説明

建具

【課題】 障子の面材表面に汚れが付着しにくく、付着した汚れを容易に落とすことができる建具を提供すること。
【解決手段】複層ガラス25の室外側(第1)のガラスパネル25Bを上下左右の框材の見付け面部222に接着して固定し、複層ガラス25の下辺において、浴室に面した室内側(第2)のガラスパネル25Aの下端縁を室外側のガラスパネル25Bの下端縁よりも下方に延ばして形成したので、室内側のガラスパネル25Aの表面側にシール片や面材保持部による入隅部分が形成されず、その表面に付着した水等が流れ落ちやすくなる。従って、水等に含まれた埃等の汚れが障子に付着しにくくなるとともに、汚れが付着した場合でも容易に汚れを落とすことができ、障子20の美観を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枠体と、この枠体に支持される障子とを備えた建具に関し、詳しくは、引き違い窓、片引き窓、開き窓、辷り出し窓、嵌め殺し窓等の各種形式のサッシ窓としての建具や、引き戸、開き戸等の各種出入り口としての建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、サッシ窓や出入り口において、上下左右の框材を四周框組した内部に複層ガラスや合せガラス等の面材を嵌め込んで構成された障子が多用されている。そして、障子における面材の支持構造としては、各框材の見付け方向内側に形成した断面略凹状の面材保持部に、シール性を有したガスケットを介して面材(複層ガラス)の四周を保持したものが一般的である(例えば、特許文献1参照)。このようなガスケットは、断面略コ字形に形成され、面材の表裏面に密接するシール片(リップ片)を有しており、面材と框材との間がガスケットでシールされることによって障子の気密性および水密性が確保できるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−159273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の障子では、ガスケットのシール片および框材の面材保持部が面材表面よりも突出しているために、例えば、室外空間に面した面材表面を流れ落ちた雨水等が面材とシール片や面材保持部との入隅部分に溜まってしまい、この溜まった雨水等に含まれた埃等の汚れが障子に付着するとともに、付着した汚れを清掃により落としにくいという問題がある。
このような問題は、室外空間に面した建具の場合に限らず、例えば、浴室やキッチン等の室内空間に面し、飛び散った水や油等が面材表面に付着しやすい建具においても同様の問題がある。
【0005】
本発明の目的は、障子の面材表面に汚れが付着しにくく、付着した汚れを容易に落とすことができる建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建具は、枠体と、この枠体に支持される障子とを備えた建具であって、前記障子は、上框、下框、および左右の縦框と、第1および第2の一対のパネル材が空気層を介して対向配置された複層面材とを備えて構成され、前記上下左右の各框材は、それぞれ見付け方向に延びる見付け面部を有して形成され、前記複層面材は、前記第1のパネル材が前記見付け面部に接着されて前記上下左右の各框材に固定され、前記複層面材の下辺において、前記第2のパネル材の下端縁が前記第1のパネル材の下端縁よりも下方に延びて形成され、かつ上および左右の三辺のうちの少なくとも一辺において、前記第1および第2のパネル材の端縁が揃えて形成されていることを特徴とする。
【0007】
ここで、複層面材としては、パネル材として二枚のガラスパネルを用いた複層ガラスでもよく、またガラスパネルとアクリル等の樹脂パネルとを用いたものでもよい。また、複層面材の空気層としては、乾燥空気を密封したものでもよく、またアルゴンガス等の断熱性に優れた(熱伝導率の低い)ガスを密封したものでもよい。
【0008】
このような構成によれば、第1のパネル材を見付け面部に接着することで上下左右の各框材に複層面材が固定され、かつ第2のパネル材の下端縁を第1のパネル材よりも下方に延ばして形成したので、第2のパネル材の表面側にシール片や面材保持部による入隅部分が形成されず、その表面に付着した水等が流れ落ちやすくなる。従って、水等に含まれた埃等の汚れが障子に付着しにくくなるとともに、汚れが付着した場合でも容易に汚れを落とすことができ、障子の美観を維持することができる。
さらに、接着により複層面材を框材に固定することで、ビス止めにより各框材を框組みする必要がなく、接着力によって各框材および複層面材を一体化することができ、障子の組立工程を簡略化することができる。そして、各框材および複層面材が接着により一体化されることで、ガスケットを介して面材が框材に支持される従来の障子と比較して、障子の面内剛性が飛躍的に向上されて開閉時等のがたつきを防止することができる。
