応力緩和領域を有する繊維強化樹脂用繊維シート
【課題】現場施工性がよく、端面で剥離しにくい鋼構造物補強用繊維強化樹脂に使用する繊維シートを提供する。
【解決手段】本発明の繊維シート1は、複数の繊維が互いに平行に配列されて形成された繊維束11を並列に並べて固定し、繊維束11の繊維方向端部において繊維束を間引くなどして応力緩和領域17を設けることにより、樹脂を含浸固化した後の鋼構造物補強用繊維強化樹脂の端部での剥離を防止する。繊維シート1にはあらかじめ樹脂を含浸させておいてもよい。
【解決手段】本発明の繊維シート1は、複数の繊維が互いに平行に配列されて形成された繊維束11を並列に並べて固定し、繊維束11の繊維方向端部において繊維束を間引くなどして応力緩和領域17を設けることにより、樹脂を含浸固化した後の鋼構造物補強用繊維強化樹脂の端部での剥離を防止する。繊維シート1にはあらかじめ樹脂を含浸させておいてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁や高架道路などの鋼構造部材を繊維強化樹脂で補強するときに用いる繊維シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋梁や高架道路などの鋼構造物を補強する手段として、鋼部材上の必要箇所に高力ボルト(HTB)や溶接で鋼板を添接する工法が知られている。しかし、このような鋼板による補修方法では、重量のある鋼材を使用するため重機が必要となったり、溶接工や鳶工など施工技量が求められたりするので、現場施工性が良くない。また、施工対象の構造物に穴を開けたり溶接したりするので、疲労耐久性の低下を招く恐れがある。さらに、鋼材を添接した部分に雨水が浸入し易くなる場合も多く、高い品質の処置をすることが難しい。また、施工前に詳細形状寸法を決める設計図を準備して、適用する材料を調達しておく必要があり、材料手配に労力が掛かる。このような観点から、施工上の経済性はよいとはいえない。
【0003】
これに対して、炭素繊維、金属繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維などを用いて強化した繊維強化樹脂(FRP)を、コンクリートや鋼などの構造部材面に貼り付けて、ひび割れ進展の防止、腐食損傷部や疲労損傷部の補修補強などに利用する方法がある。繊維強化樹脂には、構造部材に生ずる応力に抗する方向に強い剛性を持つように繊維の方向を揃えた繊維シートが埋め込まれる。繊維強化樹脂に使われる繊維シートには、樹脂に浸漬固化して1方向に剛性を有するようになる1方向強化繊維シートばかりでなく、2方向強化繊維シート、場合によっては、3方向強化繊維シートや4方向強化繊維シートのものなどが適用されている。
【0004】
なお、1方向強化繊維シートは、一般に、繊維束を1方向に並列に配置し、繊維束同士の位置関係がずれないように組付け糸で編み込んで固定したものである。シート端部の繊維束、すなわち最外側の繊維束はしばしば解けて繊維束が綻びる場合があるので、最外側の繊維束に、繊維束に比べて強度の小さい編み込み糸で解け防止編みを施して、綻びを防止するようにしたものもある。解け防止編みに代えて、繊維端部を熱融着させてもよい。解け防止は、2方向強化繊維シートなどにも必要になり、周囲の各辺に施される場合もある。
【0005】
特許文献1には、所定強度を持った厚さ1.2mmの炭素繊維強化樹脂(CFRP)板をあらかじめ接着剤により厚さが数mmになるまで重ね合わせて必要な引張強度を持つようにしたものを、橋梁の鋼製部材の下面に接着剤で接合して補強する工法が開示されている。なお、梁の中央では曲げモーメントが大きくなるため、中央部付近では接合するCFRP板の枚数を増やすことができる。図13は特許文献1に記載の工法におけるCFRP板の添接状態を説明する側面図、図14はCFRP板の端部を示す拡大図である。
【0006】
一般に、鋼部材のヤング係数に比較してCFRP板のヤング係数はかなり高いので、厚さが1mmを超えるようなCFRP板を用いた場合には鋼部材との間で剛性が大きく相違するため、鋼構造物の使用中に鋼部材の表面からCFRP板が剥離し易くなる。
たとえば、図13に示すように、CFRP板を鋼部材の下面に接着した場合、曲げモーメントが作用したときなど図14に示す左右方向に引張力が働いたとすると、鋼部材とCFRP板の剛性差に基づいて両者の接着面に水平せん断力Hが作用する。図15は、このときのせん断力Hを、接着したCFRP板端面からの距離xに対してプロットしたグラフである。せん断力Hは、端面から25mm付近に鋭いピークを持つことが分かる。このピーク値が接着材の耐剥離強度を超えると剥離が生じる。
【0007】
これに対して、特許文献2には、複数の強化繊維シートの端部を引張力が作用する方向に階段状に重なるように鋼部材の表面に接着して補強する、シートずらし貼り工法が開示されている。特許文献1に開示された工法では、あらかじめ積層・固化された厚さが数mmのCFRP板を使うのに対して、特許文献2に開示された工法では、炭素繊維などの強化繊維を樹脂未含浸の厚さ0.9mm以下の薄い布状にした強化繊維シートを複数枚使用する。
【0008】
特許文献2に開示された工法では、鋼部材の表面に含浸接着剤を塗り、含浸接着剤が固化する前に強化繊維シートを重ね、その上に含浸接着剤を塗り、ローラ等を用いて繊維間に含浸接着剤を浸透させて固化するのを待つ。次に、強化繊維シートを前の強化繊維シートの端面から約25mm内側にずらすこと以外は同じ手順を繰り返して、強化繊維シートを重ねて固化する。図16は、特許文献2に開示された鋼構造物補強工法における炭素繊維強化樹脂の端部を示す側面図である。図16に示すように、3−5枚など、必要とされる枚数の強化繊維シートを、所定幅ずらしながら重ねて、同じ手順で接着して固化することにより、繊維強化樹脂層を形成して鋼部材を補強する。
【0009】
図17は、図16に示した炭素繊維強化樹脂の端部における水平せん断力の変化を示すグラフである。特許文献2に開示されたシートずらし貼り工法では、図17に示すように、強化繊維シートの端面に見られる水平せん断力Hのピークは分散してより広がる代わりに、ピーク値が低下して緩和されるので、端部における剥離は起こり難くなることが分かる。
【0010】
特許文献2のシートずらし貼り工法は、通常の塗装工が簡単に施工することができるが、多くの樹脂未含浸繊維シートを貼り付ける必要があり、現場施工性は良くない。しかし、シートずらし貼り工法では、強化繊維シートをずらして貼ることにより応力集中が緩和され、端部からの剥がれを防止できる。繊維強化樹脂の端部が剥がれにくいと腐食も防止でき、耐久性が向上する。ボルト穴の加工や溶接熱による強度低下を招かないので、補強品質を向上させることができる。また、事前に特別な準備をしなくても、強化繊維シートを現場合わせで切断して利用することができるので、材料手配は簡単である。ただし、現場における接着剤の重ね塗りなど、現場における施工工数は多いので、経済性は優れていると言い難い。
【0011】
