説明

成膜装置及び成膜方法

【課題】成膜処理において、従来に比べて大面積の成膜用基板を、効率よく成膜する。
【解決手段】プラズマを用いた成膜装置は、成膜用基板が配置される成膜空間を備える成膜チャンバと、前記成膜空間に導入された成膜用ガスを用いてプラズマを生成するプラズマ生成ユニットと、を有する。前記プラズマ生成ユニットは、プレートであって、前記プレートの厚さ方向に貫通する複数の貫通孔と、前記貫通孔それぞれの両側の開口の周りに設けられた電極対と、を備えたプラズマ生成プレートと、前記貫通孔それぞれの中でプラズマを生成するために、前記電極対にプラズマ生成電圧を供給する電源と、前記プラズマ生成電圧の供給を前記電極対毎に制御する制御ユニットと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマを用いた成膜装置及び成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子デバイスに用いる半導体装置等の製造に、プラズマ処理装置が多く用いられる。特に、半導体装置等の工業用製造ラインには、構造が簡単な平行平板型プラズマ処理装置が多く用いられる。この平行平板型プラズマ処理装置では、例えば13.6MHzの高周波の電力が用いられる。
【0003】
一方、平行平板型プラズマ処理装置には、従来より以下の点で問題があることが知られている。
・ 大型の成膜用基板に対応した広い成膜空間で空間的に均一なプラズマを生成することが難しいこと、
・ 成膜処理のスループットが低いこと、及び
・ 供給電力の増大に伴って成膜用基板へのイオンや電子の衝突が増加し、膜表面が滑らかでないこと。
上記問題は、今日の多様化する半導体装置の製造にとってより大きな障害となっている。
【0004】
例えば、成膜チャンバ内の成膜空間における膜生成に必要なラジカル分子の絶対濃度を濃くして半導体装置のスループットを向上するために、成膜チャンバ内の成膜ガス密度を高くする、すなわち成膜チャンバ内の圧力を高くすることが考えられる。しかし、1kPa程度あるいはそれ以上の圧力雰囲気では、生成されるプラズマは自己収縮する傾向にあり、空間的に均一なプラズマの生成が困難になる。特に、平行平板型プラズマ処理装置では、局所的に放電が発生し易くなり、プラズマの生成が不安定になる。
【0005】
一方、平行平板の間に電圧を与えてプラズマを生成する上記プラズマ生成源の他に、複数の棒状アンテナを平行に並べた誘導結合型プラズマ処理装置も知られている(特許文献1)。この装置の場合、供給電力をより高周波にすることで、空間的に均一なプラズマをより安定して生成することができる。しかし、この装置でも、1kPa程度あるいはそれ以上の圧力雰囲気においてプラズマを安定的に生成することはできない。また、供給電力の周波数に高いVHF帯域の周波数を用いた場合、1kPa程度あるいはそれ以上の圧力雰囲気では、放電限界電圧が高くなり、1本の棒状アンテナに必要な電力が1kWオーダに近づく。このような電力を例えば数10本の棒状アンテナに供給する場合、全電力が数10kW以上必要になる。このような大きな供給電力を要する装置は、実用的なプラズマ処理装置に用いることはできない。
また、平行平板型プラズマ処理装置では、面積が1m2以上の基板をプラズマ処理の対象とする場合、分布定数系としての現象が、供給電力が高周波になると無視できなくなり、生成される電磁波の波長の影響により空間的に不均一なプラズマが発生する。
このように、従来のプラズマ処理装置では、大面積の成膜用基板を効率よく(高いスループットで)均一に成膜することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−86581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、従来に比べて大面積の成膜用基板を、効率よく成膜することができる成膜装置及び成膜方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、プラズマを用いた成膜装置である。
当該装置は、
成膜用基板が配置される成膜空間を備える成膜チャンバと、
前記成膜空間に導入された成膜用ガスを用いてプラズマを生成するプラズマ生成ユニットと、を有する。
前記プラズマ生成ユニットは、プレートであって、前記プレートの厚さ方向に貫通する複数の貫通孔と、前記貫通孔それぞれの両側の開口に設けられた電極対と、を備えたプラズマ生成プレートと、前記貫通孔それぞれの内部空間でプラズマを生成するために、前記電極対にプラズマ生成電圧を供給する電源と、前記プラズマ生成電圧の供給を前記電極対毎に制御する制御ユニットと、を有する。
【0009】
本発明の他の一態様は、プラズマを用いた成膜方法である。
前記成膜方法では、成膜用基板が配置される成膜空間を備える成膜チャンバと、前記成膜空間に導入された成膜用ガスを用いてプラズマを生成するプラズマ生成ユニットと、を有する成膜装置が用いられる。
前記プラズマ生成ユニットは、プレートであって、前記プレートの厚さ方向に貫通する複数の貫通孔と、前記貫通孔それぞれの両側の開口の周りに設けられた電極対と、を備えたプラズマ生成プレートと、前記貫通孔それぞれの中でプラズマを生成するために、前記電極対にプラズマ生成電圧を供給する電源と、前記プラズマ生成電圧の供給を前記電極対毎に制御する制御ユニットと、を有する。
前記成膜用基板に成膜をするとき、
前記制御ユニットは、前記電極対におけるプラズマ生成頻度データを前記電極対毎に個別に定め、
前記制御ユニットは、前記プラズマ生成頻度データに基づいて、前記電極対の一方の電極それぞれに印加する第1電力信号に応じて、前記電極対の他方の電極それぞれに印加する第2電力信号を生成し、
前記電極対それぞれの電極には、前記第1電力信号と前記第2電力信号が印加される。
【発明の効果】
【0010】
上述の成膜装置及び成膜方法は、従来に比べて大面積の成膜用基板を、効率よく成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の成膜装置の全体の概略構成図である。
【図2】本実施形態のプラズマ生成プレートの外観斜視図である。
【図3】本実施形態のプラズマ生成プレートの各貫通孔に設けられる電極対への配線を説明する図である。
【図4】(a)は、プラズマ生成プレートの貫通孔の断面図であり、(b)は、(a)に示すA−A’線に沿った断面図であり、(c)は、(a)に示すB−B’線に沿った断面図である。
【図5】本実施形態の貫通孔の内部空間でプラズマが発生する状態を説明する図である。
【図6】本実施形態の給電線に供給する電力信号を生成するスイッチ素子の構成の一例を示す図である。
【図7】本実施形態の給電線に供給する電力信号を生成するスイッチ素子の構成の他の例を示す図である。
【図8】圧力Pと電極間距離Dの積P・Dを横軸に、放電開始電圧VBを縦軸にとったグラフを示す図である。
【図9】本実施形態で生成されるプラズマの生成頻度とプラズマにより作られるイオン、中性分子及びラジカル分子の流れを説明する図である。
【図10】本実施形態の第i番目の行で、第j番目の列に位置する電極対に給電される第1電力信号PRi及び第2電力信号PCjの一例を示す図である。
【図11】本実施形態のN2個の電極対がN行×N列で格子状に並んだプラズマ生成プレートの電極対と電力信号の関係を示す図である。
【図12】本実施形態の電力信号に用いられる基本信号と反転信号の一例を示す図である。
【図13】(a)は、図11に示すプラズマ生成プレートにおいてN=4とした場合における電力信号PR1〜4を表す図であり、(b)は、(a)に示される内容に従ってつくられる電力信号を記載した図であり、(c)は、電力信号PR2の波形の一例を示す図である。
