説明

廃棄物処理設備及び廃棄物処理方法

【課題】処理室内の汚染を抑制することが可能な廃棄物処理設備及び廃棄物処理方法を提供する。
【解決手段】処理室12に搬入された容器7内にて廃棄物と固化材とを混練する廃棄物処理を行うための廃棄物処理設備1において、廃棄物投入部6は容器7内に廃棄物を投入し、固化材投入部4は固化材を投入する。また混練駆動部3は廃棄物が投入される位置とは異なる位置に置かれる容器7内の廃棄物及び固化材を混練するために設けられると共に、混練用の攪拌部材36が着脱できるように構成されており、攪拌部材36の装着ステップ、容器7内への廃棄物と固化材との投入及び攪拌部材36による混練ステップ、混練駆動部3から攪拌部材36を取り外し、この攪拌部材36混練物内に置かれたまま容器7を処理室から搬出するステップが実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性廃棄物などの廃棄物をセメントなどの固化材と混練して処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所や核燃料サイクル施設などから排出される例えば低レベルの液体放射性廃棄物(以下、単に放射性廃棄物という)は、水分を蒸発させて濃縮した後、例えばドラム缶などの容器内でセメントなどの固化材と混練され、固化後、例えば埋設処分場へと送られる。
【0003】
放射性廃棄物と固化材とを混練する方法としては、放射性廃棄物と固化材とをドラム缶に直接投入して、このドラム缶内に例えば攪拌翼などの攪拌部材を挿入し、ドラム缶内で混練を実行するインドラム方式の混練法が知られている。インドラム方式は、例えば専用の攪拌槽内で混練を行った後、混練物をドラム缶内に注入するアウトドラム方式と比較して、放射性廃棄物で汚染される部材が攪拌翼だけであり、汚染領域を小さくできるといった利点がある。
【0004】
例えば特許文献1には、予め固化材ペーストを投入したドラム缶を、攪拌翼を備えた放射性廃棄物の投入設備まで搬送し、このドラム缶内に攪拌翼を挿入した後、放射性廃棄物を投入しながら混練を行う放射性廃棄物処理設備が記載されている。しかしながらこの特許文献1に記載の処理設備では、放射性廃棄物に接触した攪拌翼が処理設備内に残されるため、例えば定期的に攪拌翼を洗浄しなければならず2次廃棄物が発生する。
【0005】
また混練を終え、ドラム缶から抜き出した後の攪拌翼から混練物が滴り落ちて、処理設備が設置された処理室内を汚染してしまうおそれが高い。通常、放射性廃棄物処理設備は放射線管理区域として管理されるセルと呼ばれる処理室内に設けられるが、設備のメンテナンスなどのためにセル内にも人が立ち入る場合もあり、セルを放射性廃棄物で汚染することは好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3851477号公報:0034段落、図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的は、処理室内の汚染を抑制することが可能な廃棄物処理設備及び廃棄物処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る廃棄物処理設備は、処理室に搬入された容器内にて廃棄物と固化材とを混練する廃棄物処理を行うための廃棄物処理設備において、
前記処理室内に設けられ、前記容器内に廃棄物を投入する廃棄物投入部と、
前記処理室内に設けられ、前記容器内に固化材を投入する固化材投入部と、
前記廃棄物が投入される位置とは異なる位置に置かれる容器内の廃棄物及び固化材を混練するために設けられ、混練用の攪拌部材が着脱できるように構成された混練駆動部と、
外部と前記処理室との間で容器を搬送する第1の搬送部と、
前記混練駆動部に装着する位置に、前記攪拌部材を搬送する第2の搬送部と、
攪拌部材を装着するステップと、前記容器内に廃棄物と固化材とを投入し、前記攪拌部材にてこれら廃棄物と固化材とを混練するステップと、前記混練駆動部から当該攪拌部材を取り外し、この攪拌部材が廃棄物と固化材との混練物内に置かれたまま当該容器を処理室から搬出するステップと、を実行する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
さらに前記廃棄物処理設備は以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記第1の搬送部は、第2の搬送部としての機能を兼ね備え、前記攪拌部材は前記容器内に収容された状態で混練駆動部に装着される位置に搬送されること。
