説明

引き戸引き込み装置

【解決課題】 閉扉側付近における閉め忘れ状態をなくすことができ、既製の引き戸にその施工後においても取り付け可能で、小型化できる引き戸の引き込み装置を提供すること。
【解決手段】 枠体に取り付けられた係止部材と、引き戸の開閉方向で変位可能とされたスライド部材と、引き戸に取り付けられスライド部材を支持するガイド部材と、引き戸に取り付けられ、スライド部材に係合し回転される回転部材を有し、その回転によってバネ付勢力を蓄勢しスライド部材を引き戸の開き方向に付勢するバネ力蓄勢装置と、スライド部材に回転可能に取り付けられ、係止部材に係合する一対の係合エレメントからなる係合部を有するトリガ部材と、引き戸に取り付けられ、引き戸が所定位置に開かれるまでトリガ部材と摺動可能に係合して回動を不能にし、係合部が係止部材に係合した状態を保持する回転防止面を有するトリガ回転防止部材と、を有する引き戸引き込み装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開放した引き戸を自動的に所定の閉鎖状態に閉じる引き戸引き込み装置に関する。
【背景技術】
【0002】
引き戸を手動で開閉する際には、引き戸を完全な閉鎖状態にまで閉めようとしても、力が足りなかったり、逆に力が強すぎたりして、引き戸が完全に閉鎖状態とならずに若干開いた状態となることがあった。
【0003】
このため、引き戸を閉じる際に所定の位置にまで引き込むと、自動的に完全な閉鎖位置に引き戸を引き込む引き戸引き込み装置が、種々提案されて用いられている。
【0004】
しかし、従来の引き戸引き込み装置は、引き戸の開閉領域全域にワイヤーロープやラックを設ける必要があったため、装置が大型化するという問題があった(例えば、特開平11−159237)。また、従来提案されている装置は、ワイヤーロープやラック等の部材を引き戸の内部に収容するものであるため、引き戸の扉製作時に取り付ける必要があり、引き戸を施工した後に簡易に取り付けることができる引き込み装置の開発が要望されていた。
【特許文献1】特開平11−159237
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、引き戸の閉扉側付近における閉め忘れ状態をなくすことができ、さらには既製の引き戸にその施工後においても取り付け可能で、装置を小型化することができる引き戸の引き込み装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明(以下、「第1発明」という場合にはこの発明を指す)は、
枠体(以下、実施形態において参照番号2を付して説明する)に開閉自在に取り付けられた引き戸(3)を自動的に閉じるための引き戸引き込み装置(1)であって、
該枠体(2)に取り付けられた係止部材(10)と、
引き戸(3)の開閉方向で変位可能とされたスライド部材(20)と、
該引き戸(3)に取り付けられ、該スライド部材(20)を該開閉方向で移動できるように支持するガイド部材(30)と、
該引き戸(3)に取り付けられたバネ力蓄勢装置(40)であって、該スライド部材(30)に係合し、該バネ力蓄勢装置(40)が該スライド部材(20)に対して引き戸(3)の開き方向に相対的に変位することにより回転される回転部材(42)を有し、該回転部材(42)の回転によってバネ付勢力を蓄勢し、該スライド部材(20)を該バネ力蓄勢装置(40)に対して相対的に該引き戸(3)の開き方向に付勢するバネ力蓄勢装置(40)と、
該スライド部材(20)に回転可能に取り付けられたトリガ部材(50)であって、該引き戸(3)が閉止位置にあるときに、該係止部材(10)の該開閉方向における両側部に隣接して位置するように延びる一対の係合エレメント(52)からなる係合部(53)を有するトリガ部材(50)と、
