説明

成形品製造装置および製造方法

【課題】 薄肉成形品を製造する装置、および方法において、雄型と雌型とを用いて簡便に、高い精度で、薄肉成形品を、安定して得ることを課題とする。
【解決手段】 雄型2もしくは雌型1に凹部3を設け、他方に、該凹部3に沿う形状で、小さく構成して凸部5を設け、該凹部3に成形材料6を保持可能に構成し、凸部5の凹部3への近接により、成形材料6を該凹部3より、雄型2と雌型1とを組み合わせて、構成される空間内に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンドーム等の樹脂やゴムを用いた薄肉成形品の製造装置および方法に関するものである。より詳しくは、成形型の形状により成形精度の向上を目的とする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂やゴム材料を用いた薄肉成形品として、コンドーム等が知られている。従来の製造方法において、コンドームは、元型のゴム・ラテックス原液への浸漬と乾燥を繰り返し、元型の表面にゴムの皮膜が所定の厚さとした後に加硫を行い得られる。
また、コンドームを構成する弾性材としてポリウレタンゴムを用いる方法も知られている。水系ポリウレタン樹脂分散体にコンドームの元型を浸漬し、乾燥させた後、剥離してコンドームを製造するものである(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開平7−256665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の製法や、特許文献1に記載された技術においては、製造工程において浸漬と乾燥を繰り返す必要となる。このため、製造にかかる時間が長くなるものである。1つあたりの製造時間が多くなるため、生産性を向上するためには、製造に用いる型の数が多くなると共に、多くの型を同時に浸漬、乾燥、洗浄などをする必要があり、設備が大掛かりになると共に、設備に必要となる場所が大きくなる。
【0004】
また、樹脂やゴムの成形方法として知られるインジェクション成形やコンプレッション成形などにおいては、薄肉成形品を製造するためには、雄型と雌型とを高い精度で型締する必要がある。また、型内において狭い隙間を流動する成形材料の挙動を安定化させることは困難であり、製造において不良品が発生しやすくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、コンドーム等の薄肉成形品の製造にかかる時間を短縮することを目的とすると共に、雄型と雌型を用いた薄肉成形品製造効率を向上させるべく、以下のような発明を行った。
すなわち、請求項1に記載のごとく、雄型と雌型とを組み合わせて構成される空間内に成形材料を導入して、該空間形状に成形を行う成形品製造装置であって、凹部を有する雄型と、凸部を有する雌型と、を有し、該凸部が該凹部に沿う形状であり、該凹部が成形材料を保持可能であり、該凸部の該凹部への近接により凹部に保持される成形材料が該凹部より雄型と雌型とを組み合わせて構成される空間内に供給される成形品製造装置を構成する。
【0006】
請求項2に記載のごとく、雄型に構成される凹部を形成し、雌型に凸部を形成すると共に、該凹部形状と該凸部形状とが、それぞれ、雄型と雌型の組み付け方向に直交する断面で、線対称形状に構成されている成形品製造装置を構成する。
【0007】
請求項3に記載のごとく、雄型と雌型とを組み合わせて、雄型と雌型との組み合わせにより構成される空間形状に成形材料を成形する成形品製造方法であって、雄型に設けた凹部に成形材料供給し、該凹部に雌型設けた凸部近接をさせて、該成形材を雄型と雌型との間に供給すると共に、雄型と雌型の組み付け位置の偏移により、成形材料供給経路面積が小さくなる側の下流の該経路断面積を大きくし、該経路面積が大きくなる側の下流の該経路断面積を小さくする成形品製造方法を用いる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載のごとく、雄型と雌型とを組み合わせて構成される空間内に成形材料を導入して、該空間形状に成形を行う成形品製造装置であって、凹部を有する雄型と、凸部を有する雌型と、を有し、該凸部が該凹部に沿う形状であり、該凹部が成形材料を保持可能であり、該凸部の該凹部への近接により凹部に保持される成形材料が該凹部より雄型と雌型とを組み合わせて構成される空間内に供給される成形品製造装置を構成するので、
容易な構成により、雄型と雌型とを組み合わせて構成される空間内への成形材料の導入を容易にすると共に、成形材料の供給ムラを解消できる。
【0009】
請求項2に記載のごとく、雄型に構成される凹部を形成し、雌型に凸部を形成すると共に、該凹部形状と該凸部形状とが、それぞれ、雄型と雌型の組み付け方向に直交する断面で、線対称形状に構成されている成形品製造装置を構成するので、
簡便な金型の形状により、型内における成形材料の供給を安定化することができ、成形品の製造効率を向上できる。
【0010】
請求項3に記載のごとく、雄型と雌型とを組み合わせて、雄型と雌型との組み合わせにより構成される空間形状に成形材料を成形する成形品製造方法であって、雄型に設けた凹部に成形材料供給し、該凹部に雌型設けた凸部近接をさせて、該成形材を雄型と雌型との間に供給すると共に、雄型と雌型の組み付け位置の偏移により、成形材料供給経路面積が小さくなる側の下流の該経路断面積を大きくし、該経路面積が大きくなる側の下流の該経路断面積を小さくする成形品製造方法を用いるので、
金型の組み付け時のずれを解消することができ、容易に型内における成形材料の供給を安定化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
金型形状により成形材料の型内における供給ムラを、金型形状により解消する。
【実施例1】
【0012】
次に、本発明の実施例として、コンドームの成形について図を用いて説明する。
図1は雄型と雌型の構成を示す斜視図であり、図2は成形品の製造工程を示す図であり、図3は雄型と雌型の断面図である。
本発明の実施例において、雌型1と雄型2を組み付け、雌型1と雄型2との間に形成される空間形状に成形材料を成形するものである。
雌型1には雄型2を挿入するための挿入部4が構成されており、雄型2の先端部には凹部3が構成されている。雌型1には、凸部5が構成されており、この凸部5は雄型2の凹部3の形状に沿った構成となっている。
そして、雌型1と雄型2とを組み付けた状態において、雌型1と雄型2との間に一定の間隙が形成される構成となっている。この雌型1と雄型2との間に成形材料が満たされると、間隙の形状にコンドームが成形されることとなる。
【0013】
次に、成形品の製造工程において説明する。
まず、図2(a)に示すごとく、雄型2を下方に、雌型1を上方にして、雄型2と雌型1とが開かれた状態に保持される。この後に、図2(b)に示すごとく、雄型2の凹部3に成形材料6が供給される。凹部3は雄型2の先端部中央に設けられるものであり、凹部3に成形材料6を供給することにより、重力により成形材料6が凹部3の底側へと移動し、雄型2の中央に成形材料6の供給を行うことができる。
このように、挿入部4を有する雌型1を下方に向けて配設することにより、雌型1内への塵やホコリなどの侵入を防ぐことができ、雌型1を良好な状態に保ちやすくなる。また、雄型2の成形材料接触面は外側に露出しており、容易に洗浄可能であると共に、上方に雌型1が位置することにより、雌型1がカサとなり、雄型2へのホコリや塵の付着が抑制される。
【0014】
雄型2の凹部3への成形材料6の供給が終わった後には、図2(c)に示すごとく、雄型2により成形材料を保持した状態で、雄型2を雌型1に挿入しながら、雄型2と雌型1とを近接させる。これにより、図2(d)に示すごとく、雌型1の凸部5が雄型2の凹部3に挿入されることとなる。そして、雄型2の凹部3に保持されていた成形材料6が雌型1の凸部5により、凹部3内より押し出されて、側方の雄型2と雌型1との間隙に排出される。これにより、雄型2と雌型1との間隙に成形材料6が満たされて、薄肉成形品であるコンドームに成形される。
この後に、成形物に対して加硫を行うものである。
【0015】
図4は成形されたコンドームの構成を示す図であり、図4(a)は先端部が凹形状の状態を示す図であり、図4(b)は先端部が凸形状である状態を示す図である。
成形されたコンドーム8は、雌型1が雄型2の形状に沿って構成されているので、雄型2の先端部の凹部3と同様に、図4(a)に示すごとく、先端部9が凹形状となる。
この凹形状の先端部9を、図4(b)に示すごとく、裏返すことにより先端部9が凸形状となり、先端部9がコンドームの精液溜め部となる。すなわち、凹状態の先端部9を凸状態とすることにより、一般的なコンドーム形状にすることができる。
このように、成形材料6を保持する雄型2の凹部3の形状が、コンドーム8における先端部9の精液溜め形状となり、成形のための金型形状を成形目的物の形状に一致させることができ、コンドームの成形が容易となる。
なお、コンドーム8は、先端部9を凸状態とした後に、加硫を行うことも可能である。この場合には、コンドーム8の先端部9をより凸状態で保持しやすくなる。
【0016】
次に、成形材料の流出構成について説明する。
図5は組み付け状態における雄型凹部と雌型凸部の状態の一例を示す図であり、図6は図5におけるA−A線断面図であり、図7は成形材料の流出状態を示す図である。
