説明

弾性舗装材料およびその製造方法

【課題】 アスファルト系弾性舗装に係る上記問題を解消して、施工性を向上するとともにすべり抵抗を高めることで、従来に比しより高機能の弾性舗装材料およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 アスファルトを主成分とするバインダーと、骨材と、ゴムチップおよび/またはゴム粉末と、発泡剤とを含有する弾性舗装材料である。かかる発泡剤の添加量は、好適にはバインダーに対し2〜10重量%の範囲内である。また、この弾性舗装材料を製造するにあたり、バインダーと発泡剤とを予め混合し、次いで残りの配合物を混合する製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性舗装材料およびその製造方法に関し、詳しくは、リサイクル性、施工性および経済性に優れた弾性舗装材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、従来の密粒舗装に代わって、舗装内部に空隙を設けることによって交通騒音の低減を図った排水性舗装が急激に普及しつつある。この排水性舗装によれば、従来に比して約3dBの低騒音化が可能であるが、この排水性舗装では十分な低騒音化が得られない地域も多いことから、更なる低騒音化技術が求められている。
【0003】
これに対する技術としては、例えば、防音壁等が提案されているが、これは、施工費用が嵩むこと、景観上の問題で設置できない場所があることなどの問題点を有するため、道路の舗装自体の改良に関して、より低騒音化を実現できる技術が望まれている。
【0004】
排水性舗装以上の優れた低騒音性を実現することのできる舗装としては、大別して、(1)従来のアスファルトバインダーではなくウレタン樹脂やエポキシ樹脂バインダーを用いて廃棄加硫ゴムを添加した弾性舗装材料(例えば、特許文献1、特許文献2)と、(2)廃棄加硫ゴムを粉状またはチップ状にしてアスファルトバインダー舗装に添加した廃棄加硫ゴム入りアスファルト舗装材料(例えば、特許文献3、特許文献4)とが挙げられる。
【0005】
このうち、ウレタン樹脂バインダーを用いた弾性舗装においては、ゴムを高充填することができるため、密粒舗装対比で6〜10dBの低騒音化が可能になるが、その反面、(i)ウレタン等のバインダーの養生時間が長いために、施工時の交通規制を長時間(1〜2日)行わなければならなくなり、交通渋滞等を引き起こす可能性があること、(ii)硬化系バインダーであるため、施工した舗装をリサイクルする場合に、アスファルトのように加熱等により再利用を図ることができないこと、(iii)アスファルトに比べて高価であるため、道路のような大面積に施工すると大幅なコストアップが生じてしまうこと、などの難点があった。
【0006】
これら問題のうち、硬化時間の問題については、硬化助剤等により硬化反応を早める工夫が行われているが、硬化時間が早すぎると、材料を混合して道路に施工する間に硬化反応による増粘が起こり、作業性が著しく低下するとともに、できあがった舗装が平坦性に乏しくなるなど、完成度の低いものになるという二律背反が生じてしまうこととなる。
【0007】
また、廃棄加硫ゴムを含有させたアスファルト舗装においては、アスファルトバインダーを使用しているために上述のウレタン樹脂バインダーにおける3つの問題点はクリアできるが、その一方、(i)アスファルトと加硫ゴムとの接着性が非常に低いことから、ゴムが飛散する等の問題が生じて、耐久性が低下するため、ゴムの高充填ができないこと、(ii)現在使用されているアスファルトや改質アスファルト、高粘度アスファルトバインダーでは、ウレタン樹脂バインダーに比して剛性が低いため、舗装にしたときに車両の重さに耐えられず、轍掘れ等が発生しやすいこと、等の問題があった。
【0008】
このため、アスファルト系のゴム入り舗装材料においては、全体に占めるゴムの体積比が精々5%程度であり、ゴムを高充填したアスファルト系舗装材料の検討はほとんどされていないのが現状である。その結果、これらの舗装材料により得られる騒音低減効果についても、排水性舗装と同レベルか若干向上したレベルに過ぎず、十分な低騒音化を実現できるものではなかった。
【0009】
