説明

情報処理装置、その制御プログラムおよび異常検出方法、

【課題】 RTCの計時日時の狂いを高精度で検出し、情報処理装置の動作に対する信頼性を大幅に向上させること。
【解決手段】 電源の投入時において、RTCの計時日時TRTCが不揮発性の記憶手段に記憶された基準日時Tよりも進んでいる場合には当該計時日時TRTCを以降の制御用に設定し、計時日時TRTCが基準日時Tよりも遅れている場合にはエラー処理を実行する。さらに、計時日時TRTCが基準日時Tよりも進んでいるならば、電源の供給が停止されるまでの間に設定された特定のタイミングで前記記憶手段に記憶された基準日時Tを計時日時TRTCで更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RTC(Real Time Clock)を搭載した情報処理装置、その制御プログラムおよびRTCの異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ、事務用コンピュータ、商品販売データ処理装置等の情報処理装置は、内蔵したマザーボード上に計時専用の集積回路であるRTCを実装している。RTCは、情報処理装置に外部電源から電源が供給されている場合には当該電源にて動作し、情報処理装置に外部電源から電源が供給されていない場合には内蔵電池から電源供給を受けて動作する。OS(Operating System)は、情報処理装置のシステム起動時にRTCから日時を検出し、その後は同じくマザーボード上に実装された高精度タイマ等を用いて独自に日時を管理する。
【0003】
このように、RTCの計時日時は、情報処理装置のシステム日時を決定するものであり、正確な計時が要求される。しかし、外部電源供給の停止時における内蔵電池の電力切れや、温度等の周辺環境の影響によって計時に狂いが生じる場合がある。このような事情に鑑みて、一般的には、マザーボードに実装されたRTCの計時日時と、BIOS−ROM(Basic Input/Output System−Read Only Memory)に予め設定された基準日時とを比較してRTCの計時日時が基準日時よりも遅れている場合にRTCの異常を検出するプログラムがBIOSに組み込まれている。
【0004】
さらに、よりRTCの計時動作の信頼性を向上させるための発明もなされている。例えば特許文献1に記載された電子機器は、マザーボードに実装されたRTCの計時日時と、情報処理装置に外付けした別途のRTCの計時日時とを比較し、より信頼できる一方の計時日時を制御用として選定する制御方法を採用している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように基準日時を用いてRTCの異常を検出する場合、当該基準日時は、BIOS−ROMの製造時に予め設定されることが多い。一般的に基準日時は、BIOS−ROMのセキュア領域等に固定値として設定され、BIOSやOSからは書き換えることができないようになっている。したがって、システム起動時にRTCから検出される日時が、固定値である上記基準日時よりも遅れている場合にしかRTCの異常として検出することができなかった。さらには、BIOS−ROMの製造時から時間が経過するにつれて閾値と実際の日時との差が増大し、異常検出の精度が低下するとの問題があった。
【0006】
また、上記特許文献1に記載された電子機器のように、別途のRTCを用いる場合には、製造コストが増大してしまうとの問題や、双方のRTCの計時日時に狂いが生じた場合に異常を検出できない等の問題がある。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、製造コストを抑えつつもRTCの計時日時の狂いを高精度で検出し、情報処理装置の動作に対する信頼性を大幅に向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の視点は、日時を計時する計時手段と、基準日時を記憶する記憶手段と、電源の投入時において、前記計時手段の計時日時が前記記憶手段に記憶された基準日時よりも進んでいる場合には当該計時日時を以降の制御用に設定し、前記計時日時が前記基準日時よりも遅れている場合にはエラー処理を実行する第1制御手段と、この第1制御手段による処理の後、電源の供給が停止されるまでの間に設定された特定のタイミングで前記記憶手段に記憶された基準日時を前記計時手段による計時日時で更新する第2制御手段とを備えた情報処理装置である。
【0009】
本発明の第2の視点は、上記情報処理装置の制御プログラムである。
【0010】
本発明の第3の視点は、日時を計時する計時手段と、基準日時を記憶する記憶手段とを備えた情報処理装置における計時日時の異常検出方法であって、電源の投入時において、前記計時手段の計時日時が、前記記憶手段に記憶された基準日時よりも進んでいる場合には当該計時日時を以降の制御用に設定し、前記計時日時が前記基準日時よりも遅れている場合にはエラー処理を実行する第1制御ステップと、この第1制御ステップの後、電源の供給が停止されるまでの間に設定された特定のタイミングで前記記憶手段に記憶された基準日時を前記計時手段による計時日時で更新する第2制御ステップとを備えた異常検出方法である。
