説明

微生物検査装置及び検査方法

【課題】
蛍光フローサイトメトリー法で生菌数計測が正しく行われていることを確認可能な微生物検査装置及び検査方法を提供する。
【解決手段】
検出液の流動状態または光学検出の位置状態について生菌数計測中も各々のセンサーで情報を得て計測状態を把握する。例えば、検出液の流動状態として流量センサー(差圧計)から情報と光検出器からの菌数頻度分布の情報を得て正常な流動、異常な流動(流体の漏れ、流路の詰まり等の異常の原因)を認識し、光学検出の位置状態として光検出器から情報を得て正常な検出位置、異常な検出位置(位置ずれ)を認識し、流動状態と位置状態の情報から計測状態(正常か異常か、異常な場合はその原因)を把握できるようする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微生物検査装置及び検査方法にかかり、特に、微生物検査チップを用い、蛍光サイトメトリー法により生菌数を計測する微生物検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生菌数計測を行う微生物検査装置として、蛍光フローサイトメトリー法を用いたものがある。蛍光フローサイトメトリー法は、蛍光色素によって染色した検体を含む流体が、小さな径の流路を通過するとき、検体を一個ずつ直接計測する粒子計測方法である。
【0003】
蛍光フローサイトメトリー法を用いた微生物検査装置では、低価格化を実現し、洗浄の手間を省略するために、検体の個数の測定を行う流路部分(検出流路)をディスポーザブルなチップ(検査チップ)によって形成することが提案されている。検査チップを用いた微生物検査装置では、検査チップを検査装置本体に装着する毎に、検出流路の位置合わせ、即ち、励起光と検出器の焦点に検査チップの検出流路の位置を合わせる作業を行うことになる。このような微生物検査装置としては、例えば、特許文献1や2に記載のものがある。
【0004】
尚、蛍光フローサイトメトリー法ではないが、生化学反応カートリッジ内の微細な流路の詰まりなどを検知する技術として、特許文献3に記載のものがある。特許文献3では、流路の検査を、生化学反応の製造時の出荷前検査として行うことの他に、生化学反応カートリッジを用いて生化学反応を行う際の直前の検査として行うことも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−256278号公報
【特許文献2】特開2009−281753号公報
【特許文献3】特開2008−139096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蛍光フローサイトメトリー法で生菌数計測を不具合無く行うためには、検出流路が光学検出に適した場所に位置し、かつ、検体液が検出流路内を流動していることが不可欠である。特に、検出流路を含んだ検査チップを着脱して計測する微生物検査装置の場合は、検査チップを検査装置に装着する毎に検査チップ(検出流路)の位置状態を認識して計測状態を把握することが重要となる。
【0007】
特許文献1や2には、分析チップ(検査チップ)を検査装置に取り付けた際に高精度に位置合わせする手法が記載されている。しかし、計測開始後には、分析チップと光学検出装置との位置状態を継続して把握することはなされていない。
【0008】
また、特許文献3では、生化学反応カートリッジを用いて生化学反応を行う際の直前の生化学反応カートリッジの検査として流路の検査を行うことが記載されているが、生化学反応を行っている際は流動状態を把握することはなされていない。
【0009】
即ち、特許文献1などに記載されているように、従来、微生物検査装置などでは、検査などの開始前に位置状態や流路の状態が正常であることを認識するにとどまっている。即ち、従来は、検査などを開始した後は位置状態や流動状態を継続して把握するようにはなっていない。
【0010】
しかし、例え、検査開始前に高精度に位置合わせ作業などをしていても、何等かの原因で計測中の位置状態や流動状態が正常な状態にない場合があり得る。生菌数がある程度検出されていれば、検出流路が正常な位置にあり、また、流動状態も正常であると推測できる。しかし、生菌が検出されていない(または、生菌数が少ししか計測されていない)ときに、それが真に生菌(微生物)がない(または、少ない)ことに起因するものか、或いは、検査チップを含む微生物検査装置側に何等かの問題があることに起因するものか判別することは、微生物検査装置における生菌数計測の結果をより高信頼性のものとするために重要であると言える。
【0011】
本発明の目的は、蛍光フローサイトメトリー法で生菌数計測が正しく行われていることを確認可能な微生物検査装置及び検査方法を提供することである。
【0012】
また、本発明の他の目的は、蛍光フローサイトメトリー法による生菌数計測において計測が正しく行われていないと判断されるときに、その原因を推定することが可能な微生物検査装置及び検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、検出液の流動状態または光学検出の位置状態について生菌数計測中も各々のセンサー(検出器)で情報を得て計測状態を把握するようにしたものである。
【0014】
例えば、本発明では、検出液の流動状態として流量センサー(差圧計)から情報と菌数頻度分布の情報を得て正常な流動、異常な流動(流体の漏れ、流路の詰まり等の異常の原因)を認識し、光学検出の位置状態として光検出器から情報を得て正常な検出位置、異常な検出位置(位置ずれ)を認識し、流動状態と位置状態の情報から計測状態(正常か異常か、異常な場合はその原因)を把握できるようしたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、蛍光フローサイトメトリー法で生菌数計測が正しく行われていることが確認可能となる。
【0016】
