説明

後処理装置、画像形成システム、サイズエラー検知方法及びプログラム

【課題】画像が形成された複数枚の用紙を重ねた状態で搬送されている用紙束の搬送長を検出し、サイズエラーの有無を判断することで生産性の低下を防止し、また重送時でも精度の高いサイズエラー検知を行う。
【解決手段】給紙部(給紙搬送手段5)から給紙された用紙上に画像形成した後、所定の経路上に配置されたセンサ部(用紙検出センサ33A)により、該所定の経路を搬送されている当該画像形成された用紙束の搬送長を検出する。そして、判定部(CPU41)により、センサ部(用紙検出センサ33A)で検出された搬送長と給紙部(給紙搬送手段5)から給紙された用紙のサイズとを比較し、給紙された用紙のサイズに対する搬送長が予め設定された許容範囲内であるか否かの判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後処理装置、画像形成システム、サイズエラー検知方法及びプログラムに関し、詳しくは、重ねた状態で搬送される複数枚の用紙に対するサイズエラー検知の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置は、用紙を一枚ずつ搬送するときに用紙が重なってしまった場合、用紙が重なって搬送されていることを検出する機構を備えている(例えば、特許文献1参照)。このような用紙が重なって搬送されていることを検出した場合、用紙の搬送を停止するなどの処置がとられる(例えば、特許文献2参照)。さらに、用紙が重なって搬送された場合に、用紙の重なりを解消して搬送する技術が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
一方で、近時、画像を用紙に定着した後に複数枚の用紙を重ねた状態で搬送(以下、「重送」という)する画像形成装置がある。一般に、一枚の用紙に画像を定着するまでの処理時間に比べて画像定着後の一枚の用紙の搬送に係る処理時間が長い。そこで、画像を用紙に定着した後に複数枚の用紙を重ねて搬送することによりこの時間差を解消し、生産性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−76853号公報
【特許文献2】特開2001−2272号公報
【特許文献3】特開2008−280130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、複数枚の用紙を重送する際に、搬送経路上で用紙を挟むようにして配置される上下のローラの回転速度、ガイドの接触等の影響により、重ねた状態の用紙の先端及び後端に搬送方向のずれが生じてしまう。そして、重ねた状態の用紙を搬送方向にずれたまま搬送した場合には、搬送経路の途中で紙詰まりが発生したり、下流の後処理工程でのパンチ処理、ステープル処理、折り処理等に悪影響を及ぼしたりする。
【0006】
ここで、例えば特許文献1〜3に記載の発明を用いて複数枚の用紙を重送する時に用紙間の搬送方向のずれを検知し、サイズエラー(用紙サイズ異常)の警告を出力することを想定する。サイズエラーとするための閾値は単に重送の存在を検知するためのものであるから、搬送過程で重ねた状態の用紙に搬送方向のずれが発生した状態で搬送した場合、直ちにサイズエラーが検知されてしまう。すなわち、重送時の用紙のずれの状態が考慮されておらず、それゆえ、頻繁にサイズエラーが発生する可能性があり、生産性が低下する。
【0007】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、画像形成された複数枚の用紙を重ねた状態で搬送されている用紙束の搬送方向の長さ(以下、「搬送長」という)を検出し、サイズエラーの有無を判断することで生産性の低下を防止し、また重送時でも精度の高いサイズエラー検知を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面は、給紙部から給紙された用紙上に画像形成した後、所定の経路に沿って搬送されている用紙束の搬送長を検出する。そして、判定部により、センサ部で検出された搬送長と給紙部から給紙された用紙のサイズとを比較し、給紙された用紙のサイズに対する該搬送長が予め設定された許容範囲内であるか否かの判定を行う構成を採る。
【0009】
また、上記構成において、搬送長は、一例として、センサ部が用紙束の搬送方向の先端及び後端が通過したことを検出した結果に基づいて算出される。あるいは、センサ部の検出結果から得られる用紙束の通過時間と搬送部の搬送速度とに基づいて算出される。
【0010】
また、上記構成において、予め設定された許容範囲は、一例として、用紙の枚数、用紙種類、用紙の厚み、用紙のサイズ、温度、湿度のうち1以上の条件を反映して設定された許容範囲の値が登録されたテーブルとして備えられる。そして、判定部は、用紙束を搬送しているときの条件に応じてテーブルに登録された許容範囲の値を読み出し、用紙束の搬送長が該読み出した許容範囲内であるか否かの判定を行う。
【0011】
本発明の一の側面によれば、搬送されている用紙束の搬送長が許容範囲内であるか否かを判定し、その結果、許容範囲ではないと判定された場合にそれに応じた制御に反映することができる。
【0012】
本発明の他の側面は、給紙部から給紙された用紙上に画像形成した後、当該画像形成された複数枚の用紙を重ねた用紙束を所定の経路に沿って搬送する、第1搬送部とその下流側に位置する第2搬送部とを有する。そして、第1搬送部で搬送されている用紙束の搬送長を、第1搬送部またはその近傍に配置された第1センサ部により検出する。続いて、第2搬送部を搬送されている用紙束の搬送長を、第2搬送部またはその近傍に配置された第2センサ部により検出する。判定部は、第1センサ部で検出された用紙束の搬送長と給紙部から給紙された用紙のサイズとを比較し、給紙された用紙のサイズに対する許容範囲を決定する。そして、第2センサ部で検出された用紙束の搬送長が決定された許容範囲内であるか否かの判定を行う構成を採る。
【0013】
本発明の他の側面によれば、第1センサ部により検出された搬送されている用紙束の搬送長を利用して許容範囲が決定され、第2センサ部により検出された用紙束の搬送長が許容範囲内か否かを判定し、その結果、許容範囲ではないと判定された場合にそれに応じた制御に反映することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、搬送されている用紙束の搬送長が許容範囲内であるか否かを判定し、その結果に基づいてサイズエラーの有無を判断するので、サイズエラーが頻繁に生じることを防止でき、生産性の低下を防止できる。また重送時でも精度の高いサイズエラー検知を行うことができる。
