説明

建設機械

【課題】 遮熱板の形状、構成を簡略化することにより、遮熱板の組付け作業を容易に行えるようにする。
【解決手段】 遮熱板22には、過給機9に対応する位置を切欠くことにより、過給機9が突出可能な開口部27を設ける。遮熱板22には、この開口部27から突出した過給機9を覆う閉塞カバー29を設ける構成とする。従って、開口部27を設けた遮熱板22は、前方に突出した過給機9を避けるために複雑な形状とする必要がない。これにより、遮熱板22を構成する各仕切板24,26は、僅かに折曲げただけの平坦に近い単純な形状に形成することができる。さらに、遮熱板22には、開口部27から突出した過給機9を覆う閉塞カバー29を設けているから、この閉塞カバー29を遮熱板22に取付けた状態では、エンジン8と旋回モータ20との間を確実に遮断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば上部旋回体の旋回フレームにエンジンや旋回モータが搭載された油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回装置を介して旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前,後方向の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより構成されている。
【0003】
また、上部旋回体は、支持構造体を形成する旋回フレームと、該旋回フレームの後部に左,右方向に延びる横置き状態で搭載されたエンジンと、該エンジンに空気を強制的に供給するために該エンジンの前側に位置して前方に突出した状態で取付けられた過給機と、前記エンジンの前側に位置して前記旋回フレーム上に設けられた旋回装置の駆動源となる旋回モータとを備えている。
【0004】
ここで、エンジンに取付けられた過給機は、排気ガスを利用してエンジンに空気を強制的に送り込むことにより、該エンジンの出力を高めるものである。一方、上部旋回体には、エンジンと旋回モータとの間を遮断するためにエンジンの前側に左,右方向に延びるように遮熱板が設けられている。この遮熱板は、熱を発するエンジンと作動油を用いる旋回モータとを隔離するものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−187097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
昨今の油圧ショベルでは、出力をより高めるために過給機を大型化している。一方で、上部旋回体は、狭い作業現場でも旋回動作できるように小型に形成している。このために、小旋回式の油圧ショベルでは、上部旋回体に搭載される機器類、例えばエンジンの過給機と旋回モータとが互いに接近して配置しているから、エンジンの前側に配置される遮熱板は、過給機と旋回モータの両方を避けられるように複雑な形状となってしまう。このように複雑な形状となった遮熱板は、組付け作業に手間を要する上に、製造コストが嵩んでしまうという問題がある。
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、遮熱板の形状、過給機を覆うための構成を簡略化することにより、遮熱板の組付け作業を容易に行うことができるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による建設機械は、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回装置を介して旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前,後方向の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とからなり、前記上部旋回体は、支持構造体を形成する旋回フレームと、該旋回フレームの後部に左,右方向に延びる横置き状態で搭載されたエンジンと、該エンジンに空気を強制的に供給するために該エンジンの前側に位置して前方に突出した状態で取付けられた過給機と、前記エンジンの前側に位置して前記旋回フレーム上に設けられた前記旋回装置の駆動源となる旋回モータと、前記エンジンと前記旋回モータとの間を遮断するために前記エンジンの前側に左,右方向に延びて配置された遮熱板とを備えてなる。
【0009】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記遮熱板には、前記過給機に対応する位置を切欠くことにより該過給機が突出可能な開口部を設け、かつ、前記遮熱板には、該開口部から突出した前記過給機を覆う閉塞カバーを設ける構成としたことにある。