そして、複層面材は、各框材の見付け面部に四周連続して貼付けた接着テープにより接着されていることが好ましく、このようにすれば、通常の接着剤を用いて接着する場合と比較して接着作業が簡単にできるとともに、接着と同時に框材と複層面材との間のシールが完了するため、障子の組立工程をより一層簡略化することができる。
【0009】
また、第1のパネル材よりも端縁を延ばして形成した第2のパネル材によって框材の前面側を覆うように構成すれば、第2のパネル材側から框材が見えない、または框材を目立たないようにすることができ、建具の外観意匠性を向上させることができる。
さらに、複層面材の上および左右の三辺のうちの少なくとも一辺において、第1および第2のパネル材の端縁を揃えて形成したことで、揃えた端縁側を下にして立てた状態で複層面材を製造したり、運搬したり、框材に組み込んだりすることができ、効率よく障子を製造することができる。つまり、複層面材の四辺全てにおいて第1および第2のパネル材の端縁位置をずらしてしまうと、複層面材を立てた状態で支持することが困難になるためであるが、本発明によれば複層面材を立てた状態で支持することができる。
【0010】
この際、本発明の建具では、前記複層面材の上辺において、前記第2のパネル材の上端縁が前記第1のパネル材の上端縁よりも上方に延びて形成され、かつ左右の二辺において、前記第1および第2のパネル材の端縁が揃えて形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、障子を上下および左右の各々の方向に関して対象に形成することができ、障子の外観意匠性をさらに良好にすることができる。
【0011】
さらに、本発明の建具では、前記第1のパネル材よりも前記第2のパネル材の端縁が延ばされた複層面材の辺に対応する前記框材には、前記見付け面部に平行な第2見付け面部が形成されており、この第2見付け面部に前記第2のパネル材が前記第1のパネル材の接着方向と同一方向から接着されていることが好ましい。
このような構成によれば、複層面材の少なくとも下辺において、第1のパネル材に加えて第2のパネル材が框材に接着されることで、複層面材の框材への固定強度を向上させることができる。さらに、第1のパネル材よりも延ばされた第2のパネル材の下端縁を下框に接着することで、複層面材と下框との間がシールされることとなるため、第2のパネル材表面側からの水の浸入を防止することができ、障子の水密性を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の建具では、前記第1および第2のパネル材の端縁が揃えられた複層面材の辺に対応する前記框材には、見込み方向に延出して当該辺における複層面材の端面を覆う見込み面部が形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、複層面材の端面に沿って框材の見込み面部が配置されるので、この見込み面部がカバー材として機能し、障子の外観意匠性を高めるとともに、複層面材の端面を保護することができる。従って、複層面材のパネル材同士を連結する連結シール材の劣化を防止し、複層面材を長寿命化することができる。
【0013】
さらに、本発明の建具では、前記複層面材の第1および第2のパネル材は、それぞれ第1および第2の空間に面して設けられており、当該第2の空間は、室外空間、または所定の室内空間であることが好ましい。
ここで、所定の室内空間としては、浴室やキッチン等の水を多く利用する空間が例示される。すなわち、第2の空間である室外空間や所定の室内空間では、障子(複層面材)に水がかかりやすくなっている。
このような構成によれば、第2のパネル材を第2の空間に面して配置することにより、第2のパネル材にかかった水を流れ落とさせることで、汚れの付着を防止して、障子の清掃手間を軽減することができる。
【0014】
以上において、本発明の建具では、少なくとも前記第2のパネル材の表面には、光触媒からなるコーティングが設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、第2のパネル材表面にコーティングした酸化チタン等からなる光触媒の作用により、有機物が分解されて汚れの付着が防止できるとともに、光触媒の親水性により付着した汚れを水とともに洗い流すことができ、障子の清掃手間をさらに一層軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、第2実施形態以降において、次の第1実施形態で説明する構成部材と同じ構成部材、および同様な機能を有する構成部材には、第1実施形態の構成部材と同じ符号を付し、それらの説明を省略または簡略化する。
【0016】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る建具であるサッシ窓1を示す縦断面図である。図2は、サッシ窓1を示す横断面図である。図3は、サッシ窓1の下枠部分を拡大して示す縦断面図である。
