説明

微小球転写接着剤の製造方法

再接着式の転写接着剤の製造方法を提供する。本方法は、(a)対向する第1及び第2の表面を有する剥離ライナーであって、第1の表面がテープ剥離試験に基づいて測定した剥離値が第2の表面よりも少なくとも3.9g/cm(10g/インチ)低い剥離ライナーを提供する工程と、(b)微小球接着剤及びバインダー接着剤を含む接着剤組成物を提供する工程と、(c)微小球がバインダー接着剤から突出するように剥離ライナーの第1の表面に接着剤組成物をコーティングする工程と、(d)接着剤組成物を乾燥させて微小球転写接着剤を得る工程と、(e)微小球転写接着剤が内側に巻かれ、ライナーの第2の表面が微小球と接触するように剥離ライナーを巻回する工程と、(f)ライナーの第2の表面に圧力を作用させる工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差異式剥離ライナーに接着剤組成物をコーティングした微小球転写接着剤の製造方法に関する。詳細には本発明は、標的基材にラミネートされると転写接着剤中の微小球が露出するような転写接着剤を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、各種の接着剤転写テープが市販されている。典型的に、接着剤転写テープは、差異式剥離ライナー、すなわちライナーの両方の主面が剥離コーティングを有するような両面剥離ライナーに接着剤組成物をコーティングすることによって製造される。接着剤は、ライナーの剥離値がより高い方の面にコーティングされる。接着剤組成物が乾燥した後、接着剤をコーティングした剥離ライナーをロールに巻くことによって転写接着剤が得られる。接着剤転写テープを巻きほどくと、接着剤はライナーの剥離値がより高い方の面に残る。
【0003】
使用時には転写接着剤を巻きほどいて、紙、フィルム、及びフォーム等の裏材にラミネートする。転写接着剤は、剥離ライナーよりも裏材に対して高い接着性を有するため、剥離ライナーから裏材に転写される。転写接着剤は、感熱性、感湿性、又は感溶媒性の裏材に適用することができるという利点を提供する。こうした感受性のため、接着剤組成物を上記に述べたような感受性を有するこうした裏材に直接適用することはできない。転写接着剤は、接着剤をコーティングする術を有さない転換作業者(converters)及びラミネート作業者(laminators)が裏材に適用することもできる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
微小球接着剤を含む転写接着剤は、フィルム形成(微小球を含まない)接着剤と比較した場合に特定の問題点がある。剥離ライナーにコーティングされたフィルム形成接着剤は、露出接着剤面と、接触接着剤面(ライナーに接触する面)とで基本的に同じ組成及び形態を有する。微小球接着剤とバインダー接着剤との組み合わせを有する転写接着剤は、剥離ライナーにコーティングされる際に、微小球がバインダー接着剤から突出するように接着剤組成物が典型的に配向された独特の形態を有する。換言すれば、バインダー接着剤は、接着剤組成物がコーティングされた表面に蓄積する傾向を有する。この段階で、紙、発泡材等の標的基材が転写接着剤にラミネートされると、バインダー接着剤と比較してより再接着しやすい接着剤である微小球接着剤が基材と接触する。得られた製品では、より永久的なバインダー接着剤が露出し、この製品を壁面等のディスプレイ面にラミネートすると、剥離が困難となるか、又は剥離することができても、バインダー接着剤がディスプレイ面に残留する場合がある。これらはいずれも望ましくない性質である。したがって、一旦、転写接着剤にラミネートされたら、ディスプレイ面にラミネートするうえでより再接着しやすい微小球が露出するような製品が求められている。本発明は、転写接着剤を標的基材にラミネートする際に、微小球が露出したままとなるような方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、本発明は再接着式の転写接着剤の製造方法に関する。本方法は、(a)対向する第1及び第2の表面を有する剥離ライナーであって、第1の表面がテープ剥離試験に基づいて測定した剥離値が、第2の表面よりも少なくとも3.9g/cm(10g/インチ)低い剥離ライナーを提供する工程と、(b)微小球接着剤及びバインダー接着剤を含む接着剤組成物を提供する工程と、(c)微小球がバインダー接着剤から突出するように剥離ライナーの第1の表面に接着剤組成物をコーティングする工程と、(d)接着剤組成物を乾燥させて微小球転写接着剤を得る工程と、(e)微小球転写接着剤が内側に巻かれ、ライナーの第2の表面が微小球と接触するように剥離ライナーを巻回する工程と、(f)ライナーの第2の表面に圧力を作用させる工程と、を含む。