該引き戸(3)に取り付けられたトリガ回転防止部材(30−1)であって、該開閉方向に延び、該引き戸(3)が所定位置に開かれるまで、該トリガ部材(50)と摺動可能に係合して回動を不能にすることにより、該トリガ部材(50)の該係合部(53)が該係止部材(10)に係合した状態を保持する回転防止面(実施形態の説明において符号61を付して表す)を有するトリガ回転防止部材(30−1)と、
を有し、
該引き戸(3)が該所定位置まで開かれると、該トリガ回転防止部材(30−1)の回転防止面(61)が該トリガ部材(50)から外れて該トリガ部材(50)を回動可能とし、該引き戸(3)が該所定位置を越えて開かれることにより該係止部材(10)と係合している該トリガ部材(50)が所定の回動位置まで回動されて該係止部材(10)との係合が解除され、該引き戸(3)が更に開かれると、該スライド部材(20)に該回転部材からの引き戸(3)の開き方向への付勢力がかけられている状態で、該トリガ部材(50)が該トリガ回転防止部材(30−1)の端部(実施形態の説明において符号62を付して表す)に当接され、該スライド部材(20)が引き戸(3)とともに動かされるようになされ、引き戸(3)が閉じる方向に動かされて該所定位置に近づくと該トリガ部材(50)の一対の係合エレメント(52)の間に該係止部材(10)が受け入れられ、更に戻されると、該トリガ部材(50)の係合部(53)が該係止部材(10)に係合されて該トリガ部材(50)が回動されることにより、該トリガ部材(50)が該回転防止面(61)と係合されて該開閉方向での動きが止められ、これにより開閉方向での動きが止められたスライド部材(20)上を、該バネ力蓄勢装置(40)の該回転部材(42)が該付勢力によって回転して、該引き戸(3)を閉止位置に戻すようにした引き戸引き込み装置を提供するものである。
【0007】
また、本発明(以下、「第2発明」という場合にはこの発明を指す)は、
枠体(2)に開閉自在に取り付けられた引き戸(3)を自動的に閉じるための引き戸引き込み装置(1)であって、
引き戸(3)に取り付けられた係止部材(10)と、
引き戸(3)の開閉方向で変位可能とされたスライド部材(20)と、
該枠体(2)に取り付けられ、該スライド部材(20)を該開閉方向で移動できるように支持するガイド部材(30)と、
該枠体(2)に取り付けられたバネ力蓄勢装置(40)であって、該スライド部材(20)に係合し、該バネ力蓄勢装置(40)が該スライド部材(20)に対して引き戸(3)の閉じ方向に相対的に変位することにより回転される回転部材(42)を有し、該回転部材(42)の回転によってバネ付勢力を蓄勢し、該スライド部材(20)を該バネ力蓄勢装置(40)に対して相対的に該引き戸(3)の閉じ方向に付勢するバネ力蓄勢装置(40)と、
該スライド部材(20)に回転可能に取り付けられたトリガ部材(50)であって、該引き戸(3)が閉止位置にあるときに、該係止部材(10)の該開閉方向における両側部に隣接して位置するように延びる一対の係合エレメント(52)からなる係合部(53)を有するトリガ部材(50)と、
該枠体(2)に取り付けられたトリガ回転防止部材(30−1)であって、該開閉方向に延び、該引き戸(3)が所定位置に開かれるまで、該トリガ部材(50)と摺動可能に係合して回動を不能にすることにより、該トリガ部材(50)の該係合部(53)が該係止部材(10)に係合した状態を保持する回転防止面(実施形態の説明において符号61を付して表す)を有するトリガ回転防止部材(30−1)と、
を有し、
該引き戸(3)が該所定位置まで開かれると、該トリガ回転防止部材(30−1)の回転防止面(61)が該トリガ部材(50)から外れて該トリガ部材(50)を回動可能とし、該引き戸(3)が該所定位置を越えて開かれることにより該係止部材(10)と係合している該トリガ部材(50)が所定の回動位置まで回動されて該係止部材(10)との係合が解除され、該引き戸(3)が更に開かれると、該スライド部材(20)に該回転部材(42)からの引き戸(3)の閉じ方向への付勢力がかけられている状態で、該トリガ部材(50)が該トリガ回転防止部材(30−1)の端部(実施形態の説明において