説明

建築用サポート部材における滑り止め装置

【課題】建築用サポート部材が、滑動するのを阻止する建築用サポート部材における滑り止め装置を提供する。
【解決手段】型枠支柱1を構成するベースプレート3の下端部の貫通孔7の内周縁部に密着して固定する滑り止め具11は、金属製で円錐形に形成されると共に、下端縁周面部は、等ピッチの波状凹凸面12に形成され、更に、前記滑り止め具11には、下部支柱1aの下端部内周壁面に摺接固定して、該滑り止め具11の脱落を防止する固定金具13が、前記滑り止め具11の上面中央の頂部に屈曲自在に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井用のコンクリート型枠を下方から支持する型枠支柱等の建築用サポート部材が、滑動するのを阻止する建築用サポート部材における滑り止め装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、天井用のコンクリート型枠を下方から支持する型枠支柱等の建築用サポート部材の滑動を阻止するため、種々の方法が採られているが、例えば、過去の特許文献を遡及検索すると、下記の特許文献1に記載されたものが公知である。
【0003】
【特許文献1】特開平11−293935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示されたものは、建築用サポート部材の滑り止め具の全体がゴム等の摩擦係数が大きくて弾性に富む素材により形成され、且つ前記滑り止め具が支持プレートの貫通孔を貫通して突縁部に係止するように形成されているため、滑り止め具を支持プレートの突縁部に取付けるのに、前記ゴム等の弾性を利用するので、かなりの力を要し、また、滑り止め具を支持プレートから取外すにも、取付けるのと同様に力を要し、滑り止め具を支持プレートに簡単に取付けたり、取外したりするということができないという課題があった。
【0005】
更に、前記滑り止め具は、支持プレートから簡単に取外すことができないので、他の支持プレートに該滑り止め具を転用して使用することができず、1個の支持プレートのみの専用となるため、滑り止め具の使用数が多くなり、少ない数の滑り止め具で有効利用することができないという課題があった。
【0006】
本発明の目的は、前記課題を解決すべくなされたもので、滑り止め具の型枠支柱への取付け、または型枠支柱からの取外しが簡単である建築用サポート部材における滑り止め装置を提供しようとするものである。
【0007】
また他の目的は、型枠支柱からの取外しが簡単であるため、他の型枠支柱への転用が可能で、少ない数の滑り止め具で有効利用を図ることができる建築用サポート部材における滑り止め装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、丸鋼管製の下部支柱と、該下部支柱内に上下動自在に嵌挿された上部支柱とを備え、且つ前記上部支柱の上端に受けプレート、下部支柱の下端にベースプレートをそれぞれ取付けて形成された型枠支柱において、前記型枠支柱を構成するベースプレートの下端部の貫通孔の内周縁部に密着して固定する滑り止め具を備えた滑り止め装置であって、
前記滑り止め具は、金属製で円錐形をなしており、その直径は前記ベースプレートの貫通孔の直径より大きく形成され、且つ該貫通孔内に全体が没入することなく、該滑り止め具の上方部の一部が前記貫通孔内に没入して、前記滑り止め具の外周面の中央部付近が、前記貫通孔の内周縁に密着すると共に、該滑り止め具の下端縁周面部は、等ピッチの波状凹凸面に形成され、更に、前記滑り止め具には、下部支柱の下端部内周壁面に摺接固定して、該滑り止め具の脱落を防止する固定金具が、前記滑り止め具の上面中央の頂部に固定され、前記固定金具は、板ばねにより、中央の取付部の両側に、前記下部支柱の下端部内周壁面に圧接固定する圧接部をそれぞれ対称になるようにして連設して形成され、前記各圧接部は、前記取付部の両側から上方へ延設する起立片を連設し、且つ該起立片に、先方側中央部を下方内側へ折曲させて、該折曲端部を前記下部支柱の下端部内周壁面に圧接して固定する圧接面とする一方、前記固定金具は、前記下部支柱の直径より長く形成されると共に、前記取付部において、前記滑り止め具の上面中央頂部に固定され、該取付部を支点として、前記圧接部が屈曲自在に形成されるという手段を採用することにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0009】
型枠支柱の下部支柱のベースプレートの貫通孔の下方より滑り止め具を挿入すると、該滑り止め具の固定金具の圧接部の圧接面が、前記下部支柱の下端部内周壁面に摺接して、該圧接部を屈曲しながら上方移動し、前記滑り止め具の中央部付近外周面が、前記ベースプレートの貫通孔の内周縁に密着すると共に、前記固定金具の圧接面が該下部支柱の下端部内周壁面に圧接して、滑り止め具が下部支柱の下端部に離脱することなく、固定される。また、滑り止め具の下端に突設された波状凹凸面が床面に食い込み、前記滑り止め具の滑動が阻止される。更に、下部支柱に取付けられた滑り止め具は、固定金具の圧接部が屈曲自在であるため、手でつかんで引き抜くことにより、簡単に取外すことができ、他の型枠支柱の下部支柱に取付けて使用することができるので、必要最低限の重さの滑り止め具があればよく、経済的である。
