説明

引戸用走行レール

【課題】引戸用走行レール上でのスリップによる転倒事故を防止し、意匠的にも優れた、戸車が走行する複数条のレールからなる金属製のレール部材を備えた引戸用走行レールを提供すること。
【解決手段】引戸用走行レール1を、戸車4aが走行する複数条のレール12aからなる金属製のレール部材12と、この複数条のレール12a間に配設され、表面をレール12aの表面と略面一になるようにした非金属製の間隙埋め部材13とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引戸用走行レールに関し、特に、戸車が走行する複数条のレールからなる金属製のレール部材を備えた引戸用走行レールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
出入口に配設される引戸装置は、例えば、図4〜図5に示すように、竪枠2a、2a、上枠2b、横桟2c及び下枠11からなる引戸枠部材2と、この引戸枠部材2内に移動可能に配置した引戸4とからなり、引戸4を、この引戸4の下面に配設した戸車4aを介して支持する引戸用走行レール10を、下枠11に配設するようにしている。
【0003】
この引戸用走行レール10は、図5に示すように、通常、鋼板等の金属製の板材を曲げ加工又は金属材料を押出成形することにより製作されている。
【0004】
ところで、近年、学校用の間仕切り等において、開口部の中間に壁部材を設けず、出入口を連ねて広い開口面積を取ることができるようにした構造のものが増加する傾向にあるが、これらのことと相俟って、戸車4aが走行するレール12aを複数条の並列したレール部材12を備えた幅の広い引戸用走行レール10が採用されてきている。
【0005】
そして、このような引戸用走行レール10は、幅が広いだけでなく、レール12a間に生じる段差も複数段となるため、躓きやすく転倒の原因になったり、車椅子が横断走行する際に上下に振動する原因になる。
これに対処するため、レール12a間に、突条部14を、戸車4aの走行に支障とならないように、レール部材12と一体に成形することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、この引戸用走行レール10は、突条部14がレール部材12と一体に成形された金属製であるため、床面が濡れている場合には非常に滑りやすく、危険であった。
また、学校用の間仕切り等においては、外観を木製とした引戸枠部材2が多く採用されているため、幅の広い金属製の引戸用走行レール10が美観を損ねるという意匠的な問題も生じていた。
【特許文献1】特開平9−287356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の引戸用走行レールの有する問題点に鑑み、引戸用走行レール上でのスリップによる転倒事故を防止し、意匠的にも優れた、戸車が走行する複数条のレールからなる金属製のレール部材を備えた引戸用走行レールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の引戸用走行レールは、引戸を、該引戸の下面に配設した戸車を介して支持する引戸用走行レールであって、戸車が走行する複数条のレールからなる金属製のレール部材と、前記複数条のレール間に配設され、表面をレールの表面と略面一になるようにした非金属製の間隙埋め部材とからなることを特徴とする。
【0008】
この場合において、木製の間隙埋め部材を用いることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の引戸用走行レールは、引戸を、該引戸の下面に配設した戸車を介して支持する引戸用走行レールであって、戸車が走行する複数条のレールからなる金属製のレール部材と、前記複数条のレール間に配設され、表面をレールの表面と略面一になるようにした非金属製の間隙埋め部材とからなることから、表面をレールの表面と略面一になるようにした非金属製の間隙埋め部材によって、引戸用走行レール上でのスリップによる転倒事故を防止することができ、安全な引戸用走行レールを提供することができる。
【0010】
また、木製の間隙埋め部材を用いることにより、木製とした引戸枠部材と調和がとれた意匠的に優れた引戸用走行レールを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の引戸用走行レールの実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
図1〜図3に、本発明の引戸用走行レールの一実施例を示す。
この引戸用走行レール1は、従来と同様、出入口に配設される引戸装置に適用されるもので、例えば、図1に示すように、竪枠2a、2a、上枠2b、横桟2c及び下枠11からなる引戸枠部材2の下枠11に配設するようにしている。