(b)前記攪拌部材は、管状の結合部を有する回転軸と、この回転軸の軸周りに取り付けられた攪拌翼と、を備え、前記混練駆動部は、前記結合部に結合されると共に前記回転軸を回転駆動させる駆動軸を備え、当該攪拌部材は、前記駆動軸が前記管状の結合部内に挿入された状態となるように前記混練駆動部に装着されること。
(c)前記廃棄物は放射性廃棄物であり、前記処理室は前記第1、第2の搬送部を通過させるための開閉可能な搬入出口を備えており、当該搬入出口を閉じた状態で前記容器への廃棄物の投入、及び廃棄物と固化材との混練が行われること。
【0010】
また他の発明に係る廃棄物処理方法は、処理室内に容器を搬入する工程と、
前記処理室内に設けられた混練駆動部に攪拌部材を装着する工程と、
前記処理室内にて、前記容器内に攪拌部材が存在しない状態で当該容器内に廃棄物を投入する工程と、
前記容器内に固化材を投入する工程と、
前記攪拌部材にて前記容器内の廃棄物と固化材とを混練した後、前記混練駆動部から当該攪拌部材を取り外す工程と、
取り外された攪拌部材が前記廃棄物と固化材との混練物内に置かれたまま前記容器を処理室から搬出する工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
さらに前記廃棄物処理方法は以下の特徴を備えていてもよい。
(d)前記攪拌部材は、前記容器内に収容された状態で前記混練駆動部に装着される位置まで搬送されること。
(e)前記廃棄物は放射性廃棄物であり、前記処理室は前記容器を通過させるための開閉可能な搬入出口を備え、前記容器を当該処理室内に搬入してから搬出するまでの各工程を当該搬入出口が閉じた状態で行うこと。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、廃棄物と固化材との混練を行うたびに混練駆動部に新たな攪拌部材が装着される一方、容器への廃棄物の投入は、混練駆動部とは異なる位置にて行われるので、攪拌を開始する前の時点における攪拌部材や当該攪拌部材と混練駆動部との結合部における廃棄物による汚染を防止できる。そして混練を終えた後は、攪拌部材を混練駆動部から取り外し、この攪拌部材が混練物内に残されたままの状態で容器を搬出するので、混練時に攪拌部材に付着した廃棄物が滴り落ちることなどによって引き起こされる処理室の汚染を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態に係る放射性廃棄物処理設備の縦断側面図である。
【図2】前記放射性廃棄物処理設備内に設けられている混練駆動装置の側面図である。
【図3】前記混練駆動装置に装着される前の攪拌翼がドラム缶内に収容されている状態を示す斜視図である。
【図4】前記混練駆動装置にて攪拌翼を結合する機構を示す縦断側面図である。
【図5】前記放射性廃棄物処理設備の作用を示す第1の説明図である。
【図6】前記放射性廃棄物処理設備の作用を示す第2の説明図である。
【図7】前記攪拌翼を混練駆動装置に装着した後の状態を示す斜視図である。
【図8】前記ドラム缶内で混練動作を実行している様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施の形態に係る処理設備1の構成について、図1〜図3を参照しながら説明する。図1の縦断側面図に模式的に示すように、本例に係る放射性廃棄物処理設備1(以下、「処理設備1」という)は、例えばコンクリート製の建屋をコンクリート製の隔壁13にて例えば2つの区画に分割し、一方側の区画を低線量の放射線管理区域であるルーム11、他方側の区画を高線量の放射線管理区域であるセル12に設定している。セル12は本実施の形態の処理室に相当している。
【0015】
低線量の放射線管理区域であるルーム11は、作業従事者が立ち入り可能な区域であり、放射性廃棄物を固化する処理が行われる容器であるドラム缶7などの準備や、処理を終えたドラム缶7を処理設備1外へと搬出する作業などが行われる。隔壁13には、搬入出口141が設けられていてドラム缶7はこの搬入出口141を介してルーム11とセル12との間を搬送される。搬入出口141は、ドラム缶7の搬入出時以外には、開閉扉14にて閉じられ、ルーム11からセル12を隔離することができるようになっている。
【0016】
