説明

成形品の製造方法、およびその製造装置

【課題】インプリント工法や凹版印刷工法で製造される成形品の、成形品とモールドとの離型の際の、成形品とモールドを引き剥がすために大きな力を必要とし成形品が変形するという問題、また、モールド内に成形品の一部が残ってしまうという問題を解決し、効率のよい離型を実現する。
【解決手段】成形品を構成する成形材料をモールドで成形する工程と、前記成形品をモールドから離型する工程とを有する成形品の製造方法であって、前記離型する工程が、成形品とモールドの界面に気体を注入して剥がす工程と、前記界面の状態を確認する工程と、成形品をモールドから離す工程とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント工法、凹版印刷工法で製造される成形品の製造方法、および、その製造装置に関し、特にアスペクト比が高い成形品の製造方法、および、その製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モールド中に樹脂材料を充填し硬化することで成形品を製造する射出成形技術は、生産性と寸法精度が高いことから、様々な製品に適用されている主要な製造技術の一つである。また、近年では、モールドを用いたインプリント工法や凹版印刷工法などにより微細配線形成を行なうことで、設備投資の削減、メッキ工程やエッチング工程で発生していた廃液の削減による環境負荷の低減、生産性の向上などを目的とした製造技術が開発されている。今後、モールドを用いた製造技術は、ますますの発展が期待される。
【0003】
モールドを用いた製造技術における大きな課題のひとつとして、アスペクト比の大きい成形品や複雑な形状を持つ成形品を製造する際の離型不良が挙げられる。大きなアスペクト比が望まれる理由は、例えば、インプリント工法や凹版印刷工法により微細配線を形成する場合、配線幅の微細化に伴って高さ方向の寸法を増してアスペクト比を大きくすることで、配線抵抗を小さくすることができるためである。その他にも、放熱構造として表面積を増やすための凹凸形状、ディスプレイにおける集光を目的としたレンズ部品など、様々な用途でアスペクト比の大きい成形品が望まれている。
【0004】
モールドを用いた成形品の製造工程は一般に、成形品を構成する成形材料をモールドの凹部に充填する工程と、成形材料の硬化を行う工程と、成形品をモールドから離型する工程からなる。この中の離型工程において、特に、成形品のアスペクト比を大きくすると、成形品とモールドを引き剥がすためには、より大きな力を必要とするようになり、その結果、成形品が変形するという問題を生じていた。また、離型の際にモールド内に成形品の一部が残ってしまうという問題も生じていた。この場合は、成形品が不良品になることはもちろんのこと、モールド内に残った成形品を取り除かなければならないため、生産性の著しい低下を招いていた。さらに、微細なモールドでは、残った成形品を取り除くことが不可能であったり、取り除いた際にモールドを損傷したりするため、モールド自体が使えなくなるなど、深刻な問題を引き起こしていた。
【0005】
以上のような離型工程の問題を解決する方法として、成形品とモールドの界面の一部に、微小なアクチュエータ、あるいは、圧縮ガスにより圧力を加えることで、離型の開始点を形成することによって、離型性を改善する方法が提案されている(特許文献1)。また、成形品とモールドを離型する際に、成形品とモールドの隙間に圧縮空気を送り込むことによって、離型を促進する方法が提案されている(特許文献2、特許文献3)。また、成形品とモールドとの離型の工程において、離型の進捗状況を光学的に観察する方法が提案され、この観察結果を離型工程にフィードバックすることにより、効率よく離型を行う方法が提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−81048号
【特許文献2】特開平11−203736号
【特許文献3】特開2009−96024号
【特許文献4】特開2011−100952号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