また、本発明によれば、蛍光フローサイトメトリー法による生菌数計測において計測が正しく行われていないと判断されるときに、その原因を推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例に係る微生物検査装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す微生物検査装置における微生物検査チップの概略構成を示す図である。
【図3A】図1に示す微生物検査装置の微生物検出チップにおける本体と微生物検出部の接合部の断面図である。
【図3B】図3Aに示す微生物検出部の分解構造を示す斜視図である。
【図4】図1に示す微生物検査装置の圧力供給装置の他の構成例を示す図である。
【図5】図1に示す微生物検査装置を用いた微生物検査方法の一実施例を説明する図である。
【図6】図1に示す微生物検査装置において計測状態が正常の場合の流動状態と位置状態を示す図である。
【図7】図1に示す微生物検査装置において計測状態が位置ずれしている場合の流動状態と位置状態を示す図である。
【図8】図1に示す微生物検査装置において計測状態が流体の漏れが発生している場合の流動状態と位置状態を示す図である。
【図9】図1に示す微生物検査装置において計測状態が位置ずれと流体の漏れが発生している場合の流動状態と位置状態を示す図である。
【図10】図1に示す微生物検査装置において計測状態が流路の詰まりが発生している場合の流動状態と位置状態を示す図である。
【図11A】計測状態が正常の場合の菌数ヒストグラムについて説明を示す図である。
【図11B】計測状態が詰まりの場合の菌数ヒストグラムについて説明を示す図である。
【図12】流動状態及び位置状態と計測状態(正常か異常か、異常な場合はその原因)との関係について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、後述する実施の形態は一例であって、各実施の形態同士の組み合わせ、公知又は周知の技術との組み合わせや置換による他の態様も可能である。
【0019】
また、本明細書において、微生物検査装置及び検査方法とは、細胞や微生物の検査装置及び検査方法を意味し、微生物のみの検査装置及び検査方法に限定されるものではない。また、本明細書及び特許請求の範囲において、「細胞または微生物」と表記しないで、単に「微生物」と表記するが「細胞」も含まれるものとする。
(A)微生物検査装置の全体構成例
図1に、本発明の一実施例に係る微生物検査装置1の構成図を示す。微生物検査装置1は、微生物検査チップ10、検出装置11、圧力供給装置14、システム装置18、出力装置19、X−Y可動ステージ125から構成されている。
【0020】
微生物検査チップ10は、検体や試薬を内部に保持し、微生物計測に必要な工程を行うための機構を内部に備えている。X−Y可動ステージ125は、微生物検査チップ10を保持し、微生物検査チップ10の位置を調整する。微生物検査チップ10は、基本的には一度限りの使用であり、検査毎に、X−Y可動ステージ125に装着して位置調整が行われ、検査終了後にX−Y可動ステージ125から取り外される。検出装置11は微生物検査チップ10内の微生物に励起光を照射し、微生物からの散乱光及び蛍光を電気信号に変換する。圧力供給装置14は微生物計測に必要な工程を行うために、微生物検査チップ10と連結したチップ連結管1441〜1444を介して、微生物検査チップ10内の検体や試薬の搬送を制御する。システム装置(制御装置)18は微生物検査装置1の各構成要素(検出装置11、圧力供給装置14、出力装置19、X−Y可動ステージ125)に接続し、圧力供給装置14に対する制御信号の出力と、検出装置11から入力される電気信号に対する信号処理を実行する。出力装置19はシステム装置18における電気信号の処理により得られた計測結果を表示する。
(B)微生物検査チップの構成例
微生物検査チップ10の詳細を説明する。図2に微生物検査チップ10の構成例である平面図を示す。微生物検査チップ10は、液体の検体1511を保持するための検体容器151と、検体中の微生物を染色するための染色液(試薬液)1521を保持する微生物染色液容器152と、検体と染色液を混合し反応させた検出液を保持する検出液容器155と、検出装置11の励起光源111より励起光113を照射し、微生物の蛍光を観測するための微生物検出用流路173を内部に備えた微生物検出部17と、微生物検出用流路173を通過した検体1511と染色液1521の混合液である検出液を廃棄するための検出液廃棄容器156を備えている。この明細書においては、検体の流れに沿って検体容器151の側を上流側、微生物検出用流路173の側を下流側と定義する。
【0021】
さらに、微生物検査チップ10は、検体容器151、微生物染色液容器152、検出液容器155、微生物検出用流路173を連結し、検体1511や混合液が流動する溶液用流路1571〜1574と、圧力供給装置14のチップ連結管1441〜1444と接続される通気口1591〜1594と、通気口1591〜1594と各容器(151,152,155,156)を接続する通気用流路1581〜1584を備えている。
【0022】
溶液用流路1571〜1574、通気口1591〜1594及び通気用流路1581〜1584は連結する容器の名称から、検体容器−微生物染色液容器間流路1571、微生物染色液容器−検出液容器間流路1572、検出液容器−微生物検出用流路間流路1573、微生物検出用流路−検出液廃棄容器間流路1574、検体容器通気口1591、微生物染色液容器通気口1592、検出液容器通気口1593、検出液廃棄容器通気口1594、検体容器通気流路1581、微生物染色液容器通気流路1582、検出液容器通気流路1583、検出液廃棄容器通気流路1584とする。
【0023】
また、検体容器−微生物染色液容器間流路1571の検体容器151側には、検体中に含まれる食品残渣を取り除くためのフィルタである食品残渣除去部160を設けている。
【0024】
