説明

扉の取付構造

【課題】 筐体または扉に対するヒンジ装置の取付位置を調節できるだけでなく、その調節時に、ヒンジ装置がカバー部材と干渉することがなく、しかもヒンジ装置の取付部分の体裁をよくした扉の取付構造を提供する。
【解決手段】 前面が開口する筐体1における側板2の内面に、固定片7に対して可動片8が枢軸9まわりに回動可能としたヒンジ装置6における固定片7を固定し、かつ筐体1の開口の前面を閉塞する扉5の裏面に、ヒンジ装置6における可動片8を固定することにより、扉5を開閉自在に筐体1に取付けた扉5の取付構造において、可動片8と扉5との間に、可動片8の取付位置を上下方向と水平方向とに調節する取付位置調節手段32を設け、かつ可動片8を覆うカバー部材33を、可動片8とともに上下方向に位置調節される中間板39に取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビネット等の家具の筐体の前面開口部に、扉を開閉自在に取付ける扉の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
筐体の前面開口部に、扉を開閉自在に取付けるヒンジ装置として、扉がその開閉動作に連動して、回動中心が前後方向に移動し、扉を180°まで開いたとき、扉全体が隣接する扉の前方に位置しうるようにしたヒンジ装置が提供されている(例えば特許文献1〜3参照)。
このヒンジ装置は、扉の開閉動作に連動して、扉側に固定された可動片の回動中心である枢軸が、筐体側に固定された固定片に対して、前後方向に移動するように、固定片と可動片とが、リンク機構をもって互いに連係されている。
【特許文献1】特開2005−282253号公報
【特許文献2】特開平8−193455号公報
【特許文献3】実公平7−605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述のような枢軸移動型のヒンジ装置は、可動片が、中間リンクと複数の枢軸をもって、固定片に枢着されているため、各枢軸部分で生じる誤差が重なって、扉を設定通りの位置に取り付けることができないことがある。
【0004】
そのため、固定片と筐体の側板との間、または可動片と扉との間に、固定片または可動片の取付位置を、上下方向と水平方向とに調節する取付位置調節手段を設けることが考えられているが、このような取付位置調節手段を取り付けると、その調節時に、ヒンジ装置が、それを覆うカバー部材と干渉したり、その干渉を避けるため、カバー部材の寸法を大とすると、体裁が悪くなる等の問題が生じる。
【0005】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、筐体または扉に対するヒンジ装置の取付位置を調節できるだけでなく、その調節時に、ヒンジ装置がカバー部材と干渉することがなく、しかもヒンジ装置の取付部分の体裁をよくした扉の取付構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、上記課題は次のようにして解決される。
(1) 前面が開口する筐体における側板の内面に、固定片に対して可動片が枢軸まわりに回動可能としたヒンジ装置における前記固定片を固定し、かつ前記筐体の開口の前面を閉塞する扉の裏面に、前記ヒンジ装置における可動片を固定することにより、前記扉を開閉自在に筐体に取付けた扉の取付構造において、前記固定片と側板との間、または可動片と扉との間に、固定片または可動片の取付位置を、上下方向と水平方向とに調節する取付位置調節手段を設け、かつ、前記固定片または可動片を覆うカバー部材を、前記取付位置調節手段における、固定片または可動片とともに上下方向に位置調節される部材に取り付ける。
【0007】
(2) 上記(1)項において、取付位置調節手段が、側板または扉に固着される取付板と、この取付板に対して、中間板を上下方向に位置調節する上下位置調節手段と、前記中間板に対して、固定片または可動片を水平方向に位置調節する水平位置調節手段とを備え、固定片または可動片を覆うカバー部材を、前記中間板に取り付ける。
【0008】
(3) 上記(1)または(2)項において、筐体における側板の内面と前面との角部、または扉の閉止時の後面と外側面との角部に、ヒンジ装置嵌合用の切欠きを設け、この切欠きに、固定片または可動片を覆うカバー部材の嵌合部を嵌合し、この嵌合部の上下寸法を前記切欠きの上下寸法より小とし、かつ前記カバー部材における、嵌合部の上下面から突出して形成された、切欠きの縁部を覆う化粧縁部の上下寸法を、前記切欠きの上下寸法より大とする。
