建物の持上げ用袋体及び当該袋体を用いた建物の修復方法
【課題】 狭い場合にも確実に押し込むことができるとともに、予め予測できる形状に膨らませることができ、しかも、膨張のし過ぎを抑制して、安定かつ確実に建物を持ち上げることができる。
【解決手段】 流体(空気)を圧力注入するための管体と、管体に連結されて圧力注入された流体によって膨張する内袋3と、内袋3を覆う外袋2とを備え、前記外袋2の外周縁2a又は前記管体4と前記外袋2との連結部6が補強手段52で補強されている建物の持上げ用袋体1を用いて、前記袋体1を、傾斜した建物101の基礎102と地盤との隙間103に挿入し、流体(空気)を圧力注入して膨らませる。
【解決手段】 流体(空気)を圧力注入するための管体と、管体に連結されて圧力注入された流体によって膨張する内袋3と、内袋3を覆う外袋2とを備え、前記外袋2の外周縁2a又は前記管体4と前記外袋2との連結部6が補強手段52で補強されている建物の持上げ用袋体1を用いて、前記袋体1を、傾斜した建物101の基礎102と地盤との隙間103に挿入し、流体(空気)を圧力注入して膨らませる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、震などで傾斜したような建物を持上げて修復するときなどに使用する建物の持上げ用袋体及び当該袋体を用いた建物の修復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに伴って発生した津波、及びその後の余震により大規模地震災害(東日本大震災)が引き起こされた。今回の東日本大震災により、傾いた住宅が多数点在した。傾いた要因の一つは地震により地盤が液状化現象を起こしたためであり、関東ローム層一帯に発生しやすい現象といわれている。
【0003】
傾斜建物を修復する工法として、傾斜した基礎の地盤を掘削するなどして出来た隙間に布製の袋体(ジャケットとも呼ばれる)を挿入し、前記袋体にグラウトと呼ばれる液状硬化材を注入し、膨らませることで家屋を基礎ごと持上げて、膨らませた前記袋体を固化させてその高さで固定する方法が知られている。ここで、グラウトとは、セメントペーストやモルタルなどの充てん性をよくした注入材である。グラウトは、注入後、数時間で固化することから、現場での作業時間が制限され、大型家屋での修正が難しくなっている。
【0004】
特許文献1には、建物の傾斜回復方法に関し、建物の平面上の短辺方向両側寄りの基礎底盤下と地盤間に硬化材充填袋を予め配設しておき、建物の沈下側の硬化材充填袋内に、基礎底盤を貫通し、硬化材充填袋に接続する注入ホースを通じて硬化材(グラウト)を注入して硬化材充填袋を膨張させ、建物の沈下側を押し上げて建物の傾斜を回復することを特徴とする建物の傾斜回復方法が記載されている(その請求項1等)。
【0005】
特許文献2には、建物の持上げ用袋体に関し、円周方向に継ぎ目のない筒状の織布から形成された外袋と、水密性を有する筒状のシート材料から形成された、外袋の内部で外袋とは独立した動きをすることが可能な内袋と、加圧液体(グラウト)の注入口部材からなる膨張袋体が記載されている(その請求項1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平7−6208号公報
【特許文献2】特開2009−155051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、グラウトは、注入後、数時間で固化することから、現場での作業時間が制限され、大型家屋での修正が難しくなっている。そこで、本願発明者は、グラウトに代えて空気や水などの流体を注入する方法を発案したいと長年研究していた。
【0008】
しかしながら、袋状の織布は、織布の構造上、空気が抜けてしまうことから、所定圧力の空気を注入するとエアー漏れしてしまう。例え水密性を有する袋状の織布としても、既存の袋状の織布は、2〜3気圧以上の圧力で空気を注入するとエアー漏れしてしまい、ほとんど膨らまない。発明者の基礎実験によれば、傾斜家屋の基礎を地盤から持上げるには、5〜7気圧(0.5〜0.7MPa)程度の注入圧力が必要となることがわかった。そこで、前記袋体の材質を織布からゴム袋とすることを発案した。しかし、ゴム袋は、長期間露出していると大気中のオゾンや紫外線などの影響を受けて表面に亀裂が発生し易くなり、亀裂が発生すると亀裂が拡大して穴があき内部の空気が漏れてしまう欠点がある。また、ゴム袋は釘やガラス片や金属片が刺さることで亀裂が出来易いという問題点もある。
【0009】
また、従来の袋体では、流体を圧入して一定の形状に維持することが難しい場合があった。例えば、狭い場所に確実に押し込むことは難しかった。これは、流体が空気である場合に限らないが、空気を利用する利点の一つに、この袋体を繰り返し使用することが挙げられ、繰り返していようする場合にも、狭い場所に確実に押し込むことが望まれる。また、地震等で傾斜した建物の基礎の部分における建物の持上げ用袋体を押し込む部分は、その部分の形状はまちまちではあるものの所定高さには持ち上げる必要があり、そのためには袋体を予め定まった形状に膨らむことが望まれる場合がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、狭い場合にも確実に押し込むことができるとともに、予め予測できる形状に膨らませることができ、しかも、膨張のし過ぎを抑制して、安全・安定かつ確実に建物を持ち上げることができる建物の持上げ用袋体と当該袋体を用いた建物の修復方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の建物の持上げ用袋体は、地震などで傾斜したような建物を持上げて修復するときに使用する建物の持上げ用袋体であって、流体を圧力注入するための管体と、管体に連結されて圧力注入された流体によって膨張する内袋と、内袋を覆う外袋とを備え、前記外袋の外周縁、又は、前記管体と前記外袋との連結部が補強手段で補強されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、圧力注入された気体によって膨張するゴム製の内袋と、内袋を覆う織編物からなる布製の外袋とを備えた多重構造とすることで、前記ゴム製の内袋に5〜7気圧(0.5〜0.7MPa)程度の圧力で気体を注入して傾斜家屋の基礎を地盤から持上げることができ、前記織編物からなる布製の外袋にて前記内袋を覆って前記内袋を大気中のオゾンや紫外線、傾斜建物付近の釘やガラス片や金属片等から保護することとなる。そして、本発明の建物の持上げ用袋体は、外袋の外周縁又は前記管体と前記外袋との連結部が補強手段で補強されているので、折り曲がるようなことがなく、補強した部分を手で持って建物の基礎の隙間に対して運び入れるようにしたり、建物の基礎の狭い部分でも、外周縁は折り曲がらないようにして、確実に挿入することができる。