検体容器151と、食品残渣除去部160と、微生物染色液容器152と、検出液容器155と、微生物検出用流路173と、検出液廃棄容器156は、溶液用流路1571〜1574により直列に連結されている。
【0025】
図2の場合、溶液用流路1571〜1574の深さ及び流路幅は例えば10μm〜1mm、通気用流路1581〜1584の深さ及び流路幅は例えば10μm〜1mmの範囲で形成され、溶液用流路1571〜1574の断面積は通気用流路1581〜1584の断面積より大きくなるように形成される。
【0026】
検体容器151の体積は、検体1511の体積より大きい。微生物染色液容器152の体積は、検体1511と微生物染色液1521の合計体積より大きい。検出液容器155の体積は、検体1511、微生物染色液1521の合計体積より大きい。また、検体容器−微生物染色液容器間流路1571の最高点は、検体容器151中の検体1511の水位より高くなるように形成される。これと同様に、微生物染色液容器−検出液容器間流路1572の最高点は、検体1511と微生物染色液1521の混合液の水位より高くなるように形成される。さらに、検出液容器−微生物検出用流路間流路1573の最高点は、検体1511、微生物染色液1521からなる検出液(混合液)の水位より高くなるように形成される。
【0027】
微生物染色液1521は、微生物検査チップ10内に前もって封入されている。検体1511は、検査前に通気口1591から検体容器151に注入する。
【0028】
微生物検査チップの構成例としては、特開2008−157829号公報に記載されているような他の構成例でも良い。例えば、微生物染色液容器152で検体と染色液を混合、反応させて、そのまま検出液を保持するようにし、検出液容器155を省略しても良い。また、複数の染色液を用いる場合、複数の染色液を同一の微生物染色液容器に保持しないで、微生物染色液容器を複数設け、第一の染色液による染色が完了後に、第二の染色液を保持する微生物染色液容器に混合液を流動させ、第二の染色液と混合、反応させて、最終的な検出液とするようにしても良い。
(C)微生物検査チップの微生物検出部の構造例
図3A及び図3Bを用い、微生物検査チップ10のうち微生物検出部17の構造を説明する。図3Aは、微生物検査チップ10の本体15と微生物検出部17の接合部の断面図を示す。図3Bは、微生物検出部17の分解斜視図を示す。本実施例で用いる微生物検出部は特許文献1に詳述されている。
【0029】
本体15と微生物検出部17はそれぞれ別工程で作製され、それぞれを接合する。まず、微生物検出部17の製造方法を説明する。微生物検出部17はカバー部材171と流路部材172からなり、両者は共に薄い平板からなる。流路部材172には溝1731が形成されており、この溝1731の両端には貫通孔1741、1751が形成されている。溝1731が形成された面が張り合わせ面となるように、カバー部材171と流路部材172を張り合わせる。この貼り合わせにより微生物検出部17が形成される。流路部材172の溝1731とカバー部材171によって微生物検出用流路173が構成される。流路部材172の貫通孔1741、1751によって、微生物検出用流路入口174と微生物検出用流路出口175が構成される。
【0030】
一方、本体15に形成された検出液容器−微生物検出用流路間流路1573は、その下端にて流路方向を変更し、本体15の表面に開口を形成している。同様に、微生物検出用流路−検出液廃棄容器間流路1574は、その上端にて流路方向を変更し、本体15の表面に開口を形成している。検出液容器−微生物検出用流路間流路1573の開口は、微生物検出用流路入口174に接続され、微生物検出用流路−検出液廃棄容器間流路1574の開口は、微生物検出用流路出口175に接続されている。
【0031】
本体15には検出用窓枠部161が形成されている。検出用窓枠部161は、貫通孔、又は、貫通溝である。検出用窓枠部161は、検出液容器−微生物検出用流路間流路1573の開口と微生物検出用流路−検出液廃棄容器間流路1574の開口の間に形成されている。製造された微生物検出部17は、前述したように、本体15に装着される。図3Aに示すように、本体15の検出用窓枠部161の上に微生物検出用流路173が配置されるように、微生物検出部17を装着する。
【0032】
本実施例の場合、微生物検出用流路173の背後に、本体15の貫通孔又は貫通溝である検出用窓枠部161が設けられる。従って、励起光113は、微生物検出部17のみを照射し、本体15を照射しない。このため、背景光の増加の原因となる本体15からの反射光や自家蛍光は発生しない。微生物検出用流路173を通過した励起光113が、本体15に照射されないためには、検出用窓枠部161を構成する貫通孔の断面は、励起光113の放射方向に沿って増加することが好ましい。
【0033】
カバー部材171の厚さは、例えば0.01μm〜1mmとする。流路部材172の厚さは、例えば0.01μm〜1mmとする。微生物検出用流路173の断面形状は、例えば正方形、長方形、台形に形成する。微生物検出用流路173の断面寸法は、大きいほど圧力損失は小さくなるが、微生物を一個ずつ流すためには小さいほうが良い。微生物検出用流路173の断面の一辺は、例えば1μm〜1mmが好ましく、長さは例えば0.01mm〜10mmが好ましい。微生物検出用流路173に照射する励起光113の光軸は、微生物検出用流路173の方向ベクトルに対して垂直になる。
【0034】
微生物検出部17を構成する材料について説明する。微生物検査チップ10はディスポーザブルである。すなわち、使用後、微生物検出部17は本体15と共に廃棄する。そのため、微生物検出部17に用いる材料は、安価でなければならない。微生物検出部17に用いる材料は、蛍光計測に好適なように、光学特性に優れている必要がある。すなわち、自家蛍光が低く、光透過性、面精度、屈折率などに優れていることが望ましい。微生物からの蛍光の検出を阻害しないためには、微生物検出部17自身が発生する自家蛍光量が、微生物からの蛍光量に比べて十分小さいことが好ましい。