さらに、橋梁や高架道路などの鋼構造物を補強する手段として、現場の寸法に合わせたプレキャストの繊維強化樹脂板を貼り付ける方法がある。この方法は、工場で鋼部材の対象部分に適合する繊維強化樹脂板をあらかじめ製造しておいて、完成した繊維強化樹脂板を現場に搬入して接着剤で貼付するものである。現場では、工場で製作した樹脂板を構造物に接着するだけであるので、この分野に熟練していない通常の塗装工でも施工可能で、現場施工性は良好である。ただし、繊維強化樹脂板端部に応力集中が発生するため、剥がれやすい。また、鋼材との一体性に懸念があり、補強品質は必ずしも良くない。さらに、繊維強化樹脂板は、施工前に詳細形状寸法を決める設計図を準備して工場で製造するため、材料手配に労力が掛かる。このように、現場工事費は抑えられるが、工場製作費が高い。総合的にみて、経済性が優れているとは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−193425号公報
【特許文献2】特開2007−332674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように、橋梁や高架道路などの鋼構造物を補強する手段として、構造部材に生ずる応力に抗する方向に強い剛性を持つように繊維の方向を揃えた繊維シートを埋め込んだ繊維強化樹脂で補強する方法を用いることができる。しかし、鋼部材と繊維強化樹脂の間で剛性が大きく相違することから、両者の接着面に働く水平せん断力が端面に近いところに鋭いピークを持つため、この方法には、鋼構造物の使用中に繊維強化樹脂の端部から剥離し易いという問題がある。
【0014】
この問題を解決する目的で開発された、複数の強化繊維シートを少しずつずらしながら重ねては接着剤で接着固化する、シートずらし貼り工法では、水平せん断力のピークが緩和されるので端部における剥離は起こり難くなるが、現場における接着剤の重ね塗りなど、現場における施工工数が多く経済性に問題があった。
なお、プレキャストの繊維強化樹脂板を貼り付ける方法は、工場で製作した樹脂板を構造物に接着するだけであるので、現場施工性は良好であるが、繊維強化樹脂板端部で剥がれやすいという問題が解決されていない。
【0015】
このように、従来の鋼構造物補強工法は、いずれも何らかの問題を抱えていて、施工時や構造物の使用中に困難が生ずる。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、現場施工性がよく、端面で剥離しにくい繊維強化樹脂を用いた鋼構造物補強工法において使用する繊維シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、鋼構造物補強用繊維強化樹脂に用いる本発明の繊維シートは、複数の繊維が互いに平行に配列されて形成された繊維束を並列に並べて固定したシートであって、繊維束の繊維方向端部に応力緩和領域を設けたことを特徴とする。応力緩和領域は、繊維束を間引くことにより形成される。また、繊維束の繊維量を減少させることにより形成することもできる。さらに、繊維束の端部において繊維の方向を屈曲させることにより、繊維方向の剛性を実質的に減少させて形成することができる。また、繊維束を編むことにより剛性を減少させて形成してもよい。
【0017】
さらに、本発明の繊維シートは、現場で対象構造物に適用する前には柔軟で、現場での処理により硬化する接着剤をあらかじめ含浸したものであってもよい。接着剤は、常温硬化型、熱硬化型もしくは光硬化型の、エポキシ樹脂、MMA(メタクリル)樹脂等のアクリル樹脂、ビニールエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂のいずれかを用いることができる。また、繊維束は、炭素繊維、金属繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維のいずれかが単独であるいは複数種混合することにより形成される。
また、本発明の繊維シートは、複数の繊維束を並列に並べて固定するが、同種繊維の繊維束に限らず、異種繊維の繊維束を並べて用いても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明の鋼構造物補強用繊維強化樹脂に用いる繊維シートは、対象鋼部材に貼付する繊維強化樹脂に強化繊維として埋め込んで鋼部材を強化するが、繊維強化樹脂の強化方向になる繊維束の繊維方向の端部に応力緩和領域が設けられるため、従来発生した樹脂端部における剥離が生じにくくなる。さらに、本発明の繊維シートを用いた鋼構造物補強工法では、通常、鋼部材に接着剤を施し、その上に本発明の繊維シートを1枚だけ当てて、繊維シートに接着剤を与えて含浸させ、さらにその上から接着剤を加えて、熱や光で硬化させる。この工法には、現場において特殊な技能を要求するような作業がなく、普通の塗装工など非熟練工が簡単に施工することができる。
また、さらに、繊維シートに樹脂をあらかじめ含浸させて硬化させずにおいた樹脂含浸繊維シートを用いる場合は、現場で繊維シートに接着剤を含浸させる手間を省くことができるので、現場施工性は一段と向上することになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る繊維シートを示す平面図である。
【図2】図1の繊維シートの側面断面図である。
【図3】本実施例の繊維シートを用いた鋼構造物補強工法の手順例を示す工程図である。
【図4】本実施例の補強樹脂部の端部における水平せん断力の変化を示すグラフである。
【図5】本実施例において樹脂含浸繊維シートを用いたときの鋼構造物補強工法の手順例を示す工程図である。
【図6】本実施例の繊維シートの利点を従来工法と比較して示す表である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る繊維シートの端部を示す平面図と繊維密度を表すグラフである。
【図8】本発明の第3実施形態に係る繊維シートの端部を示す平面図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係る繊維シートの端部を示す平面図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係る繊維シートの端部を示す平面図である。
【図11】本発明の第6実施形態に係る繊維シートの端部を示す斜視図である。
【図12】本発明の第7実施形態に係る繊維シートの端部を示す斜視図である。
【図13】従来の鋼構造物補強工法の1例を説明する概念図である。
【図14】図13の炭素繊維強化樹脂の端部を示す側面図である。
【図15】図13の炭素繊維強化樹脂の端部における水平せん断力の変化を示すグラフである。
【図16】従来の別の鋼構造物補強工法における炭素繊維強化樹脂の端部を示す側面図である。
【図17】図16の炭素繊維強化樹脂の端部における水平せん断力の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は本発明の第1実施形態に係る繊維シートを示す平面図、図2は図1のII−II線で切断して示した繊維シートの側面断面図である。以下、本明細書の図面において、同じ機能を有する要素については同じ参照番号を付すことにより、説明を簡略にすると共に重複した説明を避けるようにした。