【0013】
本発明としては、前記外袋が織編物からなる布製であるとともに、前記内袋が前記外袋よりも膨張率が大きなゴム製であることが好ましい。
本発明によれば、ゴム製の内袋を膨張させても、内袋の形状で膨張することはなく、膨張率が小さな外袋に倣って膨張するので、外袋の形状を調整することができる。換言すると、建物の修復に合わせた膨張に対応させたり、内袋が部分的に膨張させ過ぎることがなくなる。したがって、安全・安定かつ確実に建物を持ち上げることができる。
【0014】
本発明としては、前記外袋が布地を折り畳んで重ね合わせるとともに、折り畳み箇所以外の重ね合わせ箇所を前記補強手段である樹脂コーティング又は樹脂ブロックで補強されていることが好ましい。
本発明によれば、前記外袋を折り畳んで重ね合わせた箇所のみ補強手段で補強することで、簡単に本発明の建物の持上げ用袋体を製造することができる。なお、前記折り畳んで重ね合わせた箇所にも補強手段で補強しても良い。
【0015】
本発明としては、前記外袋の厚さを揃えるために山折り箇所を形成して、該山折り箇所を前記補強手段で補強することが好ましい。
本発明によれば、前記外袋の厚さを揃えるために山折り箇所を形成して、該山折り箇所を前記補強手段で補強することで、簡単に前記外袋の所定箇所の厚さを一定に揃える部分が形成できる。
【0016】
本発明の建物の修復方法は、地震などで傾斜したような建物の基礎を地盤から持上げるための建物の修復方法であって、流体を圧力注入するための管体と、管体に連結されて圧力注入された流体によって膨張する内袋と、内袋を覆う外袋とを備え、前記外袋の外周縁又は前記管体と前記外袋との連結部が補強手段で補強されている建物の持上げ用袋体を用いて、前記袋体を、傾斜した基礎と地盤との隙間に挿入し、流体を圧力注入して膨らませることで建物を基礎ごと持上げることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、内袋に空気を入れると、内袋は外袋の形状に倣って膨らむので、この袋体を建物の基礎の部分に押し込むようにするとき、その所定形状に沿って押し込むことができ、袋体が折り曲げられたりすることなく、配置することができる。そして、前記外袋の外周縁、又は、前記管と外袋との連結部分が補強手段で補強されているので、どこを持っても、折れ曲がるようなことはなく、基礎の部分の隙間が狭くても、確実に挿入させることができる。
【0018】
本発明としては、前記外袋が織編物からなる布製であるとともに、前記内袋が前記外袋よりも膨張率が大きなゴム製であり、このゴム製の内袋に空気を圧力注入して膨らませることで建物を基礎ごと持上げて、前記袋体を膨らませた状態で基礎と地盤とをセメントやモルタル等の接合材入り袋等を補強部材として配することで高さを維持しておき、前記空気を抜いて前記袋体を萎ませて取り外し、前記袋体を取り外した後の空間をセメントやモルタル等の接合材を用いて固めることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、前記内袋が前記外袋よりも膨張率が大きなゴム製ではあるが、外袋の所定箇所が補強手段で補強されているので、ゴム製の内袋は外袋に倣って膨張して、所定形状を呈するが、空気が膨張過ぎることを外袋が抑制する。また、空気を抜いて前記袋体を萎ませて抜くので、前記袋体を再使用することができ、資源の有効利用が図られる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の建物の持上げ用袋体によれば、外袋の外周縁や前記管体と前記外袋の連結部を補強材で補強することで、前記外袋の外周縁が補強され枠状の骨組みとなって皺になり難く折れ曲がり難い構造となるので、傾斜した基礎と地盤との隙間に前記袋体を扁平な状態のまま挿入し易くなる。前記多角形状の角から中央に向かって部分的に山折りとなっている構成とすることで、前記外袋が膨張する際に中央部が周辺部よりも高くなるとともに、箱形状となって前記外袋の全体的な強度が向上する。また、内袋は長期使用に耐え得る安全性が高く、又、内袋には流体を入れ過ぎることが外袋の所定形状で抑制できると共に、外袋で所定の平坦面形状等種種形成できるので、作業の安全性が図られるのみならず、正確な建物の修復作業に利用できる。
【0021】
本発明の建物の修復方法によれば、傾斜した基礎と地盤との隙間に前記袋体を挿入し、空気を圧力注入して膨らませることで建物を基礎ごと持上げて、前記袋体を膨らませた状態で基礎と地盤とをセメントやモルタル等の接合材入り袋等を補強部材として配することで補強し、空気を抜いて前記袋体を萎ませて抜くので、前記袋体を再使用することができ、資源の有効利用が図られ、建物の修復コストの削減ができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態の建物の持上げ用袋体を上から見た平面図である。
【図2】上記実施形態の袋体を手前側から見た正面図である。
【図3】上記実施形態の袋体のA−A線断面図である。
【図4】上記実施形態の袋体を膨張させたときの正面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の建物の持上げ用袋体を上から見た平面図である。
【図6】上記実施形態の袋体を手前側から見た正面図である。