【0035】
微生物検出部17の表面に、曲面、凹凸等が存在すると、表面における光の屈折、又は、乱反射により微生物計測用流路173に照射される励起光113の光量が変動する。そのため、検出される蛍光量も変動し、計測精度が低下する。そのため、微生物検出部17の表面は、所望の平面度を有する必要がある。微生物検出部17は、凹凸が0.1mm以下の平面度を有することが好ましい。
【0036】
このような条件を考慮すると、微生物検出部17に用いる材料には、ガラス、石英、ポリメタクリル酸メチルエステル(PMMA)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネイト等が考えられる。微生物検出部17は、これらの物質から選択された1種類以上の物質から形成される。
【0037】
カバー部材171は単なる平板であるが、流路部材172は平板に溝及び貫通孔を形成したものである。従って、流路部材172は、微細加工が容易で、且つ、加工費が安価な材料によって形成される。ガラス、及び、石英は、光学特性が優れているが、微細加工が容易でない。すなわち、微細加工を行うと、加工費が高くなる。
【0038】
そこで、この形態例の場合、カバー部材171をガラス又は石英によって構成し、流路部材172をポリメタクリル酸メチルエステル、ポリジメチルシロキサン、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンテレフタラート、ポリカーボネイトによって構成する。なお好ましくは、流路部材172をポリジメチルシロキサンによって構成する。この場合、カバー部材171と流路部材172の接合には、ポリジメチルシロキサンの自己接着性を利用する。
【0039】
微生物検出部17の自家蛍光量は、材料ばかりでなく、微生物検出部の厚さ寸法にも依存する。自家蛍光量を少なくするには、微生物検出部の厚さ寸法を小さくすれば良い。微生物検出部17の厚さが小さいほど、微生物検出部17から発生する自家蛍光量は少なくなる。しかしながら、カバー部材171及び流路部材172の厚さ寸法を小さくすると、製造が困難になり、平面度が悪化する。必要な平面度を保ち、微生物の蛍光の検出を阻害しないように自家蛍光量を抑制するには、これらの部品の厚さ寸法は、所定の範囲に制限するする必要がある。
【0040】
ガラス、石英、ポリジメチルシロキサンの自家蛍光量はほぼ同等である。そこで、カバー部材171をガラス又は石英によって製造する場合、その厚さは、例えば0.05mm以上1mm以下が好ましい。流路部材172を、ポリジメチルシロキサンによって製造する場合、その厚さは例えば0.1mm以上1mm以下が好ましい。
【0041】
また、カバー部材171及び流路部材172を、シクロオレフィンポリマー、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリエチレンテレフタラート、又は、ポリカーボネイトによって製造しても良い。この場合、ガラス、又は、石英によってカバー部材171を製造し、ポリジメチルシロキサンによって流路部材172を製造する場合より、単位体積当たりの自家蛍光量が約3倍以上増加する。そのため、カバー部材171及び流路部材172の厚さは例えば0.01mm以上0.3mm以下が好ましい。
(D)圧力供給装置の構成例
圧力供給装置14の詳細を説明する。圧力供給装置14は、レギュレータ1411付のエアポンプ141を有する。エアポンプ141は、チップ連結管1441〜1444によって微生物検査チップ10の各通気口1591〜1594と接続されている。チップ連結管1441〜1444には、バルブ1421〜1424がそれぞれ設けられている。バルブ1421〜1424を開閉することにより、微生物検査チップ10内の各容器に所定の圧力の気体を供給し、又は、微生物検査チップ10内の各容器を大気開放する。この圧力の制御により、微生物検査チップ10内における検体や試薬の搬送を実現する。この圧力の制御による、微生物検査チップ10内における検体や試薬の搬送は、特開2008−157829号公報に詳述されている。
【0042】
なお、バルブ1424と検出液容器155を接続するチップ連結管1444には流量センサー1412を接続しており、バルブ1424から検出液容器155へ流入する空気の流れにより発生するチップ連結管1444内の差圧を測定して流動状態の情報とする。
【0043】
また、図4に示すように、流量センサーは差圧計1413であっても良い。この場合、差圧を発生しやすくするために流路抵抗1414を配置し、その両端の差圧を測定すると空気漏れなどのより微量の流量を測定できる。
(E)検出装置の構成例
検出装置11は、励起光源111と、散乱光検出部と、蛍光検出部とで構成される。このうち、散乱光検出部は、微生物検出用流路173を通過する微生物からの散乱光124を検出するための散乱光検出器123と、励起光源111からの励起光113が散乱光検出器123に直接入射することを防ぐための遮光板122とから構成される。一方、蛍光検出部は、微生物検出用流路173を通過する微生物からの蛍光121を集光し、平行光にする対物レンズ114と、励起光113を微生物検出部17の方向に反射する一方で蛍光121は透過するダイクロイックミラー112と、蛍光121を通過するバンドパスフィルタ117と、平行光を集光させるための集光レンズ118と、迷光をカットするための空間フィルタとして用いるピンホール119と、バンドパスフィルタ117を通過した光を検出する光検出器120とで構成される。なお、照射部及び検出部は、互いの焦点が重なるように配置されている。
【0044】