【0009】
(4) 上記(3)項において、固定片または可動片を覆うカバー部材が、筐体における側板または扉に設けられた切欠きに嵌合されるとともに、固定片または可動片とともに上下方向に位置調節される部材に取り付けられたベースカバーと、このベースカバーに着脱可能として装着され、かつヒンジ装置の露呈部を覆う表面カバーとを備えるものとする。
【0010】
(5) 上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、固定片または可動片を覆うカバー部材と、固定片または可動片とともに上下方向に位置調節される部材とのいずれか一方に、他方に設けた被係合部に弾性係合するようにした係止爪を設ける。
【0011】
(6) 上記(1)〜(5)項のいずれかにおいて、ヒンジ装置を、扉の開閉動作に連動して、可動片の回動中心である枢軸が、固定片に対して、前後方向に移動するように、前記固定片と可動片とを、リンク機構をもって互いに連係した枢軸移動型のものとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、次のような効果を奏することができる。
(1) 請求項1記載の発明によると、筐体または扉に対するヒンジ装置の取付位置を調節できるだけでなく、その調節時に、固定片または可動片を覆うカバー部材が、ヒンジ装置とともに上下方向に移動するので、ヒンジ装置がカバー部材と干渉することがなく、しかもカバー部材の寸法を大とする必要がないので、体裁がよい。
【0013】
(2) 請求項2記載の発明によると、カバー部材を、取付位置調節手段における上下方向に位置調節される中間板に取り付けてあるので、カバー部材が、中間板と一体となって上下動し、ヒンジ装置と干渉することがなく、しかも、最小の寸法でヒンジ装置を体裁よく覆うことができる。
【0014】
(3) 請求項3記載の発明によると、カバー部材の嵌合部の上下寸法を、筐体における側板または扉に設けたヒンジ装置嵌合用の切欠きの上下寸法より小としてあるので、カバー部材は、上記切欠きに干渉することなく、ヒンジ装置とともに上下動することができ、しかも、カバー部材における切欠きの縁部を覆う化粧縁部の上下寸法を、切欠きの上下寸法より大としてあるので、切欠きとカバー部材の嵌合部との間に形成される隙間が、化粧縁部によって覆われ、外部に露呈することがなく、筐体内への塵埃の侵入を防止することができるとともに、体裁をよくすることができる。
【0015】
(4) 請求項4記載の発明によると、ベースカバーを、固定片または可動片とともに上下方向に位置調節される部材に取り付けた状態で、筐体または扉に対するヒンジ装置の取付位置を調節し、その後に、表面カバーをベースカバーに装着すればよいので、ベースカバーおよびヒンジ装置の組み付け作業性を向上することができる。
【0016】
(5) 請求項5記載の発明によると、カバー部材を、固定片または可動片とともに上下方向に位置調節される部材に、簡単かつ迅速に取り付けることができる。
【0017】
(6) 請求項6記載の発明によると、扉を、その回動中心を前方に移動させつつほぼ180°開いて、隣接する筐体の扉の前方に位置させることができる。
また、ヒンジ装置を、このようなリンク機構と複数の枢軸とを有する枢軸移動型のものとしたときに、上述したような本発明の効果を最も発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を、添付図面を参照して説明する。
図1〜図8は、本発明の一実施形態を備えるキャビネットを示す。
図1に示すように、このキャビネットは、前面が開口する筐体1の前面に、その両側板2、2、上面板3および底板4(図3参照)の前端面全体を覆う扉5が、図2以後に示す上下1対のヒンジ装置6、6をもって、図1に実線で示す閉止位置から、同じく想像線で示すように、扉5のほぼ板厚分だけ前方に移動した状態で、閉止時の扉5のほぼ前右隅部を中心として180°右方に回転した全開位置とに移動可能として、いわゆるアウトセット方式で装着されている。
【0019】