【図7】上記実施形態の袋体のA−A線断面図である。
【図8】上記実施形態の袋体を膨張させたときの正面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態の建物の持上げ用袋体を上から見た平面図である。
【図10】上記実施形態の袋体を手前側から見た正面図である。
【図11】上記実施形態の袋体を膨張させたときの正面図である。
【図12】本発明の建物の持上げ用袋体を用いた建物の修復手順を示すフローチャート図である。
【図13】上記袋体を基礎と地盤との隙間に挿入した状態を側面側から示す断面図である。
【図14】上記袋体を膨らませた状態を示す断面図である。
【図15】上記袋体によって持ち上げた基礎と地盤との間にセメントやモルタル等の接合材入り袋等を補強部材として配した状態を示す断面図である。
【図16】上記袋体を外して基礎と地盤との間を埋めて補強した状態を示す断面図である。
【図17】本発明の他の実施形態の建物の持上げ用袋体を上から見た平面図である。
【図18】上記他の実施形態の背面図である。
【図19】上記他の実施形態の袋体を膨張させたときの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を図面を引用しながら説明する。
【0024】
本実施の形態の建物の持上げ用袋体1は、流体を圧力注入するための管体4と、管体4に連結されて圧力注入された流体によって膨張する内袋3と、内袋3を覆う外袋4とを備える。流体としては、空気を使用して、空気を内袋3に圧入して、内袋を外袋の形状に倣って膨張させる構造である。
【0025】
外袋2は、内袋3を所定形状に沿って膨らませるために使用され、例えば、土嚢袋のような袋が使用可能である。また、前記外袋2の材質としては、例えばポリエステル、ナイロン、PPS、アラミド繊維等が挙げられる。これらの素材を二つ折りにして、その重ね合わせ箇所2aを縫合51した上で、補強手段52で補強している。なお、折り畳み箇所2bの補強は、なされていないが、補強しても良い。図5ないし図8に示す例は、折り畳み箇所2bの補強もなされている他の例である。
補強手段52としては、樹脂製や金属製の部材で外周縁を把持するクリップのような補強部材を使用しても良く、又、外周縁を縫合51する糸であっても良い。また、例えばエポキシ、アクリル、ポリカーボネート、ビニル、ウレタン等の補強剤、すなわち引っ張り強度に加えて曲げ強度の高い樹脂を補強剤として用いられる。前記樹脂コーティングは、前記外袋の外周縁に沿って刷毛塗りやスプレー塗布等を施すことによってコーティングし補強される。前記樹脂ブロックは、棒状や枠状の樹脂を前記外袋の外周縁に沿って接着、溶着、縫合する等による補強手段により接合し補強される。また、接着剤や、例えば天然ゴム、シリコーンゴム、二トリルゴム、NBR等のような補強剤であっても良い。そして、補強手段52で外袋2の形状を所定形状に保持している。
【0026】
また、前記管体4と前記外袋2との連結部6は、膨張しないようにして、搬送するときや、建物101の基礎102の隙間103に押し込む時に、管体4やその周辺部分6を手で把持して押し込み操作し易くなるように構成されている。外袋2の外周縁2a,2bは、少なくとも1/2から3/4の長さで補強手段52で補強すると、外周縁2a,2bを直線的に保持でき(空気を入れない状態でも、折れ曲がるようなことがなく)、建物101の基礎102の隙間(狭い隙間)103でも、押込み易くなる形状を保持する。
【0027】
ここで、本実施の形態によれば、袋体1を全体的に同じ厚さに揃えたり、傾斜する建物に応じて、袋体1の一部のみ所定形状に膨張させるようにして、所定箇所の厚さを一定に揃える部分を容易に形成することができる。すなわち、図9ないし図11に示すように、外袋3の四隅を所定厚さに保持するための山折り54がこれに当たる。すなわち、図9ないし図11の例では、もともとは円弧状であっても、その多角形状の角から中央に向かう対角線上に所定長さで縫製51が施されており、この縫製51によって前記多角形状の角から中央に向かって部分的に山折りとなっており、上記縫製54や補強手段52により、記外袋3が平面視で多角形状に形成している。したがって、内袋3に空気を供給すると、内袋3は膨張するが、上記外袋2の形状に倣って膨張して、所定の厚さに袋体1をその形状を維持するようにできる。このように外袋2の外周縁2a,2bは厚さを薄くして、中央側は所定箇所の厚さに調整することができるが、外袋2は、長方形状の布地を使用しても、上記山折り(或いは、縫製51による山折りが形状を整え易い)とその部分の補強手段52による補強により、その中央部分を円形状で所定の厚みのある平坦面にしたり、所定の厚みを有する正方形としたり、又、山折り(或いは、縫製51による山折りが形状を整え易い)の仕方とその部分の補強手段52による補強によって、傾斜形状にしたり、アール形状にしたり、様々な価値地にすることができる。
【0028】
内袋3は、管体4に連結されて圧力注入される袋であり、空気を流体とする本実施の形態では、ゴム製として、空気が漏れないようにしている。内袋の材質としては、例えば天然ゴム、シリコーンゴム、二トリルゴム、NBR等が挙げられる。
【0029】
管体4は、開閉弁41が備わっている。袋体1に圧力注入された気体を閉じ込めて前記袋体の膨張状態を維持することが容易であり、前記袋体1に圧力注入された気体を少しずつ抜くことで前記袋体の高さを微調整することも可能となる。前記開閉弁41としては、例えばゲートバルブ、ボールバルブ、ニードルバルブ、ストップバルブ等が挙げられる。そして、管体4と前記外袋2との連結部6には、補強手段52で補強されている。したがって、管体4やその付近6を手で持って、建物の基礎の隙間部分に本実施の形態の袋体1を押し込む作業を行なうときでも、管体付近が折り曲がったりするようなことが防止され、押し込み操作がし易くなる。なお、管体4の取り付け位置は、袋体1のどの位置でも取り付けることができるが、その部分には補強手段52を介して補強することが好ましい。
【0030】