【0006】
別の態様において前の段落で述べた方法は更に、転写接着剤のバインダーが主として露出するように、巻回された微小球転写接着剤を巻きほどく工程と、バインダー接着剤が標的基材の第1の面に接触し、かつ、転写接着剤の微小球が露出するように微小球転写接着剤を標的基材の第1の面にラミネートする工程と、を含む。
【0007】
更なる別の態様において本発明は、(a)対向する第1及び第2の表面を有する剥離ライナーであって、第1の表面がテープ剥離試験に基づいて測定した剥離値が第2の表面よりも少なくとも3.9g/cm(10g/インチ)低い剥離ライナーを提供する工程と、(b)微小球接着剤及びバインダー接着剤を含む接着剤組成物を提供する工程と、(c)微小球がバインダー接着剤から突出するように剥離ライナーの第1の表面に接着剤組成物をコーティングする工程と、(d)接着剤組成物を乾燥させて微小球転写接着剤を得る工程と、(e)微小球転写接着剤が内側に巻かれ、ライナーの第2の表面が微小球と接触するように剥離ライナーを巻回する工程と、を含むプロセスによって製造される再接着式転写接着剤に関する。巻回する工程は、ライナーに張力が作用するようにして行われる。
【0008】
更なる別の態様において、本発明は、(a)対向する第1及び第2の表面を有する剥離ライナーであって、第1の表面がテープ剥離試験に基づいて測定した剥離値が第2の表面よりも少なくとも3.9g/cm(10g/インチ)低い剥離ライナーと、(b)微小球接着剤の大部分がライナーの第2の表面に接触し、かつ、バインダー接着剤の大部分がバインダーの第1の表面に接触するようにして、バインダー接着剤中に部分的に包埋された微小球接着剤を含む接着剤と、を含む転写接着剤のロールに関する。ロールを巻きほどくと、微小球接着剤が剥離ライナーの第2の表面に接着してバインダー接着剤が露出する。
【0009】
本文書では以下の意味で用語を使用する。
【0010】
「微小球接着剤」とは、本質的に粘着性であり、弾性を有し、溶媒分散性、溶媒不溶性の、通常直径200μm未満の球状のアクリレートコポリマーを一般的に意味する。
【0011】
「再接着式接着剤」とは、所定の表面に対して何度も接着及び剥離することが可能な接着剤を一般的に意味する。
【0012】
「永久接着剤」とは、表面への適用時に固い結合を形成することによって、永久接着剤を含む物品を剥離する際に接着剤が表面に残留したり、製品が破損したりするような接着剤を一般的に意味する。
【0013】
「感圧接着剤」とは、乾燥状態(無溶媒状態)で室温において強力かつ永久的な粘着性を有し、各種の異なる表面に固く接着する材料を一般的に意味する。
【0014】
「粘着」及び「粘着性の」とは、手の圧力等の極めて小さい圧力下で固い表面に接触させると、表面に接着する材料の性質を一般的に意味する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本発明を以下の図面を参照しながら説明する。
【図1】例示的な差異式剥離ライナーの断面図。
【図2】接着剤組成物でコーティングされた図1のライナーの断面図。
【図3】ロールに巻回された、図2の接着剤でコーティングされた剥離ライナーの断面図。
【図4】ライナーの一方の表面からライナーの別の表面に接着剤組成物が転写される様子を概略的に示した断面図。
【図5】標的基材にラミネートされた図4の転写接着剤の断面図。
【図6】図1〜6に示した方法によって製造することが可能な再接着式の接着剤物品の例示的一実施形態。
【図7】図1〜6に示した方法によって製造することが可能な再接着式の接着剤物品の別の例示的実施形態。
【図8】微小球転写接着剤の概略的、例示的な製造プロセス。
【0016】
これらの図は理想化されており、縮尺は正確ではなく、あくまで説明を目的としたものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、第1の表面10a及び対向する第2の表面10bを有する、本発明で使用することが可能な例示的剥離ライナー10を示したものである。剥離ライナーの第1の表面は、下記実施例の項で説明するテープ剥離試験方法に基づいて測定した剥離値が第2の表面よりも低い。一実施形態では、第1の表面が剥離コーティングを有するのに対して、第2の表面は剥離コーティングを有さない。別の実施形態では、第1の表面は、第2の表面の剥離値よりも少なくとも3.9g/cm(10g/インチ)低い剥離値を有する。更に別の実施形態では、第1の表面は、第2の表面の剥離値よりも少なくとも7.8g/cm(20g/インチ)低い剥離値を有する。第1及び/又は第2の表面に使用することのできる好適な剥離コーティングとしては、これらに限定されるものでないが、シリコーンポリマー、フルオロポリマー、ポリウレタン、ポリアクリレート、これらのコポリマー及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0018】