そこで、本願出願人は、上述の(1)ウレタン樹脂バインダーを用いた舗装材料と、(2)アスファルトバインダーを用いた舗装材料との問題点を同時に解消すべく、低コストで2次リサイクルが可能なアスファルトをバインダーに用いた弾性舗装材料として、先に、新たなアスファルト舗装用添加材(特許文献5)やアスファルト系弾性舗装材料(特許文献6)などを提案している。
【0010】
また、アスファルトを用いた舗装材料に係る改良技術としては、例えば、特許文献7に、アスファルトをより低い温度で施工可能とすることを目的として、アスファルトおよび骨材を必須成分とするアスファルト混合物に、所定の有機発泡剤と発泡助剤とを添加した舗装用アスファルト混合物が記載されている。
【特許文献1】特許第2869459号公報
【特許文献2】特許第2869458号公報
【特許文献3】特開平9−165248号公報
【特許文献4】特開平6−279684号公報
【特許文献5】特開2002−201601号公報
【特許文献6】特開2002−201311号公報
【特許文献7】特開2001−131321号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、アスファルトバインダーを用いたアスファルト系弾性舗装は、十分な強度を保つために改質剤を多く必要とし、粘度が高いことから、施工性が悪いという問題点があった。また、このようなゴムチップを用いた弾性舗装においては、湿潤面でのすべり抵抗が低いことが問題となっていた。
【0012】
そこで本発明の目的は、アスファルト系弾性舗装に係る上記問題を解消して、施工性を向上するとともに得られる弾性舗装体におけるすべり抵抗を高めることで、従来に比しより高機能の弾性舗装材料およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の弾性舗装材料は、アスファルトを主成分とするバインダーと、骨材と、ゴムチップおよび/またはゴム粉末と、発泡剤とを含有することを特徴とするものである。
【0014】
本発明において前記発泡剤の添加量は、好適には、前記バインダーに対し2〜10重量%の範囲内である。また、前記発泡剤としては、1,1−アゾビスホルムアミド、N,N−ジニトロソペンタメチレンテトラミンおよび4,4−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)からなる群から選択されるいずれか1種または2種以上を好ましく用いることができる。本発明の弾性舗装材料は、さらに、発泡助剤として、アルカリ土類金属水酸化物または炭素数14〜18の飽和脂肪酸の少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0015】
また、本発明の弾性舗装材料の製造方法は、上記弾性舗装材料を製造するにあたり、前記バインダーと発泡剤とを予め混合し、次いで残りの配合物を混合することを特徴とするものである。また、発泡助剤を含む弾性舗装材料を製造するにあたっては、前記バインダーと発泡剤および発泡助剤とを予め混合し、次いで残りの配合物を混合する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アスファルト系弾性舗装中に発泡剤を含有させたことにより、施工性が良好であって、かつ、特に湿潤面におけるすべり抵抗の高い弾性舗装体を得ることが可能な、より高機能の弾性舗装材料およびその製造方法を実現することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について具体的に説明する。
本発明の弾性舗装材料は、アスファルトを主成分とするバインダーと、骨材と、ゴムチップおよび/またはゴム粉末と、発泡剤とを含有する。
【0018】
本発明においてバインダーとして使用することのできるアスファルトは、特に制限されるものではなく、慣用のアスファルト、例えば、ストレートアスファルト、セミブローンアスファルト、ブローンアスファルト、アスファルト乳剤やタール、ピッチ、オイルなどを添加したカットバックアスファルト、再生アスファルトなどが使用できる。これらはそれぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。また、アスファルトは、脱色アスファルトであってもよい。
【0019】
