説明

建設機械

【課題】エンジンと発電機モータと油圧ポンプとを一体化したエンジンユニットを搭載した建設機械において、発電機モータの着脱時における作業性を向上させることが可能な建設機械を提供する。
【解決手段】油圧ショベル51は、エンジン2と油圧ポンプ4と発電機モータ1とを一体化したエンジンユニット40と車体フレーム部65とマウント部41,42とを備えている。油圧ポンプ4は、エンジン2の駆動力によって駆動される。発電機モータ1は、エンジン2と油圧ポンプ4との間に設けられ、エンジン2の出力軸と油圧ポンプ4の入力軸とに接続された回転軸19、エンジン2側に固定された第1ハウジング11、油圧ポンプ4側に固定された第2ハウジング15を有する。車体フレーム部65は、エンジンユニット40が搭載される。マウント部41,42は、エンジン2、第1ハウジング11に設けられ、エンジンユニット40を車体フレーム部65上で支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン、油圧ポンプおよび発電機モータを搭載したハイブリッド型の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンと油圧ポンプとの間に発電機モータを搭載した、いわゆるハイブリッド型の建設機械が開発されている。
このようなハイブリッド型の建設機械に搭載された発電機モータは、エンジンの出力軸と油圧ポンプの入力軸とに接続されており、エンジンの駆動力によって発電を行う。そして、発電機モータでの発電により生じた電気エネルギーはキャパシタなどの蓄電装置に蓄えられ、建設機械が大きなエンジン出力を要する場合等に、蓄えられた電気エネルギーによって発電機モータが駆動されて、エンジンの出力を補助する。
【0003】
例えば、特許文献1には、ハウジング内に冷却油を貯留する油溜め部を有しており、複数のコイル端部に均一に油を噴射させて効率よく冷却することが可能な発電機モータの構成について開示されている。
また、特許文献2には、エンジンと油圧ポンプとの間に組み込まれた発電機モータの構成について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−6554号公報(平成19年1月11日公開)
【特許文献2】特開2003−235208号公報(平成15年8月22日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の建設機械では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された建設機械では、エンジンあるいは発電機モータ等のメンテナンス等を実施する際には、油圧ポンプ、発電機モータの順に取り外される。また、通常、車体フレーム部上においてエンジンユニットを支持するマウント部は、エンジン側と発電機モータ側とにそれぞれ2つずつ設けられている。このため、油圧ポンプを取り外した後で、発電機モータを取り外す際には、エンジンユニットをクレーン等で吊り上げた状態で、発電機モータ側に設けられたマウント部を取り外して、別の位置で治具等を用いて支持する必要がある。
【0006】
すなわち、エンジンユニットのマウント部が発電機モータ側に設けられている場合には、発電機モータを取り外す際にエンジンユニットを支持するマウント部を、一旦、エンジンユニットを吊り上げた状態で別の場所で支持させてから発電機モータを取り外す必要があり、発電機モータを取り外す際の作業性が低下してしまうおそれがある。
また、発電機モータをエンジンから取り外した際に、エンジンの出力軸に接続されるフライホイール等が露出してしまうため、回転側の部材に水や埃等が付着したり、回転側の部材が破損したりするおそれがある。
【0007】
本発明の課題は、エンジンと発電機モータと油圧ポンプとを一体化したエンジンユニットを搭載した建設機械において、発電機モータの着脱時における作業性を向上させることが可能な建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る建設機械は、エンジンと油圧ポンプと発電機モータとを一体化したエンジンユニットと、車体フレーム部と、マウント部と、を備えている。油圧ポンプは、エンジンの駆動力によって駆動される。発電機モータは、エンジンと油圧ポンプとの間に設けられており、エンジンの出力軸および油圧ポンプの入力軸に接続された回転軸とエンジン側に固定された第1ハウジングと油圧ポンプ側に固定された第2ハウジングとを有する。車体フレーム部は、エンジンユニットが搭載される。マウント部は、エンジンおよび第1ハウジングにそれぞれ設けられており、エンジンユニットを車体フレーム部上において支持する。