【0010】
請求項2の発明は、前記遮熱板を形成する前記開口部の上部位置には、前記閉塞カバーを取付けるために前記旋回モータに向けて延びた庇状のブラケットを設け、該庇状ブラケットは、平面視で前記過給機を覆い隠す大きさに形成したことにある。
【0011】
請求項3の発明は、前記閉塞カバーは、前記過給機を覆うことができる箱形状に形成したことにある。
【0012】
請求項4の発明は、前記開口部は、前記旋回モータの上端よりも高い位置に開口させたことにある。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、遮熱板には、過給機に対応する位置を切欠くことにより、該過給機が突出可能な開口部を設けているから、遮熱板は、前方に突出した過給機を避けるために複雑な形状とする必要がなく、平坦に近い単純な形状とすることができる。
【0014】
しかも、遮熱板には、開口部から突出した前記過給機を覆う閉塞カバーを設けているから、この閉塞カバーを遮熱板に取付けた状態では、エンジンと旋回モータとの間を確実に遮断することができる。
【0015】
この結果、遮熱板は、エンジンと旋回モータとの間を遮断するという基本機能を維持しつつ、平坦に近い単純な形状とすることができるから、遮熱板を組付けるときの作業性を向上することができ、また、遮熱板を製造するためのコストを低減することができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、遮熱板の開口部の上部位置には、旋回モータに向けて延びた庇状のブラケットを設けているから、この庇状ブラケットには、閉塞カバーを取付けることができる。この場合、庇状ブラケットは、平面視で過給機を覆い隠す大きさに形成している。
【0017】
従って、例えば旋回モータの着脱作業、メンテナンス作業等を行う場合には、閉塞カバーを取外すことにより各種工具を取扱うための作業スペースを広くすることができ、作業性を向上することができる。しかも、作業時に工具が過給機に衝突しようとしても、過給機よりも先に庇状ブラケットに工具が衝突することになるから、過給機を保護することができ、信頼性を向上することができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、閉塞カバーは、過給機を覆うことができる箱形状に形成しているから、閉塞カバーは、例えば金属板を折り曲げることにより容易に形成することができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、開口部は、旋回モータの上端よりも高い位置に開口させているから、旋回モータに邪魔されることなく開口部の位置に閉塞カバーを容易に取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】下部走行体、上部旋回体等を外装カバーの一部を省略した状態で示す拡大平面図である。
【図3】エンジン等を搭載した旋回フレームを示す平面図である。
【図4】上部旋回体の後部側を図2中の矢示IV−IV方向から見た要部拡大の断面図である。
【図5】旋回モータと過給機と遮熱板と閉塞カバーを示す要部拡大の平面図である。
【図6】閉塞カバーを取外した状態を図5と同様位置から見た平面図である。
【図7】エンジンと旋回モータと閉塞カバーを取外した遮熱板とを示す要部拡大の斜視図である。
【図8】閉塞カバーを分離した状態の遮熱板を示す分解斜視図である。
【図9】図5中の矢示IX−IX方向から見た要部拡大の断面図である。
【図10】図9中の矢示X−X方向から見た要部拡大の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械の代表例として、過給機を備えたエンジンを搭載した油圧ショベルを例に挙げ、図1ないし10に従って詳細に説明する。
【0022】
図1において、1は建設機械としてのクローラ式の油圧ショベルを示している。この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、該上部旋回体4の前,後方向の前側に俯仰動可能に設けられ土砂の掘削作業等を行う作業装置5とにより大略構成されている。前記旋回装置3は、下部走行体2上に上部旋回体4を旋回可能に支持する旋回輪3Aと、駆動源となる後述の旋回モータ20とにより構成されている。
【0023】