アスファルト以外にバインダー成分として用いることのできる材料としては、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)を好適に挙げることができる。かかるEVAは、例えば、商品名EVA720、EVA680、EVA710((株)東ソー製)として市場で入手し得るものを好適に使用することができる。EVAにおけるビニル酢酸単位は、ゴムとの接着性を高めるために、好ましくは10重量%以上とする。また、EVAのJIS K7215に準拠するデュロメータA硬さは、強度の面から70以上であることが好ましい。本発明においては、バインダーとして、アスファルト20〜70重量部に対しEVA30〜80重量部を配合したものを好適に使用することができる。
【0020】
その他、バインダー中には、例えば、強度等を向上させるために、他の熱可塑性エラストマーを添加することができる。かかる他の熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)等の1種または2種以上の組み合わせを適宜選択して用いることができる。これら他の熱可塑性エラストマーの配合量は、例えば、全バインダーに対し、10〜50重量%程度とすることができる。
【0021】
また、バインダー中には、施工性を改良するために、低分子量の石油樹脂(ワックス)を1〜40重量%含有させることができる。さらに、バインダーの粘度は施工性の観点から、好ましくは10Pa・s以下であり、バインダーの形態としては、粒径5〜10mmのペレット状でも、あるいは粉末状であってもよい。本発明の弾性舗装材料中のバインダーの割合は、10〜35重量%程度とすることができる。
【0022】
本発明において使用する骨材としては、特に制限はなく、川砂利、川砂等の天然の骨材や砕石、スラグ、コンクリート、ガラス、FRP等のリサイクル骨材を使用することができる。この骨材に使用する石材、砂等は、完成した舗装の強度、耐摩耗性を確保し、表面に露出して防滑作用を得るためのものである。石材は互いに噛み合って荷重を分散させる機能を持つことが好ましく、このため、砕石のような尖った形状で硬い物が適当である。また、粒径0.5〜30mmの粗粒骨材に対して、粒径0.5mm以下の細粒骨材を5体積%以上混合することが好ましい。粗粒骨材は、主として通水性を得るために多孔質構造を形成するものであり、互いに噛み合って隙間を形成するような、砕石のような尖った形状で硬いものが適当である。一方、細粒骨材は、大型の粗粒骨材の表面に付着してタイヤ等に対して防滑作用(サンドペーパーのような研磨効果)をもたらすこととなる。本発明の弾性舗装材料中の骨材の割合は、好ましくは35〜55重量%である。この割合が35重量%未満であると強度が十分ではなく、一方、55重量%を超えると、十分な弾性および低音効果が得られなくなり、好ましくない。
【0023】
ゴムチップおよび/またはゴム粉末は、特に材質等は限定されず、天然ゴムやイソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム等を利用することができる。かかるゴムは、ゴムタイヤ、ウェザーストリップ、ホース類等の使用済み廃材、成形の際に生成する不要の端材、成形不良品等から得ることができる。
【0024】
本発明の弾性舗装材料中におけるゴムの割合は、好ましくは20〜70重量%である。この割合が20重量%未満であると弾性舗装材料としての効果が十分ではなく、一方、70重量%を超えると、アスファルト舗装に適用するために十分な物性が得られなくなり、好ましくない。混合時に用いるオイルとしては、特に限定はされないが、例えば、芳香族環、ナフテン環およびパラフィン鎖の3組成からなる石油系オイルのうち、環分析結果が36%以上の芳香族炭素を有する芳香族系オイルを好適に使用することができる。
【0025】
本発明の弾性舗装材料においては、上記バインダー、骨材およびゴム成分に加えて、発泡剤を含有することが必要である。発泡剤を含有させたことにより、良好な施工性を実現することができるとともに、得られる舗装体におけるすべり抵抗を、特に湿潤面において高めることができ、より高機能の弾性舗装を実現することが可能となった。かかる発泡剤の添加量は、バインダーに対し2〜10重量%、特には3〜6重量%の範囲内とすることが好ましい。添加量が少なすぎると本発明の効果が不十分となる場合があり、一方、多すぎてもそれ以上の効果は望めない。本発明において用いることのできる発泡剤としては、1,1−アゾビスホルムアミド、N,N−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、4,4−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)等を挙げることができ、これらのうちの1種または2種以上を好ましく用いることができる。
