説明

手押し車のブレーキ機構

【課題】本発明は、手押し車のブレーキ機構の寿命を長くすることを課題とする。
【解決手段】手押し車1のブレーキ機構のブレーキワイヤー14をブレーキ片15,15Aに接続する場合、上記ワイヤー14の下端にフック17,17Aを取付け、該フック17,17Aを上記ブレーキ片15の係合孔154かあるいは左右のブレーキ片15A,15Aの連結棒16Aに係合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば老人や身障者が利用する歩行補助車やベビーカーのような手押し車のブレーキ機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、図14に示すように手押し車のフレームの後脚部42の下端車輪取付部43に回転自在に軸支されている後輪8に該後脚部42に回動可能に取付けられているブレーキ片15の先端のブレーキシュー部152を押当て、制動を行なうが、該ブレーキ片15のブレーキワイヤ14は車フレームの所定位置に取付けられているハンドル(図示しない)に上端部が固定され、下端部は該ブレーキ片15の根端部内側折曲部153にボルト142Aとナット146Aとによって固定されている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−67255号公報
【特許文献2】特開平9−277938号公報
【特許文献3】特開2006−193099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成にあっては、ブレーキワイヤ14の下端部はブレーキ片15の根端部内側折曲部153にボルト142Aとナット146Aとによって固定されているので、図中矢印イに示すワイヤ14の下端部分は、ブレーキ操作によってブレーキ片15が矢印ロに示すように回動する度に屈曲変形することになる。
特に後輪8のタイヤ81が図中点線に示すように摩耗してくると、該ブレーキ片15の回動角度が次第に大きくなり、それに伴って該ワイヤ14下端部の屈曲変形量が大きくなり、度重なる使用によりワイヤ14が曲げ疲労を起こし破断に至る危険性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記従来の問題を解決するための手段として、ブレーキワイヤ14の上端は車フレーム2の所定個所に取付けられ、下端は車フレーム2の下部に回動可能に取付けられているブレーキ片15の回動点151よりも根端側に接続され、該ワイヤ14を引張ると該ブレーキ片15が回動して該ブレーキ片15の先端部が車輪8に接触して制動が及ぼされる手押し車1のブレーキ機構であって、該ワイヤ14の下端にはフック17が取付けられており、該フック17が該ブレーキ片15の回動点151より根端側に設けられている係合孔154に係合されている手押し車のブレーキ機構、あるいは、ブレーキワイヤ14の上端は車フレーム2の所定個所に取付けられ、下端は車フレーム2の下部に回動可能に取付けられているブレーキ片15Aの回動点151Aよりも根端側に接続され、該ワイヤ14を引張ると該ブレーキ片15Aが回動して該ブレーキ片15Aの先端部が車輪8に接触して制動が及ぼされる手押し車1のブレーキ機構であって、該ワイヤ14の下端にはフック17Aが取付けられており、該フック17Aが左右のブレーキ片15A,15Aを回動点よりも根端側において連結する連結棒16Aに係合されている手押し車1のブレーキ機構を提供するものである。
上記フックはS字状フックであることが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
〔作用〕
ブレーキワイヤ14の下端に取付けられているフック17,17Aは、ブレーキ片15,15Aの回動点151,151Aよりも根端側に設けられている係合孔154に係合されているか、あるいは連結棒16Aに係合されているので、ワイヤ14を操作してブレーキ片15,15Aを使役回動させた場合には、フック17,17Aがブレーキ片15の係合孔154あるいはブレーキ片15A,15Aを連結する連結棒16Aに対して相対的に回動することが出来、したがってワイヤ14の下端、即ちワイヤ14のフック17,17Aとの接続部分は殆ど屈曲変形を起こさない。