【図14】(a),(b)は、2つの電力信号f1(t),f2(t)に施す演算「*」を説明する図である。
【図15】本実施形態の電力信号を説明する図である。
【図16】(a),(b)は、プラズマ生成頻度データと電力信号との関係式を示す図である。
【図17】本実施形態で用いる演算「*」の特徴を示す式を説明する図である。
【図18】(a)〜(d)は、プラズマ生成頻度データと電力信号との関係式を変形した式を説明する図である。
【図19】本実施形態の成膜方法のフローの一例を説明する図である。
【図20】(a),(b)は、本実施形態の電力信号の波形の例を示す図である。
【図21】本実施形態のプラズマ生成プレートの変形例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の成膜装置及び成膜方法について詳細に説明する。
【0013】
(成膜装置)
図1は、本実施形態の成膜装置10の全体の概略構成図である。成膜装置10は、成膜本体部12と、ガス源14と、排気ユニット16と、プラズマ生成ユニット18と、を有する。
成膜本体部12は、成膜チャンバ20と、サセプタ22と、を主に有する。成膜チャンバ20は、成膜チャンバ20内の成膜空間を所定の圧力に減圧し、成膜空間の成膜用基板を成膜処理するための容器である。サセプタ22は、表面に成膜用基板24を載せる載置面26を有し、成膜空間内に設けられている。サセプタ22の内部に図示されないヒータが設けられて成膜容基板24を加熱する。成膜用基板24は、成膜チャンバ20に設けられた図示されない開口したシャッターを通して、成膜チャンバ20の外部から内部に搬入されてサセプタ22の載置面26に載せられる。また、成膜済みの成膜用基板24は、上記シャッターを通して成膜チャンバ20の外部に搬出される。
【0014】
成膜チャンバ20の天井面には、ガス源14と接続した図示されない配管と接続された供給口28が設けられる。ガス源14から供給される成膜用ガスは、供給口28を通して成膜チャンバ20内に供給される。成膜チャンバ20の床面には、成膜チャンバ20内の成膜空間内の不要な成膜用ガスを排気する排気口30が設けられている。排気口30は、排気ユニット16と接続した図示されない配管と接続されている。これにより、成膜空間は一定の圧力に維持される。
【0015】
成膜空間内のサセプタ22の上方には、プラズマ生成ユニット18に属するプラズマ生成プレート32が設けられている。プラズマ生成プレート32は、プレートの厚さ方向に貫通する複数の貫通孔32a(図2参照)を有し、この貫通孔32aの内部でプラズマを生成する。プラズマ生成プレート32については後述する。
【0016】
ガス源14は、例えば、シランガスや水素ガス等の成膜用ガス源であり、成膜用基板24に形成する薄膜の成分を含むガスである。薄膜として微結晶シリコンを成膜用基板24に形成するとき、成膜用ガスとして例えばシランガス及び水素ガスが用いられる。この場合、シランガス源と水素ガス源をガス源14として別々に用意し、予め定められたシランガスと水素ガスの流量比で、シランガスと水素ガスが成膜空間に供給される。
【0017】
排気ユニット16は、ロータリポンプあるいはドライポンプ等を含み、成膜空間を、一定の圧力に維持する。また、成膜空間における圧力を大気圧に比べて低くする場合、排気ユニット16は、定められた圧力まで排気を行う。
【0018】
プラズマ生成ユニット18は、プラズマ生成プレート32と、電源34と、スイッチ素子36と、制御ユニット38と、を有する。
プラズマ生成プレート32は、成膜チャンバ20内に設けられたプレートであって、このプレートの厚さ方向に貫通する複数の貫通孔32aと、これらの貫通孔32aそれぞれの両側の開口の周りに設けられた電極対と、を備える。
電源34は、プラズマ生成プレート32の貫通孔それぞれの中でプラズマを生成するために、電極対にプラズマ生成電圧を供給する。
制御ユニット38は、電極対毎にプラズマ生成電圧の供給を、スイッチ素子36(36a,36b)を通して制御する。スイッチ素子36(36a,36b)は、電極対それぞれを構成する後述する電極32b(図4(a)参照),電極32c(図4(a)参照)に印加する電圧を、設定された周期単位で切り替えることにより電力信号を生成し、この電力信号を電極対毎に供給する。
【0019】
図2は、プラズマ生成プレート32の外観斜視図である。
プラズマ生成プレート32は、成膜用ガスが導入される成膜空間のガス供給口28の位置と、成膜用基板24が成膜空間内に載置されるサセプタ22の位置との間に、プラズマ生成プレート32の一方の面が、サセプタ22の載置面26に対して対向するように、成膜空間内に設けられている。
【0020】
プラズマ生成プレート32は、プレート厚さ方向に貫通する複数の同一の大きさの貫通孔32aが、図中のX方向及びY方向に沿って一定の間隔で整然と並んで格子状に設けられている。本明細書では、Y方向に沿って並んだ貫通孔32aの群を列といい、X方向に沿って並んだ貫通孔32aの群を行という。
図3は、プラズマ生成プレート32の各貫通孔32aに設けられる電極対への配線を説明する図である。図4(a)は、貫通孔32aの断面図であり、図4(b)は、図4(a)に示すA−A’線に沿った断面図であり、図4(c)は、図4(a)に示すB−B’線に沿った断面図である。図3に示す例では、列8、行8からなる貫通孔32aのそれぞれに電極対が設けられている例であるが、列の数、行の数は8に限定されず、複数の数であればよい。列の数と行の数は同数であることが、後述するように、逆行列を用いて第2電力信号PCjを定める上で好ましいが、必ずしも列の数と行の数が同数でなくてもよい。
【0021】
プラズマ生成プレート32は、図4(a)に示すように、誘電体層32d,32e、導体層32f、及び誘電体層32g,32hが積層されて構成されている。貫通孔32aには、図4(a)に示すように、電極32b及び電極32cが設けられている。導体層32fは、貫通孔32aの面には露出されておらず、導体層32fの貫通孔32a側の面は誘電体32mで覆われている。
電極32b及び電極32cは、貫通孔32aの両側の開口部に、貫通孔32aの内周に沿って配された環状の電極である。電極32bは、図4(a)に示すように、誘電体層32eの角に配置されるよう、断面が90度に折れ曲がった屈曲形状をしている。電極32b,32cは、プレート表面においてそれぞれ誘電体層32d,32hにより被覆されている。貫通孔32aの内表面では、電極32bは露出しており、電極32cは誘電体層32gにより被覆されている。誘電体層32dと誘電体層32eの間には、スイッチ素子36aを通して上部電源34aと接続されている給電線(第1電力線路)32iが設けられ、給電線32iは電極32bと接続されている。誘電体層32gと誘電体層32hの間には、スイッチ素子36bを通して下部電源34bと接続されている給電線(第2電力線路)32jが設けられ、給電線32jは電極32cと接続されている。上部電源34a及び下部電源34bはともに、正負の一組のDC電源からなり、スイッチ素子36a,36bで電圧が切り替えられることで生成される電力信号を電極32b,32cに印加する。
【0022】
誘電体層32d,32e,32g,32hは、例えば石英板により構成される。導体層32fは接地される。給電線32i.32jは、一定の幅を有する線状導体である。したがって、給電線32i,32jと接地された導体層32fは、誘電体層32e,32gを誘電体基板とするマイクロストリップ線路を構成する。すなわち、電極対それぞれの電極32b,32cは、プラズマ生成プレート32の両側の面に沿って配されたマイクロストリップ線路を通して電源34と接続される。プラズマ生成プレート32は、両側に設けられた誘電体プレート32e,32gと、誘電体プレート32e,32gが挟むように設けられた接地された導体層32fと、を含む。また、導体層32fは、プラズマ生成プレート32の強度を保つ部材として機能する。
