説明

感光性組成物、並びに光記録媒体及びその製造方法、光記録方法、光記録装置

【課題】高い信号強度が得られる露光量においてもS/N比が悪化せず、信号強度とS/N比とが両立でき、高感度、かつ高多重記録が可能な光記録媒体及び該光記録方法、並びに光記録装置の提供。
【解決手段】(A)光反応性材料と、(B)平均エポキシ当量が230g/eq以下であり、かつ分子内に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、(C)チオール基含有化合物とを重合反応させてなる重合物を含有してなり、ホログラフィを利用して情報を記録する記録層の形成に用いられる感光性組成物及びこれを用いた光記録媒体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィを利用して情報を記録する記録層の形成に用いられる感光性組成物、並びに光記録媒体及びその製造方法、光記録方法、光記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高密度画像データ等の大容量の情報を書き込み可能な記録媒体の一つとして光記録媒体が挙げられる。この光記録媒体としては、例えば光磁気ディスク、相変化型光ディスク等の書換型光記録媒体やCD−R等の追記型光記録媒体については既に実用化されているが、光記録媒体の更なる大容量化に対する要求は高まる一方である。しかし、従来より提案されている光記録媒体は全て二次元記録であり、記録容量の増大化には限界があった。そこで、近時、三次元的に情報を記録可能なホログラム型の光記録媒体が注目されている。
【0003】
前記ホログラム型光記録方法は、一般に、二次元的な強度分布が与えられた情報光と、該情報光と強度がほぼ一定な参照光とを感光性の記録層内部で重ね合わせ、それらが形成する干渉縞を利用して記録層内部に光学特性の分布を生じさせることにより、情報を記録する。一方、書き込んだ情報の読み出し(再生)は、記録時と同様の配置で参照光のみを記録層に照射し、記録層内部に形成された光学特性分布に対応した強度分布を有する再生光を前記記録層から出射させることにより行われる。
このホログラム型光記録方法では、記録層内に光学特性分布が三次元的に形成されるので、一の情報光により情報が書き込まれた領域と、他の情報光により情報が書き込まれた領域とを部分的に重ね合わせること、即ち、多重記録が可能である。デジタルボリュームホログラフィを利用した場合には、1スポットの信号対雑音比(S/N比)は極めて高くなるので、重ね書きによりS/N比が多少低くなっても元の情報を忠実に再現できる。その結果、多重記録回数が数百回までに及び、光記録媒体の記録容量を著しく増大させることができる(特許文献1参照)。
【0004】
前記光記録媒体としては、例えば図1に示すように、基板10及び11の間に記録層4を積層した光記録媒体20が挙げられる。また、図2に示すように、情報光の光軸と参照光の光軸とが、同軸となるようにして、該情報光及び参照光を照射して記録する方式に用いられ、第一の基板1、第一ギャップ層8、フィルタ層6、第二ギャップ層7、記録層4、第二の基板5がこの順に積層された光記録媒体21などが挙げられる。このような光記録媒体における前記記録層への多重記録回数を示す指標として、「ある一定の回析効率を有するホログラムが何枚多重化できるか」を表すダイナミックレンジが用いられる。該ダイナミックレンジは、具体的には、多重化したホログラム1枚1枚の回析効率の平方根を、全てのホログラムについて加え合わせた値が用いられる。このようなダイナミックレンジを増大させる方法としては、記録層形成の改善、記録層の組成物の改善、記録方法の改善などが挙げられる。前記記録層形成の改善方法として、一般的に該記録層を多層化することにより厚みを増大させ前記ダイナミックレンジを向上させる方法が用いられる。しかし、多層回数が増大するほど、厚みむらの発生や製造効率が低下するという問題がある。
【0005】
また、高厚みの感光層が形成可能であって、迅速かつ高温加熱を伴わないでホログラフィック記録媒体を作製するため、例えば、NCO末端のプレポリマーとポリオールを含む材料と、光反応性材料との重合物を含有する光学製品が提案されている(特許文献2参照)。しかし、この提案では、イソシアネート基の加水分解性が大きいため、湿度が高いと硬化してしまい、液管理が極めて困難である。また、情報を書き込むためのレーザー露光により成分の一部が変性して着色が生じるという問題もある。
【0006】
したがって、湿度に対して安定であり、液の経時管理が容易であり、かつ高温硬化を必要とせず、迅速製造に適し、各種成形方法に適用することが可能な感光性組成物、並びに該感光性組成物からなる記録層を有する光記録媒体及び該光記録媒体の製造方法、光記録方法、及び光記録装置の速やかな提供が望まれているのが現状である。
【0007】
【特許文献1】特開2002−123949号公報
【特許文献2】特開2004−537620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、湿度に対して安定であり、液の経時管理が容易で、かつ高温硬化を必要とせず、迅速製造に適し、各種成形方法に適用することが可能な感光性組成物、並びに十分な感度、多重特性を有する光記録媒体及び該光記録媒体の製造方法、光記録方法、光記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> (A)光反応性材料と、(B)平均エポキシ当量が230g/eq以下であり、かつ分子内に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、(C)チオール基含有化合物とを重合反応させてなる重合物を含有してなり、ホログラフィを利用して情報を記録する記録層の形成に用いられることを特徴とする感光性組成物である。
<2> (B)成分のエポキシ化合物と、(C)チオール基含有化合物とを混合した後、30℃で加熱することにより30分間以内にゲル化する前記<1>に記載の感光性組成物である。
<3> (B)成分のエポキシ化合物と、(C)チオール基含有化合物とを混合した後、30分間以内に自発的な発熱ピークを有する前記<1>から<2>のいずれかに記載の感光性組成物である。
<4> (B)成分のエポキシ化合物が、エチレンオキサイド部位を含む前記<1>から<3>のいずれかに記載の感光性組成物である。
<5> (C)チオール基含有化合物が、メルカプタン化合物である前記<1>から<4>のいずれかに記載の感光性組成物である。
<6> (C)チオール基含有化合物が、エチレンオキサイド部位を含む前記<1>から<5>のいずれかに記載の感光性組成物である。
<7> (A)光反応性材料が、重合性化合物及び重合開始剤を含有する前記<1>から<6>のいずれかに記載の感光性組成物である。
<8> 重合性化合物が、ラジカル重合性化合物から選択される少なくとも1種である前記<7>に記載の感光性組成物である。
<9> 更に硬化促進剤を含有し、該硬化促進剤が3級アルキルアミン、3級芳香族アミン、及び脂環式3級アミンの少なくとも1種である前記<1>から<8>のいずれかに記載の感光性組成物である。
<10> カールフィッシャー法で測定した水分含有率が、0.01〜2.5質量%である前記<1>から<9>のいずれかに記載の感光性組成物である。
<11> 前記<1>から<10>のいずれかに記載の感光性組成物からなり、ホログラフィを利用して情報を記録する記録層を少なくとも有することを特徴とする光記録媒体である。
<12> 少なくとも第一の基板と、選択反射層と、記録層と、第二の基板とをこの順に有する前記<11>に記載の光記録媒体である。
<13> 選択反射層が、第一の光を透過し、第二の光を反射する前記<12>に記載の光記録媒体である。
<14> 選択反射層が、ダイクロイックミラー層、色材含有層、誘電体蒸着層、及びコレステリック液晶層の少なくともいずれかである前記<12>から<13>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<15> 第一の光の波長が350〜600nmであり、かつ第二の光の波長が600〜900nmである前記<13>から<14>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<16> λ〜λ/cos20°(ただし、λは照射光波長を表す)における光反射率が40%以上である前記<11>から<15>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<17> λ〜λ/cos40°(ただし、λは照射光波長を表す)における光反射率が40%以上である前記<11>から<16>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<18> 基板が、サーボピットパターンを有する前記<12>から<17>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<19> サーボピットパターン表面に反射膜を有する前記<18>に記載の光記録媒体である。
<20> 反射膜が、金属反射膜である前記<19>に記載の光記録媒体である。
<21> 前記<1>から<10>のいずれかに記載の感光性組成物からなる記録層を設ける記録層形成工程と、記録層が形成された光記録媒体全体を30℃で30分間以上加熱する加熱工程とを少なくとも含むことを特徴とする光記録媒体の製造方法である。
【0010】
<22> 前記<11>から<20>のいずれかに記載の光記録媒体に対し、情報光及び参照光の照射を、該情報光の光軸と該参照光の光軸とが同軸となるようにして行い、前記情報光と前記参照光との干渉により生成される干渉パターンによって情報を記録層に記録することを特徴とする光記録方法である。
<23> 前記<22>に記載の光記録方法により記録層に記録された干渉パターンに参照光を照射して記録情報を再生することを特徴とする光再生方法である。
<24> 参照光が、光記録媒体の記録に用いられた参照光と同じ角度で、干渉パターンに照射して記録情報を再生する前記<23>に記載の光再生方法である。
<25> 可干渉性を有する情報光の光軸と参照光の光軸とが同軸となるように、前記<11>から<20>のいずれかに記載の光記録媒体に前記情報光及び前記参照光を照射する光照射手段と、該情報光と該参照光との干渉による干渉像を形成し、該干渉像を前記光記録媒体に記録する干渉像記録手段とを有することを特徴とする光記録装置である。
【0011】
本発明の感光性組成物は、(A)光反応性材料と、(B)平均エポキシ当量が230g/eq以下であり、かつ分子内に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、(C)チオール基含有化合物とを重合反応させた重合物を含有してなり、ホログラフィを利用して情報を記録する記録層の形成に用いられる。本発明の感光性組成物においては、湿度に対して安定であり、液の経時管理が容易で、かつ高温硬化を必要とせず、迅速製造に適し、各種成形方法に適用することが可能である。
【0012】
本発明の光記録媒体は、本発明の前記感光性組成物からなり、ホログラフィを利用して情報を記録する記録層を少なくとも有するので、感度、多重特性、記録した情報の保存性に優れ、ボリュームホログラフィック用途として好適なものである。
【0013】
本発明の光記録方法は、本発明の前記光記録媒体に対し、情報光及び参照光の照射を、該情報光の光軸と該参照光の光軸とが同軸となるようにして行い、前記情報光と前記参照光との干渉により生成される干渉パターンによって情報を記録層に記録する。本発明の光記録方法においては、本発明の前記光記録媒体を用いて、該情報光と参照光との干渉による干渉パターンによって情報を記録層に記録することにより、信号強度と多重性能の両立が計れ、今までにない高密度記録を実現することができる。
【0014】
本発明の光再生方法は、本発明の前記光記録方法により記録層に記録された干渉パターンに参照光を照射して情報を再生する。本発明の光再生方法においては、本発明の前記記録方法により記録層に記録された干渉パターンを効率よく、正確に読み取って高密度記録情報を再生することができる。
【0015】