したがって、本実施の形態の本発明の建物の持上げ用袋体1を使用して、地震等で傾斜した建物の修復をする場合は、図12のフロー図と、図13〜図16の順序で行なわれる。
まず前提として、管体4に空気ポンプ91からのパイプ92とをバルブ41を介して連結させる。
次いで、地震等で傾斜した建物101の基礎102の隙間103に、持上げ用袋1を挿入する(S1)。本実施の形態では、管体4の連結部分6や外袋2の外周縁2aは補強手段52で補強されているので、管体4やその付近6を手で持って、上記隙間103に本実施の形態の袋体1を押し込む作業を行なうときでも、管体付近6が折り曲がったりするようなことが防止される。また、外袋2の外周縁2aも補強手段52,54で補強されているので、建物101の基礎102の狭い隙間部分103にも、折り曲がるようなことなく配置することができる。すなわち、空気が入れてなくとも、狭い隙間に確実に挿入可能で有る。
次いで、ポンプ91から内袋2に空気を供給すると(S2)、内袋3は外袋2の形状に倣って膨らむ。例えば、図9ないし図11に示す例では、外袋2にはその厚さを一定の厚さに保持するための山折りが設けられているので、内袋はこの山折り52に倣って膨張して所定厚さの袋体としてその所定を保持する。
次いで、前記袋体を膨らませた状態で基礎と地盤とをセメントやモルタル等の接合材入り袋等を補強部材201として配することで補強し(S3)、空気を抜いて前記袋体を萎ませて抜いて(S4)、セメントやモルタル等の接合材202を用いて固める(S5)。このようにして、傾いた建物の修復を図る。そして、本実施の形態の建物の持上げ用袋体は、繰り返して使用可能であるが、抜き取るときに、空気を抜いても、持上げ用袋体1の外周縁2a,2bや管体4の連結部分6は補強されているので、折り曲がったり、著しく小型になることなく、引き出すことができる。なお、トラックの荷台に積み込むときも、倉庫に保管するときも、型崩れすることなく、保管や運搬が可能である。
【0031】
このように、萎んだ状態では扁平で変形し易くなっており、傾斜した基礎の地盤を掘削するなどして出来た隙間103に前記袋体を挿入する際に、皺になったり折れ曲がったりすることがある。しかし、本実施の形態の建物の持上げ用袋体1は、管体4と外袋2の連結部6や、外袋の外周縁には樹脂コーティングされているか又は樹脂ブロックで補強されている構成であるから、前記外袋の外周縁が補強され枠状の骨組みとなって皺になり難く折れ曲がり難い構造となるので、傾斜した基礎と地盤との隙間に前記袋体を扁平な状態のまま挿入し易くなる。
なお、本実施の形態の袋体1の形状は、上から見た平面視で、円形状、楕円形状、半円形状、三角形状、四角形、五角形、六角形などの多角形状、ドーナツ形状等となっており、萎んだ状態では扁平で高さが低くなっており、気体(空気)を圧力注入することで膨張させて元の高さよりも数十cm程度(20〜70cm)嵩上げすることが多い実施例である。そして、予め膨張するときの形状を、図9に示すように、所定の厚みにしたり、または、図17から図19に示すように、縫製した箇所55や、その部分を補強手段54で補強することにより、表裏の一方のみを円形状に突出させたりするなどの予測した形状状態にすることができる。すなわち、建物の基礎の隙間103の形状に合わせて膨らませるようにできる。
【0032】
また、本実施の形態では、内袋3が外袋よりも膨張率が大きなゴム製であり、外袋2の所定箇所が補強手段52で補強されているので、ゴム製の内袋3は外袋2の形状や補強手段で囲んだ部分に倣って膨張して、所定形状を呈するので、ゴム製の内袋3を必要以上に膨張させて、損傷させるようなこともない。
【0033】
上述した実施形態では、建物の持上げ用袋体1が座布団のような矩形状に膨張する例で説明したが、外袋2の外周縁の補強の仕方によっては、種種の形状や厚さを呈すること可能である。また、流体としては、ゴム製の内袋3に水を供給することも可能である。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0034】
1 持上げ用袋体、
2 外袋、2a,2b 外周縁、
3 内袋、
4 管体、
41 開閉弁、
52,54 補強手段、
53 山折り、
6 管体と外袋との連結部
101 建物、
102 基礎、
103 建物の基礎の隙間、
202 接合材、
【技術分野】
【0001】
本発明は、震などで傾斜したような建物を持上げて修復するときなどに使用する建物の持上げ用袋体及び当該袋体を用いた建物の修復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに伴って発生した津波、及びその後の余震により大規模地震災害(東日本大震災)が引き起こされた。今回の東日本大震災により、傾いた住宅が多数点在した。傾いた要因の一つは地震により地盤が液状化現象を起こしたためであり、関東ローム層一帯に発生しやすい現象といわれている。
【0003】
傾斜建物を修復する工法として、傾斜した基礎の地盤を掘削するなどして出来た隙間に布製の袋体(ジャケットとも呼ばれる)を挿入し、前記袋体にグラウトと呼ばれる液状硬化材を注入し、膨らませることで家屋を基礎ごと持上げて、膨らませた前記袋体を固化させてその高さで固定する方法が知られている。ここで、グラウトとは、セメントペーストやモルタルなどの充てん性をよくした注入材である。グラウトは、注入後、数時間で固化することから、現場での作業時間が制限され、大型家屋での修正が難しくなっている。
【0004】
特許文献1には、建物の傾斜回復方法に関し、建物の平面上の短辺方向両側寄りの基礎底盤下と地盤間に硬化材充填袋を予め配設しておき、建物の沈下側の硬化材充填袋内に、基礎底盤を貫通し、硬化材充填袋に接続する注入ホースを通じて硬化材(グラウト)を注入して硬化材充填袋を膨張させ、建物の沈下側を押し上げて建物の傾斜を回復することを特徴とする建物の傾斜回復方法が記載されている(その請求項1等)。
【0005】