図2以降に示すように、各ヒンジ装置6は、筐体1の側板2の内面に固定される固定片7に対して、扉5の内面に固定される可動片8の回動中心である上下方向を向く枢軸9が、扉5の開閉動作に連動して、ほぼ前後方向に移動するように、固定片7と可動片8とが、リンク機構10をもって互いに連係された、上述したのと同様の枢軸移動型のものとしてある。
なお、ヒンジ装置6の構成自体は、本発明には直接関係するものではなく、例えば上記特許文献1または2に記載されているものと同一の構成としてもよい。
【0020】
この例では、リンク機構10は、側板2の内面に取付けたときの固定片7の前端部に、軸11をもって基端部が枢着された第1リンク12と、可動片8の中間部に軸13をもって基端部が枢着され、かつ先端部が第1リンク12の先端部と軸14をもって連結された第2リンク15と、中間部が第1リンク12の中間部に軸16をもって枢着され、一端が可動片8の遊端部に上記枢軸9をもって連結され、かつ他端に設けた軸17の上下の端部が、固定片7の上下の端部に折曲形成された水平片7a、7aに設けられたほぼ前後方向を向く平面視円弧状の長孔18に摺動自在に嵌合された第3リンク19とからなっており、枢軸9および軸13、14、16の相互間を連結する可動片8の一部と、第1リンク12の一部と、第2リンク15と、第3リンク19の一部とにより、4節回転連鎖20が形成されている。
【0021】
軸11、13、14、16、17は、いずれも枢軸9と平行、すなわち上下方向を向くものとしてある。
【0022】
図4に示すように、側板2の上下2箇所(図4はその下方のもののみを示す)における内面と前端面とにかけて、上記固定片7を収容するための方形の切り欠き21が設けられている。
切り欠き21には、その開口縁部を覆う筐体側ヒンジカバー22とヒンジ装置6における固定片7とが、互いに結合された状態で嵌合され、かつ固定片7における切り欠き21より後方に差し込まれた部分が、側板2の内面板2aに、2本のねじ23、23をもって止着されることにより、筐体側ヒンジカバー22が切り欠き21の縁部に密接し、かつ固定片7の前端部が側板2の前端面より若干前方に突出するようにして強固に取付けられている。
【0023】
筐体側ヒンジカバー22は、側板2の前端面における切り欠き21の縁部を覆う前面化粧縁部24と、側板2の内側面における切り欠き21の縁部を覆う側面化粧縁部25と、正面視コ字状をなして前面化粧縁部24より前方に突出し、かつ固定片7の前方突出部の外側面を覆う塞ぎ片26と、同じく正面視コ字状をなして前面化粧縁部24より後方に突出する嵌合部27とを有している。
【0024】
塞ぎ片26の内側面には、固定片7に設けられた上下方向を向く軸11の中間部を弾圧把持する前後1対の円弧状の把持片28、29が一体的に形成されている。この例では、塞ぎ片26の内側面における上下方向の中央部に、後方の1個の把持片29を配設し、その前方に、上下2個の把持片28、28を、把持片29の上下幅だけ互いに上下に離間させて配設してある。
【0025】
また、嵌合部27の内側面には、上下方向を向く内向き突条30が設けられており、この内向き突条30を、固定片7の上下の水平片7a、7aの縁に設けた切り欠き31に係合することにより、筐体側ヒンジカバー22と固定片7との位置決めおよび連結が図られている。
【0026】
この例では、軸11を弾圧把持する前後1対の円弧状の把持片28、29と、切り欠き31に係合する内向き突条30とが、それぞれヒンジ装置6における固定片7と係合する位置決めおよび連結用の係合部をなしている。
【0027】
図4に示すように、側板2における上下1対の切り欠き21、21に対応する扉5における側枠部5aの側端面と裏面とにかけて、ヒンジ装置6における可動片8と、この可動片8を、扉5の裏面に、上下方向と水平方向(閉扉時における扉5の左右方向)とに取付位置調節可能として取り付ける取付位置調節手段32と、閉扉時における側板2の前端面より前方に突出する固定片7の前端部と、それらを覆う扉側ヒンジカバー(カバー部材)33とを収容するための方形の切り欠き34が設けられている。
【0028】
また、扉5の裏面における側枠部5aより若干内方寄りの部分に設けられた角管状の縦補強部5bの側枠部5a寄りの側面と裏面にかけて、切り欠き34に対応する小寸の方形の切欠き35が設けられている。
縦補強部5bの裏面における上記切欠き35を挟む上下位置には、1対のねじ孔36、36と逃がし孔37、37とが、ねじ孔36、36を内側として設けられている。