図2は、接着剤組成物が剥離ライナーの第1の表面に塗布又はコーティングされ、乾燥されることによって微小球転写接着剤20を形成している状態を示したものである。微小球転写接着剤は、バインダー接着剤14中に分散された微小球接着剤12を含む。微小球接着剤は、バインダー接着剤から突出し、その一部はバインダー中に包埋されている。微小球接着剤は、微小球接着剤がバインダー接着剤に完全に包埋されない、すなわち完全に覆われない限り、微小球の平均径に基づいて測定される任意の量のバインダー接着剤中に包埋されてもよい。一実施形態では、バインダー接着剤は、微小球の平均径の約1/2の厚さを有する。一部のプロセスでは、バインダー接着剤は、剥離ライナーの第1の表面上に蓄積して、微小球が剥離ライナーの第1の表面と直接接触しないように微小球の下側の半球部分を包囲する。一実施形態では、所定のディスプレイ面に対して、転写接着剤がディスプレイ面に接着された場合に、バインダーは微小球接着剤よりも高い粘着値を示す。別の実施形態では、微小球接着剤は再接着式感圧接着剤であり、バインダーは永久感圧接着剤である。
【0019】
好適な微小球再接着式感圧接着剤としては、米国特許第3,691,140号(シルバー(Silver))、同第3,857,731号(メリル(Merrill)ら)、同第4,166,152号(ベーカー(Baker)ら)、同第4,495,318号(ハワード(Howard))、同第5,045,569号(デルガド(Delgado))、同第5,073,457号(ブラックウェル(Blackwell))、及び同第5,571,617号(クープライダー(Cooprider)ら)、同第5,663,241号(タカマツ(Takamatsu)ら)、同第5,714,237号(クープライダーら)、米国再発行特許第37,563号(クープライダーら)、米国特許第5,756,625号(クランドール(Crandall)ら)、並びに同第5,824,748号(ケスティ(Kesti)ら)に開示されるものが挙げられる。これらの参考文献の全容は、参照することにより本書に含まれる。
【0020】
微小球接着剤は、典型的には、バインダー接着剤中にブレンド又は分散される。微小球接着剤は、化学組成が異なるか又はサイズが異なる個別の微小球接着剤のブレンドであってもよい。同様に、バインダー接着剤は、化学組成が異なる2つ以上の永久接着剤のブレンドであってもよい。微小球接着剤及びバインダー接着剤は、互いに相溶性のものである必要がある。これらは同じ溶媒に分散するか、複数の混和性の溶媒に分散することが可能である。一実施形態では、微小球接着剤は水ベースの接着剤であり、バインダー接着剤も水ベースの接着剤である。別の実施形態では、微小球接着剤を所定の溶媒に分散し、バインダー接着剤を微小球接着剤の溶媒と混和する溶媒に分散する。
【0021】
好適なバインダーとしては、アクリル性感圧接着剤が挙げられる。典型的には、アクリル性感圧接着剤は、少なくとも1つのアルキルアクリレートモノマーと、少なくとも1つの他の重合性モノマーから構成される。
【0022】
アルキルアクリレートモノマーのアルキル基は、4個〜約14個の炭素原子、好ましくは4個〜約10個の炭素原子、より好ましくは4個〜約8個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖状のアルキルラジカルである。この種のモノマーの例としては、これらに限定されるものではないが、イソオクチルアクリレート、4−メチル−2−ペンチルアクリレート、2−メチルブチルアクリレート、イソアミルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−デシルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソデシルアクリレ−ト、n−ラウリルアクリレート等が挙げられるが、これらは単独で又は混合物として用いることができる。
【0023】
好適な他の重合性モノマーとしては、これらに限定されるものではないが、アクリル酸、メタクリル酸、スチレンのアルキルエステル、不飽和モノカルボン酸のアリルエステル、ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルピロリドン、アクリル酸及びメタクリル酸の水酸基含有アルキルエステル、モノエチレン性不飽和ジカルボン酸、エチレン性不飽和モノカルボン酸及びポリカルボン酸のジアルキルエステル、並びに無水物、ニトリル、アクリルアミド及びN−置換アクリルアミドから選択されるものが挙げられる。
