説明

建設機械の盗難防止装置および建設機械の管理方法

【課題】IDキーを紛失した場合に安全に建設機械本体のID情報を書き換えることができる建設機械の盗難防止装置を提供する。
【解決手段】設定された期限を掲示し、期限に到達したときに信号を出力するタイマー部11eと、記憶装置12内のIDコード12aを書き換えるIDコード書換部11dとを備え、タイマー部11eが、建設機械本体に搭載され日時情報を受信する受信装置21aを有し、建設機械外部からその受信装置21aに対し送信される日時情報を期限として設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の盗難を防止するための盗難防止装置および建設機械の管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
クローラ式油圧ショベルはその行動半径が小さいため、プラント等の建設中は作業現場に放置されることが多い。また、建設機械はレンタル・リース機を利用することが多いが所有者が現場に常駐しないこともあって管理が不十分でありしばしば盗難が発生している。
【0003】
そこで、例えば特許文献1に記載の盗難防止装置では、建設機械に固有のID情報を割り当て、そのID情報に合致するID情報を有するキー(IDキーと呼ぶ)がキーボックスに差し込まれた場合にのみ建設機械を正常に操作することができるようになっている。なお、ID情報が合致しないキー(或いはID情報を持たないキー)で操作しようとした場合にはエンジンの始動を禁止したり、油圧パイロットを遮断するように構成しているため、キー形状が一致するだけでは操作することができず、確実に盗難防止を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−73411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した盗難防止装置は盗難防止では、建設機械の貸出先でIDキーを紛失した場合には、その盗まれたIDキーを使って盗まれる虞れがある。したがってこの場合には盗難装置を交換したり、ID情報を書き換えなければならず、製造メーカーによる修理を頼らざるを得ない。
【0006】
また、IDキー紛失対策としてID情報を簡単に書き換えることができるようにすると、建設機械の所有者以外の者が誤ってID情報を書き換えたり、或いは盗人がID情報を書き換えて盗んでいく可能性も出てくる。
【0007】
本発明は以上のような従来の盗難防止装置における課題を考慮してなされたものであり、IDキーを紛失した場合に安全に建設機械本体のID情報を書き換えることができる建設機械の盗難防止装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の盗難防止装置は、建設機械に割り当てられる本体IDコードを記憶している記憶装置と、上記本体IDコードと同一の被照合IDコードを有する照合用媒体と、この照合用媒体の被照合IDコードと上記本体IDコードとを照合する照合部と、上記建設機械の作動を規制しており上記照合結果が一致するときに上記建設機械の作動規制を解除する作動制御装置と、設定された期限を計時し、期限に到達したときに信号を出力するタイマー部と、このタイマー部から出力される信号を受けて上記記憶装置の本体IDコードを別の本体IDコードに書き換える本体IDコード書換部と、を備え、上記タイマー部は、建設機械本体に搭載され日時情報を受信する受信装置を有し、建設機械外部からその受信装置に対して送信される日時情報を期限として設定するように構成されていることを要旨とする。
【0009】
本発明に従えば、万一、本体IDコードが読み取られ、複製されたとしても予め定めた日時または時刻に達すると、本体IDコードが自動的に別の本体IDコードに更新されるため、盗難を抑制する効果を付加することができる。
【0010】
また、本発明に従えば、送信装置がなければ本体IDコードを書き換える期限を設定することができないため、盗難を抑制する効果をより確実にすることができる。
【0011】
本体IDコード書換部による書き換えが終了したことを報知する報知手段を備えれば、実際に建設機械を始動することなくIDコードを書き換えたことを確認することができる。
【0012】