このような電極対32b,32cが、複数の貫通孔32a毎に設けられ、図3に示すように、複数の給電線32i,32jによって配線されている。
【0023】
すなわち、給電線32iは、X方向に沿って貫通孔32aが配列された行に沿った線であり、行内の各貫通孔32aに設けられた電極32bを直列に接続している。給電線32iの一端は、スイッチ素子36aを通して上部電源34aと接続され、他方の端は、抵抗体32kを介して接地されている。
給電線32jは、Y方向に沿って貫通孔32aが配列された列に沿った線であり、列内の各貫通孔32aに設けられた電極32cを直列に接続している。給電線32jの一端は、スイッチ素子36bを通して下部電源34bと接続され、他方の端は、抵抗体32lを介して接地されている。抵抗体32k,32lの値は、例えば1MΩ以上である。
すなわち、プラズマ生成プレート32の上側に設けられた電極32bのうち、共通する行それぞれに位置する電極32bは、行毎に、給電線32iで互いに直列に繋がれてスイッチ素子36aを通して上部電源34aと接続されている。プラズマ生成プレート32の下側に設けられた電極32cのうち、共通する列それぞれに位置する電極32cは、列毎に、給電線32jで互いに直列に繋がれてスイッチ素子36bを通して下部電源34bと接続されている、
【0024】
このような電極32b,32cを有する貫通孔32aの内部空間では、電極32b,32cに電圧が印加されることにより、プラズマが生成され得る。図5は、貫通孔32aの内部空間でプラズマPが発生する状態を説明する図である。
電極32b,32cに電圧を印加することで、電極32b,32c間に成膜用ガスのプラズマPが生成される。このとき、サセプタ22の載置面26から遠い電極32bは貫通孔32aの内部空間の内表面に露出し、載置面26に近い電極32cは貫通孔32aの内部空間において誘電体層32gで被覆されているので、すなわち、プラズマ生成プレート32の内部に設けられているので、生成したプラズマPにより電極32cの方へ引っ張る力が生成される。このようなプラズマPの発生による生じる力は、例えば、“Experimental Investigation of DBD Plasma Actuators Driven by Repetitive High Voltage Nanosecond Pulses with DC or Low-Frequency Sinusoidal Bias”(Dmitry F. Opaits et al., 38th AIAA Plasmadynamics and Lasers Conference<br> in conjunction with the <br> 16th, 25-28 June 2007)において検討されている。したがって、成膜装置10においてもプラズマ生成プレート32は、成膜用ガスを吸引して成膜空間内に供給するアクチュエータとして機能する。
すなわち、成膜用ガスによって貫通孔32a内でプラズマPが生成されると、図5中の下向きに引っ張る力が発生するので、プラズマPによって生成されたイオンや中性分子さらにはラジカル分子が貫通孔32aの下側開口部に引っ張られ、開口部から拡散するように下方に排出される。
本実施形態では、電極32b,32cはプラズマPを生成させる電極として用いられるほか、アクチュエータとして用いられるが、プラズマPを生成させる電極として用いるが、アクチュエータとして用いられなくてもよい。この場合、電極32bは、貫通孔32aの内表面に露出されず、誘電体層32eによって被覆される。
【0025】
図6は、図3中の最も上に位置する行の電極32bを接続する給電線32iに供給する電力信号PR1を生成するスイッチ素子36aの構成の一例を示す図である。他のスイッチ素子36a及びスイッチ素子36bも同様の構成を有するので、その説明は省略する。
スイッチ素子36aは、制御ユニット38から送られる制御信号LR1に従って電圧のON/OFFを、設定された周期単位で切り替えることにより、電力信号PR1を生成する。スイッチ素子36aは、ゲート駆動回路36cと、MOSFET36d,36eと、抵抗体36f,36gと、を有する。なお、抵抗体36f,36gは安全のために設けられているが、原理的には必須のものではなく、抵抗体36f、36gは設けられないほうが好ましい。
【0026】
ゲート駆動回路36cは、制御ユニット38から送られた制御信号LR1に基いて、2つのゲート信号(2値制御信号a、2値制御信号b)を出力する。2つのゲート信号はそれぞれ、1(high),0(low)からなる2値(1,0)を所定の周期単位で持つ2値制御信号である。
【0027】
MOSFET36dは、pチャンネルパワーMOSFETであり、MOSFET36eは、nチャンネルパワーMOSFETである。MOSFET36d,36eのそれぞれのゲート端子には、ゲート駆動回路36cが出力した2つのゲート信号(2値制御信号)が入力される。MOSFET36dのソース端子には、上部電源34aと接続されて電圧+Vがかけられ、MOSFET36eのソース端子には、上部電源34aと接続されて電圧−Vがかけられている。したがって、MOSFET36d,36eのゲート端子に与えられるゲート信号(2値制御信号a、2値制御信号b)の信号値に応じて、ドレイン端子に流れる電流はON/OFFに切り替わる。このため、抵抗体36f,36eを通して、電力信号PR1が得られる。電力信号PR1は、制御信号LR1の信号値に応じて正の電圧、0の電圧及び負の電圧に設定された周期で切り替わる。正の電圧をVとし、負の電圧を−Vとする。本実施形態では、スイッチ素子36a,36bにパワーMOSFETを用いるが、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いることもできる。
【0028】
スイッチ素子36aは、pチャンネルのMOSFET36dとnチャンネルのMOSFET36eで構成されているが、図7に示すようなスイッチ素子36aを用いることもできる。図7に示すスイッチ素子36aは、ゲート駆動回路36cと、MOSFET36h,36iと、トランス36jを有する。MOSFET36h,36iはnチャンネルパワーMOSFETである。
ゲート駆動回路36cは、図6に示すゲート駆動回路36aと同様の構成、作用を有するので説明は省略する。
MOSFET36h,36iのそれぞれのゲート端子には、ゲート駆動回路36cが出力したゲート信号(2値制御信号a、2値制御信号b)が入力される。MOSFET36h,36iのソース端子は、抵抗体を通して接地される。2つのドレイン端子は、トランス36jに接続されて電圧Vがかけられている。電圧Vは、上部電源34aから提供される。
このような構成においても、MOSFET36h,36iのゲート端子に与えられるゲート信号の信号値に応じて、トランス36jから出力される電力信号PR1は、制御信号LR1の信号値に応じて正の電圧V、0の電圧、及び負の電圧−Vに切り替わる。
すなわち、プラズマ生成ユニット18は、上部電源34aの電圧を、制御信号LR1〜LRN(Nは2以上の整数で、例えば16〜128の範囲の整数)から作られる既知の2値のゲート信号で切り替えることにより生成された第1電力信号PR1〜PRNを給電線32iに供給する。また、プラズマ生成ユニット18は、下部電源34bの電圧を、制御信号LC1〜LCNから作られる既知の2値のゲート信号で切り替えることにより生成された第2電力信号PC1〜PCNを給電線32jに供給する。このとき、第1電力信号PR1〜PRNと第2電力信号PC1〜PCNの電圧の切り替わりのタイミングが互いに同期するように、ゲート信号を生成するための制御信号がスイッチ素子36a,36bに提供される。なお、第2電力信号PC1〜PCNは、後述するように、第1電力信号PR1〜PRNに対応して生成される。