また、第1センサ部により検出された搬送されている用紙束の搬送長を利用して許容範囲が決定され、第2センサ部により検出された用紙束の搬送長が許容範囲内か否かを判定し、その結果に基づいてサイズエラーの有無を判断するので、サイズエラーが頻繁に生じることを防止でき、生産性の低下を防止できる。また重送時でも精度の高いサイズエラー検知を行うことができる。更に、第1センサ部により検出された搬送されている用紙束の搬送長を利用して許容範囲が決定することで、許容範囲をリアルタイムで変更が可能となり、精度の高いサイズエラー検知を行うことができる。
また、重送時でも精度の高いサイズエラー検知を行えるので、それに応じた制御も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態における画像形成システムの全体構成図である。
【図2】画像形成システムを構成する各装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】後処理装置内の重送時の搬送経路の概要図である。
【図4】第1及び第2の用紙検出センサを連携させる場合と履歴情報を用いた場合の2つのサイズエラー判定を混合した例を示す説明図である。
【図5】サイズエラー判定による駆動制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態の例について、添付図面を参照しながら説明する。なお、各図において共通の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0017】
<画像形成システムの全体構成>
図1は、本発明の一実施の形態における画像形成システムの全体構成図である。
本実施の形態に係る画像形成システムは、画像形成装置A、自動原稿送り装置DF、大容量給紙装置LT、用紙整合装置である中間搬送ユニットB、後処理装置FSを有する。
【0018】
[画像形成装置]
画像形成装置Aは、画像読取部1、画像処理部2、画像書込部3、画像形成部4、給紙搬送手段5、及び定着部6を備えている。
【0019】
画像形成部4は、感光体ドラム4A、帯電手段4B、現像手段4C、転写手段4D、分離手段4E、及びクリーニング手段4F等から構成されている。
【0020】
給紙搬送手段5(給紙部の一例)は、給紙カセット5A、第1給紙手段5B、第2給紙手段5C、搬送手段5D、排紙手段5E、及び自動両面コピー給紙手段(ADU)5Fを備えている。
【0021】
画像形成装置Aの上部前面側には、入力手段及び表示手段を有する操作表示パネル(図示略)が配置されている。また、画像形成装置Aの上部には、自動原稿送り装置DFが搭載されている。画像形成装置Aの左側面の排紙手段5E側には、中間搬送ユニットBが、更にその左側には後処理装置FSが連結されている。
【0022】
自動原稿送り装置DFの原稿台上に載置された原稿は画像読取部1の光学系により原稿の片面又は両面の画像が読みとられ光電変換される。光電変換により得られたアナログ信号は、画像処理部2においてアナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮等の処理行われ、画像書込部3に送られる。
【0023】
画像書込部3においては、半導体レーザからの出力光が画像形成部4の感光体ドラム4Aに照射され、潜像を形成する。画像形成部4においては、帯電、露光、現像、転写、分離、クリーニング等の処理が行われる。
【0024】
第1給紙手段5Bにより給送された用紙Sには、転写手段4Dにより画像が転写される。画像を担持した用紙Sは、定着部6により定着され、排紙手段5Eから中間搬送ユニットBに送り込まれる。或いは、自動両面コピー給紙手段5Fに送り込まれた片面画像処理済みの用紙Sは再び画像形成部4において両面画像処理後、排紙手段5Eにより排出され、中間搬送ユニットBに送り込まれる。
【0025】
[中間搬送ユニット]
中間搬送ユニットBは、画像形成装置Aから搬入された複数枚の用紙を重ね合わせて整合する用紙整合装置を有する。以降の説明では、重ね合わされて搬送される複数枚の用紙を「用紙束」と称することがある。以下、用紙整合装置内部の機構について簡単に説明する。
【0026】
用紙整合装置は主に、用紙を搬入する用紙搬入部11、複数枚の用紙を重ね合わせて整合した後で向きを反転する反転搬送部12、用紙を搬出する用紙搬出部13、用紙を整合しない場合にバイパス搬送するバイパス搬送部14から構成されている。
【0027】
反転搬送部12では、用紙搬入部11から受け入れた複数枚の用紙Sが重ね合わされた状態で収納部に一時収納され、用紙Sの搬送方向の整合、及び用紙Sの搬送方向と直交する用紙Sの幅方向の整合がされた後、上方に排出される。すなわち用紙Sは、整合され搬送方向の先端と後端が反転されて、用紙搬出部13に搬送される。そして、用紙搬出部13により整合された用紙束が、排紙ローラR6によって後処理装置FS内のサイズエラー検知手段31に送り込まれる。
【0028】
中間搬送ユニットB内の用紙整合装置の詳細な構成については、特開2010−70191号公報に記載されている。なお、用紙整合装置の構成は、複数枚の用紙を整合できるものであればこの例に限られない。
【0029】
[後処理装置]
中間搬送ユニットBから複数枚の用紙が送り込まれた後処理装置FSにおいては、複数枚の用紙がサイズエラー検知手段31を経て後処理手段31Aへ搬送され、パンチ処理、ステープル処理、折り処理等の後処理が行われる。
【0030】
画像形成装置A内に配置されたメイン回路9Aの通信制御部と、中間搬送ユニットB内に配置されたメイン回路9Bの通信制御部とは、通信回線9Dにより接続され、入力信号、制御信号、データを送受する。同様に、中間搬送ユニットB内に配置されたメイン回路9Bの通信制御部と、後処理装置FSのサイズエラー検知手段31内に配置されたメイン回路9Cの通信制御部とは、通信回線9Dにより接続され、入力信号、制御信号、データを送受する。
【0031】
[大容量給紙装置]
大容量給紙装置LTは、用紙積載手段7A、第1給紙手段7B等を有し、連続して大量の用紙Sを画像形成装置Aに給送する。
【0032】
上記のとおり、画像形成システムは、複数枚の用紙を重ねて後処理装置FSのサイズエラー検知手段31に送り込む機能を有する。
【0033】
<画像形成システムのハードウェア構成>
[画像形成装置]
図2は、画像形成システムを構成する各装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
画像形成装置Aは、メイン回路9Aを備える。このメイン回路9Aは、例えば中央演算装置(CPU)21と、CPU21の作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)22と、CPU21が実行するプログラム等を記憶するためのEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)23を有する。さらに、表示部24と、操作部25と、大容量記憶装置としてのハードディスクドライブ(HDD)26と、通信制御部27と、を有する。