【0022】
本実施例の繊維シート1は、鋼構造物の鋼部材を補強するために貼付された繊維強化樹脂に含有される強化繊維を供給するもので、図1および図2に示すように、強化軸の方向に強化繊維の軸方向が来るようにするため、繊維束11を軸方向が平行になるように平面上に1方向に並べて、組付け糸13で繊維束11が移動しないように止めて1方向強化の繊維シートとしたものである。なお、最外側の繊維束11の繊維軸方向でない側方端部には、繊維束に比べて強度の小さい編み込み糸で解け防止編み15を施して、繊維束が解けて綻びるのを防止している。また、組み付け糸13の代わりに、たとえば芯鞘型融着糸等の熱融着機能を有する糸により繊維束11を保形するような構造であっても良い。
【0023】
繊維束11は、繊維の屈曲により強度を損ねることがないように、長尺のフィラメント糸を互いに絡まないように平行に並べて束ねたものである。繊維束11には、炭素繊維、金属繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維などの高張力繊維が単独であるいは複数種混合で束ねられている。また、繊維シート1の両側部に設けた解け防止編みに代えて、熱融着機能を持った繊維糸を配し、繊維束の端部を熱融着させてフィラメント糸同士が分かれないようにしてもよい。
【0024】
本発明は、鋼部材に貼着したときの繊維強化樹脂端における応力集中を緩和して繊維強化樹脂が鋼部材から剥離するのを防ぐことを目的として、図1に表示した通り、繊維シート1の繊維軸方向における端部に応力緩和領域17を設けることを特徴とする。なお、本発明における応力緩和領域とは、繊維強化樹脂の繊維強化方向における見かけ上の繊維シート弾性係数を減少させて応力集中を緩和する部分をいう。
本実施例においては、応力緩和領域17に当たる部分で、一部の繊維束11の先端部分を間引くことにより、強化繊維の密度を低くして、鋼部材に貼着したときに生じる応力を緩和させるようにしている。本実施例においては、応力緩和領域17は、25mmから50mm程度の幅で設定するとよい。
【0025】
図3は、本実施例の繊維シート1を用いて鋼構造物の鋼部材21を補強するときの手順例を示す工程図である。
ひび割れや腐食損傷などの欠陥がある鋼部材21を見つけたときは(図3(a))、欠陥部23に不陸修正剤を適用して平滑化した後に、欠陥部23を覆う部分の表面に含浸接着剤25を塗り(図3(b))、それが固化する前に繊維シート1を重ね(図3(c))、繊維シート1に含浸したうえで表面に溢れる程度に含浸接着剤を塗り、ローラ29等を用いて繊維間に含浸接着剤を浸透させると共に表面を平坦化する(図3(d))。繊維シート1は、欠陥部23を覆う部分の大きさに対応するものであればよく、無駄な大きさのものを使わなくて済むように、たとえば、厚み0.5mmから3mm、幅25mmから50mm、長さ50mmから200mm、あるいは幅1m程度、長さ2mから5mなど、ありうる欠陥部の状況に合わせた適当なサイズのものを複数種類準備しておいてもよい。
【0026】
含浸接着剤として、常温硬化型、熱硬化型もしくは光硬化型の、エポキシ樹脂、MMA(メタクリル)樹脂等のアクリル樹脂、ビニールエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などを用いることができる。光硬化型のたとえば紫外線硬化型接着剤を使用したときは、接着剤を硬化させる紫外線を発生する照射ランプ31を所定時間当てると(図3(e))、所要の紫外線エネルギーを吸収した接着剤が固化して、鋼部材21の欠陥部23をカバーする繊維強化樹脂製の補強樹脂部33が形成される(図3(f))。
【0027】
図4は、本実施例における繊維シートを用いて形成された補強樹脂部33の端部近傍に発生する水平せん断力Hのグラフである。図3の手順によって形成された補強樹脂部33は、薄い繊維シートを強化繊維として含有する薄い補強樹脂として形成され、補強樹脂部33の端部における強化繊維の密度が低下しているので、鋼部材21と補強樹脂部33の界面において作用する水平せん断力Hは、図4に示すように、補強樹脂端部近傍に高いピーク値を持たず、十分緩和されている。したがって、補強樹脂が端部を起点として剥離する現象が抑制され、耐久性のある信頼性の高い補強ができる。
【0028】
なお、本実施例の繊維シート1は、現場で接着剤を含浸させて固化することにより樹脂の強化繊維として機能するものであるので、現場に持ち込むまでの管理が容易であり、現場施工の際に、繊維束に接着剤を含浸させ、表面を平坦化させる必要はあるが、熟練工によらずに施工が可能である。
【0029】
また、現場施工時間短縮のため、繊維シート1にあらかじめ接着剤を含浸させておいて、現場では鋼部材に繊維シート1を当てて硬化させるだけで補強樹脂が形成できるようにした樹脂含浸繊維シート2も利用することができる。図5は、光硬化型樹脂含浸繊維シート2を使って鋼構造物の鋼部材21を補強するときの手順例を示す工程図である。
【0030】
欠陥部23の存在する鋼部材21に対して(図5(a))、欠陥部23を覆う部分の表面に含浸接着剤25を塗り(図5(b))、接着剤25が固化する前に樹脂含浸繊維シート2を重ね(図5(c))、接着剤を硬化させる照射ランプ31を所定時間当てると(図5(d))、接着剤が固化して、鋼部材21の欠陥部23をカバーする繊維強化樹脂製の補強樹脂部33が形成される(図5(e))。
【0031】
このように、樹脂含浸繊維シート2を使うことにより、繊維シートを欠陥部に当てて樹脂を硬化させるだけで処置が完了するうえ、特殊な技能は全く要求されないので、現場施工性は格段に向上する。ただし、樹脂含浸繊維シート2を事前に準備して、自然硬化しないように管理する必要が新たに生じる。しかし、樹脂含浸繊維シート2の管理は、含浸させる樹脂の性質に従って満たすべき条件が決まり、たとえば、熱硬化型樹脂では冷所保管、光硬化型樹脂では暗所保管、時間硬化型樹脂では短時間保管などの条件を満たすようにすればよい。
【0032】
図6は、本実施例の繊維シートを用いた鋼部材補修工法を従来の工法と比較して評価した結果を示す表である。従来工法の評価結果は、本明細書の背景技術の欄で説明した通りである。端部の繊維を減少させて応力緩和領域を設けた繊維シートを用いた鋼部材補修工法では、上記の通り、当技術分野に係る熟練技能を有しない通常の塗装工であっても施工可能であり、CFRPプレートを使う工法と比較して必要な工数は大きいが、繊維シートを1枚接着するだけなので現場施工性はよい。
【0033】
また、繊維強化樹脂部の端部に応力緩和領域が形成されているので、剥がれが防止でき、腐食対策となるので、耐久性が向上する。事前に各種サイズの繊維シートを準備しておけば、現場合わせで選択した繊維シートを貼り付けることができるので、材料手配は容易である。繊維シートの材料費が若干高いが、施工費用等を勘案すると、他の手法と比較して最も経済性がよい。こうした評価を総合すると、従来工法より優れた工法ということができる。
【実施例2】
【0034】