符号63を付して表す)に当接され、該スライド部材(20)が引き戸(3)とともに動かされるようになされ、引き戸(3)が閉じる方向に動かされて該所定位置に近づくと該トリガ部材(50)の一対の係合エレメント(52)の間に該係止部材(10)が受け入れられ、更に戻されると、該トリガ部材(50)の係合部(53)が該係止部材(10)に係合されて該トリガ部材(50)が回動されることにより、該トリガ部材(50)が該回転防止面(61)と係合されて該開閉方向に移動可能となり、これにより開閉方向に移動可能とされたスライド部材(20)上を、該バネ力蓄勢装置(40)の該回転部材(42)が該付勢力によって回転して、該引き戸(3)を閉止位置に戻すようにした引き戸引き込み装置を提供するものである。
【0008】
このように構成されていることにより、引き戸を所定位置まで引き戻せば自動的に引き戸を閉止状態とするので、閉め忘れ状態となることがない。また、本発明の引き戸引き込み装置は引き戸の幅全体に亘ってワイヤーなどを設ける必要がないため、装置の小型化が可能である。さらに、引き戸の内部に設置する必要もないため引き戸を施工した後からでも設置することができる。
【0009】
該回転部材(42)がピニオンとされ、該スライド部材(20)が該ピニオンに係合されるラック部材とされている。
【0010】
該トリガ回転防止部材(30−1)が該開閉方向に延びる直線状部材とされ、該トリガ部材(50)が該直線状部材に係合される溝(54)を有する。
【0011】
これらのように構成することにより、より装置の小型化を図ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る引き戸引き込み装置の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0013】
まず、図1〜4に基づき、第1発明の引き戸引き込み装置の実施形態について説明する。
【0014】
この引き戸引き込み装置1は、枠体2に取り付けられた係止部材10と、引き戸3に取り付けられたガイド部材30、該ガイド部材に摺動可能に取り付けられたスライド部材20及びバネ力蓄勢装置40を有する。
【0015】
係止部材10は、円柱形状であり、枠体2の幅方向ほぼ中央部分に、引き戸3側に向けて突出して設けられている。
【0016】
ガイド部材30は、長尺であり、引き戸3の上縁3a近くで該上縁に平行に設けられている。具体的には、後述するようにバネ力蓄勢装置40を収納して引き戸に固着されるケーシング4に、ネジ5によって固定されている。該ガイド部材30は、上部板部30−1及び下部板部30−2を有し、それらの間にスライド部材20を摺動可能に支持する水平な支持溝31が形成されている。
【0017】
スライド部材20は、ラック部材であり、図2に示すように横断面が矩形の上半部分22がガイド部材30の支持溝31に引き戸の開閉方向で摺動可能に嵌合されており、該上半部分22の下面に多数のラック歯21が形成されている。
【0018】
バネ力蓄勢装置40は、ガイド部材30の下方に設けられており、図2に示すように、ケーシング4に水平に取り付けられた軸41と、軸41に回転可能に取り付けられ、スライド部材20のラック歯21に噛合するピニオン(回転部材)42と、ピニオン42と同軸状に設けられピニオン42の回転を制動するダンパー43と、ピニオン42と同軸状に巻かれたゼンマイバネ44とを具備してなる。
【0019】