【0029】
以上のように生成される電力信号は、第1電力信号PR1のみならず、第1電力信号PR2〜PRN(Nは2以上の整数)についても、列毎の第2電力信号PC1〜PCNについても同様のスイッチ素子36a,36bによって生成される。すなわち、電極32b,32cのそれぞれに印加する電圧を、スイッチ素子36a,36bを用いて、設定された周期単位で切り替えることにより、第1電力信号PR1〜PRN及び第2電力信号PC1〜PCNを電極32b,32cのそれぞれに供給する。
本実施形態では、スイッチ素子36a,36bを用いて電圧を切り替えることにより第1電力信号PR1〜PRN及び第2電力信号PC1〜PCNを生成するが、第1電力信号PR1〜PRN及び第2電力信号PC1〜PCNは直接電源34で生成されてもよい。すなわち、上部電源34a及び下部電源34bは、同じものを用いてもよい。
【0030】
生成される第1電力信号PR1〜PRNは電極32bに給電され、同様に電極32cには第2電力信号PC1〜PCNが給電される。このとき、電極32b,32c間の電圧は、第1電力信号PR1〜PRNと第2電力信号PC1〜PCNの電圧の差分によって定まる。例えば、第1電力信号PR1と第2電力信号PC1とが全く同じ信号である場合、差分PR1−PC1は常時0になる。一方、第2電力信号PC1が第1電力信号PR1に対して反転している場合、差分PR1−PC1は2V、−2Vで変動する。したがって、電極32b,32c間の電圧は、第1電力信号PR1と第2電力信号PC1の信号に応じて異なる。このとき、差分PR1−PC1が2Vのとき、プラズマが貫通孔32aの内部空間で発生するように電圧Vが調整されていれば、電圧PR1−PC1が2V(=V−(−V))であるときプラズマが生成し、電圧PR1−PC1が0であるときプラズマは生成しない。上記説明は、第1電力信号PR1〜PRN、および第2電力信号PC1〜PCNにおいて、いずれも絶対値が同じ電圧V,−Vが印加される場合を説明したが、電圧Vと電圧−Vの絶対値が異なっていてもよい。例えば、電圧V1と電圧−V2が電極32b,32cに印加される場合、差分の電圧はV1+V2あるいはV1−V2になるので、差分V1+V2でプラズマが生成され、差分V1−V2でプラズマが生成されないように、電圧V1と電圧−V2が設定されるとよい。このように、電極32b,32cに、設定された周期単位で正の一定電圧値と負の一定電圧値とが切り替わるパルス状電圧が印加されることにより、電極対にプラズマ生成電圧が供給される。勿論、第1電力信号PR1〜PRNの電圧V、−Vと第2電力信号PC1〜PCNの電圧V,−Vを異なる値としてもよい。
【0031】
図8は、圧力Pと電極間距離Dの積P・Dを横軸に、放電開始電圧VBを縦軸にとったグラフを示す。横軸及び縦軸は対数軸で表されている。グラフ中の曲線は、He,Ne,Ar,H2,N2のそれぞれのガス雰囲気における放電開始電圧VBの変化を示す。いずれの曲線も、P・Dの値が4×10-1〜2×100(Torr・cm)の範囲で放電開始電圧VBが最小値を有し、その両側の範囲でVBが高くなっている。
例えば、H2の場合、10(Torr)(1Torr=133.3Pa)、電極32bと電極32c間の間隔Dを0.5cmとしたとき、図8に示すグラフより、放電開始電圧VBが400Vとなる。したがって、第1電力信号PR1及び第2電力信号PC1の電圧を200Vより僅かに大きくすることで、差分PR1−PC1が400Vを越えてプラズマ生成電圧となる。また、H2の場合、40(Torr)、電極32bと電極32c間の間隔Dを0.5cmとしたとき、放電開始電圧VBは800Vである。したがって、この場合、第1電力信号PR1及び第2電力信号PC1の電圧を400Vより僅かに大きくすることで、差分PR1−PC1が800Vを越えてプラズマ生成電圧となる。
また、図6に示すスイッチ素子36aの場合、pチャンネルのMOSFET36dの電圧Vを600V、nチャンネルのMOSFET36iの電圧−Vを−1000Vとすることにより、差分PR1−PC1が1600Vとなる。この場合、図8のH2の曲線に従うと、間隔Dを0.5cmとしたとき、放電開始電圧VB=1600Vを達成する圧力は100(Torr)となる。
さらに、図7に示すスイッチ素子36aの場合、電圧Vを4000Vとし、電圧−Vを−4000Vとすると差分PR1−PC1が8000Vになるので、電極32bと電極32c間の間隔Dを0.5cmとしたとき、図8に示すH2の曲線より、700(Torr)まで圧力を高くしてもプラズマを生成することができる。700(Torr)は、極めて大気圧に近い圧力(0.91気圧)である。
このように、パワーMOSFETをスイッチ素子36a,36bに用い、差分PR1−PC1を利用することで、従来のように減圧の程度を抑えてもプラズマを安定して生成することができる。
このような第1電力信号PR1〜PRN,PC1〜PCNを組み合わせることにより、プラズマを断続的に生成する頻度を自在に調整することができる。
【0032】
図9は、プラズマの生成頻度とプラズマにより作られるイオン、中性分子及びラジカル分子の流れを説明する図である。上述した差分PRi−PCj(i,j=1〜Nの整数)が定められた時間内で常時プラズマ生成電圧となる場合、中性分子や電荷したイオン、さらには、中性化したラジカル分子等が勢い良く貫通孔32aから射出される(図9中の状態A)。一方、差分PRi−PCjが定められた時間の一部分でプラズマ生成電圧となる場合、中性分子や電荷したイオン、さらには、中性化したラジカル分子等の射出量は状態Aの場合に比べて少なく、その射出速度も状態Aの場合に比べて遅い状態Bとなる。このようにして、成膜装置10の成膜空間内において、中性分子、イオン、ラジカル分子の密度分布を変更することができる。したがって、成膜空間内の中性分子、イオン、ラジカル分子の現在の密度分布を知れば、この密度分布に応じて中性分子、イオン、ラジカル分子の射出量を変えることにより、成膜空間における中性分子、イオン、ラジカル分子の密度を目標とする所定の分布、例えば均一な分布にすることができる。
【0033】
図10は、第i番目(i=1〜Nの整数)の行で、第j番目(j=1〜Nの整数)の列に位置する電極対に給電される第1電力信号PRi及び第2電力信号PCjの一例を示す図である。第1電力信号PRiと第2電力信号PCjの電圧の切り替えのタイミングは同期している。
図10に示す例では、0〜T1(秒)において、第1電力信号PRiと第2電力信号PCjは互いに反転信号(逆位相の関係)となっているので、電極32b,32c間には、プラズマ生成電圧500Vが常時印加されることになり、その結果、貫通孔32aの内部空間でプラズマが生成される。一方、T1〜T2(秒)において、第1電力信号PRiと第2電力信号PCjは同じ信号(同位相の関係)となっているので、電極32b,32c間で電圧が生じずプラズマが生成されない。
このように、電極32b,32cに供給される第1電力信号PRi,PCjの信号波形を適宜組み合わせることにより、プラズマの生成頻度を自在に調整することができる。さらにいうと、第1電力信号PRi,PCjは、制御信号LRi,LCjによって定まるので、制御信号LRi,LCjを種々変更することにより、貫通孔32a内の内部空間に発生するプラズマの生成頻度を制御することができる。
【0034】