ここで、油圧ショベル1は、上部旋回体4が下部走行体2の車幅内にほぼ収まる小旋回機として構成されている。この場合の上部旋回体4は、図2に示す如く、少なくとも後側が下部走行体2の車幅内にほぼ収まるように略円形状をなし、全体として非常にコンパクトに形成されている。
【0024】
6は上部旋回体4の支持構造体をなす旋回フレームである。この旋回フレーム6は、図3に示す如く、前,後方向に延びる厚肉な鋼板等からなる底板6Aと、該底板6A上に立設され、左,右方向に所定の間隔をもって前,後方向に延びた左,右の縦板6Bと、該各縦板6Bの左,右方向に間隔をもって配置され、前,後方向に延びた左サイドフレーム6C,右サイドフレーム6Dと、前記底板6A、縦板6Bから左,右方向に張出し、その先端部に前記左,右のサイドフレーム6C,6Dを支持する複数本の張出しビーム6Eとにより構成されている。
【0025】
ここで、各縦板6Bの前側には、図2に示すように作業装置5が俯仰動可能に取付けられ、後側には後述のエンジン8が搭載されている。さらに、底板6Aの前,後方向の中間部、即ち、作業装置5のフート部とエンジン8との間には、後述の旋回モータ20が取付けられている。
【0026】
7は旋回フレーム6の左前側に搭載されたキャブである(図1、図2参照)。このキャブ7は、オペレータが搭乗するもので、内部にはオペレータが着座する運転席、走行用の操作レバー、作業用の操作レバー(いずれも図示せず)等が配設されている。
【0027】
8は旋回フレーム6の後側に設けられたエンジンで、該エンジン8は、図3、図4に示すように、左,右方向に延在する横置き状態に搭載されている。また、エンジン8の後側位置には、取込んだ空気を各気筒(図示せず)に振り分ける吸気マニホールド8Aが設けられ、前側位置には、各気筒からの排気をまとめて排出する排気マニホールド8Bが設けられている。この排気マニホールド8Bの流出側には後述の過給機9が設けられている。
【0028】
9はエンジン8に設けられた過給機(ターボチャージャ)である。この過給機9は、排気ガスを利用してエンジン8の各気筒内に空気を強制的に送り込むことによって該エンジン1の出力を高めるもので、排気マニホールド8Bの流出側に取付けられている。過給機9は、図9、図10に示すように、排気マニホールド8Bに接続され排気ガスによって回転駆動するタービン部9Aと、該タービン部9Aと回転軸(図示せず)を介して直結されタービン部9Aによって回転駆動されることにより空気をエンジン8側に強制的に供給するブロア部9Bと、エンジン8に最適な過給空気を送るため、タービン部9Aの内部に設けられた可変翼を駆動する圧力制御式のアクチュエータ部9Cとにより構成されている。
【0029】
タービン部9Aの外周側は排気マニホールド8Bに接続され、中央部には右側に延びるように排気管10が接続されている。一方、ブロア部9Bの中央部にはエアクリーナ(図示せず)によって清浄化された空気(大気)が流通する吸気ホース11が接続され、外周側には後述する熱交換器16のインタクーラ16Cに加圧した空気を流通する流出ホース12が接続されている。なお、13はインタクーラ16Cによって冷やされた加圧空気をエンジン8の吸気マニホールド8Aに向け流通する流入ホースを示している。
【0030】
過給機9は、排気マニホールド8Bの流出側に取付けるものであるから、この前側の排気マニホールド8Bよりもさらに前側に突出している。特に、タービン部9Aの後側には排気マニホールド8Bが配置されているから、該タービン部9Aに取付けられるアクチュエータ部9Cは、排気マニホールド8Bの前側に配置しなくてはならず、過給機9の一部として前側に大きく突出している。
【0031】
14はエンジン8の右側に設けられた油圧ポンプである(図2、図3参照)。この油圧ポンプ14は、エンジン8によって駆動されることにより、後述の作動油タンク18から供給される作動油を昇圧(加圧)して吐出するものである。また、各種アクチュエータを駆動して戻される作動油は、後述のオイルクーラ16Aによって冷却された後に作動油タンク18に戻される。
【0032】
15はエンジン8の左側に設けられた冷却ファンである。この冷却ファン15は、エンジン8を動力源として回転駆動されることにより、外気を冷却風として吸込み、後述する熱交換器16のオイルクーラ16A、ラジエータ16B、インタクーラ16C等に供給するものである。
【0033】
16はエンジン8の左側に位置し冷却ファン15に対面して配設された熱交換器である。この熱交換器16は、例えば作動油を冷却するオイルクーラ16Aと、エンジン8の冷却水を冷却するラジエータ16Bと、過給機9によって加圧された空気を冷却するインタクーラ16Cと、オイルクーラ16A、ラジエータ16Bおよびインタクーラ16Cを支持する支持枠体16Dとにより構成されている。
