層膜状のレイタンス54を分断、破砕することができるので、改質剤55の浸透性が高まり、硬化層の強度向上に有効である。なお、固化前のコンクリート表面C1を粗化する方法は限定しないので、床面施工装置10のほかに、ブラシ、刷毛、櫛状器具あるいは回転ブラシなどを用いてコンクリート表面C1を粗化することも可能であり、前述と同様の作用効果を得ることができる。
【0067】
また、改質剤55が散布されたコンクリート表面C3を転圧装置30(または40)で加圧することにより、固化前のコンクリート表面に対する改質剤55の浸透性が高まるとともに、コンクリート内に残存する空隙をなくすことができるため、極めて高強度の硬化層を形成することができる。さらに、加圧ローラ11,12,13の加圧力でコンクリートの表層部分が締め固められ、緻密化されるため、硬化層の強度向上に有効であるとともに、コンクリート表面C3の凹凸や不陸を無くすことができる。
【0068】
本実施形態では、改質剤55として、ポリアクリル酸エステルのエマルションを含む改質剤を使用したところ、コンクリート中の成分との反応により、コンクリートの表層部分に緻密で強度の高い硬化層を形成することができた。また、前述した床面施工法によって形成された床面構造においては、コンクリート床面の表層部分に、改質剤が混在する、厚さ1mm〜30mm程度の硬化層を形成することができた。なお、改質剤55は、エチレン酢酸ビニルあるいはスチレンブタジエンゴムラテックスなどのポリマーディスパージョンを単数若しくは複数含有するものを使用することも可能であり、前述と同様の作用効果を得ることができる。
【0069】
一方、改質剤55に予め着色剤(有機顔料や無機顔料など)を含有させたものを使用して、前述した床面施工法を実施すれば、着色剤に応じた色彩を有し、且つ、表層部分に極めて高強度の硬化層を備えたコンクリート床面を形成することができる。また、改質剤55に予め着色剤を含有させることにより、従来の着色剤散布工程が不要となるので、散布作業中の着色剤の飛散をなくすことができ、労力、着色剤散布に起因するコンクリート表面の脆化も生じない。
【0070】
次に、図7に基づいて床面仕上げ装置50について説明する。図7に示すように、床面仕上げ装置1は、コンクリート表面C5に接触しながら原動機3の駆動力でプロペラ状に回転する複数の回転鏝4を有する平面均し機5と、この平面均し機5に連結機構6を介して連結された状態で、回転鏝4の回転面の外周領域の一部に配置された平板状の仕上げ鏝8を備えている。平面均し機5の仕上げ鏝8と反対側の位置には、作業者が床面仕上げ装置1を操作するための操作ハンドル9が設けられている。なお、以下の説明中において、「前」、「後」、「左」、「右」および「上」、「下」という表現は、床面仕上げ装置50の操作ハンドル9側に立ち、仕上げ鏝8に向かって起立した作業姿勢をとった作業者を基準にしたものである。
【0071】
平面均し機5の原動機3の前方部分には逆L字状の支柱31が立設され、この支柱31の垂直部分の上下2カ所にフック32が設けられている。支柱31の垂直部分は回転鏝4の回転軸心Yと平行をなすように配置されている。フック32に対し、連結機構6の垂直支軸6aの上下2カ所に固定された係止具6bの係止孔(図示せず)を引っ掛けることにより、仕上げ鏝8が連結機構6を介して平面均し機5に連結されている。
【0072】
連結機構6は、垂直支軸6aと、垂直支軸6aの上端部から斜め上方に延設された上部支持部材6dと、垂直支軸6aの下端部から斜め下方に延設された下部支持部材6eと、上部支持部材6dと下部支持部材6eとの間に配置された連接部材6fと、下部支持部材6eの先端部に水平方向の係止ピン6gを介して回動自在に軸支された昇降アーム6hと、昇降アーム6hの先端部に当該昇降アーム6hと直角方向に挿通された水平支軸6iと、水平支軸6iに回動可能に取り付けられた補強部材6kなどで構成されている。
【0073】
補強部材6kの前面には、弾性変形可能な板材で形成された左右方向に長い矩形状をした仕上げ鏝8が、断面L字状の固定部材33および複数のボルトを介して着脱可能に取り付けられている。また、コンクリート表面C6に対する押圧力を仕上げ鏝8に与えるための重錘34が補強部材6kに連接されている。さらに、係止ピン6gを中心に昇降アーム6h及び仕上げ鏝8を昇降させるためのワイヤ36及び操作ハンドル35が設けられている。
【0074】
前述したように、原動機3を始動して平面均し機5の回転鏝4を回転させ、仕上げ鏝8の方を向いた姿勢で操作ハンドル9側に立った作業者が操作ハンドル9を両手で握ったまま後退することにより、床面仕上げ装置30全体をコンクリート表面C5に沿って矢印R2方向へ水平移動させれば、回転しながらコンクリート表面C5上を移動していく回転鏝4によるコンクリート表面C5の加圧均しと、コンクリート表面C6上を摺動していく仕上げ鏝8による最終仕上げと、が連続的に行われる。
【0075】
次に、図8,図9に基づいて、本発明の実施形態である床面施工装置60について説明する。なお、床面施工装置60と前述した図6に示す転圧装置40とは共通する構造、機能を有するので、共通部分については図6中の符号と同符号を付して説明を省略する。
【0076】