離型工程は、接着あるいは密着状態にある成形品とモールドの、接着あるいは密着状態を解除する工程と、成形品とモールドの相互間の距離を拡大することによって両者を分離する工程とに分けることができる。ここでは、前者の接着あるいは密着状態を解除する工程を「剥がす」工程、後者の成形品とモールドの相互間の距離を拡大することによって両者を分離する工程を「離す」工程ということにする。特に、前記の「剥がす」工程が、成形品とモールドを引っ張る力によって剥がす場合を、「引き剥がす」工程ということにする。
【0008】
特許文献1は、成形品とモールドの界面の一部に微小なアクチュエータあるいは圧縮ガスにより圧力を加え、この圧力によって成形品とモールドの界面の一部に離型の開始点を形成することによって、離型性を改善する方法を開示している。よって、この場合の離型工程は、離型の開始点を形成する工程、成形品とモールドを引き剥がす工程、さらに、成形品とモールドを離す工程からなる。すなわち、成形品とモールドを引き剥がす工程では、依然として、成形品とモールドを引き剥がすために大きな力を必要とするために成形品が変形するという問題や、モールド内に成形品の一部が残ってしまうという問題を生じていた。
【0009】
特許文献2は、離型工程で成形品とモールドを引き剥がす際に、成形品とモールドの界面に圧縮空気を送り込むことによって、離型の際の補助力を提供し離型を促進する方法を開示している。また、特許文献3は、離型工程で成形品とモールドの界面に圧縮空気を送り込むに際して、シール材により空気の圧力が離型に有効に作用する方法を開示している。
【0010】
しかしながら、何れの方法でも、成形品界面に気体が浸透したか否かを確認するための検査手法がないため、離型しにくい箇所に気体が浸透していない場合、離型不良の課題は残ったままであった。このような問題が発生する理由は、気体が成形品界面の最も浸透しやすい部分のみを浸透して型外に放出されるので、気体の通り道が形成され、その結果、型内の気体圧力を上昇させにくくなり、気体の浸透しにくい部分に気体を浸透させることが難しくなることによる。
【0011】
また、仮に気体の浸透性が良く、離型不良が発生しない場合でも、気体注入開始後、どの時点で離型に適正となったかの確認は、モールドから成形品を取り出してみなければわからないため、気体を浸透させる工程に費やす時間が過剰になることによる生産性の低下、あるいは適正な時間よりも短い時間にしたことによる離型不良が発生する問題があった。仮に気体浸透プロセスにおける適正条件が見出せた場合でも、成形の回数が増すことで、成形品とモールドの離型性や気体浸透性が変化し、前記した離型不良が突如発生する等の問題があった。
【0012】
特許文献4は、成形品とモールドとの離型の工程において、離型の進捗状況を光学的に観察する方法を開示し、この観察結果を離型工程にフィードバックすることにより、効率よく離型を行う方法を開示している。すなわち、成形品をモールドから引き剥がす工程を開始すると同時に、離型の進捗状況を光学的に観察する。これにより、刻々と変化する離型の状況、たとえば、離型の開始点の生成などを確認し、引き剥がす際の引っ張り力を変えるなどして、効率よく離型を行う。しかしながら、成形品とモールドを引き剥がす工程では、依然として、成形品とモールドを引き剥がすために大きな力を必要とし成形品が変形するという問題、また、モールド内に成形品の一部が残ってしまうという問題を生じていた。
【0013】
本発明は、上述のように、インプリント工法、凹版印刷工法で製造される成形品の製造方法、および、その製造装置において、成形品とモールドとの離型の際の問題、すなわち、成形品とモールドを引き剥がすために大きな力を必要とし成形品が変形するという問題、また、モールド内に成形品の一部が残ってしまうという問題を解決し、効率のよい離型を実現する成形品の製造方法、および、その製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