【0034】
17は油圧ポンプ14の前側に位置して旋回フレーム6の右側に搭載された燃料タンクである。この燃料タンク17は、エンジン8に供給する燃料を貯えるもので、エンジン8に接続されている。
【0035】
18は燃料タンク17の左隣に位置して旋回フレーム6上に搭載された作動油タンクを示している。この作動油タンク18は、加圧されて各種アクチュエータに供給される作動油を貯えるものである。また、作動油タンク18は、供給側が油圧ポンプ14に接続され、戻り側がオイルクーラ16A等に接続されている。
【0036】
19は旋回フレーム6の後端部に取付けられたカウンタウエイトである。このカウンタウエイト19は、作業装置5との重量バランスをとるもので、円弧状をした重量物として形成されている。カウンタウエイト19は、旋回動作時でも上部旋回体4の後側が下部走行体2の車幅内にほぼ収まるように、旋回中心に近い位置に配置されている。このために、旋回中心からカウンタウエイト19までの距離(スペース)が小さくなるから、このスペースに配設されるエンジン8、過給機9、旋回モータ20は互いに接近している。
【0037】
20は旋回装置3の駆動源を構成する旋回モータで、該旋回モータ20は、エンジン8の前側近傍、詳しくは、図5、図6に示すように、過給機9の前側に近接する位置、即ち、旋回フレーム6の左,右の縦板6B間の右側寄りに位置して底板6Aに取付けられている。この場合、旋回モータ20の上端部の位置は、図4に示す如く、後述する遮熱板22の開口部27よりも高さ寸法Hだけ低い位置に配置されている。さらに、旋回モータ20は、図7に示すように、段付円筒状のモータケース20Aと、該モータケース20Aに内臓された油圧モータ、減速機(いずれも図示せず)等とにより構成されている。
【0038】
そして、旋回モータ20は、モータケース20Aの下部に拡開して設けたフランジ部20Bを底板6Aの所定位置に配置し、この状態でフランジ部20Bを複数本のボルト21を用いて底板6Aに固定する構成となっている。この場合、フランジ部20Bを固定する複数本のボルト21のうち、エンジン8側となる後側に位置するボルト21は、平面視で過給機9に近接した位置に配置されている。
【0039】
次に、エンジン8と旋回モータ20との間を遮断するために設けられた本実施の形態による遮熱板22について述べる。
【0040】
即ち、22はエンジン8の前側に位置して左,右方向に延びて配置された遮熱板である。この遮熱板22は、熱を発するエンジン8と作動油を用いる旋回モータ20とを隔離することにより、高温になる排気マニホールド8Bや過給機9に作動油が付着したり、エンジン8等の熱がキャブ7側に流れるのを防止するものである。遮熱板22は、図8等に示すように、後述の支持フレーム23、仕切板24,26、開口部27、庇状ブラケット28、閉塞カバー29等により構成されている。
【0041】
23は遮熱板22を支持する支持フレームで、該支持フレーム23は遮熱板22の上側に位置して左,右方向に延びた金属製のアングル材により形成されている。支持フレーム23は、図2に示すように、左,右方向の左側に位置する左側フレーム部23Aがキャブ7の後面に接近して配置されている。一方、左,右方向の右側に位置する右側フレーム部23Bは、各縦板6B間の右側寄りに配置された旋回モータ20を避けるように、左側フレーム部23Aよりも後側(エンジン8側)に後退した位置に配置されている。さらに、左側フレーム部23Aと右側フレーム部23Bとの間は、両者を連結する連結部23Cとなっている。これにより、支持フレーム23は、全体として中間部分の1箇所だけがオフセットされた単純なクランク状に形成されている。
【0042】
このように構成された支持フレーム23は、左側フレーム部23Aの左端部が熱交換器16の支持枠体16Dに取付けられ、右側フレーム部23Bの右端部が作動油タンク18に取付けられている。その他にも、エンジン8の上側を覆う後述の外装カバー32を支持するカバー支持フレーム(図示せず)等に取付けられている。
【0043】
24は支持フレーム23の左側寄りに支持された左仕切板である。この左仕切板24は、その上部が支持フレーム23の左側フレーム部23Aの右端部にボルト25を用いて取付けられている。左仕切板24は、狭幅な平坦板として上,下方向に延びて形成され、その上,下方向の中間部位には、吸気ホース11を配策するための切欠部24Aが形成されている。
【0044】