ドラム缶7は例えば無人搬送車などから構成される搬送装置2によって搬送される。搬送装置2は載置台21を備えており、ドラム缶7はこの載置台21上に載置された状態で搬送されると共に、この載置台21は上下方向に昇降自在に構成されていてドラム缶7を保持する高さ位置を調節することができる。搬送装置2は例えば不図示の管制室からの遠隔操作に基づいて移動する構成としてもよいし、また例えば自動制御などにより、予め設定された場所を所定のタイミングで移動する構成としてもよい。ドラム缶7を搬送するという観点において、搬送装置2は本実施の形態の第1の搬送部に相当している。
【0017】
セル12は、ドラム缶7に放射性廃棄物を充填して固化する廃棄物処理が行われる区域であり、液体の放射性廃棄物を濃縮してドラム缶7に供給する廃棄物貯槽6と、ドラム缶7に例えばセメントなどの固化材を供給するセメントホッパー4と、放射性廃棄物と固化材との混練を行う混練駆動装置3と、混練操作が行われているドラム缶7に硬化剤などを供給する薬液タンク5と、が設けられている。
【0018】
廃棄物貯槽6は、例えば蒸発機能を備えていてもよく、このとき廃棄物貯槽6は、処理設備1の外部に設けられた放射性廃棄物の排出区域から放射性廃棄物を受け入れ、当該放射性廃棄物中の水分を蒸発させて濃縮し、濃縮された放射性廃棄物をドラム缶7に投入する廃棄物投入部としての役割を果たす。この場合、廃棄物貯槽6は例えば不図示の加熱機構を備えたホッパー形状のタンクとして構成され、例えばその上面には放射性廃棄物を受け入れる廃棄物受け入れライン62と、蒸発させた蒸気を排出する排出ライン63とが設けられている。例えばこれら廃棄物受け入れライン62や排出ライン63はルーム11及びセル12から隔離された配管室15内に設けられている。
【0019】
一方、ホッパーの下端には、廃棄物貯槽6の下方位置まで搬送されてきたドラム缶7に放射性廃棄物を投入するための払出部61が設けられている。払出部61は廃棄物貯槽6の下端から下方側へ向けて伸びる円筒形状の部材として構成され、この払出部61がドラム缶7の開口部内に挿入された状態にて廃棄物貯槽6からの放射性廃棄物の払い出し(ドラム缶7への投入)が行われる。払出部61が円筒形状に構成されていることにより、ドラム缶7に投入される放射性廃棄物が周囲に飛び散ることを防ぎセル12内を汚染せずに投入操作を行うことができる。ここで払出部61に設けられた64は蓋部材である。
【0020】
セメントホッパー4は固化材、例えば放射性廃棄物中の水分と反応して固化するセメント粉を貯蔵するホッパーであり、セメントホッパー4の下端に設けられたセメント供給ライン41を介してドラム缶7に固化材を投入する固化材投入部としての役割を果たしている。セメント供給ライン41は混練時にドラム缶7の開口部を覆う後述の蓋部材34に接続されていて、ドラム缶7の上方側から固化材を投入することができる。
薬液タンク5には放射性廃棄物と固化材との混練物の硬化を促進する硬化剤などが貯留されており、蓋部材34に接続された薬液供給ライン51を介してドラム缶7に硬化剤などを供給することができるようになっている。
【0021】
混練駆動装置3は本実施の形態の混練駆動部に相当し、ドラム缶7に投入された放射性廃棄物と固化材とを混練する役割を果たす。図1、図2に模式的に示すように混練駆動装置3は、混練を実行する攪拌部材36と結合される駆動軸33と、この駆動軸33を軸周りに回転させるモーター31と、後述する攪拌部材36の着脱動作のために駆動軸33を回転可能に保持しつつ、この駆動軸33内に設けられた作動軸334を軸方向に上下に移動させるための回転シリンダー32とを備えている。
【0022】
図2に示すように混練駆動装置3は、垂直方向に配置したボールネジ383をモーター381によって正転、反転させることにより、支持台37を昇降させて、その全体を上下に移動させることができる。図中、382は処理設備1の側壁121にてボールネジ383を保持するための保持部材である。
【0023】
図1〜図3に示すように、回転シリンダー32の下方位置には、混練動作時にドラム缶7の開口部を覆う蓋部材34が設けられている。図2、図3に示すように蓋部材34は支持部材341によって支持され例えば処理設備1の側壁121に固定されており、図1、図3に示すように既述のセメント供給ライン41及び薬液供給ライン51はこの蓋部材34を貫通してドラム缶7の配置される空間に向けて開口している。
【0024】
さらに図2、図3に示すように蓋部材34には貫通孔342が設けられており、この貫通孔342には混練駆動装置3の駆動軸33が貫通している。この駆動軸33は貫通孔342内を自由に移動することが可能であり、既述の支持台37の上下移動に合わせて駆動軸33が貫通孔342内を上下に移動する構成となっている。
【0025】