【発明の効果】
【0011】
かかる手段を講じた本発明によれば、製造コストを抑えつつもRTCの計時情報の狂いを高精度で検出し、情報処理装置の動作に対する信頼性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態における情報処理装置の要部構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態におけるRTC異常検出処理の流れ図。
【図3】従来のRTC異常検出処理による効果を示す図。
【図4】同実施形態におけるRTC異常検出処理による効果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る情報処理装置1の要部構成を示すブロック図である。情報処理装置1は、制御の中枢として機能するCPU(Central Processing Unit)2を備えている。そして、このCPU2に対し、BIOS−ROMとして機能するフラッシュROM3、RAM(Random Access Memory)4、RTC5、キーボード6、ディスプレイ7、およびHDD(Hard Disk Drive)8を、アドレスバスやデータバス等のバスライン9を介して接続し、商用交流電源等の外部電源20からの電源供給を受けて動作する。なお、CPU2、フラッシュROM3、RAM4およびRTC5は、情報処理装置1の動作に必要な各種の制御回路とともに、マザーボード上に実装されている。
【0014】
フラッシュROM3は、書き換え可能な不揮発性記憶素子にて構成され、BIOSプログラム、POST(Power-On Self Test)、VGA−BIOS(Video Graphics Array-Basic Input/Output System)プログラム等を記憶し、基準日時記憶エリア10を有している。前記BIOSプログラムは、情報処理装置1のシステム起動当初に呼び出されて起動処理を実行し、OSに処理を繋ぐ基本動作プログラムである。前記POSTは、BIOSプログラムが各ハードウェアを初期化する際に実行するテストプログラムである。前記VGA−BIOSプログラムは、VGAを制御するドライバの役割を担う。前記基準日時記憶エリア10は、本実施形態における記憶手段として機能するものであり、BIOSプログラムの制御下で行われるRTC5の計時日時の異常検出に使用される基準日時T(年:月:日:時:分:秒)が記憶されている。
【0015】
RAM4は、情報処理装置1の処理場面に応じて各種の作業用記憶エリアを形成する。
【0016】
RTC5は、本実施形態における計時手段として機能するものであり、年,月,日,時,分,秒を含む日時TRTC(年:月:日:時:分:秒)を計時する。RTC5は、電池11にてバックアップされている。すなわち、情報処理装置1に外部電源20からの電源が供給されているときには外部電源20から動作電源の供給を受け、情報処理装置1に外部電源20からの電源が供給されていないときには電池11から動作電源の供給を受ける。したがって、外部電源20から電源が供給されているか否かに関わらず、RTC5は計時動作を継続することができる。
【0017】
キーボード6は、情報処理装置1と一体として設けられるか、あるいはUSBポートなどの汎用インターフェイスを介して接続されている。キーボード6にはテンキーやアルファベットキー等の各種操作キーが配設されており、押下げされた操作キーに対応する電気信号をCPU2に通知する。
【0018】
ディスプレイ7は、情報処理装置1と一体として設けられるか、あるいはビデオケーブル等を介して接続されたLCD(Liquid Cristal Display),CRT(Cathode Ray Tube),OEL(Organic Electro-Luminescence)等の表示器である。ディスプレイ7は、制御回路から出力されるビデオ信号を取り込んで、当該信号に応じた画像を表示する。
【0019】
HDD8は、OSファイル、アプリケーションファイル、各種データベース等を記憶した大容量記憶デバイスである。
【0020】
CPU2は、フラッシュROM3に記憶されたBIOSプログラムによるソフトウェア制御により、次の(1),(2)の機能を実現する。
【0021】
(1)電源の投入時において、RTC5の計時日時TRTCが基準日時記憶エリア10に記憶された基準日時TSよりも進んでいる場合には当該計時日時TRTCを以降の制御用に設定し、計時日時TRTCが基準日時TSよりも遅れている場合にはエラー処理を実行する第1制御機能。
【0022】
(2)第1制御機能による処理の後、電源の供給が停止されるまでの間に設定された特定のタイミングで基準日時記憶エリア10に記憶された基準日時TSをRTC5による計時日時TRTCで更新する第2制御機能。