特許文献2には、建物の持上げ用袋体に関し、円周方向に継ぎ目のない筒状の織布から形成された外袋と、水密性を有する筒状のシート材料から形成された、外袋の内部で外袋とは独立した動きをすることが可能な内袋と、加圧液体(グラウト)の注入口部材からなる膨張袋体が記載されている(その請求項1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平7−6208号公報
【特許文献2】特開2009−155051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、グラウトは、注入後、数時間で固化することから、現場での作業時間が制限され、大型家屋での修正が難しくなっている。そこで、本願発明者は、グラウトに代えて空気や水などの流体を注入する方法を発案したいと長年研究していた。
【0008】
しかしながら、袋状の織布は、織布の構造上、空気が抜けてしまうことから、所定圧力の空気を注入するとエアー漏れしてしまう。例え水密性を有する袋状の織布としても、既存の袋状の織布は、2〜3気圧以上の圧力で空気を注入するとエアー漏れしてしまい、ほとんど膨らまない。発明者の基礎実験によれば、傾斜家屋の基礎を地盤から持上げるには、5〜7気圧(0.5〜0.7MPa)程度の注入圧力が必要となることがわかった。そこで、前記袋体の材質を織布からゴム袋とすることを発案した。しかし、ゴム袋は、長期間露出していると大気中のオゾンや紫外線などの影響を受けて表面に亀裂が発生し易くなり、亀裂が発生すると亀裂が拡大して穴があき内部の空気が漏れてしまう欠点がある。また、ゴム袋は釘やガラス片や金属片が刺さることで亀裂が出来易いという問題点もある。
【0009】
また、従来の袋体では、流体を圧入して一定の形状に維持することが難しい場合があった。例えば、狭い場所に確実に押し込むことは難しかった。これは、流体が空気である場合に限らないが、空気を利用する利点の一つに、この袋体を繰り返し使用することが挙げられ、繰り返していようする場合にも、狭い場所に確実に押し込むことが望まれる。また、地震等で傾斜した建物の基礎の部分における建物の持上げ用袋体を押し込む部分は、その部分の形状はまちまちではあるものの所定高さには持ち上げる必要があり、そのためには袋体を予め定まった形状に膨らむことが望まれる場合がある。
【0010】
そこで、本発明の目的は、狭い場合にも確実に押し込むことができるとともに、予め予測できる形状に膨らませることができ、しかも、膨張のし過ぎを抑制して、安全・安定かつ確実に建物を持ち上げることができる建物の持上げ用袋体と当該袋体を用いた建物の修復方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の建物の持上げ用袋体は、地震などで傾斜したような建物を持上げて修復するときに使用する建物の持上げ用袋体であって、流体を圧力注入するための管体と、管体に連結されて圧力注入された流体によって膨張する内袋と、内袋を覆う外袋とを備え、前記外袋の外周縁、又は、前記管体と前記外袋との連結部が補強手段で補強されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、圧力注入された気体によって膨張するゴム製の内袋と、内袋を覆う織編物からなる布製の外袋とを備えた多重構造とすることで、前記ゴム製の内袋に5〜7気圧(0.5〜0.7MPa)程度の圧力で気体を注入して傾斜家屋の基礎を地盤から持上げることができ、前記織編物からなる布製の外袋にて前記内袋を覆って前記内袋を大気中のオゾンや紫外線、傾斜建物付近の釘やガラス片や金属片等から保護することとなる。そして、本発明の建物の持上げ用袋体は、外袋の外周縁又は前記管体と前記外袋との連結部が補強手段で補強されているので、折り曲がるようなことがなく、補強した部分を手で持って建物の基礎の隙間に対して運び入れるようにしたり、建物の基礎の狭い部分でも、外周縁は折り曲がらないようにして、確実に挿入することができる。
【0013】
本発明としては、前記外袋が織編物からなる布製であるとともに、前記内袋が前記外袋よりも膨張率が大きなゴム製であることが好ましい。
本発明によれば、ゴム製の内袋を膨張させても、内袋の形状で膨張することはなく、膨張率が小さな外袋に倣って膨張するので、外袋の形状を調整することができる。換言すると、建物の修復に合わせた膨張に対応させたり、内袋が部分的に膨張させ過ぎることがなくなる。したがって、安全・安定かつ確実に建物を持ち上げることができる。
【0014】
本発明としては、前記外袋が布地を折り畳んで重ね合わせるとともに、折り畳み箇所以外の重ね合わせ箇所を前記補強手段である樹脂コーティング又は樹脂ブロックで補強されていることが好ましい。
本発明によれば、前記外袋を折り畳んで重ね合わせた箇所のみ補強手段で補強することで、簡単に本発明の建物の持上げ用袋体を製造することができる。なお、前記折り畳んで重ね合わせた箇所にも補強手段で補強しても良い。
【0015】
本発明としては、前記外袋の厚さを揃えるために山折り箇所を形成して、該山折り箇所を前記補強手段で補強することが好ましい。
本発明によれば、前記外袋の厚さを揃えるために山折り箇所を形成して、該山折り箇所を前記補強手段で補強することで、簡単に前記外袋の所定箇所の厚さを一定に揃える部分が形成できる。
【0016】
本発明の建物の修復方法は、地震などで傾斜したような建物の基礎を地盤から持上げるための建物の修復方法であって、流体を圧力注入するための管体と、管体に連結されて圧力注入された流体によって膨張する内袋と、内袋を覆う外袋とを備え、前記外袋の外周縁又は前記管体と前記外袋との連結部が補強手段で補強されている建物の持上げ用袋体を用いて、前記袋体を、傾斜した基礎と地盤との隙間に挿入し、流体を圧力注入して膨らませることで建物を基礎ごと持上げることを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、内袋に空気を入れると、内袋は外袋の形状に倣って膨らむので、この袋体を建物の基礎の部分に押し込むようにするとき、その所定形状に沿って押し込むことができ、袋体が折り曲げられたりすることなく、配置することができる。そして、前記外袋の外周縁、又は、前記管と外袋との連結部分が補強手段で補強されているので、どこを持っても、折れ曲がるようなことはなく、基礎の部分の隙間が狭くても、確実に挿入させることができる。