ここでは、エンジンと油圧ポンプとの間に発電機モータを搭載したハイブリッド型の建設機械において、エンジンと油圧ポンプと発電機モータとを一体化したエンジンユニットを、エンジンと発電機モータとに設けられたマウント部を介して、車体フレーム上に配置している。
【0009】
ここで、このようなハイブリッド型の建設機械では、エンジンあるいは発電機モータ等のメンテナンス等を実施する際には、油圧ポンプ、発電機モータの順に取り外される。また、通常、車体フレーム部上においてエンジンユニットを支持するマウント部は、エンジン側と発電機モータ側とにそれぞれ2つずつ設けられている。このため、油圧ポンプを取り外した後で、発電機モータを取り外す際には、発電機モータ側に設けられたマウント部を別の位置で治具等を用いて支持する必要がある。
すなわち、エンジンユニットのマウント部が発電機モータ側に設けられている場合には、発電機モータを取り外す際にエンジンユニットを支持するマウント部を、一旦、エンジンユニットを吊り上げた状態で別の場所で支持させてから発電機モータを取り外す必要があり、作業性が低下してしまうおそれがある。
【0010】
本発明の建設機械では、エンジンユニットを支持するために発電機モータ側に設けられたマウント部を、発電機モータの外郭を構成するハウジングのうち、エンジン側に固定された第1ハウジング側に設けている。
これにより、発電機モータを取り外す際には、マウント部を別の位置で支持させることなく、第1ハウジングだけを残して、発電機モータの他の部品を全て取り外すことができる。よって、発電機モータの取り外し作業や分解作業等の作業性を従来よりも向上させることができる。
【0011】
第2の発明に係る建設機械は、第1の発明に係る建設機械であって、第1ハウジングは、エンジンに接続されたフライホイールを収納している。
ここでは、上述した第1ハウジングを、エンジンに接続されたフライホイールを内包するフライホイールハウジングとしても機能させている。
これにより、エンジン側に近い部品については、発電機モータの取り外し時においても、エンジン側に固定されたまま残される第1ハウジング内に設けることができる。また、エンジンと発電機モータとの間に設けられるフライホイールを内包するフライホイールハウジングを別途設ける必要がないため、部品点数を削減して、エンジンユニットの軸方向におけるサイズを小さくすることができる。
【0012】
第3の発明に係る建設機械は、第1または第2の発明に係る建設機械であって、第1・第2ハウジング内に形成された油溜め部を、さらに備えている。
ここでは、エンジン側に固定された第1ハウジングと、油圧ポンプ側に固定された第2ハウジングとの間に形成される収納空間の下部に、油溜め部を設けている。
これにより、発電機モータ内に設けられた部品の潤滑や冷却等に使用される油を、発電機モータ内に貯留することができる。
【0013】
第4の発明に係る建設機械は、第3の発明に係る建設機械であって、第1ハウジングに設けられており、油溜め部に貯留された油の量を点検する検油管を、さらに備えている。
ここでは、第1・第2ハウジング内に形成された油溜め部に貯留された油の量を点検するための検油管を、第1ハウジング側に設けている。
これにより、発電機モータを取り外したり分解したりする際に、検油管を取り外す必要がない。よって、例えば、第2ハウジング側に検油管が設けられている構成と比較して、作業性をさらに向上させることができる。
【0014】
第5の発明に係る建設機械は、第1から第4の発明のいずれか1つに係る建設機械であって、第1ハウジングは、回転軸方向においてマウント部が取り付けられている固定部分の幅に相当する厚みを有している。
ここでは、回転軸方向においてマウント部の固定部分の幅に相当する厚みを確保した状態で第1ハウジングが構成されている。
これにより、第1ハウジング側に、例えば、マウント部や検油管等を取り付けるスペースを確保することができる。
【0015】
第6の発明に係る建設機械は、第1から第5の発明のいずれか1つに係る建設機械であって、エンジンにおける燃焼ガスを排気するマフラーと、第1ハウジングに設けられておりマフラーを支持するマフラーマウント部と、をさらに備えている。
ここでは、エンジン上に配置されるマフラーを支持するマフラーマウント部を、第1ハウジング側に設けている。