本発明の光記録装置は、可干渉性を有する情報光の光軸と参照光の光軸とが同軸となるように、本発明の前記光記録媒体に前記情報光及び前記参照光を照射する光照射手段と、該情報光と該参照光との干渉による干渉像を形成し、該干渉像を前記光記録媒体に記録する干渉像記録手段とを有する。本発明の光記録装置においては、本発明の前記光記録媒体を用いているので、信号強度と多重性能との両立が図れ、高感度、かつ高多重記録が可能な光記録が行える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、従来における諸問題を解決でき、湿度に対して安定であり、液の経時管理が容易で、かつ高温硬化を必要とせず、迅速製造に適し、各種成形方法に適用することが可能な感光性組成物、並びに十分な感度、多重特性を有する光記録媒体及び該光記録媒体の製造方法、光記録方法、光記録装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(感光性組成物)
本発明の感光性組成物は、ホログラフィを利用して情報を記録する記録層の形成に用いられ、(A)光反応性材料と、(B)平均エポキシ当量が230g/eq以下であり、かつ分子内に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、(C)チオール基含有化合物とを重合反応させてなる重合物を含有してなり、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0018】
<(A)光反応性材料>
前記光反応性材料は、重合性化合物と、重合開始剤とを含み、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0019】
−重合性化合物−
前記重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物が好適であり、これらは、一種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0020】
前記ラジカル重合性化合物として、例えば、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミカルボンカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基等の置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、前記不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0021】
多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート、ベンジルアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、ナフチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、トリブロモフェニルアクリレート、などが挙げられる。
メタクリル酸エステルとしては、例えば、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン、などが挙げられる。
イタコン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート、などが挙げられる。
クロトン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート、などが挙げられる。
イソクロトン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート、などが挙げられる。
マレイン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート、などが挙げられる。
その他のエステルとしては、特許2849021号公報に記載の9,9−ジアリールフルオレン骨格を有するエステル類;特開平8−101499号公報及び特許3532679号公報に記載のシロキサン結合含有(メタ)アクリレート類;特開2001−125474号公報に記載のビフェニルを含んだ(メタ)アクリレート類;特開平7−199777号公報、特開平7−199779号公報、特開平7−104643号公報に記載のオリゴマー構造の(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、スチレン類も好適に用いられる。該スチレン類としては、例えばスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ビニルナフタレン、アルコキシスチレン、ジビニルベンゼン、チオエーテル部位を有するスチレン、ビニルナフタレン誘導体等が好適に用いられる。特に、1−(3−ナフト−1−イルチオ)プロピルチオ)ナフタレンが好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記重合性化合物の前記感光性組成物の全固形分における含有量は、1〜40質量%が好ましく、2〜30質量%がより好ましく、3〜25質量%が特に好ましい。この範囲において、感度、多重特性、記録した情報の保存性に優れた感光性組成物を得ることができる。前記含有量が1質量%未満であると、ボリュームホログラフィック用途として十分な感度、多重特性を得ることができないことがあり、40質量%を超えると、記録した情報の保存性が悪化し、解像度が悪化して記録に不具合を生じることがある。
【0023】
−重合開始剤−
前記重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の各種の系が利用可能ある。開始剤系は、単一の化合物でなる系でもよいし、複数の化合物からなる系であってもよい。開始剤系は、ラジカル重合を活性化する系が好適である。
【0024】
前記光ラジカル重合開始系としては、例えば、有機ハロゲン化化合物、カルボニル化合物、有機過酸化化合物、アゾ系重合開始剤、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン酸化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩化合物、などが挙げられる。
【0025】
前記有機ハロゲン化化合物としては、具体的には、若林等、「Bull Chem.Soc Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46−4605号公報、特開昭48−36281号公報、特開昭55−32070号公報、特開昭60−239736号公報、特開昭61−169835号公報、特開昭61−169837号公報、特開昭62−58241号公報、特開昭62−212401号公報、特開昭63−70243号公報、特開昭63−298339号公報、M.P.Hutt“Jurnal of Heterocyclic Chemistry”1(No3),(1970)」などに記載の化合物が挙げられる。これらの中でも、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物、S−トリアジン化合物が特に好ましい。
【0026】
より好適には、少なくとも一つのモノ、ジ、又はトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体、具体的には、例えば、2,4,6−トリス(モノクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2―n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4−エポキシフェニル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔1−(p−メトキシフェニル)−2,4−ブタジエニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−i−プロピルオキシスチリル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ナトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ベンジルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロモメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、などが挙げられる。
【0027】
前記カルボニル化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−ヒドトキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル−(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチルー(4’−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノ−1−プロパノン、1,1,1−トリクロロメチル−(p−ブチルフェニル)ケトン等のアセトフェノン誘導体;チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体;p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体、などが挙げられる。
【0028】
前記アゾ化合物としては、例えば、特開平8−108621号公報に記載のアゾ化合物等を使用することができる。
【0029】
前記有機過酸化化合物としては、例えば、トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−オキサノイルパーオキサイド、過酸化こはく酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシオクタノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、ターシルカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)などが挙げられる。
【0030】
前記メタロセン化合物としては、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特開昭63−41484号公報、特開平2−249号公報、特開平2−4705号公報、特開平5−83588号公報に記載の種々のチタノセン化合物、例えば、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報記載の鉄−アレーン錯体などが挙げられる。
【0031】
前記ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特公平6−29285号公報、米国特許第3,479,185号明細書、米国特許第4,311,783号明細書、米国特許第4,622,286号明細書等に記載の種々の化合物、具体的には、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル))4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(m−メトキシフェニル)ビイジダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾールなどが挙げられる。
【0032】
前記有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特開昭62−143044号公報、特開昭62−150242号公報、特開平9−188685号公報、特開平9−188686号公報、特開平9−188710号公報、特開2000−131837号公報、特開2002−107916号公報、特許第二764769号公報、及び、Kunz,Martin“Rad Tech’98.Proceeding April 19−22,1998,Chicago”等に記載される有機ホウ酸塩、特開平6−157623号公報、特開平6−175564号公報、特開平6−175561号公報に記載の有機ホウ素スルホニウム錯体或いは有機ホウ素オキソスルホニウム錯体、特開平6−175554号公報、特開平6−175553号公報に記載の有機ホウ素ヨードニウム錯体、特開平9−188710号公報に記載の有機ホウ素ホスホニウム錯体、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体などが具体例として挙げられる。
【0033】
前記ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号公報、特開2002−328465号公報等に記載される化合物が挙げられる。
【0034】