【0018】
本発明としては、前記外袋が織編物からなる布製であるとともに、前記内袋が前記外袋よりも膨張率が大きなゴム製であり、このゴム製の内袋に空気を圧力注入して膨らませることで建物を基礎ごと持上げて、前記袋体を膨らませた状態で基礎と地盤とをセメントやモルタル等の接合材入り袋等を補強部材として配することで高さを維持しておき、前記空気を抜いて前記袋体を萎ませて取り外し、前記袋体を取り外した後の空間をセメントやモルタル等の接合材を用いて固めることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、前記内袋が前記外袋よりも膨張率が大きなゴム製ではあるが、外袋の所定箇所が補強手段で補強されているので、ゴム製の内袋は外袋に倣って膨張して、所定形状を呈するが、空気が膨張過ぎることを外袋が抑制する。また、空気を抜いて前記袋体を萎ませて抜くので、前記袋体を再使用することができ、資源の有効利用が図られる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の建物の持上げ用袋体によれば、外袋の外周縁や前記管体と前記外袋の連結部を補強材で補強することで、前記外袋の外周縁が補強され枠状の骨組みとなって皺になり難く折れ曲がり難い構造となるので、傾斜した基礎と地盤との隙間に前記袋体を扁平な状態のまま挿入し易くなる。前記多角形状の角から中央に向かって部分的に山折りとなっている構成とすることで、前記外袋が膨張する際に中央部が周辺部よりも高くなるとともに、箱形状となって前記外袋の全体的な強度が向上する。また、内袋は長期使用に耐え得る安全性が高く、又、内袋には流体を入れ過ぎることが外袋の所定形状で抑制できると共に、外袋で所定の平坦面形状等種種形成できるので、作業の安全性が図られるのみならず、正確な建物の修復作業に利用できる。
【0021】
本発明の建物の修復方法によれば、傾斜した基礎と地盤との隙間に前記袋体を挿入し、空気を圧力注入して膨らませることで建物を基礎ごと持上げて、前記袋体を膨らませた状態で基礎と地盤とをセメントやモルタル等の接合材入り袋等を補強部材として配することで補強し、空気を抜いて前記袋体を萎ませて抜くので、前記袋体を再使用することができ、資源の有効利用が図られ、建物の修復コストの削減ができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態の建物の持上げ用袋体を上から見た平面図である。
【図2】上記実施形態の袋体を手前側から見た正面図である。
【図3】上記実施形態の袋体のA−A線断面図である。
【図4】上記実施形態の袋体を膨張させたときの正面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の建物の持上げ用袋体を上から見た平面図である。
【図6】上記実施形態の袋体を手前側から見た正面図である。
【図7】上記実施形態の袋体のA−A線断面図である。
【図8】上記実施形態の袋体を膨張させたときの正面図である。
【図9】本発明の第3の実施形態の建物の持上げ用袋体を上から見た平面図である。
【図10】上記実施形態の袋体を手前側から見た正面図である。
【図11】上記実施形態の袋体を膨張させたときの正面図である。
【図12】本発明の建物の持上げ用袋体を用いた建物の修復手順を示すフローチャート図である。
【図13】上記袋体を基礎と地盤との隙間に挿入した状態を側面側から示す断面図である。
【図14】上記袋体を膨らませた状態を示す断面図である。
【図15】上記袋体によって持ち上げた基礎と地盤との間にセメントやモルタル等の接合材入り袋等を補強部材として配した状態を示す断面図である。
【図16】上記袋体を外して基礎と地盤との間を埋めて補強した状態を示す断面図である。
【図17】本発明の他の実施形態の建物の持上げ用袋体を上から見た平面図である。
【図18】上記他の実施形態の背面図である。
【図19】上記他の実施形態の袋体を膨張させたときの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態を図面を引用しながら説明する。
【0024】
本実施の形態の建物の持上げ用袋体1は、流体を圧力注入するための管体4と、管体4に連結されて圧力注入された流体によって膨張する内袋3と、内袋3を覆う外袋4とを備える。流体としては、空気を使用して、空気を内袋3に圧入して、内袋を外袋の形状に倣って膨張させる構造である。
【0025】
外袋2は、内袋3を所定形状に沿って膨らませるために使用され、例えば、土嚢袋のような袋が使用可能である。また、前記外袋2の材質としては、例えばポリエステル、ナイロン、PPS、アラミド繊維等が挙げられる。これらの素材を二つ折りにして、その重ね合わせ箇所2aを縫合51した上で、補強手段52で補強している。なお、折り畳み箇所2bの補強は、なされていないが、補強しても良い。図5ないし図8に示す例は、折り畳み箇所2bの補強もなされている他の例である。
補強手段52としては、樹脂製や金属製の部材で外周縁を把持するクリップのような補強部材を使用しても良く、又、外周縁を縫合51する糸であっても良い。また、例えばエポキシ、アクリル、ポリカーボネート、ビニル、ウレタン等の補強剤、すなわち引っ張り強度に加えて曲げ強度の高い樹脂を補強剤として用いられる。前記樹脂コーティングは、前記外袋の外周縁に沿って刷毛塗りやスプレー塗布等を施すことによってコーティングし補強される。前記樹脂ブロックは、棒状や枠状の樹脂を前記外袋の外周縁に沿って接着、溶着、縫合する等による補強手段により接合し補強される。また、接着剤や、例えば天然ゴム、シリコーンゴム、二トリルゴム、NBR等のような補強剤であっても良い。そして、補強手段52で外袋2の形状を所定形状に保持している。
【0026】