26は支持フレーム23の中間部から右側寄りに支持された右仕切板である。この右仕切板26は、左仕切板24の右側に連続するように配置され、その上部が支持フレーム23にボルト25を用いて取付けられている。右仕切板26は、広幅な長方形状の金属板を、上,下方向に延びる2本の折曲げ線に沿って折曲げることにより、支持フレーム23のクランク形状に沿うように形成されている。
【0045】
右仕切板26は、左側に位置して左仕切板24の右端部に重ね合わされる重ね代部26Aと、支持フレーム23の連結部23Cの傾斜角度に沿うように該重ね代部26Aの右端縁から後側に折曲げて形成された傾斜面部26Bと、支持フレーム23の右側フレーム部23Bに沿うように該傾斜面部26Bの右端縁から右側に折曲げて形成された平面部26Cとにより構成されている。この右仕切板26の形状は、クランク形状の折曲げ加工であるから、簡単な作業で製造することができる。
【0046】
右仕切板26は、重ね代部26Aの上部が左仕切板24と一緒に支持フレーム23の左側フレーム部23A右端にボルト25を用いて取付けられ、傾斜面部26Bの上部が連結部23Cにボルト25を用いて取付けられ、平面部26Cの上部が右側フレーム部23Bにボルト25を用いて取付けられている。これにより、左仕切板24と右仕切板26は、熱交換器16の支持枠体16Dと作動油タンク18との間に亘って配置され、エンジン8側と旋回モータ20側とを隔離している。
【0047】
ここで、右仕切板26は、傾斜面部26Bによって平面部26Cをエンジン8側に接近させているから、旋回モータ20の周囲に空間を形成することができる。これは、後述の開口部27によって過給機9を前方に突出させたことにより、この過給機9に邪魔されることなく、右仕切板26を後側に配置できたことによるものである。
【0048】
27は右仕切板26に設けられた開口部である。この開口部27は、過給機9に対応する位置、即ち、傾斜面部26Bと平面部26Cとの境界位置を中心にして切欠くことにより、左,右方向に延びた長方形状の開口として形成されている。また、開口部27は、図4に示すように、旋回モータ20の上端よりも高さ寸法Hだけ高い位置に配置されている。これにより、開口部27は、旋回モータ20に邪魔されることなく、後述の閉塞カバー29を容易に着脱することができる。
【0049】
開口部27の大きさ(上,下寸法、左,右寸法)は、図9、図10に示すように、旋回フレーム6上に防振状態で搭載されたエンジン8が最も大きく揺れた場合でも、該エンジン8に取付けられた過給機9が接触しない寸法に設定されている。
【0050】
28は開口部27の上部に位置して右仕切板26の平面部26Cに設けられた庇状ブラケットを示している。この庇状ブラケット28は、図8、図9に示すように、長方形状の金属板を直角に折曲げることにより形成され、縦板部28Aが平面部26Cに固着されている。一方、縦板部28Aの下端部に設けられた支持板部28Bは、水平方向の前側(旋回モータ20側)に向けて延びて形成され、後述する閉塞カバー29の上面板29Bを取付ける取付台となっている。
【0051】
ここで、庇状ブラケット28の支持板部28Bは、過給機9の上側に配置されている。この上で、支持板部28Bは、図6に示すように、平面視で過給機9のうち前側に突出したアクチュエータ部9Cを覆い隠す大きさに設定されている。一方で、支持板部28Bは、旋回モータ20を底板6Aに取付けている各ボルト21、特に、後側に位置するボルト21を平面視で隠さない大きさとなっている。これにより、例えば旋回モータ20の着脱作業、メンテナンス作業等を行う場合には、支持板部28Bを避けてボックスレンチ等の工具をボルト21に係合させることができる。しかも、作業時に工具が過給機9のアクチュエータ部9Cに衝突しようとしても、工具はアクチュエータ部9Cよりも先に支持板部28Bに衝突することになる。
【0052】
29は遮熱板22に設けられた閉塞カバーを示している。この閉塞カバー29は、図9、図10に示すように、開口部27から前側に突出した過給機9(アクチュエータ部9C)を覆うものである。閉塞カバー29は、アクチュエータ部9Cを覆うことができる箱形状に形成され、具体的には、図8に示す如く、開口部27と同等またはそれ以上の大きさをもった左,右方向に長尺な前面部29Aと、該前面部29Aの上端縁から屈曲して後側に延びた上面板29Bと、前面部29Aの下端縁から屈曲して後側に延びた下面板29Cと、前面部29Aの右端縁から屈曲して後側に延びた右面板29Dとにより後側に開口した箱形状に形成されている。
【0053】