本発明の建設機械の管理方法は、予め割り当てられた本体IDコードと、照合用媒体を通じて入力された被照合IDコードとを照合するとともに、この照合結果が一致するときに建設機械の作動を許容する盗難防止装置を備えた建設機械を管理するための方法であって、予め設定された期限に到達したときに上記本体IDコードを別の本体IDコードに自動的に書換可能な上記盗難防止装置に対し、上記設定期限として建設機械のレンタル期間に対応する期限を設定する工程を含むことを要旨とする。
【0013】
この管理方法に従えば、例えばレンタル会社が建設機械を貸出した場合に、仮に建設機械がIDキーとともに盗難にあったとしても盗難先でIDコードの照合ができなくなるため、建設機械を操作することができなくなる。
【0014】
上記設定期限として建設機械のレンタル期間の開始日から満了日の翌日までの期限を設定するようにすれば、仮に建設機械がIDキーとともに盗難にあったとしてもレンタル期間の満了日の翌日以降に建設機械を操作することができなくなる。
【0015】
上記期限を設定する工程を、上記盗難防止装置に設けられた受信装置を介して上記建設機械の外部から行うようにすれば、期限情報を受信しないかぎりは期限の設定を書き換えることができなくなり、IDコードを別のIDコードに書き換える際のセキュリティを確実にすることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したことから明らかなように、請求項1の本発明によれば、万一、本体IDコードが読み取られ、複製されたとしても予め定めた日時または時刻に達すると、本体IDコードがタイマー部によって自動的に別の本体IDコードに更新されるため、盗難を抑制する効果を付加することができる。また、送信装置がなければ本体IDコードを書き換える期限を設定することができないようにしたため、盗難を抑制する効果をより確実にすることができる。
【0017】
さらに、請求項1の本発明によれば、送信装置がなければ本体IDコードを書き換える期限を設定することができないようにしたため、盗難を抑制する効果をより確実にすることができる。
【0018】
請求項2の本発明によれば、実際に建設機械を始動することなくIDコードを書き換えたことを確認することができる。
【0019】
請求項3の本発明によれば、仮に建設機械がIDキーとともに盗難にあったとしても盗難先でIDコードの照合ができなくなるため、建設機械を操作することができなくなる。
【0020】
請求項4の本発明によれば、仮に建設機械がIDキーとともに盗難にあったとしてもレンタル期間の満了日の翌日以降に建設機械を操作することができなくなる。
【0021】
請求項5の本発明によれば、期限情報を受信しないかぎりは期限の設定を書き換えることができなくなり、IDコードを別のIDコードに書き換える際のセキュリティを確実にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る盗難防止装置の第一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の作動制御装置の構成を示す回路図である。
【図3】図1の変形例を示すブロック図である。
【図4】本発明に係る盗難防止装置の第二実施形態の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明に係る盗難防止装置の第三実施形態の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明に係る盗難防止装置の第四実施形態の構成を示すブロック図である。
【図7】図6に示す盗難防止装置を管理コンピュータと無線で接続したシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の盗難防止装置の第一実施形態をレンタル用建設機械に適用する場合の基本構成を示したものである。
【0025】
同図において、盗難防止装置1は、建設機械のキャビン内に設置されるようになっており、CPUから構成される制御装置2と、この制御装置2によって読み出しが行われる記憶装置(記憶手段)3と、制御装置2によって制御され建設機械の動作を規制または規制解除する作動制御装置(作動制御手段)4とから主として構成されている。
【0026】
上記制御装置2は照合部(照合手段)2aを有し、この照合部2aはエンジンキー(後述する)に内蔵されたICに記憶されている建設機械の識別コードと記憶装置3に記憶されている識別コードとを照合するようになっている。
【0027】