図7は本発明の第2実施形態に係る繊維シートを説明する図面で、(a)図は繊維シートの端部を示す平面図、(b)図は端部における繊維の質量変化を説明するグラフである。本実施形態の繊維シート1は、繊維束11の繊維軸方向の端部において、繊維束の長さを2段に短く摘んで繊維の量を段階的に減少させることにより、よりスムーズな応力緩和領域17を形成している。繊維の量が減少すれば、同じ応力に対する繊維の歪み量は大きくなり、鋼部材との間の応力緩和が図れる。
【実施例3】
【0035】
図8は本発明の第3実施形態に係る繊維シートの端部を示す平面図である。本実施形態の繊維シート1は、繊維束11の繊維軸方向の端部において、繊維束ごとの繊維の量を段階的に減少させることにより、応力緩和領域17を形成している。なお、繊維束の端部の繊維を削ぐようにして、繊維密度を徐々に減少させるようにすると、鋼部材との間でより円滑な応力緩和が生じる。
【実施例4】
【0036】
図9は本発明の第4実施形態に係る繊維シートの端部を示す平面図である。本実施形態の繊維シート1は、繊維束11の繊維軸方向の端部において、繊維束11の繊維の向きを変えることにより、元の繊維軸方向における実効的なヤング率を低下させている。このように、繊維シート1の端部における強化繊維のヤング率の繊維軸方向成分が低下するため、形成される繊維強化樹脂の端部に応力緩和領域17が形成される。なお、解け防止編み15は、繊維束11の繊維と異なる弱い糸を使っていて、鋼構造物の補強には貢献しない。また、同様な方法として、繊維束11の繊維軸方向の端部において、編み糸で編んで繊維束11をたるませるようにすることにより、元の繊維軸方向における実効的なヤング率を低下させる方法もある。
【実施例5】
【0037】
図10は本発明の第5実施形態に係る繊維シートの端部を示す平面図である。本実施形態の繊維シート1は、繊維束11の繊維軸方向の端部において、繊維束11の繊維を使って、メリヤス編み、ラッセル編み、パール編み、平編みなど、任意の編み方で編み物にすることにより、繊維の向きを変化させて元の繊維軸方向における剛性を弱化させ、実効的なヤング率を低下させることにより、応力緩和領域17を形成している。
【実施例6】
【0038】
図11は本発明の第6実施形態に係る繊維シートの端部を示す斜視図である。本実施形態の繊維シート1は、2方向強化繊維シートの上下左右4辺の繊維方向端部に繊維量を減少させた応力緩和領域17を設けたものである。2方向強化繊維シートを使って補強すると、対象とする構造部材が2方向以上の応力を受ける場合に有効である。繊維量を減少させた応力緩和領域は、一部の繊維束の末端を摘んで短くする方法、繊維束の端部を削ぐなどして繊維数を減少させる方法、などで形成することができる。
【0039】
図11に表示した本実施例の繊維シート1は、繊維シート1の端部において繊維束11の先端部分を1束おきに間引くことにより強化繊維の密度を低くして、応力緩和領域17を形成している。なお、2方向強化繊維シート1は、第1の方向に繊維軸を持つように繊維束11を並列配置した層と、第1方向と直交する第2の方向に繊維軸を持つように繊維束11を並列配置した層を、2層に重ねて形成されている。第1方向と第2方向の直交する繊維束11を経糸と緯糸として編むと、繊維の実効的なヤング率が低下して、鋼部材に貼付した繊維強化樹脂の補強効果が低下するからである。なお、繊維シート1は、繊維束11を各層ごとに組み付け糸で固定したものであっても、両層の繊維束11を一緒に組み付け糸で固定したものであっても良い。また、両層の繊維束11を芯鞘型融着糸等の熱融着機能を有する糸により固定したものであっても良い。
【実施例7】
【0040】
図12は本発明の第7実施形態に係る繊維シートの端部を示す斜視図である。本実施形態の繊維シート1は、2方向強化繊維シートであって、繊維束11の端部で繊維の向きを変更したり編み物を形成したりして、繊維方向における実効的なヤング率を低下させることにより応力緩和させたものである。図12に表示した、本実施形態の繊維シート1は、第1方向と第2方向の繊維束11の繊維軸方向の端部において、繊維束11の繊維を使って、メリヤス編み、ラッセル編み、パール編み、平編みなど、任意の編み方で編み物にすることにより、繊維の向きを変化させて元の繊維軸方向における剛性を弱化させ、実効的なヤング率を低下させることにより、応力緩和領域17を形成したものである。図12では、繊維束11の層それぞれで編み部を形成した上で重ねているが、繊維シート1端部の応力緩和領域17において、第1方向と第2方向の繊維束11をそれぞれ経糸と緯糸にして編んで編み部としても良い。
【0041】
なお、第6実施形態と第7実施形態は、繊維束11を2層重ねた2方向強化繊維シート1に係るものであるが、さらに異なる方向に繊維軸を有する繊維束11の層を加えた、3方向強化や4方向強化の繊維シートについても、同様の応力緩和領域を形成することが好ましい。
また、第2実施形態から第7実施形態の繊維シート1は、説明の都合上、あらかじめ樹脂を含浸させていない状態で表示されているが、第1実施形態のものと同様、樹脂を含浸して樹脂含浸繊維シート2として、現場に搬入して施工しても良いことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、橋梁や高速道路などの鋼構造物の補強や増強に利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 繊維シート
2 樹脂含浸繊維シート
11 繊維束
13 組付け糸
15 解け防止編み
17 応力緩和領域
21 鋼部材
23 欠陥部
25 接着剤
27 接着剤
29 ローラ
31 照射ランプ
33 補強樹脂
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁や高架道路などの鋼構造部材を繊維強化樹脂で補強するときに用いる繊維シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
橋梁や高架道路などの鋼構造物を補強する手段として、鋼部材上の必要箇所に高力ボルト(HTB)や溶接で鋼板を添接する工法が知られている。しかし、このような鋼板による補修方法では、重量のある鋼材を使用するため重機が必要となったり、溶接工や鳶工など施工技量が求められたりするので、現場施工性が良くない。また、施工対象の構造物に穴を開けたり溶接したりするので、疲労耐久性の低下を招く恐れがある。さらに、鋼材を添接した部分に雨水が浸入し易くなる場合も多く、高い品質の処置をすることが難しい。また、施工前に詳細形状寸法を決める設計図を準備して、適用する材料を調達しておく必要があり、材料手配に労力が掛かる。このような観点から、施工上の経済性はよいとはいえない。
【0003】
これに対して、炭素繊維、金属繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維などを用いて強化した繊維強化樹脂(FRP)を、コンクリートや鋼などの構造部材面に貼り付けて、ひび割れ進展の防止、腐食損傷部や疲労損傷部の補修補強などに利用する方法がある。繊維強化樹脂には、構造部材に生ずる応力に抗する方向に強い剛性を持つように繊維の方向を揃えた繊維シートが埋め込まれる。繊維強化樹脂に使われる繊維シートには、樹脂に浸漬固化して1方向に剛性を有するようになる1方向強化繊維シートばかりでなく、2方向強化繊維シート、場合によっては、3方向強化繊維シートや4方向強化繊維シートのものなどが適用されている。
【0004】
なお、1方向強化繊維シートは、一般に、繊維束を1方向に並列に配置し、繊維束同士の位置関係がずれないように組付け糸で編み込んで固定したものである。シート端部の繊維束、すなわち最外側の繊維束はしばしば解けて繊維束が綻びる場合があるので、最外側の繊維束に、繊維束に比べて強度の小さい編み込み糸で解け防止編みを施して、綻びを防止するようにしたものもある。解け防止編みに代えて、繊維端部を熱融着させてもよい。解け防止は、2方向強化繊維シートなどにも必要になり、周囲の各辺に施される場合もある。
【0005】
特許文献1には、所定強度を持った厚さ1.2mmの炭素繊維強化樹脂(CFRP)板をあらかじめ接着剤により厚さが数mmになるまで重ね合わせて必要な引張強度を持つようにしたものを、橋梁の鋼製部材の下面に接着剤で接合して補強する工法が開示されている。なお、梁の中央では曲げモーメントが大きくなるため、中央部付近では接合するCFRP板の枚数を増やすことができる。図13は特許文献1に記載の工法におけるCFRP板の添接状態を説明する側面図、図14はCFRP板の端部を示す拡大図である。
【0006】
一般に、鋼部材のヤング係数に比較してCFRP板のヤング係数はかなり高いので、厚さが1mmを超えるようなCFRP板を用いた場合には鋼部材との間で剛性が大きく相違するため、鋼構造物の使用中に鋼部材の表面からCFRP板が剥離し易くなる。
たとえば、図13に示すように、CFRP板を鋼部材の下面に接着した場合、曲げモーメントが作用したときなど図14に示す左右方向に引張力が働いたとすると、鋼部材とCFRP板の剛性差に基づいて両者の接着面に水平せん断力Hが作用する。図15は、このときのせん断力Hを、接着したCFRP板端面からの距離xに対してプロットしたグラフである。せん断力Hは、端面から25mm付近に鋭いピークを持つことが分かる。このピーク値が接着材の耐剥離強度を超えると剥離が生じる。
【0007】
これに対して、特許文献2には、複数の強化繊維シートの端部を引張力が作用する方向に階段状に重なるように鋼部材の表面に接着して補強する、シートずらし貼り工法が開示されている。特許文献1に開示された工法では、あらかじめ積層・固化された厚さが数mmのCFRP板を使うのに対して、特許文献2に開示された工法では、炭素繊維などの強化繊維を樹脂未含浸の厚さ0.9mm以下の薄い布状にした強化繊維シートを複数枚使用する。
【0008】
特許文献2に開示された工法では、鋼部材の表面に含浸接着剤を塗り、含浸接着剤が固化する前に強化繊維シートを重ね、その上に含浸接着剤を塗り、ローラ等を用いて繊維間に含浸接着剤を浸透させて固化するのを待つ。次に、強化繊維シートを前の強化繊維シートの端面から約25mm内側にずらすこと以外は同じ手順を繰り返して、強化繊維シートを重ねて固化する。図16は、特許文献2に開示された鋼構造物補強工法における炭素繊維強化樹脂の端部を示す側面図である。図16に示すように、3−5枚など、必要とされる枚数の強化繊維シートを、所定幅ずらしながら重ねて、同じ手順で接着して固化することにより、繊維強化樹脂層を形成して鋼部材を補強する。
【0009】
図17は、図16に示した炭素繊維強化樹脂の端部における水平せん断力の変化を示すグラフである。特許文献2に開示されたシートずらし貼り工法では、図17に示すように、強化繊維シートの端面に見られる水平せん断力Hのピークは分散してより広がる代わりに、ピーク値が低下して緩和されるので、端部における剥離は起こり難くなることが分かる。
【0010】
特許文献2のシートずらし貼り工法は、通常の塗装工が簡単に施工することができるが、多くの樹脂未含浸繊維シートを貼り付ける必要があり、現場施工性は良くない。しかし、シートずらし貼り工法では、強化繊維シートをずらして貼ることにより応力集中が緩和され、端部からの剥がれを防止できる。繊維強化樹脂の端部が剥がれにくいと腐食も防止でき、耐久性が向上する。ボルト穴の加工や溶接熱による強度低下を招かないので、補強品質を向上させることができる。また、事前に特別な準備をしなくても、強化繊維シートを現場合わせで切断して利用することができるので、材料手配は簡単である。ただし、現場における接着剤の重ね塗りなど、現場における施工工数は多いので、経済性は優れていると言い難い。
【0011】
さらに、橋梁や高架道路などの鋼構造物を補強する手段として、現場の寸法に合わせたプレキャストの繊維強化樹脂板を貼り付ける方法がある。この方法は、工場で鋼部材の対象部分に適合する繊維強化樹脂板をあらかじめ製造しておいて、完成した繊維強化樹脂板を現場に搬入して接着剤で貼付するものである。現場では、工場で製作した樹脂板を構造物に接着するだけであるので、この分野に熟練していない通常の塗装工でも施工可能で、現場施工性は良好である。ただし、繊維強化樹脂板端部に応力集中が発生するため、剥がれやすい。また、鋼材との一体性に懸念があり、補強品質は必ずしも良くない。さらに、繊維強化樹脂板は、施工前に詳細形状寸法を決める設計図を準備して工場で製造するため、材料手配に労力が掛かる。このように、現場工事費は抑えられるが、工場製作費が高い。総合的にみて、経済性が優れているとは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−193425号公報
【特許文献2】特開2007−332674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
このように、橋梁や高架道路などの鋼構造物を補強する手段として、構造部材に生ずる応力に抗する方向に強い剛性を持つように繊維の方向を揃えた繊維シートを埋め込んだ繊維強化樹脂で補強する方法を用いることができる。しかし、鋼部材と繊維強化樹脂の間で剛性が大きく相違することから、両者の接着面に働く水平せん断力が端面に近いところに鋭いピークを持つため、この方法には、鋼構造物の使用中に繊維強化樹脂の端部から剥離し易いという問題がある。
【0014】
この問題を解決する目的で開発された、複数の強化繊維シートを少しずつずらしながら重ねては接着剤で接着固化する、シートずらし貼り工法では、水平せん断力のピークが緩和されるので端部における剥離は起こり難くなるが、現場における接着剤の重ね塗りなど、現場における施工工数が多く経済性に問題があった。
なお、プレキャストの繊維強化樹脂板を貼り付ける方法は、工場で製作した樹脂板を構造物に接着するだけであるので、現場施工性は良好であるが、繊維強化樹脂板端部で剥がれやすいという問題が解決されていない。
【0015】
このように、従来の鋼構造物補強工法は、いずれも何らかの問題を抱えていて、施工時や構造物の使用中に困難が生ずる。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、現場施工性がよく、端面で剥離しにくい繊維強化樹脂を用いた鋼構造物補強工法において使用する繊維シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、鋼構造物補強用繊維強化樹脂に用いる本発明の繊維シートは、複数の繊維が互いに平行に配列されて形成された繊維束を並列に並べて固定したシートであって、繊維束の繊維方向端部に応力緩和領域を設けたことを特徴とする。応力緩和領域は、繊維束を間引くことにより形成される。また、繊維束の繊維量を減少させることにより形成することもできる。さらに、繊維束の端部において繊維の方向を屈曲させることにより、繊維方向の剛性を実質的に減少させて形成することができる。また、繊維束を編むことにより剛性を減少させて形成してもよい。
【0017】
さらに、本発明の繊維シートは、現場で対象構造物に適用する前には柔軟で、現場での処理により硬化する接着剤をあらかじめ含浸したものであってもよい。接着剤は、常温硬化型、熱硬化型もしくは光硬化型の、エポキシ樹脂、MMA(メタクリル)樹脂等のアクリル樹脂、ビニールエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂のいずれかを用いることができる。また、繊維束は、炭素繊維、金属繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維のいずれかが単独であるいは複数種混合することにより形成される。
また、本発明の繊維シートは、複数の繊維束を並列に並べて固定するが、同種繊維の繊維束に限らず、異種繊維の繊維束を並べて用いても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明の鋼構造物補強用繊維強化樹脂に用いる繊維シートは、対象鋼部材に貼付する繊維強化樹脂に強化繊維として埋め込んで鋼部材を強化するが、繊維強化樹脂の強化方向になる繊維束の繊維方向の端部に応力緩和領域が設けられるため、従来発生した樹脂端部における剥離が生じにくくなる。さらに、本発明の繊維シートを用いた鋼構造物補強工法では、通常、鋼部材に接着剤を施し、その上に本発明の繊維シートを1枚だけ当てて、繊維シートに接着剤を与えて含浸させ、さらにその上から接着剤を加えて、熱や光で硬化させる。この工法には、現場において特殊な技能を要求するような作業がなく、普通の塗装工など非熟練工が簡単に施工することができる。
また、さらに、繊維シートに樹脂をあらかじめ含浸させて硬化させずにおいた樹脂含浸繊維シートを用いる場合は、現場で繊維シートに接着剤を含浸させる手間を省くことができるので、現場施工性は一段と向上することになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係る繊維シートを示す平面図である。
【図2】図1の繊維シートの側面断面図である。
【図3】本実施例の繊維シートを用いた鋼構造物補強工法の手順例を示す工程図である。
【図4】本実施例の補強樹脂部の端部における水平せん断力の変化を示すグラフである。
【図5】本実施例において樹脂含浸繊維シートを用いたときの鋼構造物補強工法の手順例を示す工程図である。
【図6】本実施例の繊維シートの利点を従来工法と比較して示す表である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る繊維シートの端部を示す平面図と繊維密度を表すグラフである。
【図8】本発明の第3実施形態に係る繊維シートの端部を示す平面図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係る繊維シートの端部を示す平面図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係る繊維シートの端部を示す平面図である。
【図11】本発明の第6実施形態に係る繊維シートの端部を示す斜視図である。
【図12】本発明の第7実施形態に係る繊維シートの端部を示す斜視図である。
【図13】従来の鋼構造物補強工法の1例を説明する概念図である。
【図14】図13の炭素繊維強化樹脂の端部を示す側面図である。
【図15】図13の炭素繊維強化樹脂の端部における水平せん断力の変化を示すグラフである。
【図16】従来の別の鋼構造物補強工法における炭素繊維強化樹脂の端部を示す側面図である。
【図17】図16の炭素繊維強化樹脂の端部における水平せん断力の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は本発明の第1実施形態に係る繊維シートを示す平面図、図2は図1のII−II線で切断して示した繊維シートの側面断面図である。以下、本明細書の図面において、同じ機能を有する要素については同じ参照番号を付すことにより、説明を簡略にすると共に重複した説明を避けるようにした。
【0022】
本実施例の繊維シート1は、鋼構造物の鋼部材を補強するために貼付された繊維強化樹脂に含有される強化繊維を供給するもので、図1および図2に示すように、強化軸の方向に強化繊維の軸方向が来るようにするため、繊維束11を軸方向が平行になるように平面上に1方向に並べて、組付け糸13で繊維束11が移動しないように止めて1方向強化の繊維シートとしたものである。なお、最外側の繊維束11の繊維軸方向でない側方端部には、繊維束に比べて強度の小さい編み込み糸で解け防止編み15を施して、繊維束が解けて綻びるのを防止している。また、組み付け糸13の代わりに、たとえば芯鞘型融着糸等の熱融着機能を有する糸により繊維束11を保形するような構造であっても良い。
【0023】
繊維束11は、繊維の屈曲により強度を損ねることがないように、長尺のフィラメント糸を互いに絡まないように平行に並べて束ねたものである。繊維束11には、炭素繊維、金属繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維などの高張力繊維が単独であるいは複数種混合で束ねられている。また、繊維シート1の両側部に設けた解け防止編みに代えて、熱融着機能を持った繊維糸を配し、繊維束の端部を熱融着させてフィラメント糸同士が分かれないようにしてもよい。
【0024】
本発明は、鋼部材に貼着したときの繊維強化樹脂端における応力集中を緩和して繊維強化樹脂が鋼部材から剥離するのを防ぐことを目的として、図1に表示した通り、繊維シート1の繊維軸方向における端部に応力緩和領域17を設けることを特徴とする。なお、本発明における応力緩和領域とは、繊維強化樹脂の繊維強化方向における見かけ上の繊維シート弾性係数を減少させて応力集中を緩和する部分をいう。
本実施例においては、応力緩和領域17に当たる部分で、一部の繊維束11の先端部分を間引くことにより、強化繊維の密度を低くして、鋼部材に貼着したときに生じる応力を緩和させるようにしている。本実施例においては、応力緩和領域17は、25mmから50mm程度の幅で設定するとよい。
【0025】
図3は、本実施例の繊維シート1を用いて鋼構造物の鋼部材21を補強するときの手順例を示す工程図である。