前記オキシムエステル化合物としては、J.C.S. Perkin II (1979)1653〜1660頁、J.C.S. Perkin II (1979)156〜162頁、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202〜232頁、特開2000−66385号公報に記載の化合物、特開2000−80068号公報に記載の化合物、具体的には以下に示す化合物が挙げられる。
【0035】
【化1】

【0036】
前記オニウム塩化合物としては、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、特開平4−365049号公報に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、米国特許第4,069,056号明細書に記載のホスホニウム塩、欧州特許第104、143号明細書、米国特許第339,049号明細書、米国特許第410,201号明細書、特開平2−150848号公報、特開平2−296514号公報に記載のヨードニウム塩、欧州特許第370,693号明細書、欧州特許第390,214号明細書、欧州特許第233,567号明細書、欧州特許第297,443号明細書、欧州特許第297,442号明細書、米国特許第4,933,377号明細書、米国特許第161,811号明細書、米国特許第410,201号明細書、米国特許第339,049号明細書、米国特許第4,760,013号明細書、米国特許第4,734,444号明細書、米国特許第2,833,827号明細書、独国特許第2,904,626号明細書、独国特許第3,604,580号明細書、独国特許第3,604,581号明細書に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromolecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩、などが挙げられる。
これらの中でも、反応性、安定性の面から前記オキシムエステル化合物或いはジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩が特に好ましい。
【0037】
前記重合開始剤を更に増感させるために、増感助剤を添加することが可能である。かかる増感助剤としては、例えば3−位及び/又は7−位に置換基を有するクマリン類、フラボン類、ジベンザルアセトン類、ジベンザルシクロヘキサン類、カルコン類、キサンテン類、チオキサンテン類、ポルフィリン類、フタロシアニン類、アクリジン類、アントラセン類等を用いることができる。
【0038】
前記光重合開始剤の前記感光性組成物全固形分における含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、1〜7質量%がより好ましく、1.5〜5質量%が特に好ましい。前記含有量が0.1質量%未満であると、十分な感度を得ることができないことがあり、10質量5を超えると、参照光及び情報光を不必要に吸収してしまい、特に、信号の読み出しの際に十分な信号強度を得ることができないことがある。
【0039】
<(B)平均エポキシ当量が230g/eq以下であり、かつ分子内に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物>
前記(B)成分のエポキシ化合物としては、平均エポキシ当量が230g/eq以下であり、かつ分子内に2つ以上のエポキシ基を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、エポキシ基を有する化合物のモノマー及びそのオリゴマーのいずれも使用できる。具体的には、芳香族エポキシド、脂環式エポキシド及び脂肪族エポキシドが挙げられる。
【0040】
前記(B)成分のエポキシ化合物の平均エポキシ当量は、200g/eq以下が好ましい。この場合、下限値は100g/eqが好ましい。前記平均エポキシ当量は、エポキシ基1当量を含むのに必要なグラム数であって、この値が小さいものほど、単位質量中に多くのエポキシ基を含み、反応性に富むことを意味している。前記平均エポキシ当量が230g/eqを超えると、自発的には硬化しにくく、加熱等の処理が必要となる。また、下限を下回る場合、こうした化合物の多くは揮発性を有し、ハンドリングに支障をきたすおそれがある。
ここで、前記平均エポキシ当量は、例えば、JIS K7236に準拠した方法、又は一般的な測定法として、塩酸−ピリジン滴定法、塩酸−ジオキサン滴定法、過塩素酸法などにより測定することができる。
【0041】
前記芳香族エポキシドとしては、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジグリシジルエーテル又はポリグリシジルエーテルであり、例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル又はポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリグリシジルエーテル、又はノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここで、前記アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられ、エチレンオキサイドが特に好ましい。
【0042】
前記脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロへキセン又はシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られるシクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物が好ましく、具体例としては、以下に示す化合物等が挙げられる。
【0043】
前記脂肪族エポキシドとしては、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールのジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル又は1,6−ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここで、前記アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられ、エチレンオキサイドが特に好ましい。
これらは、1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、エチレンオキサイド部分を有することが、レーザー照射時に着色が生じない点から好ましい。
【0044】
<(C)チオール基含有化合物>
前記チオール基含有化合物としては、例えば、メルカプト化合物が好適に挙げられる。該メルカプト化合物としては、形成される感光性組成物に機械的強度を与える観点から、2官能以上であることが好ましい。このようなメルカプト化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、過剰の低分子ジメルカプタンとポリエポキサイド化合物との付加反応、ポリエポキサイドと硫化水素との反応、メルカプトプロピオン酸又はメルカプトグリコール酸と多価アルコールとのエステル化反応などから誘導されるポリメルカプタン化合物が挙げられる。これらの化合物は、エチレンオキサイド部分を有することが、レーザー照射時に着色が生じない点から好ましい。
【0045】
前記ジメルカプタンとしては、例えばジメルカプトエタン、ジメルカプトブタン、ジメルカプトヘキサン、ジメルカプトオクタンなどが挙げられる。
前記ポリエポキサイド化合物としては、例えばビスフェノールA又はその水素添加物、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリト酸、ピロメリト酸、これら芳香族多価カルボン酸の水素添加物のエポキシ末端ポリエチレングリコール変性物、これら芳香族多価カルボン酸の水素添加物のポリプロピレングリコール変性物などが挙げられる。
【0046】
前記多価アルコール化合物としては、例えば、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリト酸、ピロメリト酸のOH末端ポリエチレングリコール変性物、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。これらの化合物の中で好適に用いられるものの具体例としては、トリメチロールプロパンとジメルカプトエタンから誘導されるトリメルカプト化合物、ペンタエリスリトールとジメルカプトエタンから誘導されるテトラメルカプト化合物、トリメリト酸とジメルカプトエタンから誘導されるトリメルカプト化合物、トリメチロールプロパンとメルカプトプロピオン酸から誘導されるトリメルカプト化合物、ペンタエリスリトールとメルカプトプロピオン酸から誘導されるテトラメルカプト化合物、トリメチロールプロパンのポリエチレングリコール変性物とメルカプトプロピオン酸から誘導されるトリメルカプト化合物、ペンタエリスリトールのポリエチレングリコール変性物とメルカプトプロピオン酸から誘導されるテトラメルカプト化合物等が挙げられる。
【0047】
前記(B)成分のエポキシ化合物及び前記(C)成分のチオール基含有化合物の前記感光性組成物全固形分における合計含有量は、60〜99質量%が好ましく、70〜95質量%がより好ましく、75〜90質量%が更に好ましい。この範囲において、感度、多重特性、記録した情報の保存性に優れた感光性組成物が得られる。前記含有量が99質量%を超えると、ボリュームホログラフィック用途として十分な感度、多重特性を得ることができないことがあり、60質量%未満であると、記録した情報の保存性が悪化してしまうことがある。
前記(B)成分のエポキシ化合物と前記(C)成分のチオール基含有化合物との混合質量比〔((B)成分:(C)成分)〕は、1:0.7〜1:1.2が好ましく、1:0.8〜1:1.1がより好ましい。この範囲において、硬化物の耐曲げ強さ、引っ張り強さ、降伏点、寸法安定性、耐候性などの機械的特性に優れた感光性組成物を得ることができる。前記含有量の数値範囲を外れると、上記硬化物の機械的特性が損なわれてしまうことがある。
【0048】
−硬化促進剤−
前記感光性組成物には、更に硬化促進剤を含有することが好ましい。
前記硬化促進剤としては、例えば、3級アルキルアミン、3級芳香族アミン、脂環式3級アミン、などが挙げられる。
前記3級アルキルアミンとしては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。
前記3級芳香族アミンとしては、例えば、トリス−2,4,6−(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルベンジルアミンなどが挙げられる。
前記脂環式3級アミンとしては、例えば、ヘキサメチレンテトラミン、ジアザビシクロウンデカン(DBU)、ジアザビシクロオクタン(DABCO)などが挙げられる。
前記硬化促進剤の前記感光性組成物全固形分における含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、1〜7質量%がより好ましく、1.5〜5質量%が更に好ましい。この範囲において、機械特性に優れ、かつ迅速に硬化を行うことが可能な感光性組成物を得ることができる。
【0049】
本発明の感光性組成物においては、前記(B)成分のエポキシ化合物と、前記(C)成分の化合物とを混合した後、30℃に加熱することにより30分間以内(好ましくは10乃至30分間、更に好ましくは15乃至25分間)にゲル化することが好ましい。
ここで、ゲル化するか否かの判定については、前記(B)成分のエポキシ化合物と、前記(C)成分の化合物との混合物を、例えば、粘性測定を行うことによりその粘度が一般的な液体の範疇を超える値を示すかどうかにより判定する方法、一定のゲル化処理を施した後、適当な溶媒((B)成分と(C)成分を溶解可能な溶媒)に混合物を浸漬して不溶化重量率を測定する方法などが利用可能である。
【0050】
前記(B)成分のエポキシ化合物と、前記(C)成分のチオール基含有化合物とを混合した後、30分間以内(好ましくは12分乃至30分間、更に好ましくは15分乃至25分間に自発的な発熱ピークを有することが好ましい。ここで、自発的な発熱ピークを有するか否かの判定については、例えば、前記(B)成分のエポキシ化合物と、前記(C)成分のチオール基含有化合物との混合物をアルミニウムパンに少量とり、示差熱量重量同時測定装置(TG/TDA)、又は、示差走査熱量分析装置(DSC)を用いて、発熱量及び発熱ピークに達した時間を測定することができる。