詳しくは、エンジンキーは2種類用意されており、建設機械本体に個別に割り当てられている固有IDコード(第一識別情報)と同一のIDコードを記憶しているエンジンキー(以下、固有IDキーと呼ぶ)5と、複数の建設機械に共通して割り当てられている共通IDコード(第二識別情報)と同一のIDコードを記憶しているエンジンキー(以下、共通IDキーと呼ぶ)6である。
【0028】
各IDキー5,6は、図示しないキースイッチに差し込むことによって内蔵されたICから識別コードを読み出してその読み出した識別コードを照合部2aに送信するようになっている。
【0029】
なお、固有IDキー(第一照合用媒体)5は、建設機械を貸出す際に建設機械とともに提供されるキーであり、オペレータが保管する。一方、共通IDキー(第二照合用媒体)6は、建設機械の所有者によって保管されるものであり、主として貸出先から返却された建設機械のメンテナンス等を行うときに使用される。
【0030】
また、記憶装置3は、建設機械に固有に割り当てられる固有IDコードを記憶している固有IDコード記憶部3aと、複数の建設機械に共通して割り当てられる共通IDコードを記憶している共通IDコード記憶部3bとを有している。
【0031】
作動制御装置4は、図2に示すように、スタータモータの電気回路を遮断するように構成されている。
【0032】
同図において、照合部2aは電磁リレー4aを制御するようになっており、IDキー5,6のいずれかがキースイッチに差し込まれ、IDキーのIDコードとコード記憶部3のIDコードが一致するときに電磁コイル4a1を通電させて接点4a2を閉じるようになっている。この接点4a2が閉じることによってその出力側に接続されているエンジンスタータモータ4cが回転する。なお、図中4dはヒューズ、4eはバッテリである。
【0033】
次に、上記構成を有する盗難防止装置の動作を図1に戻って説明する。
【0034】
(a) 貸出し先で建設機械を使用する場合
この場合、オペレータは固有IDキー5しか与えられていないため、基本的に従来の照合処理と同様の処理が行われる。すなわち、固有IDキー5をキースイッチに差し込むと、照合部2aはその固有IDキー5の固有IDコードを、記憶部3に記憶されている固有IDコードおよび共通IDコードと照合する。
【0035】
固有IDコードが一致すれば、作動制御装置4に対して作動可信号S1を出力してエンジンスタータモータ4cを始動させることができる。建設機械の固有IDコードと異なる固有IDキー5がキースイッチに差し込まれ、記憶装置3のいずれのIDコードに対しても照合が一致しなければ、作動可信号S1が出力されず、それによりエンジンスタータモータ4cを始動させることができない。
【0036】
(b) 建設機械の所有者がレンタルヤード内で建設機械のメンテナンスを行う場合
建設機械の所有者は共通IDキー6を持っており、その共通IDキー6をキースイッチに差し込むと、照合部2aはその共通IDキー6の共通IDコードを、記憶部3に記憶されている固有IDコードおよび共通IDコードと照合する。
【0037】
共通IDコードが一致すれば、作動制御装置4に対して作動可信号S1を出力してエンジンスタータモータ4cを始動させることができる。建設機械の共通IDコードと異なる共通IDキー6がキースイッチに差し込まれ、記憶装置3のいずれのIDコードに対しても照合が一致しなければ、作動可信号S1が出力されず、それによりエンジンスタータモータ4cを始動させることができない。
【0038】
このように、レンタルヤード内では個別IDキーを持つ必要がなく、一つの共通IDキー6によって建設機械のメンテナンス等を行うことが可能になる。
【0039】
ところで、上記構成に示したように記憶装置3内に2種類のIDコードを持つと、IDコードが一つである場合に比べてIDコードの一致する確率が2倍になってしまう。そこで、IDコードが一致する確率を、IDコードが一つの場合と同等にするための構成を図3に示す。
【0040】
なお、以下の説明において、図1と同じ構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0041】
図3において、照合部2aと記憶装置3との間にはスイッチング機能を有する切換部2bが介設されている。このように切換部2bを設けることによって常に一つの照合先を選択するようにすれば、実質的に一つのIDコードを設定していることになる。
【0042】
また、切換部2bは切換判断部(切換判断手段)2cと接続されており、その切換判断部2cから切換信号S2が出力されたときに、照合部2aによる読み出し先を、現在、選択されている記憶部から他方側の記憶部に、例えば固有IDコード記憶部3aから共通IDコード記憶部3bに切り換えるようになっている。
