説明

手すりの固定構造及びそれを使用した洋式便器の固定構造

【課題】 手すりを手軽かつ簡易に設置することができる手すりの固定構造と、便器本体の装着及び脱着に係る作業を容易なものとすることができるとともに、衛生的なものとすることができる洋式便器の固定構造とを提供する。
【解決手段】 手すり13は、和式便器11の両側部に配置される一対の手すり本体18と、金隠し11Aに押し付けられる押圧具19Aと、該押圧具19Aが押し付けられる箇所の対向位置でトイレ床10の段差部10Aに当接される当接具19Bとを有し、該当接具19Bと該押圧具19Aで該和式便器11を挟み付けるようにして該手すり13を該和式便器11に固定している。洋式便器12は、和式便器11に被せたうえ、手すり13に取り付けられた固定装置14によってトイレ床10に押しつけて固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の和式便器の周囲に設置する手すりの固定構造及びその既設の和式便器に被せることによって和式便器の使用形態を洋式のものとする洋式便器の固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高齢者、身障者にとっての使いやすさを向上させるため、既設のトイレに後付で設置する手すりが提供されている。例えば特許文献1では、手すりの脚部に取り付けられた床固定板をトイレ床面に固定している。特許文献2では、一対の手すりの下辺枠間に拡張部材を張設することによって、両手すりをトイレ壁面に押し付けて固定している。
一方、既設のトイレが和式便器である場合、高齢者、身障者にとっての使いやすさを向上させるため、その使用形態を洋式のものとするべく、特許文献3〜5に記載のような洋式便器が提供されている。特許文献3では、洋式便器の便器本体の底部に設けられたゴム部材を和式便器のリムに嵌着している。特許文献4では、引掛金具の一端を洋式便器の便器本体に引っ掛け、該引掛金具の他端を和式便器に引っ掛け、さらに圧接させている。特許文献5では、洋式便器の便器本体の後部に取り付けられた固定レバーを和式便器の金隠し内面に当接させている。
【特許文献1】特開2002−282175号公報
【特許文献2】特開2003−19089号公報
【特許文献3】実用新案登録第2535966号公報
【特許文献4】実開平5−43996号公報
【特許文献5】実用新案登録第2555629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記従来の手すりは、トイレ床面に固定するためアンカーボルトを用いたり、固定のためにトイレ壁面に手すりを押し付けたりしなければならず、煩雑な工事が必要であったり、床面、壁面に傷を付ける(穴を開ける)ことに抵抗があったりする等の問題があった。加えて、トイレ室が広い場合には、トイレ壁面に手すりを押し付ける構成では対応できないという問題もあった。
一方、トイレの使用形態を洋式とする洋式便器は、便器本体を和式便器に固定する構成であるため、固定に力を要する、固定に係る作業が繁雑であるという問題が生じる。また、衛生を保つために適宜取り外して清掃を行うとき、脱着に力を要する、引掛金具、あるいは固定レバーの一部が脱落してしまうおそれがある等、取り外しに係る作業が繁雑であるという問題がある。さらに、和式便器に固定する構成であるため、固定具が排泄物などで汚れやすく、衛生面で劣るという問題がある。
【0004】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、手すりを手軽かつ簡易に設置することができる手すりの固定構造を提供することにある。その他の目的とするところは、便器本体の装着及び脱着に係る作業を容易なものとすることができるとともに、衛生的なものとすることができる洋式便器の固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の手すりの固定構造の発明は、和式便器の周辺に設置される手すりの固定構造であって、該手すりは、該和式便器の両側部に配置される一対の手すり本体と、該和式便器の金隠し又は該金隠しの周縁に押し付けられる押圧具と、該和式便器における該押圧具が押し付けられる箇所の対向位置又はトイレ床の段差部に当接される当接具とを有しており、該当接具を該和式便器又は該段差部に当接させたうえ、さらに該押圧具を該和式便器に押し付けて、該当接具と該押圧具で該和式便器を挟み付けるようにして該手すりを該和式便器に固定することを要旨とする。