【0026】
また、本発明の弾性舗装材料は、発泡助剤として、アルカリ土類金属水酸化物または炭素数14〜18の飽和脂肪酸の少なくとも1種を含むことが好ましい。かかる発泡助剤の添加量は、発泡剤100重量部に対し、通常、10〜500重量部程度である。例えば、これら発泡剤と発泡助剤との混合物として、中温化剤(森下産業(株)製、AMS2000ss、AMS3000)を好適に用いることができる。
【0027】
本発明の舗装材料には、さらに、シランカップリング剤が添加されていることが好ましい。シランカップリング剤の作用により石表面の接着性も得られるため、耐久性をより高めることが可能である。この場合、用いるシランカップリング剤の種類には特に制限はなく、対象となる混合物の系に合わせて、最適なものを選択すればよい。
【0028】
本発明の弾性舗装材料を製造するにあたっては、全配合成分を同時に混合することもできるが、バインダーと、発泡剤および所望に応じ発泡助剤とを予め混合し、次いで残りの配合物を混合して合材を得る方法が好適であり、混合時の温度は180℃程度が最適である。
【実施例】
【0029】
以下に、本発明を実施例に基づき説明する。
バインダーとして、EVA680(東ソー(株)製)50重量%とストレートアスファルト60−80 50重量%とを180℃で攪拌混合したものを用いて、下記の表1に示す配合内容(重量%)に従い、各実施例および比較例の弾性舗装材料を調製した。最初に、180℃に温調した攪拌機(ニッケン(株)製)にバインダーおよび発泡剤を投入、攪拌し、次いで、骨材およびゴム粉を投入後、20分間攪拌した。
【0030】
(施工性評価)
施工性の評価は、各弾性舗装材料の合材につき、アスファルトミキサーでの攪拌性、敷きならし性等を官能評価することにより行った。○は良好、△はやや悪いを示す。
【0031】
(すべり抵抗測定)
また、各弾性舗装材料より得られる舗装体についてすべり抵抗を評価するために、BPNの値を、規格(KODAN221、KODAN222)に従い、振り子式スキッドレジスタンステスターを用いて測定した。
これらの結果を下記の表1中に併せて示す。
【0032】
【表1】

1)森下産業(株)製、AMS−2000
2)森下産業(株)製、AMS−3000
【0033】
上記表1の結果より、発泡剤を含有させた実施例1〜3の弾性舗装材料においては、比較例の弾性舗装材料に比し施工性が良好となるとともに、得られた舗装体において、すべり抵抗の値が高くなっていることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルトを主成分とするバインダーと、骨材と、ゴムチップおよび/またはゴム粉末と、発泡剤とを含有することを特徴とする弾性舗装材料。
【請求項2】
前記発泡剤の添加量が、前記バインダーに対し2〜10重量%の範囲内である請求項1記載の弾性舗装材料。
【請求項3】
前記発泡剤が1,1−アゾビスホルムアミド、N,N−ジニトロソペンタメチレンテトラミンおよび4,4−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)からなる群から選択されるいずれか1種または2種以上である請求項1または2記載の弾性舗装材料。
【請求項4】
さらに、発泡助剤として、アルカリ土類金属水酸化物または炭素数14〜18の飽和脂肪酸の少なくとも1種を含む請求項1〜3のうちいずれか一項記載の弾性舗装材料。
【請求項5】
請求項1〜3のうちいずれか一項記載の弾性舗装材料を製造するにあたり、前記バインダーと発泡剤とを予め混合し、次いで残りの配合物を混合することを特徴とする弾性舗装材料の製造方法。
【請求項6】
請求項4記載の弾性舗装材料を製造するにあたり、前記バインダーと発泡剤および発泡助剤とを予め混合し、次いで残りの配合物を混合することを特徴とする弾性舗装材料の製造方法。

【公開番号】特開2007−2166(P2007−2166A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186363(P2005−186363)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】