【0043】
上記切換判断部2cは、送受信装置(切換可情報提供手段)7の受信装置7aに接続されており、この受信装置7aは、建設機械外部の送信装置7bから送信される切換可信号S3を受信する。この切換可信号S3を受信したときに切換判断部2cは切換信号S2を出力する。
【0044】
このように照合部2aの読み出し先を切り換えるにあたり、その許可を外部から与えるように構成すれば、貸出し先で誤って読み出し先を切り換えるといった誤操作を防止することができる。また、送信装置7bから送信する切換可信号S3をレンタル会社側が集中管理すれば、建設機械の管理能力を高めることもできる。
【0045】
図4は本発明の盗難防止装置の第二実施形態を示したものである。
【0046】
同図に示す盗難防止装置10は、盗人によってIDコードの書き換えが簡単にできないようにするものであり、CPUから構成される制御装置11と、この制御装置11によって読み出しが行われる記憶装置12と、上記第一実施形態と同じ構成からなる作動制御装置4と、記憶装置12内のIDコードの書き換えを行うIDコード書換部(本体IDコード書換部)11bと、このIDコード書換部11bの書き換えを許可するIDコード書換許可部11cと、このIDコード書換許可部11cに対して書換可信号を与える送受信装置(書換可情報提供手段)13とから主として構成されている。
【0047】
上記制御装置11は上記第一実施形態と同様に照合部11aを有し、この照合部11aは、IDキー14に内蔵されたICに記憶されていてキースイッチ(図示しない)を介して読み取られたIDコード(被照合IDコード)を、記憶装置12に記憶されているIDコード(本体IDコード)12aと照合するようになっている。
【0048】
なお、IDキー14は、建設機械を貸出す際に建設機械とともに提供されるキーであってオペレータが保管する。また、記憶装置12は、建設機械本体に個別に割り当てられるIDコードを記憶している。
【0049】
次に、上記構成を有する盗難防止装置10の動作について説明する。
【0050】
IDキー14をキースイッチに差し込むと、照合部11aはそのIDキー14のIDコードを、記憶部12に記憶されているIDコード12aと照合する。
【0051】
IDコードが一致すれば、図2に示したように作動制御装置4に対して作動可信号S1を出力してエンジンスタータモータ4cを始動させ、IDコード12aと一致しなければ、作動可信号S1を出力せず、それによりエンジンスタータモータ4cを始動させることができない。
【0052】
上記記憶装置12のIDコード12aはIDコード書換部11bによって書き換えることが可能であるが、このIDコード書換部11bは、通常、書き換え禁止に設定されており、IDコード書換許可部11cから書換禁止解除信号S′4を受けた場合にのみ書き換え禁止が解除され、記憶部12内のIDコード12aの書き換えができるようになっている。
【0053】
上記IDコード書換許可部11cは、送受信装置13の受信装置13aに接続されており、この受信装置13aは、建設機械外部の送信装置13bから書換許可信号S4(書換可信号)を受信するようになっている。
【0054】
受信した書換許可信号S4はIDコード書換許可部11cに与えられ、IDコード書換許可部11cは書換禁止解除信号S´4をIDコード書換部11bに与える。
【0055】
このようにすれば、誤って記憶装置12内のIDコードが書き換えられることがなくなり、仮に、他の建設機械のIDキー14を盗みそのキーに登録されているIDコードの内容にIDコード12aを書き換えようとしてもID書換許可部11cから書換禁止解除信号S´4が出力されていないため、照合を一致させることはできない。
【0056】
図5は、本発明の盗難防止装置の第三実施形態を示したものである。
【0057】
同図に示す構成は、万一、記憶装置12内のIDコードを読み取られたとしても、予め定めた日時に達するとそのIDコードを自動的に別のIDコードと書き換え、建設機械の作動ができなくするようにしたものである。
【0058】
なお、図5において図4と同じ構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0059】