図1〜図3において、サッシ窓1は、室外空間(第1の空間)と浴室やキッチン等の室内空間(第2の空間)とを仕切る窓であって、外壁2の開口部3に設けられ、外壁2を構成する躯体としての壁パネル4や、壁パネル4および内装材5の開口内周面を覆うアルミ形材製の額縁材6に固定されている。
【0017】
サッシ窓1は、それぞれアルミ押出形材製の上枠11、下枠12、および左右の縦枠13を四周枠組みした窓枠(枠体)10と、この窓枠10の内側にスライド開閉自在に支持された1つの障子20とを備えて構成されている。障子20は、それぞれアルミ押出形材製の上框21、下框22、および左右の縦框23,24と、これら上下左右の框(各框材)21〜24に固定された複層ガラス(複層面材)25とを備えて構成されている。複層ガラス25は、室内側のガラスパネル(第2のパネル材)25Aおよび室外側のガラスパネル(第1のパネル材)25Bからなる二枚のガラスパネル25A,25B同士が空気層25Cを介して対向配置され、ガラスパネル25A,25Bの四周端縁部分が連結シール材25Dにより連結されて空気層25Cが密閉されて形成されている。
そして、サッシ窓1は、障子20を図2の右側にスライドさせれば、図2中、左側の縦框23と縦枠13との間に10cm程度の隙間ができて開くようになっており、換気や通風ができるようになっている。
【0018】
窓枠10の上枠11、下枠12、および縦枠13は、それぞれ断面略矩形中空状の枠材本体部111,121,131と、この枠材本体部111,121,131から室内側に延びて額縁材6にビス止め固定される第1固定片部112,122,132と、枠材本体部111,121,131からから見付け方向外側に延びて壁パネル4に固定される第2固定片部113,123,133とを有して形成されている。また、上枠11は、枠材本体部111から室外側に延びるとともに下方に折れ曲がって上框21を案内する案内片部114を有しており、下枠12は、枠材本体部121の室外側において上方に突出して下框22を案内するレール部124を有している。さらに、上枠11、下枠12、および縦枠13の枠材本体部111,121,131の室外側側面には、室外側に突出して上框21、下框22、および縦框23,24に当接する気密材115,125,135が設けられている。
【0019】
障子20の上框21は、中空状の框材本体部211と、この框材本体部211の下部室外側端から見付け方向下方に突出した見付け面部212と、この見付け面部212よりも室内側で見付け面部212に平行に形成された第2見付け面部213と、框材本体部211の上部室内側端に形成され上枠11の案内片部114が挿入される凹溝部214とを有している。そして、框材本体部211の室内側側面に、上枠11の気密材115が摺接するようになっている。また、框材本体部211の室内側下面は、上枠11の下面と略同一高さ位置、または上枠11の下面よりも若干高い位置に設けられており、室内側から水平に障子20を見た場合に上枠11に隠れて上框21が見えないようになっている。
【0020】
下框22は、中空状の框材本体部221と、この框材本体部221の上部室外側端から見付け方向上方に突出した見付け面部222と、この見付け面部222よりも室内側で見付け面部222に平行に形成された第2見付け面部223と、框材本体部221の下部室内側端に形成され下枠12のレール部124に支持される被支持部224とを有している。そして、框材本体部221の室内側側面に、下枠12の気密材125が摺接するようになっている。また、框材本体部221の室内側上面は、下枠12の上面と略同一高さ位置、または下枠12の上面よりも若干低い位置に設けられており、室内側から水平に障子20を見た場合に下枠12に隠れて下框22が見えないようになっている。
【0021】
縦框23,24は、中空状の框材本体部231,241と、この框材本体部231,241の室外側端から見付け方向内方に突出した見付け面部232,242と、框材本体部231,241の室内側に係合された押縁材233,243と、この押縁233,243と複層ガラス25との間に介装されるシール材234,244とを有している。そして、押縁材233,243の室内側側面に、縦枠13の気密材135が摺接するようになっている。また、押縁材233,243の見付け方向内端縁は、縦枠13の見付け方向内端面と略同一位置、または縦枠13の見付け方向内端面よりも若干外側に設けられており、室内側から障子20を見た場合に縦枠13に隠れて縦框23,24が見えないようになっている。
【0022】