これにより、発電機モータを取り外す場合でも、マフラーマウント部がエンジン側に残される第1ハウジング側に設けられているため、マフラーマウント部を他の場所へ移動させる必要がない。よって、発電機モータの取り外し時における作業性をさらに向上させることができる。
【0016】
第7の発明に係る建設機械は、第1から第6の発明のいずれか1つに係る建設機械であって、回転軸は、側面視において第2ハウジングからエンジン側に突出している。
ここでは、側面視において、発電機モータの回転軸が、油圧ポンプ側に固定された第2ハウジングからエンジン側に突出するように設けられている。
ここで、側面視とは、回転軸方向と直交する方向から見た状態、つまり、回転軸を側面から見た状態を意味している。
これにより、発電機モータを取り付ける際に第1・第2フランジ間において分解する場合でも、側面視において、第2ハウジングからエンジン側に突出した回転軸によって、第1ハウジングが固定されたエンジン側との間において、容易に同軸度を確保することができる。
【0017】
第8の発明に係る建設機械は、第1から第7の発明のいずれか1つに係る建設機械であって、油圧ショベルである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る建設機械によれば、エンジンと発電機モータと油圧ポンプとを一体化したエンジンユニットを搭載した建設機械において、発電機モータの着脱時における作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る油圧ショベルの構成を示す全体斜視図。
【図2】図1の油圧ショベルに搭載されたエンジンユニットの構成を示す斜視図。
【図3】図2のエンジンユニットに含まれる発電機モータの構成を示す断面図。
【図4】図3の発電機モータの分解斜視図。
【図5】図2のエンジンユニットが車体フレーム部上に載置された状態を示す側面図。
【図6】図2のエンジンユニットが車体フレーム部上に載置された状態を示す斜視図。
【図7】図1の油圧ショベルのエンジンフードを開けた状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係るハイブリッド型の油圧ショベル(建設機械)51について、図1〜図7を用いて説明すれば以下の通りである。
(油圧ショベル51)
本実施形態に係るハイブリッド型の油圧ショベル51は、図1に示すように、下部走行体52と、旋回台53と、作業機54と、カウンタウェイト55と、機器室56と、車体部57と、キャブ58と、を備えている。また、油圧ショベル51は、駆動源として、エンジン2を備えている。エンジン2の出力軸には、エンジン2によって駆動される発電機モータ1および油圧ポンプ4が直列的に接続されている(図2参照)。
【0021】
下部走行体52は、進行方向における左右両端部分に巻き掛けられた履帯Pを回転させることで、油圧ショベル51を前進・後進させる。また、下部走行体52は、旋回台53を上面に搭載している。
旋回台53は、下部走行体52に対して任意の方向に旋回可能である。そして、旋回台53は、上面に作業機54と、カウンタウェイト55と、機器室56と、車体部57と、キャブ58と、を搭載している。また、旋回台53は、発電機モータ1あるいは蓄電器からの電力供給により駆動される旋回用電動モータによって回転する。なお、旋回電動モータは、旋回台の減速時に回生により発電し、発電で得られた電気エネルギーは、キャパシタに蓄電される。
【0022】
作業機54は、ブーム61と、ブーム61の先端に取り付けられたアーム62と、アーム62の先端に取り付けられたバケット63とを含むように構成されている。そして、作業機54は、図示しない油圧回路に含まれる各油圧シリンダ61a,62a,63a等によって、ブーム61やアーム62、バケット63等を上下に移動させながら、土木工事の現場において土砂や砂礫等の掘削作業を行う。
カウンタウェイト55は、例えば、鋼板を組み立てて形成した箱の中に屑鉄やコンクリート等を入れて固めたものであって、採掘時等において車体のバランスをとるために旋回台53の後方に設けられている。
【0023】