【0024】
接着剤組成物は、界面活性剤、粘度調整剤、共溶媒、消泡剤、充填剤、中和剤、安定剤、粘着剤等の当該技術分野では周知の他の添加剤を含んでもよい。これらの添加剤の目的は、剥離ライナーにコーティングすることが可能な安定したコーティング組成物を提供することにある。
【0025】
接着剤組成物は、これらに限定されるものではないが、ノッチバーコーティング、ファウンテンロールコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティング、及びグラビアコーティング等の幾つのコーティング法を用いても剥離ライナーにコーティングすることができる。接着剤組成物が無溶媒又はホットメルトである場合には、一般に剥離ライナー上に押出すかキャストする。
【0026】
使用する乾燥法は、接着剤組成物に応じて変わる。接着剤が水又は溶媒ベースのものである場合、典型的には、乾燥オーブンが使用される。無溶媒又はホットメルト接着剤組成物の場合では、光照射、電子線、又は他の好適な手段が使用される。
【0027】
図3は、ロール60を形成する、コア16に巻回された図2の接着剤コーティングされた剥離ライナーを示したものである。巻回方向とは、転写接着剤が内側に巻き込まれることであり、それによって、ライナーの第2の表面によって保護される。コアに隣接する転写接着剤の最初の層では、バインダーから突出する微小球接着剤粒子が、コア表面と直接接触する。これに続くロールの層では、突出する微小球が、剥離ライナーの第2の表面と接触するようにライナーが巻回されている。巻回工程とほぼ同時に転写接着剤に圧力を作用させることで、ライナーの第1の表面から第2の表面に微小球転写接着剤を転写することができる。例示的な一方法では、表面が剥離ライナーの第2の表面と直接接触し得るパックロールを用いて巻回時に圧力を作用させる。ライナーの第1の表面から第2の表面への微小球転写接着剤の完全な転写は、速やかに(ほぼ瞬時又は数時間以内の短時間で)行われる場合もあり、一定時間(数日以内)を要する場合もある。
【0028】
図4はロールに巻回された、接着剤コーティングされた剥離ライナー10の一部を示したものである。ライナー10’は同じ接着剤コーティングされたライナーであるが、ライナー10からウェブの下流側のライナーを示している。理解を容易にするため、ライナー10’に付随する転写接着剤は省略してある。典型的には、ライナー10に圧力を作用させると、バインダー14と第1の表面10aとの間の接着力が、微小球接着剤12とライナー10’の第2の表面10b’との間の接着力よりも低いために、転写接着剤20は、ライナー10の第1の表面10aからライナー10’の第2の表面10b’に転写される。この転写プロセスにおいて、微小球接着剤12は、ウェブの下流側のライナー10’の第2の表面と典型的には接触することになる。ロールを巻きほどくと、転写接着剤20はライナーの第2の表面10b’に接着し、今度はバインダー14が露出するが、微小球はある程度埋まった状態でライナーの第2の表面と接触した状態として説明することができる。
【0029】
図5は、図4の転写された接着剤が巻きほどかれて、標的基材30にラミネートされた状態を示したものである。バインダー14が露出している(図4参照)ため、バインダー14が標的基材の第1の面30aと接触することになる。本発明の特定の利点の1つは、標的基材として、嵩高で、感熱性、感湿性又は感溶媒性の、接着剤組成物を直接コーティングするのに適さない材料を用いることができる点にある。例示的な標的基材としては、これらに限定されるものではないが、発泡材、紙、ポリマーフィルムが挙げられる。本発明の別の利点は、微小球接着剤転写テープによって、使用者がライナーを剥離してラミネートされた製品を所望の表面に適用するまでの間、あらゆる表面との接触から接着剤を更に保護する、ラミネート製品用の剥離ライナー10’が提供される点にある。剥離ライナー10’の一部は剥離されている。
【0030】
図6は、剥離ライナー10’が剥離された、図5で述べた処理工程後のテープ60を示した図である。
【0031】
図7は、図5で述べた処理工程後の両面テープ70を示した図であり、転写接着剤20(図4)が基材の両面30a及び30bにラミネートされている。
【0032】