【0051】
また、前記感光性組成物は、カールフィッシャー法で測定した水分含有率は、0.01〜2.5質量%が好ましく、0.02〜2.0質量%がより好ましい。前記水分含有率の下限は特に限定されないが、2.5質量%を超えると、(B)成分が経時で加水分解する恐れがあり、また、生成する硬化物が多量の水分を含むことになり、耐環境性を失うおそれがある。
【0052】
本発明の感光性組成物は、ホログラフィを利用して情報を記録する記録層の形成に用いられ、以下の本発明の光記録媒体、本発明の光記録媒体の製造方法、本発明の光記録方法、及び本発明の光記録装置などに特に好適に用いられる。
【0053】
(光記録媒体)
本発明の光記録媒体は、本発明の前記感光性組成物からなり、ホログラフィを利用して情報を記録する記録層を有してなり、少なくとも第一の基板と、選択反射層と、記録層と、第二の基板とをこの順に有するものが好ましく、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0054】
本発明の光記録媒体は、ホログラムの原理を利用して記録再生可能なものであれば特に制限はなく、2次元などの情報を記録する比較的薄型の平面ホログラムや立体像など多量の情報を記録する体積ホログラムであってもよく、透過型及び反射型のいずれであってもよい。また、ホログラムの記録方式もいずれであってもよく、例えば、振幅ホログラム、位相ホログラム、ブレーズドホログラム、複素振幅ホログラムなどでもよい。
【0055】
前記記録層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、100〜1,000μmが好ましく、150〜700μmがより好ましく、200〜500μmが更に好ましい。この範囲において、製造適性が高く、かつ良好なボリュームホログラフィック光情報記録を行うことが可能である。前記厚みが1000μmを超えると、コスト面及び製造方法の面で困難が生じることがあり、100μm未満であると、信号強度と多重性能との両立を図ることができないことがある。
【0056】
<基板>
前記基板としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、ディスク形状、カード形状平板状、シート状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記光記録媒体の大きさ等に応じて適宜選択することができる。
【0057】
前記基板の材料としては、特に制限はなく、無機材料及び有機材料のいずれをも好適に用いることができるが、光記録媒体の機械的強度を確保できるものであり、記録及び再生に用いる光が基板を通して入射する透過型の場合は、用いる光の波長領域で十分に透明であることが必要である。
前記無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、などが挙げられる。
前記有機材料としては、例えば、トリアセチルセルロース等のアセテート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、プラスチックフィルムラミネート紙、合成紙などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、成形性、光学特性、コストの点から、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。
【0058】
前記基板としては、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
前記基板の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1〜5mmが好ましく、0.3〜2mmがより好ましい。前記基板の厚みが、0.1mm未満であると、ディスク保存時の形状の歪みを抑えられなくなることがあり、5mmを超えると、ディスク全体の重量が大きくなってドライブモーターなどにより回転して用いる場合には、過剰な負荷をかけることがある。
【0059】
前記基板には、半径方向に線状に延びる複数の位置決め領域としてのアドレス−サーボエリアが所定の角度間隔で設けられ、隣り合うアドレス−サーボエリア間の扇形の区間がデータエリアになっている。アドレス−サーボエリアには、サンプルドサーボ方式によってフォーカスサーボ及びトラッキングサーボを行うための情報とアドレス情報とが、予めエンボスピット(サーボピット)等によって記録されている(プリフォーマット)。なお、フォーカスサーボは、反射膜の反射面を用いて行うことができる。トラッキングサーボを行うための情報としては、例えば、ウォブルピットを用いることができる。
【0060】
−反射膜−
前記反射膜は、前記基板のサーボピットパターン表面に形成される。
前記反射膜の材料としては、記録光や参照光に対して高い反射率を有する材料を用いることが好ましい。使用する光の波長が400〜780nmである場合には、例えば、Al、Al合金、Ag、Ag合金、などを使用することが好ましい。使用する光の波長が650nm以上である場合には、Al、Al合金、Ag、Ag合金、Au、Cu合金、TiN、などを使用することが好ましい。
なお、前記反射膜として、光を反射すると共に、追記及び消去のいずれかが可能な光記録媒体、例えば、DVD(ディジタル ビデオ ディスク)などを用い、ホログラムをどのエリアまで記録したかとか、いつ書き換えたかとか、どの部分にエラーが存在し交替処理をどのように行ったかなどのディレクトリ情報などをホログラムに影響を与えずに追記及び書き換えすることも可能となる。
【0061】
前記反射膜の形成は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、各種気相成長法、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などが用いられる。これらの中でも、スパッタリング法が、量産性、膜質等の点で優れている。
前記反射膜の厚みは、十分な反射率を実現し得るように、50nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。
【0062】
<選択反射層>
前記選択反射層は、前記基板のサーボピット上又は前記反射層上に設けられる。
前記選択反射層は、複数種の光線の中から特定の波長の光のみを反射する、波長選択反射機能を有する。特に、入射角が変化しても選択反射波長にずれが生じることなく、情報光及び参照光による光記録媒体の反射膜からの乱反射を防止し、ノイズの発生を防止する機能もあり、前記光記録媒体に前記選択反射層を積層することにより、高解像度、回折効率の優れた光記録が得られる。
前記選択反射層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ダイクロイックミラー層、色材含有層、誘電体蒸着層、単層又は2層以上のコレステリック層及び必要に応じて適宜選択したその他の層の少なくともいずれかを積層した積層体により形成される。
前記選択反射層は、直接記録層など共に、前記基板上に塗布などにより積層してもよく、フィルム等の基材上に積層して選択反射層を作製し、これを基板上に積層してもよい。
【0063】
−ダイクロイックミラー層−
前記ダイクロイックミラー層は、波長選択反射膜とするためには、複数層積層することが好ましい。前記積層数は、1〜50層が好ましく、2〜40層がより好ましく、2〜30層が特に好ましい。前記積層数が、50層を超えると、多層蒸着により生産効率性が低下し、分光透過率特性の変化が小さくなり層数を増加するだけの効果は小さくなる。
【0064】
前記ダイクロイックミラー層における材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、Ag、Au、Pt、Al、又はこれらの合金などが挙げられる。
【0065】
前記ダイクロイックミラー層の積層方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビーム法、イオンアシスト法、レーザーアブレーション法等の物理的気相成長(PVD)法、熱CVD法、光CVD法、プラズマCVD法等の化学的気相成長(CVD)法、などが挙げられる。これらの中でも、物理的気相成長(PVD)法が好ましく、スパッタリング法が特に好ましい。
前記スパッタリングとしては、成膜レートの高いDCスパッタリング法が好ましい。なお、DCスパッタリング法においては、導電性が高い材料を用いることが好ましい。
また、前記スパッタリングにより多層成膜する方法としては、例えば、(1)1つのチャンバで複数のターゲットから交互又は順番に成膜する1チャンバ法、(2)複数のチャンバで連続的に成膜するマルチチャンバ法とがある。これらの中でも、生産性及び材料コンタミネーションを防ぐ観点から、マルチチャンバ法が特に好ましい。
前記ダイクロイックミラー層の厚みとしては、光学波長オーダーで、λ/16〜λの膜厚が好ましく、λ/8〜3λ/4がより好ましく、λ/6〜3λ/8がより好ましい。
【0066】
−色材含有層−
前記色材含有層は、色材、バインダー樹脂、溶剤及び必要に応じてその他の成分により形成される。
【0067】
前記色材としては、顔料及び染料の少なくともいずれかが好適に挙げられ、これらの中でも、532nmの光を吸収し、655nm若しくは780nmのサーボ光を透過させる観点から、赤色染料、赤色顔料が好ましく、赤色顔料が特に好ましい。
【0068】
前記赤色染料としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C.I.アシッドレッド1,8,13,14,18,26,27,35,37,42,52,82,87,89,92,97,106,111,114,115,134,186,249,254,289等の酸性染料;C.I.ベーシックレッド2,12,13,14,15,18,22,23,24,27,29,35,36,38,39,46,49,51,52,54,59,68,69,70,73,78,82,102,104,109,112等の塩基性染料;C.I.リアクティブレッド1,14,17,25,26,32,37,44,46,55,60,66,74,79,96,97等の反応性染料、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0069】
前記赤色顔料としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド97、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド180、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド215、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド217、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド223、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド226、C.I.ピグメントレッド227、C.I.ピグメントレッド228、C.I.ピグメントレッド240、C.I.ピグメントレッド48:1、パーマネント・カーミンFBB(C.I.ピグメントレッド146)、パーマネント・ルビーFBH(C.I.ピグメントレッド11)、ファステル・ピンクBスプラ(C.I.ピグメントレッド81)、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0070】
これらの中でも、532nmの光に対する透過率が10%以下であり、かつ655nmの光に対する透過率が90%以上である透過スペクトルを示す赤色顔料が特に好ましく用いられる。
【0071】
前記色材の含有量としては、前記色材含有層の全固形質量に対し0.05〜90質量%が好ましく、0.1〜70質量%がより好ましい。前記含有量が0.05質量%未満であると、色材含有層の厚みが500μm以上必要となってしまうことがあり、90質量%を超えると、色材含有層の自己支持性がなくなり、色材含有層の作製工程中に膜が崩れてしまうことがある。
【0072】
−バインダー樹脂−