一方、障子20の複層ガラス25は、室外側のガラスパネル25Bの四周端縁部が上下左右の各框(各框材)21〜24における見付け面部212,222,232,242の室内側側面に接着テープ30によって接着されて固定されている。この接着テープ30は、上下左右の各框21〜24に四周連続して貼付けられている。このため、各框21〜24と複層ガラス25との間は、接着テープ30によりシールされ、障子20の気密性、水密性が確保されるようになっている。また、接着テープ30は、弾性材料から形成され、伸び変形およびせん断変形可能になっている。そして、接着テープ30の厚さ寸法は、各框21〜24と複層ガラス25との熱伸び量の差を接着テープ30の弾性変形により吸収できるように設定されている。
【0023】
また、複層ガラス25の上下の各辺において、室内側のガラスパネル25Aの上下の各端縁は、室外側のガラスパネル25Bの上下の各端縁よりも上方または下方に延びて形成されており、この延長された室内側のガラスパネル25Aの室外側側面と上框21および下框22の第2見付け面部213,223とが接着テープ31で接着されている。この接着テープ31の左右両端は、縦框23,24のシール材234,244に接続されている。そして、複層ガラス25の下辺は、下框22の框材本体部221上の複数箇所に設けられたセッティングブロック25E上に載置されている。
一方、複層ガラス25の左右の各辺において、室内外のガラスパネル25A,25Bの側端縁は、揃えて形成されており、左右各端面(エッジ)と、縦框23,24の框材本体部231,241の見付け方向内面(見込み面部235,245)とは、隙間を介して対向して配置されている。つまり、複層ガラス25の左右各端面は、縦框23,24の見込み面部235,245に覆われている。
【0024】
以上のように上下左右の各框21〜24に固定された複層ガラス25において、室内側のガラスパネル25Aの室内面には、酸化チタン等からなる光触媒がコーティングされている。なお、室内側のガラスパネル25Aのみならず、室外側のガラスパネル25Bの室外面に光触媒がコーティングされていてもよい。
そして、浴室やキッチン等の室内空間に面した室内側のガラスパネル25Aには、水がかかりやすくなっているが、かかった水は、図3に矢印で示すように、下框22の框材本体部221上まで真っ直ぐに室内側のガラスパネル25A表面を流れ落ち、その表面上に溜まらないようになっている。下框22の框材本体部221上に流れ落ちた水は、図示しない排水経路を通って室外空間に排水される、または室内空間に設けた排水ドレン等に排水されるようになっている。
【0025】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)すなわち、複層ガラス25における室外側のガラスパネル25Bを上下左右の各框21〜24の見付け面部212,222,232,242に接着することで複層ガラス25が固定され、かつ室内側のガラスパネル25Aの下端縁を室外側のガラスパネル25Bよりも下方に延ばして形成したので、室内側のガラスパネル25Aの室内表面側にシール片や面材保持部による入隅部分が形成されず、その表面に付着した水等が流れ落ちやすくなる。従って、水等に含まれた埃等の汚れが複層ガラス25に付着しにくくなるとともに、汚れが付着した場合でも容易に汚れを落とすことができ、障子20の美観を維持することができる。
【0026】
(2)また、複層ガラス25が各框21〜24に接着により固定されることで、ビス止めにより各框21〜24を框組みする必要がなく、接着力によって各框21〜24および複層ガラス25が一体化可能になり、障子20の組立工程を簡略化することができる。そして、各框21〜24および複層ガラス25が接着により一体化されることで、ガスケットを介して面材が框材に支持される従来の障子と比較して、障子20の面内剛性が飛躍的に向上されて開閉時等のがたつきを防止することができる。
【0027】
(3)さらに、複層ガラス25が上下左右の各框21〜24の見付け面部212,222,232,242に四周連続して貼付けた接着テープ30により接着されることで、通常の接着剤を用いて接着する場合と比較して接着作業が簡単にできるとともに、接着と同時に各框21〜24と複層ガラス25との間のシールが完了するため、障子20の組立工程をより一層簡略化することができる。
【0028】
(4)また、複層ガラス25の左右縦辺において、室内外のガラスパネル25A,25Bの端縁を揃えて形成したことで、左右いずれかの端縁側を下にして立てた状態で複層ガラス25を製造したり、運搬したり、框材に組み込んだりすることができ、効率よく障子20を製造することができる。
【0029】
(5)さらに、複層ガラス25の上下辺において、室内側のガラスパネル25Aの下端縁が室外側のガラスパネル25Bよりも下方に延ばして形成され、複層ガラス25の左右の二辺において、室内外のガラスパネル25A,25Bの端縁が揃えて形成されていることで、障子20を上下および左右の各々の方向に関して対象に形成することができ、障子20の外観意匠性をさらに良好にすることができる。
【0030】