図8は、微小球転写接着剤の例示的一製造プロセスを、ほぼ連続したプロセスとして示した概略図である。二重剥離ライナー100がライナーの第1の面100aが露出するようにジャンボ110から巻きほどかれる。ライナーはコーティングステーション111に送られ、ここで装置によって接着剤組成物が剥離ライナーの第1の面にコーティングされる。この特定の方法では、コーティングステーションは間にニップが形成された2個のロール112及び114を備える。下側ロール114は、接着剤組成物118が入ったパンに部分的に浸漬されている。次いで接着剤をコーティングされたライナーは、乾燥ステーション119に送られ、接着剤組成物が乾燥されて、剥離ライナーの第1の面上に微小球転写接着剤が形成される。この特定の方法では、3個の乾燥オーブン119a、11b及び119cが示されている。乾燥ステーションを出ると、ライナーは転写接着剤の露出した面が剥離ライナーの第2の面と接触するようにして巻回される。所望により、巻回時にパックロール122を使用して転写接着剤に圧力を作用させ、ライナーの第1の表面から転写接着剤を剥離させてライナーの第2の表面に転写させる。所望により、この後の処理工程において、各種の装置を使用して、この時点でバインダーが露出した接着剤コーティングされたライナーを巻きほどいた後、標的基材に転写接着剤をラミネートすることもできる。
【実施例】
【0033】
剥離ライナーのテープ剥離試験
剥離ライナーの剥離値を測定するため、ミネソタ州セントポール所在のスリーエム(3M Company)社より販売される幅1インチ(2.54cm)の製品番号810のスコッチ(Scotch)(登録商標)マジック(Magic)(商標)テープを剥離ライナーの一方の面にラミネートした。この810テープを、約60.9cm/分(24インチ/分)の速度で2.04kg(4.5ポンド)のローラーを用い、4回通過させることによって手で圧延した。テープをラミネートしたライナーを、相対湿度約50%、温度約22.7℃(73°F)の定温定湿室内で3日間静置した。この後、810テープをインストロン引張り試験機にかけ、30.48cm/分(12インチ/分)の機械引張り速度にて90°の角度で剥離ライナーから引き剥がした。剥離ライナーから810テープを引き剥がすのに要した平均剥離力をg/cm(g/インチ)で記録した。剥離力が低いほど、810テープと剥離ライナーとを容易に剥離することできる。
【0034】
(実施例1)
以下のようにして本発明の微小球転写接着剤を調製した。
【0035】
欧州特許公報第0 698 070 B1号の実施例1の記載に従って、接着剤組成物を調製した。この特定の接着剤組成物は、微小球接着剤と接着剤バインダーとのブレンドを含むものであった。接着剤組成物は、ヘプタン及びイソプロパノールに分散させた20%固形分を有していた。
【0036】
この接着剤組成物をノッチバーコーティングによって、幅15.24cm(6インチ)の実験用コーターにコーティングした。剥離ライナー上のバーの隙間を0.1mm(4.5ミル)に設定した。接着剤を、ミネソタ州セントポール所在のスリーエム(3M Company)社より販売される3M(商標)Secondary Liner 4996の易剥離面に塗布した。この特定のライナーは、第1の表面(易剥離面)にシリコーンコーティングを、反対側の第2の表面(難剥離面)にプリント式コーティングを施した、0.0038cm(0.0015インチ)のポリエステルフィルム製の差異式剥離ライナーである。接着剤組成物をライナーの易剥離面に、4.5m/分(15フィート/分)のコーティング速度でコーティングした。接着剤を73.8℃(165°F)、107.2℃(225°F)及び107.2℃(225°F)に設定した3個の連続したオーブン領域中で乾燥させた。乾燥後、この段階で転写接着剤を有する接着剤コーティングした剥離ライナーを、コーターの巻回張力によってロールの露出した第2の面(難剥離面)に圧力を作用させながらロールに巻回した。1週間後、ロールを巻きほどくと、転写接着剤は剥離ライナーの第1の易剥離面から第2の難剥離面に転写された。テープ剥離試験に従って4996ライナーの第1及び第2の面の剥離値を測定したところ、それぞれ3.5g/cm(9.0g/インチ)及び34g/cm(86.5g/インチ)であり、その差は30.5g/cm(77.5g/インチ)であった。
【0037】
(実施例2)
イリノイ州ウィローブルック(Willowbrook)所在のロパレックス(Loparex Inc.)社より販売される、Loparex 7300/7380 Loparex差異式剥離ライナーを差異式剥離ライナーとして使用した以外は、実施例1に従って微小球転写接着剤を調製した。この特定のライナーは、両面にシリコーン処理を施し、ライナーの第1の表面(易剥離面)の剥離値が、反対側の第2の表面(難剥離面)の剥離値よりも低い、0.0076cm(0.003インチ)のポリエステルフィルムである。1週間後、接着剤はライナーの難剥離面に転写された。7300/7380ライナーの第1及び第2の表面の剥離値を測定したところ、それぞれ3.5g/cm(8.9g/インチ)及び35.6g/cm(90.5g/インチ)であり、その差は35.6g/cm(90.5g/インチ)であった。