【0013】
そして、引戸用走行レール1は、戸車4aが走行する複数条のレール12aからなる金属製のレール部材12と、この複数条のレール12a間に配設され、表面をレール12aの表面と略面一になるようにした非金属製の間隙埋め部材13とから構成するようにしている。
【0014】
ここで、引戸用走行レール1は、図2(a)に示すように、鋼板等の金属製の板材を曲げ加工又は金属材料を押出成形することにより製作され、2本のレール12aを備えたレール部材12を、2本、下枠11に固定するようにしているが、複数条のレール12aを備えるものであれば、これに限定されるものではなく、2本以上のレール12aを備えたレール部材12を、1本以上、下枠11に配設するようにしたり、1本のレール12aを備えたレール部材12を、2本以上、下枠11に配設するようにすることもできる。
【0015】
非金属製の間隙埋め部材13の材質は、木材、プラスチック、ゴム等の非金属材質から任意に選択することができるが、床面が濡れている場合等においても滑りにくい材料を使用するようにする。特に、硬度が高く、耐久性に優れた木材である、ゴムの木やユーカリの木を使用することができる。そして、このような木材を使用することによって、木製とした引戸枠部材2と調和がとれ、意匠的に優れた外観とすることができる。
【0016】
間隙埋め部材13は、表面をレール12aの表面と略面一、具体的には、段差が、5mm以内、好ましくは、3mm以内、より好ましくは、0.5mm以内になるようにし、さらに、必要に応じて、表面に滑り止めの凹凸模様を形成することができる。
【0017】
また、間隙埋め部材13は、戸車4aの走行に支障とならないように(戸車4aと干渉しないように)、その上面の端縁を、全長に亘って、図2(b)に示すように、切欠13aを施したり、図2(c)に示すように、面取13bを施すようにすることもできる。
【0018】
そして、間隙埋め部材13は、複数条のレール12a間に位置するように、下枠11やレール部材12に固定されるが、間隙埋め部材13の固定には、接着剤やネジ等の適宜の固着手段を採用することができる。
なお、ネジで固定する場合、間隙埋め部材13の上面に、ざぐり穴又は皿穴を設ける等して、間隙埋め部材13の上面にネジの頭部が突出しないようにすることが好ましい。
さらに、図2(d)に示すように、下枠11やレール部材12に位置決め用の嵌合手段15a、15bを設け、間隙埋め部材13を嵌合、係止するようにすることもできる。
【0019】
以上、本発明の引戸用走行レールについて、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の引戸用走行レールは、引戸用走行レール上でのスリップによる転倒事故を防止できるとともに、意匠的にも優れていることから、学校用の間仕切り等に好適に用いることができるのほか、病院や健老施設、さらには、一般の建造物にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の引戸用走行レールを適用する引戸装置の一例を示す正面図である。
【図2】本発明の引戸用走行レールの一実施例を示し、(a)は、図1のX−X断面図、(b)及び(c)は、間隙埋め部材を示す側面断面図、(d)は、間隙埋め部材の係止手段の説明図である。
【図3】同図1のY−Y断面図である。
【図4】従来の引戸装置の正面図である。
【図5】従来の引戸用走行レールを示す図4のZ−Z断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 引戸用走行レール
2 引戸枠部材
4 引戸
4a 戸車
12 レール部材
12a レール
13 間隙埋め部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
引戸を、該引戸の下面に配設した戸車を介して支持する引戸用走行レールであって、戸車が走行する複数条のレールからなる金属製のレール部材と、前記複数条のレール間に配設され、表面をレールの表面と略面一になるようにした非金属製の間隙埋め部材とからなることを特徴とする引戸用走行レール。
【請求項2】
木製の間隙埋め部材を用いたことを特徴とする請求項1記載の引戸用走行レール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−69559(P2008−69559A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−249099(P2006−249099)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000229047)日本スピンドル製造株式会社 (328)
【Fターム(参考)】