【0029】
図5〜図8に示すように、取付位置調節手段32は、扉5の裏面に固着される取付板38と、この取付板38に対して、中間板39を上下方向に位置調節する上下位置調節手段40と、中間板39に対して、可動片8を水平方向に位置調節する水平位置調節手段41とを備えている。
【0030】
取付板38には、その内方寄りの端部から外方寄りの端部にかけて、それぞれ上下1対ずつのねじ挿通孔42、42、ねじ孔43、43、上下方向を向く長孔44、44、および中間板39側への折り曲げ片45、45が設けられている。
【0031】
中間板39の内方寄りの端部には、上下方向を向く上下1対の長孔46、46が、中間板39の外方寄りの端部には、上下1対のねじ孔47、47が、また中間板39の中央部には、取付板38側に向かって平面視L字状に折曲された切り起し片48が、さらに、中間板39の外方寄りの端部の上下の縁には、可動片8側に直角に折曲形成された折曲片49、49が、それぞれ設けられており、各折曲片49、49には、左右方向を向く長孔50が設けられている。
【0032】
可動片8の左右方向の中間部には、上下方向に突出する取付片51、51が設けられており、各取付片51には、左右方向を向く長孔52が設けられている。
【0033】
取付板38は、その各ねじ挿通孔42に挿通した上下1対の固定ねじ53、53を、扉5の縦補強部5bに設けた上下1対のねじ孔36、36に螺合して締め付けるとともに、中間板39の切り起し片48を、取付板38を挟んで、縦補強部5bに設けた切欠き35の内側の縁に係止させることにより、扉5に強固に固着されている。
【0034】
中間板39は、その外側縁を取付板38の上下の折り曲げ片45、45に当接させて、各長孔46に挿通した上下1対の調節ねじ54、54を、取付板38のねじ孔43、43に螺合して締め付けることにより、取付板38に強固に固着されるとともに、調節ねじ54、54を緩めて、調節ねじ54、54が各長孔46内を遊動しうる範囲において上下動させて、再度調節ねじ54、54を締め付けることにより、上下方向の取付位置を調節しうるようになっている。
この調節ねじ54、54と、ねじ孔43、43と、長孔46、46とにより、上下位置調節手段40が形成されている。
【0035】
可動片8は、その上下の取付片51、51が、中間板39の上下の折曲片49、49により上下から挟まれるようにして、各長孔52に挿通した上下1対の調節ねじ55、55を、中間板39のねじ孔47、47に螺合して締め付けることにより、中間板39を介して、取付板38に強固に固着されるとともに、調節ねじ55、55を緩めて、調節ねじ55、55が各長孔52内を遊動しうる範囲において左右方向に移動させて、再度調節ねじ55、55を締め付けることにより、左右方向の取付位置を調節しうるようになっている。
この調節ねじ55、55と、ねじ孔47、47と、長孔52、52とにより、水平位置調節手段41が形成されている。
【0036】
扉側ヒンジカバー33は、扉5の切欠き34に嵌合されるとともに、可動片8とともに上下方向に位置調節される中間板39に取り付けられたベースカバー56と、このベースカバー56に着脱可能として装着され、かつ可動片8の露呈部を覆う表面カバー57とを備えている。
【0037】
ベースカバー56は、扉5の切り欠き34に嵌合される嵌合部58と、この嵌合部58の上下面および側面から突出して形成され、切り欠き34における扉5の側端面の開口縁を覆うとともに、扉5の閉止時に上記塞ぎ片26が嵌合することにより、上記開口縁が閉塞されるようにした側面化粧縁部59と、嵌合部58の上下面から突出して形成され、側枠部5aの裏面における切り欠き34の開口縁を覆う裏面化粧縁部60と、この裏面化粧縁部60に連設され、可動片8および取付位置調節手段32の上下と内端とを覆う枠部61とを備えている。


嵌合部の上下面から突出して形成された、
【0038】
ベースカバー56は、嵌合部58が可動片8の前面に当接し、かつ枠部61が可動片8の上下と内端とを覆うようにして、枠部61の上下部に設けた弾性撓曲可能とした係止爪62を、中間板39の上下の折曲片49に設けた被係合部をなす長孔50に弾性係合させることにより、中間板39とともに上下動するようにして、取付位置調節手段32に装着され、かつ取付位置調節手段32および可動片8とともに、嵌合部58が扉5の切り欠き34に嵌合されている。