【0038】
(実施例3)
イリノイ州ウィローブルック(Willowbrook)所在のロパレックス(Loparex Inc.)社より販売される、Loparex 7300/7360 Loparex差異式剥離ライナーを差異式剥離ライナーとして使用した以外は、実施例1に従って微小球転写接着剤を調製した。この特定のライナーは、両面にシリコーン処理を施し、ライナーの第1の表面(易剥離面)の剥離値が反対側の第2の表面(難剥離面)の剥離値よりも低い、0.005cm(0.002インチ)のポリエステルフィルムである。1週間後、接着剤の大部分がライナーの難剥離面に転写された。7300/7360ライナーの第1及び第2の表面の剥離値を測定したところ、それぞれ2.1g/cm(5.4g/インチ)及び8.8g/cm(22.6g/インチ)であり、その差は6.7g/cm(17.2g/インチ)であった。
【0039】
(比較実施例1)
イリノイ州ウィローブルック(Willowbrook)所在のロパレックス(Loparex Inc.)社より販売される、Loparex 4318A/4000D Loparex差異式剥離ライナーを差異式剥離ライナーとして使用した以外は、実施例1に従って微小球転写接着剤を調製した。この特定のライナーは、両面にシリコーン処理を施し、ライナーの第1の表面(易剥離面)の剥離値が反対側の第2の表面(難剥離面)の剥離値よりも低い、39.9kg(88ポンド)のポリコートしたクラフト紙である。接着剤は、剥離ライナーの難剥離面に転写されなかった。4318A/4000Dライナーの第1及び第2の表面の剥離値を測定したところ、それぞれ4.3g/cm(11.0g/インチ)及び5.6g/cm(14.3g/インチ)であり、その差は1.3g/cm(3.3g/インチ)であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再接着式の転写接着剤の製造方法であって、
対向する第1及び第2の表面を有する剥離ライナーであり、前記第1の表面がテープ剥離試験に基づいて測定した剥離値が前記第2の表面よりも少なくとも3.9g/cm(10g/インチ)低い剥離ライナーを提供する工程と、
微小球接着剤及びバインダー接着剤を含む接着剤組成物を提供する工程と、
前記微小球がバインダー接着剤から突出するように前記剥離ライナーの前記第1の表面に前記接着剤組成物をコーティングする工程と、
前記接着剤組成物を乾燥させて微小球転写接着剤を得る工程と、
前記微小球転写接着剤が内側に巻かれ、前記ライナーの前記第2の表面が前記微小球と接触するように前記剥離ライナーを巻回する工程と、
前記ライナーの前記第2の表面に圧力を作用させる工程と、を含む、方法。
【請求項2】
前記転写接着剤の前記バインダーが主として露出するように、前記巻回された微小球転写接着剤を巻きほどく工程と、
前記バインダー接着剤が標的基材の第1の面に接触し、かつ、前記転写接着剤の前記微小球が露出するように前記微小球転写接着剤を前記標的基材の前記第1の面にラミネートする工程と、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的基材が発泡材、紙、及びポリマーフィルムからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ラミネートされた微小球転写接着剤を含有する前記標的基材を転換して、シート、タブ、及びテープのロールからなる群から選択される品目を製造する工程を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ラミネート工程において前記標的基材及び前記微小球転写接着剤を熱及び圧力に暴露する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記標的基材が前記第1の面と対向する第2の面を備え、前記標的基材の前記第2の面に第2の接着剤をラミネートする第2のラミネート工程を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の接着剤が、再接着式感圧接着剤及び永久感圧接着剤からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記微小球接着剤が再接着式感圧接着剤であり、前記バインダー接着剤が永久感圧接着剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