また駆動軸33の先端部は、ほぼ円錐形状に加工されており、その頂点が鉛直方向下側を向いている。これにより、後述する攪拌部材36の結合部363内に駆動軸33を挿入し易い形状となっているが、駆動軸33を攪拌部材36に結合する機構の詳細については後述する。このほか、図3に示す343は混練時にドラム缶7内の雰囲気を排気する排気ラインである。なお、便宜上、図1や図2などの模式図では排気ライン343の記載は省略してあり、また図2ではセメント供給ライン41、薬液供給ライン51の記載は省略してある。
【0026】
図1、図3に示す35は、廃棄物貯槽6における濃縮操作の際に加熱された放射性廃棄物を冷却するための冷却機構である。冷却機構35は例えばドラム缶7の側壁面を外側から覆うことが可能な曲面を備え、左右2つに分割された半円筒形状の板状部材として構成されている。各冷却機構35の内部には、例えば冷却水などの冷媒を通流させる不図示の冷媒流路が形成されており、ドラム缶7の側壁との接触面を介して冷媒に熱を吸収させることができる。図3に示した351は冷却機構35に冷媒を供給する冷媒供給ラインであり、352は冷却機構35から冷媒を排出する冷媒排出ラインである。
【0027】
また冷却機構35は不図示の移動機構によって左右横方向及び上下方向に移動することができるようになっており、例えば図3に示すようにドラム缶7が搬入される領域から左右外側に退避した待機位置と、図8に示すように混練駆動装置3の下方側に搬入されたドラム缶7の側壁の周囲を覆い、ドラム缶7の冷却処理を実行する処理位置との間を移動させることが可能となっている。
なお、冷却機構は保温機構または加温機構であってもよい。これらの機構を利用することにより混練前に廃液が冷えてしまった場合、または所定の混練温度より廃液の温度が下がってしまった場合に、廃液中に塩が析出すること等を防ぐことができるからである。
【0028】
以上に説明した混練駆動装置3は、混練駆動装置3に攪拌部材36が常設されていることにより攪拌部材36の洗浄が必要となること、混練後の攪拌部材36から放射性廃棄物が滴り落ちることなどによってセル12が汚染されることなどの背景技術にて述べた問題点を解消するため、混練操作毎に新たな攪拌部材36を装着し、混練を終えたら混練駆動装置3から攪拌部材36を切り離して混練物内においたままとすることが可能な構成となっている。以下、攪拌部材36及びこの攪拌部材36を混練駆動装置3に結合する機構について図3、図4を参照しながら説明する。
【0029】
本実施の形態においては、混練操作毎に新たに混練駆動装置3に取り付けられる攪拌部材36は、例えばルーム11側にて作業従事者が予めドラム缶7内に収容し、このドラム缶7を載置台21上に載置することにより、攪拌部材36がドラム缶7と共にセル12内に搬入される構成となっている。このようにドラム缶7内に収容された攪拌部材36を搬送する観点においては、搬送装置2は本実施の形態の第2の搬送部を構成している。
【0030】
図3は、攪拌部材36がドラム缶7内に収容されている状態を示している。攪拌部材36は回転軸361と、放射性廃棄物と固化材との混練を実行する攪拌翼362と、駆動軸33に結合される部位である結合部363と、を備えている。回転軸361は、混練を終えた攪拌部材36を混練物内においたままとするにあたって、回転軸361の下端から結合部363の上端までを含む攪拌部材36の全体がドラム缶7内に収まる程度の長さを有する棒材である。
【0031】
攪拌部材36は、例えば板状の部材から構成される4枚の攪拌翼362を備えており、これらの攪拌翼362は回転軸361を中心として径方向に放射状に伸びるように互いに等間隔で配置されている。各攪拌翼362は例えば幅広に形成された攪拌面が攪拌翼362の回転方向に対して直交した状態で回転軸361に取り付けられている。
【0032】
図中、71はドラム缶7の底面に取り付けられた位置合わせ部材であり、各攪拌翼362にはこの位置合わせ部材71の形状に対応した切り欠きが形成されている。そして攪拌部材36をドラム缶7内に収容する際には、位置合わせ部材71を各攪拌翼362の切り欠き部に嵌合させることにより攪拌部材36をドラム缶7内の予め定めた位置に位置合わせすることができる。
【0033】
結合部363は、攪拌部材36の上部側に設けられ、攪拌部材36全体の高さの例えば3分の1程度の長さに形成されている。また結合部363は、例えば回転軸361よりも径が大きく、内部が空洞の管状の部材として構成されている。管状に形成された結合部363内には、既述の駆動軸33よりもやや大きな径を有する空間が形成されており、円錐形状に形成された下端側から駆動軸33を結合部363の管内に挿入することができるようになっている。結合部363に挿入される駆動軸33の下部側部分には、結合部363を管の内側から把持して結合する結合機構が形成されている。以下、当該結合機構の一例について図4を参照しながら説明する。