ひび割れや腐食損傷などの欠陥がある鋼部材21を見つけたときは(図3(a))、欠陥部23に不陸修正剤を適用して平滑化した後に、欠陥部23を覆う部分の表面に含浸接着剤25を塗り(図3(b))、それが固化する前に繊維シート1を重ね(図3(c))、繊維シート1に含浸したうえで表面に溢れる程度に含浸接着剤を塗り、ローラ29等を用いて繊維間に含浸接着剤を浸透させると共に表面を平坦化する(図3(d))。繊維シート1は、欠陥部23を覆う部分の大きさに対応するものであればよく、無駄な大きさのものを使わなくて済むように、たとえば、厚み0.5mmから3mm、幅25mmから50mm、長さ50mmから200mm、あるいは幅1m程度、長さ2mから5mなど、ありうる欠陥部の状況に合わせた適当なサイズのものを複数種類準備しておいてもよい。
【0026】
含浸接着剤として、常温硬化型、熱硬化型もしくは光硬化型の、エポキシ樹脂、MMA(メタクリル)樹脂等のアクリル樹脂、ビニールエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などを用いることができる。光硬化型のたとえば紫外線硬化型接着剤を使用したときは、接着剤を硬化させる紫外線を発生する照射ランプ31を所定時間当てると(図3(e))、所要の紫外線エネルギーを吸収した接着剤が固化して、鋼部材21の欠陥部23をカバーする繊維強化樹脂製の補強樹脂部33が形成される(図3(f))。
【0027】
図4は、本実施例における繊維シートを用いて形成された補強樹脂部33の端部近傍に発生する水平せん断力Hのグラフである。図3の手順によって形成された補強樹脂部33は、薄い繊維シートを強化繊維として含有する薄い補強樹脂として形成され、補強樹脂部33の端部における強化繊維の密度が低下しているので、鋼部材21と補強樹脂部33の界面において作用する水平せん断力Hは、図4に示すように、補強樹脂端部近傍に高いピーク値を持たず、十分緩和されている。したがって、補強樹脂が端部を起点として剥離する現象が抑制され、耐久性のある信頼性の高い補強ができる。
【0028】
なお、本実施例の繊維シート1は、現場で接着剤を含浸させて固化することにより樹脂の強化繊維として機能するものであるので、現場に持ち込むまでの管理が容易であり、現場施工の際に、繊維束に接着剤を含浸させ、表面を平坦化させる必要はあるが、熟練工によらずに施工が可能である。
【0029】
また、現場施工時間短縮のため、繊維シート1にあらかじめ接着剤を含浸させておいて、現場では鋼部材に繊維シート1を当てて硬化させるだけで補強樹脂が形成できるようにした樹脂含浸繊維シート2も利用することができる。図5は、光硬化型樹脂含浸繊維シート2を使って鋼構造物の鋼部材21を補強するときの手順例を示す工程図である。
【0030】
欠陥部23の存在する鋼部材21に対して(図5(a))、欠陥部23を覆う部分の表面に含浸接着剤25を塗り(図5(b))、接着剤25が固化する前に樹脂含浸繊維シート2を重ね(図5(c))、接着剤を硬化させる照射ランプ31を所定時間当てると(図5(d))、接着剤が固化して、鋼部材21の欠陥部23をカバーする繊維強化樹脂製の補強樹脂部33が形成される(図5(e))。
【0031】
このように、樹脂含浸繊維シート2を使うことにより、繊維シートを欠陥部に当てて樹脂を硬化させるだけで処置が完了するうえ、特殊な技能は全く要求されないので、現場施工性は格段に向上する。ただし、樹脂含浸繊維シート2を事前に準備して、自然硬化しないように管理する必要が新たに生じる。しかし、樹脂含浸繊維シート2の管理は、含浸させる樹脂の性質に従って満たすべき条件が決まり、たとえば、熱硬化型樹脂では冷所保管、光硬化型樹脂では暗所保管、時間硬化型樹脂では短時間保管などの条件を満たすようにすればよい。
【0032】
図6は、本実施例の繊維シートを用いた鋼部材補修工法を従来の工法と比較して評価した結果を示す表である。従来工法の評価結果は、本明細書の背景技術の欄で説明した通りである。端部の繊維を減少させて応力緩和領域を設けた繊維シートを用いた鋼部材補修工法では、上記の通り、当技術分野に係る熟練技能を有しない通常の塗装工であっても施工可能であり、CFRPプレートを使う工法と比較して必要な工数は大きいが、繊維シートを1枚接着するだけなので現場施工性はよい。
【0033】
また、繊維強化樹脂部の端部に応力緩和領域が形成されているので、剥がれが防止でき、腐食対策となるので、耐久性が向上する。事前に各種サイズの繊維シートを準備しておけば、現場合わせで選択した繊維シートを貼り付けることができるので、材料手配は容易である。繊維シートの材料費が若干高いが、施工費用等を勘案すると、他の手法と比較して最も経済性がよい。こうした評価を総合すると、従来工法より優れた工法ということができる。
【実施例2】
【0034】
図7は本発明の第2実施形態に係る繊維シートを説明する図面で、(a)図は繊維シートの端部を示す平面図、(b)図は端部における繊維の質量変化を説明するグラフである。本実施形態の繊維シート1は、繊維束11の繊維軸方向の端部において、繊維束の長さを2段に短く摘んで繊維の量を段階的に減少させることにより、よりスムーズな応力緩和領域17を形成している。繊維の量が減少すれば、同じ応力に対する繊維の歪み量は大きくなり、鋼部材との間の応力緩和が図れる。
【実施例3】
【0035】
図8は本発明の第3実施形態に係る繊維シートの端部を示す平面図である。本実施形態の繊維シート1は、繊維束11の繊維軸方向の端部において、繊維束ごとの繊維の量を段階的に減少させることにより、応力緩和領域17を形成している。なお、繊維束の端部の繊維を削ぐようにして、繊維密度を徐々に減少させるようにすると、鋼部材との間でより円滑な応力緩和が生じる。
【実施例4】
【0036】
図9は本発明の第4実施形態に係る繊維シートの端部を示す平面図である。本実施形態の繊維シート1は、繊維束11の繊維軸方向の端部において、繊維束11の繊維の向きを変えることにより、元の繊維軸方向における実効的なヤング率を低下させている。このように、繊維シート1の端部における強化繊維のヤング率の繊維軸方向成分が低下するため、形成される繊維強化樹脂の端部に応力緩和領域17が形成される。なお、解け防止編み15は、繊維束11の繊維と異なる弱い糸を使っていて、鋼構造物の補強には貢献しない。また、同様な方法として、繊維束11の繊維軸方向の端部において、編み糸で編んで繊維束11をたるませるようにすることにより、元の繊維軸方向における実効的なヤング率を低下させる方法もある。
【実施例5】
【0037】
図10は本発明の第5実施形態に係る繊維シートの端部を示す平面図である。本実施形態の繊維シート1は、繊維束11の繊維軸方向の端部において、繊維束11の繊維を使って、メリヤス編み、ラッセル編み、パール編み、平編みなど、任意の編み方で編み物にすることにより、繊維の向きを変化させて元の繊維軸方向における剛性を弱化させ、実効的なヤング率を低下させることにより、応力緩和領域17を形成している。
【実施例6】
【0038】
図11は本発明の第6実施形態に係る繊維シートの端部を示す斜視図である。本実施形態の繊維シート1は、2方向強化繊維シートの上下左右4辺の繊維方向端部に繊維量を減少させた応力緩和領域17を設けたものである。2方向強化繊維シートを使って補強すると、対象とする構造部材が2方向以上の応力を受ける場合に有効である。繊維量を減少させた応力緩和領域は、一部の繊維束の末端を摘んで短くする方法、繊維束の端部を削ぐなどして繊維数を減少させる方法、などで形成することができる。