上記構成によれば、手すりを和式便器に固定しており、トイレ床面、トイレ壁面に穴を開ける等のような煩雑な工事をする必要が無く、またトイレ床面、トイレ壁面に傷を付けることがない。その結果、手すりを手軽かつ簡易に設置することができる。また、手すりは、和式便器に固定されるようになっており、トイレ室の広さにかかわらず、取り付けを行うことができる。
【0006】
また、請求項1に記載の手すりの固定構造の発明において、該押圧具は、該一対の手すり本体の間に架設された支持梁から進退自在に延設された支持杵の端部に首振り自在に取り付けられていることが望ましい。該押圧具を首振り自在とすることにより、該押圧具が和式便器の金隠し又は該金隠しの周縁に押し付けられる際、曲面状をなす和式便器の表面形状に対応しやすくなる。
【0007】
また、請求項1に記載の手すりの固定構造の発明において、該当接具は、和式便器の下方を跨ぐようにして該一対の手すり本体の下端の間に架けわたされるとともに、該一対の手すり本体に対する上下位置を調節できるように取り付けられていることが望ましい。該当接具が和式便器の下方を跨ぐようにして該一対の手すり本体の下端の間に架けわたされることにより、該当接具を和式便器に引掛けやすくすることができ、また手すり本体に対する上下位置を調節できるようにすることで、トイレ床の段差部の高さ、あるいは和式便器のサイズに柔軟に対応することができる。
【0008】
上記その他の目的を達成するために、請求項4に記載の洋式便器の固定構造の発明は、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の手すりの固定構造を使用して、和式便器に被せられた洋式便器の便器本体を固定する洋式便器の固定構造であって、該手すりには該便器本体を固定するための固定装置が取り付けられており、該手すりを該和式便器に固定したうえで、該固定装置を該便器本体の周縁部外面に当接させ、さらに該固定装置で該便器本体をトイレ床に押しつけて、該便器本体をトイレ床上に固定することを要旨とする。
上記構成によれば、和式便器に固定された手すりの固定装置を利用して、洋式便器の便器本体をトイレ床面に固定しており、該固定装置が外部に露出し、その操作が行いやすいため、便器本体の装着及び脱着に係る作業が容易である。また、固定装置は、洋式便器の外面に当接されており、排泄物などが付着しづらく、衛生的である。
【0009】
また、請求項4に記載の洋式便器の固定構造の発明において、該固定装置は、該手すりに設けられた取付部に回動可能に取り付けられた押圧部材と、該手すりの取付部を介して該押圧部材に螺着されたねじ部材とを備えており、該押圧部材の一端部を該便器本体の周縁部に接触させたうえで、該押圧部材に対してねじ部材を締め付けて、該押圧部材で該便器本体を押圧することが望ましい。この構成によれば、ねじ部材の締め付け、あるいは緩めという簡易な操作で押圧部材による押圧力を調節することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、手すりを手軽かつ簡易に設置することができる。また便器本体の装着及び脱着に係る作業を容易なものとすることができるとともに、衛生的なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した一実施形態について説明する。
図1は、手すりの固定構造及びそれを利用した洋式便器の固定構造における全体の概略構成を示す斜視図であり、図2は、洋式便器を取り付ける状態を示す概略構成の斜視図である。
本実施形態において、トイレ床10は、段差部10Aを有しており、該段差部10Aの上部に和式便器11が既設されている。洋式便器12は、該和式便器11に被せるようにして、該トイレ床10上に設置されている。また、和式便器11の周辺には、該和式便器11を取り囲むようにして手すり13が設置されている。そして、該手すり13には、固定装置14が取り付けられており、洋式便器12は、該固定装置14によってトイレ床10上に固定されている。
【0012】