下面板29C、右面板29Dの先端部(後端部)には、外向きに屈曲することによって取付板部29E,29Fが形成されている。これらの取付板部29E,29Fは、ボルト25によって右仕切板26に取付けられるものである。一方、上面板29B、下面板29Cの左側は、右仕切板26の傾斜面部26Bに沿う傾斜縁29B1,29C1となっている。
【0054】
閉塞カバー29は、上面板29Bを庇状ブラケット28の支持板部28B上に乗せ、各取付板部29E,29Fを右仕切板26の平面部26Cに対面させる。この状態で、上面板29Bに挿通したボルト25を前記支持板部28Bに螺着し、各取付板部29E,29Fに挿通したボルト25を平面部26Cに螺着することにより、閉塞カバー29は、開口部27から突出した過給機9を覆うように遮熱板22に取付けることができる。
【0055】
なお、閉塞カバー29の大きさ(上,下寸法、左,右寸法、前,後寸法)は、前述した開口部27とほぼ同様に、当該閉塞カバー29を開口部27に取付けた状態で、エンジン8が最も大きく揺れた場合でも、該エンジン8に取付けられた過給機9が接触しない寸法に設定されている。
【0056】
この上で、閉塞カバー29の前,後寸法は、図5、図9、図10に示す如く、右仕切板26側に取付けたときに、前面部29Aが支持フレーム23の左側フレーム部23A前端、左仕切板24とほぼ同一面をなすように設定されている。従って、閉塞カバー29は、左仕切板24と右仕切板26との段差を利用して取付けることができ、取付けた状態では、前面部29Aを左仕切板24とほぼ同一面として配置することができる。しかも、閉塞カバー29は、左仕切板24と右仕切板26との段差(傾斜面部26Bの前,後方向の長さ寸法)に収まるようにコンパクトに形成されており、取付け、取外し作業時に容易に取扱うことができる。
【0057】
30は開口部27上,下部分に位置して右仕切板26の傾斜面部26Bに設けられた2つのシール部材である。この2つのシール部材30は、例えば弾性をもった発泡性樹脂材料を用いて短冊状に形成されている。各シール部材30は、上面板29B,下面板29Cの傾斜縁29B1,29C1を密着させることにより、閉塞カバー29による開口部27の密閉性を高めるものである。
【0058】
さらに、31は支持フレーム23、各仕切板24,26に設けられた他のシール部材で、これらのシール部材31は、シール部材30とほぼ同様に、弾性をもった発泡性樹脂材料を用いて所望の形状に形成されている。シール部材31は、遮熱板22を上部旋回体4に取付けたときに、旋回フレーム6、熱交換器16、作動油タンク18との隙間を塞いで気密性を高めることができる。さらに、シール部材31は、断熱性、吸音性を有しているからエンジン8側の熱、騒音が外部に出ないように遮ることができる。
【0059】
なお、32はキャブ7の後側から右側に亘って旋回フレーム6上に設けられた外装カバー(図4参照)である。この外装カバー32は、エンジン8、油圧ポンプ14、熱交換器16等を覆うものである。
【0060】
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、この油圧ショベル1の動作について説明する。
【0061】
まず、オペレータは、キャブ7に搭乗して運転席に着座する。この状態で走行用のレバーを操作することにより、下部走行体2を駆動して油圧ショベル1を前進または後退させることができる。また、運転席に着座したオペレータは、作業用のレバーを操作することにより、旋回装置3と作業装置5とを動作させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0062】
また、油圧ショベル1の稼動時には、エンジン8が熱や騒音を発する。この場合、エンジン8の前側には、左,右方向に延びて遮熱板22を設けているから、熱や騒音がキャブ7側に漏れ出るのを防止でき、オペレータの作業環境を良好にすることができる。また、遮熱板22は、高温になる排気マニホールド8Bや過給機9に作動油が付着するような事態を未然に防ぐことができる。
【0063】
次に、旋回モータ20をメンテナンスするために旋回フレーム6から取外すときの作業について述べる。
【0064】
まず、旋回モータ20を取外すときには、ボックスレンチ等の工具を用いて複数本のボルト21を緩める必要がある。このときに、図5に示すように、遮熱板22に閉塞カバー29が取付けてあると、この閉塞カバー29によって後側に位置するボルト21が覆い隠されてしまい、ボックスレンチを係合させることができない。
【0065】