(6)また、縦框23,24に形成した見込み面部235で複層ガラス25の側端面を覆うことで、障子20の外観意匠性を高めるとともに、複層ガラス25の端面を保護することができる。従って、複層ガラス25のパネル材25A,25B同士を連結する連結シール材25Dの劣化を防止して複層ガラス25を長寿命化することができる。
【0031】
(7)また、上下の各框21,22に第2見付け面部213,223が形成され、この第2見付け面部213,223に室内側のガラスパネル25Aの室外側側面が接着されていることで、複層ガラス25の上下辺において、室内外両方のガラスパネル25A,25Bが框21,22に接着され、複層ガラス25の固定強度を向上させることができる。さらに、室内側のガラスパネル25Aの下端縁を下框22に接着することで、複層ガラス25と下框12との間がシールされることとなるため、室内空間側からの水の浸入を防止することができ、障子20の水密性を向上させることができる。
【0032】
(8)さらに、室内側のガラスパネル25Aの室内側表面にコーティングした光触媒の作用により、有機物が分解されて汚れの付着が防止できるとともに、光触媒の親水性により付着した汚れを水とともに洗い流すことができ、障子20の清掃手間をさらに一層軽減することができる。
【0033】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る建具であるサッシ窓1Aについて、図4〜図6に基づいて説明する。
図4は、サッシ窓1Aを示す縦断面図である。図5は、サッシ窓1Aを示す横断面図である。図6は、サッシ窓1Aの下枠部分を拡大して示す縦断面図である。
サッシ窓1Aは、窓枠10の開口部3への固定構造と、障子20の構成とが前述の第1実施形態のサッシ窓1と相違している。そして、本実施形態において、第1の空間は室内空間であり、第2の空間は室外空間であって、さらに障子20の複層ガラス25における第1のパネル材は室内側のガラスパネル25Aであり、第2のパネル材は室外側のガラスパネル25Bである。以下、相違点について詳しく説明する。
【0034】
サッシ窓1Aの窓枠10を構成する上枠11、下枠12、および縦枠13は、第1固定片部112,122,132が額縁材6にビス止め固定されるのではなく、第1固定片部112,122,132の見付け方向外側に対向して設けられた挟持片部116,126,136と第1固定片部112,122,132とで額縁材6を挟持することにより額縁材6に固定されている。
【0035】
障子20の複層ガラス25の上下の各辺において、室内側のガラスパネル25Aの上下の各端縁よりも室外側のガラスパネル25Bの上下の各端縁が上方または下方に延びて形成されている。
上框21および下框22の見付け面部212,222は、框材本体部211,221の室内寄りの位置に形成され、この見付け面部212,222の室外側側面に複層ガラス25の室内側のガラスパネル25Aが接着されている。そして、第2見付け面部213,223は、框材本体部211,221の室外側側面に形成され、この第2見付け面部213、223に複層ガラス25の室外側のガラスパネル25Bの室内側側面が接着されている。
また、縦框23,24の見付け面部232,242は、框材本体部231,241の室内寄りの位置に形成され、この見付け面部232,242の室外側側面に複層ガラス25の室内側のガラスパネル25Aが接着されている。そして、押縁材233,243は、框材本体部231,241の室外側に係合され、この押縁材233,243と室外側のガラスパネル25Bとの間にシール材234,244が介装されている。
【0036】
以上のような障子20において、複層ガラス25の室外側のガラスパネル25Bの室外面に光触媒がコーティングされている。
そして、室外空間に面した室外側のガラスパネル25Bには、雨水等の水がかかりやすくなっているが、かかった水は、図6に矢印で示すように、下框22の框材本体部221底面上まで真っ直ぐに室外側のガラスパネル25B表面を流れ落ち、その表面上に溜まらないようになっている。下框22に流れ落ちた水は、框材本体部221底面に形成された図示しない排水孔を通って室外空間に排水されるようになっている。
【0037】
このような本実施形態によれば、前述の(1)〜(8)の効果と略同様の効果を備えたサッシ窓1Aを構成することができる。すなわち、第1実施形態における室内側のガラスパネル25Aに汚れが付着しにくく清掃性に優れるという効果が、本実施形態の室外側のガラスパネル25Bにおいて実現できるとともに、障子20の組立性についても第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0038】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態に係る建具であるサッシ窓1Bについて、図7〜図9に基づいて説明する。