【0034】
図4は、駆動軸33の下部側部分及び結合部363の縦断側面図であり、図4(a)は駆動軸33と結合部363(攪拌部材36)との結合が解除された状態、図4(b)はこれらの部材33、363が結合された状態を示している。
【0035】
結合機構に関し、駆動軸33は例えば内部が空洞の円管からなり、結合部363内に挿入される駆動軸33の側壁面には上下に向かって伸びる細長い切り欠きが形成されている。これらの切り欠きは、例えば駆動軸33を構成する管の周方向に沿って例えば4箇所に設けられおり、これら4箇所の切り欠きは例えば等間隔で配置されている。そして、図3、図4(a)、図4(b)に示すように、各切り欠き内には押さえ部材331が埋め込まれている。
【0036】
また駆動軸33及び4個の押さえ部材331には、径の小さくなる方向に付勢された例えば3個のリングばね333が、上下方向に並んで廻し掛けられている。これらのリングばね333は各押さえ部材331を、駆動軸33を構成する管の内側へ向けて押さえ付ける方向に作用する。ここで例えば駆動軸33及び各押さえ部材331には、リングばね333を収める溝が設けられており、これらの部材33、331に廻し掛けられたリングばね333は当該溝の内側に収まって、駆動軸33を結合部363内に挿入する際の障害とならないようになっている。
【0037】
一方、図4(a)、図4(b)に示すように、駆動軸33の円筒内部には、上端部が既述の回転シリンダー32に接続されたシリンダーロッド336が挿入されており、シリンダーロッド336は回転シリンダー32の作用によって駆動軸33の円筒内を上下に移動することができる。この上下に移動するシリンダーロッド336は、既述の押さえ部材331が設けられている管状の駆動軸33の内側に、例えば上下に2つ並べて設けられた円筒形状の作動軸334を上下方向に貫通するように配置されている。
【0038】
上下に2つ並んでいる下方側の作動軸334は、例えば押さえ部材331の先端部に固定されたキャップ部材338及びシリンダーロッド336の周りを取り巻くように配置された皿ばねからなる連結ばね337を介してシリンダーロッド336に連結されている。また上方側の作動軸334は、シリンダーロッド336の周りを取り巻くように配置された連結ばね337を介して下方側の作動軸334に連結されている。このようにシリンダーロッド336及び上下の作動軸334が互いに連結されていることにより、シリンダーロッド336の上下動に合わせて2つの作動軸334を上下に移動させることができる。
【0039】
これら上下に並べて配置された各作動軸334の例えば下部側部分には、作動軸334の外周面がテーパ形状に広がる拡径部335が設けられている。一方これら2つの作動軸334を取り巻くように配置された4つの押さえ部材331には、作動軸334側の拡径部335と対向する位置に、当該拡径部335のテーパ形状に対応する形状の傾斜面を備えた案内面332が形成されている。
【0040】
以上に説明した構成を備えていることにより、回転シリンダー32を作動させ、シリンダーロッド336を下方側の解除位置まで移動させると、図4(a)に示すように各作動軸334の拡径部335は4つの押さえ部材331の案内面332にて囲まれる空間の内側に格納される。この場合には、各押さえ部材331はリングばね333の作用により駆動軸33の内側へ向けて押し戻されて、各拡径部335のテーパ面に押し付けられた状態となる。この結果、押さえ部材331の外側の面が例えば駆動軸33の外周面よりも内側に押し込まれ、駆動軸33は結合部363の管内を自由に移動することができる。
【0041】
一方、駆動軸33を結合部363内に挿入し、シリンダーロッド336を上方側の把持位置まで移動させると、図4(b)に示すように各作動軸334の拡径部335が上方側に移動することにより、各押さえ部材331の案内面332を外側へと押し戻す力が作用する。この結果、4つの押さえ部材331を束ねるリングばね333が広がって、各押さえ部材331が駆動軸33の径方向外側へと移動し、これら押さえ部材331が駆動軸33の外周面よりも外側に飛び出す。
【0042】