機器室56は、図1に示すように、カウンタウェイト55に隣接する位置に配置されており、内部に、エンジン2、発電機モータ1、油圧ポンプ4を軸方向において一体化したエンジンユニット40等(図2参照)を収納するエンジンルーム60を有している。そして、エンジンルーム60は、開閉可能なエンジンフード64によって覆われている。なお、エンジンルーム60内に設置されたエンジンユニット40等の構成および載置構造については、後段にて詳述する。機器室56は、図示しない作動油タンク、エンジンルーム60とキャブ58との間に設けられた仕切り部材、車両の左右後部の側面に設けられた開閉カバー、カウンタウェイト55、エンジンフード64等によって囲まれた空間となる。機器室56内には、エンジン2、発電機モータ1および油圧ポンプ4が、それぞれカウンタウェイト55に沿って並設されている。
【0024】
車体部57は、作業機54の後方に配置されており、図示しない燃料タンク、作動油タンクおよび操作弁等を収容する。
キャブ58は、油圧ショベル51のオペレータが乗降する室内空間を有しており、作業機54の先端部を見通せるように、旋回台53上における作業機54の側方となる左側前部に配置されている。
【0025】
(発電機モータ1)
本実施形態の発電機モータ1は、図2に示すように、エンジン2、冷却ファン3、油圧ポンプ4およびマフラー5等を備えたハイブリッド型の油圧ショベル51に搭載されている。また、発電機モータ1は、エンジン2と油圧ポンプ4との間に配置されている。さらに、発電機モータ1は、エンジン2の出力軸、油圧ポンプ4の入力軸に対して、回転軸19(図3参照)が直接的あるいは間接的に接続されており、エンジン2の出力軸の回転駆動力によって発電を行う。発電機モータ1は、インバータを介してキャパシタに接続されている。エンジン2の回転数が増加していく(油圧ショベルが加速していく)場合など、発電機モータ1は必要に応じて、キャパシタに蓄えられた電気エネルギーによって電動機として使用され、エンジン2の回転をアシストする。また、エンジン2がアイドリング状態にある場合には、発電機モータ1はエンジン2の回転駆動力を受けて発電し、発電によって生じた電気エネルギーはキャパシタに蓄えられる。また、本実施形態では、エンジン2、発電機モータ1、および油圧ポンプ4が直列的に配置されており、それぞれの回転軸が一直線上に配置される。
【0026】
発電機モータ1は、3相12極のSR(switched reluctance)モータであって、下部に油溜め部Vを有している。また、発電機モータ1は、図3および図4に示すように、ステータ10と、第1ハウジング11と、フライホイール12と、カップリング13と、ロータ14と、第2ハウジング15と、フランジ(フランジ部)16と、回転軸19と、を備えている。
【0027】
ステータ10は、図3に示すように、発電機モータ1の外郭を構成する第1・第2ハウジング11,15内に形成される収納空間内に設けられている。そして、ステータ10は、円環状のステータコア20やインシュレータ21、コイル23等によって構成されている。
ステータコア20は、円環状のヨーク部分と、周方向に沿って配置されヨーク部から径方向内側に向かって等角度間隔で突出するステータティースの部分とを含む複数の鋼板を積層して構成されている。なお、本実施形態では、3相12極のSRモータを構成するため、合計36本の突起を含むステータコア20が用いられている。
複数の突起には、それぞれにインシュレータ21が装着された後、コイル23が巻回される。
【0028】
第1ハウジング11は、鋳鉄製の部材であって、図3に示すように、第2ハウジング15と接合されて、内部にステータ10やロータ14等を収納する収納空間を形成する。そして、この収納空間の下部には、回転軸19や軸受け部18の潤滑を促すとともに、ステータ10の発熱部(コイル23等)を冷却するための冷却油を貯留する油溜め部Vが形成されている。また、第1ハウジング11の下端部には、図4に示すように、油溜め部Vに貯留された油の量を点検するとともに油溜め部Vに油を補給するための検油管(給油管と兼用)11aが接続されている。
【0029】
ここで、第1・第2ハウジング11,15内の油溜め部Vに貯留される冷却油は、第2ハウジング15の下部に設けられた冷却装置(例えば、オイルクーラ15d(図4参照))を経由して冷却された後、再び第1・第2ハウジング11,15内の空間へと戻される。
フライホイール12は、第1・第2ハウジング11,15内におけるエンジン2の出力軸側に設けられており、カップリング13を介してロータ14と接続され、第1・第2ハウジング11,15内において回転する。
【0030】