図7は、サッシ窓1Bの下枠部分を示す縦断面図である。図8は、サッシ窓1Bの障子50を示す横断面図である。図9は、障子50の下部を断面して示す斜視図である。
サッシ窓1Bは、窓枠(枠体)40と、窓枠40内に開閉自在に支持された室内外一対の障子50とを備えた引違い窓である。窓枠40は、それぞれアルミ押出形材製の上枠(不図示)、下枠42、および左右の縦枠(不図示)を四周枠組みして形成されている。そして、下枠42には、障子50の戸車56を案内するレール部材42Aが設けられている。
【0039】
サッシ窓1Bの障子50は、上框(不図示)、下框52、および左右の縦框53,54と、これら上下左右の框(各框材)52〜54に固定された複層面材としての複層ガラス55とを備えて構成されている。そして、一組の障子50は、室内側の障子50Aと、室外側の障子50Bとが、それぞれ窓枠40内において左右にスライド自在に支持されるとともに、窓枠40の見付け方向(図8中、左右方向)略中央位置の召合せ部分で重なって閉じるようになっている。また、複層ガラス55は、第1実施形態の複層ガラス25と同様に、室内側のガラスパネル(第1のパネル材)55Aおよび室外側のガラスパネル(第2のパネル材)55Bからなる二枚のガラスパネル55A,55B同士が空気層55Cを介して対向配置され、ガラスパネル55A,55Bの四周端縁部分が連結シール材55Dにより連結されて空気層55Cが密閉されて形成されている。そして、複層ガラス55の下辺において、室外側のガラスパネル55Bの下端縁は、室内側のガラスパネル55Aの下端縁よりも下方に延びて形成されている。
【0040】
障子50の下框52は、中空状の框材本体部521と、この框材本体部521の上部室内側端から見付け方向上方に突出した見付け面部522と、框材本体部521の下部室外側端から見付け方向下方に突出した第2見付け面部523と、この第2見付け面部523の下端縁から室外側に突出した突出片部524とを有して形成されている。そして、突出片部524の先端が下枠42のレール部材42Aに設けた気密材42Bに摺接するようになっている。また、複層ガラス55は、室内側のガラスパネル55A下端縁の室内面が見付け面部522の室外側側面に接着テープ30によって接着され、室外側のガラスパネル55B下端縁の室内面が第2見付け面部523の室外側側面に接着テープ31によって接着されて下框52に固定されている。
【0041】
室内側の障子50Aにおける召合せ側の縦框53Aは、中空状の框材本体部531と、この框材本体部531の室外側側面によって構成された見付け面部532と、この見付け面部532から室外側に突出した見込み面部533とを有して形成されている。また、室外側の障子50Bにおける召合せ側の縦框53Bは、複層ガラス55の室内側にて見付け方向に延びる見付け面部534と、この見付け面部534から室外側に突出した見込み面部535と、見込み面部535の室外側に係合された押縁材536とを有して形成されている。
一方、戸先側の縦框54は、中空状の框材本体部541と、この框材本体部541の室外側側面によって構成された見付け面部542と、この見付け面部542から室外側に突出した見込み面部543と、見込み面部543の室外側に係合された押縁材544とを有して形成されている。
【0042】
また、複層ガラス55の左右の各辺において、室内外のガラスパネル55A,55Bの側端縁は、揃えて形成されており、室内側のガラスパネル55A側端縁の室内面が見付け面部532,534,542の室外側側面に接着テープ30によって接着されている。また、室外側の障子50Bにおける召合せ側の縦框53Bおよび戸先側の縦框54では、室外側のガラスパネル55Bが押縁材536,544によって室外側から押圧されている。そして、複層ガラス55の左右各端面は、縦框53,54の見込み面部533,535,543と隙間を介して対向し、これらの見込み面部533,535,543に覆われている。複層ガラス55は、室内側のガラスパネル55A側端縁の室内面が見付け面部532,534,542の室外側側面に接着テープ30によって接着されて縦框53,54に固定されている。
【0043】
以上のように構成された障子50では、室外空間に面した室外側のガラスパネル55Bには、雨水等の水がかかりやすくなっているが、かかった水は、図9に矢印で示すように、下框52の突出片部524上まで真っ直ぐに室外側のガラスパネル55B表面を流れ落ち、その表面上に溜まらないようになっている。下框52の突出片部524上に流れ落ちた水は、下枠42に設けられた図示しない排水経路を通って室外空間に排水されるようになっている。
このような本実施形態によれば、前述の(1)〜(8)の効果と略同様の効果を備えた引違い形式のサッシ窓1Bを構成することができる。
【0044】