【0034】
CPU21は制御部の一例であり、表示部24、操作部25、HDD26及び通信制御部27のそれぞれに接続され、メイン回路9Aの全体を制御する。また、CPU21は、ファクシミリ部10、自動原稿送り装置DF、画像読取部1、画像処理部2、画像書込部3、画像形成部4、給紙搬送手段5、及び定着部6と接続され、画像形成装置Aの全体を制御する。
【0035】
表示部24は、液晶表示装置(LCD)又は有機ELD(Electro Luminescence Display)等のディスプレイであり、ユーザに対する指示メニューや取得した画像データに関する情報等を表示する。操作部25は、複数のキーを備え、ユーザのキー操作による各種の指示、文字、数字などのデータの入力を受け付けて入力信号を出力する。操作部25は、表示部24上に設けられたタッチパネルを含む。表示部24と操作部25とで、操作表示パネルが構成される。
【0036】
通信制御部27は、中間搬送ユニットB及び後処理装置FSの通信制御部と所定の通信プロトコルで通信するためのインターフェース及び通信手段として機能する。通信プロトコルには、一例としてTCP(Transmission Control Protocol)やUDP(User Datagram Protocol)、シリアル通信等が用いられる。この通信制御部27は、CPU21からの指示に従って、接続された外部の中間搬送ユニットBや後処理装置FSの通信制御部との間でデータ及び制御信号を送受信する。
【0037】
カードインターフェース28は、不揮発性の半導体メモリ(例えばフラッシュメモリ)を内蔵するメモリカード28Aとシリアル通信するためのインターフェース(I/F)である。CPU21は、カードI/F28を介してメモリカード28Aにアクセスし、メモリカード28Aからデータを読み出したり、データを書き込んだりする。
【0038】
CPU21は、EEPROM23あるいはカードI/F28に接続されたメモリカード28Aに記録されているプログラムを読み出し、読み出したプログラムをRAM22に記憶し、実行する。
【0039】
ファクシミリ部10は、PSTN10a(公衆電話交換回線網)に接続され、PSTN10aにファクシミリデータを送信する、またはPSTN10aからファクシミリデータを受信する。ファクシミリ部10は、受信したファクシミリデータをCPU21の制御下でHDD26に記憶するか、または画像書込部3及び画像形成部4でファクシミリデータを用紙にプリントする。
【0040】
中間搬送ユニットB内のメイン回路9B(図1参照)は、画像形成装置Aと同様に、CPU、RAM、EEPROM、HDD又は不揮発性の半導体メモリ、通信制御部などを備えており、ここでは説明を省略する。
【0041】
[後処理装置(サイズエラー検知手段)]
次に、後処理装置FS内のサイズエラー検知手段31について説明する。
サイズエラー検知手段31は、メイン回路9C、搬送手段32(搬送部の一例)、用紙検出センサ33(センサ部の一例)、時計部34、温度計35、及び湿度計36を備える。
【0042】
メイン回路9Cは、例えば中央演算装置(CPU)41と、CPU41の作業領域として使用されるRAM42と、CPU41が実行するプログラム等を記憶するためのEEPROM43と、半導体メモリ44と、を含む。CPU41は制御部(判定部の一例)であり、メイン回路9Cの全体を制御する。また、CPU41は、搬送手段32、用紙検出センサ33、時計部34、温度計35、及び湿度計36と接続され、サイズエラー検知手段31の全体を制御する。
【0043】
半導体メモリ44は、フラッシュメモリ等の不揮発性の記憶手段であり、サイズエラー判定に用いるテーブルや各種プログラム、サイズエラー判定の過程で得られた測定値等のデータを記憶する。CPU41は、EEPROM43あるいは半導体メモリ44に記録されているプログラムを読み出し、読み出したプログラムをRAM42に記憶し、該プログラムを実行することによりサイズエラー判定及びそれに応じた駆動制御を行う。
【0044】
通信制御部46は、中間搬送ユニットB及び画像形成装置Aの通信制御部と所定の通信プロトコルで通信するためのインターフェース及び通信手段として機能する。通信プロトコルには、一例としてTCPやUDP、シリアル通信等が用いられる。通信制御部46は、CPU41からの指示に従って、接続された外部の中間搬送ユニットBや画像形成装置Aの通信制御部との間で入力信号、制御信号、データを送受信する。
【0045】
搬送手段32は、図3に搬送経路の概要を示すように、中間搬送ユニットBから送り込まれる重なった状態の用紙を搬送する3対のローラを備える。第1のローラ対(ローラ51a,51b)(第1搬送部)は、後処理装置FSの用紙が搬入される搬入口付近に設けられ、搬送経路上を搬送される複数枚の用紙を挟むように対向して配置される。同様にして、第1のローラ対(ローラ51a,51b)に対して搬送方向下流側(以下、単に「下流側」と称す)に第2のローラ対(ローラ52a,52b)(第2搬送部)が、さらにその下流側に第3のローラ対(ローラ53a,53b)(第3搬送部)が配置される。第1〜第3のローラ対を構成する各ローラは、CPU41の制御の下で駆動手段(不図示)により回転駆動され、それにより第1〜第3のローラ対は用紙を挟持して、搬送する。
【0046】
用紙検出センサ33は、搬送経路近傍に配置されて搬送経路を搬送されている用紙の状態を検出するものである。一例として図3に示すように、第1〜第3の用紙検出センサ33A〜33Cを備える。第1の用紙検出センサ33A(第1センサ部)は第1のローラ対またはその近傍に配置され、第2の用紙検出センサ33B(第2センサ部)は第2のローラ対またはその近傍に配置される。さらに、第3の用紙検出センサ33C(第3センサ部)は第3のローラ対またはその近傍に配置される。第1〜第3の用紙検出センサ33A〜33Cとしては、光学センサや超音波センサなどが用いられる。
【0047】
時計部34は、時間を計測するためのものである。CPU41は、搬送されている用紙の先端及び後端が、図3に示す用紙検出センサ33A〜33Cのいずれかを通過したときに時計部34が出力する時間情報を取得する。例えば搬送されている用紙の搬送方向の先端が用紙検出センサ33Aを通過した時刻と、当該用紙の後端が用紙検出センサ33Aを通過した時刻を取得し、用紙の通過時間を計算する。なお、搬送されている用紙の先端が用紙検出センサ33Aを通過してから後端が通過する間にCPU41が出力するクロック数を数えることにより、通過時間を計算するようにしてもよい。
【0048】