また、前記管体4と前記外袋2との連結部6は、膨張しないようにして、搬送するときや、建物101の基礎102の隙間103に押し込む時に、管体4やその周辺部分6を手で把持して押し込み操作し易くなるように構成されている。外袋2の外周縁2a,2bは、少なくとも1/2から3/4の長さで補強手段52で補強すると、外周縁2a,2bを直線的に保持でき(空気を入れない状態でも、折れ曲がるようなことがなく)、建物101の基礎102の隙間(狭い隙間)103でも、押込み易くなる形状を保持する。
【0027】
ここで、本実施の形態によれば、袋体1を全体的に同じ厚さに揃えたり、傾斜する建物に応じて、袋体1の一部のみ所定形状に膨張させるようにして、所定箇所の厚さを一定に揃える部分を容易に形成することができる。すなわち、図9ないし図11に示すように、外袋3の四隅を所定厚さに保持するための山折り54がこれに当たる。すなわち、図9ないし図11の例では、もともとは円弧状であっても、その多角形状の角から中央に向かう対角線上に所定長さで縫製51が施されており、この縫製51によって前記多角形状の角から中央に向かって部分的に山折りとなっており、上記縫製54や補強手段52により、記外袋3が平面視で多角形状に形成している。したがって、内袋3に空気を供給すると、内袋3は膨張するが、上記外袋2の形状に倣って膨張して、所定の厚さに袋体1をその形状を維持するようにできる。このように外袋2の外周縁2a,2bは厚さを薄くして、中央側は所定箇所の厚さに調整することができるが、外袋2は、長方形状の布地を使用しても、上記山折り(或いは、縫製51による山折りが形状を整え易い)とその部分の補強手段52による補強により、その中央部分を円形状で所定の厚みのある平坦面にしたり、所定の厚みを有する正方形としたり、又、山折り(或いは、縫製51による山折りが形状を整え易い)の仕方とその部分の補強手段52による補強によって、傾斜形状にしたり、アール形状にしたり、様々な価値地にすることができる。
【0028】
内袋3は、管体4に連結されて圧力注入される袋であり、空気を流体とする本実施の形態では、ゴム製として、空気が漏れないようにしている。内袋の材質としては、例えば天然ゴム、シリコーンゴム、二トリルゴム、NBR等が挙げられる。
【0029】
管体4は、開閉弁41が備わっている。袋体1に圧力注入された気体を閉じ込めて前記袋体の膨張状態を維持することが容易であり、前記袋体1に圧力注入された気体を少しずつ抜くことで前記袋体の高さを微調整することも可能となる。前記開閉弁41としては、例えばゲートバルブ、ボールバルブ、ニードルバルブ、ストップバルブ等が挙げられる。そして、管体4と前記外袋2との連結部6には、補強手段52で補強されている。したがって、管体4やその付近6を手で持って、建物の基礎の隙間部分に本実施の形態の袋体1を押し込む作業を行なうときでも、管体付近が折り曲がったりするようなことが防止され、押し込み操作がし易くなる。なお、管体4の取り付け位置は、袋体1のどの位置でも取り付けることができるが、その部分には補強手段52を介して補強することが好ましい。
【0030】
したがって、本実施の形態の本発明の建物の持上げ用袋体1を使用して、地震等で傾斜した建物の修復をする場合は、図12のフロー図と、図13〜図16の順序で行なわれる。
まず前提として、管体4に空気ポンプ91からのパイプ92とをバルブ41を介して連結させる。
次いで、地震等で傾斜した建物101の基礎102の隙間103に、持上げ用袋1を挿入する(S1)。本実施の形態では、管体4の連結部分6や外袋2の外周縁2aは補強手段52で補強されているので、管体4やその付近6を手で持って、上記隙間103に本実施の形態の袋体1を押し込む作業を行なうときでも、管体付近6が折り曲がったりするようなことが防止される。また、外袋2の外周縁2aも補強手段52,54で補強されているので、建物101の基礎102の狭い隙間部分103にも、折り曲がるようなことなく配置することができる。すなわち、空気が入れてなくとも、狭い隙間に確実に挿入可能で有る。
次いで、ポンプ91から内袋2に空気を供給すると(S2)、内袋3は外袋2の形状に倣って膨らむ。例えば、図9ないし図11に示す例では、外袋2にはその厚さを一定の厚さに保持するための山折りが設けられているので、内袋はこの山折り52に倣って膨張して所定厚さの袋体としてその所定を保持する。
次いで、前記袋体を膨らませた状態で基礎と地盤とをセメントやモルタル等の接合材入り袋等を補強部材201として配することで補強し(S3)、空気を抜いて前記袋体を萎ませて抜いて(S4)、セメントやモルタル等の接合材202を用いて固める(S5)。このようにして、傾いた建物の修復を図る。そして、本実施の形態の建物の持上げ用袋体は、繰り返して使用可能であるが、抜き取るときに、空気を抜いても、持上げ用袋体1の外周縁2a,2bや管体4の連結部分6は補強されているので、折り曲がったり、著しく小型になることなく、引き出すことができる。なお、トラックの荷台に積み込むときも、倉庫に保管するときも、型崩れすることなく、保管や運搬が可能である。
【0031】
このように、萎んだ状態では扁平で変形し易くなっており、傾斜した基礎の地盤を掘削するなどして出来た隙間103に前記袋体を挿入する際に、皺になったり折れ曲がったりすることがある。しかし、本実施の形態の建物の持上げ用袋体1は、管体4と外袋2の連結部6や、外袋の外周縁には樹脂コーティングされているか又は樹脂ブロックで補強されている構成であるから、前記外袋の外周縁が補強され枠状の骨組みとなって皺になり難く折れ曲がり難い構造となるので、傾斜した基礎と地盤との隙間に前記袋体を扁平な状態のまま挿入し易くなる。
なお、本実施の形態の袋体1の形状は、上から見た平面視で、円形状、楕円形状、半円形状、三角形状、四角形、五角形、六角形などの多角形状、ドーナツ形状等となっており、萎んだ状態では扁平で高さが低くなっており、気体(空気)を圧力注入することで膨張させて元の高さよりも数十cm程度(20〜70cm)嵩上げすることが多い実施例である。そして、予め膨張するときの形状を、図9に示すように、所定の厚みにしたり、または、図17から図19に示すように、縫製した箇所55や、その部分を補強手段54で補強することにより、表裏の一方のみを円形状に突出させたりするなどの予測した形状状態にすることができる。すなわち、建物の基礎の隙間103の形状に合わせて膨らませるようにできる。