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体;塩化ビニル、酢酸ビニルとビニルアルコール、マレイン酸及びアクリル酸の少なくともいずれかとの共重合体;塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体;塩化ビニル/アクリロニロリル共重合体;エチレン/酢酸ビニル共重合体;ニトロセルロース等のセルロース誘導体;ポリアクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、分散性及び耐久性を更に高めるため、以上に挙げたバインダー樹脂分子中に、極性基(エポキシ基、COH、OH、NH、SOM、OSOM、PO、OPO(ただし、Mは水素原子、アルカリ金属、又はアンモニウムであり、一つの基の中に複数のMがあるときは互いに異なっていてもよい)を導入したものが好ましい。前記極性基の含有量としては、前記バインダー樹脂1グラム当り10−6〜10−4当量が好ましい。
以上列挙したバインダー樹脂は、イソシアネート系の公知の架橋剤を添加して硬化処理されることが好ましい。
【0073】
前記バインダー樹脂の含有量としては、前記色材含有層の全固形質量に対し10〜99.95質量%が好ましく、30〜99.9質量%がより好ましい。
【0074】
前記各成分は、適当な溶媒に溶解乃至は分散し、塗布液に調製し、この塗布液を所望の塗布方法により後述する基材上に塗布することにより、色材含有層を形成することができる。
前記溶媒としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、3−メトキシプロピオン酸メチルエステル、3−メトキシプロピオン酸エチルエステル、3−メトキシプロピオン酸プロピルエステル、3−エトキシプロピオン酸メチルエステル、3−エトキシプロピオン酸エチルエステル、3−エトキシプロピオン酸プロピルエステル等のアルコキシプロピオン酸エステル類;2−メトキシプロピルアセテート、2−エトキシプロピルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のアルコキシアルコールのエステル類;乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸エステル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、テトラヒドロフラン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0075】
前記塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インクジェット法、スピンコート法、ニーダーコート法、バーコート法、ブレードコート法、キャスト法、ディップ法、カーテンコート法、などが挙げられる。
【0076】
前記色材含有層の厚みは、例えば、0.5〜200μmが好ましく、1.0〜100μmがより好ましい。前記厚みが、0.5μm未満であると、色材を包んで膜とするためのバインダー樹脂を十分な量添加することができなくなることがあり、200μmを超えると、フィルタの厚みが大きくなりすぎて、照射光及びサーボ光の光学系として過大なものが必要になることがある。
【0077】
−誘電体蒸着層−
前記誘電体蒸着層は、例えば、互いに屈折率の異なる誘電体薄層を複数層積層してなり、波長選択反射膜とするためには、高屈折率の誘電体薄層と低屈折率の誘電体薄層とを交互に複数層積層することが好ましいが、2種以上に限定されず、それ以上の種類であってもよい。
前記積層数は、2〜20層が好ましく、2〜12層がより好ましく、4〜10層が更に好ましく、6〜8層が特に好ましい。前記積層数が、20層を超えると、多層蒸着により生産効率性が低下し、本発明の目的及び効果を達成できなくなることがある。
【0078】
前記誘電体薄層の積層順については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、隣接する膜の屈折率が高い場合にはそれより低い屈折率の膜を最初に積層する。その逆に隣接する層の屈折率が低い場合にはそれより高い屈折率の膜を最初に積層する。前記屈折率が高いか低いかを決めるしきい値としては1.8が好ましい。なお、屈折率が高いか低いかは絶対的なものではなく、高屈折率の材料の中でも、相対的に屈折率の大きいものと小さいものとが存在してもよく、これらを交互に使用してもよい。
【0079】
前記高屈折率の誘電体薄層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Sb、Sb、Bi、CeO、CeF、HfO、La、Nd、Pr11、Sc、SiO、Ta、TiO、TlCl、Y、ZnSe、ZnS、ZrO、などが挙げられる。これらの中でも、Bi、CeO、CeF、HfO、SiO、Ta、TiO、Y、ZnSe、ZnS、ZrOが好ましく、これらの中でも、SiO、Ta、TiO、Y、ZnSe、ZnS、ZrOがより好ましい。
【0080】
前記低屈折率の誘電体薄層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Al、BiF、CaF、LaF、PbCl、PbF、LiF、MgF、MgO、NdF、SiO、Si、NaF、ThO、ThF、などが挙げられる。これらの中でも、Al、BiF、CaF、MgF、MgO、SiO、Siが好ましく、これらの中でも、Al、CaF、MgF、MgO、SiO、Siがより好ましい。
なお、前記誘電体薄層の材料においては、原子比についても特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、成膜時に雰囲気ガス濃度を変えることにより、原子比を調整することができる。
【0081】
前記誘電体薄層の積層方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオンプレーティング、イオンビーム等の真空蒸着法、スパッタリング等の物理的気相成長法(PVD法)、化学的気相成長法(CVD法)、などが挙げられる。これらの中でも、真空蒸着法、スパッタリングが好ましく、スパッタリングがより好ましい。
前記スパッタリングとしては、成膜レートの高いDCスパッタリング法が好ましい。なお、DCスパッタリング法においては、導電性が高い材料を用いることが好ましい。
また、前記スパッタリングにより多層成膜する方法としては、例えば、(1)1つのチャンバで複数のターゲットから交互又は順番に成膜する1チャンバ法、(2)複数のチャンバで連続的に成膜するマルチチャンバ法とがある。これらの中でも、生産性及び材料コンタミネーションを防ぐ観点から、マルチチャンバ法が特に好ましい。
前記誘電体薄層の厚みとしては、光学波長オーダーで、λ/16〜λの膜厚が好ましく、λ/8〜3λ/4がより好ましく、λ/6〜3λ/8がより好ましい。
【0082】
前記誘電体蒸着層においては、該誘電体蒸着層中を伝播する光の一部が、各誘電体薄層毎に多重反射し、それらの反射光が干渉するため、誘電体薄層の厚さと光に対する膜の屈折率との積で決まる波長の光のみが選択的に透過されることになる。また、誘電体蒸着層の中心透過波長は入射光に対して角度依存性を有しており、入射光を変化させると透過波長を変えることができる。
【0083】
−コレステリック液晶層−
前記コレステリック液晶層は、少なくともネマチック液晶化合物、及びカイラル化合物を含有してなり、重合性化合物、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0084】
前記コレステリック液晶層は、1層でもよく、2層以上が積層されていてもよい。該2層以上の積層数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2〜10層が好ましい。前記積層数が10層を超えると、却って塗布による生産効率性が低下し、本発明の目的及び効果を達成できなくなることがある。
【0085】
前記コレステリック液晶層としては、円偏光分離機能を有するものが好ましい。前記円偏光分離機能を有するコレステリック液晶層は、液晶の螺旋の回転方向(右回り又は左回り)と円偏光方向とが一致し、波長が液晶の螺旋ピッチであるような円偏光成分の光だけを反射する選択反射特性を有する。このコレステリック液晶層の選択反射特性を利用して、一定の波長帯域の自然光から特定波長の円偏光のみを透過分離し、その残りを反射する。したがって、前記各コレステリック液晶層は、第一の光を透過し、該第一の光と異なる第二の光の円偏光を反射することが好ましく、前記第一の光の波長が350〜600nmであり、かつ前記第二の光の波長が600〜900nmであることが好ましい。
【0086】
前記コレステリック液晶層の選択反射特性は、特定の波長帯域のみに限定され、可視光域をカバーすることは困難である。即ち、前記コレステリック液晶層の選択反射波長領域幅Δλは、下記数式1で表される。
<数式1>
Δλ=2λ(ne−no)/(ne+no)
ただし、前記数式1中、noは、コレステリック液晶層に含有されるネマチック液晶分子の正常光に対する屈折率を表す。neは、該ネマチック液晶分子の異常光に対する屈折率を表す。λは、選択反射の中心波長を表す。
【0087】
前記数式1で示すように、前記選択反射波長帯域幅Δλは、ネマチック液晶そのものの分子構造に依存する。前記数式1から、(ne−no)を大きくすれば、前記選択反射波長帯域幅Δλを拡げられるが、(ne−no)は通常0.3以下であり、0.3より大きくなると、液晶としてのその他の機能、例えば、配向特性、液晶温度等が不十分となり、実用化が困難となる。したがって、現実にはコレステリック液晶層の選択反射波長帯域幅Δλは、最大でも150nm程度であり、通常30〜100nm程度が好ましい。
【0088】
また、前記コレステリック液晶層の選択反射中心波長λは、下記数式2で表される。
<数式2>
λ=(ne+no)P/2
ただし、前記数式2中、ne及びnoは上記数式1と同じ意味を表す。Pは、コレステリック液晶層の一回転ねじれに要する螺旋ピッチ長を表す。
【0089】
前記数式2で示すように、前記選択反射中心波長λは、コレステリック液晶層の螺旋ピッチが一定であれば、コレステリック液晶層の平均屈折率と螺旋ピッチ長Pに依存する。それ故、コレステリック液晶層の選択反射特性を拡げるには、前記各コレステリック液晶層の選択反射中心波長が互いに異なり、前記各コレステリック液晶層の螺旋の回転方向(右回り又は左回り)が互いに同じであることが好ましい。また、各コレステリック液晶層の選択反射波長帯域は連続的であることが好ましい。ここで、前記「連続的」とは、2つの選択反射波長帯域間にギャップがなく、実質的にこの範囲の反射率が40%以上であることを意味する。
したがって、各コレステリック液晶層の選択反射中心波長λ間の距離は、各選択反射波長帯域が少なくとも1つの他の選択反射波長帯域と連続となる範囲内であることが好ましい。
【0090】
前記フィルタ層は、垂直入射を0°とし±20°の範囲であるλ〜λ/cos20°(ただし、λは照射光波長を表す)における光反射率が40%以上であることが好ましく、垂直入射を0°とし±40°の範囲であるλ〜λ/cos40°(ただし、λは照射光波長を表す)における光反射率が40%以上であることが特に好ましい。
前記λ〜λ/cos20°、特にλ〜λ/cos40°(ただし、λは照射光波長を表す)の範囲における光反射率が40%以上であれば、照射光反射の角度依存性を解消でき、通常の光記録媒体に用いられているレンズ光学系を採用することができる。
【0091】
具体的には、選択反射中心波長が互いに異なり、前記各コレステリック液晶層の螺旋の回転方向が互いに同じであるコレステリック液晶層を3層積層すると、図4に示すような反射特性を有するフィルタ層が得られる。この図4は正面(0°)からの垂直入射光に対する反射特性が40%以上であることを示している。これに対し、斜め方向からの入射光になると次第に短波長側にシフトしていき、液晶層内で40°傾斜した時は図5に示すような反射特性を示す。
同様に、選択反射中心波長が互いに異なり、前記各コレステリック液晶層の螺旋の回転方向が互いに同じであるコレステリック液晶層を2層積層すると、図6に示すような反射特性を有するフィルタ層が得られる。この図6は正面(0°)からの垂直入射光に対する反射特性が40%以上であることを示している。これに対し、斜め方向からの入射光になると次第に短波長側にシフトしていき、液晶層内で20°傾斜した時は図7に示すような反射特性を示す。
【0092】