【0023】
次に、作用について説明する。
筐体に設けられた電源投入釦の押下げ等により、情報処理装置1に外部電源20から動作電源の供給が開始されると、フラッシュROM3からBIOSプログラムがRAM4にロードされ、システム起動処理が開始される。システム起動処理においては、先ずPOSTによる各デバイスの初期化処理が実行される。初期化処理が完了すると、図2のフローチャートに示した処理が実行される。
【0024】
先ず、CPU2は、フラッシュROM3の基準日時記憶エリア10を参照し(ステップS1)、当該エリア10に基準日時TSが記憶されているか否かを判断する(ステップS2)。
【0025】
基準日時記憶エリア10にアクセスでき、当該エリア10に基準日時TSが記憶されていることを確認したならば(ステップS2のYes)、CPU2は、RTC5にアクセスして現在の計時日時TRTCを取得し、計時日時TRTCが基準日時TSよりも進んでいるか否かを判断する(ステップS3)。
【0026】
計時日時TRTCが基準日時TSよりも進んでいる場合(ステップS3のYes)、CPU2は、計時日時TRTCにて基準日時記憶エリア10に記憶された基準日時TSを更新する(ステップS4)。その後、BIOSプログラムによる起動処理を進行し、HDD8からOSファイルを呼び出してOSを起動する。このときCPU2は、OSの制御により計時日時TRTCを以降の制御に使用する日時として設定し(ステップS5)、当該処理を終了する。その後、マザーボードに実装された図示せぬ高精度タイマにより計時日時TRTCを基準としたシステム日時が計時され、当該システム日時を用いて各種制御タイミングが管理される。
【0027】
ステップS2の処理において、当該システム起動がフラッシュROM3の製造後第1回目の起動であるために基準日時TSが記憶されていない場合や、何らかの障害により基準日時TSが消失している場合等には、CPU2は、基準日時TSが記憶されていないと判断する(ステップS2のNo)。この場合、ステップS3およびステップS4の処理を行わずに計時日時TRTCを基準日時TSとして基準日時記憶エリア10に記憶する(ステップS6)。その後、既述のように計時日時TRTCを以降の制御に使用する日時として設定し(ステップS5)、計時日時TRTCを基準としたシステム日時が前記高精度タイマにより計時される。
【0028】
ステップS3の処理において、計時日時TRTCが基準日時記憶エリア10に記憶された基準日時Tよりも遅れている場合(ステップS3のNo)、CPU2は、エラー処理を実行する(ステップS7)。
エラー処理では、ディスプレイ7にRTC5の計時日時TRTCが異常である旨のエラーメッセージを表示するとともに図示せぬスピーカからビープ音を発し、発生起動処理を継続するか中断するかの選択を受け付ける。このとき、ユーザは、キーボード6を介して起動処理の継続または中断の選択が可能である。起動処理の継続が選択されたならば、RTC5が示す計時日時TRTCを用いてシステムの起動処理が進行される。但し、基準日時記憶エリア10の基準日時Tは更新されず、前回の起動処理にて更新された日時のまま保持される。一方、起動処理の中断が選択されたならば、OSを呼び出さずに起動を中断し、外部電源20からの電源の取り込みを停止する。
【0029】
なお、前記エラー処理にてユーザに現在日時の入力を求める処理を加えてもよい。この処理を行う場合には、例えばディスプレイ7に現在日時の入力受付画面を表示し、年,月,日,時間,分,秒の単位での日時情報の入力を受け付ける。そして、ユーザがキーボード6を介して入力した現在日時にてRTC5の計時日時TRTCを修正し、起動処理を中断して再起動をかける。このようにすると、再起動後のRTC異常検出処理において、修正後の計時日時TRTCが基準日時Tとの比較に用いられる(ステップS3)。このとき、計時日時TRTCが基準日時Tよりも進んでいれば、当該計時日時TRTCにて基準日時記憶エリア10に記憶された基準日時Tが更新され(ステップS4)、OSが起動されて計時日時TRTCを基準としたシステム日時が計時される。
【0030】
次に、上記のような作用による効果について、図3,図4を用いて説明する。
従来の情報処理装置のように、例えばBIOS−ROM製造時に固定された基準日時Tとの比較によってRTCの異常を検出する場合には、BIOS−ROM製造時から時間が経つに連れて誤差範囲Tε(年:月:日:時:分:秒)が増大する(図3を参照)。誤差範囲Tεが増大するということは、計時日時TRTCが大きく遅れたとしても、RTCの異常として検出されないことになる。
【0031】
これに対し、本実施形態に係る情報処理装置1は、情報処理装置1が起動される度に基準日時記憶エリア10に記憶された基準日時Tが更新されていく(ステップS4)。したがって誤差範囲Tεは、たかだか前回起動時から今回起動時までの時間間隔となる(図4を参照)。すなわち、従来に比べて誤差範囲Tεが極めて短時間になるため、RTCの異常検出精度が大幅に改善され、ひいては情報処理装置1の動作に対する信頼性が向上する。