本実施形態の発電機モータ1のように、エンジン2側に固定された第1・第2ハウジング11,12内にフライホイール12を収納することで、フライホイールハウジングを別途設けた構成と比較して、エンジンユニット40の部品点数を削減して、エンジンユニット40の軸方向におけるサイズを小さくすることができる。よって、エンジン2と油圧ポンプ4との間に発電機モータ1を設けたハイブリッド型の油圧ショベル51においても、エンジンユニット40の軸方向におけるサイズの拡大を最小限とすることができる。これにより、エンジンユニット40を旋回台53上における限られた空間に配置することができる。
【0031】
カップリング13は、図4に示すように、略円環状の部材であって、フライホイール12に対してボルト固定される。また、カップリング13は、図3に示すように、内径側に形成されたスプラインが回転軸19の外径側に形成された外歯スプライン19aと噛み合っている。これにより、フライホイール12およびカップリング13は、回転軸19を中心にしてロータ14とともに回転する。
ロータ14は、図3に示すように、回転軸19を中心に回転する回転側の部材であって、第1・第2ハウジング11,15内の収納空間における円環状のステータ10の内周側の空間に挿入される。また、ロータ14は、外周面にロータヨーク14aが取り付けられるホルダ14bを有している。
【0032】
ロータヨーク14aは、複数の鋼板(電磁鋼板)を積層した構造体であって、図3に示すように、ホルダ14bの外周面側にボルト固定されており、円環状の本体の外周面側に、周方向において等角度間隔で設けられた複数の誘導子(図示せず)を有している。ロータヨーク14aは、エンジン2側および油圧ポンプ4側にそれぞれ設けられたアルミ製のブレード14c,14cによって挟まれるように保持されている。ブレード14c,14cの外周面には、径方向外側に開口した貫通孔が形成されている。ロータ14の回転時には、この貫通孔から径方向外側に配置されたコイル23に対して冷却油が噴射される。なお、これらのブレード14c,14cについては、ロータヨーク14aが、例えば、ホルダ14bに形成された凹部によって保持可能な場合には設けられていなくてもよい。
【0033】
ホルダ14bは、図3に示すように、中央孔部に回転軸19が挿入された状態で回転軸19の外周部分にボルト固定されている。また、ホルダ14bは、略円筒形状を有する鋼製の部材であって、内側の円筒部と外側の円筒部とを組み合わせた構造となっており、その内側の円筒部の外周面と外側の円筒部の内周面との間に軸受け部18が、外側の円筒部の外周面にロータヨーク14aがそれぞれ取り付けられている。
回転軸19は、ロータ14の回転中心となる円筒状の部材であって、軸方向における一方の端部から他方の端部まで貫通する貫通孔を有しており、エンジン2側の端部に、カップリング13の内歯と嵌合する外歯スプライン19a、油圧ポンプ4側の端部に、油圧ポンプ4側の入力軸と嵌合する内歯スプライン19bが、それぞれ形成されている。また、回転軸19は、軸方向における油圧ポンプ4側の半分が、フランジ16の内側の円筒部の内周面側に挿入された状態で固定される。さらに、回転軸19は、図3に示すように、側断面視においてエンジン2側(図3における左側)に向かって第2ハウジング15の端面(図中のX−X線)から突出するように配置されている。
【0034】
第2ハウジング15は、鋳鉄製の部材であって、図3に示すように、発電機モータ1における油圧ポンプ4側に設けられており、第1ハウジング11とともに、フライホイール12、カップリング13、ロータ14、ステータ10および回転軸19を収納するための収納空間を形成する。また、第2ハウジング15は、冷却油を冷やすためのオイルクーラ15dを有している。オイルクーラ15dの出口には、冷却油を、第1・第2ハウジング11,15内の上部まで送り込むための冷却油配管15aが接続されている。さらに、第2ハウジング15の肩部分には、図4に示すように、インシュレータ21を介してステータコア20の突起に巻回されたコイル23の配線等が接続される電気ボックス17が取り付けられる。
【0035】
油溜め部Vに貯留された冷却油は、図示しない配管を経由して図示しないフィルタ、循環用のポンプを経由して、第2ハウジング15の下部に設けられたオイルクーラ15dの入口に供給される。オイルクーラ15dの出口に接続される冷却油配管15aは、油溜め部Vから吸い上げた冷却油を、第1・第2ハウジング11,15内に形成された空間の上部に供給するために、第2ハウジング15の上部に接続されている。
【0036】