なお、図4に示したλ〜1.3λの反射域は、λ=532nmのとき1.3λ=692nmとなり、サーボ光が655nmの場合はサーボ光を反射してしまう。ここに示すλ〜1.3λの範囲は光記録媒体用フィルタにおける±40°入射光への適性であるが、実際にそうした大きな斜め光まで使用する場合は、入射角±20°以内のサーボ光をマスキングして使用すれば支障なくサーボ制御できる。また、使用するフィルタにおける各コレステリック液晶層の平均屈折率を十分大きくすれば、光記録媒体用フィルタ内での入射角を±20°以内で全て設計することも容易であり、その場合は図6に示すλ〜1.1λのコレステリック液晶層を2層積層することでよいので、サーボ光透過には全く支障がなくなる。
したがって、図4〜図7の結果から、本発明の光記録媒体用フィルタ内においては、入射波長が0°〜20°(好ましくは0°〜40°)傾斜しても40%以上の反射率が確保できているので、信号読み取りには何ら支障のないフィルタ層が得られる。
【0093】
前記各コレステリック液晶層は、上記特性を満たせば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、上述したように、ネマチック液晶化合物、及びカイラル化合物を含有してなり、重合性化合物、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0094】
−ネマチック液晶化合物−
前記ネマチック液晶化合物は、液晶転移温度以下ではその液晶相が固定化することを特徴とし、その屈折率異方性Δnが、0.10〜0.40の液晶化合物、高分子液晶化合物、及び重合性液晶化合物の中から目的に応じて適宜選択することができる。溶融時の液晶状態にある間に、例えばラビング処理等の配向処理を施した配向基板を用いる等により配向させ、そのまま冷却等して固定化させることにより固相として使用することができる。
【0095】
前記ネマチック液晶化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記の化合物などを挙げることができる。
【0096】
【化2】

【0097】
【化3】

【0098】
【化4】

【0099】
前記式中において、nは1〜1,000の整数を表す。なお、前記各例示化合物においては、その側鎖連結基を、以下の構造に変えたものも同様に好適なものとして挙げることができる。
【0100】
【化5】

【0101】
上記の各例示化合物のうち、ネマチック液晶化合物としては、十分な硬化性を確保する観点から、分子内に重合性基を有するネマチック液晶化合物が好ましく、これらの中でも、紫外線(UV)重合性液晶が好適である。該UV重合性液晶としては、市販品を用いることができ、例えば、BASF社製の商品名PALIOCOLOR LC242;Merck社製の商品名E7;Wacker−Chem社製の商品名LC−Sllicon−CC3767;高砂香料株式会社製の商品名L35、L42、L55、L59、L63、L79、L83、などが挙げられる。
【0102】
前記ネマチック液晶化合物の含有量としては、前記各コレステリック液晶層の全固形分質量に対し30〜99質量%が好ましく、50〜99質量%がより好ましい。前記含有量が30質量%未満であると、ネマチック液晶化合物の配向が不十分となることがある。
【0103】
−カイラル化合物−
前記カイラル化合物としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、液晶化合物の色相、色純度改良の観点から、例えば、イソマニード化合物、カテキン化合物、イソソルビド化合物、フェンコン化合物、カルボン化合物、等の他、以下に示す化合物などを挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0104】
【化6】

【0105】
【化7】

【0106】
また、前記カイラル化合物としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、Merck社製の商品名S101、R811、CB15;BASF社製の商品名PALIOCOLOR LC756、などが挙げられる。
【0107】
前記カイラル化合物の含有量としては、前記各コレステリック液晶層の全固形分質量に対し0〜30質量%が好ましく、0〜20質量%がより好ましい。前記含有量が30質量%を超えると、コレステリック液晶層の配向が不十分となることがある。
【0108】
−重合性化合物−
前記コレステリック液晶層には、例えば、膜強度等の硬化の程度を向上させる目的で重合性化合物を併用することができる。該重合性化合物を併用すると、光照射による液晶の捻れ力を変化(パターンニング)させた後(例えば、選択反射波長の分布を形成した後)、その螺旋構造(選択反射性)を固定化し、固定化後のコレステリック液晶層の強度をより向上させることができる。ただし、前記液晶化合物が同一分子内に重合性基を有する場合には、必ずしも添加する必要はない。
前記重合性化合物としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレン性不飽和結合を持つモノマー等が挙げられ、具体的には、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能モノマーが挙げられる。
前記エチレン性不飽和結合を持つモノマーの具体例としては、以下に示す化合物を挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0109】
【化8】

【0110】
前記重合性化合物の添加量としては、前記各コレステリック液晶層の全固形分質量に対し0〜50質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。前記添加量が50質量%を超えると、コレステリック液晶層の配向を阻害することがある。
【0111】
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光重合開始剤、増感剤、バインダー樹脂、重合禁止剤、溶媒、界面活性剤、増粘剤、色素、顔料、紫外線吸収剤、ゲル化剤、などが挙げられる。
【0112】
前記光重合開始剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ジメチルベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール、ベンジルジメチルケタール、チオキサントン/アミン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記光重合開始剤としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、チバスペシャルティケミカルズ社製の商品名イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア784、イルガキュア814;BASF社製の商品名ルシリンTPO、などが挙げられる。
【0113】
前記光重合開始剤の添加量としては、前記各コレステリック液晶層の全固形分質量に対し0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。前記添加量が0.1質量%未満であると、光照射時の硬化効率が低いため長時間を要することがあり、20質量%を超えると、紫外線領域から可視光領域での光透過率が劣ることがある。
【0114】
前記増感剤は、必要に応じてコレステリック液晶層の硬化度を上げるために添加される。前記増感剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、などが挙げられる。
前記増感剤の添加量としては、前記各コレステリック液晶層の全固形分質量に対し0.001〜1.0質量%が好ましい。
【0115】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール;ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン等のポリスチレン化合物;メチルセルロース、エチルセルロース、アセチルセルロース等のセルロース樹脂;側鎖にカルボキシル基を有する酸性セルロース誘導体;ポリビニルフォルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂;メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体;アクリル酸アルキルエステルのホモポリマー又はメタアクリル酸アルキルエステルのホモポリマー;その他の水酸基を有するポリマー、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記アクリル酸アルキルエステルのホモポリマー又はメタアクリル酸アルキルエステルのホモポリマーにおけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、などが挙げられる。
前記その他の水酸基を有するポリマーとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタアクリル酸のホモポリマー)アクリル酸共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーの多元共重合体、などが挙げられる。
【0116】
前記バインダー樹脂の添加量としては、前記各コレステリック液晶層の全固形質量に対し0〜80質量%が好ましく、0〜50質量%がより好ましい。前記添加量が80質量%を超えると、コレステリック液晶層の配向が不十分となることがある。
【0117】
前記重合禁止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、ベンゾキノン、又はこれらの誘導体、などが挙げられる。
前記重合禁止剤の添加量としては、前記重合性化合物の固形分に対し0〜10質量%が好ましく、100ppm〜1質量%がより好ましい。
【0118】
前記溶媒としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3−メトキシプロピオン酸メチルエステル、3−メトキシプロピオン酸エチルエステル、3−メトキシプロピオン酸プロピルエステル、3−エトキシプロピオン酸メチルエステル、3−エトキシプロピオン酸エチルエステル、3−エトキシプロピオン酸プロピルエステル等のアルコキシプロピオン酸エステル類;2−メトキシプロピルアセテート、2−エトキシプロピルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のアルコキシアルコールのエステル類;乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸エステル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、テトラヒドロフラン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0119】
<その他の層>
前記その他の層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、第一ギャップ層、第二ギャップ層などが挙げられる。
【0120】
−第一ギャップ層−
前記第一ギャップ層は、必要に応じて前記選択反射層と前記反射膜との間に設けられ、第二の基板表面を平滑化する目的で形成される。また、記録層内に生成されるホログラムの大きさを調整するのにも有効である。即ち、前記記録層は、参照光及び情報光の干渉領域をある程度の大きさに形成する必要があるので、前記記録層とサーボピットパターンとの間にギャップを設けることが有効となる。
前記第一ギャップ層は、例えば、サーボピットパターンの上から紫外線硬化樹脂等の材料をスピンコート等で塗布し、硬化させることにより形成することができる。また、フィルタ層として透明基材の上に塗布形成したものを使用する場合には、該透明基材が第一ギャップ層としても働くことになる。
前記第一ギャップ層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1〜100μmが好ましい。
【0121】
−第二ギャップ層−
前記第二ギャップ層は、必要に応じて記録層又は光分解性記録層と選択反射層との間に設けられる。該第二ギャップ層は、情報光及び参照光がフォーカシングするポイントの部分をフォトポリマーで埋めていると、過剰露光がされた場合に、モノマーの過剰消費が起こり、多重記録能力が低下することがあり、この弊害を防止する機能がある。