各押さえ部材331は攪拌部材36側の結合部363の内周面に到達した位置にて停止するが、拡径部335より押さえ部材331をさらに外側に押し広げようとする力が作用することにより、各押さえ部材331が結合部363の内周面に強く押し付けられ、この作用により攪拌部材36が駆動軸33に把持される。各押さえ部材331における結合部363の内周面と接触する面には、例えばヤスリ状の目が切ってあり、このヤスリ状の目によって結合部363を把持するグリップ効果を高めている。なお図4(a)、図4(b)では押さえ部材331のヤスリ状の目の大きさを誇張して示してある。攪拌部材36を取り外す場合には、シリンダーロッド336を再び解除位置まで移動させて各押さえ部材331を元の位置まで移動させることにより結合部363の把持状態を解除すればよい。
【0043】
また以上に説明した構成を備えた混練駆動装置3は、放射性廃棄物の投入が行われる廃棄物貯槽6から離れた位置に配置されている。例えばこれら混練駆動装置3と廃棄物貯槽6との距離は、ドラム缶7に放射性廃棄物を投入する際に、仮に放射性廃棄物の飛沫が跳ねたりしたとしても、当該飛沫が混練駆動装置3まで到達するなどして混練駆動装置3を汚染しない程度の距離に設定されている。
【0044】
以上に説明した構成を備えた処理設備1の搬送装置2や混練駆動装置3、セメントホッパー4、薬液タンク5、廃棄物貯槽6の払い出し機構などは、これら各部の動作を制御する制御部8に接続されている。制御部8は、CPU、メモリ及びプログラム格納部を備えており、以下に説明する処理設備1の動作を実行するための制御信号を出力するように構成されている。プログラム格納部には、処理設備1の各部の動作に係る制御についてのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されており、このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0045】
次に本実施の形態の処理設備1の作用について説明する。はじめにルーム11側では、放射性廃棄物を充填するドラム缶7内に、新たな攪拌部材36を収容し、このドラム缶7を搬送装置2の載置台21上の所定の位置に載置する準備を行う。一方、セル12内では、図1に示すように混練駆動装置3の駆動軸33には攪拌部材36が装着されておらず、また冷却機構35を待機位置まで移動させた状態で待機している。
【0046】
次に、図5(a)、図3に示すように搬入出口141の開閉扉14を開き、セル12内に搬送装置2を進入させて、ドラム缶7を混練駆動装置3の下方位置まで搬送し、搬送装置2の載置台21を上昇させる。そして、攪拌部材36の装着が行われる高さ位置にドラム缶7が到達したら、混練駆動装置3のボールネジ機構を作動させて、駆動軸33を下方側に移動させ、攪拌部材36の結合部363内に駆動軸33を挿入する。そして図4(b)を用いて説明したように、駆動軸33に設けられている攪拌部材36との結合機構を作動させることにより、混練駆動装置3に攪拌部材36が装着される(図7)。
【0047】
攪拌部材36を混練駆動装置3に装着したら、図5(b)に示すように搬送装置2の載置台21を降下させてドラム缶7を混練駆動装置3の下方側に退避させ、廃棄物貯槽6の下方位置まで移動させる。そして載置台21を上昇させ、ドラム缶7の開口部に廃棄物貯槽6の払出部61を挿入する。廃棄物貯槽6側においては、例えばドラム缶7が搬送されてきたタイミングで放射性廃棄物の払い出しを開始できるように、予め放射性廃棄物の濃縮操作を行っておく。しかる後、払出部61を介して廃棄物貯槽6からドラム缶7への放射性廃棄物の投入を実行し、予め定められた量の放射性廃棄物を投入したら、投入動作を終了する。
【0048】
次いで、図5(c)に示すように放射性廃棄物を受け入れたドラム缶7を再度混練駆動装置3まで搬送し、図8に示すように混練及びドラム缶7の冷却が行われる処理位置までドラム缶7及び冷却機構35を移動させ、ドラム缶7の開口部を蓋部材34にて覆う。また混練駆動装置3はボールネジ機構を作動させて混練操作の行われる位置まで攪拌部材36を上昇させる。そして冷却機構35には冷媒の通流が開始されており、冷却機構35が処理位置まで移動した時点にてドラム缶7の冷却処理が開始される。
【0049】
ドラム缶7、冷却機構35、攪拌部材36を処理位置にセッティングしたら、攪拌部材36を回転させ、次いで図6(a)に示すようにセメントホッパー4からの固化材の投入及び薬液タンク5からの硬化剤などの投入を開始する。これにより固化材と放射性廃棄物とが混練され、固化材のセメント粉と放射性廃棄物中に含まれる水分とが反応して混練物が次第に固化していく。
【0050】