成形品を構成する成形材料をモールドで成形する工程と、成形品をモールドから離型する工程とを有する、成形品の製造方法であって、前記成形品をモールドから離型する工程が、成形品とモールドの界面に気体を注入して剥がす工程と、成形品とモールドの界面の状態を確認する工程と、成形品をモールドから離す工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明による成形品の製造方法、および、成形品の製造装置により、インプリント工法や凹版印刷工法で製造される成形品の、成形品とモールドとの離型の際の問題、すなわち、成形品とモールドを引き剥がすために大きな力を必要とし成形品が変形するという問題、また、モールド内に成形品の一部が残ってしまうという問題を解決し、効率のよい離型を実現する成形品の製造方法、および、その製造装置が提供される。特に、アスペクト比の大きい成形品や複雑な形状を持つ成形品を製造する際の効率のよい離型を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態を示す構成図である。
【図2】第1の実施形態において、成形材料をモールドにより成形する図である。
【図3】第1の実施形態において、気体注入前の成形品投影面を示す平面図である。
【図4】第1の実施形態において、気体注入の途中過程を示す成形品投影面の平面図である。
【図5】第1の実施形態において、気体注入の途中過程を示す断面図である。
【図6】第1の実施形態において、成形品の側面部分に気体注入が行われる過程を示す図である。a−1は気体注入初期の成形品投影面の平面図、a−2はその断面図、b−1は図に向かって左側の側面に気体注入が完了した成形品投影面の平面図、b−2はその断面図である。
【図7】第1の実施形態において、側面にテーパを設けた成形品2の側面部分に気体注入が行われる過程を示す図である。a−1は気体注入初期の成形品投影面の平面図、a−2はその断面図、b−1は図に向かって左側の側面に気体注入が完了したす成形品投影面の平面図、b−2はその断面図である。
【図8】第1の実施形態において、気体注入の完了した状態を示す成形品投影面の平面図である。
【図9】第2の実施形態において、気体注入前の成形品投影面を示す平面図である。
【図10】第2の実施形態において、気体注入の完了した状態を示す成形品投影面の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。
【0018】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、基板1上に成形品2を形成する本実施形態を示す構成図である。
【0019】
成形品2を基板1上に形成するには、まず、モールド3により成形材料の成形を行う。図2を用いて、成形材料をモールドにより成形する方法を説明する。まず、モールド3の表面に成形材料12を塗布する。続いて、スキージ13を用いて、前記成形材料12をモールド3の成形品2となる凹部にすり込むことで、成形材料12を凹部に充填する。スキージ13としては、メタル製のスキージやウレタンゴム等の樹脂製のスキージを使用できる。なお、図2では、最も簡易的な方法を示したが、凹部へのより確実な充填を行なうためには、スキージ13による充填後に真空脱泡を行ない、充填時に凹部に混入した気体を除去する。その際に不足となった成形材料12を、上記の方法によって再度充填を行なうことも有効である。以上により、成形材料をモールドにより成形する。
【0020】
続いて、基板1の成形品形成箇所に、モールド3を位置合わせして、基板1と成形材料12を接触させる。その後、成形材料を硬化することによって、成形材料12は成形品2となる。
【0021】
ここで、成形材料は、特に限定されるものではなく、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂などがあげられる。具体的には、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂等である。成形材料の硬化については、熱硬化性樹脂であれば加熱硬化、熱可塑性樹脂であれば冷却硬化、光硬化性樹脂であれば紫外線等の照射による光硬化を行うことで、成形品2を得ることができる。
【0022】