前記第二ギャップ層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリスルホン(PSF)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリル酸メチル=ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のような透明樹脂フィルム、又は、JSR社製商品名ARTONフィルムや日本ゼオン社製商品名ゼオノアのような、ノルボルネン系樹脂フィルム、などが挙げられる。これらの中でも、等方性の高いものが好ましく、TAC、PC、商品名ARTON、及び商品名ゼオノアが特に好ましい。
前記第二ギャップ層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1〜200μmが好ましい。
【0122】
ここで、本発明の光記録媒体について、図面を参照して更に詳しく説明する。
図3は、本発明の実施形態における光記録媒体の構成を示す概略断面図である。この実施形態に係る光記録媒体21では、ポリカーボネート樹脂からなる第一の基板1にサーボピットパターン3が形成され、該サーボピットパターン3上にアルミニウム、金、白金等でコーティングして反射膜2が設けられている。なお、図3では第一の基板1全面にサーボピットパターン3が形成されているが、周期的に形成されていてもよい。また、このサーボピットの高さは最大1750Å(175nm)であり、第一の基板を始め他の層の厚みに比べて充分に小さいものである。
第一の基板のサーボピットを設けていない側には選択反射層6としてのAgを多層蒸着したダイクロイックミラー層が設けられている。
反射膜2上に記録層4が設けられている。第一の基板1及び第二の基板5(ポリカーボネート樹脂の基板)とによって、選択反射膜6、記録層4を挟むことによって光記録媒体21が構成される。
【0123】
本実施形態における光記録媒体21は、ディスク形状でもいいし、カード形状であってもよい。また、この光記録媒体21では、第一の基板1は0.6mm、選択反射層6は2〜3μm、記録層4は0.6μm、第二の基板5は0.6mmの厚みであって、合計厚みは約1.3mmとなっている。
【0124】
次に、図8を参照して、光記録媒体21周辺での光学的動作を説明する。まず、サーボ用レーザーから出射した光(赤色光)は、ダイクロイックミラー13でほぼ100%反射して、対物レンズ12を通過する。対物レンズ12によってサーボ用光は反射膜2上で焦点を結ぶように光記録媒体21に対して照射される。つまり、ダイクロイックミラー13は緑色や青色の波長の光を透過し、赤色の波長の光をほぼ100%反射させるようになっている。光記録媒体21の光の入出射面Aから入射したサーボ用光は、第二の基板5、記録層4、及び選択反射層6を通過し、反射膜2で反射され、再度、選択反射層6、記録層4、及び第二の基板5を透過して入出射面Aから出射する。出射した戻り光は、対物レンズ12を通過し、ダイクロイックミラー13でほぼ100%反射して、サーボ情報検出器(不図示)でサーボ情報が検出される。検出されたサーボ情報は、フォーカスサーボ、トラッキングサーボ、スライドサーボ等に用いられる。記録層4を構成するホログラム材料は、赤色の光では感光しないようになっているので、サーボ用光が記録層4を通過したり、サーボ用光が反射膜2で乱反射したとしても、記録層4には影響を与えない。また、サーボ用光の反射膜2による戻り光は、ダイクロイックミラー13によってほぼ100%反射するようになっているので、サーボ用光が再生像検出のためのCMOSセンサ又はCCD14で検出されることはなく、再生光に対してノイズとなることもない。
【0125】
また、記録用/再生用レーザーから生成された情報光及び記録用参照光は、偏光板16を通過して線偏光となりハーフミラー17を通過して1/4波長板15を通った時点で円偏光になる。ダイクロイックミラー13を透過し、対物レンズ11によって情報光と記録用参照光が記録層4内で干渉パターンを生成するように光記録媒体21に照射される。情報光及び記録用参照光は入出射面Aから入射し、記録層4で干渉し合って干渉パターンをそこに生成する。その後、情報光及び記録用参照光は記録層4、選択反射層6に入射するが、該選択反射層6の底面までの間に反射されて戻り光となる。つまり、情報光と記録用参照光は反射膜2までは到達しない。選択反射層6は、赤色光のみを透過する性質を有するからである。
【0126】
(光記録媒体の製造方法)
本発明の光記録媒体の製造方法は、本発明の前記感光性組成物からなる記録層を形成する記録層形成工程と、記録層が形成された光記録媒体全体を30℃で30分以上加熱する加熱工程とを少なくとも含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0127】
前記記録層は、例えば、選択反射層上に本発明の前記感光性組成物を塗布し、加熱し、乾燥させることにより形成することができる。
前記加熱工程では、光記録媒体全体を30℃で30分間以上加熱する。
【0128】
(光記録方法及び光再生方法)
本発明の光記録方法は、本発明の前記光記録媒体に対し、情報光及び参照光の照射を、該情報光の光軸と該参照光の光軸とが同軸となるようにして行い、前記情報光と前記参照光との干渉により生成される干渉パターンによって情報を記録層に記録する。
本発明の光再生方法は、本発明の前記光記録方法により記録層に記録された干渉パターンに参照光を照射して情報を再生する。
この場合、参照光が、光記録媒体の記録に用いられた参照光と同じ角度で、干渉パターンに照射して記録情報を再生することが好ましい。
【0129】
本発明の光記録方法及び光再生方法では、上述したように、二次元的な強度分布が与えられた情報光と、該情報光と強度がほぼ一定な参照光とを感光性の記録層内部で重ね合わせ、それらが形成する干渉パターンを利用して記録層内部に光学特性の分布を生じさせることにより、情報を記録する。一方、書き込んだ情報を読み出す(再生する)際には、記録時と同様の配置で参照光のみを記録層に照射し、記録層内部に形成された光学特性分布に対応した強度分布を有する再生光として記録層から出射される。
ここで、本発明の光記録方法及び光再生方法は、以下に説明する本発明の光記録装置を用いて行われる。
【0130】
(光記録装置)
本発明の光記録方法及び光再生方法に使用される光記録装置(光記録再生装置)について図9を参照して説明する。
図9は、本発明の一実施形態に係る光記録装置の全体構成図である。なお、光記録装置は、光記録装置と光再生装置を含んでなる。
この光記録装置100は、光記録媒体20が取り付けられるスピンドル81と、このスピンドル81を回転させるスピンドルモータ82と、光記録媒体20の回転数を所定の値に保つようにスピンドルモータ82を制御するスピンドルサーボ回路83とを備えている。また、光記録装置100は、光記録媒体20に対して情報光と参照光とを照射して情報を記録すると共に、光記録媒体20に対して再生用参照光を照射し、再生光を検出して、光記録媒体20に記録されている情報を再生するためのピックアップ31と、このピックアップ31を光記録媒体20の半径方向に移動可能とする駆動装置84とを備えている。
【0131】
光記録再生装置100は、ピックアップ31の出力信号よりフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TE、及び再生信号RFを検出するための検出回路85と、この検出回路85によって検出されるフォーカスエラー信号FEに基づいて、ピックアップ31内のアクチュエータを駆動して対物レンズ(不図示)を光記録媒体20の厚み方向に移動させてフォーカスサーボを行うフォーカスサーボ回路86と、検出回路85によって検出されるトラッキングエラー信号TEに基づいてピックアップ31内のアクチュエータを駆動して対物レンズを光記録媒体20の半径方向に移動させてトラッキングサーボを行うトラッキングサーボ回路87と、トラッキングエラー信号TE及び後述するコントローラからの指令に基づいて駆動装置84を制御してピックアップ31を光記録媒体20の半径方向に移動させるスライドサーボを行うスライドサーボ回路88とを備えている。
【0132】
光記録再生装置100は、更に、ピックアップ31内の後述するCMOS又はCCDアレイの出力データをデコードして、光記録媒体20のデータエリアに記録されたデータを再生したり、検出回路85からの再生信号RFより基本クロックを再生したりアドレスを判別したりする信号処理回路89と、光記録再生装置100の全体を制御するコントローラ90と、このコントローラ90に対して種々の指示を与える操作部91とを備えている。コントローラ90は、信号処理回路89より出力される基本クロックやアドレス情報を入力すると共に、ピックアップ31、スピンドルサーボ回路83、及びスライドサーボ回路88等を制御するようになっている。スピンドルサーボ回路83は、信号処理回路89より出力される基本クロックを入力するようになっている。コントローラ90は、CPU(中央処理装置)、ROM(リード オンリ メモリ)、及びRAM(ランダム アクセス メモリ)を有し、CPUが、RAMを作業領域として、ROMに格納されたプログラムを実行することによって、コントローラ90の機能を実現するようになっている。
【0133】
本発明の光記録方法及び光再生方法に使用される光記録再生装置は、本発明の前記光記録媒体を用いているので、高い信号強度が得られる露光量においてもS/N比が悪化せず、信号強度とS/N比とが両立でき、今までにない高密度記録を実現することができる。
【実施例】
【0134】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0135】
(実施例1)
−光記録媒体の作製−
前記光記録媒体は、第一の基板、反射層、接着層、選択反射層、保護層(第二ギャップ層)、感光性組成物層及び第二の基板の順に積層された光記録媒体を作製した。
【0136】
−−第二の基板の作製−−
直径120mm、内径15mm、厚さ0.6mmのポリカーボネート樹脂製の第二の基板を作製した。
【0137】
−−第一の基板の作製−−
前記第一の基板としては、直径120mm、内径15mm、板厚0.6mmのDVD+RW用に用いられている一般的なポリカーボネート樹脂製基板を使用した。この基板表面には、サーボピットパターンは形成されており、そのトラックピッチは0.74μmであり、溝深さは140nm、溝幅は300nmである。
まず、第一の基板のサーボピットパターン表面に反射層を形成した。反射層の材料には銀(Ag)を用いた。DCマグネトロンスパッタリング法により厚み150nmのAg反射層を形成した。次に、該反射層の上に、接着剤(SD640、大日本インキ化学工業(株)製)をスピンコートにより厚み20μmで塗工し、接着層(第一ギャップ層)を形成した。
【0138】
−−選択反射層の作製−−
まず、ポリカーボネートフィルム(三菱瓦斯化学株式会社製、商品名ユーピロン)厚さ100μm上に、DCマグネトロンスパッタリング法により、層数が30、厚み3μmのAg膜からなるダイクロイックミラー層を蒸着により形成し、前記第一の基板に積層するため、該第一の基板と同形状のディスクに打ち抜き加工した。
【0139】
<記録層塗布液の調製>
下記組成からなる記録層塗布液を、25℃、相対湿度50%の雰囲気下で調製した。
−記録層塗布液の組成−
・1−(3−ナフト−1−イルチオ)プロピルチオ)ナフタレン・・・0.1825g
・イルガキュア784(チバスペシャリティケミカルズ(株)製)・・・0.02g
・エポライト100E(共栄社化学(株)製、平均エポキシ当量=155g/eq、エチレンオキサイド部位含有)・・・1.1966g
・ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)・・・1.0019g
・トリス−2,4,6−(ジメチルアミノメチル)フェノール・・・0.1358g
【0140】
−−光記録媒体の積層−−
まず、反射層及び接着層(第一ギャップ層)が形成された前記第一の基板に、得られた選択反射層を、該選択反射層のベースフィルム面をサーボピットパターン側にして貼り付けた。貼り合わせは、間隙に気泡が入らないようにして行った。以上により前記第一の基板上に選択反射層を形成した。
次に、保護層(第二ギャップ層)として、紫外線硬化樹脂(SD640、大日本インキ化学工業株式会社製)をスピンコートにより厚み20μmになるように該フィルタ層上に塗工した。次に、積層された第一の基板と、第二の基板とを、第一の基板は積層面が第二基板に向かい合うように、平行に保持し、その間隔を500μmに保ったまま冶具を用いて保持した。この間隔に、上記記録層塗布液をディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、ML−5000X)を用いて注入し、間隔を保持したまま30分間放置したところ感光性組成物は自発的に硬化した。以上により、光記録媒体を作製した。