所定のディスプレイ面に対して、前記転写接着剤が前記ディスプレイ面に接着された場合に前記バインダー接着剤が前記微小球接着剤よりも高い粘着値を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記バインダー接着剤が前記微小球接着剤の平均径の約1/2の厚さを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記微小球接着剤及び前記バインダー接着剤の少なくとも1つがポリアクリレート誘導体である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記巻回する工程において、前記微小球転写接着剤ライナーが張力の作用下で巻回され、前記圧力を作用させる工程において、パックロールの表面が前記剥離ライナーの前記第2の表面と接触する前記パックロールによって圧力が加えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記接着剤組成物中の前記微小球接着剤及び前記バインダー接着剤の少なくとも1つが水ベース又は溶媒ベースである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記剥離ライナーは前記第1の表面に化学コーティングを有するが前記第2の表面には剥離コーティングを有さず、前記剥離コーティングが、シリコーンポリマー、フルオロポリマー、ポリウレタン、ポリアクリレート、これらのコポリマー及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記剥離ライナーが前記第1及び第2の表面の少なくとも1つに剥離コーティングを有し、前記剥離コーティングが、シリコーンポリマー、フルオロポリマー、ポリウレタン、ポリアクリレート、これらのコポリマー及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記剥離ライナーの前記第1の表面が、テープ剥離試験を用いて測定した剥離値が、前記第2の表面よりも少なくとも7.8g/cm(20g/インチ)低い、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記バインダー接着剤が前記剥離ライナーの前記第1の表面に蓄積する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記巻回する工程及び前記圧力を作用させる工程がほぼ同時に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記微小球接着剤が2つ以上の微小球接着剤のブレンドである、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記バインダー接着剤が2つ以上の永久感圧接着剤のブレンドである、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
対向する第1及び第2の表面を有する剥離ライナーであって、前記第1の表面がテープ剥離試験に基づいて測定した剥離値が前記第2の表面よりも少なくとも3.9g/cm(10g/インチ)低い剥離ライナーを提供する工程と、
微小球接着剤及びバインダー接着剤を含む接着剤組成物を提供する工程と、
前記微小球が前記バインダー接着剤から突出するように前記剥離ライナーの前記第1の表面に前記接着剤組成物をコーティングする工程と、
前記接着剤組成物を乾燥させて微小球転写接着剤を得る工程と、
前記微小球転写接着剤が内側に巻かれ、前記ライナーの前記第2の表面が前記微小球と接触するように前記剥離ライナーを張力の作用下で巻回する工程と、を含むプロセスによって製造される、転写接着剤。
【請求項22】
対向する第1及び第2の表面を有する剥離ライナーであって、前記第1の表面がテープ剥離試験に基づいて測定した剥離値が前記第2の表面よりも少なくとも3.9g/cm(10g/インチ)低い剥離ライナーと、
前記微小球接着剤の大部分が前記ライナーの前記第2の表面に接触し、かつ、前記バインダー接着剤の大部分が前記バインダーの前記第1の表面に接触するようにしてバインダー接着剤中に部分的に包埋された微小球接着剤を含む接着剤と、を含む、転写接着剤のロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−510354(P2010−510354A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537280(P2009−537280)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/084109
【国際公開番号】WO2008/063906
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】