図5に示す盗難防止装置20において、IDコード書換部(本体IDコード書換部)11dは、タイマー部11eに接続されており、このタイマー部11eには、期限を示す日時データが記憶されており、タイマー部11eによって計時される日時が上記期限に達すると、書換信号S5をIDコード書換部11dに与え、この書換信号S5を受けたIDコード書換部11dは、貸出し時に建設機械に設定していたIDコードを、別のIDコードに自動的に書き換えるようになっている。
【0060】
従って、上記期限を例えばレンタル期間満了の翌日に設定しておけば、仮に建設機械がIDキーとともに盗難にあったとしても盗難先でIDコードの照合ができなくなるため、建設機械を操作することができなくなる。
【0061】
また、タイマー部11eを送受信装置21の受信装置21aに接続し、タイマー部11eに設定する期限を送信装置21bからその受信装置21aに送信するように構成すれば、期限情報を受信しないかぎりは期限の設定を書き換えることができなくなり、IDコードを別のIDコードに書き換える際のセキュリティを確実にすることができる。
【0062】
なお、レンタル期間を延長して建設機械を使用したい場合には、オペレータが現場に出向き、IDキーのIDコードを上記自動的に書き換えられた別のIDコードに合わせて書き換えればよい。
【0063】
なお、上記タイマー部11eは、設定された回数をカウントし照合回数がその設定回数に到達したときに信号を出力するカウンターで構成することもできる。
【0064】
通常の使用状態では、建設機械の始動時に一回だけ照合が行われる。したがって使用日数分を回数としてカウンターに設定しておけば、正規の照合回数を超えて照合操作が行われた場合には盗難とみなして本体IDコードを自動的に別の本体IDコードに更新することができる。この場合も第三実施形態と同様に、盗難を抑制する効果を付加することができる。
【0065】
図6は、本発明の盗難防止装置の第四実施形態を示したものである。
【0066】
なお、同図において図4と同じ構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0067】
図6に示す盗難防止装置30は、借り手が必要とするIDキーの数(本実施形態では必要とされるIDキーの数を5本とする)を提供できるようにしたものであり、必要とされる数のIDキー14a,14b,14c,14d、14eの各識別情報(IDコード1,IDコード2,IDコード3,IDコード4,IDコード5)を読み取る例えばキースイッチを兼ねたIDコード読取部31と、CPUから構成される制御装置32と、この制御装置32によって読み出しが行われる記憶装置33と、作動制御装置4と、記憶装置33内のIDコードの書き換えを行うIDコード書換部(本体識別情報書換手段)34と、このIDコード書換部34の書き換えを許可するIDコード書換許可部(書換判断手段)11cと、このIDコード書換許可部11cに対して書換可信号を与える送受信装置(書換可情報提供手段)13′とから主として構成されている。
【0068】
IDコード書換部34は、書き換え許可が与えられていないときはIDコード読取部31によって読み取られたIDコードをそのまま照合部35に転送し、照合部35は、読み取られたIDコードと記憶装置33に記憶されている機械側識別情報としてのIDコードとを照合する。一方、書き換え許可が与えられると記憶装置33に記憶されているIDコードを、IDコード読取部31によって読み取られたIDコード1〜IDコード5で上書きするようになっている。
【0069】
上記記憶装置33にはアドレス0〜nによって特定される記憶領域が設けられており、IDコード読取部31によって読み取られたIDコード1〜IDコード5は順次その記憶領域に格納される。
【0070】
なお、図中36はIDコード書換部34によって機械側識別情報の書き換えが終了したことを信号音または音声によって報知するスピーカ(報知手段)である。
【0071】
次に、上記構成を有する盗難防止装置30の動作について説明する。
【0072】
まず、建設機械を貸し出す場合、借り手が要求するIDキーの本数を確認する。仮に5本必要であると、IDキーをストックしている保管庫からランダムにIDキーを5本取り出す。
【0073】
次に、送受信装置13b′から送受信装置13a′に対して書換許可信号S4を送信すると、受信された書換許可信号S4はIDコード書換許可部11cに与えられ、IDコード書換許可部11cはIDコード書換部34に対して書換許可指令を与える。
【0074】