【0007】
〔効果〕
したがって本発明にあっては、ブレーキワイヤ14の破断が防止出来、長期間にわたって安全が保障される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の第1実施例を図1〜図7に示す。
図1に示す手押し車1は、主として老人や身障者用の歩行補助車であり、上記手押し車1のフレーム2は背もたれ部31を起立させ、該背もたれ部31の下端から斜め前方に主体部32を延長させ、該主体部32の下端から前脚部33を下方に向けて屈曲延設した主フレーム3の左右一対と、上記主フレーム3の主体部32に回動可能に主体部41が接続され、下端から後脚部42を下方に向けて屈曲延設した副フレーム4とからなり、上記左右の主フレーム3,3の背もたれ部31,31の上端間には把手杵5が差渡され、更にその下側には背もたれ6が差渡され、左右一対の前脚部33,33には横梁7が差渡され、前脚部33の下端部には二重車輪からなる前輪7,7が回転自在にかつ左右首振り回動可能に取付けられている。
上記副フレーム4の後脚部42の下端後輪取付部43には車軸44を介して後輪8が回転自在に取付けられている。
上記主フレーム3の主体部32と副フレーム4の主体部41との間には、下側に物入れ9を配した座部10が懸架されており、該座部10は左右の主フレーム3の主体部32の根端から差出されている座部支持フレーム11によって支持されている。なお、上記座部10は物入れ9の蓋になっている。
【0009】
上記構成において、主フレーム3,3の背もたれ部31,31には把手杵5の斜め前方にブレーキハンドル12が配置されている。上記ブレーキハンドル12の両端屈曲部121は主フレーム3,3の背もたれ部31,31の上端部に取付けられているブレーキハウジング13,13内にそれぞれ挿入され、図2に示すように上記ブレーキハウジング13,13内に上下回動可能に支持されている回動片131の回動軸132に固定される。
上記回動片131の下縁にはブレーキワイヤ14が接続している。上記回動片131は図2中矢印反対方向(ブレーキ解除方向)にバネ(図示しない)によって付勢されている。
【0010】
図3に示すように副フレーム4の後脚部42にはブレーキ片15が回動軸151を介して上下回動可能に取付けられている。
上記ブレーキ片15の先端部は外側に折曲げられて後輪8のタイヤ81に圧接するブレーキシュー部152となり、根端部は内側に折曲げられ端末には左右のブレーキ片15,15を連結する連結棒16が接続している。そして該ブレーキ片15の根端部内側折曲部153にはブレーキワイヤ14の端末に取付けられているS字状フック17が係合する係合孔154が開設されている。
【0011】
上記ワイヤ14は、副フレーム4の後脚部42から前方に差出されているブラケット18に取付けられている位置調節ねじ141を貫通してS字状フック17と接続するが、上記接続部にあっては図5に示すように該ワイヤ14はボルト142の軸部143を貫通する。そして該ボルト142の軸部143には両側にワッシャ144,145を配したS字状フック17の上部取付部171が懸架され、該ボルト142にナット146を締め付ける。このようにして図6に示すようにS字状フック17はワイヤ14の端末に接続される。
【0012】
上記構成にあっては、位置調節ねじ141によってワイヤ14の上下位置が調節される。そしてブレーキ操作にあっては、ブレーキハンドル12を図2中矢印に示すように手で握って把手杵5の方向(ブレーキ方向)へ回動させると、ワイヤ14は図4中矢印イに示すようにS字状フック17を上方へ引張り、かくしてブレーキ片15は根端部内側折曲部153の係合孔154を介して図4中矢印ロ方向に回動し、図7に示すように該フレーム片15のブレーキシュー部152が後輪8のタイヤ81に圧接して制動が実施される。
この際、ブレーキ片が上下回動しても上記S字状フック17は該ブレーキ片15の根端部内側折曲部153の係合孔154内を動く(係合孔154に対して正逆回動する)ことが出来るから、ワイヤ14のフック17接続部分には屈曲変形が殆ど起こらない。
【0013】
図8〜図10には本発明の他の実施例が示される。