温度計35及び湿度計36は、搬送される複数枚の用紙の環境の温度及び湿度を計測する。CPU41は、温度計35及び湿度計36から得られる温度及び湿度の情報を、サイズエラー判定に活用する。なお、温度計35及び湿度計36を後処理装置FS内に設けているが、画像形成装置Aの給紙搬送手段5の付近や定着部6の下流側などに設置してもよい。
【0049】
次に、図3を参照して、本発明の一実施の形態に係るサイズエラー判定について説明する。
本実施の形態に係るサイズエラー判定では、重送時に複数枚の用紙を重ねた状態で搬送されている用紙束の搬送長を算出し、該用紙束の搬送長を予め設定された許容範囲(搬送長の許容値)と比較してサイズエラーの判定を行う。つまり、このサイズエラー判定では、用紙束に重送ずれが発生しているときのずれ量を含む搬送長が、設定された許容範囲に収まっているか否かを判定する。
【0050】
ここで、「搬送長」とは、重なって搬送されている複数枚の用紙の搬送方向の先端から後端までの長さである。また「用紙のサイズ」とは、一枚の用紙の搬送方向の長さである。そして、「重送ずれ」(単に「ずれ」ともいう)とは、用紙束の搬送長と用紙のサイズに差分がある状態であり、「ずれ量」はその差分の長さである。
【0051】
[1つの用紙検出センサの検出結果を用いるサイズエラー判定]
まず、3個の用紙検出センサ33A〜33Cのうちいずれか一つの用紙検出センサ33Aの検出結果を用いてサイズエラー判定を行う場合を説明する。この例では、搬送方向の最上流側に配置した用紙検出センサ33Aの検出結果を用いる。
【0052】
用紙検出センサ33Aは、搬送経路を搬送された複数枚の用紙S1・・・Snからなる用紙束の搬送方向の先端と後端が通過したことを検出し、CPU41(図2参照)に通知する。CPU41は、用紙検出センサ33Aから通知があった時刻を時計部34から取得し、当該複数枚の用紙が用紙検出センサ33Aを通過するのに要した時間を算出する。
【0053】
また、この時にCPU41は、中間搬送ユニットBを経由して画像形成装置Aから、重ねた用紙の枚数(重送枚数)、用紙種類、用紙のサイズなどの用紙に関する条件の情報を取得する。また、CPU41は、温度計35及び湿度計36からそれぞれ温度と湿度の情報を取得する。
【0054】
続いて、算出した通過時間と搬送手段32の搬送速度(例えばローラ51a又は51bの回転速度)とから用紙束の搬送長を算出する。そして、用紙束の搬送長と給紙された用紙のサイズとを比較し、その用紙のサイズに対する当該搬送長が予め設定した許容範囲内であるか否かの判定(サイズエラー判定)を行う。
【0055】
この用紙束は、重ねた用紙の枚数(重送枚数)、用紙種類、用紙の厚さ(坪量)、用紙のサイズなどの用紙に関する条件、さらには温度、湿度など重送時の環境に関する条件によりずれ量が変化する。そのため、算出した搬送長と比較される許容範囲は、これらの条件を反映して設定することが好適である。
【0056】
許容範囲は、用紙のサイズを基に許容できるずれ量を付加した値として適宜決定できる。たとえば上記の重送枚数、用紙種類、用紙の厚さ、用紙のサイズなどの用紙に関する条件や温度、湿度の条件の組み合わせに応じて想定される値としてもよく、又は実績に基づく値であってもよい。
【0057】
以下、表1及び表2に、複数の条件の組み合わせごとに決定した許容範囲となるずれ量(単位:mm)の一覧を示したテーブル例を示す。このテーブルは、例えば半導体メモリ44に記憶させておくことができる。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
表中、「特殊紙」は上質紙などの特殊な紙である。「通紙長」は用紙の搬送方向の長さ(=用紙のサイズ)である。「動作環境」は動作時の温度湿度(一例として低温低湿、通常、高温高湿の3環境にて表作成)を表している。一例として「低温低湿」は相対湿度20%、温度10℃であり、「通常」は相対湿度50%、温度20℃であり、「高温高湿」は相対湿度85%、温度40℃である。
【0061】
上述した例では、CPU41によるサイズエラー判定に搬送長を用いる場合を説明したが、通過時間を用いてサイズエラー判定をしてもよい。
【0062】
上述したように、重送時の用紙束の搬送長を検出し、重送によって生じた用紙間のずれを考慮してサイズエラーの閾値(許容値)を変更するため、重送時の用紙ずれにより頻繁にサイズエラーとなることを防ぎ、精度の高いサイズエラー検出を行なうことができる。
【0063】
また、用紙に関する条件や環境に関する条件をサイズエラー判定で参照する許容範囲(エラー判定サイズ)に反映させることにより、精度の高いサイズエラー判定が実現できる。また、サイズエラーと判定した場合に、制御部は後述する補正処理、すなわち搬送手段の搬送ローラの駆動状態を調整して搬送手段の駆動を制御することにより、適切な駆動制御を行うことができる。
【0064】
なお、1つの用紙検出センサの検出結果を用いてサイズエラー判定を行う場合、より上流側の用紙検出センサの検出結果を用いると、サイズエラー検知手段31に用紙束が搬送されてからの搬送距離が短く、重送ずれのずれ量が小さい。したがって、ずれ量の閾値の設定は容易であるが、後処理手段31Aに搬入される直前の用紙束の搬送長は大きくなる。逆に、より下流側の用紙検出センサの検出結果を用いた場合、後処理手段31Aまでの距離が近いので、サイズエラー判定後から後処理手段31Aまでの重送ずれが少なく、後処理手段31Aでの後処理が良好に行える。ただし、下流側ではサイズエラー検知手段31に用紙束が搬送されてからの搬送距離が長く、重送ずれの搬送長が大きくなるので、その分を考慮したずれ量の閾値(許容範囲)の設定が求められる。
【0065】
[2以上の用紙検出センサの検出結果を用いるサイズエラー判定]
(第1及び第2の用紙検出センサを連携させる場合)
上流側の用紙検出センサの検出結果を利用して、下流側の用紙検出センサにおけるサイズエラー判定に用いる閾値を設定する例を説明する。この例では、3個の用紙検出センサ33A〜33Cのうち用紙検出センサ33A,33Bの検出結果を用いる。
【0066】
ローラ51a,51b(図3参照)により重送された複数枚の用紙すなわち用紙束が用紙検出センサ33Aに到達したとき、CPU41(図2参照)は、用紙検出センサ33Aの検出結果から用紙束の通過時間を測定する。この時にCPU41は、中間搬送ユニットBを経由して画像形成装置Aから、重ねた用紙の枚数(重送枚数)、用紙種類、用紙のサイズなどの用紙に関する条件の情報、温度計35及び湿度計36からそれぞれ温度と湿度の情報を取得する。
【0067】
さらに、測定した通過時間と搬送速度より当該用紙束の搬送長を算出する。この測定値及び算出値から、用紙束の用紙検出センサ33A通過時点のずれ量(「搬送長−用紙のサイズ」、又は「通過時間−用紙のサイズ/搬送速度」)を算出する。そして、算出したずれ量と用紙のサイズを元に、下流側の用紙検出センサ33Bでサイズエラーとする搬送長もしくは搬送時間、すなわち許容範囲を決定する。