【0039】
ベースカバー56の嵌合部58の上下寸法は、切欠き34の上下寸法より小とし、かつベースカバー56における、切欠き34の縁部を覆う化粧縁部59、60の上下寸法を、切欠き34の上下寸法より大としてあるので、ベースカバー56は、切欠き34に干渉することなく、可動片8とともに上下動することができ、しかも、切欠き34と嵌合部58との間に形成される隙間Sが、化粧縁部59、60によって覆われ、外部に露呈することがないので、筐体1内への塵埃の侵入を防止することができるとともに、体裁をよくすることができる。
【0040】
表面カバー57は、左右方向を向く薄板状の上覆い部57aと下覆い部57bとの内方の端部同士を、側面視コ字状をなす中間覆い部57cにより連結したものよりなり、上覆い部57aと下覆い部57bとの外方の端部に設けた突起63、63を、ベースカバー56における枠部61と裏面化粧縁部60との連設部分の段差部に設けた凹部(図示略)に係止し、かつ上覆い部57aと下覆い部57bとの内方の端部寄りに設けた上下1対の弾性撓曲可能な係止爪64を、ベースカバー56における枠部61の上下部内面に設けた、被係合部である凹部65に弾性係合させることにより、ベースカバー56に着脱可能として装着され、上覆い部57aと下覆い部57bとにより、取付位置調節手段32における上下の調節ねじ54、55の部分を覆い、中間覆い部57cにより、可動片8の先端部を覆うようにしてある。
【0041】
したがって、表面カバー57をベースカバー56から外すだけで、取付位置調節手段32における上下の調節ねじ54、55を操作して、扉5に対する可動片8の取付位置を簡単に調節することができるとともに、調節終了後に、表面カバー57をベースカバー56に装着することにより、体裁をよくすることができる。
【0042】
上記のようにして扉5を筐体1の前面開口部に装着されたキャビネットは、閉扉時には、図1および図2に示すように、扉5の側端面に開口する切り欠き34が扉側ヒンジカバー33の側面化粧縁部59と筐体側ヒンジカバー22の塞ぎ片26とにより閉塞され、その内部のヒンジ装置6が外部に露呈することはなく、体裁がよい。
【0043】
この状態から扉5を開くと、ヒンジ装置6における軸17が長孔18に沿って前方に摺動するとともに、4節回転連鎖20が菱形に開きつつ、枢軸9が前方に移動し、かつ可動片8が扉5とともに枢軸9を中心として、前右方に回動する。
扉5を閉止位置からほぼ180°右方に回動させると、その間に枢軸9が前方に移動して、図3に示すように、扉5は、同一構造として横並びに配設した隣接するキャビネットの閉止時の扉5'の前方においてその扉5'に近接して平行をなす全開位置に達する。
【0044】
この扉5の閉止位置から全開位置までの回動途中で、ヒンジ装置6の特にリンク機構10が、開いた、または開きつつある扉5の内側に露呈するが、ヒンジ装置6の固定片7および可動片8が、側板2および扉5の内面に設けられた切り欠き21、34内に収容され、かつ筐体側ヒンジカバー22および扉側ヒンジカバー33により覆われているので、美観を保つことができる。
【0045】
扉5を、全開位置から元の閉止位置まで回動させたときは、上記と逆の作動で図2に示す状態に戻る。この開、閉いずれの場合も、扉5およびヒンジ装置6が、隣接する扉5'に干渉することはない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、上述のようなキャビネットだけでなく、例えばロッカー、収納庫、机、その他の家具における扉の取付部分に広く適用することができる。
また、上記の実施形態においては、扉とヒンジ装置の可動片との間に、取付位置調節手段とカバー部材とを設けたが、筐体の側板とヒンジ装置の固定片との間に、取付位置調節手段とカバー部材とを設けて実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態を備えるキャビネットの外観斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う拡大横断平面図である。
【図3】扉を全開位置まで開いたときの図2と同様の拡大横断平面図である。
【図4】ヒンジ部分の拡大分解斜視図である。
【図5】取付位置調節手段の分解斜視図である。