さらに具体的には、軸41はケーシング4に回転自在に取り付けられており、中央側バネ固定部47aを有するケースカバー47が、軸41と一体に回転できるように固定されている。ピニオン42は、外方側バネ固定部42aが設けられ、バネを収容するバネケース部42bを有し、軸41の外周において軸41に対して回転自在に取り付けられたパイプ46に該パイプ46と一体に回転するように固定されている。ゼンマイバネ44の一端は中央側バネ固定部47aに固定されており、他端は外方側バネ固定部42aに固定されている。ケースカバー47にはその中央部分に軸41の周囲を囲んで六角形状の凸部47bが設けられている。この凸部47bの6角形の対辺を挟んで、ケーシング4の表面側(引き戸に接触せず露出する側)にU字状のバネ押さえ具45が設置されており、これによりケースカバー47全体を押さえてゼンマイバネ44を押さえていると共にケースカバー47の回転を抑制して軸41が回転しないようにしている。そして必要に応じてバネ押さえ具45を外してケースカバー47を回転させることでゼンマイバネ44の設定加重を適宜変更することができる。
【0020】
ゼンマイバネ44は、ピニオン42がスライド部材20に対して引き戸3の開き方向に相対的に変位して回転されることにより巻き締められてバネ付勢力を蓄勢する。これにより、スライド部材20をバネ力蓄勢装置40に対して相対的に該引き戸3の開き方向に付勢する。
【0021】
本実施形態においてダンパー43としては、オイルの粘性抵抗を用いたワンウェイクラッチ48を有するダンパーを用いているが、かかるダンパーとしては、通常この種の装置に用いられるものを特に制限なく用いることができる。本実施形態においては、ダンパー43を有することにより、急閉扉時の扉走行速度を安全な速度にまで減速させることができる。
【0022】
スライド部材20には、その長手方向中央にトリガ部材50が回転可能に取り付けられている。トリガ部材50がスライド部材20の長手方向中央に取り付けられおり、扉が閉まったときスライド部材20の右端のラック歯21にピニオン42が噛合し、トリガ部材50の係合部53が係止部材10に係合していないときはスライド部材20の左端のラック歯21にピニオン42が噛合する
【0023】
トリガ部材50は、スライド部材20に取り付けられた回転軸51に回転可能に取り付けられており、一対の係合エレメントとしてのアーム52からなる係合部53を有している。該アーム52は、引き戸3が閉止位置にあるときに、係止部材10の開閉方向における両側部に隣接して位置する。
【0024】
トリガ部材50は、トリガ回転防止部材としてのガイド部材30の上部板部30−1に摺動係合する溝54を有する。該溝54は、引き戸3が所定位置に開かれるまで、上部板部30−1と係合して、上部板部30−1における回転防止面61の作用によりトリガ部材50の回動を不能にする。溝54は、その一端部54aがテーパー状にされている。
【0025】
本実施形態の引き戸引き込み装置1は、以下のように作用する。すなわち、図1、3及び4に示すように、引き戸3を開けると、引き戸3に取り付けられたガイド部材30及びバネ力蓄勢装置40は、引き戸3と共に開き方向に移動する。この際、スライド部材20は、溝54がガイド部材の上部板部30−1と係合しており、且つ、トリガ部材50の係合部53が係止部材10に係合しているため移動しない。このためスライド部材20のラック歯21に係合しているピニオン42が回転して、バネ力蓄勢装置40に、スライド部材20を引き戸3の開き方向に向け移動させるバネ力が蓄勢される。
【0026】
さらに開放を進めて、引き戸3が所定位置まで開かれると、図3に示すように、ガイド部材30の上部板部30−1の右端がトリガ部材50の溝54から外れるようになり、トリガ部材50が時計方向で回動可能となる。このとき、バネ力蓄勢装置40には、スライド部材20を引き戸3の開き方向に動かす力を蓄勢しており、従って、引き戸が更に開かれると、スライド部材20はガイド部材30とともに引き戸3の開き方向に変位されるため、係止部材10と係合していたトリガ部材50は時計方向に回動されて係止部材10との係合が解除される。引き戸3が更に開かれると、図4に示すように、スライド部材20にピニオン42からの引き戸3の開き方向への付勢力がかけられている状態で、トリガ部材50がガイド部材の上部板部30−1の端部62に係合して回動が止められる。すなわち、アーム52は係止部材10から開放された角度に維持される。
【0027】