そこで、ボルト25を緩めて遮熱板22から閉塞カバー29を取外す。このときに、閉塞カバー29が取付けられている開口部27は、旋回モータ20の上端よりも高さ寸法Hだけ高い位置となっているから、旋回モータ20に邪魔されることなく、閉塞カバー29を容易に取外すことができる。そして、閉塞カバー29を取外した状態では、図6に示すように、全てのボルト21を露出させることができ、該各ボルト21をボックスレンチを用いて緩めることができる。
【0066】
このボックスレンチを用いた各ボルト21の取外し作業では、ボックスレンチが揺れて過給機9のアクチュエータ部9Cに接近する場合がある。しかし、過給機9の上側には、平面視で前側に突出したアクチュエータ部9Cを覆うように庇状ブラケット28を設けているから、ボックスレンチがアクチュエータ部9Cに衝突するのを防止できる。
【0067】
各ボルト21を緩めたら旋回モータ20を吊り上げることにより、旋回フレーム6から旋回モータ20を取外すことができる。このときにも、庇状ブラケット28は、吊り上げた旋回モータ20がアクチュエータ部9Cに衝突するのを防止できる。
【0068】
かくして、本実施の形態によれば、遮熱板22には、過給機9(アクチュエータ部9C)に対応する位置を切欠くことにより、該過給機9が突出可能な開口部27を設ける。この上で、前記遮熱板22には、この開口部27から突出した前記過給機9を覆う閉塞カバー29を設ける構成としている。
【0069】
従って、開口部27を設けた遮熱板22は、前方に突出した過給機9を避けるために複雑な形状とする必要がない。これにより、遮熱板22を構成する各仕切板24,26は、僅かに折曲げただけの平坦に近い単純な形状に形成することができる。
【0070】
しかも、遮熱板22には、開口部27から突出した過給機9を覆う閉塞カバー29を設けているから、この閉塞カバー29を遮熱板22に取付けた状態では、エンジン8と旋回モータ20との間を確実に遮断することができる。
【0071】
この結果、本実施の形態による遮熱板22は、エンジン8と旋回モータ20との間を遮断するという基本機能を維持することができる。この上で、遮熱板22を構成する支持フレーム23、各仕切板24,26等は、単純な形状とすることができるから、遮熱板22を組付けるときの作業性を向上することができ、また、遮熱板22を製造するためのコストを低減することができる。
【0072】
また、遮熱板22を形成する開口部27の上部位置、即ち、右仕切板26の平面部26Cの上側位置には、閉塞カバー29の上面板29Bを取付けるために、旋回モータ20側となる前側に向けて延びた庇状ブラケット28を設けている。この庇状ブラケット28は、平面視で過給機9のアクチュエータ部9Cを覆い隠す大きさに形成している。
【0073】
従って、旋回モータ20の着脱作業、メンテナンス作業等を行う場合には、閉塞カバー29を取外すことによりボックスレンチ等の工具を取扱うための作業スペースを広くすることができ、作業性を向上することができる。しかも、作業時に工具が過給機9に衝突しようとしても、過給機9よりも先に庇状ブラケット28の支持板部28Bに工具を衝突させることができる。これにより、過給機9を工具や着脱するときの旋回モータ20等から保護することができ、信頼性を向上することができる。
【0074】
一方、閉塞カバー29は、過給機9を覆うことができる箱形状に形成しているから、該閉塞カバー29は、例えば金属板を折り曲げることにより容易に形成することができ、組立作業性等を向上することができる。
【0075】
また、閉塞カバー29の前,後寸法は、右仕切板26側に取付けたときに、前面部29Aが支持フレーム23の左側フレーム部23A前端、左仕切板24とほぼ同一面をなす寸法に設定している。従って、閉塞カバー29は、左仕切板24と右仕切板26との段差、即ち、傾斜面部26Bの前,後方向の長さ寸法を利用して取付けることができ、限られたスペースを有効に利用することができる。また、閉塞カバー29は、右仕切板26側に取付けたときに、前面部29Aが左仕切板24とほぼ同一面をなしているから、各面を整然と配置でき、美観に優れている。しかも、閉塞カバー29は、左仕切板24と右仕切板26との段差に収まるようにコンパクトに形成することができるから、取付け、取外し作業時に周囲の機器類に干渉し難く、容易に取扱うことができる。
【0076】
さらに、遮熱板22の開口部27は、旋回モータ20の上端よりも高さ寸法Hだけ高い位置に開口させているから、該旋回モータ20に邪魔されることなく、開口部27の位置に閉塞カバー29を容易に取付け、取外しすることができる。
【0077】
