説明

情報提示装置

【課題】簡単な構造にてステアリングホイールの広い範囲で触力覚情報の提示が可能な技術を提供する。
【解決手段】ホイール本体511の外側には、触力覚的作用付与部41を収納するための溝孔512がホイール部51の周方向に沿って設けられている。触力覚的作用付与部41は、溝孔512に収納される形でホイール部51の周方向に沿って延設されている。触力覚的作用付与部41は、弾力性に富んだ円形断面の索状の軸部43と、軸部43の表面に螺旋状に配列する多数の突起45とを備える。触力覚的作用付与部41が螺旋軸を中心に回転することで、多数の突起45からなる突起列が一方向に向かって進行するように変位し、把持部を握っている運転者の手に触力覚的作用を及ぼす。触力覚的作用付与部41が一定方向に継続して回転し続けることで、螺旋形状の突起列が一方向に進行するような変位が無限に継続し、連続的な触力覚的作用を発生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のステアリングホイールを介して運転者に対して触力覚情報を提示する情報提示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のステアリングホイールを介して運転者の手に作用する触力覚情報を提示することで、車両の状態に関する警報等を運転者に伝える技術がある(例えば、特許文献1,2参照)。特許文献1に記載の警報装置は、ステアリングホイール内に多数の可動するロッドを配置し、このロッドの動きによって運転者に対して触力覚情報を提示するものである。また、運転者に対して提示する情報の内容に応じて、複数のロッドの動作パターンを変化させることで、複数種類の情報を提示できるようになっている。
【0003】
また、特許文献2に記載の操舵装置は、ステアリングホイールのリム部の周方向に沿って多数設けられた接触材を順次一時的に膨張させることで、ステアリングホイールを持つ運転者の手に触力覚的作用を与えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−149844号公報
【特許文献2】特開2009−1094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の警報装置では、多数のロッドの動作を個別に制御して動作パターンを形成しており、駆動の制御が複雑であるという問題がある。また、多数のロッドの各個にそれぞれ駆動モータを備えるため、機械的構造が複雑で製造コストも高くなるという問題もある。さらに、ステアリングホイールの広い範囲で情報提示をするために触覚提示手段の規模を大きくすると、その分ロッドと駆動部品が多く必要になるので、製造コストが跳ね上がることになる。また、特許文献2に記載の操舵装置についても同様であり、多数の接触材の各個にそれぞれ駆動モータを備える構成のため、機械的構造の複雑さと製造コストの高騰という問題を抱えている。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされており、簡単な構造にてステアリングホイールの広い範囲で触力覚情報の提示が可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明は、ステアリングホイールの把持部を介して運転者の手に作用する触力覚情報を提示する情報提示装置であって、触力覚的作用付与手段と駆動手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
触力覚的作用付与手段は、把持部の内部で把持部の周方向に沿って延設され、把持部の周方向に伸びる螺旋形状の作用部を備え、作用部が螺旋軸周りに回転することで把持部を握る運転者の手に触力覚的作用を与える構造を有する。駆動手段は、作用部が螺旋軸周りに回転するように触力覚的作用付与手段に駆動を与える。
【0009】
このように構成された本発明によれば、螺旋形状の作用部を回転させるという簡素な構成にて情報提示が可能である。また、ステアリングホイールの広い範囲で触力覚情報を提示可能にする場合でも、その規模に応じて触力覚的作用付与手段が延設される範囲を大きくすればよく、触力覚的作用付与手段を駆動する駆動手段の数をそれ以上増やす必要はない。そのため、製造コストを低く抑えることができ、有利である。
【0010】
ところで、螺旋形状の作用部がその螺旋軸周りに回転すると、螺旋部分があたかも上昇あるいは下降するように変位してみえる。さらに、一定方向に回転を継続することで無限に変位を進行させることができる。本発明は、螺旋形状の回転によって生じる変位を利用することで、運転者の拳の中で生じる触力覚的作用が一方向に進行するような方向性を持った触力覚情報を提示できる。