フランジ16は、図3に示すように、回転軸19と同軸状に配置される円盤状の部材であって、冷却油配管15aを介して第2ハウジング15の上部に送られた冷却油を所望の部分へ誘導する冷却油通路16aが内部に形成されている。フランジ16は、複数のボルトによって第2ハウジング15の油圧ポンプ4側に固定されている。フランジ16は、略円盤状の面から軸方向に突出する略円筒状の軸受け支持部16eを有している。軸受け支持部16eは、略円筒状の外周面側において、軸受け部18を支持している。
【0037】
冷却油通路16aは、第1・第2ハウジング11,15内の上部空間から流れてくる冷却油を、ロータ14や回転軸19と固定側の部材とが接触する軸受け部18やスプライン(係合部)等へ供給する。これにより、軸受け部18やスプライン(係合部)等には、常時、十分な量の潤滑油(冷却油)が供給される。
【0038】
<エンジンユニット40の載置構造>
本実施形態の油圧ショベル51では、図6に示すように、エンジン2、発電機モータ1、および油圧ポンプ4を含むエンジンユニット40が、マウント部41,42を含む4点において車体フレーム部65上において支持されている。
具体的には、エンジンユニット40は、図6に示すように、エンジン2に取り付けられた一対のマウント部41,41と、発電機モータ1の第1ハウジング11に取り付けられた一対のマウント部42,42の4点において、車体フレーム部65上に支持されている。
マウント部41,41は、エンジン2の側面に固定されており、車体フレーム部65上においてエンジンユニット40のエンジン2側を支持する。マウント部41,41は、本体部41a、支持部材41cを有している。
【0039】
本体部41aは、略L字型の部材であって、エンジン2の側面に対して固定されている。支持部材41cは、ゴム等の弾性体によって構成されており、略L字型の本体部41aの水平面に形成された開口部に装填されており、車体フレーム部65上においてエンジンユニット40のエンジン2側を支持する。
マウント部42,42は、発電機モータ1の第1ハウジング11の側面に固定されており、車体フレーム部65上においてエンジンユニット40の油圧ポンプ4側を支持する。また、マウント部42,42は、図5に示すように、本体部42a、複数のボルト42b、および支持部材42cを有している。
【0040】
本体部42aは、図5に示すように、3つの平面を接合したボックス形状を有しており、そのうち1つの平面が、第1ハウジング11の側面に対して複数のボルト42bによって固定されている。支持部材42cは、ゴム等の弾性体によって構成されており、ボックス形状の本体部42aの水平面に形成された開口に装填されており、車体フレーム部65上においてエンジンユニット40の油圧ポンプ4側を支持する。
【0041】
ここで、マウント部42,42は、本体部42aの鉛直面が複数のボルト42bによって第1ハウジング11の側面に固定されている。このため、第1ハウジング11の軸方向における厚みは、図5に示すように、マウント部42,42の固定部分の幅d1よりも若干大きい。これにより、第1ハウジング11の側面に、マウント部42を取り付けるために必要な側面の面積を確保することができる。なお、第1ハウジング11の軸方向における厚みは、フライホイール12を内包でき、かつマウント部42の固定部分の幅d1を有していればよい。
【0042】
また、本実施形態の油圧ショベル51では、エンジンユニット40の上部にマフラー5が配置されている。
マフラー5は、図6に示すように、マフラー5を支持するマフラーマウント部5aを介して、発電機モータ1の第1ハウジング11上に固定されている。より詳細には、マフラー5は、その外周面に巻きかけられたワイヤー5b,5bによって、マフラーマウント部5a上に固定されている。
マフラーマウント部5aは、マフラー5を支持する台座であって、発電機モータ1の第1ハウジング11上に固定されている。
ワイヤー5b,5bは、マフラーマウント部5aの一部から油圧ポンプ4側へ突出した固定部5aaに対して一方の端部が固定されており、マフラー5の外周面に巻きかけられている。
【0043】
<エンジンユニット40の脱着>
本実施形態の油圧ショベル51では、上述したエンジン2あるいは発電機モータ1等のメンテナンス時等に分解作業を実施する際には、以下のような手順で実施される。
すなわち、例えば、発電機モータ1のメンテナンスを実施する際には、まず、車体部57の側面に設けられた開閉可能な扉の近傍に配置された油圧ポンプ4から取り外される。