【実施例】
【0010】
本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。本発明は、建築用サポート部材を構成する型枠支柱の下端部に着脱自在に取付けることができる建築用サポート部材における滑り止め装置である。
【0011】
すなわち、型枠支柱1は、図1に示すように、丸鋼管製の下部支柱1aと、取付け高さを調節するために、前記下部支柱1a内に上下動自在に嵌挿された上部支柱1bとを備え、且つ前記上部支柱1bの上端に受けプレート2、下部支柱1aの下端に接地板としてのベースプレート3を取付けて形成されている。
【0012】
前記受けプレート2およびベースプレート3は、それぞれ四角形状に形成され、受けプレート2で型枠4に、またベースプレート3が床面5にそれぞれ接して荷重を支える。
【0013】
前記受けプレート2およびベースプレート3は、それぞれ中央部に水抜き用の貫通孔6・7を有し、該各貫通孔6・7の周縁部が上部支柱1bおよび下部支柱1aの端部にそれぞれ溶接固定されている。
【0014】
前記下部支柱1aおよび上部支柱1bには、それぞれ直径方向に複数個の小孔8・9が同一間隔で貫通され、上部支柱1bを上下動させて取り付け高さ調整した後、図1に示すように、前記各小孔8・9を貫通して固定棒10を挿通して下部支柱1a上に上部支柱1bを固定して取付け高さを調節する。
【0015】
そして、前記型枠支柱1を構成するベースプレート3の下端部の貫通孔7の内周縁部には、下面が床面5に接して、前記型枠支柱1の滑動を阻止する滑り止め具11の外周面が密着して固定される。
【0016】
前記滑り止め具11は、図1〜図4に示すように、金属製で円錐形をなしており、その直径は前記ベースプレート3の貫通孔7の直径より大きくして、該貫通孔7内に全体が没入することなく、該滑り止め具11の上方部の一部が前記貫通孔7内に没入して、前記滑り止め具11の外周面の中央部付近が、前記貫通孔7の内周縁に密着すると共に、該滑り止め具11の下端縁周面部は、等ピッチの波状凹凸面12に形成してあり、該波状凹凸面12が床面5に食い込み、前記滑り止め具11の滑動を阻止する。
【0017】
また、前記滑り止め具11には、下部支柱1aの下端部内周壁面に摺接固定して、該滑り止め具11の脱落を防止する固定金具13が、前記滑り止め具11の上面中央の頂部に固定されている。
【0018】
前記固定金具13は、板ばねにより、中央の取付部14の両側に、前記下部支柱1aの下端部内周壁面に圧接固定する圧接部15をそれぞれ対称になるようにして連設して形成されている。そして、該各圧接部15は、前記取付部14の両側から上方へ延設する起立片16を連設し、且つ該起立片16に、先方側中央部を下方内側へ折曲させて、該折曲端部を前記下部支柱1aの下端部内周壁面に圧接して固定する圧接面17とし、更に該圧接面17の先方側に内側上方へ折曲した倒L字状の折曲片18を連設して形成されている。
【0019】
前記固定金具13は、前記下部支柱1aの直径より長く形成されると共に、取付部14において、前記滑り止め具11の上面中央頂部にボルト等の取付金具14aにより固定され、該取付部14を支点として、前記圧接部15が屈曲自在となっている。
【0020】
前記構成より成る本発明建築用サポート部材における滑り止め装置の作用について説明する。型枠工事現場において、型枠支柱1の下部支柱1aのベースプレート3の貫通孔7の下方より滑り止め具11を押上げるようにして挿入すると、該滑り止め具11の上面に固定された固定金具13の両側に位置する圧接部15の圧接面17が、前記下部支柱1aの下端部内周壁面に摺接して、該圧接部15を屈曲しながら上方移動し、前記滑り止め具11の中央部付近外周面が前記ベースプレート3の貫通孔7の内周縁に密着すると共に、前記固定金具13の圧接面17が、該下部支柱1aの下端部内周壁面に圧接して滑り止め具11が下部支柱1aの下端部に離脱する虞れがなく固定される。
【0021】
そして、前記滑り止め具11を固定した型枠支柱1を型枠4および床面5間に配設することにより、滑り止め具11の外周面が下部支柱1aに固定されたベースプレート3の貫通孔7の内周縁に密着すると共に、前記滑り止め具11の下端に突設された波状凹凸面12が床面5に食い込み、前記滑り止め具11の滑動が阻止される。
【0022】
一方、型枠工事完了後、型枠4および床面5間に配設された型枠支柱1を取去り、下部支柱1aから前記取付けられた滑り止め具11を引抜く場合、該滑り止め具11を手でつかんで下方へ押下げると、固定金具13の圧接部15は屈曲自在であるため、圧接面17が下部支柱1aの内周壁面に圧接したまま屈曲し、前記滑り止め具11を該下部支柱1aより簡単に引抜くことができる。