図11は、N2個の電極対(電極32b,32c)がN行×N列(Nは2以上の整数)で格子状に並んだプラズマ生成プレート32の電極対ij(i,j=1〜Nの整数)と第1電力信号PR1〜PRN,第2電力信号PC1〜PCNの関係を示す図である。電極対i1、電極対i2,・・・電極対iN(i=1〜Nの整数)のそれぞれの電極32bには、第1電力信号PRiが供給される。一方、電極対1j、電極対2j,・・・,電極対Nj(j=1〜Nの整数)のそれぞれの電極32cには、第2電力信号PCjが供給される。
したがって、電極対ijにおけるプラズマ生成頻度のみを調整しようとする場合、第1電力信号PRi,第2電力信号PCjを調整するが、この場合、調整しようとする電極対ijと同じ列あるいは同じ行に位置する他の電極対におけるプラズマの生成頻度が変化しないように調整しなければならない。
下記電力信号の生成方法は、複数の貫通孔32aにおけるプラズマ生成頻度分布が、定めた目標プラズマ生成頻度分布になるように、第1電力信号PRi,第2電力信号PCjを生成する方法である。この方法は、具体的には、制御ユニット38において、予め定めた第1電力信号PRiに対して、プラズマ生成頻度分布が目標プラズマ生成頻度分布になるように第2電力信号PCjを定め、この第2電力信号PCjを生成するように制御信号LCjが生成される。このとき、予め定めた第1電力信号PRiを生成するための制御信号LRiと第2電力信号PCjを生成するための制御信号LCjがスイッチング素子36a,36bに送られる。上記目標プラズマ生成頻度分布は、プラズマCVD装置を用いた成膜の最終仕上げ段階において基板上の膜厚分布が一様になるように設定し、制御ユニット38内のメモリに制御信号LR1〜LRNと制御信号LC1〜LCNの時系列信号を記憶させておく。
【0035】
(電力信号の生成方法)
図12は、第1電力信号PRiに用いられる基本信号φ(t)と、基本信号φ(t)の信号値を反転した反転信号ψ(t)の一例を示している。第1電力信号PRiは、基本信号φ(t)と反転信号ψ(t)とを、行の数分(N個)、時系列に並べて組み合わせて得られた信号である。勿論、第1電力信号PRiは、制御信号LRiによって生成された信号であるので、制御信号LRiは、第1電力信号PRiが基本信号φ(t)と反転信号ψ(t)とを時系列に並べた信号になるように、制御ユニット38で作成される。
【0036】
図13(a)は、図11に示されるプラズマ生成プレート32においてN=4とした場合における第1電力信号PR1〜4を表形式で表している。図13(a)におけるkは、基本信号φ(t)及び反転信号ψ(t)を組み合わせて並べるときのサイクル数を示す。このサイクル数kは、上記Nの数と等しい。図13(a)に従ってk=1〜4の順番で、基本信号φ(t)及び反転信号ψ(t)が時系列に並べられる。図13(b)には、図13(a)に示される内容に従ってつくられる第1電力信号PR1〜4を記載している。第1電力信号PR1では、k=1〜4においてすべて基本信号φ(t)が用いられる。第1電力信号PR2では、k=1において基本信号φ(t)が用いられ、k=2において反転信号ψ(t)が用いられ、k=3において基本信号φ(t)が用いられ、k=4において反転信号ψ(t)が用いられる。図13(c)は、第1電力信号PR2の波形を示している。
このように、第1電力信号PR1〜4は、基本信号φ(t)及び反転信号ψ(t)が時系列に並べられて構成される。なお、第1電力信号PR1〜PR4において基本信号φ(t)及び反転信号ψ(t)が図13(a),(b)に示すように並べられるのは、後述するように、定められている第1電力信号PR1〜4に対して、第2電力信号PC1〜4を容易に定めることができるからである。この点については後述する。
【0037】
図14(a),(b)は、2つの電力信号f1(t),f2(t)に対する演算「*」の定義を説明する図である。
すなわち、電力信号f1(t)と電力信号f2(t)が互いに反転信号の関係にあるとき反転信号の関係にある時間長さを、電力信号f1(t),f2(t)の全時間における占有比率として定める。この占有比率が、電極32b,32cに電力信号が与えられたときのプラズマ生成頻度データとなる。電力信号は、図14(a),(b)に示すように、正のパルス及び負のパルスが一定周期で繰り返される。したがって、電力信号f1(t),f2(t)が互いに反転信号の関係にある期間中プラズマが断続的に生成されプラズマ生成頻度が定まる。
図14(a)に示すように、電力信号f1(t),f2(t)の全時間の半分の範囲(図中の←→で示される範囲)において、電力信号f1(t)と電力信号f2(t)が互いに反転信号の関係(逆位相の関係)にあるとき、f1(t)*f2(t)=0.5となる。同様に、図14(b)に示すように、電力信号f1(t),f2(t)の全時間の範囲(図中の←→で示される範囲)において、電力信号f1(t)と電力信号f2(t)が互いに反転信号の関係(逆位相の関係)にあるとき、f1(t)*f2(t)=1.0となる。このように、「*」を定める。
【0038】
以上のように、電極32bに印加する第1電力信号PRiを基本信号φ(t)及び反転信号ψ(t)を用いて生成したとき、制御目標のプラズマ生成頻度データになるように、電極32cに印加する第2電力信号PCjを生成する。このとき、第2電力信号PCjを生成するために、後述するように方程式を用いるが、方程式を解いて算出すべき第2電力信号PCjを第1電力信号PRiと同様にサイクル数k=1〜4に分けて図15に示すように表す。ここで、n1(j,t),n2(j,t),・・・,n4(j,t)(j=1〜Nの整数)が求めるべき信号になる。
【0039】
ここで、制御目標のプラズマ生成頻度分布として定められるプラズマ生成頻度データをρ(i,j)としたとき、第1電力信号PRi,第2電力信号PCjに、上記「*」の演算を施したとき、j=1におけるプラズマ頻度データρ(1,1)〜ρ(4,1)は、図16(a)に示すように表される。一般的には、プラズマ頻度データρ(i,j)は、図16(b)に示すように表される。
ここで、任意のnk(j,t)に対して、図17に示す式のような関係式が成立するので、この関係式を用いて、図16(a)に示す式を変形して、図18(a)に示す式のように表される。図18(a)に示す式は、j=1における式であるが、j=2〜4においても同様に表すことができる。
図18(a)に示す式を整理することにより、図18(b)に示すように行列を用いて表すことができる。したがって、図18(b)に示す式の左辺の行列の逆行列を用いて、図18(c)に示すような式で表すことができる。ここで、図18(b)に示す行列は、アダマール行列であるので、逆行列を容易に求めることができ、図18(c)に示す式に容易に到達できる。図18(c)に示す式は、j=1の場合であるが、j=2〜4においても同様な式が成り立つ。図18(d)は、j=1〜4における一般的な式を示している。
こうして、図18(d)に示す左辺のベクトルの各要素の値が得られると、基本信号φ(t)は既知であるので、φ(t)*nk(j,t)(k=1〜4の整数)の値からnk(j,t)を算出することができる。
【0040】
このように、本実施形態では、基本信号φ(t)の一方を1、反転信号ψ(t)を−1の符号とし、基本信号φ(t)及び反転信号ψ(t)の並びの順番に上記1、−1の符号を行列要素として順次定めて列方向に書き下し、かつ、複数の行のそれぞれの給電線(第1電力線路)32iに供給する第1電力信号PRiを、複数の行毎に行方向に書き下して行列で表したとき、この行列は、アダマール行列となる。