測定を開始する前(検出液を微生物検出用流路に流す前)に微生物検出用流路173を励起光の焦点の位置に調整する。この位置合わせ工程について説明する。検出装置11の励起光源111から出力された励起光113を微生物検出用流路173に照射し、微生物検出用流路173から生じる散乱光の光量と微生物検出部17から生じる蛍光の光量をそれぞれ検出することにより、X−Yステージ125の可動位置と各光量との関係をプロファイルとして取得する。また、検出装置11は、取得されたプロファイルに基づいてX−Y可動ステージ125を可動制御し、微生物検査チップ10(具体的には、微生物検出用流路173)を検出に適した位置に合わせる。即ち、散乱光検出部で検出される散乱光の光量が最大となる微生物検出用流路の位置を励起光の光軸と一致させ、蛍光検出部で検出される蛍光量が最大となる微生物検出用流路の位置に励起光の焦点を一致させる。この位置合わせについては特許文献1に詳述されている。位置合わせについては、他の方法、例えば、特許文献2に記載の方法を用いても良い。この場合、微生物検査チップに位置合わせ用試薬等の保持容器や溶液用流路、通気用流路等を設ける。
【0045】
測定開始後は、微生物検出用流路に検体1511と染色液1521から成る検体液が流れることで検体液が発生する蛍光を光検出器120で検出することにより、位置状態の情報とする。
(F)計測方法(検査方法)
以下、本実施例に係る微生物検査装置1を用いて、食品由来の検体中の生菌数を計測する場合の計測方法を説明する。図5に、微生物検査チップ10を用いた生菌数計測の工程をフローチャートで示す。
【0046】
X−Y可動ステージ125への微生物検査チップ10の装着前に、通気口1591から検体容器151に検体1511を注入する(S901)。ここで使用した検体1511は、検査する食品に対し質量比10倍の生理食塩水を加え、ストマッキング処理を行ったものである。
【0047】
次に、微生物検査チップ10を微生物検査装置のX−Y可動ステージ125に装着する(S902)。
【0048】
微生物検査チップ10をX−Y可動ステージ125に装着後の測定工程は、検体から食品残渣を取り除いて検体中の微生物を染色する前処理工程(S903〜S905)と、微生物検査チップ10の位置合わせを行う位置合わせ工程(S907)と、生菌数を実際に測定する生菌数計測工程(S908)から構成される。
【0049】
位置合わせ工程(S907)と前処理工程(S903〜S905)は独立した工程であるため並列して行うことができ、両工程が終了した段階で生菌数計測工程(S908)を行う。続いて各工程について説明する。
【0050】
前処理工程では、まず、検体1511が微生物染色液容器152に移動される(S903)。検体容器通気口1591を介して検体容器151に対して圧力供給装置14の圧力を加え、検体容器151内の気圧を上げる。同時に、微生物染色液容器通気口1592を介して微生物染色液容器152の内圧を大気圧に開放する。気圧差により、検体1511は、微生物染色液容器152に入り、微生物染色液1521と混合される。検体1511が微生物染色液容器152に流動する際に、検体1511に含まれる食品残渣が食品残渣除去部160によって取り除かれる。
【0051】
食品残渣が取り除かれた検体1511は微生物染色液容器152において染色液1521と混合される。本実施例における染色液は、死菌を染色するための死菌染色液と全菌を染色するための全菌染色液の混合液であり、死菌染色液には、例えば、死微生物用シアニン系蛍光色素(終濃度:0.01mM〜10mM)、PI(プロピディウムイオダイド)(0.1mg/ml〜20mg/ml)、EB(エチジウムイオダイド)(0.1mg/ml〜20mg/ml)を使用し、全菌染色液には、例えば、全微生物用シアニン系蛍光色素(0.1mM〜10mM)、LDS751(0.1mg/ml〜20mg/ml)、DAPI(4'、6−ヂアミジン−2'−フェニルインドール)(0.1mg/ml〜20mg/ml)、HOECHST33258(0.1mg/ml〜20mg/ml)、HOECHST34580(0.1mg/ml〜20mg/ml)などを使用する。溶媒にはDMSO(ジメチルスルオキシド)、エタノール類、水などを使用する。
【0052】
微生物染色液容器152における検体1511と染色液1521との混合には、バブリングにより混合を促進する(S904)。バブリングは、例えば、検出液容器通気口1593を介して圧力供給装置14の圧力を検出液容器155に加え、また、微生物染色液容器通気口1592を介して微生物染色液容器152を大気開放する。空気は、検出液容器155から微生物染色液容器−検出液容器間流路1572を通って、検体1511と染色液1521の混合液を保持する微生物染色液容器152の下方から流入して、気泡となり、混合液の下から上まで上昇する際に混合液を撹拌し、混合を促進する。
【0053】
検体1511中の死菌は、死菌染色液(ここではPI(ピーク波長532nm)を使用する。)と全菌染色液(ここではLDS751を(ピーク波長710nm)使用する。)により染色され、一方、検体1511中の生菌は全菌染色液のみにより染色される。
【0054】
二液の混合液の水位は、微生物染色液容器152と検出液容器155を連結する微生物染色液容器−検出液容器間流路1572の最高点を越えず、さらに微生物染色液容器152中に入っている空気は、微生物染色液容器通気口1592を介して外部に放出される。微生物染色液容器152の気圧は大気圧と等しいため、二液の混合液は検出液容器155に押し出されず、混合液を反応に必要な時間中(例えば30分〜1時間程度)、微生物染色液容器152に保持することができる。
【0055】
このとき、混合液の検出液容器155への流入を防ぐ目的で、各通気口1593〜1594に対して圧力供給装置14からの圧力を加え、検体容器151の気圧より低い範囲まで検出液容器155と検出液廃液容器156の気圧を上げても良い。
【0056】
なお、染色中は、微生物検査チップ10の温度を一定に保つことにより、温度変化による染色の影響を小さくすることが望ましい。
【0057】
次に、検体1511と染色液1521から成る検出液(混合液)を、検出液容器155に移動させる(S905)。
【0058】
これらの前処理工程と並行して実行される微生物検査チップ10の位置合わせは、上述したように、微生物検出用流路173を励起光の焦点の位置に調整するものである。
【0059】
以上の動作が終了すると、検体1511と微生物染色液1521からなる検出液が微生物検出用流路173に移動され、検体中の生菌を蛍光フローサイトメトリー法により計測する。(S908)。図1に示すように、紙面垂直方向より、励起光113が照射される。このため、微生物を染色した色素からの蛍光と、微生物による散乱光が生じる。検出装置11は、生菌については全菌染色液の蛍光のみを検出し、死菌については全菌染色液と死菌染色液の蛍光を検出する。このため、生菌と死菌の判別が可能になる。また、散乱光の光量は菌体の大きさにより変わるため、菌体の大きさの判別も可能になる。尚、図1では一つの光検出器120が図示されているが複数の染色液(死菌染色液と全菌染色液)を用いる場合には、それぞれの染色液からの蛍光のピーク波長に対応して光検出器等が設けられる。すなわち、蛍光分離用ダイクロイックミラーや、短波長バンドパスフィルタ、長波長バンドパスフィルタ、短波長用光検出器、長波長用光検出器等が設けられる。これらの構成は、例えば、特開2008−157829号公報や、特許文献1、特許文献2などに詳述されている。
(G)計測状態の把握
計測状態を把握するために流動状態と位置状態の情報認識について図6〜図12を用いて説明する。なお、本実施例では、流量センサーは図4で示す差圧計1413を用いている。
【0060】
図6は計測状態が正常な場合を示している。すなわち、微生物検出用流路173に検出液が所定量の流量で流れ(図中の長矢印で表現)、かつ、励起光113が微生物検出用流路173に照射している状態である。このとき、微生物検出用流路173に流れる検出液の流量は微量のため、検出液容器−微生物検出用流路間流路1573に、検出液容器155や検出液容器通気流路1583、検出液容器通気口1593を介して接続している差圧計1413は低い値を示す。また、検出液が励起光113に照射されて蛍光を発して光検出器120が検出し、蛍光強度は高い値を示す。このように、計測状態が正常の場合は、差圧値が低く、かつ、蛍光強度が強くなる。
【0061】
図7は位置ずれが発生している計測状態を示している。すなわち、微生物検出用流路173に検出液1551が所定量の流量で流れ(図中の長矢印で表現)、かつ、励起光113が微生物検出用流路173に照射していない状態である。このとき、微生物検出用流路173に流れる検出液1551の流量は微量のため、検出液容器−微生物検出用流路間流路1573に接続している差圧計1413は低い値を示す。また、検出液1551が励起光113に照射されないため蛍光を発せず、光検出器120が蛍光を検出しない。このため、蛍光強度は低い値を示す。このように、計測状態が位置ずれの場合は、差圧値が低く、かつ、蛍光強度が弱くなる。
【0062】
図8は流体の漏れが発生している計測状態を示す。すなわち、微生物検出用流路173に検出液1551が所定の流量で流れず(図中の短矢印で表現)、かつ、励起光113が微生物検出用流路173に照射している状態である。このとき、チップ連結管1444と検出液容器通気口1593の接続部で空気が漏れているため、検出液容器−微生物検出用流路間流路1573に接続している差圧計1413は高い値を示す。また、検出液1551が励起光113に照射されて蛍光を発して光検出器120が検出し、蛍光強度は高い値を示す。このように、流体の漏れが発生している計測状態の場合は、差圧値が高く、かつ、蛍光強度が強くなる。
【0063】
図9は位置ずれと流体の漏れが発生している計測状態を示している。すなわち、微生物検出用流路173に検出液1551が所定の流量で流れず(図中の短矢印で表現)、かつ、励起光113が微生物検出用流路173に照射していない状態である。このとき、チップ連結管1444と検出容器通気口1593の接続部で空気が漏れているため、検出液容器−微生物検出用流路間流路1573に接続している差圧計1413は高い値を示す。また、検出液1551が励起光113に照射されないため蛍光を発しない。光検出器120が蛍光を検出しないため、蛍光強度は低い値を示す。このように、位置ずれと流体の漏れが発生する計測状態の場合は、差圧値が高く、かつ、蛍光強度が弱くなる。
【0064】
図10は流路に詰まりが発生している計測状態を示している。すなわち、微生物検出用流路173に詰まり1552が発生しているため検出液1551が滞留し(図中の無矢印で表現)、かつ、励起光113が微生物検出用流路173に照射している状態である。このとき、微生物検出用流路173の検出液1551は停滞しているため、検出液容器−微生物検出用流路間流路1573に接続している差圧計1413は低い値を示す。また、検出液1551が励起光113に照射されて蛍光を発して光検出器120が蛍光を検出し、蛍光強度は高い値を示す。このように、流路に詰まりが発生しているものの励起光113が微生物検出用流路173に照射している計測状態では、計測状態が正常の場合と同様に、差圧値が低く、かつ、蛍光強度が強くなる。
【0065】
ここで、図6の計測状態が正常の場合と、図10の計測状態は流路に詰まりが発生している状態の場合は、ともに、差圧値が低く、かつ、蛍光強度が強い状態となる。これらの計測状態を区別して、計測状態を特定するには、光検出器120が検出する菌数頻度(検出数頻度)の分布から判断する。計測状態が正常の場合は、菌数の頻度分布は図11Aのように一様となり、計測状態が流路に詰まりを発生している場合は、菌数の頻度分布は図11Bのようにむらになる。すなわち、詰まりが発生し、検出液1551が滞留している場合には、ある程度の時間が経過すると菌数が計測されなくなる。
【0066】
以上の各計測状態と位置状態及び流動状態との関係を纏めると図12の通りとなる。このように、微生物検査チップの位置合わせを実施した後も、引続き、生菌数の計測中に、検出液の流動状態として流量センサー(差圧計)から情報と、微生物検出用流路と励起光の光学的な位置状態として光検出器からの情報と得るようにして、計測状態を把握することが可能となる。また、光検出器からの蛍光強度について菌数頻度分布の情報を得るようにすることにより空気漏れ以外の異常も認識することができる。
【0067】
計測状態と位置状態及び流動状態は、出力装置19に表示するようにしても良い。すなわち、生菌数の計測結果を出力する際に、流量センサー(差圧計)から得られる流動状態の情報と光検出器から得られる蛍光強度の強弱の情報を併せて出力する。または、生菌数の計測結果を出力する際に、流量センサー(差圧計)から得られる流動状態の情報と光検出器から得られる蛍光強度の強弱の情報から図12に示す関係に基づき、計測結果が正常な動作に基づくものであるか、即ち、異常がないかを判断して、計測状態が正常か異常かも併せて出力する。また、異常と判断される場合、図12に示す関係に基づき、微生物検査装置の異常原因を推定し、その原因を出力する。または、微生物の検出信号がない又は所定値よりも小さい場合、流量センサー(差圧計)から得られる流動情報又は光検出器から得られる蛍光強度の強弱の情報に基づき微生物検査装置に異常がないか判断し、その結果を出力するようにしても良い。
【0068】
上述の実施例によれば、流量センサー(差圧計)から得られる流動状態の情報と光検出器から得られる菌数頻度分布の情報とに基づき、検出液の流動状態として正常な流動、異常な流動(流体の漏れ、流路の詰まり)を認識することができ、光検出器から得られる蛍光強度の強弱の情報に基づき光学検出の位置状態として正常な検出位置、異常な検出位置(位置ずれ)を認識することができ、流動状態と位置状態から計測状態として正常か異常かを把握することができる。特に、検出液に微生物が少ない場合に、それが微生物検査装置側に何らかの異常があることに基づく計測結果なのか、正常な計測状態での計測結果であるかを把握することが可能になる。
【0069】
尚、上述の実施例では、流動状態と位置状態の両方について判断しているが、何れか一方の判断をする場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0070】
1…微生物検査装置、10…微生物検査チップ、11…検出装置、14…圧力供給装置、17…微生物検出部、18…システム装置、19…出力装置、111…励起光源、112…ダイクロイックミラー、113…励起光、114…対物レンズ、119…ピンホール、120…光検出器、121…蛍光、124…散乱光、125…X−Y可動ステージ、141…エアポンプ、1411…レギュレータ、1412…流量センサー、1413…差圧計、1414…流路抵抗、151…検体容器、1511…検体、152…微生物染色液容器、1521…染色液、155…検出液容器、1551…検出液、156…検出液廃棄容器、1571〜1574…溶液用流路、1581〜1584…通気用流路、1591〜1594…通気口、161…検出用窓部、173…微生物検出用流路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体が保持される検体容器、試薬液が保持される試薬液容器、微生物検出用流路、前記検体容器と前記試薬液容器及び前記試薬液容器と前記微生物検出用流路をそれぞれ接続する流路を備えた微生物検査チップと、
前記微生物検査チップを保持すると共に前記微生物検査チップを移動させるステージと、
前記微生物検査チップと接続され、前記検体を前記検体容器から前記試薬液容器に搬送し、前記検体と前記試薬液からなる検出液を前記試薬液容器から前記微生物検出用流路に搬送する圧力を供給する圧力供給装置と、
前記微生物検出用流路に励起光を照射する光源、前記微生物検出用流路を流れる前記検出液からの蛍光を検出して電気信号に変換する光検出器を有する検出装置と、
前記圧力供給装置と前記微生物検査チップとの間に配置された流量センサーと、
前記圧力供給装置、前記検出装置及び前記流量センサーと接続し、前記圧力供給装置に制御信号の出力と前記検出装置及び前記流量センサーからの電気信号を処理する制御装置と、
前記制御装置で処理された検出結果を表示する出力装置とを有し、
前記制御装置は、前記流量センサーからの電気信号に基づき前記微生物検査チップと前記圧力供給装置との間における漏れの有無を判定し、前記光検出器からの電気信号に基づき蛍光強度の強弱を判定して前記微生物検出用流路の位置状態を判定し、前記出力装置に前記漏れの有無と前記位置状態を出力することを特徴とする微生物検査装置。
【請求項2】
検体が保持される検体容器、試薬液が保持される試薬液容器、微生物検出用流路、前記検体容器と前記試薬液容器及び前記試薬液容器と前記微生物検出用流路をそれぞれ接続する流路を備えた微生物検査チップと、
前記微生物検査チップを保持すると共に前記微生物検査チップを移動させるステージと、
前記微生物検査チップと接続され、前記検体を前記検体容器から前記試薬液容器に搬送し、前記検体と前記試薬液からなる検出液を前記試薬液容器から前記微生物検出用流路に搬送する圧力を供給する圧力供給装置と、
前記微生物検出用流路に励起光を照射する光源、前記微生物検出用流路を流れる前記検出液からの蛍光を検出して電気信号に変換する光検出器を有する検出装置と、
前記圧力供給装置及び前記検出装置と接続し、前記圧力供給装置に制御信号の出力と前記検出装置からの電気信号を処理する制御装置と、
前記制御装置で処理された検出結果を表示する出力装置とを有し、
前記制御装置は、前記光検出器からの電気信号に基づき蛍光強度の強弱を判定して前記微生物検出用流路の位置状態を判定し、前記出力装置に前記位置状態を出力することを特徴とする微生物検査装置。
【請求項3】
検体が保持される検体容器、試薬液が保持される試薬液容器、微生物検出用流路、前記検体容器と前記試薬液容器及び前記試薬液容器と前記微生物検出用流路をそれぞれ接続する流路を備えた微生物検査チップと、
前記微生物検査チップを保持すると共に前記微生物検査チップを移動させるステージと、
前記微生物検査チップと接続され、前記検体を前記検体容器から前記試薬液容器に搬送し、前記検体と前記試薬液からなる検出液を前記試薬液容器から前記微生物検出用流路に搬送する圧力を供給する圧力供給装置と、
前記微生物検出用流路に励起光を照射する光源、前記微生物検出用流路を流れる前記検出液からの蛍光を検出して電気信号に変換する光検出器を有する検出装置と、
前記圧力供給装置と前記微生物検査チップとの間に配置された流量センサーと、
前記圧力供給装置、前記検出装置及び前記流量センサーと接続し、前記圧力供給装置に制御信号の出力と前記検出装置及び前記流量センサーからの電気信号を処理する制御装置と、
前記制御装置で処理された検出結果を表示する出力装置とを有し、
前記制御装置は、前記流量センサーからの電気信号に基づき前記微生物検査チップと前記圧力供給装置との間における漏れの有無を判定し、前記出力装置に前記漏れの有無を出力することを特徴とする微生物検査装置。
【請求項4】
請求項1又は3において、前記流量センサーは、差圧計であることを特徴とする微生物検査装置。
【請求項5】
請求項4において、前記差圧計は前記圧力供給装置と前記微生物検査チップとの間に設けた流路抵抗の両端の差圧を測定することを特徴とする微生物検査装置。
【請求項6】
請求項1〜3の何れかにおいて、前記制御装置は、前記光検出器からの検出数頻度分布の情報に基づき微生物検査チップ内での流動状態を判定し、前記出力装置に前記流動状態を出力することを特徴とする微生物検査装置。
【請求項7】
検体が保持される検体容器、試薬液が保持される試薬液容器、微生物検出用流路、前記検体容器と前記試薬液容器及び前記試薬液容器と前記微生物検出用流路をそれぞれ接続する流路を備えた微生物検査チップと、前記微生物検査チップを保持すると共に前記微生物検査チップを移動させるステージと、前記微生物検査チップと接続され、前記検体を前記検体容器から前記試薬液容器に搬送し、前記検体を前記試薬液からなる検出液を前記試薬液容器から前記微生物検出用流路に搬送する圧力を供給する圧力供給装置と、前記微生物検出用流路に励起光を照射する光源、前記微生物検出用流路を流れる前記検出液からの蛍光を検出して電気信号に変換する光検出器を有する検出装置と、前記圧力供給装置及び前記検出装置と接続し、前記圧力供給装置に制御信号の出力と前記検出装置からの電気信号を処理する制御装置と、前記圧力供給装置と前記微生物検査チップとの間に配置された流量センサーと有する微生物検査装置を用いた微生物検査方法であって、
前記微生物検査チップを前記ステージの所定箇所に装着するステップ、
前記微生物検査チップと前記検出装置との位置合わせをするステップ、
前記圧力供給装置から圧力を供給し、前記検出液を前記微生物検査チップ内で流動させ、前記検出液が前記微生物検出用流路を流動する際に前記光源から励起光を照射し、前記光検出器により蛍光を検出して電気信号に変換して出力するステップとを有し、
前記蛍光を検出して電気信号に変換して出力する際に、前記流量センサーから得られる流量情報及び/又は前記光検出器から得られる蛍光強度の強弱の情報を併せて出力することを特徴とする微生物検査方法。
【請求項8】
検体が保持される検体容器、試薬液が保持される試薬液容器、微生物検出用流路、前記検体容器と前記試薬液容器及び前記試薬液容器と前記微生物検出用流路をそれぞれ連絡する流路を備えた微生物検査チップと、前記微生物検査チップを保持すると共に前記微生物検査チップを移動させるステージと、前記微生物検査チップと接続され、前記検体を前記検体容器から前記試薬液容器に搬送し、前記検体と前記試薬液からなる検出液を前記試薬液容器から前記微生物検出用流路に搬送する圧力を供給する圧力供給装置と、前記微生物検出用流路に励起光を照射する光源、前記微生物検出用流路を流れる前記検出液からの蛍光を検出して電気信号に変換する光検出器を有する検出装置と、前記圧力供給装置及び前記検出装置と接続し、前記圧力供給装置に制御信号の出力と前記検出装置からの電気信号を処理する制御装置と、前記圧力供給装置と前記微生物検査チップとの間に配置された流量センサーと有する微生物検査装置を用いた微生物検査方法であって、
前記微生物検査チップを前記ステージの所定箇所に装着するステップ、
前記微生物検査チップと前記検出装置との位置合わせをするステップ、
前記圧力供給装置から圧力を供給し、前記検出液を前記微生物検査チップ内で流動させ、前記検出液が前記微生物検出用流路を流動する際に前記光源から励起光を照射し、前記光検出器により蛍光を検出して電気信号に変換して出力するステップとを有し、
前記蛍光を検出して電気信号に変換して出力する際に、前記流量センサーから得られる流量情報又は前記光検出器から得られる蛍光強度の強弱の情報に基づき微生物検査装置に異常がないか判断することを特徴とする微生物検査方法。
【請求項9】
請求項8において、前記流量センサーから得られる流動情報と前記光検出器から得られる蛍光強度の情報とに基づき、前記微生物検査装置の異常原因を推定するステップを有することを特徴とする微生物検査方法。
【請求項10】
請求項8において、微生物の検出信号がない又は所定値よりも小さい場合、前記流量センサーから得られる流動情報又は前記光検出器から得られる蛍光強度の強弱の情報に基づき微生物検査装置に異常がないか判断することを特徴とする微生物検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−44585(P2013−44585A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181227(P2011−181227)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000233044)株式会社日立エンジニアリング・アンド・サービス (276)
【Fターム(参考)】