【0023】
なお、図1〜図4に示す実施例においては、滑り止め具11は、円錐形状をなしているが、図5〜図8の他の実施例に示すように逆椀形の半球状であっても、その目的を達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明滑り止め具を取付けた型枠支柱の縦断面図である。
【図2】本発明滑り止め具の正面図である。
【図3】本発明滑り止め具の縦断面図である。
【図4】本発明滑り止め具の平面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態による滑り止め具を取付けた型枠支柱の縦断面図である。
【図6】本発明の他の実施の形態による滑り止め具の正面図である。
【図7】本発明の他の実施の形態による滑り止め具の縦断面図である。
【図8】本発明の他の実施の形態による滑り止め具の平面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 型枠支柱
1a 下部支柱
1b 上部支柱
2 受けプレート
3 ベースプレート
4 型枠
5 床面
6・7 貫通孔
11 滑り止め具
12 波状凹凸面
13 固定金具
14 取付部
15 圧接部
16 起立片
17 圧接面
18 折曲片


【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸鋼管製の下部支柱と、該下部支柱内に上下動自在に嵌挿された上部支柱とを備え、且つ前記上部支柱の上端に受けプレート、下部支柱の下端にベースプレートをそれぞれ取付けて形成された型枠支柱において、前記型枠支柱を構成するベースプレートの下端部の貫通孔の内周縁部に密着して固定する滑り止め具を備えた滑り止め装置であって、
前記滑り止め具は、金属製で円錐形をなしており、その直径は前記ベースプレートの貫通孔の直径より大きく形成され、且つ該貫通孔内に全体が没入することなく、該滑り止め具の上方部の一部が前記貫通孔内に没入して、前記滑り止め具の外周面の中央部付近が、前記貫通孔の内周縁に密着すると共に、該滑り止め具の下端縁周面部は、等ピッチの波状凹凸面に形成され、更に、前記滑り止め具には、下部支柱の下端部内周壁面に摺接固定して、該滑り止め具の脱落を防止する固定金具が、前記滑り止め具の上面中央の頂部に固定され、前記固定金具は、板ばねにより、中央の取付部の両側に、前記下部支柱の下端部内周壁面に圧接固定する圧接部をそれぞれ対称になるようにして連設して形成され、前記各圧接部は、前記取付部の両側から上方へ延設する起立片を連設し、且つ該起立片に、先方側中央部を下方内側へ折曲させて、該折曲端部を前記下部支柱の下端部内周壁面に圧接して固定する圧接面とする一方、前記固定金具は、前記下部支柱の直径より長く形成されると共に、前記取付部において、前記滑り止め具の上面中央頂部に固定され、該取付部を支点として、前記圧接部が屈曲自在に形成されたことを特徴とする建築用サポート部材における滑り止め装置。
【請求項2】
丸鋼管製の下部支柱と、該下部支柱内に上下動自在に嵌挿された上部支柱とを備え、且つ前記上部支柱の上端に受けプレート、下部支柱の下端にベースプレートをそれぞれ取付けて形成された型枠支柱において、前記型枠支柱を構成するベースプレートの下端部の貫通孔の内周縁部に密着して固定する滑り止め具を備えた滑り止め装置であって、
前記滑り止め具は、金属製で逆椀形の半球状をなしており、その直径は前記ベースプレートの貫通孔の直径より大きく形成され、且つ該貫通孔内に全体が没入することなく、該滑り止め具の上方部の一部が前記貫通孔内に没入して、前記滑り止め具の外周面の中央部付近が、前記貫通孔の内周縁に密着すると共に、該滑り止め具の下端縁周面部は、等ピッチの波状凹凸面に形成され、更に、前記滑り止め具には、下部支柱の下端部内周壁面に摺接固定して、該滑り止め具の脱落を防止する固定金具が、前記滑り止め具の上面中央の頂部に固定され、前記固定金具は、板ばねにより、中央の取付部の両側に、前記下部支柱の下端部内周壁面に圧接固定する圧接部をそれぞれ対称になるようにして連設して形成され、前記各圧接部は、前記取付部の両側から上方へ延設する起立片を連設し、且つ該起立片に、先方側中央部を下方内側へ折曲させて、該折曲端部を前記下部支柱の下端部内周壁面に圧接して固定する圧接面とする一方、前記固定金具は、前記下部支柱の直径より長く形成されると共に、前記取付部において、前記滑り止め具の上面中央頂部に固定され、該取付部を支点として、前記圧接部が屈曲自在に形成されたことを特徴とする建築用サポート部材における滑り止め装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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