【0032】
また、本実施の形態では、内袋3が外袋よりも膨張率が大きなゴム製であり、外袋2の所定箇所が補強手段52で補強されているので、ゴム製の内袋3は外袋2の形状や補強手段で囲んだ部分に倣って膨張して、所定形状を呈するので、ゴム製の内袋3を必要以上に膨張させて、損傷させるようなこともない。
【0033】
上述した実施形態では、建物の持上げ用袋体1が座布団のような矩形状に膨張する例で説明したが、外袋2の外周縁の補強の仕方によっては、種種の形状や厚さを呈すること可能である。また、流体としては、ゴム製の内袋3に水を供給することも可能である。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0034】
1 持上げ用袋体、
2 外袋、2a,2b 外周縁、
3 内袋、
4 管体、
41 開閉弁、
52,54 補強手段、
53 山折り、
6 管体と外袋との連結部
101 建物、
102 基礎、
103 建物の基礎の隙間、
202 接合材、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震などで傾斜したような建物を持上げて修復するときに使用する建物の持上げ用袋体であって、
流体を圧力注入するための管体と、管体に連結されて圧力注入された流体によって膨張する内袋と、内袋を覆う外袋とを備え、
前記外袋の外周縁、又は、前記管体と前記外袋との連結部が補強手段で補強されていることを特徴とする建物の持上げ用袋体。
【請求項2】
前記外袋が織編物からなる布製であるとともに、前記内袋が前記外袋よりも膨張率が大きなゴム製であることを特徴とする請求項1記載の建物の持上げ用袋体。
【請求項3】
前記外袋が布地を折り畳んで重ね合わせるとともに、折り畳み箇所以外の重ね合わせ箇所を前記補強手段である樹脂コーティング又は樹脂ブロックで補強されていることを特徴とする請求項2記載の建物の持上げ用袋体。
【請求項4】
前記外袋の厚さを揃えるために山折り箇所を形成して、該山折り箇所を前記補強手段で補強していることを特徴とする請求項3記載の建物の持上げ用袋体。
【請求項5】
地震などで傾斜したような建物の基礎を地盤から持上げるための建物の修復方法であって、
流体を圧力注入するための管体と、管体に連結されて圧力注入された流体によって膨張する内袋と、内袋を覆う外袋とを備え、前記外袋の外周縁又は前記管体と前記外袋との連結部が補強手段で補強されている建物の持上げ用袋体を用いて、
前記袋体を、傾斜した基礎と地盤との隙間に挿入し、流体を圧力注入して膨らませることで建物を基礎ごと持上げることを特徴とする建物の修復方法。
【請求項6】
前記流体が空気であり、前記内袋が前記外袋よりも膨張率が大きなゴム製であり、このゴム製の内袋に空気を圧力注入して膨らませることで建物を基礎ごと持上げて、前記袋体を膨らませた状態で基礎と地盤とをセメントやモルタル等の接合材入り袋等を補強部材として配することで高さを維持しておき、前記空気を抜いて前記袋体を萎ませて取り外し、前記袋体を取り外した後の空間をセメントやモルタル等の接合材を用いて固めることを特徴とする請求項5記載の建物の修復方法。
【請求項1】
地震などで傾斜したような建物を持上げて修復するときに使用する建物の持上げ用袋体であって、
流体を圧力注入するための管体と、管体に連結されて圧力注入された流体によって膨張する内袋と、内袋を覆う外袋とを備え、
前記外袋の外周縁、又は、前記管体と前記外袋との連結部が補強手段で補強されていることを特徴とする建物の持上げ用袋体。
【請求項2】
前記外袋が織編物からなる布製であるとともに、前記内袋が前記外袋よりも膨張率が大きなゴム製であることを特徴とする請求項1記載の建物の持上げ用袋体。
【請求項3】
前記外袋が布地を折り畳んで重ね合わせるとともに、折り畳み箇所以外の重ね合わせ箇所を前記補強手段である樹脂コーティング又は樹脂ブロックで補強されていることを特徴とする請求項2記載の建物の持上げ用袋体。
【請求項4】
前記外袋の厚さを揃えるために山折り箇所を形成して、該山折り箇所を前記補強手段で補強していることを特徴とする請求項3記載の建物の持上げ用袋体。
【請求項5】
地震などで傾斜したような建物の基礎を地盤から持上げるための建物の修復方法であって、
流体を圧力注入するための管体と、管体に連結されて圧力注入された流体によって膨張する内袋と、内袋を覆う外袋とを備え、前記外袋の外周縁又は前記管体と前記外袋との連結部が補強手段で補強されている建物の持上げ用袋体を用いて、
前記袋体を、傾斜した基礎と地盤との隙間に挿入し、流体を圧力注入して膨らませることで建物を基礎ごと持上げることを特徴とする建物の修復方法。
【請求項6】
前記流体が空気であり、前記内袋が前記外袋よりも膨張率が大きなゴム製であり、このゴム製の内袋に空気を圧力注入して膨らませることで建物を基礎ごと持上げて、前記袋体を膨らませた状態で基礎と地盤とをセメントやモルタル等の接合材入り袋等を補強部材として配することで高さを維持しておき、前記空気を抜いて前記袋体を萎ませて取り外し、前記袋体を取り外した後の空間をセメントやモルタル等の接合材を用いて固めることを特徴とする請求項5記載の建物の修復方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2013−40439(P2013−40439A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175837(P2011−175837)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(511196940)有限会社信成開発 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(511196940)有限会社信成開発 (1)
【Fターム(参考)】
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