これらの材料は、それぞれ単体で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、成形品2を配線や放熱部品として用いる場合には、CuやAg等の金属粉末を前記樹脂中に混合して導電性や熱伝導性を付加することができる。また、成形品2を磁性体としたい場合は、Fe、Co、Niまたはこれらを含んだ合金粉末を前記樹脂中に混合すればよい。このように成形品2は、様々な性質をもつ材料を利用することが可能であり、さらにモールド3の形状に合わせて、いろいろな形状に形成することが出来る。
【0023】
モールド3の材質は、透明であることが望ましい。その理由は、モールド3から成形品2を離す前に、成形品2とモールド3の界面の状態を観察可能とするためである。モールド3の材質の具体例は、透明性に優れるガラス、ポリカーボネート、アクリル、PDMS(ポリジメチルシロキサン)を用いることができる。
【0024】
モールド3には、気体注入口7が設けられており、成形品2の硬化を進めた後、成形品2とモールド3の界面に気体を注入することが可能になっている。また、モールド3の外周部には、シール材4が形成されており、このシール材4が基板1の表面と密着することで、前記気体注入口7より注入された気体を閉じ込め、気体が型外に放出されることを防止する役割を果たしている。シール材4の材質は、一般的なものでよく、具体的には、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴムなどがあげられる。
【0025】
モールド3は、モールド保持板6に取り付けられている。モールド3とモールド保持板6は接着剤等で固定することが出来る。ここで、モールド保持板6の材質については、モールド3と同様に透明であることが望ましい。その理由は、前記したモールド3の材質を透明とする理由と同様である。モールド保持板6には気体注入口7が設けられており、モールド3の気体注入口とつながった構造になっている。気体注入口7は、気体供給装置8と接続されている。ここで、図1では、モールド保持板6の気体注入口7と気体供給装置8が接続された構造となっているが、モールド3の気体注入口7と気体供給装置8を直接接続しても良い。
【0026】
気体供給装置8は、オンオフ制御が可能であり、成形品2硬化後の所定のタイミングで気体注入口7を介して、気体をモールド3と成形品2の界面に注入することができる。ここで使用する気体の種類としては、空気または窒素、またはアルゴンなどの不活性ガスを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
気体をモールド3と成形品2の界面に注入するためには、圧力をかけることが必要になる。気体供給装置8は、コンプレッサーや圧力のかかったガスボンベを用いることで、加圧した気体をモールド3内に送り込むことができる。気体の圧力は、0.5〜0.7MPaが目安となるが、成形品2のサイズや形状により決まるため、気体をモールド3と成形品2の界面に注入することが可能な、十分な圧力をかけることが必要である。
【0028】
基板1は基板保持板5に固定されている。基板1の固定方法は、真空吸着が一般的であり、金属製の基板保持板5の所定の位置に吸着穴を設けても良いし、カーボン製多孔質体等を利用したポーラス状の板材を用いることができる。
【0029】
成形品2の投影面は、前記した透明なモールド3とモールド保持板6を介して観察可能になっている。すなわち、カメラ9により、成形品2の投影面を観察することができる。そして、カメラ9で観察した画像データを画像認識装置10に取り込み、取り込んだ画像データから気体の注入状況を識別し、成形品2とモールド3の界面全体に気体が浸透した時点で、型開閉制御回路11が基板保持板5とモールド保持板6を引き離す方向に稼動する信号を出すことにより、モールド3から成形品2を取り出す構成になっている。
【0030】
続いて、成形品2とモールド3の離型工程が、成形品2とモールド3の界面に気体を注入することで成形品2とモールド3を剥がす工程と、気体の注入の状態を観察することで、成形品2とモールド3の界面全体に気体が注入されたことを確認する工程と、成形品2をモールド3から離す工程からなる本実施形態について、図を参照しながら説明する。
【0031】