ここで固化材の投入開始時には例えばその投入量を少なめに調整することにより、放射性廃棄物の液溜まりに固化材を投入することによる飛沫の発生を抑えることができる。また仮に飛沫が発生したとしても、ドラム缶7内の液レベルが低いので当該飛沫がドラム缶7の開口部を覆う蓋部材34に到達することは殆どなく、当該蓋部材34を汚染するおそれも低い。そして固化材の投入を開始してからの時間が経過してくると、次第に混練物の粘度が上昇してくるのでドラム缶7内に固化材を投入しても混練物の飛沫は殆ど発生せず、ドラム缶7内の混練物のレベルが上昇しても蓋部材34を汚染するおそれは小さい。
【0051】
一方、攪拌部材36を攪拌駆動する駆動軸33は、管状に形成された結合部363の内側に挿入されているので、この駆動軸33が混練物と接触することはなく、駆動軸33は汚染されていない状態が保たれている。また図8に示すように本例では、攪拌翼362を処理位置まで上昇させることにより、結合部363の上端部が蓋部材34の上方側にまで退避した状態となっている。このため、例えば駆動軸33と結合部363との間の隙間に混練物が入り込み、駆動軸33を汚染するといったおそれもない。
【0052】
以上の動作を実行し、予め設定された量の固化材及び硬化剤などを投入したら、固化材、硬化剤などの投入を停止し、放射性廃棄物と固化材とを十分に混練した後、攪拌部材36の回転を停止して混練操作を終える。次いで混練操作の行われた位置から、攪拌部材36を降下させて位置合わせ部材71上に攪拌部材36を載置し、駆動軸33との結合を解除して混練駆動装置3から攪拌部材36を取り外す。
【0053】
攪拌部材36が取り外されたら、図6(b)に示すようにドラム缶7内に攪拌部材36が残された状態のまま載置台21を降下させ、例えば混練駆動装置3や廃棄物貯槽6から離れた位置にてドラム缶7を静置し、混練物を固化させる。しかる後、図6(c)に示す如く開閉扉14を開き、載置台21をルーム11側まで移動させてドラム缶7を搬出し、一連の動作を終える。搬出されたドラム缶7には、例えばドラム缶7を密閉する密閉蓋72が取り付けられ、処理設備1外へと搬出される。ここで別例として、混練物の固化は、ドラム缶7をセル12から搬出した後に行ってもよい。
【0054】
本実施の形態に係る処理設備1によれば以下の効果がある。放射性廃棄物と固化材との混練を行うたびに混練駆動装置3に新たな攪拌部材36が装着される一方、ドラム缶7への放射性廃棄物の投入は、混練駆動装置3が設けられている位置とは異なる位置にて行われるので、混練を開始する前の時点における攪拌部材36や当該攪拌部材36と混練駆動装置3との結合部における放射性廃棄物による汚染を防止できる。そして混練を終えた後は、攪拌部材36を混練駆動装置3から取り外し、この攪拌部材36が混練物内に残されたままの状態でドラム缶7を搬出するので、混練時に攪拌部材36に付着した放射性廃棄物が滴り落ちることなどによって引き起こされるセル12内の汚染を防止することができる。
【0055】
上述の実施の形態においては、混練操作毎に混練駆動装置3に取り付けられる攪拌部材36をドラム缶7内に収容した状態でセル12内に搬送する方式を採用したが、ドラム缶7及び攪拌部材36は別々にセル12内に搬入してもよい。例えば共通の搬送装置2を用いて予め攪拌部材36を混練駆動装置3に装着した後、ドラム缶7を搬入して放射性廃棄物の処理をおこなってもよい。またこのとき、ドラム缶7を搬送する搬送装置2(第1の搬送部)と攪拌部材36を搬送する搬送装置2(第2の搬送部)とを別々に構成してもよい。
【0056】
またドラム缶7への廃棄物の投入は、必ずしも混練の行われる場所とは異なる場所にて行わなくてもよい。例えば図3に示す蓋部材34に廃棄物貯槽6を接続し、混練駆動装置3に攪拌部材36を装着していない状態においてドラム缶7を蓋部材34の下方位置に搬送して放射性廃棄物の受け入れを行う。このとき例えば駆動軸33は蓋部材34の上方側に退避させておけば、放射性廃棄物による駆動軸33の汚染は避けることができる。しかる後、ドラム缶7を別の場所に退避させて攪拌部材36を混練駆動装置3に装着してから再びドラム缶7を混練処理の行われる位置まで搬送し、混練を行ってもよい。
【0057】
また放射性廃棄物と固化材との混練に用いられる攪拌部材36の攪拌翼362には種々のものを適用することが可能であり、また、攪拌翼362を備えていない例えば棒状の部材を攪拌部材36としてもよい。棒状の攪拌部材36を採用する場合には、例えば攪拌部材36をドラム缶7に垂直に挿入し、例えば上方側から見て円形軌道を描くように当該攪拌部材36を混練物内で移動させて混練物をかき混ぜるように混練する手法などが考えられる。