書換許可が与えられている状態で上述したIDキー14a〜14eを順番にIDコード読取部31に差し込むと、IDコード書換部34は、読み取られたIDコードを順次、記憶装置33の各記憶領域に格納していく。具体的にはIDキー14aの識別情報はIDコード1として、IDキー14bの識別情報はIDコード2として順次格納する。なお、記憶装置33の記憶領域に先に記憶されている識別情報は、新たなIDコードの格納によってすべて上書きされるものとする。
【0075】
IDキー14a〜14eのIDコードが記憶装置33に格納された後、所定時間、IDコードの読み取りがなければ、IDコードの書き換えが終了したとみなし、IDコード書き換え操作をしているオペレータに対してスピーカ36から上書きの終了を報知する。このとき、書き換え終了信号、IDキー14a〜14eの各キー番号、それらのIDコードおよび建設機械の機械番号等が書換情報として送受信装置13a′に与えられ、送受信装置13a′はそれらの書換情報を、建設機械を管理している管理コンピュータ(後述する)に送信する。
【0076】
図7は、レンタルヤード内の管理コンピュータと建設機械の盗難防止装置との間で相互に通信を行うシステムの概略図である。
【0077】
同図において、建設機械37は、下部走行体40上に上部旋回体41を旋回自在に搭載し、その上部旋回体41の前部に、ブーム42a,アーム42b,バケット42cからなるフロントアタッチメント42を備えており、その上部旋回体41に盗難防止装置30が内蔵されている。
【0078】
一方、管理コンピュータ43は、マイクロコンピュータからなる制御装置44を有し、IDコードの書換許可信号を送信する書換制御部44aと、建設機械の入出庫を管理する入出庫管理部44bを備えている。
【0079】
また、制御装置44の入力側にはキーボード45が接続され、出力側にはモニタ46およびプリンタ47が接続されている。
【0080】
上記書換情報を受信した管理コンピュータ44は、書換許可信号S4の送信を停止するとともに、送信されてきた書換情報をモニタ46の画面上に表示させ、プリンタ47に出力する。なお、プリンタ出力については印刷指示を受けてから行うものであってもよい。
【0081】
プリンタ47の記録紙には、貸し出される建設機械の機械番号、その建設機械について借り手に提供したIDキーの本数およびそれらのIDコードが印刷される。
【0082】
また、書換許可信号S4の送信停止以降は、図6に示した建設機械37のIDコード書換部34は、IDコード読取部31から読み取られたIDコードを照合部35に転送することになる。従って、IDキー14をIDコード読取部31に差し込むと、照合部35はそのIDキー14のIDコードを、記憶装置33に記憶されているIDコードと照合する。
【0083】
IDコードが一致すれば、図2に示したように作動制御装置4に対して作動可信号S1を出力してエンジンスタータモータ4cを始動させ、IDコードと一致しなければ、作動可信号S1が出力されず、それによりエンジンスタータモータ4cを始動させることができない。
【0084】
このようにすれば、借り手は必要なだけの本数のIDキーを入手することができ、しかも建設機械を貸し出す時にそのIDキーのIDコードを建設機械の記憶装置に上書きするため、IDコードを更新して常に新しい設定とすることができる。また、IDキーをIDコード読取部31に差し込むだけで自動的に建設機械側のIDコードが上書きされるようにしたため、煩わしいIDコードの設定操作が解消され、建設機械の管理も容易になる。
【0085】
なお、上記実施形態ではIDコードの書き換え終了をスピーカ36で音声報知したが、これに限らず、建設機械の操作ボックスに設けられている操作画面上に表示してもよい。
【0086】
また、本発明における作動制御手段は、上記各実施形態ではスタータモータの電気回路を遮断するように構成したが、これに限らず、操作レバーのパイロットラインを遮断するものであってもよい。詳しくは、パイロットラインに、通常、閉じ動作する電磁切換弁を介設して照合部と接続し、照合結果が一致して作動可信号S1が出力されたときに電磁切換弁が開動作してパイロット圧がアクチュエータに供給されるように構成することもできる。
【0087】
また、エンジンの燃料供給ラインを遮断するものであってもよい。詳しくは、照合部から出力される作動可信号によって開く接点を設け、接点が閉じればエンジンストップソレノイドが働いて燃料カットが行われるようにしておけば、照合結果が一致しないときは接点が閉じたままのためにエンジンを停止させることができ、建設機械の作動を規制することができる。