【0141】
(実施例2)
−光記録媒体の作製−
実施例1において、記録層塗布液を下記組成の記録層塗布液に変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2の光記録媒体を作製した。
<記録層塗布液の調製>
下記組成からなる記録層塗布液を、25℃、相対湿度50%の雰囲気下で調製した。
−記録層塗布液の組成−
・1−(3−ナフト−1−イルチオ)プロピルチオ)ナフタレン・・・0.1825g
・イルガキュア784(チバスペシャリティケミカルズ(株)製)・・・0.02g
・エポライト100E(共栄社化学(株)製、平均エポキシ当量=155g/eq、エチレンオキサイド部位含有)・・・0.8327g
・エポライト200P(共栄社化学(株)製、平均エポキシ当量=200g/eq、エチレンオキサイド部位非含有)・・・0.5000g
・ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)・・・1.0019g
・トリス−2,4,6−(ジメチルアミノメチル)フェノール・・・0.1358g
【0142】
(比較例1)
−光記録媒体の作製−
実施例1において、記録層塗布液を下記組成の記録層塗布液に変えた以外は、実施例1と同様にして、比較例1の光記録媒体を作製した。
<記録層塗布液の調製>
下記組成からなる記録層塗布液を、25℃、相対湿度50%の雰囲気下で調製した。
−記録層塗布液の組成−
・1−(3−ナフト−1−イルチオ)プロピルチオ)ナフタレン・・・0.1825g
・イルガキュア784(チバスペシャリティケミカルズ(株)製)・・・0.02g
・エポライト400E(共栄社化学(株)製、平均エポキシ当量270g/eq、エチレンオキサイド部位含有)・・・1.2007g
・ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)・・・0.7524g
・トリス−2,4,6−(ジメチルアミノメチル)フェノール・・・0.1358g
【0143】
(実施例3)
−光記録媒体の作製−
実施例1において、記録層塗布液を下記組成の記録層塗布液に変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例3の光記録媒体を作製した。
<記録層塗布液の調製>
下記組成からなる記録層塗布液を、25℃、相対湿度50%の雰囲気下で調製した。
−記録層塗布液の組成−
・1−(3−ナフト−1−イルチオ)プロピルチオ)ナフタレン・・・0.1825g
・イルガキュア784(チバスペシャリティケミカルズ(株)製)・・・0.02g
・エポライト200P(共栄社化学(株)製、平均エポキシ当量200g/eq、エチレンオキサイド部位非含有)・・・1.3662g
・ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)・・・0.8325g
・トリス−2,4,6−(ジメチルアミノメチル)フェノール・・・0.1358g
【0144】
(比較例2)
−光記録媒体の作製−
実施例1において、記録層塗布液を下記組成の記録層塗布液に変えた以外は、実施例1と同様にして、比較例2の光記録媒体を作製した。
<記録層塗布液の調製>
下記組成からなるホログラフィック記録層塗布液を、下記のタンクAとタンクBに分けて25℃、相対湿度50%の雰囲気下で調製した。
−記録層塗布液の組成−
タンクA:
・ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットトリマー・・・292.0g
・ヘキサメチレンジイソシアネート・・・97.4g
・トリブロモフェニルアクリレート・・・64.22g
・イルガキュア784(チバスペシャリティケミカルズ(株)製)・・・14g
・3,5−ジターシャリーブチル−4−ヒドロキシトルエン・・・210mg
タンクB:
・PolyFoxTMT(オムノバ・ソリューションズ社製)・・・817.9g
・ポリプロピレンオキサイドトリオール(平均分子量1000)・・・517.9g
・ターシャリーブチルペルオキサイド・・・580μl
・ジブチルラウレートスズ・・・10.2g
【0145】
(実施例4)
−光記録媒体の作製−
実施例1において、記録層塗布液を25℃、相対湿度80%の雰囲気下で調製した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の光記録媒体を作製した。
【0146】
次に、実施例1〜4及び比較例1〜2の各記録層塗布液(感光性組成物)について、以下のようにして、諸特性を評価した。結果を表1に示す。
【0147】
<(B)成分のエポキシ化合物と、(C)成分のチオール基含有化合物とを混合した後、30℃に加熱することにより30分間以内にゲル化する否か(ゲル化時間)>
(B)成分のエポキシ化合物と、(C)成分のチオール基含有化合物とを混合した後、ヒーターで混合物を30℃に保温しながら、混合物の粘度をビスコテスターVT550(英弘精機(株)製、レオメーター)で、粘度が107mPa・sを超えた点をゲル化点とし、ゲル化点に達するのに要する時間を測定した。
【0148】
<(B)成分のエポキシ化合物と、(C)成分のチオール基含有化合物とを混合した後、30分以内に自発的な発熱ピークを有するか否か>
(B)成分のエポキシ化合物と、(C)成分のチオール基含有化合物との混合物をアルミニウムパンに少量とり、示差熱量重量同時測定装置(セイコーインスツルメンツ(株)製、EXSTAR6000TG/DTA)を用いて、発熱量及び発熱ピークに達した時間を測定した。
【0149】
<水分含有量>
実施例1〜4及び比較例1〜2の各記録層塗布液(感光性組成物)について、カールフィッシャー法により、水分含有率を測定した。
【0150】
【表1】

【0151】
<記録層への記録>
次に、得られた各光記録媒体について、コリニア方式光記録再生評価装置(パルステック(株)製、SHOT−1000)を用い、情報を記録及び再生して、記録に必要な露光量、及びその露光量で行った記録におけるS/N比、及びスパイラル7×7の多重記録を行った際の多重記録回数を測定した。また、記録エリアの着色を下記基準で評価した。結果を表2に示す。
−記録エリアの着色−
○:着色なし
△:着色ありだが、信号を読み取ることができた
×:着色あり、かつ信号の読み取り不可であった
【0152】
【表2】

*比較例2は、記録再生不能であった。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明の感光性組成物は、湿度に対して安定であり、液の経時管理が容易で、各種成形方法に適用することが可能であり、該感光性組成物からなる記録層を有する光記録媒体は、信号強度とS/N比とが両立でき、高感度、かつ高多重記録が可能なホログラム型の各種光記録媒体として幅広く用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】図1は、従来の光記録媒体の一例を示す概略断面図である。
【図2】図2は、従来の光記録媒体の別の一例を示す概略断面図である。
【図3】図3は、本発明の光記録媒体の一例を示す概略断面図である。
【図4】図4は、コレステリック液晶層を3層積層したフィルタの正面(0°)からの入射光に対する反射特性を示すグラフである。
【図5】図5は、コレステリック液晶層を3層積層したフィルタ層内の40°傾斜方向からの入射光に対する反射特性を示すグラフである。
【図6】図6は、コレステリック液晶層を2層積層したフィルタの正面(0°)からの入射光に対する反射特性を示すグラフである。
【図7】図7は、コレステリック液晶層を2層積層したフィルタ層内の20°傾斜方向からの入射光に対する反射特性を示すグラフである。
【図8】図8は、本発明による光記録媒体周辺の光学系の一例を示す説明図である。
【図9】図9は、本発明の光記録装置の全体構成の一例を表すブロック図である。
【符号の説明】
【0155】
1 第一の基板
2 反射膜
3 サーボビットパターン
4 記録層
5 第二の基板
6 選択反射層
7 第二ギャップ層
8 第一ギャップ層
12 対物レンズ
13 ダイクロイックミラー
14 検出器
15 1/4波長板
16 偏光板
17 ハーフミラー
20〜22 光記録媒体
31 ピックアップ
33 サーボ光
35 情報光及び参照光
35a 情報光及び参照光
81 スピンドル
82 スピンドルモータ
83 スピンドルサーボ回路
84 駆動装置
85 検出回路
86 フォーカスサーボ回路
87 トラッキングサーボ回路
88 スライドサーボ回路
89 信号処理回路
90 コントローラ
91 走査部
100 光記録再生装置
A 入出射面
FE フォーカスエラー信号
TE トラッキングエラー信号
RF 再生信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)光反応性材料と、(B)平均エポキシ当量が230g/eq以下であり、かつ分子内に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物と、(C)チオール基含有化合物とを重合反応させてなる重合物を含有してなり、ホログラフィを利用して情報を記録する記録層の形成に用いられることを特徴とする感光性組成物。
【請求項2】
(B)成分のエポキシ化合物と、(C)チオール基含有化合物とを混合した後、30℃で加熱することにより30分間以内にゲル化する請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
(B)成分のエポキシ化合物と、(C)チオール基含有化合物とを混合した後、30分間以内に自発的な発熱ピークを有する請求項1から2のいずれかに記載の感光性組成物。
【請求項4】
(B)成分のエポキシ化合物が、エチレンオキサイド部位を含む請求項1から3のいずれかに記載の感光性組成物。
【請求項5】
(C)チオール基含有化合物が、メルカプタン化合物である請求項1から4のいずれかに記載の感光性組成物。
【請求項6】
(A)光反応性材料が、重合性化合物及び重合開始剤を含有する請求項1から5のいずれかに記載の感光性組成物。
【請求項7】
重合性化合物が、ラジカル重合性化合物から選択される少なくとも1種である請求項6に記載の感光性組成物。
【請求項8】
更に硬化促進剤を含有し、該硬化促進剤が3級アルキルアミン、3級芳香族アミン、及び脂環式3級アミンの少なくとも1種である請求項1から7のいずれかに記載の感光性組成物。
【請求項9】
カールフィッシャー法で測定した水分含有率が、0.01〜2.5質量%である請求項1から8のいずれかに記載の感光性組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の感光性組成物からなり、ホログラフィを利用して情報を記録する記録層を有することを特徴とする光記録媒体。
【請求項11】
少なくとも第一の基板と、選択反射層と、記録層と、第二の基板とをこの順に有する請求項10に記載の光記録媒体。
【請求項12】
選択反射層が第一の光を透過し、第二の光を反射する請求項11に記載の光記録媒体。
【請求項13】
請求項1から9のいずれかに記載の感光性組成物からなる記録層を形成する記録層形成工程と、記録層が形成された光記録媒体全体を30℃で30分間以上加熱する加熱工程とを少なくとも含むことを特徴とする光記録媒体の製造方法。
【請求項14】
請求項10から12のいずれかに記載の光記録媒体に対し、情報光及び参照光の照射を、該情報光の光軸と該参照光の光軸とが同軸となるようにして行い、前記情報光と前記参照光との干渉により生成される干渉パターンによって情報を記録層に記録することを特徴とする光記録方法。
【請求項15】
可干渉性を有する情報光の光軸と参照光の光軸とが同軸となるように、請求項10から12のいずれかに記載の光記録媒体に前記情報光及び前記参照光を照射する光照射手段と、該情報光と該参照光との干渉による干渉像を形成し、該干渉像を前記光記録媒体に記録する干渉像記録手段とを有することを特徴とする光記録装置。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−241144(P2007−241144A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66675(P2006−66675)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】