次に、第1・第2ハウジング11,15間の固定状態を解除して、エンジン2側の第1ハウジング11と、油圧ポンプ4側の第2ハウジング15とで発電機モータ1を分解する。これにより、発電機モータ1内のステータ10やロータ14等の構成部品の修理やメンテナンスを実施することができる。
【0044】
このとき、取り外される第2ハウジング15側には、発電機モータ1の構成部材のうち、ステータ10、ロータ14、フランジ16、回転軸19等が含まれる。逆に、エンジン2側に固定された状態で残される第1ハウジング11側には、発電機モータ1の構成部材のうち、フライホイール12、カップリング13等が含まれる。ここで、第1ハウジング11にはフライホイール12が内包されているため、第2ハウジング15を取り外した際に、エンジン2の出力軸やフライホイール12等の回転側の部材に、水、埃等の異物が付着したり、それらが破損したりすることを防ぐことができる。
【0045】
ここで、エンジン2側に残される第1ハウジング11には、発電機モータ1を含むエンジンユニット40を支持するマウント部42,42、検油管11a、およびマフラーマウント部5aが取り付けられている。
これにより、発電機モータ1を分解する際に、エンジンユニット40をクレーン等で吊り上げた状態でマウント部42,42を別の場所で治具等を使って支持させる等の作業は不要であり、そのまま第2ハウジング15側の部品を取り外して、発電機モータ1を分解することができる。よって、発電機モータ1の分解時における作業性を向上させることができる。
【0046】
また、第1・第2ハウジング11,15内に形成される油溜め部Vに貯留される油の量を検査する検油管11aも第1ハウジング11側に設けられているため、発電機モータ1の分解時に検油管11aを取り外す等の作業は不要であり、作業性を向上させることができる。また、本実施形態では、図7に示すように、検油管11aを、エンジンフード64を開けた際に露出するエンジンルーム60の上部開口60a側に導いている。このため、エンジンフード64を開けてエンジン2の油量をエンジン検油管2aによってチェックする際に、同時に検油管11aによって発電機モータ1内の油量もチェックすることができるため、点検時の作業性を向上させることができる。なお、エンジン検油管2aと発電機モータ1の検油管11aとは、例えば、車両の前後、左右等に分かれて設置されることなく、同じ側に設けられていることが好ましい。これにより、エンジン2の油量と発電機モータ1の油量とを点検する際の作業性を向上させることができる。
【0047】
さらに、エンジン2上に配置されるマフラー5を支持するマフラーマウント部5aも第1ハウジング11に固定されているため、発電機モータ1の分解時にマフラー5をクレーン等で吊り上げる等の作業も不要となり、作業性を向上させることができる。
また、本実施形態の油圧ショベル51では、上述したように、図3に示すように、発電機モータ1の側断面視において、回転軸19が、第2ハウジング15の端面からエンジン2側に突出するように設けられている。
【0048】
これにより、発電機モータ1を分解した際には、第2ハウジング15側に含まれる回転軸19が、第2ハウジング15から突出した状態となる。よって、発電機モータ1の内部をメンテナンス等した後で再び組み立てる際には、ステータ10やロータ14の端部が第1ハウジング11側にぶつかる前に、第1ハウジング11側のカップリング13の中心孔内に回転軸19を挿入することができる。この結果、カップリング13の中心孔内に回転軸19を挿入することで、部品の損傷等を伴うことなく、第1ハウジング11側の部品と第2ハウジング15側の部品との間で径方向における位置合わせを行うことができる。
【0049】
なお、ステータコア20は、第2ハウジング15側の端面(図3中のX−X線)からフランジ16側に内包されていることが好ましい。同様に、ロータ14も内包されていることがより好ましい。この場合には、発電機モータ1を構成する重要な部品であるステータコア20、ロータ14のコア部分の損傷を防ぐことができる。また、ステータコア20とロータ14とのコア間のギャップを精度よく保つことができる。
【0050】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、本発明を油圧ショベルに適用した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、ホイールローダ等の他のハイブリッド型の建設機械に対しても、同様に本発明の適用は可能である。
【0051】
(B)