なお、実施の形態では、遮熱板22に2枚の仕切板24,26を設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、2枚の仕切板24,26の範囲を1枚の板体によって構成してもよい。この場合には、部品点数を削減することができる。
【0078】
また、実施の形態では、遮熱板22の開口部27を長方形状に形成し、閉塞カバー29を箱形状に形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、開口部を円形、長円形、多角形等の他の形状に形成してもよい。また、閉塞カバーは、箱形状以外の形状、例えば半球状、蒲鉾状等の形状とすることもできる。
【0079】
また、実施の形態では、閉塞カバー29の前,後寸法を、右仕切板26側に取付けたときに、前面部29Aが支持フレーム23の左側フレーム部23A前端、左仕切板24とほぼ同一面をなす寸法に設定した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、閉塞カバー29の前面部29Aを、支持フレーム23の左側フレーム部23A前端、左仕切板24よりも後側に後退した位置、即ち、過給機9と接触しない範囲で、実施の形態による閉塞カバー29の上面板29B、下面板29Cおよび右面板29Dの前,後方向の長さ寸法を短く形成してもよい。
【0080】
さらに、実施の形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。さらに、例えば油圧クレーン等の旋回装置を備えた他の建設機械にも広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0081】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
3 旋回装置
4 上部旋回体
5 作業装置
6 旋回フレーム
7 キャブ
8 エンジン
8A 吸気マニホールド
8B 排気マニホールド
9 過給機
9A タービン部
9B ブロア部
9C アクチュエータ部
20 旋回モータ
21 ボルト
22 遮熱板
23 支持フレーム
24 左仕切板
26 右仕切板
27 開口部
28 庇状ブラケット
29 閉塞カバー
H 旋回モータの上端から開口部までの高さ寸法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回装置を介して旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体の前,後方向の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とからなり、
前記上部旋回体は、支持構造体を形成する旋回フレームと、該旋回フレームの後部に左,右方向に延びる横置き状態で搭載されたエンジンと、該エンジンに空気を強制的に供給するために該エンジンの前側に位置して前方に突出した状態で取付けられた過給機と、前記エンジンの前側に位置して前記旋回フレーム上に設けられた前記旋回装置の駆動源となる旋回モータと、前記エンジンと前記旋回モータとの間を遮断するために前記エンジンの前側に左,右方向に延びて配置された遮熱板とを備えてなる建設機械において、
前記遮熱板には、前記過給機に対応する位置を切欠くことにより該過給機が突出可能な開口部を設け、
かつ、前記遮熱板には、該開口部から突出した前記過給機を覆う閉塞カバーを設ける構成としたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記遮熱板を形成する前記開口部の上部位置には、前記閉塞カバーを取付けるために前記旋回モータに向けて延びた庇状のブラケットを設け、該庇状ブラケットは、平面視で前記過給機を覆い隠す大きさに形成してなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記閉塞カバーは、前記過給機を覆うことができる箱形状に形成してなる請求項請求項1または2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記開口部は、前記旋回モータの上端よりも高い位置に開口させてなる請求項1,2または3に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−57590(P2012−57590A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204347(P2010−204347)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】