まず、洋式便器12について説明する。洋式便器12は、略椀状をなす便器本体15と、該便器本体15に回動可能に取り付けられた便座16及び便蓋17とからなる。そして、便器本体15の中央部分は、開口されており、前記和式便器11に被せられた際には、便器本体15の内部が和式便器11の内部と通じるようになっている。これら便器本体15、便座16及び便蓋17は、着座時における加重に耐えつつ、清掃時等における利便性向上のため軽量化を図るとともに、排泄物などが付着しづらいものとするという観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)等といった合成樹脂によって形成されている。なお、便器本体15、便座16及び便蓋17のうち少なくとも何れか1つを、合成樹脂に限らず、陶器、金属などによって形成してもよい。
【0013】
次に、手すり13について説明する。手すり13は、和式便器11の両側部に配置される一対の手すり本体18と、これら手すり本体18を和式便器11に固定するための手すり固定装置19とを有している。
手すり本体18は、棒状をなす横設材18aと、該横設材18aの端部に接合された縦設材18bと、該縦設材18bの上端部に取り付けられた肘置き18cとからなる。該縦設材18bは、金属パイプ、樹脂パイプ等のような中空筒体から形成されている。該横設材18aは、金属棒、樹脂棒等のような棒体、あるいは該縦設材18bと同様の中空筒体から形成されている。該肘置き18cは、該縦設材18bへの取付位置を変更できるようになっている。また、手すり13において、一対の手すり本体18は、洋式便器12を迂回するようにして配置される連結手すり18dによって連結されている。
該手すり13においては、洋式便器12へ着座した際、該肘置き18cに肘を載せることにより、体を安定に保持することができるようになっている。さらに、洋式便器12へ着座する際、縦設材18b、肘置き18c、あるいは連結手すり18dをつかむことにより、洋式便器12へ着座しやすくなっている。加えて、該肘置き18cは、使用者による使い勝手を向上するべく、該縦設材18bに対する取付位置を変更してトイレ床10からの高さを調整することができるようになっている。
【0014】
図3に示すように、手すり固定装置19は、和式便器11の金隠し11Aに押し付けられる押圧具19Aと、トイレ床10の段差部10Aに当接される当接具19Bとを有している。
該当接具19Bは、正面形状U字に形成されている。該当接具19Bの両側上端部は、一対の手すり本体18の縦設材18b内に挿入されている。該縦設材18bの下端部には2つのネジ19Cが螺着されている。そして、該当接具19Bは、該ネジ19Cを締め付けることにより、該縦設材18bに固定され、該和式便器11の下方を跨ぐようにして該一対の手すり本体18の下端の間に架けわたされるように配置されている。また、該ネジ19Cを緩めることにより、該縦設材18b内から該当接具19Bを引き出すことが可能であり、該当接具19Bは、該一対の手すり本体18に対する上下位置を調節できるように構成されている。
該押圧具19Aは、長板を曲げることによって平面形状略V字に形成されている。一方、一対の手すり本体18において、横設材18aの端部の間には支持梁19Dが架設されている。該支持梁19Dの中間部からは、一対の支持杵19Eが和式便器11に向かって延設されている。そして、該押圧具19Aは、該支持杵19Eの端部に取り付けられている。また特に図示はしないが、該支持梁19Dは、該縦設材18b及び該当接具19Bの固定と略同様に、該横設材18aに対してボルトを用いて固定されている。このため、該支持梁19Dは、該ボルトを緩める等することにより、和式便器11のサイズに応じて、該横設材18aの長さ方向における固定位置を調節することができるようになっている。
【0015】
図4に示すように、該支持梁19Dにおいて、該支持杵19Eの取付位置にはナット19Fが接合されている。該支持杵19Eは、該ナット19Fに螺入または螺退することにより、該和式便器11に対して進退自在に構成されている。該支持杵19Eの該和式便器11側となる端部には、該支持杵19Eを螺入または螺退させるべく回転させるための回転ノブ19Gが取り付けられるとともに、該回転ノブ19Gには、ビス19H及び座金19Iを用いて取付板19Jが取り付けられている。
該取付板19Jは、その中央に凹設された収容部19K内に回転ノブ19Gの端部が挿入された状態で該回転ノブ19Gに該ビス19Hが該座金19Iを介在させたうえで螺着されることによって取り付けられている。また、収容部19K内において回転ノブ19Gの端部の周囲には余裕が設けてあり、かつ該座金19Iによって該回転ノブ19Gの端部が該収容部19K内から抜け出さないよう構成されているため、該取付板19Jは、回転ノブ19Gに対して揺動可能に取り付けられている。そして、該押圧具19Aは、その背面(和式便器11側となる面と対向する面)に該取付板19Jが接合されることによって該支持杵19Eの端部に取り付けられるとともに、該取付板19Jが該回転ノブ19Gに対して揺動可能であるため該支持杵19Eに対して首振り自在とされている。
【0016】
図5に示すように、該手すり13は、該当接具19Bと該押圧具19Aで該和式便器11を挟み付けるようにして、該和式便器11に固定される。すなわち、該手すり13を設置する場合には、一対の手すり本体18をトイレ床10の段差部10Aの上部に載置した後、該和式便器11の下端と段差部10Aとによって形作られる角部に該当接具19Bが引っ掛かるように、該当接具19Bの該一対の手すり本体18に対する上下位置を調節して該当接具19Bを手すり本体18に固定する。次いで、該支持杵19Eを該和式便器11に対して前進または後退させて、該押圧具19Aを該和式便器11の金隠し11Aに押し付ける。すると、図5中に一点鎖線で示したように、該押圧具19Aと該当接具19Bとは、該和式便器11を挟んで対向位置に配置されているため、該当接具19Bと該押圧具19Aで該和式便器11を挟み付けるようにして該手すり13が該和式便器11に固定される。
【0017】
該当接具19Bは、該段差部10Aに当接したうえ、該和式便器11の下端と段差部10Aとによって形作られる角部に引っ掛かっており、該手すり13が横ずれなどすることを防止している。さらに、該押圧具19Aは、該支持杵19Eに対して首振り自在とされており、曲面をなす該和式便器11の金隠し11Aに好適な角度で押し付けられるため、該手すり13の該和式便器11への固定を確実なものとしている。従って、該手すり13は、アンカーボルトを用いる等のような煩雑な工事、あるいはトイレ床10の傷つきを必要とすることなく、該和式便器11へ簡易且つ確実に固定される。加えて、アンカーボルトを用いる等の工事は、専門の業者に依頼する等の必要があるが、該手すり13のような特に介護に使用する器具においては、介護者が被介護者の程度、あるいは介護のしやすさに応じて設置位置を微調整するため、専門の業者に依頼することなく介護者が任意に設置可能な当該手すり13は、介護産業上で有用なものである。
なお、図5中では該押圧具19Aを該和式便器11の金隠し11Aに押し付ける構成としたが、該和式便器11にあっては種々の形態、あるいは様々なサイズのものが存在する。このため、該押圧具19Aを金隠し11Aに押し付ける構成に限らず、該金隠し11Aの周縁部、例えば和式便器11のリム11Bに押し付ける構成としてもよい。つまり、該押圧具19Aは、該支持杵19Eに対して首振り自在とされているため、該和式便器11の何れの箇所においても好適な角度で押し付けられるようになっている。
【0018】
次いで、前記固定装置14について説明する。図6は、固定装置の概略構成を示す分解斜視図であり、図7(a),(b)は、固定装置で洋式便器を固定する状態を示す断面図である。
前記手すり13において、手すり本体18の横設材18aには、固定装置14を取り付けるための取付部20が立設されている。該取付部20は、断面凹字状に形成されている。該取付部20において、洋式便器12における前後方向で対向する一対の側壁20aには、それぞれ一対ずつ合計二対の係合溝21が形成されている。これら係合溝21は、トイレ床10側を下方として、斜め下方へ延びるとともに、側壁20aの端縁で開放されている。また、該取付部20において、洋式便器12における左右方向に位置する側壁20bには、挿通孔22が該側壁20bの長手方向、つまりは洋式便器12における上下方向へ延びる長孔状をなすように形成されている。
【0019】
固定装置14は、該取付部20に装着される押圧部材25と、該押圧部材25に螺着されたねじ部材26とを備えている。該押圧部材25は、取付部20に装着される基端部25aと、洋式便器12の便器本体15に係合される先端部25bとからなる。
洋式便器12における前後方向の面を側面として、該押圧部材25の基端部25aの両側面で基端上部には、係合突部27がそれぞれ突設されている。該押圧部材25を取付部20に装着する際、これら係合突部27は、取付部20の係合溝21に挿入され、係合されるようになっている。また、押圧部材25は、取付部20に装着された状態で、該係合突部27を中心として、洋式便器12の上下方向に回動可能となっている。さらに、該基端部25aの基端面で下部には、ねじ部材26を螺着するためのねじ孔28が形成されている。
【0020】
該押圧部材25の先端部25bにおいて、その一端部には、係合爪29が取り付けられている。該係合爪29は、断面L字状に形成されており、便器本体15の側部において、周縁角部に係合されるようになっている(図7(a),(b)参照)。また、該先端部25bは、押圧部材25の上面に設けられた調整ネジ30を緩めることにより、基端部25aに対してスライド移動自在に構成されており、取付部20から便器本体15までの距離に応じて押圧部材25を伸縮させて長さ調節することができるようになっている。なお、特に図示はしないが、係合爪29において、便器本体15と接触する部位には、ゴム、不織布などからなる軟質シートが貼り付けられており、便器本体15の傷付きを抑制している。
該ねじ部材26は、ハンドル26aと、該ハンドル26aの中心から延設されたボルト杵26bとからなる。そして、該ねじ部材26は、取付部20の挿通孔22にボルト杵26bを挿通したうえで、該ボルト杵26bを押圧部材25のねじ孔28に螺入することにより、取付部20を介して押圧部材25に螺着されている。
【0021】
次に、固定装置14による洋式便器12の固定方法について説明する。なお、手すり13は、上記した手順に従ってトイレ床10に既に固定されているものとする。
洋式便器12を固定する場合には、図2に示したように、まず洋式便器12の便器本体15を和式便器11の上方から被せる。次いで、図7(a)に示したように、押圧部材25を便器本体15に係合させ、さらにハンドル26aを回してねじ部材26を締め付ける。すると、押圧部材25において、ねじ孔28は、係合突部27よりも下側(トイレ床10側)に位置しているため、押圧部材25は、図7(b)に示したように、係合爪29を下側へ移動させるように回動する。そして、このように押圧部材25が回動した結果、便器本体15は、該押圧部材25によってトイレ床10へと押圧されることとなり、トイレ床10上に固定されることとなる。また、押圧部材25が回動するとき、係合突部27は、係合溝21の内奥側(斜め上側)へ適宜位置ずれすることにより、押圧部材25のがたつきを抑制し、該押圧部材25による押圧力を便器本体15に好適に加えるように構成されている。
【0022】
一方、洋式便器12の脱着方法は、上記固定方法とは逆にハンドル26aを回してねじ部材26を緩めればよい。つまり、ねじ部材26を緩めることにより、押圧部材25は回動可能となる。従って、ねじ部材26を適宜緩めたうえで、便器本体15を上方へ引き上げれば、押圧部材25が上方へ回動し、該押圧部材25と便器本体15との係合が解除される。また、便器本体15は、既設の和式便器11に対して何ら固定されていないため(図7(a),(b)を参照)、ハンドル26aを緩めるのみで便器本体15を上方へ引き上げ可能となり、洋式便器12を簡易に脱着することができる。
【0023】
上記のように、固定装置14は、手すり13に取り付けられているため、洋式便器12の外部に露出している。従って、ハンドル26aを回しやすく、洋式便器12の固定及び脱着に係る作業を容易に行うことができる。また、固定装置14において、押圧部材25の係合爪29は、便器本体15の外面に当接されているため、排泄物などが付着しづらく、衛生的である。特に、洋式便器12の固定時及び脱着時に手で触れることとなるハンドル26aは、洋式便器12の外部であり、さらに便器本体15から離間した位置に配置されているため、衛生的であり、作業を行いやすい。
【0024】
なお、上記取付部20においては、使用する便器本体15のトイレ床10からの高さに応じて、二対の係合溝21のうち何れか一方を選択し、押圧部材25を係合する。また、図7(a)中に「H」として示す便器本体15のトイレ床10からの高さに対し、図7(a)中に「L」として示すトイレ床10から係合溝21の上縁までの長さは、L≦Hの関係を満たすことが好ましい。このようにL≦Hの関係を満たす場合、押圧部材25が便器本体15へ向かって回動しやすくなるため、より強い押圧力を加えることができる。また、押圧部材25において、基端部25aの基端面を便器本体15側へ傾斜する斜面状としてもよい。基端部25aの基端面をこのような斜面状とした場合も、押圧部材25が便器本体15へ向かって回動しやすくなるため、より強い押圧力を加えることができる。また、押圧部材25において、係合爪29を便器本体15の上面に当接させることに限らず、例えば便器本体15の側面にスリットを設け、該スリットに係合爪29を差し込む構成としてもよい。
【0025】
また、固定装置14は、上記実施形態のように便器本体15を両側部の2箇所で固定することに限らず、例えば一側部の1箇所で固定したり、あるいは便器本体15の後部も合わせて3箇所で固定したり等してもよい。また、固定装置は、上記実施形態の構成に限らず、手すり13に取り付けられ、さらに便器本体15をトイレ床10に押圧して固定可能ならば、何れの構成としてもよい。例えば、バネ性を有する金属プレートで固定装置を構成するとともに、該金属プレートを横設材18aに回動可能に取り付け、該金属プレートを撓ませつつ、便器本体15の上面に当接させることにより、便器本体15を固定してもよい。あるいは、横設材18aに固定装置14を取り付けることに限らず、連結手すり18dに固定装置14を取り付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】洋式便器の固定構造における全体の概略構成を示す斜視図。
【図2】洋式便器を取り付ける状態を示す概略構成の斜視図。
【図3】実施形態の手すりを示す分解斜視図。
【図4】押圧具を示す分解斜視図。
【図5】手すりを和式便器に固定した状態示す概念図。
【図6】固定装置の概略構成を示す分解斜視図。
【図7】(a)は固定装置で洋式便器を固定する状態を示す断面図、(b)は固定装置で洋式便器を固定した状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0027】
10…床面、11…和式便器、12…洋式便器、13…手すり、14…固定装置、18…手すり本体、19…手すり固定装置、19A…押圧具、19B…当接具、19D…支持梁、19E…支持杵、20…取付部、25…押圧部材、26…ねじ部材。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
和式便器の周辺に設置される手すりの固定構造であって、
該手すりは、該和式便器の両側部に配置される一対の手すり本体と、該和式便器の金隠し又は該金隠しの周縁に押し付けられる押圧具と、該和式便器における該押圧具が押し付けられる箇所の対向位置又はトイレ床の段差部に当接される当接具とを有しており、
該当接具を該和式便器又は該段差部に当接させたうえ、さらに該押圧具を該和式便器に押し付けて、該当接具と該押圧具で該和式便器を挟み付けるようにして該手すりを該和式便器に固定することを特徴とする手すりの固定構造。
【請求項2】
該押圧具は、該一対の手すり本体の間に架設された支持梁から進退自在に延設された支持杵の端部に首振り自在に取り付けられている請求項1に記載の手すりの固定構造。
【請求項3】
該当接具は、和式便器の下方を跨ぐようにして該一対の手すり本体の下端の間に架けわたされるとともに、該一対の手すり本体に対する上下位置を調節できるように取り付けられている請求項1又は請求項2に記載の手すりの固定構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の手すりの固定構造を使用して、和式便器に被せられた洋式便器の便器本体を固定する洋式便器の固定構造であって、
該手すりには該便器本体を固定するための固定装置が取り付けられており、該手すりを該和式便器に固定したうえで、該固定装置を該便器本体の周縁部外面に当接させ、さらに該固定装置で該便器本体をトイレ床に押しつけて、該便器本体をトイレ床上に固定することを特徴とする洋式便器の固定構造。
【請求項5】
該固定装置は、該手すりに設けられた取付部に回動可能に取り付けられた押圧部材と、該手すりの取付部を介して該押圧部材に螺着されたねじ部材とを備えており、
該押圧部材の一端部を該便器本体の周縁部に接触させたうえで、該押圧部材に対してねじ部材を締め付けて、該押圧部材で該便器本体を押圧する請求項4に記載の洋式便器の固定構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−79710(P2008−79710A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260997(P2006−260997)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(501081063)株式会社徳山工業社 (7)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】