【0039】
図11に表示した本実施例の繊維シート1は、繊維シート1の端部において繊維束11の先端部分を1束おきに間引くことにより強化繊維の密度を低くして、応力緩和領域17を形成している。なお、2方向強化繊維シート1は、第1の方向に繊維軸を持つように繊維束11を並列配置した層と、第1方向と直交する第2の方向に繊維軸を持つように繊維束11を並列配置した層を、2層に重ねて形成されている。第1方向と第2方向の直交する繊維束11を経糸と緯糸として編むと、繊維の実効的なヤング率が低下して、鋼部材に貼付した繊維強化樹脂の補強効果が低下するからである。なお、繊維シート1は、繊維束11を各層ごとに組み付け糸で固定したものであっても、両層の繊維束11を一緒に組み付け糸で固定したものであっても良い。また、両層の繊維束11を芯鞘型融着糸等の熱融着機能を有する糸により固定したものであっても良い。
【実施例7】
【0040】
図12は本発明の第7実施形態に係る繊維シートの端部を示す斜視図である。本実施形態の繊維シート1は、2方向強化繊維シートであって、繊維束11の端部で繊維の向きを変更したり編み物を形成したりして、繊維方向における実効的なヤング率を低下させることにより応力緩和させたものである。図12に表示した、本実施形態の繊維シート1は、第1方向と第2方向の繊維束11の繊維軸方向の端部において、繊維束11の繊維を使って、メリヤス編み、ラッセル編み、パール編み、平編みなど、任意の編み方で編み物にすることにより、繊維の向きを変化させて元の繊維軸方向における剛性を弱化させ、実効的なヤング率を低下させることにより、応力緩和領域17を形成したものである。図12では、繊維束11の層それぞれで編み部を形成した上で重ねているが、繊維シート1端部の応力緩和領域17において、第1方向と第2方向の繊維束11をそれぞれ経糸と緯糸にして編んで編み部としても良い。
【0041】
なお、第6実施形態と第7実施形態は、繊維束11を2層重ねた2方向強化繊維シート1に係るものであるが、さらに異なる方向に繊維軸を有する繊維束11の層を加えた、3方向強化や4方向強化の繊維シートについても、同様の応力緩和領域を形成することが好ましい。
また、第2実施形態から第7実施形態の繊維シート1は、説明の都合上、あらかじめ樹脂を含浸させていない状態で表示されているが、第1実施形態のものと同様、樹脂を含浸して樹脂含浸繊維シート2として、現場に搬入して施工しても良いことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、橋梁や高速道路などの鋼構造物の補強や増強に利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 繊維シート
2 樹脂含浸繊維シート
11 繊維束
13 組付け糸
15 解け防止編み
17 応力緩和領域
21 鋼部材
23 欠陥部
25 接着剤
27 接着剤
29 ローラ
31 照射ランプ
33 補強樹脂
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の繊維が互いに平行に配列されて形成された繊維束を並列に並べて固定したシートであって、繊維束の繊維方向端部に応力緩和領域を設けたことを特徴とする鋼構造物補強用繊維強化樹脂に用いる繊維シート。
【請求項2】
前記繊維束は、炭素繊維、金属繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維のいずれかのフィラメント糸が単独であるいは複数種混合することにより形成される、請求項1記載の繊維シート。
【請求項3】
前記応力緩和領域は、該応力緩和領域において繊維束を間引くことにより形成される、請求項1または2記載の繊維シート。
【請求項4】
前記応力緩和領域は、繊維束の繊維量を減少させることにより形成される、請求項1または2記載の繊維シート。
【請求項5】
前記応力緩和領域は、繊維束の繊維の方向を屈曲させることにより形成される、請求項1または2記載の繊維シート。
【請求項6】
前記応力緩和領域は、繊維束の繊維を編むことにより形成される、請求項1または2記載の繊維シート。
【請求項7】
前記繊維束は、現場での処理により硬化する樹脂をあらかじめ含浸した、請求項1から6のいずれか1項に記載の繊維シート。
【請求項8】
前記樹脂は、常温硬化型、熱硬化型もしくは光硬化型の、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ビニールエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂のいずれかである、請求項7記載の繊維シート。
【請求項1】
複数の繊維が互いに平行に配列されて形成された繊維束を並列に並べて固定したシートであって、繊維束の繊維方向端部に応力緩和領域を設けたことを特徴とする鋼構造物補強用繊維強化樹脂に用いる繊維シート。
【請求項2】
前記繊維束は、炭素繊維、金属繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維のいずれかのフィラメント糸が単独であるいは複数種混合することにより形成される、請求項1記載の繊維シート。
【請求項3】
前記応力緩和領域は、該応力緩和領域において繊維束を間引くことにより形成される、請求項1または2記載の繊維シート。
【請求項4】
前記応力緩和領域は、繊維束の繊維量を減少させることにより形成される、請求項1または2記載の繊維シート。
【請求項5】
前記応力緩和領域は、繊維束の繊維の方向を屈曲させることにより形成される、請求項1または2記載の繊維シート。
【請求項6】
前記応力緩和領域は、繊維束の繊維を編むことにより形成される、請求項1または2記載の繊維シート。
【請求項7】
前記繊維束は、現場での処理により硬化する樹脂をあらかじめ含浸した、請求項1から6のいずれか1項に記載の繊維シート。
【請求項8】
前記樹脂は、常温硬化型、熱硬化型もしくは光硬化型の、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ビニールエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂のいずれかである、請求項7記載の繊維シート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−203153(P2010−203153A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−50029(P2009−50029)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【出願人】(599104369)日鉄コンポジット株式会社 (51)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)
【出願人】(599104369)日鉄コンポジット株式会社 (51)
【Fターム(参考)】
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