図3は、カメラ9から観察することができる気体注入前の成形品投影面を示す平面図である。図3に示すようにシール材4は、成形品2の投影面全体を囲むようにモールド3の外周に形成されている。成形品2の硬化が進んだ後、気体注入口7より、気体供給装置8により、気体が成形品2とモールド3の界面に注入される。
【0032】
図4は、気体注入の途中過程を示す成形品投影面の平面図である。図4に示すように、気体注入領域14は、成形品2あるいは基板1とモールド3の界面に気体が注入されたことにより、薄い気体の膜が形成されたことによる光の屈折率の変化で、気体が注入されていない部分と比べて、外観が変化している。
【0033】
図5は、図4で示した気体の注入状態を断面方向から観察した図である。ここで、成形品2の側面、すなわち、基板1に垂直な面と、モールド3との界面への気体注入の識別方法について説明する。
【0034】
図6は、成形品2の側面部分に気体注入が行われる過程を示す図である。a−1は気体注入の初期の成形品投影面の平面図、a−2はその断面図である。この段階では、側面全体にわたっての気体注入は完了していない。このとき、成形品の輪郭(気体注入前)15よりも、成形品の輪郭(気体注入途中)17のほうが、明瞭になっている。これは、成形品2とモールド3の間に、気体注入により気体の層が形成されたことによる。
【0035】
図6のb−1は、図に向かって左側の側面への気体注入が完了した成形品投影面の平面図であり、b−2はその断面図である。成形品側面への気体注入が完了することにより、成形品の輪郭(気体注入後)16は最も明瞭になる。最終的には、成形品の全ての側面への気体の注入が完了することにより、輪郭全体が明瞭になる。よって、側面への気体注入の状態は、成形品の輪郭の明瞭さによって判断することができる。
【0036】
すなわち、側面への気体注入が完了した成形品の輪郭(気体注入後)16の画像データを、予め画像認識装置10に入力しておく。そして、気体注入によって刻々と変化する輪郭の画像データをこれと照合することで、側面への気体注入の完了を判断することができる。
【0037】
図7は、側面にテーパを設けた成形品2の側面部分に気体注入が行なわれる過程を示す図である。a−1は気体注入の初期の成形品投影面の平面図、a−2はその断面図である。この段階では、側面全体にわたっての気体注入は完了していない。このとき、成形品の輪郭(気体注入前)18よりも、成形品の輪郭(気体注入途中)20のほうが、明瞭になっている。これは、成形品2とモールド3の間に、気体注入により気体の層が形成されたことによる。
【0038】
図7のb−1は、図に向かって左側の側面への気体注入が完了した成形品投影面の平面図であり、b−2はその断面図である。成形品側面への気体注入が完了することにより、成形品の輪郭(気体注入後)19は最も明瞭になる。最終的には、成形品の全ての側面への気体の注入が完了することにより、輪郭全体が明瞭になる。よって、側面への気体注入の状態は、成形品の輪郭の明瞭さによって判断することができる。
【0039】
成形品2の側面にテーパが形成されている場合も、側面全体に気体が注入された状態で、成形品の投影面の輪郭が最も明瞭になる点は、垂直な側面の場合と同様である。よって、側面への気体注入が完了した成形品の輪郭(気体注入後)19の画像データを、予め画像認識装置10に入力しておき、気体注入によって刻々と変化する輪郭の画像データをこれと照合することで、側面への気体注入の完了を判断することができる。
【0040】
図8は、シール材4に囲まれた部分の隅々まで気体が注入された状態を示した図であり、モールド3と成形品2の全ての界面に気体が注入されたことを示す。すなわち、この気体注入後の気体注入領域14と成形品の輪郭16の画像データを、予め画像認識装置10に入力しておき、気体注入によって刻々と変化する気体注入領域14と成形品の輪郭の画像データをこれと照合することで、成形品2とモールド3の全ての界面への気体注入の完了を判断することができる。
【0041】
図8の状態は、成形品2とモールド3とが完全に剥れた状態にあることを意味する。この状態を確認した後、型開閉制御回路11が基板保持板5とモールド保持板6を引き離す方向に稼動する信号を出すことにより、モールド3から成形品2を取り出す。