【0011】
そこで、方向性を持った触力覚情報を提示できるという特徴を利用し、請求項2に記載のように構成できる。すなわち、駆動手段は、作用部を螺旋軸周りの第1の方向に一方的に回転させる第1の動作態様と、作用部を第1の方向とは反対方向の螺旋軸周りの第2の方向に一方的に回転させる第2の動作態様と、作用部の回転方向を第1の方向と第2の方向とに周期的に切替えて定常振動させる第3の動作態様とを、提示する情報の内容に応じて切替える。
【0012】
このようにすることで、例えば、ステアリングホイールを握る拳の小指側(下側)から親指側(上側)へ向けて登っていくような感触や、逆に親指側(上側)から小指側(下側)へと下がっていくような感触、あるいは、上下に振動する感触等を使い分けて、様々な内容の情報を提示できる。
【0013】
さらに、請求項3に記載の情報提示装置のように、ステアリングホイールの右手側の把持部と左手側の把持部との2箇所にそれぞれ独立して触力覚的作用付与手段及び駆動手段を備え、右手側の駆動手段と左手側の駆動手段とにおいて、第1の動作態様、第2の動作態様、及び第3の動作態様の組合せを変えることにより、運転者の手に作用する触力覚情報のパターンを切替えるようにしてもよい。
【0014】
このような構成によれば、単独で触力覚情報の提示を行う場合より、更にバリエーションに富んだ情報提示を行うことができる。例えば、運転者の拳の中で生じる触力覚的作用の進行方向を左右の把持部で互いに同じにすることで、前又は後に押し出すような感触を生み出すことができる。これにより、例えば、前進・後退や加速・減速といった速度に関する情報提示が可能になる。また、運転者の拳の中で生じる触力覚的作用の進行方向を左右の把持部で互い違いにすることで、左右に回転するような感触を生み出すことができる。これにより、例えば、左右の方向指示に関する情報提示が可能になる。また、左右の把持部で共に定常振動を発生することで、例えば、注意喚起用に関する情報提示が可能になる。
【0015】
つぎに、請求項4に記載の情報提示装置は、駆動手段が作用部を回転させたときの回転負荷やねじり振動数の変動度合に基づき、運転者が把持部を握っている把持位置を特定する把持位置特定手段と、把持位置特定手段により特定した把持位置に応じて駆動手段の回転トルクや回転速度を調節する調節手段とを更に備えることを特徴とする。
【0016】
作用部が組込まれた把持部を運転者が握ると、その握力によって把持位置において作用部の回転時に摩擦抵抗が生じる。把持部の周方向に沿って延設された長い作用部の一部に握力による負荷がかかると、その負荷のかかる場所に応じて駆動手段が作用部を回転させる際の回転負荷やねじり振動に変化が生じる。それが原因で把持位置の違いによって運転者の手に与える感触が一定でなくなる場合がある。そこで、作用部を回転させたときの回転負荷やねじり振動数の変動度合に基づいて運転者が把持部を握っている把持位置を特定し、その特定した把持位置を駆動手段の回転トルクや回転速度に反映することで、運転者の手に与える触力覚的作用が一定とすることができる。
【0017】
さらに、請求項5に記載のように、把持位置特定手段により特定した把持位置に対応した運転行動に関する情報を運転者に対して報知する把持位置情報報知手段を備えることで、ステアリングホイールの把持位置を特定した結果を、他の情報提示に利用してもよい。
【0018】
運転者がステアリングホイールを握っている位置が分かると、例えば、ステアリングホイールを回そうとしているか否かといったことや、適切な運転姿勢であるか否かといった運転者の運転行動をある程度推測できる。そこで、ステアリングホイールの把持位置に対応した運転行動に関する情報提供(例えば、操作指示や注意喚起等)を行うようにすることで、運転者の運転行動を支援できる。
【0019】
つぎに、請求項6に記載の情報提示装置は、以下の特徴を有する。触力覚的作用付与手段は、弾性を有するコイルばねからなる作用部を備える。駆動手段は、作用部の両端において個別に回転方法を変更可能に構成されており、作用部の両端を同調して回転させて把持部の周方向に沿って進行する触力覚的作用を発生させたり、作用部の両端を互いに異なる回転状態にして作用部を捻ることで、作用部の径の変化による触力覚的作用を発生させる。
【0020】
螺旋形状の作用部として弾性を有するコイルばねを採用すると、作用部の両端を同調して回転させて触力覚的作用を発生させるだけでなく、コイルばねを絞る方向に捻る動作によって作用部の径を縮小したり、緩める方向に捻る動作によって作用部の径を増大させたりできる。このように、作用部を捻る動作による径の変化を利用して触力覚的作用を与えるように構成することで、作用部を一方向に回転させて生じる触力覚的作用とは異なる感触を運転者に与えることができ、バリエーションに富んだ触力覚情報を提示できる。
【0021】
つぎに、請求項7に記載の情報提示装置は、以下の特徴を有する。触力覚的作用付与手段は、作用部に加え、把持部の内部に設けられ、回転する作用部の螺旋形状の周回軌道において作用部と接触し、作用部の変位に沿って変位することで運転者の手に触力覚的作用を与える複数のロッドが把持部の周方向に列状に配列したロッド列を更に備える。
【0022】
このように構成された本発明によれば、螺旋形状の作用部によって複数のロッドに変位を与えるという構成にて情報提示が可能である。また、複数のロッドは、駆動手段によって回転する作用部によって一括して駆動することができるので、個々のロッドにそれぞれモータ等の駆動手段を設ける必要がない。このような構成によれば、ステアリングホイールの広い範囲で触力覚情報を提示可能にする場合でも、その規模に応じてロッドの個数を増やしたり作用部を長くすればよく、作用部を駆動する駆動手段の数をそれ以上増やす必要はない。そのため、製造コストを低く抑えることができ、有利である。
【0023】
また、作用部の回転によって進行する螺旋形状の変位を利用することで、列状に配列するロッドが螺旋形状の変位方向に沿って所定の時間差で連鎖して作動するので、運転者の拳の中で生じる触力覚的作用が一方向に進行するような方向性を持った触力覚情報を提示できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】情報提示装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】触力覚情報提示部の構造を示す説明図である。
【図3】触力覚的作用付与部のバリエーションを示す説明図である。
【図4】情報提示内容のバリエーションを示す説明図である。
【図5】ばね形状の弾性体による触力覚的作用の発生方法を示す説明図である。
【図6】把持位置を特定する原理を説明する説明図である。
【図7】ロッド列を備える触力覚情報提示部の構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は下記の実施形態に何ら限定されるものではなく様々な態様にて実施することが可能である。
[システム構成]
実施形態の情報提示装置のシステム構成について、図1を参照しながら説明する。この情報提示装置は、車両に搭載されるもので、運転者が操作するステアリングホイール50を介して車両の状態に関する情報を運転者に対して提示する。情報の提示は、ステアリングホイール50を握る運転者の手に触力覚的作用により示される触力覚情報を与えることで行われる。
【0026】
情報提示装置は、システム構成として、車両内外センサ10と、車両状態検出部20と、支援情報生成部30と、触力覚情報提示部40とを備える。
車両内外センサ10は、運転者に提示する情報を生成するのに必要な車両内外の各種状態を検知するためのセンサ類である。その内容としては、例えば、周辺車両との距離を計測する距離センサ、自車両の速度を計測する速度センサ、ステアリングの舵角を計測する舵角センサ、アクセルの操作量を検知するアクセルセンサ、ブレーキの操作量を検知するブレーキセンサ、車両の加速度を検知する加速度センサ、車線を検知する車線検知センサ等が挙げられるが、どのようなセンサを採用するかについては任意の設計事項である。
【0027】
車両状態検出部20及び支援情報生成部30は、CPU,ROM,RAM,I/O等を備えた周知の情報処理装置(例えば、マイクロコンピュータ)として構成されている。車両状態検出部20は、車両内外センサ10から入力された各種検知情報に基づいて、自車両の状態(車両の走行状態や各装置の状態、周辺車両状況等)を検出し、その検出結果を支援情報生成部30に入力する。
【0028】
支援情報生成部30は、車両状態検出部20から入力された検出結果に応じて、触力覚情報提示部40において提示する情報内容を生成し、その情報内容を触力覚情報提示部40に入力する。生成する情報内容の一例としては、車両状態に基づいて加速や減速等の速度調整を要する状況であると判断した場合には、加速あるいは減速指示情報を生成し、左右へのステアリング操作を要する状況であると判断した場合には、左転回あるいは右転回指示情報を生成し、何らかの異常を報知する場合や注意喚起を必要とする状況であると判断した場合には、異常報知情報や注意喚起情報を生成する。その他、どのような情報内容を生成するかについては任意の設計事項である。
【0029】
触力覚情報提示部40は、車両の操舵装置を構成するステアリングホイール50の内部に設置され、ステアリングホイール50を把持する運転者の手に作用する触力覚情報を発生する。触力覚情報提示部40は、触力覚的作用付与部41、駆動部42、及び、それらの駆動を制御する制御部からなる。
【0030】
触力覚情報提示部40の各部が組込まれるステアリングホイール50は、運転者が把持するための外周部分を構成する環状のホイール部51と、ステアリングホイールの基部となるボス部53と、ホイール部51をボス部53に接続するスポーク部52からなる。このうち、ホイール部51のおよそ右側半分の範囲にあたる右把持部の内部と、およそ左側半分の範囲にあたる左把持部の内部のそれぞれ箇所に、触力覚的作用付与部41及び駆動部42のセットが個別に設けられている。
【0031】
触力覚的作用付与部41は、ホイール部51の各把持部の周方向に沿って延設された細長い螺旋形状を有する部材からなり、その両端のうち上側の一端が螺旋軸周りに回転自在に支持され、下側の一端が駆動部42に接続されている。この触力覚的作用付与部41は、駆動部42から駆動されることにより把持部の周方向に沿って伸びる螺旋形状の中心軸(螺旋軸)を中心にその場で回転し、その回転面上に生じる螺旋部分の変位によって運転者の手に触力覚的作用を与える。螺旋形状を有する触力覚的作用付与部41が回転すると、あたかも螺旋部分が上昇あるいは下降するように変位する。さらに、一定方向に回転を継続することで無限に変位を進行させることができる。これにより、運転者の拳の中で生じる触力覚的作用が一方向に進行するような方向性を持った触力覚情報を提示する。
【0032】
駆動部42は、左右の把持部にそれぞれ設けられた触力覚的作用付与部41に対して1つずつ設けられており、モータ等の駆動力により触力覚的作用付与部41の全体を螺旋軸周りに回転させる。これにより、触力覚的作用付与部41に形成されている螺旋部分を1つの駆動手段で一斉に変位させることができるようになっている。また、駆動部42は、触力覚的作用付与部41を時計回りと反時計回りの任意の方向に回転させることができるようになっている。これにより、触力覚的作用付与部41の螺旋部分によって生じる触力覚的作用の進行方向を、図面上に示す下から上へ向かう方向と上から下へ向かう方向とで切替可能となっている。
【0033】
触力覚情報提示部40の制御部は、支援情報生成部30から入力された情報内容に応じて駆動部42を作動させるための作動信号を生成し、駆動部42に入力する電子回路部品である。駆動部42は、駆動制御部から入力された作動信号に従って作動する。また、提示する情報内容によっては、車両に搭載された表示装置や音声出力装置による運転支援情報の提示を行うための制御信号を出力し、表示や音声出力による情報提示を行う。
【0034】
[触力覚的作用付与部41の詳細な説明]
つぎに、ホイール部51に設けられる触力覚的作用付与部41の詳細な構造について、図2を参照しながら説明する。図2は、ホイール部51の内部構造を示す断面図と、ホイール部51に内蔵される触力覚的作用付与部41の外観を示す斜視図である。
【0035】
図2のZ−Z断面図に示すとおり、ホイール部51の芯材となる環状円筒形状のホイール本体511の外周側には、触力覚的作用付与部41を収納するための溝孔512がホイール部51の周方向に沿って設けられている。触力覚的作用付与部41は、この溝孔512に収納される形でホイール部51の各把持部の周方向に沿って延設されている。
【0036】
この触力覚的作用付与部41は、弾力性に富んだ円形断面の索状の軸部43と、軸部43の表面に螺旋状に配列する多数の突起45とを備えた構造を有する。触力覚的作用付与部41が軸部43の中心軸に相当する螺旋軸を中心に回転することで、多数の突起45からなる突起列があたかも一方向に向かって進行するように変位し、これにより把持部を握っている運転者の手に触力覚的作用を及ぼす。また、触力覚的作用付与部41が一定方向に継続して回転し続けることで、螺旋形状の突起列が一方向に進行するような変位が無限に継続し、連続的な触力覚的作用を発生する。
【0037】
なお、ホイール部51の表面には、ホイール本体511に収納された触力覚的作用付与部41と一緒にホイール本体511全体を覆うカバー513が設けられている。このカバー513は、適度な柔軟性を有しており、触力覚的作用付与部41の回転面上で変位する突起45に押圧されるのに合わせて変形することで、触力覚的作用付与部41により生じる触力覚的作用を運転者の手に伝達する。
【0038】
つぎに、触力覚的作用付与部41の形状のバリエーションについて、図3を参照しながら説明する。
図3(a)は、触力覚的作用付与部41の一例として、軸部43の表面に螺旋状のねじ山47を設けた構成を示す。この触力覚的作用付与部41が螺旋軸を中心に回転することで、軸部43の表面に形成されたねじ山47が一方向に進行するように変位し、運転者の手に触力覚的作用を及ぼす。また、触力覚的作用付与部41が一定方向に継続して回転し続けることで、螺旋形状のねじ山47が一方向に進行するような変位が無限に継続し、連続的な触力覚的作用を発生する。
【0039】
図3(b)は、触力覚的作用付与部41の一例として、弾力性を有するコイルばね49を採用した構成を示す。コイルばね49からなる触力覚的作用付与部41が螺旋軸を中心に回転することで、コイルばね49の螺旋部分が一方向に進行するように変位し、運転者の手に触力覚的作用を及ぼす。また、触力覚的作用付与部41が一定方向に継続して回転し続けることで、コイルばね49の螺旋部分が一方向に進行するような変位が無限に継続し、連続的な触力覚的作用を発生する。
【0040】
[情報提示内容のバリエーション]
触力覚情報提示部40において、触力覚的作用付与部41の回転方向を切替えることによって触力覚的作用の進行方向を切替えられることについては既に説明したとおりである。そこで、触力覚的作用の進行方向の組合せにより実現可能な情報提示内容のバリエーションについて、図4を参照しながら説明する。
【0041】
図4(a)に示す事例は、ステアリングホイール50の左側把持部において図面上に示す下から上に向けて進行する(すなわち時計回り)触力覚的作用を発生させ、右側把持部において下から上に向けて進行する(すなわち反時計回り)触力覚的作用を発生させる情報提示内容である。このような情報提示内容によれば、左右の把持部を介して運転者に対して前に進むような感覚を想起させることができる。そこで、例えば、加速や前進等を促す旨の指示といった、車両を前に進ませることに関する情報提示を行うことができる。
【0042】
図4(b)に示す事例は、ステアリングホイール50の左側把持部において図面上に示す上から下に向けて進行する(すなわち反時計回り)触力覚的作用を発生させ、右側把持部において上から下に向けて進行する(すなわち時計回り)触力覚的作用を発生させる情報提示内容である。このような情報提示内容によれば、左右の把持部を介して運転者に対して後に下がるような感覚を想起させることができる。そこで、例えば、減速や停止、あるいは後退等を促す旨の指示といった、車両の前進を抑制することに関する情報提示を行うことができる。
【0043】
図4(c)に示す事例は、ステアリングホイール50の左側把持部において図面上に示す下から上に向けて進行する(すなわち時計回り)触力覚的作用を発生させ、右側把持部において上から下に向けて進行する(すなわち時計回り)触力覚的作用を発生させる情報提示内容である。このような情報提示内容によれば、左右の把持部を介して運転者に対して時計回りに回る、すなわち右方向に曲がるような感覚を想起させることができる。そこで、例えば、右転回や右方向への進路変更等を促す旨の指示といった、右方向に操舵することに関する情報提示を行うことができる。
【0044】
図4(d)に示す事例は、ステアリングホイール50の左側把持部において図面上に示す上から下に向けて進行する(すなわち反時計回り)触力覚的作用を発生させ、右側把持部において下から上に向けて進行する(すなわち反時計回り)触力覚的作用を発生させる情報提示内容である。このような情報提示内容によれば、左右の把持部を介して運転者に対して反時計回りに回る、すなわち左方向に曲がるような感覚を想起させることができる。そこで、例えば、左転回や左方向への進路変更等を促す旨の指示といった、左方向に操舵することに関する情報提示を行うことができる。
【0045】
図4(e)に示す事例は、ステアリングホイール50の左右両方の把持部において、上下に細かく振動する触力覚的作用を発生させる情報提示内容である。このような情報提示内容によれば、左右の把持部を介して運転者に対して強い注意を喚起させることができる。そこで、例えば、何らかの異常や危険、注意すべき対象の存在を知らせる等、注意喚起に関する情報提示を行うことができる。
【0046】
[触力覚的作用の発生方法のバリエーション]
つぎに、触力覚的作用付与部41をコイルばねで構成した場合における触力覚的作用の発生方法のバリエーションについて、図5を参照しながら説明する。
【0047】
図5(a)は、弾力性を有するコイルばねで構成された触力覚的作用付与部41の両端にそれぞれ駆動部42を設けた構成を示している。これにより、触力覚的作用付与部41の上端側と下端側とで回転方向を独立して制御できるようになる。
【0048】
そして、図5(b)に示すように、触力覚的作用付与部41の両端を同じ方向に同調して回転させることで、触力覚的作用付与部41の長手方向、すなわちホイール部51の周方向に沿った方向に進行する触力覚的作用を発生させることができる。また、回転方向を逆方向に切替えることで、触力覚的作用の進行方向を切替えることができる。
【0049】
一方、図5(c)に示すように、触力覚的作用付与部41の両端を互いに異なる方向に回転させて、コイルばねを絞る方向に捻る動作によってコイルばねの径を縮小したり、緩める方向に捻る動作によってコイルばねの径を増大させたりできる。このように、コイルばね捻ることで生じる径の変化を利用することで、触力覚的作用付与部41の径方向に振動する触力覚的作用を発生させることができ、触力覚的作用付与部41を一方向に回転させた場合に生じる触力覚的作用とは異なる感触を運転者に与えることができる。
【0050】
[ステアリングホイールの把持位置を特定する方法について]
つぎに、触力覚情報提示部40によって運転者がステアリングホイール50を握っている位置(把持位置)を特定する方法について、図6を参照しながら説明する。
【0051】
触力覚的作用付与部41が組込まれたホイール部51を運転者が握ると、その把持位置にかかる握力によって触力覚的作用付与部41の回転に摩擦抵抗が生じる。触力覚的作用付与部41の一部に負荷がかかると、その場所に応じて触力覚的作用付与部41が回転する際の回転負荷やねじり振動が変動し、運転者の手に与える感触がその時々で一定でなくなる場合がある。
【0052】
図6(a)に示すように、運転者による把持位置が触力覚的作用付与部41の中央である場合、この把持位置を境界にした触力覚的作用付与部41の上部分の弾性係数k1と、下部分の弾性係数k2とがほぼ同じ大きさになる。一方、図6(b)に示すように、運転者による把持位置が触力覚的作用付与部41の上部である場合、この把持位置を境界にした触力覚的作用付与部41の上部分の弾性係数k1´と、下部分の弾性係数k2´とを比較すると、k1´>k2´となる。このように、ホイール部51における把持位置と、その把持位置を境界とする触力覚的作用付与部41の上下部分の弾性係数の大小関係との間には相関関係がある。
【0053】
そこで、触力覚的作用付与部41における回転負荷やねじり振動数等といった弾性係数と相関性のある特性を検出することで、ホイール部51における把持位置を特定するように構成する。具体的には、触力覚的作用付与部41の両端にそれぞれ設けた駆動部42の回転部分にロータリーエンコーダやトルクセンサを備え、運転者がホイール部51を把持している状態で両方の駆動部42で触力覚的作用付与部41を回転させたときの回転負荷やねじり振動をそれぞれの駆動部42で検出する。そして、その検出結果に基づいて触力覚情報提示部40の制御部において、触力覚的作用付与部41の上部分における回転負荷やねじり振動数と、下部分における回転負荷やねじり振動数との変動度合を算出し、運転者による把持位置を特定する。
【0054】
ホイール部51における運転者の把持位置を特定することで、触力覚情報提示部40の制御部は、把持位置の違いによる触力覚的作用付与部41回転負荷やねじり振動数の変動を是正し、運転者の手に与える触力覚的作用を一定とするように、触力覚的作用付与部41の両端の駆動部42の回転速度や回転トルクを調整する。
【0055】
さらに、ホイール部51における運転者の把持位置を特定した結果を利用して、触力覚的情報とは別の情報提示を行うように構成してもよい。運転者がホイール部51を握っている位置が分かると、例えば、ステアリングホイール50を回そうとしているか否かといったことや、適切な運転姿勢であるか否かといった運転者の運転行動をある程度推測できる。そこで、触力覚情報提示部40の制御部は、特定した把持位置に対応した運転行動に関する運転支援情報(例えば、操作指示や注意喚起等)を生成し、その生成した運転支援情報を、車両に搭載された表示装置や音声出力装置を用いて運転者に提示する。
【0056】
[効果]
上記実施形態の情報提示装置によれば、以下の効果を奏する。
ホイール部51の周方向に沿って延設された螺旋状の触力覚的作用付与部41を回転させるという簡素な構成にて情報提示が可能である。また、触力覚的作用付与部41は、1ないし2つ(両端に設ける場合)の駆動部42によって駆動することができる。このような構成によれば、ホイール部51の広い範囲で触力覚情報を提示可能にする場合でも、その規模に応じて触力覚的作用付与部41が延設される範囲を大きくすればよく駆動部42の数をそれ以上増やす必要はない。そのため、製造コストを低く抑えることができ、有利である。
【0057】
回転する螺旋部分の変位によって生じる触力覚的作用により方向性を持った触力覚情報を提示できるという利点を活かし、例えば、ステアリングホイールを握る拳の小指側(下側)から親指側(上側)へ向けて登っていくような感触や、逆に親指側(上側)から小指側(下側)へと下がっていくような感触、あるいは、上下に振動する感触等を使い分けて、様々な内容の情報を提示できる。
【0058】
ホイール部51における右手側の把持部と左手側の把持部との2箇所にそれぞれ独立して触力覚的作用付与部41及び駆動部42を設けたことで、左右の把持部で独立して触力覚情報の提示パターンを切替えることができる。これにより、単独で触力覚情報の提示を行う場合より、更にバリエーションに富んだ情報提示を行うことができる。
【0059】
触力覚的作用付与部41を回転させたときの回転負荷やねじり振動数の変動度合に基づいてホイール部51における把持位置を特定し、その特定した把持位置を駆動部42の回転トルクや回転速度に反映することで、運転者の手に与える触力覚的作用が一定とすることができる。さらに、ホイール部51における把持位置に対応した運転行動に関する情報提供(例えば、操作指示や注意喚起等)を行うようにすることで、運転者の運転行動を支援できる。
【0060】
触力覚的作用付与部41としてコイルばねを採用した場合、コイルばねを捻る動作によって生じるコイルばねの径の変化を利用して触力覚的作用を与えることができる。これにより、触力覚的作用付与部41を一方向に回転させて生じる触力覚的作用とは異なる感触を運転者に与えることができ、バリエーションに富んだ触力覚情報を提示できる。
【0061】
[別実施形態]
上記実施形態では、触力覚的作用付与部41の回転面上に設けられた螺旋部分によって直接運転者の手に触力覚的作用を与える構成について説明した。これに対し、回転する螺旋状体よって駆動されるロッドを介して運転者の手に触力覚的作用を与えるような構成であってもよい。このような構成について、図7を参照しながら説明する。
【0062】
図7の(a)は、ロッド列を備える触力覚的作用付与部41の斜視図であり、(b)は、前記斜視図におけるA方向矢視図であり、(c)は、ロッド列を備える触力覚的作用付与部41を内蔵するホイール部51の内部構造を示す断面図である。
【0063】
図7(a)に示すとおり、ロッド列を備える触力覚的作用付与部41は、円形断面の索状の軸部43と、軸部43の表面に螺旋状に配列する多数の突起45とを備えた構造に、更に、長手方向に沿って可動する複数の棒状のロッド44が一定間隔で列状に配列したロッド列を、軸部43に隣接して設置した構造を有する。
【0064】
ロッド44は、図7(c)に示すとおり、螺旋状の突起45を有する軸部43を収納するためにホイール本体511に設けられた溝孔512内部からホイール本体511の表面へと貫通するように、長手(軸線)方向に埋めこまれており、例えば弾性体によりロッド44の軸線方向に往復移動可能なようにホイール本体511に支持されている。各ロッド44は、その後端が軸部43の円周面上で回転する突起45の周回軌道に当たるように位置しており、かつ、無荷重の状態で先端がホイール本体511の表面とほぼ面一になる位置に停止するように取付けられる。
【0065】
図7(b)に示すとおり、螺旋状の突起45を有する軸部43が螺旋軸周りに回転すると、変位する突起45がロッド44の後端に接触し、そのロッド44に対して荷重を加えることにより、そのロッド44は突起45の周回軌道に沿って押し出されてロッド44の軸線方向に変位する。その結果、ロッド44の先端がホイール本体511の表面から突出する。これにより、把持部を握っている運転者の手に触力覚的作用を及ぼす。そして、軸部43が更に回転して突起45とロッド44との接触状態が解消すると、ロッド44は弾性力により元の位置に復帰する。
【0066】
なお、ホイール部51の表面には、ホイール本体511全体を覆うカバー513が設けられている。このカバー513は、適度な柔軟性を有しており、ロッド44がホイール本体511の表面から突出して内側からカバー513を押圧するのに合わせて変形することで、ロッド44による触力覚的作用を運転者の手に伝達する。
【0067】