また、引き戸3が開けられた状態から閉じる方向に動かされて所定位置に近づくと、図3に示すように、トリガ部材50の一対のアーム52,52の間に係止部材10が受け入れられる。更に戻されると、トリガ部材50の係合部53が係止部材10に係合されてトリガ部材50が回動される。これにより、トリガ部材50の外周部が、ガイド部材の上部板部30−1の右端部62から外れ、該右端部62がトリガ部材50の案内部55によって溝54に案内される。この状態では、トリガ部材50は、ガイド部材30に対して回動ができなくなり、従って、引き戸3の開閉方向において、係止部材10により動きが停止される。そのため、バネ力蓄勢装置40の付勢力により、停止されたラック部材としてのスライド部材20上でピニオン42が回転され、これにより、引き戸3は閉止位置に戻される。
【0028】
次に、図5〜8に基づき、本発明(第1発明)の他の実施形態を説明する。なお、以下の説明においては、上述した実施形態と同じ部材などについては同じ番号を付して説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0029】
本実施形態は、上記実施形態と、以下の点で異なる。
【0030】
すなわち、本実施形態の引き戸引き込み装置1’は、ガイド部材30に支持溝31が設けられておらず、図6及び7に示すように、スライド部材20及びトリガ部材50全体を覆うようにしてスライド部材20を支持する構成とされている点、及びダンパー43がピニオン42と係合する別体のピニオンの回転を制動するとされている点で、上述の実施形態と異なる。
【0031】
本実施形態におけるガイド部材30は、スライド部材20のラック歯21を覆っているので、ラック歯21とピニオン42とが係合する部分においてはラック歯21を覆う部分のガイド部材30は切欠されている。また、トリガ部材50が回転できるように、ガイド部材における上部板部30−1の端部62に対応した位置には、凹部32が設けられている。
【0032】
次に、本発明(第2発明)の実施形態を説明する。なお、以下の説明においては、上述した第1発明の実施形態と同じ部材などについては同じ番号を付して説明を省略し、異なる部分を中心に説明する。
【0033】
本実施形態の引き戸引き込み装置101は、係止部材10が引き戸3に取り付けられていると共に、ガイド部材30及びバネ力蓄勢装置40が枠体2に取り付けられている点で、上述の第1発明の実施形態と異なる。これらの点以外の構成は同じである。
【0034】
そして、本実施形態の引き戸引き込み装置1においては、作用が上述の第1発明の実施形態と異なる。
【0035】
すなわち、引き戸3を開けると引き戸3と共に係止部材10が移動する。係止部材10はトリガ部材50の係合部53と係合しており、溝54がトリガ回転防止部材としての上部板部30−1と係合しているので、スライド部材20は、トリガ部材50と一体に引き戸3の開き方向に向けて移動する。なお、ここで「上部」「下部」とは、ピニオン側からラック側を見たときにピニオン側を「下部」、ラック側を「上部」としたものである。
【0036】
そして、引き戸3が所定位置まで開けられると溝54が上部板部30−1の左端部62に達して、トリガ部材50が上部板部30−1の端部62から外れるようになり、トリガ部材50が時計回りに回転する。このときバネ力蓄勢装置40にはスライド部材20を引き戸3の閉じ方向に動かす力が蓄勢されている。従って、引き戸が更に開かれると、係止部材10とトリガ部材50との係合状態が完全に解除されるとともに、スライド部材20にピニオン42からの引き戸3の開き方向への付勢力がかけられている状態で、トリガ部材50が上部板部30−1の端部62に当接されて、トリガ部材50の回動が止められる。さらに引き戸3を開けた場合には引き戸3の動きに伴って係止部材10が単独で移動する。
【0037】