【0042】
なお、カメラ9で観察した気体注入状態を画像認識装置10で確認する方法としては、2値化により判定する方法が可能である。すなわち、気体注入前と気体注入後の画像データを区別する閾値を設定して、気体注入前後の画像を2値化することで、シール材4で囲まれた領域全体が気体注入後の画像データに置き換わったことを確認することをもって、気体が成形品2とモールド3の界面全体に注入されたことを判定できる。この時点で型開閉制御回路11に基板保持板5とモールド保持板6を引き離す方向に稼動する信号を出すことにより、モールド3から成形品2を確実かつ容易に離型することが可能となる。
【0043】
また、気体の注入が完全でない場合は、気体を注入する圧力を高めることにより、気体注入を促進させることが可能である。すなわち、カメラ9で観察した気体注入状態を画像認識装置10で確認することと、気体を注入する圧力を高めることにより気体の注入を促進させることとを繰り返すことによって、気体を成形品2とモールド3の界面全体に注入することが可能となる。
【0044】
本実施形態により、モールド3と成形品2の界面に気体を注入し、気体が成形品2の界面に注入された際に、気体注入前後の光の屈折率の変化により発生する、成形品の投影面および成形品の輪郭の変化を観察することにより、モールド3から成形品2を取り出す前に、成形品2の離型性を検査することが可能となる。従って、アスペクト比の大きい成形品など、離型が難しい成形品においても、確実な離型が可能となり、成形品の品質が向上することはもちろんのこと、離型不良に伴うモールドのメンテナンスが不要となるため、生産性が大幅に向上する。
【0045】
(第2の実施形態)
本発明の第2実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図9は、第2の実施形態において、気体注入前の成形品投影面を示す平面図である。本実施形態の構成は、気体注入口7が2箇所あること以外は、第1の実施形態で示した構成と同様である。
【0046】
続いて、成形品2とモールド3の離型工程が、成形品2とモールド3の界面に気体を注入することで成形品2とモールド3を剥がす工程と、気体の注入状況を観察することで、成形品2とモールド3の界面全体に気体が注入されたことを確認する工程と、成形品2をモールド3から離す工程からなる本実施形態について、図を参照しながら説明する。
【0047】
図9は、第2の実施形態の気体注入前の成形品投影面を示す平面図を、図10は、第2の実施形態の気体注入後の成形品投影面を示す平面図を、それぞれ示す。まず、図10の成形品の輪郭(気体注入後)16とその内部の画像データ、および、成形品の位置情報を、予め画像認識装置10に登録しておく。
【0048】
気体注入口7より、気体の注入を行なう。このとき、気体注入に伴って刻々と変化する、成形品の輪郭およびその内部の画像をカメラ9で取り続け、その画像データを画像認識装置10に入力し続ける。成形品2とモールド3の界面に気体の注入が進み、予め登録しておいた成形品の位置で、成形品の輪郭(気体注入後)16とその内部の画像データに一致した時点で、型開閉制御回路11に、基板保持板5とモールド保持板6を引き離す方向に稼動する信号を出すことにより、モールド3から成形品2を取り出す。これにより、気体注入領域14がシール材4の内側全面に行き渡る前に、モールド3から成形品2を取り出す適正なタイミングを知ることができる。
【0049】
気体の注入が完全でない場合は、気体を注入する圧力を高めることにより、気体の注入を促進させる。本実施形態では気体注入口7が複数あることから、気体の注入状況が悪い箇所の圧力を優先的に高めるなどの圧力の制御を行うことにより、効率的に気体の注入を促進することができる。
【0050】
本実施形態により、アスペクト比の大きい成形品など、離型が難しい成形品においても、確実な離型が可能となり、成形品の品質が向上するとともに、離型不良に伴うモールドのメンテナンスが不要となり、生産性が向上する。また特に、気体注入にともなって変化する成形品の輪郭とその内部の画像データを、気体注入が完了したときの画像データと比較することで、気体注入領域14がシール材4の内側全面に行き渡る前に、モールド3から成形品2を取り出す適正なタイミングを知ることができるため、離型のための時間を短縮でき、生産性が向上する。
