説明

弾丸などの初速を測定する方法および装置

受信カプラー(3、4)と送信カプラー(2)の間の間隔(Zk)を好ましくは0mmまで減少させることによって、測定構造の短縮を実現することが提案される。しかしこの考えの具体化は、カプラー(2、3、4)の互いに対する所定の間隔(Zk)を下回った場合に、もはや個々の項ではなく、いわゆる合計フィールドが求められることによって困難になる。これは、この合計フィールドを分割して、そこから初速(V0)を定めることを必要とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に導波管として駆動される砲身の組立て長さを減少させる主題全般を扱う。導波管と見なされるのは、極めて良好に電気的に導通する壁を備えた、特徴的な横断面形状を有する管である。技術的に、特に矩形導波管および円形導波管が普及している。
【背景技術】
【0002】
円形の導波管としての管を駆動し、かつ管内の弾丸のドップラー速度を測定する方法は、特許文献1を読んで調べることができる。その場合に、信号の周波数は、該当する導波管モードのための限界周波数を上回っている。その場合に構築される電磁波が、管内で広がり、弾丸によって反射される。さらに、瞬間的な速度に依存するドップラー周波数シフトが生じる。そのドップラー周波数シフトから、その後、弾丸の初速が求められる。
【0003】
それに対して特許文献2は、砲身ないし射出管および/または砲口ブレーキの部分を導波管として利用することを提案している。しかしこの導波管は、該当する導波管モードの限界周波数の下で駆動される。
【0004】
前に公開されていない特許文献3において、この問題性が取り上げられ、その場合にカプラー管の間隔およびそれぞれ導波管のモード選択に応じた間隔の個別の選択の可変性(従って>0)が提案される。種々の測定装置が、考えられる。受信カプラーが、弾丸底と送信カプラーとの間に位置決めされる場合に、弾丸の通過後に測定することができる。受信カプラーが、弾丸尖端と送信カプラーとの間にある場合には、初速の測定は、弾丸の通過前に行なわれる。2つの測定方法の組合せが好ましいので、それに応じて少なくとも2つの受信カプラーが設けられ、その場合に送信カプラーは、2つの受信カプラーの間に位置決めされる。信号発生器(たとえば発振器)は、一定のセンター周波数を有する信号を供給し、そのセンター周波数は、導波管の最小の限界周波数の下で駆動される。送信カプラーの幾何学配置と種類(コイル、ダイポールなど)によって与えられて、複数の導波管−モード(TEmn、m=0、1、2、...およびn=1、2、3...として)が励起される。信号発生器は、持続波駆動(CW駆動)におけるキャリアか、あるいは変調された信号を発生する。その場合に送信カプラーと受信カプラーの間隔は、受信周波数が信号−モード(n=1)の項によって支配されるように、選択される。しかし、それによって所定の導波管長さないし砲身長さが維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州公開公報EP0023365A2
【特許文献2】独国公開公報DE102006058375A1
【特許文献3】独国公報DE102008024574.7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この原理に基づいて、本発明の課題は、導波管ないし砲身の長さを減少させることができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、方法技術的には、請求項1の特徴によって、そして装置技術的には、特許請求項5の特徴によって解決される。好ましい形態が、下位請求項に記載されている。
【0008】
本発明は、受信カプラーと送信カプラーの間の間隔を、好ましくは0mmまで減少させることによって測定構造の短縮を実現する、という考えを基礎としている。しかし、この考えを具体化することは、カプラーの所定の間隔を下回った場合には、もはや個々の項ではなく、いわゆる合計項が求められることによって、困難になる。これは、合計フィールドを分割して、それに基づいて初速Voを定めることを、必要とする。
【0009】
すなわち、DE102008024574A1と同様に、最初に、従って導波管内に弾丸がない時に、送信カプラーによってもたらされるソースフィールドが測定される。弾丸が受信カプラーを通過することによって、既知のように、特徴的な、反射された合計信号が生じ、それが時間的にサンプリングされて評価装置に読み込まれる。この合計信号内には、飛翔体の速度V0に関する情報が含まれているが(Δz(t))、直接読み出すことはできない。従って本発明に係る考えを実現するために、誘導された電圧が測定されて、その電圧からソースフィールドが引かれる。残っている、反射された(電気的な)合計フィールドが、その後、ソフトウェアによって個々の項に分割されるので、時間にわたって複数の速度が求められる。これらの速度から、その後、平均値形成を介して、極めて正確な飛翔体速度が定められる。
【0010】
測定設備の組立て長さがより短いことによって、特に、口径より小さい胴径を有する飛翔体を使用する場合に、測定装置の内部で飛んで行く弾底板による危険の減少がもたらされる。同様に、重量減少が得られ、それが兵器の安定性を高める。この方法は、発射の間の振動と衝撃に対してより丈夫であるので、測定精度は向上する。