図7,図8に示すように、床面施工装置60は、固化前のコンクリート表面C1に沿って後方(矢線R3方向)に移動させながら施工を行う装置であって、前記移動方向に沿って、コンクリート表面C1を粗化するブラシ18と、粗化されたコンクリート表面に強化剤55を散布する散液ノズル41と、強化剤55が散布されたコンクリート表面に圧力を加える加圧ローラ11,12,13とが配置されている。また、加圧ローラ11,12,13によって加圧されたコンクリート表面を平滑化する仕上げ鏝17が加圧ローラ13の前方に設けられている。
【0077】
また、強化剤55を貯留するタンク42が発振手段16の側方の連接部材15上に配置され、タンク42内の強化剤55を散液ノズル41へ供給するホース43と、散液ノズル41への強化剤55の供給・停止及び供給量調節を行うためホース43の途中に配置された開閉バルブ44と、が設けられている。タンク42の上面には、強化剤55を補給するための供給口45が設けられている。
【0078】
図9に示すように、コンクリート表面C1上に転圧装置60を持ち込み、発振手段16を作動させ、スロットルレバー16t(図8参照)を調節して連接部材15にその固有振動を与えた後、開閉バルブ44を開き、タンク42内の強化剤55を散液ノズル41からコンクリート表面に向かって散布させながら、作業者が操作ハンドル19を後方(矢線R3)方向に引っ張れば、加圧ローラ11,12,13が転動しながら、床面施工装置60全体がコンクリート表面に沿って移動する。
【0079】
このように、床面施工装置60を、コンクリート表面に沿って一定方向(矢線R3方向)に移動させることにより、コンクリート表面の粗化、強化剤の散布及びコンクリート表面の加圧という3つの作業を連続的に行うことができるため、前述した床面施工法を施工する際の作業効率が大幅に向上する。
【0080】
なお、ブラシ18は着脱可能であり、散液ノズル41は開閉バルブ44で散布・停止の切り替えが可能であり、仕上げ鏝17は昇降可能であるため、施工内容に応じて、ブラシ18、散液ノズル41、仕上げ鏝17の機能をそれぞれ単独で使用したり、二つを組み合わせて使用したりすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の床面施工技術は、鉄筋コンクリート建設物や構造体などのコンクリート床面の施工現場において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0082】
10,60 床面施工装置
30,40 転圧装置
50 床面仕上げ装置
51 爪材
52 熊手部材
53 溝
54 レイタンス
55 コンクリート改質剤
C1,C2,C3,C4,C5,C6 コンクリート表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固化前のコンクリート表面にコンクリート改質剤を散布し、固化させることを特徴とする床面施工法。
【請求項2】
固化前のコンクリート表面にコンクリート改質剤を撒布する工程と、前記コンクリート改質剤が散布されたコンクリート表面を加圧する工程とを備えた請求項1記載の床面施工法。
【請求項3】
前記コンクリート改質剤を散布する前に、固化前のコンクリート表面を粗化する工程を設けた請求項1または2記載の床面施工法。
【請求項4】
固化前のコンクリート表面を、これより硬質の部材で引き掻くことにより表面を粗化する請求項3記載の床面施工法。
【請求項5】
固化前のコンクリート表面に、これより硬質の部材を押圧することにより表面を粗化する請求項3記載の床面施工法。
【請求項6】
前記コンクリート改質剤が散布されたコンクリート表面をローラ式の転圧装置で加圧する請求項2〜5のいずれかに記載の床面施工法。
【請求項7】
前記コンクリート改質剤が、エチレン酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、スチレンブタジエンゴムラテックスのポリマーディスパージョンを単数あるいは複数種類含有するものである請求項1〜6のいずれかに記載の床面施工法。
【請求項8】
前記コンクリート改質剤に着色剤を含有させた請求項1〜7のいずれかに記載の床面施工法。
【請求項9】
固化前のコンクリート表面に沿って移動させながら施工を行う床面施工装置であって、コンクリート表面に凹部を形成する手段、コンクリート表面にコンクリート改質剤を散布する手段若しくはコンクリート表面を加圧する手段のうちの2以上の前記手段を備えたことを特徴とする床面施工装置。
【請求項10】
コンクリート床面の表層部分に、コンクリート改質剤が混在する硬化層または着色剤を含有するコンクリート改質剤が混在する有色硬化層を設けたことを特徴とする床面構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−127157(P2012−127157A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281795(P2010−281795)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(509205696)株式会社上成テクノ (5)
【Fターム(参考)】