【0051】
以上述べた実施形態では、成形品をモールドで成形する際に、図2で説明したように成形材料をモールドの凹部に充填していた。しかし、基板1上に塗布等の方法で成形材料を形成しておき、モールドを押し付けた後モールドを離型することで成形品を形成してもよい。
【0052】
(付記)
(付記1)
成形品を構成する成形材料をモールドで成形する工程と、前記成形品をモールドから離型する工程とを有する成形品の製造方法であって、前記離型する工程が、成形品とモールドの界面に気体を注入して剥がす工程と、前記界面の状態を確認する工程と、成形品をモールドから離す工程とを有することを特徴とする、成形品の製造方法。
【0053】
(付記2)
前記気体が、空気、あるいは窒素、あるいは不活性ガスを主成分とすることを特徴とする、付記1に記載の成形品の製造方法。
【0054】
(付記3)
前記界面に気体を注入して剥がす工程が、気体を加圧することによることを特徴とする、付記1乃至2の何れかひとつに記載の成形品の製造方法。
【0055】
(付記4)
前記気体を加圧する方法が、前記成形品とモールドの外周部をシール材で密閉することで、前記気体を加圧することを特徴とする、付記3記載の成形品の製造方法。
【0056】
(付記5)
前記界面に気体を注入する方法が、単一あるいは複数の気体注入口から気体を注入することによることを特徴とする、付記1乃至4の何れかひとつに記載の成形品の製造方法。
【0057】
(付記6)
前記界面に気体を注入して剥がす工程が、前記界面の全面に気体を注入することによることを特徴とする、付記1乃至5の何れかひとつに記載の成形品の製造方法。
【0058】
(付記7)
前記界面の状態を確認する工程が、光学的な観察によることを特徴とする、付記1乃至6の何れかひとつに記載の成形品の製造方法。
【0059】
(付記8)
前記光学的な観察が、光の屈折率の変化を用いることを特徴とする、付記7記載の成形品の製造方法。
【0060】
(付記9)
前記光学的な観察が、成形品の投影面および成形品の輪郭を観察することであることを特徴とする、付記7乃至8の何れかひとつに記載の成形品の製造方法。
【0061】
(付記10)
前記成形品の投影面および成形品の輪郭の観察において、気体注入前後の画像の比較を行うことを特徴とする、付記9記載の成形品の製造方法。
【0062】
(付記11)
前記気体注入前後の画像を比較する方法が、二値化によることを特徴とする、付記10記載の成形品の製造方法。
【0063】
(付記12)
前記界面の状態を確認する工程が、成形品の投影面および成形品の輪郭の全面に気体が注入されたことを確認することであることを特徴とする、付記1乃至11の何れかひとつに記載の成形品の製造方法。
【0064】
(付記13)
前記界面の状態を確認する工程が、前記剥がす工程により成形品とモールドの界面の全面が剥れたことを確認することであることを特徴とする、付記1乃至12の何れかひとつに記載の成形品の製造方法。
【0065】
(付記14)
前記モールドが透明であることを特徴とする、付記1乃至13の何れかひとつに記載の成形品の製造方法。
【0066】
(付記15)
前記モールドがガラス、ポリカーボネート、アクリル、PDMS(ポリジメチルシロキサン)であることを特徴とする、付記1乃至14の何れかひとつに記載の成形品の製造方法。
【0067】
(付記16)
前記モールドを保持するモールド保持板が透明であることを特徴とする、付記1乃至15の何れかひとつに記載の成形品の製造方法。
【0068】
(付記17)
前記モールド保持板がポリカーボネート、アクリル、PDMS(ポリジメチルシロキサン)であることを特徴とする、付記1乃至16の何れかひとつに記載の成形品の製造方法。
【0069】
(付記18)
基板とモールドを用いて成形品を形成する成形品の製造装置であって、前記基板を保持する機構を有し、前記モールドを保持する機構を有し、前記成形品と前記モールドの界面に気体を注入する機構を有し、前記界面の状態を確認する機構を有することを特徴とする、成形品の製造装置。
【0070】
(付記19)