【図6】図3のVI−VI線矢視図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿う横断平面図である。
【図8】図6のVIII−VIII線に沿う縦断側面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 筐体
2 側板
2a内面板
3 上面板
4 底板
5 扉
5a側枠部
5b縦補強部
6 ヒンジ装置
7 固定片
7a水平片
8 可動片
9 枢軸
10 リンク機構
11 軸
12 第1リンク
13、14 軸
15 第2リンク
16、17 軸
18 長孔
19 第3リンク
20 4節回転連鎖
21 切り欠き
22 筐体側ヒンジカバー
23 ねじ
24 前面化粧縁部
25 側面化粧縁部
26 塞ぎ材
27 嵌合部
28、29 把持片係合部
30 内向き突条係合部
31 切り欠き
32 取付位置調節手段
33 扉側ヒンジカバー(カバー部材)
34、35 切欠き
36 ねじ孔
37 逃がし孔
39 中間板
40 上下位置調節手段
41 水平位置調節手段
42 ねじ挿通孔
43 ねじ孔
44 長孔
45 折り曲げ片
46 長孔
47 ねじ孔
48 切り起し片
49 折曲片
50 長孔(被係合部)
51 取付片
52 長孔
53 固定ねじ
54、55 調節ねじ
56 ベースカバー
57 表面カバー
57a上覆い部
57b下覆い部
57c中間覆い部
58 嵌合部
59 側面化粧縁部
60 裏面化粧縁部
61 枠部
62 係止爪
63 突起
64 係止爪
65 凹部(被係合部)
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面が開口する筐体における側板の内面に、固定片に対して可動片が枢軸まわりに回動可能としたヒンジ装置における前記固定片を固定し、かつ前記筐体の開口の前面を閉塞する扉の裏面に、前記ヒンジ装置における可動片を固定することにより、前記扉を開閉自在に筐体に取付けた扉の取付構造において、
前記固定片と側板との間、または可動片と扉との間に、固定片または可動片の取付位置を、上下方向と水平方向とに調節する取付位置調節手段を設け、かつ、前記固定片または可動片を覆うカバー部材を、前記取付位置調節手段における、固定片または可動片とともに上下方向に位置調節される部材に取り付けたことを特徴とする扉の取付構造。
【請求項2】
取付位置調節手段が、側板または扉に固着される取付板と、この取付板に対して、中間板を上下方向に位置調節する上下位置調節手段と、前記中間板に対して、固定片または可動片を水平方向に位置調節する水平位置調節手段とを備え、固定片または可動片を覆うカバー部材を、前記中間板に取り付けた請求項1記載の扉の取付構造。
【請求項3】
筐体における側板の内面と前面との角部、または扉の閉止時の後面と外側面との角部に、ヒンジ装置嵌合用の切欠きを設け、この切欠きに、固定片または可動片を覆うカバー部材の嵌合部を嵌合し、この嵌合部の上下寸法を前記切欠きの上下寸法より小とし、かつ前記カバー部材における、嵌合部の上下面から突出して形成された、切欠きの縁部を覆う化粧縁部の上下寸法を、前記切欠きの上下寸法より大とした請求項1または2記載の扉の取付構造。
【請求項4】
固定片または可動片を覆うカバー部材が、筐体における側板または扉に設けられた切欠きに嵌合されるとともに、固定片または可動片とともに上下方向に位置調節される部材に取り付けられたベースカバーと、このベースカバーに着脱可能として装着され、かつヒンジ装置の露呈部を覆う表面カバーとを備えている請求項3記載の扉の取付構造。
【請求項5】
固定片または可動片を覆うカバー部材と、固定片または可動片とともに上下方向に位置調節される部材とのいずれか一方に、他方に設けた被係合部に弾性係合するようにした係止爪を設けた請求項1〜4のいずれかに記載の扉の取付構造。
【請求項6】
ヒンジ装置を、扉の開閉動作に連動して、可動片の回動中心である枢軸が、固定片に対して、前後方向に移動するように、前記固定片と可動片とを、リンク機構をもって互いに連係した枢軸移動型のものとした請求項1〜5のいずれかに記載の扉の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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