なお、本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記各実施形態では、障子20,50が左右にスライド可能なサッシ窓1,1A,1Bを例示して説明したが、本発明の建具は、開き窓や、辷り出し窓、嵌め殺し窓等の各種形式のサッシ窓であってもよく、またサッシ窓に限らず、引き戸や開き戸等の各種出入り口であってもよい。
【0045】
また、前記各実施形態では、複層ガラス25,55の上辺および下辺における室内外いずれかのガラスパネルを延ばして形成し、左右の各辺における室内外のガラスパネルの側端縁を揃えて形成したが、これに限らず、少なくとも複層ガラス25,55の下辺において室内外いずれかのガラスパネルが延ばされ、かつ上および左右の各辺のうちの一辺において室内外のガラスパネルの側端縁が揃えて形成されていればよい。
また、前記各実施形態では、複層ガラス25,55の各框21,22,23,24,52,53,54への接着に、接着テープ30,31を用いたが、これに限らず、通常の接着剤を用いてもよい。また、框材の第2見付け面部213,223,523と複層ガラス25,55の室内外いずれかのガラスパネルとを接着する接着テープ31は、省略可能であり、この接着テープに代えてシール材等を設けてもよい。
【0046】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施形態に係る建具であるサッシ窓を示す縦断面図である。
【図2】前記サッシ窓を示す横断面図である。
【図3】前記サッシ窓の下枠部分を拡大して示す縦断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る建具であるサッシ窓を示す縦断面図である。
【図5】前記サッシ窓を示す横断面図である。
【図6】前記サッシ窓の下枠部分を拡大して示す縦断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る建具であるサッシ窓の下枠部分を示す縦断面図である。
【図8】前記サッシ窓の障子を示す横断面図である。
【図9】前記障子の下部を断面して示す斜視図である。
【符号の説明】
【0048】
1,1A,1B…建具であるサッシ窓、10,40…枠体である窓枠、20,50…障子、21…上框、22,52…下框、23,24,53,54…縦框、25,55…複層面材である複層ガラス、25A,25B…パネル材であるガラスパネル、25C…空気層、30,31…接着テープ、212,222,232,522,532,534,542…見付け面部、213,223,523…第2見付け面部、235,245,533,535,543…見込み面部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、この枠体に支持される障子とを備えた建具であって、
前記障子は、上框、下框、および左右の縦框と、第1および第2の一対のパネル材が空気層を介して対向配置された複層面材とを備えて構成され、
前記上下左右の各框材は、それぞれ見付け方向に延びる見付け面部を有して形成され、
前記複層面材は、前記第1のパネル材が前記見付け面部に接着されて前記上下左右の各框材に固定され、
前記複層面材の下辺において、前記第2のパネル材の下端縁が前記第1のパネル材の下端縁よりも下方に延びて形成され、かつ上および左右の三辺のうちの少なくとも一辺において、前記第1および第2のパネル材の端縁が揃えて形成されている建具。
【請求項2】
前記複層面材の上辺において、前記第2のパネル材の上端縁が前記第1のパネル材の上端縁よりも上方に延びて形成され、かつ左右の二辺において、前記第1および第2のパネル材の端縁が揃えて形成されている請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記第1のパネル材よりも前記第2のパネル材の端縁が延ばされた複層面材の辺に対応する前記框材には、前記見付け面部に平行な第2見付け面部が形成されており、この第2見付け面部に前記第2のパネル材が前記第1のパネル材の接着方向と同一方向から接着されている請求項1または請求項2に記載の建具。
【請求項4】
前記第1および第2のパネル材の端縁が揃えられた複層面材の辺に対応する前記框材には、見込み方向に延出して当該辺における複層面材の端面を覆う見込み面部が形成されている請求項1から請求項3のいずれかに記載の建具。
【請求項5】
前記複層面材の第1および第2のパネル材は、それぞれ第1および第2の空間に面して設けられており、当該第2の空間は、室外空間、または所定の室内空間である請求項1から請求項4のいずれかに記載の建具。
【請求項6】
少なくとも前記第2のパネル材の表面には、光触媒からなるコーティングが設けられている請求項1から請求項5のいずれかに記載の建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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