【0011】
35mm口径領域内の弾丸については、発振器周波数は、好ましくは40MHzと80MHzの間の領域内にあるが、 所定の値自体に定められていない。他の口径のためには、他の周波数領域を設けることができる。この周波数領域(40MHzと80MHz)は、特に構成部品許容誤差が、測定方法に影響を持たないので、この周波数領域のための構成部品の簡単な調達を可能にする。さらに、電磁放出は、ほんのわずかである。
【0012】
図面を有する実施例を用いて、本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】弾丸の前の速度を測定する測定装置を示す断面図である。
【図2】弾丸の後方の弾丸速度を測定する測定装置を示す断面図である。
【図3】2つの測定方法の信号処理のシーケンスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1と2において、導波管ないし砲身ないし射出管および/または砲口ブレーキの部分が、符号1で示されており、その中に送信カプラー2が組み込まれている。図1において受信カプラー3は、送信カプラー2から管支承部の方向に隔たっている。図2においては、受信カプラー4は、送信カプラー2から砲口の方向へ隔たっている。送信カプラー2は、発振器5と電気的に接続されている。2つの受信カプラー3、4自体は、評価装置6と接続されている。測定配置10内の2つの受信カプラー3、4の配置の組合せが優先されるが、条件ではない。その速度Voを測定すべき弾丸7は、導波管/砲身1によって閉鎖されている。この配置は、特許文献3からすでに知られており、ここでそれに関連づけられる。
【0015】
送信カプラー2とそれぞれの受信カプラー3、4との間の間隔が、符号Zkで示されている。カプラー2、3、4の互いに対する位置決めは、特許文献3に従って発振器5の誘導される電圧を介して定められ、それが以下の式に従って求められる:
【0016】
【数1】

【0017】
その場合に、UINDは誘導された電圧の値、A1ないしA1は測定振幅、p1は、測定システム10のMaxwell式の解から直接生じる、与えられた定数、aは導波管1の内径である。この内径aは、兵器の口径と少なくとも等しいか、あるいは好ましくは少し大きい。符号Zkによって、送信器2と受信器3(4)の間の間隔値が定義されている。この間隔は、項p1のうちの第1の項p1のみが優勢であるように、数値的に定められ、かつ実験的に検証される。その場合にそれは、固定的に調節される。この値は、測定装置10/導波管1の各直径について定められており、使用される砲弾7とは無関係である。
【0018】
同時にVo測定の測定精度を高めながら、導波管1の組立て長さを短くすることができるようにするために、たとえば、図3に示す信号処理が提案される。
【0019】
弾丸底ないし弾丸尖端と受信カプラー3ないし4との間の間隔が、符号Δz(t)で示されており、その場合にtは時間である。弾丸底(尖端)が受信カプラー3、4を通過する場合に、Δz(t)=0mmであることに、注意すべきである。
【0020】
組立て空間を縮小するために、Zkが減少される。それによって値は、信号−モード駆動のための所定の値からずれる。すなわちZkは、より小さく選択され、この信号−モード駆動は、もはや優勢ではなく、誘導された電圧は、再び次の式を有する:
【0021】
【数2】

【0022】
上の表現の項は、時間的に一定であって、その場合に個々の構成要素は、空間内で異なる速さで減衰する。
【0023】
弾丸7が受信カプラー3、4から離れ、ないしは接近した場合に、図3に詳細に示すように、誘導された電圧UINDが測定される。この式の第1の項“A”は、時間的に一定であって、校正のために使用することができる。その項は、連続的に、特に発射の直前に、従ってまだ弾丸7が導波管1内にない場合に、測定される。この値は、好ましくは評価ユニット6のシフトレジスタに、連続的に格納される。この種の校正によって、たとえば兵器内の温度効果によって生じる、定数内のすべての変化が、除去される。発射の際に、第2の項“B”を有する信号UINDの推移が時間的にサンプリングされる場合に、図3に示す他の信号処理を実施することができる。
【0024】
従って、第1のステップにおいて、誘導された電圧UIND(t)の測定後に、校正項“A”がUINDから引き算される。いわゆる合計フィールド(反射された電磁場)−項“B”が残る。その後、合計フィールド“B”の時間的推移が、係数Bmに分解される。その決定は、たとえば最小二乗方法のような、既知の最適化設定を考慮しながら、既知のカーブ適合方法を解して行なうことができる。最適化設定の選択は、UINDの信号上にあるノイズの種類および強さによって影響を受ける。
【0025】
係数Bmによって、項B1,B2、B3...Bmを並列に形成することができる。というのは、pmとa(導波管1の内径)は分かっているからである。各項から、対数がとられる。この数学的演算において、オフセット−項が生じ、それは、既知の値Bmのみに依存しており、かつ引き算によって補償される。中間結果として、既知のpm、aおよびV=ΔZ/tを有する他の項が生じる。従って項1、2、3、...につき、初速V01、V02、V03...V0mが計算される。すべてのV01-mの平均値形成によって、最終結果Vが定められる。この平均値形成によって、Vの決定における精度が向上する。
【0026】
提案された方法は、送信カプラー2と受信カプラー3、4のZkの間隔を0mmまで減少させることを許すので、導波管は、少なくともこの領域内で短縮することができる。理想的な場合(Zk=0mm)において、送信カプラー2が受信カプラー3、4の課題を引き受けることができるので、誘導された電圧は、送信カプラー2において直接測定することができる。
【0027】
簡単にするために、他の信号変調を、たとえば周波数を減少させるための混合方法を介して、評価エレクトロニクス6の前段に接続することができる(詳細に示されていない)。評価速度を向上させるために、シフトレジスタは、十分に大きく寸法設計されるので、たとえば値は、「秒当たり」の測定間隔で記録することができ、従って評価のために校正のすべてのデータを利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波管として駆動される砲身ないし射出管および/または砲口ブレーキの部分(1)を有する、弾丸(7)の初速(V0)を測定する方法であって、
発振器(5)を用いて電磁場を発生させるステップと、
校正項(A)を求めるために、弾丸(7)なしで砲身ないし射出管および/または砲口ブレーキの部分(1)の電磁場を測定するステップと、
時間(t)にわたって誘導される電圧(UIND)を求めるために、弾丸(7)の前および/または弾丸(7)の後方で電磁場を測定するステップと、
反射された電磁場(B)を求めるために、誘導された電圧(UIND)から校正項(A)を引くステップと、、
測定された信号から次のように初速(V0)を定めるステップであって、
反射された場(B)が係数(Bm)に分解され、前記係数によって項(B、B、B、...B)を形成し、
項(B、B、B、...B)当たり、初速(V01、V02、V03、...V0m)を計算し、かつ
項(B、B、B、...B)のすべての初速(V01、V02、V03、...V0m)の平均値形成によって、弾丸(7)の初速(V0)を定める、
ステップと、
を含むことを特徴とする弾丸の初速を測定する方法。
【請求項2】
測定された信号が、連続して時間的にサンプリングされ、かつサンプリング値が記憶される、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
係数(Bm)の分解が、たとえば最小二乗方法のような、既知の最適化設定を考慮しながら既知のカーブ適合方法を介して行なわれる、ことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
35mm口径領域内にある弾丸(7)のためには発振器周波数が40MHz〜80Mhzとされ、かつ他の口径のためには他の周波数領域が設けられる、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
弾丸(7)の初速(V0)を測定するために導波管として駆動される、砲身ないし射出管および/または砲口ブレーキの部分(1)であって、
請求項1から4のいずれか1項に記載の方法を実施するために、
砲身ないし射出管および/または砲口ブレーキの部分(1)を励起するために、信号供給を介して送信カプラー(2)と電気的に接続されている、発振器(5)と、
少なくとも1つの受信カプラー(3、4)において測定された信号を、評価装置(6)へさらに伝達する受信導線と、を有し、
それによって送信カプラー(2)と受信カプラー(3、4)の間の間隔(Z)を0mmに向けて減少させることを可能ならしめる、
ことを特徴とする砲身ないし射出管および/または砲口ブレーキの部分(1)。
【請求項6】
間隔減少が、砲身ないし射出管および/または砲口ブレーキの部分(1)の短縮をもたらす、ことを特徴とする請求項5に記載の砲身ないし射出管および/または砲口ブレーキの部分。
【請求項7】
送信カプラー(2)と少なくとも1つの受信カプラー(3、4)の間の間隔(Zk)が0mmである、ことを特徴とする請求項5または6に記載の砲身および射出管および/または砲口ブレーキの部分。
【請求項8】
送信カプラー(2)が、受信カプラー(3、4)の課題を引き受ける、ことを特徴とする請求項7に記載の砲身および射出管および/または砲口ブレーキの部分。
【請求項9】
評価ユニット(6)の前段に、周波数減少のための混合方法のような、信号変調が接続されている、ことを特徴とする請求項5から8のいずれか1項に記載の砲身および射出管および/または砲口ブレーキの部分。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−530910(P2012−530910A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516558(P2012−516558)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003637
【国際公開番号】WO2010/149307
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(506170476)ラインメタル エア ディフェンス アクチェンゲゼルシャフト (9)
【Fターム(参考)】