本実施形態では、N=2m(mは自然数)とし、第2電力信号PCjを算出する方程式において形成される行列(図18(b)の右辺の行列)がアダマール行列になるように、第1電力信号PRiの基本信号φ(t)と反転信号ψ(t)を並べたが、図18(b)に示す方程式において形成される行列はアダマール行列でなくてもよく、少なくとも行列の逆行列が得られるような行列であればよい。例えば、本実施形態では、基本信号φ(t)及び反転信号ψ(t)を用いて上記行列がアダマール行列となるようにして、得られる方程式が解かれるが、基本信号φ(t)及び反転信号ψ(t)を用いて、周知のPN符号により形成されるPN符号化信号を用い、サイクル数kが変わる毎にPN符号化信号を巡回的に1ビットずつずらした信号を用いることもできる。
【0041】
制御ユニット38は、図18(d)に示す式を解き、nk(j,t)を算出することで、図15に示す式に従った第2電力信号PC1〜PC4を定め、この第2電力信号PC1〜PC4を生成するような制御信号LC1〜LC4を生成する。制御ユニット38は、この制御信号LC1〜LC4をスイッチ素子36bに送る。これにより、プラズマ生成ユニット18は、第2電力信号PC1〜PC4を電極32cに印加する。このとき、制御ユニット38は、同時に、図13(b)に示す第1電力信号PR1〜PR4を生成するように生成された制御信号LR1〜LR4をスイッチ素子36aに送る。これにより、プラズマ生成ユニット18は、第1電力信号PR1〜PR4を電極32cに印加する。
【0042】
(成膜方法)
本実施形態の成膜方法では、まず、各電極対におけるプラズマ生成頻度データρ(i,j)の初期値をプラズマ生成頻度分布として設定する(ステップS10)。次に、各電極対におけるプラズマ生成頻度データの値が制御ユニット38に入力設定される。制御ユニット38は、入力設定されたプラズマ生成頻度データρ(i,j)を用いて、実際のプラズマの生成においてプラズマ生成頻度データρ(i,j)が得られるように、第1電力信号PRiに対する第2電力信号PCjを定める(ステップS20)。具体的には、制御ユニット38は、入力設定されたプラズマ生成頻度データρ(i,j)が得られるように、制御信号LRi,LCjの時系列信号を計算して、制御ユニット38の図示されないメモリに記憶する。(ステップS20)。
例えばプラズマを均一に生成するために、プラズマ生成頻度データρ(i,j)を同じ値に定める。制御ユニット38では、第1電力信号PRiが図13(b)に示す例のように定まっているので、この第1電力信号PRiとプラズマ生成頻度データρ(i,j)を用いて、図16(b)に示す式が成立する。したがって、制御ユニット38は、図18(d)に示す式に従って、φ(t)*nk(j,t)を算出し、算出した結果に応じてnk(j,t)を求める。これより、図15に示す式にしたがって、制御ユニット38は、第1電力信号PRiに対して第2電力信号PCjを定める。定めた第2電力信号PCjがスイッチ素子36bで生成されるように、制御ユニット38は制御信号LCjを生成する。同時に制御ユニット38は、第1電力信号PRiを生成するための制御信号LRiを生成する。生成した制御信号LRi,LCjはメモリに記憶される。こうして、制御ユニット38は、メモリに記憶した制御信号LRi,LCjをスイッチ素子36a,36bに送る。スイッチ素子36a,36bは、送られた制御信号LRi,LCjを用いて第1電力信号PRi,PCjを生成し、生成した第1電力信号PRi,PCjを電極32b,32cに印加する。すなわち、制御ユニット38は、プラズマ生成頻度データρ(i,j)と、電極32bそれぞれに印加する第1電力信号PRiに応じて、電極32cそれぞれに印加する第2電力信号PCjを生成する。こうして、プラズマ生成プレート32は、成膜用ガスがガス源14から供給された状態で、貫通孔32aのそれぞれの空間において、プラズマを生成する(ステップS30)。
【0043】
このとき、成膜空間には、サセプタ22の載置面26に電荷量を測定する複数のラジカル分子(あるいはイオン)を測定するセンサを配置したセンサアレイを成膜用基板の代わりに配置して電荷量を測定する(ステップS40)。以降では、センサアレイの一例をファラディカップアレイとし、このファラディカップを用いて説明をする。
その際、ファラディカップは、プラズマ生成プレート32のそれぞれの電極対の位置の真下に対向するように配置されていることが、後述するように、ファラディカップアレイによる測定結果に対応してプラズマ生成頻度データを容易に調整する点で好ましい。測定結果は、制御ユニット38に送られる。
【0044】
次に、制御ユニット38は、測定結果に基づいて測定された電荷量の分布が均一か否かを判定し(ステップS50)、判定の結果を、調整が必要である場合(NOの場合)、プラズマ生成頻度データρ(i,j)の先に設定した値を調整する(ステップS60)。ここで、値の調整には、ニュートン法などの数学的手法を用いることができる。この後、ステップS20に戻り、ステップS50の判定結果が肯定になるまで、ステップS20〜S50が繰り返される。
【0045】
成膜空間内では、電極対への第1電力信号PRi,PCjを全て同じにしても、排気口30の位置やサセプタ22の配置によってイオン、中性分子、さらにはラジカル分子の流れが生じ、これらの分布が均一にならない。このため、電極対へ印加する電力信号を調整して、測定される電荷量が均一になるように調整されることが望まれる。電荷量が均一であるとき、ラジカル原子の密度も均一であるので、この状態において成膜用基板24が成膜されるとき薄膜の厚さも均一になり得る。
ステップS50の判定結果が肯定の場合(YESの場合)、ファラディカップが成膜用基板に交換された後、成膜装置10は、成膜用ガスを用いて成膜処理を行う。
【0046】
このように、本実施形態では、プラズマ生成頻度データは、成膜装置10の成膜空間内で予め測定された電荷量の測定結果に基づいて設定される。上記実施形態は、測定される電荷量が均一になるように第2電力信号PCjが調整されるが、必ずしも均一でなくてもよく、測定される電荷量が予め定められた目標分布になるように第2電力信号PCjが調整されてもよい。
【0047】
このように、本実施形態では、プラズマの生成頻度を電極対毎に調整することができるので、従来に比べて大面積の成膜用基板を、効率よく成膜することができる。
また、プラズマ生成ユニット18は、電極対それぞれの電極32b,32cに印加する電圧を、設定された周期の単位で切り替えることにより、電極対毎にプラズマ生成電圧を供給するスイッチ素子を有するので、プラズマ生成頻度を目標に近づけることが容易にできる。
しかも、電極32b,32cには、設定された周期単位で正の一定電圧値と負の一定電圧値とが切り替わるパルス状電圧が印加されることにより、プラズマ生成電圧が供給されるので、減圧の程度を抑えてプラズマを生成することができる。このため、効率よい成膜処理を行うことができる。
【0048】
貫通孔32aは、共通する行それぞれに位置する電極32bは給電線32iで直列接続され、共通する列それぞれに位置する電極32cは給電線32jで直列接続されるので、第1電力信号PRi、第2電力信号PCjによる印加を容易に行うことができる。
【0049】
プラズマ生成ユニット18は、電源34の電圧V,電圧0,電圧−Vを、制御信号LRiにより得られる既知の2値制御信号で切り替えることにより生成された第1電力信号PRiを給電線32iに供給し、電源34の電圧V,電圧0,電圧−Vを、制御信号LRiに応じて生成される制御信号LCjによって得られる2値制御信号で切り替えることにより生成された第2電力信号PCjを給電線32jに供給するので、第2電力信号PCjを自在に定めることができる。
【0050】
第1電力信号PRiは、基本信号φ(t)と反転信号ψ(t)とを、行の数分、時系列に並べて組み合わせた信号であり、プラズマ生成ユニット18は、基本信号φ(t)と反転信号ψ(t)の並びの組み合わせを変えた、行の数分の信号それぞれを第1電力信号PRiとして用いる。このため、第2電力信号PCjを第1電力信号PRiに基いて容易に定めることができる。
【0051】
また、第2電力信号PCjは、基本信号φ(t)及び反転信号ψ(t)の信号長さに対応した複数の対応信号を組み合わせた信号であり、プラズマ生成ユニット18は、制御ユニット38において第1電力信号PRiに応じて求めた対応信号を用いて、第2電力信号PCjを生成する。このため、第2電力信号PCjを第1電力信号PRiに基いて容易に生成することができる。
【0052】
制御ユニット38は、第1電力信号PRiに応じて第2電力信号PCjを生成するとき、成膜された成膜用基板24上の成膜厚さが均一になるように、電極32b,32cそれぞれにおけるプラズマ生成頻度データρ(i,j)を定め、プラズマ生成頻度データρ(i,j)に基いて第2電力信号PCjを生成することができる。このとき、成膜装置10を用いて予め成膜された成膜用基板24上の成膜厚さの測定結果に基づいてプラズマ生成頻度データρ(i,j)を定め、プラズマ生成頻度データρ(i,j)に基いて第2電力信号PCjを生成することが好ましい。実際に成膜装置10で形成される膜の厚さを均一にすることを目標にすることで、均一な成膜を可能にするためのプラズマ生成を実現することができる。
【0053】
本実施形態では、図18(b)に示す方程式においてアダマール行列ができるように、第1電力信号PRiにおいて基本信号φ(t)と反転信号ψ(t)を並べるので、1回の第1電力信号PRi、第2電力信号PCjの印加によるプラズマの生成頻度は高い。具体的には、1回の第1電力信号PRi、第2電力信号PCjの印加により、N回のプラズマ生成が可能であるとするとき、プラズマ生成頻度データρ(i,j)に応じて第2電力信号PCjを調整しつつ、各電極対においてプラズマが生成する頻度は、N/{2・(N+1)}となる。すなわち、Nが大きくなるとプラズマ生成頻度は1/2に近づく。このように、図18(b)に示す方程式においてアダマール行列ができるように、第1電力信号PRiにおいて基本信号φ(t)と反転信号ψ(t)を並べることにより、各電極対のプラズマ生成頻度を高く維持することができる。このため、効率の良い成膜処理を行うことができる。
【0054】
なお、電力信号PRi,PCjの信号周波数を高周波にすると、給電線32i,32jにおいて定在波が発生するため、この定在波の影響が小さい範囲の信号周波数を用いることになる。例えば、成膜用基板24の一辺の長さが1m程度のサイズである場合、このサイズに対応した給電線32i,32jの長さにおいて定在波の影響が小さいことが望ましい。この場合の信号周波数の上限は数10MHzである。この範囲において、1m程度のサイズの成膜用基板24に対して均一に成膜することができる。
【0055】
本実施形態では、電極32b,32cを、成膜用ガスを吸引して成膜空間内に供給するアクチュエータとして用いる。この場合、アクチュエータによる成膜用ガスによって作られるイオン、ラジカル分子あるいは中性分子の射出速度の平均は、電力信号PRi,PCjの信号周波数の平方根に依存することが知られている。例えば、射出速度は、大気圧で10kHzの信号周波数において1m/秒程度であり、高速である。このような場合、上記射出速度が低くなるように、成膜空間内の圧力と供給口28とプラズマ生成プレート32との間の空間の圧力との間に差を設けるとよい。
【0056】
(変形例1)
本実施形態では、第1電力信号PRi,PCjの波形を図20(a)に示すように、プラスの電圧とマイナスの電圧との間で電圧がシフトする際、急激に変化する波形を用いて説明したが、より詳細には、図20(b)に示すように、プラスの電圧とマイナスの電圧との間で電圧がシフトする際、一端電圧が0になった後、マイナスの電圧あるいはプラスの電圧にシフトすることが実用上好ましい。図20(b)に示すような波形を用いた場合、図6に示すMOSFETを用いたスイッチ素子では、上部電源34aと下部電源34bの電圧V及び電圧−Vの間に大電流が流れてスイッチ素子36a,36bを破損する可能性が少ない。
【0057】
(変形例2)
本実施形態では、電極32b,32cは、プラズマ生成プレート32の両側の面に沿って配されたマイクロストリップ線路を通して、電源34と接続されている。さらに、プラズマ生成プレート32は、図4(a)に示すように、両側に設けられた誘電体プレート32e,32gと、誘電体プレート32e,32gが挟むように設けられた接地された導体層32fと、を有する形態である。しかし、図21に示すように、マイクロストリップ線路からなる給電線32i,32jに代えて、セミリジッド同軸ケーブルからなる給電線32i,32jを用いることもできる。例えば、貫通孔32aが設けられた2つの絶縁体基板の表面近傍に、表面に沿ってN本平行に給電線32i,32jをそれぞれ設け、この後、2つの絶縁体基板を、給電線32iと給電線32jの向きが互いに直交し、給電線32iと給電線32jの位置が外側を向くように、貼り付けることで、プラズマ生成プレート32を作製することができる。給電線32i,32jは、給電線32i,32jに合わせて形成された溝を有する誘電体板で表面が覆われることで、給電線32i,32jは、プラズマ生成プレート32内部に設けられる。
この場合、給電線32i,32jと電極32b,32cとの接続のために、セミリジッド同軸ケーブルの外部導体の一部を剥がして接続させる。また、外部導体は接地導体になるので、プラズマ生成プレート32に、図4(a)に示すような接地された導体層32fを設けなくてよい。このため、プラズマ生成プレート32の構造が簡素化される。
【0058】
(変形例3)
図7に示すスイッチ素子36aの構成の他に、MOSFET36hのゲート端子とソース端子との間の電圧を0〜30Vで制御するように構成し、ソース端子にかかる電圧に上記0〜30Vの電圧を加算してゲート端子へ出力するブースト回路が用いられる。この場合、MOSFET36iのゲート端子の制御信号と、MOSFET36hのゲート端子の制御信号との間にブースト回路の処理遅延に起因して位相差が生じないように調整される。
【0059】
以上、本発明の成膜装置及び成膜方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態および変形例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0060】
10 成膜装置
12 成膜本体部
14 ガス源
16 排気ユニット
18 プラズマ生成ユニット
20 成膜チャンバ
22 サセプタ
24 成膜用基板
26 載置面
28 供給口
30 排気口
32 プラズマ生成プレート
32a 貫通孔
32b,32c 電極
32d,32e,32g,32h 誘電体層
32f 導体層
32i.32j 給電線
32k,32l 抵抗体
32m 誘電体
34 電源
34a 上部電源
34b 下部電源
36,36a,36bスイッチ素子
36c ゲート駆動回路
36d,36e,36h,36i MOSFET
36f、36g 抵抗体
36j トランス
38 制御ユニット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマを用いた成膜装置であって、
成膜用基板が配置される成膜空間を備える成膜チャンバと、
前記成膜空間に導入された成膜用ガスを用いてプラズマを生成するプラズマ生成ユニットと、を有し、
前記プラズマ生成ユニットは、プレートであって、前記プレートの厚さ方向に貫通する複数の貫通孔と、前記貫通孔それぞれの両側の開口に設けられた電極対と、を備えたプラズマ生成プレートと、前記貫通孔それぞれの内部空間でプラズマを生成するために、前記電極対にプラズマ生成電圧を供給する電源と、前記プラズマ生成電圧の供給を前記電極対毎に制御する制御ユニットと、を有することを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記プラズマ生成ユニットは、前記電極対それぞれの電極それぞれに印加する電圧を、設定された周期の単位で切り替えることにより、電力信号を生成するスイッチ素子を有する、請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記電極対の2つの電極には、設定された周期単位で正の電圧値と負の電圧値とが切り替わるパルス状の電圧が印加されることにより、前記プラズマ生成電圧が供給される、請求項1または2に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記貫通孔は、前記プラズマ生成プレートの面上の2方向に沿って複数の列及び行を成すように格子状に並べられ、
前記電極対のうち前記プラズマ生成プレートの一方の面の側に設けられた第1電極のうち、共通する行それぞれに位置する電極は、前記行毎に、第1電力線路で互いに直列に繋がれて前記電源と接続され、
前記電極対のうち前記プラズマ生成プレートの他方の面の側に設けられた第2電極のうち、共通する列それぞれに位置する電極は、前記列毎に、第2電力線路で互いに直列に繋がれて前記電源と接続されている、請求項1又は2に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記プラズマ生成ユニットは、前記電源の電圧を、既知の2値制御信号で切り替えることにより生成された第1電力信号を前記第1電力線路に供給し、前記電源の電圧を、前記第1電力信号に応じて定まる第2電力信号が生成されるように、2値制御信号で切り替える、請求項4に記載の成膜装置。
【請求項6】
前記第1電力信号は、基本信号と、前記基本信号の信号値を反転した反転信号とを、前記行の数分、時系列に並べて組み合わせた信号であり、
前記プラズマ生成ユニットは、前記基本信号と前記反転信号の並びの組み合わせを変えた、前記行の数分の信号それぞれを前記第1電力信号として用いる、請求項5に記載の成膜装置。
【請求項7】
前記第2電力信号は、前記基本信号及び前記反転信号の信号長さに対応した複数の対応信号を組み合わせた信号であり、
前記プラズマ生成ユニットは、前記制御ユニットにおいて前記第1電力信号に応じて求めた前記対応信号を用いて、前記第2電力信号を生成する、請求項6に記載の成膜装置。
【請求項8】
前記列の数と前記行の数は同じであり、
前記第1電力信号を構成する前記基本信号及び前記反転信号の一方を1、他方を−1の符号とし、前記基本信号及び前記反転信号の並びの順番に前記符号を行列要素として順次定めて列方向に書き下し、かつ、前記複数の行のそれぞれの前記第1電力線路に供給する前記第1電力信号を、前記複数の行毎に行方向に前記符号を用いて書き下して行列で表したとき、前記行列は、アダマール行列である、請求項6または7に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記プラズマ生成ユニットは、前記第1電力信号に応じて前記第2電力信号を生成するとき、成膜された成膜用基板上の成膜厚さが均一になるように、前記電極対それぞれにおけるプラズマ生成頻度データを定め、前記プラズマ生成頻度データに基いて前記第2電力信号を生成する、請求項5〜8のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記プラズマ生成ユニットは、前記第1電力信号に応じて前記第2電力信号を生成するとき、前記成膜装置を用いて予め成膜された成膜用基板上の成膜厚さの測定結果に基づいてプラズマ生成頻度データを定め、前記プラズマ生成頻度データに基いて前記第2電力信号を定めて生成する、請求項5〜9のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項11】
前記プラズマ生成ユニットは、前記第1電力信号に応じて前記第2電力信号を生成するとき、前記成膜空間内で予め測定されたプラズマ中の電荷量の測定結果に基づいてプラズマ生成頻度データを定め、前記プラズマ生成頻度データに基いて前記第2電力信号を定めて生成する、請求項5〜8のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項12】
前記プラズマ生成プレートは、成膜用ガスが導入される前記成膜空間のガス供給口の位置と、前記成膜用基板が前記成膜空間内に載置されるサセプタの位置との間に、前記プラズマ生成プレートの一方の面が、前記サセプタの載置面に対して対向するように、前記成膜空間内に設けられている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項13】
前記電極対のうち前記載置面に近い電極は、絶縁体で被覆されて前記プラズマ生成プレートの内部に設けられ、前記電極対のうち前記載置面から遠い電極は、前記プラズマ生成プレートの前記貫通孔の内表面に露出している、請求項1〜12のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項14】
前記電極対それぞれの電極は、前記プラズマ生成プレートの両側の面に沿って配されたマイクロストリップ線路を通して前記電源と接続され、前記プラズマ生成プレートは、両側に設けられた誘電体プレートと、前記誘電体プレートが挟むように設けられた接地導体層と、を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の成膜装置。
【請求項15】
プラズマを用いた成膜方法であって、
前記成膜方法では、成膜用基板が配置される成膜空間を備える成膜チャンバと、前記成膜空間に導入された成膜用ガスを用いてプラズマを生成するプラズマ生成ユニットと、を有する成膜装置が用いられ、
前記プラズマ生成ユニットは、プレートであって、前記プレートの厚さ方向に貫通する複数の貫通孔と、前記貫通孔それぞれの両側の開口の周りに設けられた電極対と、を備えたプラズマ生成プレートと、前記貫通孔それぞれの中でプラズマを生成するために、前記電極対にプラズマ生成電圧を供給する電源と、前記プラズマ生成電圧の供給を前記電極対毎に制御する制御ユニットと、を有し、
前記成膜用基板に成膜をするとき、
前記制御ユニットは、前記電極対におけるプラズマ生成頻度データを前記電極対毎に個別に定め、
前記制御ユニットは、前記プラズマ生成頻度データに基づいて、前記電極対の一方の電極それぞれに印加する第1電力信号に応じて、前記電極対の他方の電極それぞれに印加する第2電力信号を生成し、
前記電極対それぞれの電極には、前記第1電力信号と前記第2電力信号が印加される、ことを特徴とする成膜方法。
【請求項16】
前記プラズマ生成頻度データは、成膜される成膜用基板上の成膜厚さが均一になるように設定される、請求項15に記載の成膜方法。
【請求項17】
前記プラズマ生成頻度データは、前記成膜装置を用いて予め成膜した成膜用基板上の成膜厚さに基いて設定される、請求項15または16に記載の成膜方法。
【請求項18】
前記プラズマ生成頻度データは、前記成膜装置の成膜空間内で予め測定された電荷の量の測定結果に基づいて設定される、請求項15に記載の成膜方法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2013−38148(P2013−38148A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171519(P2011−171519)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】