引き戸3を閉鎖する際には、所定位置まで引き戸3を引き戻すと係止部材10が係合部53に係合する。所定位置からさらに引き戻すとトリガ部材50が回転して、上部板部30−1の左端部62が案内部55により溝54に案内される。これにより、上部板部30−1がトリガ部材50の溝54に係合し、トリガ部材50が引き戸3の閉じ方向に移動可能となる。これにより、スライド部材20が移動可能となり、ピニオン42の付勢力によりスライド部材20が引き戸3の閉じ方向に移動し、それに伴い係止部材10が取り付けられた引き戸3が閉鎖位置に引き戻され、完全に閉鎖状態となる位置に引き戻される。
【0038】
なお、本発明はこの実施形態に制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0039】
たとえば、スライド部材と回転部材とを、ラック部材とピニオンとではなく、摩擦による係合が可能な部材等により構成することができる。また、ピニオンを引き戸と平行に設けた例で説明したが、ピニオンを引き戸に対して垂直な方向に向けて設置する態様とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、本発明(第1発明)の引き戸引き込み装置の1実施形態を示す内部透視正面図である。
【図2】図2は、図1のA−A線断面図である。
【図3】図3は、図1に示す状態から引き戸を所定位置まで開けた際の引き戸引き込み装置を示す内部透視正面図である。
【図4】図4は、図3の状態からさらに引き戸を開けた状態を示す内部透視正面図である。
【図5】図5は、本発明(第1発明)の他の実施形態を示す内部透視正面図である。
【図6】図6は、図5のB−B線断面図である。
【図7】図7は、図5のC−C線断面図である。
【図8】図8は、図5に示す状態から引き戸を所定位置まで開けた際の引き戸引き込み装置を示す内部透視正面図である。
【図9】図9は、本発明(第2発明)の引き戸引き込み装置の1実施形態を示す内部透視正面図である。
【符号の説明】
【0041】
引き戸引き込み装置1:枠体2:係止部材10:引き戸3:ケーシング4:ネジ5:ガイド部材30:バネ力蓄勢装置40:端縁3a:支持溝31:スライド部材20:ラック歯21:嵌合凸部22:軸41:ピニオン42:ダンパー43:ゼンマイバネ44::外方側バネ固定部42a:バネケース部42b:バネ押さえ具45:パイプ46:ケースカバー47:中央側バネ固定部47a:トリガ部材50:回転軸51:アーム52:係合部53:上部板部30−1:回転防止面61:溝54:案内部55

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体に開閉自在に取り付けられた引き戸を自動的に閉じるための引き戸引き込み装置であって、
該枠体に取り付けられた係止部材と、
引き戸の開閉方向で変位可能とされたスライド部材と、
該引き戸に取り付けられ、該スライド部材を該開閉方向で移動できるように支持するガイド部材と、
該引き戸に取り付けられたバネ力蓄勢装置であって、該スライド部材に係合し、該バネ力蓄勢装置が該スライド部材に対して引き戸の開き方向に相対的に変位することにより回転される回転部材を有し、該回転部材の回転によってバネ付勢力を蓄勢し、該スライド部材を該バネ力蓄勢装置に対して相対的に該引き戸の開き方向に付勢するバネ力蓄勢装置と、
該スライド部材に回転可能に取り付けられたトリガ部材であって、該引き戸が閉止位置にあるときに、該係止部材の該開閉方向における両側部に隣接して位置する一対の係合エレメントからなる係合部を有するトリガ部材と、
該引き戸に取り付けられたトリガ回転防止部材であって、該開閉方向に延び、該引き戸が所定位置に開かれるまで、該トリガ部材と摺動可能に係合して回動を不能にすることにより、該トリガ部材の該係合部が該係止部材に係合した状態を保持する回転防止面を有するトリガ回転防止部材と、
を有し、