上記実施形態では、発電機モータ1として、SR(switched reluctance)モータを用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、PM(Permanent Magnet)モータ等、他の発電機モータを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の建設機械は、エンジンと発電機モータと油圧ポンプとを一体化したエンジンユニットを搭載した建設機械において、発電機モータの着脱時における作業性を向上させることができるという効果を奏することから、エンジンと油圧ポンプとの間に発電機モータを搭載したハイブリッド型の建設機械に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 発電機モータ
2 エンジン
2a エンジン検油管
3 冷却ファン
4 油圧ポンプ
5 マフラー
5a マフラーマウント部
5aa 固定部
5b ワイヤー
10 ステータ
11 第1ハウジング
11a 検油管
12 フライホイール
13 カップリング
14 ロータ
14a ロータヨーク
14b ホルダ
14c ブレード
15 第2ハウジング
15a 冷却油配管
15d オイルクーラ
16 フランジ
16a 冷却油通路
16e 軸受け支持部
17 電気ボックス
18 軸受け部
19 回転軸
19a 外歯スプライン
19b 内歯スプライン
20 ステータコア
21 インシュレータ
23 コイル
40 エンジンユニット
41 マウント部
41a 本体部
41c 支持部材
42 マウント部
42a 本体部
42b ボルト
42c 支持部材
51 油圧ショベル(建設機械)
52 下部走行体
53 旋回台
54 作業機
55 カウンタウェイト
56 機器室
57 車体部
58 キャブ
60 エンジンルーム
60a 上部開口
61 ブーム
61a 油圧シリンダ
62 アーム
62a 油圧シリンダ
63 バケット
63a 油圧シリンダ
64 エンジンフード
65 車体フレーム部
d1 固定幅
P 履帯
V 油溜め部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンの駆動力によって駆動される油圧ポンプと、前記エンジンと前記油圧ポンプとの間に設けられており前記エンジンの出力軸および前記油圧ポンプの入力軸に接続された回転軸と前記エンジン側に固定された第1ハウジングと前記油圧ポンプ側に固定された第2ハウジングとを有する発電機モータと、を一体化したエンジンユニットと、
前記エンジンユニットが搭載される車体フレーム部と、
前記エンジンおよび前記第1ハウジングにそれぞれ設けられており、前記エンジンユニットを前記車体フレーム部上において支持するマウント部と、
を備えている建設機械。
【請求項2】
前記第1ハウジングは、前記エンジンに接続されたフライホイールを収納している、
請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記第1・第2ハウジング内に形成された油溜め部を、さらに備えている、
請求項1または2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記第1ハウジングに設けられており、前記油溜め部に貯留された油の量を点検する検油管を、さらに備えている、
請求項3に記載の建設機械。
【請求項5】
前記第1ハウジングは、前記回転軸方向において前記マウント部が取り付けられている固定部分の幅に相当する厚みを有している、
請求項1から4のいずれか1項に記載の建設機械。
【請求項6】
前記エンジンにおける燃焼ガスを排気するマフラーと、
前記第1ハウジングに設けられており、前記マフラーを支持するマフラーマウント部と、
をさらに備えている、
請求項1から5のいずれか1項に記載の建設機械。
【請求項7】
前記回転軸は、側面視において前記第2ハウジングから前記エンジン側に突出している、
請求項1から6のいずれか1項に記載の建設機械。
【請求項8】
油圧ショベルである、
請求項1から7のいずれか1項に記載の建設機械。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−211469(P2012−211469A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77596(P2011−77596)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】