雄型2と雌型1との組み付けにおいて、雄型2が雌型1に対して規定の位置に組み付いた場合には、雄型2の凹部3に保持された成形材料6は、雄型2と雌型1との間において十分に広がり、成形品を得ることとなる。この場合においては、問題が発生しにくく、成形物も安定生産することができる。
【0017】
次に、図5に示すごとく、雄型2と雌型1との位置がずれた場合について説明する。
雄型2と雌型1とを組み付けた状態において、凹部3内に凸部5が挿入されている部位における雄型2と雌型1間の隙間量を、図5および図6に示すごとく、d1、d2、d3、d4とする。
この場合、凹部3と凸部5との間隔が左右において異なり、隙間量d2が隙間量d1より小さくなる。成形材料は、流動抵抗の少ない方に流れるため隙間量d1側より多く流出する。しかし、成形材料の流出経路の下流側においては、隙間量d2が小さくなると隙間量d4が大きくなり、隙間量d1が大きくなると隙間量d3が小さくなる構成となっている。
【0018】
このため、隙間量d4における流動抵抗が小さく、隙間量d3における流動抵抗が大きくなり、隙間量d4側に成形材料が流れやすくなる。これにより、隙間量d1、d2における成形材料の流動差が解消されて、雄型2と雌型1間に成形材料が供給されることとなり、成形不良を解消する。
すなわち、雄型2と雌型1との組み付けのズレから発生する供給ムラを、積極的に利用することにより、型内での流動ムラを解消できる。型内の成形材料の流動経路において、型の組み付け方向の経路がオーバーラップするように構成することで、上流側の流動抵抗が大きくなる場合に、下流側の流動抵抗が小さくでき、型の組み付け時のズレを行って範囲は内において解消できる。
このように、雄型2と雌型1とを構成して、成形品を構成するので、薄肉の成形品においても、成形材料の流動抵抗が型のズレを解消するので、安定した成形を行うことができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、樹脂材料の薄膜成形を主な用途とするものであり、薄膜により構成される容器の製造や、コンドームや、手袋などの製造用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】雄型と雌型の構成を示す斜視図。
【図2】成形品の製造工程を示す図。
【図3】雄型と雌型の断面図。
【図4】成形されたコンドームの構成を示す図。
【図5】組み付け状態における雄型凹部と雌型凸部の状態の一例を示す図。
【図6】図5におけるA−A線断面図。
【図7】成形材料の流出状態を示す図。
【符号の説明】
【0021】
1 雌型
2 雄型
3 凹部
4 挿入部
5 凸部
6 成形材料
8 コンドーム
9 先端部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄型と雌型とを組み合わせて構成される空間内に成形材料を導入して、該空間形状に成形を行う成形品製造装置であって、
凹部を有する雄型と、凸部を有する雌型と、を有し、該凸部が該凹部に沿う形状であり、該凹部が成形材料を保持可能であり、該凸部の該凹部への近接により凹部に保持される成形材料が該凹部より雄型と雌型とを組み合わせて構成される空間内に供給されることを特徴とする成形品製造装置。
【請求項2】
雄型に構成される凹部を形成し、雌型に凸部を形成すると共に、該凹部形状と該凸部形状とが、それぞれ、雄型と雌型の組み付け方向に直交する断面で、線対称形状に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の成形品製造装置。
【請求項3】
雄型と雌型とを組み合わせて、雄型と雌型との組み合わせにより構成される空間形状に成形材料を成形する成形品製造方法であって、
雄型に設けた凹部に成形材料供給し、該凹部に雌型設けた凸部近接をさせて、該成形材を雄型と雌型との間に供給すると共に、雄型と雌型の組み付け位置の偏移により、成形材料供給経路面積が小さくなる側の下流の該経路断面積を大きくし、該経路面積が大きくなる側の下流の該経路断面積を小さくすることを特徴とする成形品製造方法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−103227(P2006−103227A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−294843(P2004−294843)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(000107284)ジェクス株式会社 (26)
【Fターム(参考)】