該引き戸が該所定位置まで開かれると、該トリガ回転防止部材の回転防止面が該トリガ部材から外れて該トリガ部材を回動可能とし、該引き戸が該所定位置を越えて開かれることにより該係止部材と係合している該トリガ部材が所定の回動位置まで回動されて該係止部材との係合が解除され、該引き戸が更に開かれると、該スライド部材に該回転部材からの引き戸の開き方向への付勢力がかけられている状態で、該トリガ部材が該トリガ回転防止部材の端部に当接され、該スライド部材が引き戸とともに動かされるようになされ、引き戸が閉じる方向に動かされて該所定位置に近づくと該トリガ部材の一対の係合エレメントの間に該係止部材が受け入れられ、更に戻されると、該トリガ部材の係合部が該係止部材に係合されて該トリガ部材が回動されることにより、該トリガ部材が該回転防止面と係合されて該開閉方向での動きが止められ、これにより開閉方向での動きが止められたスライド部材上を、該バネ力蓄勢装置の該回転部材が該付勢力によって回転して、該引き戸を閉止位置に戻すようにした引き戸引き込み装置。
【請求項2】
枠体に開閉自在に取り付けられた引き戸を自動的に閉じるための引き戸引き込み装置であって、
引き戸に取り付けられた係止部材と、
引き戸の開閉方向で変位可能とされたスライド部材と、
該枠体に取り付けられ、該スライド部材を該開閉方向で移動できるように支持するガイド部材と、
該枠体に取り付けられたバネ力蓄勢装置であって、該スライド部材に係合し、該バネ力蓄勢装置が該スライド部材に対して引き戸の閉じ方向に相対的に変位することにより回転される回転部材を有し、該回転部材の回転によってバネ付勢力を蓄勢し、該スライド部材を該バネ力蓄勢装置に対して相対的に該引き戸の閉じ方向に付勢するバネ力蓄勢装置と、
該スライド部材に回転可能に取り付けられたトリガ部材であって、該引き戸が閉止位置にあるときに、該係止部材の該開閉方向における両側部に隣接して位置する一対の係合エレメントからなる係合部を有するトリガ部材と、
該枠体に取り付けられたトリガ回転防止部材であって、該開閉方向に延び、該引き戸が所定位置に開かれるまで、該トリガ部材と摺動可能に係合して回動を不能にすることにより、該トリガ部材の該係合部が該係止部材に係合した状態を保持する回転防止面を有するトリガ回転防止部材と、
を有し、
該引き戸が該所定位置まで開かれると、該トリガ回転防止部材の回転防止面が該トリガ部材から外れて該トリガ部材を回動可能とし、該引き戸が該所定位置を越えて開かれることにより該係止部材と係合している該トリガ部材が所定の回動位置まで回動されて該係止部材との係合が解除され、該引き戸が更に開かれると、該スライド部材に該回転部材からの引き戸の閉じ方向への付勢力がかけられている状態で、該トリガ部材が該トリガ回転防止部材の端部に当接され、該スライド部材が引き戸とともに動かされるようになされ、引き戸が閉じる方向に動かされて該所定位置に近づくと該トリガ部材の一対の係合エレメントの間に該係止部材が受け入れられ、更に戻されると、該トリガ部材の係合部が該係止部材に係合されて該トリガ部材が回動されることにより、該トリガ部材が該回転防止面と係合されて該開閉方向に移動可能となり、これにより開閉方向に移動可能とされたスライド部材上を、該バネ力蓄勢装置の該回転部材が該付勢力によって回転して、該引き戸を閉止位置に戻すようにした引き戸引き込み装置。
【請求項3】
該回転部材がピニオンとされ、該スライド部材が該ピニオンに係合されるラック部材とされている請求項1又は2に記載の引き戸引き込み装置。
【請求項4】
該トリガ回転防止部材が該開閉方向に延びる直線状部材とされ、該トリガ部材が該直線状部材に係合される溝を有する請求項1乃至3の何れかに記載の引き戸引き込み装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−144363(P2009−144363A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320831(P2007−320831)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000227386)日東工器株式会社 (158)
【Fターム(参考)】