【0068】
例えば、算出した搬送長に基づく許容範囲は、(“給紙からサイズエラー検知手段31に搬入前までのサイズエラーとする搬送長”+“ずれ量”±α)のように決定できる。CPU41は、この測定した搬送長に基づいて決定した許容範囲を新たな許容範囲に設定し、この新たな閾値を用いて用紙検出センサ32B以降のセンサにてサイズエラー判定を行なう。
【0069】
上述した例では、上流側の用紙検出センサ33Aの検出結果を利用して、下流側の用紙検出センサ33Bにおけるサイズエラー判定に用いるずれ量の閾値を重送ごとに逐次設定している。一般に重送される用紙束はローラを通過するごとに重送ずれが大きくなるが、本例によりこれを反映した許容範囲の設定が可能になる。それにより、下流側の用紙検出センサ33Bにおいて、上流側の用紙検出センサ33Aから下流側の用紙検出センサ33Bに搬送される過程で生じた重送ずれのずれ量に基づいたサイズエラー判定が行える。すなわち、重送される複数枚の用紙(用紙束)の実際のずれの状態に即した精度の高いサイズエラー判定を行うことができる。
【0070】
(履歴情報を用いる場合)
次に、用紙検出センサによる過去の検出結果を履歴データとして蓄積しておき、最新の情報により履歴データを逐次更新して閾値の設定に利用する例を説明する。
【0071】
まず、重送枚数、用紙種類、用紙のサイズ、さらには温度、湿度などの条件と対応づけて過去N回の重送ずれの算出結果を、履歴データとして半導体メモリ44に保存しておく。CPU41は、用紙束が用紙検出センサ33A〜33Cのいずれかを通過するとき、該用紙束のずれ量を算出し、最新のずれ量の情報を取得する。そして、ずれ量算出時の条件と対応づけて半導体メモリ44の履歴データを最新のずれ量の情報により更新する。
【0072】
CPU41は、上記最新のずれ量の算出時の条件に対応する過去のずれ量を、更新された履歴データから抽出し、抽出した過去のずれ量の平均値を算出する。そして、算出したずれ量の平均値を、用紙検出センサ33A〜33Cにおけるサイズエラー判定の閾値を決定するための情報、すなわち重送ずれ考慮距離(又は重送ずれ考慮時間)とする。上述例では、ずれ量の算出結果を履歴データとして保存するようにしたが、搬送長又は通過時間の検出結果を履歴データとして保存してもよいことは勿論である。
【0073】
このように、過去の重送時の検出結果として例えばずれ量を履歴データとして収集し、収集したずれ量の平均値を求める。これにより、ずれ量を算出する上流側の用紙検出センサ33Aを、用紙束が通過した時点における実際のずれ量と平均値との差が分かり、早い段階での対策が可能となる。
【0074】
ここで、図4を参照して、上述の第1及び第2の用紙検出センサを連携させる場合と履歴情報を用いた場合のサイズエラー判定を混合した例を説明する。
図4の例は、用紙種類は上質紙(特殊紙の一種)、坪量は64g/m、重送枚数は3枚、環境は通常(温度20℃、湿度50%)、4部目でサイズエラーが発生した場合(搬送長による検出時)である。
【0075】
まず、上記条件の3枚の用紙を重ね、用紙検出センサ33Aから用紙検出センサ33Cまでを連続して搬送すると、CPU41が、用紙検出センサ33A〜33Cのそれぞれの測定結果のデータを測定時の条件と対応づけて作成する。そして、図4に示すように、搬送の順番ごとに、データ1→データ2→データ3…とラベル付けし、半導体メモリ44に保存する。なお、データ1〜3中のセンサ1〜3は、用紙検出センサ33A〜33Cのそれぞれと一体一に対応する。
【0076】
用紙検出センサ33Aで検出した3枚の用紙のずれ量のデータを、測定のたびに保存すると、データ1〜データ3でずれ量の平均値は6mmとなる。用紙検出センサ33Aに搬送される前のサイズエラーとする閾値が、例えばテーブル(表1,表2等)に基づき「用紙のサイズ+20mm」である場合、「用紙のサイズ+20mm+ずれ量」をサイズエラーとする新たな閾値に設定する(第1及び第2の用紙検出センサを連携させる場合に相当)。この場合は、ずれ量の平均値は6mmであるので、新たな閾値は「用紙のサイズ+26mm」となる(履歴情報を用いた場合に相当)。
【0077】
データ4は、用紙検出センサ33Aで3枚の用紙を検出したときに大きなずれ量が検出されたが、ずれ補正をせず、下流側の用紙検出センサ33B,33Cへ搬送してずれ量を検出した結果の例である。
【0078】
データ4において、用紙検出センサ33Aで検出した3枚の用紙のずれ量17.5mmは、平均値6mmよりも大きくずれているため、ずれ量の平均値を求める計算に加えず、ずれ量の平均値を6mmのままとして下流側のサイズエラー判定を行なう。またデータ4では、用紙検出センサ33Aで検出した3枚の用紙のずれ量20.5mmは、ずれ量の閾値26mmを越えていない。しかし、用紙検出センサ33Cで検出した3枚の用紙のずれ量26.5mmは閾値26mmを超えているので、サイズエラーであると判定する。このように、ある用紙検出センサで検出したずれ量が平均値より大きく外れた場合、その下流側の用紙検出センサにてサイズエラーを検出する。
【0079】
データ4´は、用紙検出センサ33Aで3枚の用紙を検出したときに大きなずれ量が検出されたため、ずれ補正を行った後、下流側の用紙検出センサ33B,33Cへ搬送してずれ量を検出した結果の例である。
【0080】
データ4´において、用紙検出センサ33Aで3枚の用紙の大きなずれ量を検出した後、ずれ補正を実施したことにより、下流側の用紙検出センサ33Bで検出されたずれ量は6.5mmと正常範囲内に抑えられている。さらに下流側の用紙検出センサ33Cで検出されたずれ量も6.6mmと正常範囲内に収まっている。
【0081】
このように、上流側の用紙検出センサで重送された用紙の大きなずれ量を検出した場合、ずれ補正をすることにより、下流側の用紙検出センサで検出されるずれ量が正常範囲内に収まる。ずれ抑制対策としての補正処理については、後述する。
【0082】
なお、データ4では、用紙検出センサ33Aで検出した3枚の用紙のずれ量が、平均値6mmよりも大きくずれているため、ずれ量の平均値を求める計算に加えず、下流側のサイズエラー判定を行なった。しかし、上記のとおり、ずれ量の平均値を求める計算から除外してずれ量の平均値を6mmのままとし、その平均値を用紙検出センサ33Aにおけるサイズエラー判定に利用してもよい。
【0083】
<サイズエラー判定による駆動制御処理>
次に、図5のフローチャートを参照して、サイズエラー判定による駆動制御処理例を説明する。
まず、CPU41は、搬送経路に配置した任意の用紙検出センサが重送されている用紙の状態を検出したことをトリガとして、重送中であるか否かを判定する(ステップS1)。重送中かどうかは、CPU41が、例えば画像形成システムの動作モードや設定情報を取得することで判断できる。
【0084】
ステップS1の判定処理において重送中であるときのみ、CPU41は、履歴情報の有無を判定する(ステップS2)。半導体メモリ44に履歴情報が保存されている場合はステップS3に移行し、半導体メモリ44に履歴情報が保存されていない場合はステップS4に移行する。
【0085】
ステップS2の判定処理において半導体メモリ44に履歴情報が保存されている場合、CPU41は、履歴情報からサイズエラー設定、すなわち給紙された用紙のサイズに対する用紙束の搬送長の許容範囲(またはずれ量の閾値)の設定を行う(ステップS3)。履歴情報から許容範囲を設定する方法は上述の(履歴情報を用いる場合)にて説明したので、ここでは説明を省略する。
【0086】
一方、ステップS2の判定処理において半導体メモリ44に履歴情報が保存されていない場合、CPU41は、許容範囲の設定に用いるずれ量が固定値であるか、すなわち半導体メモリ44にテーブル(表1及び表2参照)が保存されているか否かを判定する(ステップS4)。
【0087】
ステップS4の判定処理において半導体メモリ44にテーブルが保存されている場合、CPU41は、テーブルを参照してサイズエラー設定、すなわち許容範囲の設定を行う(ステップS5)。なお、テーブルを参照して閾値を設定する方法は、[1つの用紙検出センサの検出結果を用いるサイズエラー判定]にて説明したので、ここでは説明を省略する。
【0088】
一方、ステップS4の判定処理において半導体メモリ44にテーブルが保存されていない場合、CPU41は、上流側の用紙検出センサの検出結果から搬送されている用紙束のずれ量を算出する(ステップS6)。そして、CPU41は、算出したずれ量に基づいて用紙束の搬送長を求めてサイズエラー設定、すなわち許容範囲の設定を行う(ステップS7)。上流側の用紙検出センサを用いて算出したずれ量に基づいて許容範囲の設定を行う方法についても、[2以上の用紙検出センサの検出結果を用いるサイズエラー判定]の(第1及び第2の用紙検出センサを連携させる場合)にて説明したので、ここでは説明を省略する。
【0089】
ステップS3,S5,S7のサイズエラー設定(許容範囲の設定)が終了後、CPU41は、搬送されている用紙束が下流側の用紙検出センサを通過したとき、用紙束の搬送長が許容範囲を超えたか否かを判定(サイズエラー判定)する(ステップS8)。
【0090】
ステップS8の判定処理において搬送長が許容範囲を超えていない場合、CPU41は、重送が終了か否かを判定する(ステップS9)。ここで、重送が終了していない場合、CPU41は、ステップS8の処理に戻り、更に下流側の用紙検出センサによるサイズエラー判定を行う。また、重送が終了していない場合、CPU41は、各用紙検出センサにおいて算出したずれ量を履歴データとして半導体メモリ44に追加する(ステップS10)。この処理が終了後、一連の処理を終了する。
【0091】
一方、ステップS8の判定処理において用紙束の搬送長が許容範囲を超えている場合、CPU41は、重送ずれを低減するための補正処理の有無を判定する(ステップS11)。画像形成システムの機種によっては補正処理機能が搭載されていないものがある。また、補正処理機能を搭載している場合でも補正処理機能をオフにしていることがあり、補正処理機能がオン状態であるかを確認する。補正処理の具体例については後述する。
【0092】
ステップS11の判定処理において補正処理がない場合、CPU41は、搬送手段32に制御信号を出力し、用紙束に対する搬送動作を停止させる(ステップS12)。このとき、搬送動作停止の警告を表示部24に表示するとよい。これにより、重送時の紙詰まりを防止できるとともに、搬送動作を停止したことをユーザに知らせることができる。
【0093】
一方、ステップS11の判定処理において補正処理がある場合、CPU41は、搬送されている用紙束のずれ量が閾値を超えない、すなわち用紙束の搬送長を許容範囲内に収めるべく補正処理を行う。補正処理が終了後、ステップS8の処理に戻り、更に下流側の用紙検出センサによるサイズエラー判定を行う。補正処理として、例えば以下に記載するような方法が挙げられる。
【0094】
[補正処理例1…ずれ方向に応じたローラ駆動制御例]
用紙検出センサの検出内容をCPU41で解析することにより用紙束のずれ方向を判別することができる。ずれ方向とは、用紙束のうち最上部の用紙S1(図3参照)の先端が搬送方向に進んでいるのか、最下部の用紙Snの先端が搬送方向に進んでいるのかということである。CPU41は、解析結果に基づいて、用紙束の搬送方向におけるずれ量が閾値を超える場合、ずれ量算出に使用した用紙検出センサの下流側にある搬送手段32をずれ方向に応じて制御し、搬送速度(上下ローラの回転速度)を調整する。
【0095】
例えば、用紙束のうち最上部の用紙S1の先端が搬送方向に進んでいる場合、CPU41は、搬送手段32を制御して該当ローラ対の上側のローラの回転速度を遅くする(又は下側のローラの回転速度を速くする)。一方、用紙束のうち最下部の用紙Snの先端が搬送方向に進んでいる場合、CPU41は、搬送手段32を制御して該当ローラ対の下側のローラの回転速度を遅くする(又は上側のローラの回転速度を速くする)よう制御する。このように用紙束のずれ方向に応じて、適切なローラ対の上下のローラの回転速度を相対的に変化させることにより、用紙束の用紙のずれが抑えられ、該用紙束の搬送長を許容範囲内に収めることができる。
【0096】
なお、用紙束のずれ方向に一定の傾向が見られる場合には、ずれ量算出に使用した用紙検出センサの上流側に配置されたローラ対の一方のローラの回転速度を調整するようにしてもよい。あるいは、CPU41から中間搬送ユニットBのメイン回路9に制御信号を送り、後処理装置FSに用紙を送り込む中間搬送ユニットB(用紙整合装置)の排紙ローラR6の回転速度を調整するよう制御してもよい。
【0097】
[補正処理例2…下流側の上下ローラを一時停止させる例]
CPU41は、用紙束の搬送方向におけるずれ量が閾値を超える場合、ずれ量算出に使用した用紙検出センサの下流側のローラ対の上下のローラを一時停止させた後に再回転させる制御を行うようにしてもよい。用紙束を一時停止させた上下のローラに当接させることにより、用紙束の搬送方向の先端を揃えて整合することができる。それにより用紙束の用紙のずれがなくなり、該用紙束の搬送長を許容範囲内に収めることができる。このとき、当接している時間が長すぎると用紙束が詰まり、当該用紙束が湾曲したり、後続の用紙と干渉したりするので、ローラを一時停止させる時間は適切な時間に調整されているものとする。
【0098】
[補正処理例3…前後の用紙との間隔を広げる例]