【0088】
本発明の作動制御手段は、上記した作動制御方法のうちの少なくとも一つで構成することができるが、もちろん、上記作動制御方法のうちの複数、または全部を組み合わせてもよい。
【0089】
また、本発明の送受信装置との間で行われる通信は、有線であってもよく、また、衛星通信のような無線であってもよい。
【0090】
無線で送信する場合、例えば、建設機械の管理者がパソコン端末を備え、このパソコン端末をインターネットを介して衛星管理会社と接続し、その衛星管理会社の低軌道衛星から衛星地球局を通じて貸出先の建設機械に信号を送信することができる。
【0091】
また、本発明の照合用媒体は、上記実施形態で示したように、エンジンキーを兼ねたIDキーで構成すれば別途照合手段を持ち歩く必要がないために好ましいが、エンジンキーと別体のIDカードで構成することもできる。
【0092】
また、無線送信を行なわない場合、本発明の切換可情報提供手段、書換可情報提供部、タイマー部に対し期限を設定する手段およびカウンターに回数を設定する手段は、例えば建設機械のコントロールボックスに配置されている既存のスイッチを所定の順序で操作することにより設定してもよく、また、パスワードを入力することによって切換可情報等の入力を可能にし、テンキーなどを利用して期限や回数を設定してもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 盗難防止装置
2 制御装置
2a 照合部
2b 切換部
2c 切換判定部
3 記憶装置
3a 固有IDコード記憶部
3b 共通IDコード記憶部
4 作動制御装置
5 固有IDキー
6 共通IDキー
7 送受信装置
7a 受信装置
7b 送信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械に割り当てられる本体IDコードを記憶している記憶装置と、上記本体IDコードと同一の被照合IDコードを有する照合用媒体と、この照合用媒体の被照合IDコードと上記本体IDコードとを照合する照合部と、上記建設機械の作動を規制しており上記照合結果が一致するときに上記建設機械の作動規制を解除する作動制御装置と、設定された期限を計時し、期限に到達したときに信号を出力するタイマー部と、このタイマー部から出力される信号を受けて上記記憶装置の本体IDコードを別の本体IDコードに書き換える本体IDコード書換部と、を備え、
上記タイマー部は、建設機械本体に搭載され日時情報を受信する受信装置を有し、建設機械外部からその受信装置に対して送信される日時情報を期限として設定するように構成されていることを特徴とする建設機械の盗難防止装置。
【請求項2】
上記本体IDコード書換部による書き換えが終了したことを報知する報知手段が備えられている請求項1に記載の建設機械の盗難防止装置。
【請求項3】
予め割り当てられた本体IDコードと、照合用媒体を通じて入力された被照合IDコードとを照合するとともに、この照合結果が一致するときに建設機械の作動を許容する盗難防止装置を備えた建設機械を管理するための方法であって、
予め設定された期限に到達したときに上記本体IDコードを別の本体IDコードに自動的に書換可能な上記盗難防止装置に対し、上記設定期限として建設機械のレンタル期間に対応する期限を設定する工程を含むことを特徴とする建設機械の管理方法。
【請求項4】
上記設定期限として建設機械のレンタル期間の開始日から満了日の翌日までの期限を設定することを特徴とする請求項3に記載の建設機械の管理方法。
【請求項5】
上記期限を設定する工程を、上記盗難防止装置に設けられた受信装置を介して上記建設機械の外部から行うことを特徴とする請求項3又は4に記載の建設機械の管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−281135(P2009−281135A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146163(P2009−146163)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【分割の表示】特願2006−224517(P2006−224517)の分割
【原出願日】平成14年8月7日(2002.8.7)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)
【Fターム(参考)】