【0058】
また本発明を適用可能な廃棄物は放射性廃棄物に限定されるものではなく、例えば医療廃棄物や一般廃棄物でもよい。一般廃棄物の処理の場合などでは処理室に開閉扉14を設けなくてもよく、また混練物が固化する前にドラム缶7を処理室から搬出してしまってもよい。また、廃棄物の形態も液状のものに限定されず、粉体や粒状体であってもよい。他方、固化材についてもセメント粉の例に限定されるものではなく、予めセメントと水を混合して調製したスラリーや溶融ガラスなどであってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 処理設備
11 ルーム
12 セル
14 開閉扉
2 搬送装置
3 混練駆動装置
33 駆動軸
35 冷却機構
36 攪拌部材
361 回転軸
362 攪拌翼
363 結合部
4 セメントホッパー
6 廃棄物貯槽
7 ドラム缶
8 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室に搬入された容器内にて廃棄物と固化材とを混練する廃棄物処理を行うための廃棄物処理設備において、
前記処理室内に設けられ、前記容器内に廃棄物を投入する廃棄物投入部と、
前記処理室内に設けられ、前記容器内に固化材を投入する固化材投入部と、
前記廃棄物が投入される位置とは異なる位置に置かれる容器内の廃棄物及び固化材を混練するために設けられ、混練用の攪拌部材が着脱できるように構成された混練駆動部と、
外部と前記処理室との間で容器を搬送する第1の搬送部と、
前記混練駆動部に装着する位置に、前記攪拌部材を搬送する第2の搬送部と、
攪拌部材を装着するステップと、前記容器内に廃棄物と固化材とを投入し、前記攪拌部材にてこれら廃棄物と固化材とを混練するステップと、前記混練駆動部から当該攪拌部材を取り外し、この攪拌部材が廃棄物と固化材との混練物内に置かれたまま当該容器を処理室から搬出するステップと、を実行する制御部と、を備えたことを特徴とする廃棄物処理設備。
【請求項2】
前記第1の搬送部は、第2の搬送部としての機能を兼ね備え、前記攪拌部材は前記容器内に収容された状態で混練駆動部に装着される位置に搬送されることを特徴とする請求項1に記載の廃棄物処理設備。
【請求項3】
前記攪拌部材は、管状の結合部を有する回転軸と、この回転軸の軸周りに取り付けられた攪拌翼と、を備え、前記混練駆動部は、前記結合部に結合されると共に前記回転軸を回転駆動させる駆動軸を備え、当該攪拌部材は、前記駆動軸が前記管状の結合部内に挿入された状態となるように前記混練駆動部に装着されることを特徴とする請求項1または2に記載の廃棄物処理設備。
【請求項4】
前記廃棄物は放射性廃棄物であり、前記処理室は前記第1、第2の搬送部を通過させるための開閉可能な搬入出口を備えており、当該搬入出口を閉じた状態で前記容器への廃棄物の投入、及び廃棄物と固化材との混練が行われることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の廃棄物処理設備。
【請求項5】
処理室内に容器を搬入する工程と、
前記処理室内に設けられた混練駆動部に攪拌部材を装着する工程と、
前記処理室内にて、前記容器内に攪拌部材が存在しない状態で当該容器内に廃棄物を投入する工程と、
前記容器内に固化材を投入する工程と、
前記攪拌部材にて前記容器内の廃棄物と固化材とを混練した後、前記混練駆動部から当該攪拌部材を取り外す工程と、
取り外された攪拌部材が前記廃棄物と固化材との混練物内に置かれたまま前記容器を処理室から搬出する工程と、を含むことを特徴とする廃棄物処理方法。
【請求項6】
前記攪拌部材は、前記容器内に収容された状態で前記混練駆動部に装着される位置まで搬送されることを特徴とする請求項5に記載の廃棄物処理方法。
【請求項7】
前記廃棄物は放射性廃棄物であり、前記処理室は前記容器を通過させるための開閉可能な搬入出口を備え、前記容器を当該処理室内に搬入してから搬出するまでの各工程を当該搬入出口が閉じた状態で行うことを特徴とする請求項5または6に記載の廃棄物処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−27508(P2011−27508A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172457(P2009−172457)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000004411)日揮株式会社 (94)