CPU41は、用紙束の搬送方向におけるずれ量が閾値を超える場合、搬送手段32を制御して、当該用紙束とその前後で搬送されている用紙との搬送間隔を広げるよう調整するようにしてもよい。このように一の用紙束とその前後で搬送されている用紙束との搬送間隔を広げることにより、連続して搬送されている用紙束間で用紙が接触するなどの干渉が避けられる。
【0099】
例えば、先行して搬送された用紙とずれ量算出対象の用紙束との搬送間隔を広げる場合、ずれ量算出に使用した用紙検出センサの下流側のローラ対のローラの回転速度を遅くする。反対に、ずれ量算出対象の用紙束と後続の用紙との搬送間隔を広げる場合、ずれ量算出に使用した用紙検出センサの下流側のローラ対のローラの回転速度を速くする、または当該用紙検出センサの上流側のローラ対のローラの回転速度を遅くする。あるいは、CPU41から中間搬送ユニットBのメイン回路9に制御信号を送り、中間搬送ユニットBの用紙整合装置から重ねた状態で排出される用紙間の搬送間隔を広げる制御してもよい。
【0100】
[補正処理例4…重ねる枚数を調整する例]
CPU41は、用紙束の搬送方向におけるずれ量が閾値を超える場合、中間搬送ユニットBのメイン回路9に制御信号を送り、用紙整合装置で重ね合わせる用紙の枚数を調整するようにしてもよい。重ね合わせる用紙の枚数が減ることにより、用紙束のずれ量の上限値が抑えられる。
【0101】
このように、複数枚の用紙が重ねられている用紙束のずれ量を算出し、ずれ量が閾値より大きい、すなわち用紙束の搬送長が許容範囲を超える場合には、ずれ低減対策として補正処理を行うことにより、重送する際の搬送ミスを防ぐことができる。上述した補正処理を組み合わせて適用してもよいし、これらの補正処理のうちからユーザが選択した補正処理を実施するように構成してもよい。
【0102】
なお、上述した一実施の形態において、サイズエラー検知手段31(後処理装置FS)と用紙整合装置(中間搬送ユニットB)の機能を、画像形成装置に組み入れて一体構成としてもよい。あるいは、用紙整合装置(中間搬送ユニットB)の機能を、後処理装置FSに組み入れた構成としてもよい。
【0103】
また、上述した一実施の形態例におけるサイズエラー判定による駆動制御処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種の機能を実行するためのプログラムをインストールしたコンピュータにより、実行可能である。例えば汎用のコンピュータなどに所望のソフトウェアを構成するプログラムをインストールして実行させればよい。
【0104】
また、上述した実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記録媒体(メモリカード28Aに相当)を、システムあるいは装置に供給してもよい。また、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPU等の制御装置)が記録媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによっても、機能が実現されることは言うまでもない。
【0105】
この場合のプログラムコードを供給するための記録媒体としては、メモリカードの他、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、ROMなどを用いることができる。
【0106】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上述した実施の形態の機能が実現される。加えて、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが実際の処理の一部又は全部を行う。その処理によって上述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0107】
また、本明細書において、時系列的な処理を記述する処理ステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)をも含むものである。
【0108】
以上、本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の変形例、応用例を取り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0109】
31…サイズエラー検知手段、32…搬送手段、33,33A,33B,33C…用紙検出センサ、34…時計部、35…温度計、36…湿度計、41…CPU、44…半導体メモリ、51a,51b,52a,52b,53a,53b…ローラ、A…画像形成装置、B…中間搬送ユニット(用紙整合装置)、FS…後処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給紙部から給紙された用紙上に画像形成した後、当該画像形成された複数枚の用紙を重ねた用紙束を所定の経路に沿って搬送する搬送部と、
前記所定の経路上に配置され、前記所定の経路を搬送されている前記用紙束の搬送長を検出するセンサ部と、
前記センサ部で検出された前記搬送長と前記給紙部から給紙された用紙のサイズとを比較し、前記給紙された用紙のサイズに対する前記搬送長が予め設定された許容範囲内であるか否かの判定を行う判定部と、
を備える後処理装置。
【請求項2】
前記搬送長は、前記センサ部が前記用紙束の搬送方向の先端及び後端が通過したことを検出した結果に基づいて算出される
請求項1記載の後処理装置。
【請求項3】
前記搬送長は、前記センサ部の検出結果から得られる前記用紙束の通過時間と前記搬送部の搬送速度とに基づいて算出される
請求項1又は2に記載の後処理装置。
【請求項4】
前記予め設定された許容範囲は、
用紙の枚数、用紙種類、用紙の厚み、用紙のサイズ、温度、湿度のうち1以上の条件を反映して設定された許容範囲の値が登録されたテーブルとして備えられる
請求項1乃至3のいずれかに記載の後処理装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記用紙束を搬送しているときの前記条件に応じて前記テーブルに登録された許容範囲の値を読み出し、前記用紙束の搬送長が該読み出した許容範囲内であるか否かの判定を行う
請求項4に記載の後処理装置。
【請求項6】
前記用紙束の搬送長の履歴データを記憶する記憶部を備え、
前記判定部は、今回算出した前記用紙束の搬送長を前記記憶部に記憶させて前記履歴データを更新し、更新後の履歴データ基づいて新たな許容範囲を決定し、前記今回算出した用紙束の搬送長が前記新たな許容範囲内であるか否かの判定を行う
請求項1乃至5のいずれかに記載の後処理装置。
【請求項7】
前記判定部が、前記用紙束の搬送長が前記許容範囲内でないと判断した場合にサイズエラーであると判定する
請求項1乃至6のいずれかに記載の後処理装置。
【請求項8】
前記判定部の判定結果に応じて動作を制御する制御部をさらに有し、
前記制御部は、前記判定部が、サイズエラーであると判定した場合に、サイズエラーである旨を警告させる
請求項7に記載の後処理装置。
【請求項9】
前記判定部が、前記用紙束の搬送長が前記許容範囲を超えると判断した場合、前記制御部は、前記搬送長を前記許容範囲内に収めるべく前記搬送部の駆動を制御する
請求項1乃至8のいずれかに記載の後処理装置。
【請求項10】
前記判定部が、前記用紙束の搬送長が前記許容範囲を超えると判断した場合、前記判定部は、前記センサ部の検出結果を解析して前記用紙束のずれ方向を判別し、前記制御部は該ずれ方向に応じて前記搬送部の駆動を制御する
請求項1乃至9のいずれかに記載の後処理装置。
【請求項11】
前記判定部が、前記用紙束の搬送長が前記許容範囲を超えると判断した場合、前記制御部は、用紙束の搬送間隔を広げるように搬送部の駆動を制御する
請求項1乃至9のいずれかに記載の後処理装置。
【請求項12】
前記判定部が、前記用紙束の搬送長が前記許容範囲を超えると判断した場合、前記制御部は、搬送部の搬送ローラを停止するように搬送部の駆動を制御する
請求項1乃至9のいずれかに記載の後処理装置。
【請求項13】
前記判定部が、前記用紙束の搬送長が前記許容範囲を超えると判断した場合、前記制御部は、用紙束の重ねる枚数を減らすように制御する
請求項1乃至9のいずれかに記載の後処理装置。
【請求項14】
給紙部から給紙された用紙上に画像形成した後、当該画像形成された複数枚の用紙を重ねた用紙束を所定の経路に沿って搬送する、第1搬送部とその下流側に位置する第2搬送部とを有し、
第1搬送部またはその近傍に配置され、前記第1搬送部を搬送されている用紙束の搬送長を検出する第1センサ部と、
第2搬送部またはその近傍に配置され、前記第2搬送部を搬送されている用紙束の搬送長を検出する第2センサ部と、
第1センサ部で検出された前記用紙束の搬送長と前記給紙部から給紙された用紙のサイズとを比較し、前記給紙された用紙のサイズに対する許容範囲を決定し、そして第2センサ部で検出された前記用紙束の搬送長が前記決定された許容範囲内であるか否かの判定を行う判定部と、を備える
後処理装置。
【請求項15】
給紙部から給紙された用紙上に画像形成する画像形成装置と、該画像形成装置から供給される用紙に後処理する後処理装置とから構成され、
前記後処理装置は、
画像形成された複数枚の用紙を重ねた用紙束を所定の経路に沿って搬送する搬送部と、
前記所定の経路上に配置され、前記所定の経路を搬送されている前記用紙束の搬送長を検出するセンサ部と、
前記センサ部で検出された前記搬送長と前記給紙部から給紙された用紙のサイズとを比較し、前記給紙された用紙のサイズに対する前記搬送長が予め設定された許容範囲内であるか否かの判定を行う判定部と、を備える
画像形成システム。
【請求項16】
給紙部から給紙された用紙上に画像形成する画像形成装置と、該画像形成装置から供給される用紙に後処理する後処理装置とから構成され、
前記後処理装置は、
画像形成された複数枚の用紙を重ねた用紙束を所定の経路に沿って搬送する、第1搬送部及びその下流側に位置する第2搬送部と、
第1搬送部またはその近傍に配置され、前記第1搬送部を搬送されている用紙束の搬送長を検出する第1センサ部と、
第2搬送部またはその近傍に配置され、前記第2搬送部を搬送されている用紙束の搬送長を検出する第2センサ部と、
第1センサ部で検出された前記用紙束の搬送長と前記給紙部から給紙された用紙のサイズとを比較し、前記給紙された用紙のサイズに対する許容範囲を決定し、そして第2センサ部で検出された前記用紙束の搬送長が前記決定された許容範囲内であるか否かの判定を行う判定部と、を備える
画像形成システム。
【請求項17】
給紙部から給紙された用紙上に画像形成した後、所定の経路上に配置されたセンサ部により、前記所定の経路を搬送されている当該画像形成された複数枚の用紙を重ねた用紙束の搬送長を検出するステップと、
判定部により、前記センサ部で検出された前記搬送長と前記給紙部から給紙された用紙のサイズとを比較し、前記給紙された用紙のサイズに対する前記搬送長が予め設定された許容範囲内であるか否かの判定を行うステップと、
を有するサイズエラー検知方法。
【請求項18】
給紙部から給紙された用紙上に画像形成した後、第1搬送部により所定の経路を搬送されている当該画像形成された複数枚の用紙を重ねた用紙束の搬送長を、前記第1搬送部またはその近傍に配置された第1センサ部により検出するステップと、
第1センサ部の下流側に配置された第2搬送部を経て前記所定の経路を搬送されている用紙束の搬送長を、前記第2搬送部またはその近傍に配置された第2センサ部により検出するステップと、
判定部により、第1センサ部で検出された前記用紙束の搬送長と前記給紙部から給紙された用紙のサイズとを比較し、前記給紙された用紙のサイズに対する許容範囲を決定するステップと、
前記判定部により、第2センサ部で検出された前記用紙束の搬送長が前記決定された許容範囲内であるか否かの判定を行うステップと、
を有するサイズエラー検知方法。
【請求項19】
コンピュータを、
給紙部から給紙された用紙上に画像形成した後、所定の経路上に配置されたセンサ部を用いて、前記所定の経路を搬送されている当該画像形成された複数枚の用紙を重ねた用紙束の搬送長を検出する手段と、
前記センサ部を用いて検出された前記搬送長と前記給紙部から給紙された用紙のサイズとを比較し、前記給紙された用紙のサイズに対する前記搬送長が予め設定された許容範囲内であるか否かの判定を行う手段として
機能させるためのプログラム。
【請求項20】
コンピュータを、
給紙部から給紙された用紙上に画像形成した後、第1搬送部により所定の経路を搬送されている当該画像形成された複数枚の用紙を重ねた用紙束の搬送長を、前記第1搬送部またはその近傍に配置された第1センサ部を用いて検出する手段と、
第1センサ部の下流側に配置された第2搬送部を経て前記所定の経路を搬送されている用紙束の搬送長を、前記第2搬送部またはその近傍に配置された第2センサ部を用いて検出する手段と、
第1センサ部で検出された前記用紙束の搬送長と前記給紙部から給紙された用紙のサイズとを比較し、前記給紙された用紙のサイズに対する許容範囲を決定する手段と、
第2センサ部で検出された前記用紙束の搬送長が前記決定された許容範囲内であるか否かの判定を行う手段として
機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−201488(P2012−201488A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69990(P2011−69990)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】