本実施例では、S字状フック17Aの上部にはボルト孔171Aが設けられており、上記S字状フック17Aは上部のボルト孔171Aにワイヤ14を貫通させたボルト142の軸部143を貫通させ、該軸部143にナット146を螺着して締め付けることによって、図9に示すようにワイヤ14の端末に接続される。
本実施例の場合も、前記実施例と同様にブレーキ操作時、ブレーキ片が上下回動しても上記S字状フック17Aは該ブレーキ片15の根端部内側折曲部153の係合孔154に対して正逆回動することが出来るので、ワイヤ14のフック17A接続部分には屈曲変形が殆ど起こらない。
【0014】
図11および図12には更に他の実施例が示される。
本実施例では、ブレーキ片15Aの先端部は外側に折り曲げられてブレーキシュー部152Aとなり、根端部は内側に折り曲げられ、端末には左右の連結棒16Aが接続しているが、上記連結棒16Aの両端部には低段係合部161Aが屈曲形成されており、上記S字状フック17Aは上記連結棒16Aの低段係合部161Aに係合する。
本実施例の場合は、ブレーキ操作時、ワイヤ14はフック17Aを介して連結棒16Aを引き上げ、ブレーキ片15Aを回動させる。この際、フック17Aは連結棒16Aに対して正逆回動することが出来るので、ワイヤ14のフック17A接続部分には屈曲変形が殆ど起こらない。
【0015】
上記実施例以外、図13に示すようにフック17Bの形状はカギ形にされてもよい。なお171Bはボルト挿通孔である。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明にあっては、手押し車のブレーキワイヤの破断が防止され、寿命が延びるので、産業上利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1〜図7は本発明の一実施例を示す図である。
【図1】手押し車の斜視図
【図2】ブレーキハンドル取付構造説明図
【図3】後輪部分詳細斜視図
【図4】後輪部分詳細側面図
【図5】ワイヤとフックとの接続部分説明分解斜視図
【図6】ワイヤとフックとの接続部分説明斜視図
【図7】ブレーキ操作時の後輪部分詳細側面図図8〜図10は本発明の他の実施例を示す図である。
【図8】ワイヤとフックとの接続部分説明分解斜視図
【図9】ワイヤとフックとの接続部分説明斜視図
【図10】ブレーキ操作時の後輪部分詳細側面図図11〜図12は本発明の更に他の実施例を示す図である。
【図11】後輪部分詳細斜視図
【図12】後輪部分詳細側面図
【図13】フックの他の実施例の側面図図14〜図15は従来の手押し車のブレーキ機構を示す図である。
【図14】後輪部分詳細側面図
【図15】後輪部分詳細斜視図
【符号の説明】
【0018】
1 手押し車
3 主フレーム
4 副フレーム
14 ブレーキワイヤ
15,15A ブレーキ片
16,16A 連結棒
17,17A,17B フック


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキワイヤの上端は車フレームの所定個所に取付けられ、
下端は車フレームの下部に回動可能に取付けられているブレーキ片の回動点よりも根端側に接続され、
該ワイヤを引張ると該ブレーキ片が回動して該ブレーキ片の先端部が車輪に接触して制動が及ぼされる手押し車のブレーキ機構であって、
該ワイヤの下端にはフックが取付けられており、
該フックが該ブレーキ片の回動点より根端側に設けられている係合孔に係合されていることを特徴とする手押し車のブレーキ機構。
【請求項2】
ブレーキワイヤの上端は車フレームの所定個所に取付けられ、
下端は車フレームの下部に回動可能に取付けられているブレーキ片の回動点よりも根端側に接続され、
該ワイヤを引張ると該ブレーキ片が回動して該ブレーキ片の先端部が車輪に接触して制動が及ぼされる手押し車のブレーキ機構であって、
該ワイヤの下端にはフックが取付けられており、
該フックが左右のブレーキ片を回動点よりも根端側において連結する連結棒に係合されていることを特徴とする手押し車のブレーキ機構。
【請求項3】
上記フックはS字状フックである請求項1または請求項2に記載の手押し車のブレーキ機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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