ロッド列を備える触力覚的作用付与部41では、軸部43を継続して回転させることで、ロッド44が繰り返し作動する。また、突起45は軸部43の表面に螺旋状に配置しているため、軸部43に沿って配列している各ロッド44は、螺旋形状の変位方向に沿って所定の時間差で連鎖して作動する。これにより、運転者の拳の中で生じる触力覚的作用が一方向に進行するような方向性を持った触力覚情報を提示できる。
【符号の説明】
【0068】
10…車両内外センサ、20…車両状態検出部、30…支援情報生成部、40…触力覚情報提示部、41…触力覚的作用付与部、42…駆動部、43…軸部、44…ロッド、45…突起、47…ねじ山、49…コイルばね、50…ステアリングホイール、51…ホイール部、511…ホイール本体、512…溝孔、513…カバー、52…スポーク部、53…ボス部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールの把持部を介して運転者の手に作用する触力覚情報を提示する情報提示装置であって、
前記把持部の内部で前記把持部の周方向に沿って延設され、前記把持部の周方向に伸びる螺旋形状の作用部を備え、前記作用部が螺旋軸周りに回転することで前記把持部を握る運転者の手に触力覚的作用を与える触力覚的作用付与手段と、
前記作用部が螺旋軸周りに回転するように前記触力覚的作用付与手段に駆動を与える駆動手段とを備えること
を特徴とする情報提示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の情報提示装置において、
前記駆動手段は、前記作用部を螺旋軸周りの第1の方向に一方的に回転させる第1の動作態様と、前記作用部を前記第1の方向とは反対方向の螺旋軸周りの第2の方向に一方的に回転させる第2の動作態様と、前記作用部の回転方向を前記第1の方向と前記第2の方向とに周期的に切替えて定常振動させる第3の動作態様とを、提示する情報の内容に応じて切替えること
を特徴とする情報提示装置。
【請求項3】
請求項2に記載の情報提示装置において、
ステアリングホイールの右手側の把持部と左手側の把持部との2箇所にそれぞれ独立して前記触力覚的作用付与手段及び前記駆動手段を備え、
右手側の前記駆動手段と左手側の前記駆動手段とにおいて、前記第1の動作態様、前記第2の動作態様、及び前記第3の動作態様の組合せを変えることにより、運転者の手に作用する触力覚情報のパターンを切替可能であること
を特徴とする情報提示装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の情報提示装置において、
前記駆動手段が前記作用部を回転させたときの回転負荷やねじり振動数の変動度合に基づき、運転者が前記把持部を握っている把持位置を特定する把持位置特定手段と、
前記把持位置特定手段により特定した把持位置に応じて前記駆動手段の回転トルクや回転速度を調節する調節手段とを更に備えること
を特徴とする情報提示装置。
【請求項5】
請求項4に記載の情報提示装置において、
前記把持位置特定手段により特定した把持位置に対応した運転行動に関する情報を運転者に対して報知する把持位置情報報知手段を更に備えること
を特徴とする情報提示装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の情報提示装置において、
前記触力覚的作用付与手段は、弾性を有するコイルばねからなる前記作用部を備え、
前記駆動手段は、前記作用部の両端において個別に回転方法を変更可能に構成されており、前記作用部の両端の回転を同調させて回転させることで、前記把持部の周方向に沿って進行する触力覚的作用を発生させる一方、前記作用部の両端を互いに異なる回転状態にして前記作用部を捻ることで、前記作用部の径の変化による触力覚的作用を発生させること
を特徴とする情報提示装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6の何れか1項に記載の情報提示装置において、
前記触力覚的作用付与手段は、前記作用部に加え、前記把持部の内部に設けられ、回転する前記作用部の螺旋形状の周回軌道において前記作用部と接触し、その作用部の変位に沿って変位することで運転者の手に触力覚的作用を与える複数のロッドが前記把持部の周方向に列状に配列したロッド列を更に備えること
を特徴とする情報提示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−28236(P2013−28236A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164681(P2011−164681)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】