【0032】
また、このような格別の効果をBIOSプログラム等による情報処理にて実現するため、情報処理装置1の製造コストを増大させることもない。
【0033】
なお、この発明は前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階においては、その要旨を逸脱しない範囲内にて各構成要素を適宜変形して具体化することができる。
【0034】
例えば、基準日時記憶エリア10に記憶された基準日時Tの更新タイミングは、BIOSプログラムによる起動処理時に限られない。その他、システムのシャットダウン時にBIOSプログラムの制御下にて更新するようにしてもよいし、システム起動後にOSの制御下にて更新するようにしてもよい。このように、計時日時TRTCと基準日時Tとの比較を完了した後、電源の供給が停止されるまでの特定のタイミングにて基準日時Tを更新すれば、上記実施形態にて開示した効果を喪失することはない。
【0035】
また、基準日時記憶エリア10は、BIOS−ROMたるフラッシュROM3に設けず、他の不揮発性メモリに設けるようにしてもよい。
【0036】
この他、前記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成することができる。
【符号の説明】
【0037】
…基準日時、TRTC…計時日時、1…情報処理装置、2…CPU、3…フラッシュROM、4…RAM、5…RTC、6…キーボード、7…ディスプレイ、8…HDD、9…バスライン、10…基準日時記憶エリア
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【特許文献1】特開2008−298687号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
日時を計時する計時手段と、
基準日時を記憶する記憶手段と、
電源の投入時において、前記計時手段の計時日時が前記記憶手段に記憶された基準日時よりも進んでいる場合には当該計時日時を以降の制御用に設定し、前記計時日時が前記基準日時よりも遅れている場合にはエラー処理を実行する第1制御手段と、
この第1制御手段による処理の後、電源の供給が停止されるまでの間に設定された特定のタイミングで前記記憶手段に記憶された基準日時を前記計時手段による計時日時で更新する第2制御手段と、
を備えていることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記計時手段は、電池によりバックアップされたリアルタイムクロックであることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記特定のタイミングは、BIOSによる起動処理の実行時であることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記記憶手段は、BIOSを記憶したBIOS−ROMであることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
日時を計時する計時手段と、基準日時を記憶する記憶手段とを備えた情報処理装置の制御プログラムであって、
前記情報処理装置に、
電源の投入時において、前記計時手段の計時日時が、前記記憶手段に記憶された基準日時よりも進んでいる場合には当該計時日時を以降の制御用に設定し、前記計時日時が前記基準日時よりも遅れている場合にはエラー処理を実行する第1制御機能と、
この第1制御機能による処理の後、電源の供給が停止されるまでの間に設定された特定のタイミングで前記記憶手段に記憶された基準日時を前記計時手段による計時日時で更新する第2制御機能と、
を実現させるためのプログラム。
【請求項6】
日時を計時する計時手段と、基準日時を記憶する記憶手段とを備えた情報処理装置における計時日時の異常検出方法であって、
電源の投入時において、前記計時手段の計時日時が、前記記憶手段に記憶された基準日時よりも進んでいる場合には当該計時日時を以降の制御用に設定し、前記計時日時が前記基準日時よりも遅れている場合にはエラー処理を実行する第1制御ステップと、
この第1制御ステップの後、電源の供給が停止されるまでの間に設定された特定のタイミングで前記記憶手段に記憶された基準日時を前記計時手段による計時日時で更新する第2制御ステップと、
を備えていることを特徴とする異常検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−27597(P2011−27597A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174664(P2009−174664)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】