前記モールドに、前記界面に気体を注入するための気体注入口を有することを特徴とする、付記18記載の成形品の製造装置。
【0071】
(付記20)
前記界面に気体を注入する機構が、気体を加圧する機構であることを特徴とする、付記18乃至19の何れかひとつに記載の成形品の製造装置。
【0072】
(付記21)
前記気体を加圧する機構がガスボンベであることを特徴とする、付記20記載の成形品の製造装置。
【0073】
(付記22)
前記気体を加圧する機構がコンプレッサーであることを特徴とする、付記20記載の成形品の製造装置。
【0074】
(付記23)
前記モールドが透明であることを特徴とする、付記18乃至22の何れかひとつに記載の成形品の製造装置。
【0075】
(付記24)
前記モールドを保持する機構が透明であることを特徴とする、付記18乃至23の何れかひとつに記載の成形品の製造装置。
【0076】
(付記25)
前記界面の状態を確認する機構が、光学的な観察によることを特徴とする、付記18乃至24の何れかひとつに記載の成形品の製造装置。
【0077】
(付記26)
前記界面の状態を確認する機構が、カメラと画像認識装置を有することを特徴とする、付記18乃至25の何れかひとつに記載の成形品の製造装置。
【0078】
(付記27)
前記画像認識装置が、前記カメラからの画像データを二値化することを特徴とする、付記26記載の成形品の製造装置。
【符号の説明】
【0079】
1 基板
2 成形品
3 モールド
4 シール材
5 基板保持板
6 モールド保持板
7 気体注入口
8 気体供給装置
9 カメラ
10 画像認識装置
11 型開閉制御回路
12 成形材料
13 スキージ
14 気体注入領域
15 成形品の輪郭(気体注入前)
16 成形品の輪郭(気体注入後)
17 成形品の輪郭(気体注入途中)
18 成形品の輪郭(気体注入前)
19 成形品の輪郭(気体注入後)
20 成形品の輪郭(気体注入途中)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形品を構成する成形材料をモールドで成形する工程と、前記成形品をモールドから離型する工程とを有する成形品の製造方法であって、前記離型する工程が、成形品とモールドの界面に気体を注入して剥がす工程と、前記界面の状態を確認する工程と、成形品をモールドから離す工程とを有することを特徴とする、成形品の製造方法。
【請求項2】
前記界面に気体を注入して剥がす工程が、気体を加圧することによることを特徴とする、請求項1に記載の成形品の製造方法。
【請求項3】
前記界面の状態を確認する工程が、光学的な観察によることを特徴とする、請求項1乃至2の何れか一項に記載の成形品の製造方法。
【請求項4】
前記光学的な観察が、光の屈折率の変化を用いることを特徴とする、請求項3に記載の成形品の製造方法。
【請求項5】
前記光学的な観察が、成形品の投影面および成形品の輪郭を観察することであることを特徴とする、請求項3乃至4の何れか一項に記載の成形品の製造方法。
【請求項6】
前記界面の状態を確認する工程が、成形品の投影面および成形品の輪郭の全面に気体が注入されたことを確認することであることを特徴とする、請求項1乃至5の何れか一項に記載の成形品の製造方法。
【請求項7】
前記界面の状態を確認する工程が、前記剥がす工程により成形品とモールドの界面の全面が剥れたことを確認することであることを特徴とする、請求項1乃至6の何れか一項に記載の成形品の製造方法。
【請求項8】
基板とモールドを用いて成形品を形成する成形品の製造装置であって、前記基板を保持する機構を有し、前記モールドを保持する機構を有し、前記成形品と前記モールドの界面に気体を注入する機構を有し、前記界面の状態を確認する機構を有することを特徴とする、成形品の製造装置。
【請求項9】
前記モールドに、前記界面に気体を注入する気体注入口を有することを特徴とする、請求項8記載の成形品の製造装置。
【請求項10】
前記界面の状態を確認する機構が、光学的な観察によることを特徴とする、請求項8乃至9の何れか一項に記載の成形品の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate