説明

投影用ズームレンズおよび投写型表示装置

【課題】適切なバックフォーカスを有し、広角化が容易であり、ズーミングの際にFno.が一定でズーム比が大きく、かつ縮小側のレンズ外径を小さくすることが可能な汎用性の高いテレセントリックな投影用ズームレンズを得る。
【解決手段】拡大側から順に、変倍時に固定のフォーカス調整用の負の第1レンズ群Gと、変倍時に可動の正の第2レンズ群G、負の第3レンズ群G、正の第4レンズ群Gおよび正の第5レンズ群Gと、最も拡大側に絞り3が配された、変倍時に固定の正の第6レンズ群Gとを備えている。全てのレンズが単レンズにより構成されており、広角端における全系の焦点距離fに対する全系のバックフォーカスBfの比が2.5より大きくなるように構成され、変倍の全領域に亘ってFno.が一定となるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投写型表示装置等に搭載される6群構成4群移動の投影用ズームレンズおよびその投影用ズームレンズを搭載した投写型表示装置に関し、特に、映画館等において大画面スクリーン上に投影するのに好適な投影用ズームレンズおよび投写型表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶表示装置やDMD表示装置等のライトバルブを用い、比較的バックフォーカスの長い投影プロジェクタ装置(投写型表示装置)が広く普及している(下記特許文献1参照)。
【0003】
また、近年、映画館等においては、このような投影プロジェクタ装置であって、大画面に適用し得る、より高精細な画像を映出し得るようにしたものも利用されつつある。
【0004】
このような利用に供される投影プロジェクタ装置では、反射型液晶表示素子やDMD3板方式が採用されており、より長いバックフォーカスで、かつ他と同様に良好なテレセントリック性が求められている。
【0005】
一般的に投影距離をスクリーン横幅で割った値をスローレシオという。スクリーンサイズとスクリーンから映写室までの距離、すなわち投影距離は映画館毎にまちまちである。したがって映画館毎に適した大きさの映像を投影するには、それぞれに適したスローレシオに対応するレンズが必要になるが、それらを実際に個々に用意することはコスト面から考えると得策ではない。そこで、ズームレンズを用い対応できるスローレシオに幅を持たせることにより、この課題を解決することができる。
【0006】
しかし、従来のプロジェクタ用のレンズの多くはズーミングの際に開口数(以下「Fno.」と称することがある)が変化する。通常はワイド側よりもテレ側の方がFno.が暗いため、そういったズームレンズでは、同じスクリーンサイズの映画館でもスローレシオの大きい映画館の方が、映像が暗くなってしまうという問題が生じる。
【0007】
また、レンズのズーム比が大きくなる程レンズの汎用性は高まるが、その一方で、従来のプロジェクタ用のレンズでは、ズーム比が大きくなる程Fno.の変動が大きくなる傾向にあり、映画館用途には適さなくなっていくという問題が生じる。
【0008】
このような、ズーム比の変化に応じてFno.が変動するため映画館用途には適さない、と問題を解決するものとして下記特許文献2に記載のものが知られているが、この特許文献2に記載のものはバリフォーカルレンズであるため、変倍に際してテレセントリック性が一定に保たれないという課題や、設置後において変倍の必要がある場合には操作調整が煩雑になるという課題が残されている。
【0009】
このような事情に鑑み本願出願人は、適切なバックフォーカスを有し、かつズーミングの際にFno.が一定でズーム比が大きく汎用性の高いテレセントリックな投影用ズームレンズを提案し、特許庁に対し開示している(下記特許文献3,4参照)。
【0010】
【特許文献1】特開平8−201690号公報
【特許文献2】特開2002−122782号公報
【特許文献3】特願2007−304317号明細書
【特許文献4】特願2007−304318号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記特許文献3に記載された発明(以下「提案発明3」と称する)に係る投影用ズームレンズは、5群構成3群移動のものであり、第4レンズ群と第5レンズ群との間に、変倍時に固定の絞りが配されている。
【0012】
一方、上記特許文献4に記載の発明(以下「提案発明4」と称する)に係る投影用ズームレンズは、6群構成4群移動のものであり、第4レンズ群と第5レンズ群との間に、変倍時に独立して移動する絞りが配されている。
【0013】
この提案発明4のズームレンズは、提案発明3のものに比べ、より広角化を実現し得るという利点を有しているが、移動群がより縮小側に配置されているため、機構も含めたレンズの外径を比較した場合、縮小側に配されるレンズの外径は、提案発明4のズームレンズの方が大きくなってしまう。
【0014】
一般にレンズ外径部には、投写型表示装置とレンズを締結するための締結機構が備えられるが、既存のシネマ向け投写型表示装置と締結する場合、この締結機構は、絞り位置(提案発明4のズームレンズでは、ワイド端での絞り位置)よりも縮小側に設けられることが多い。
【0015】
既存の投写型表示装置では、投影用レンズを配置するためのスペースの大きさは既に決まっているので、提案した新たな投影用レンズを既存の装置に搭載するためには、少なくとも、締結機構が配される位置よりも縮小側のレンズ外径が、装置側に用意されたレンズ配置用のスペース内に収まる大きさであることが必要となる。
【0016】
しかしながら、提案発明4のズームレンズは、提案発明3のものに比べ、締結機構が配される位置よりも縮小側のレンズ外径が大きくなるため、提案発明3のズームレンズは取り付けることが可能な既存の投写型表示装置に対しても、取り付けることができないことが生じるという問題がある。
【0017】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、適切なバックフォーカスを有し、広角化が容易であり、広角化された状態においても、ズーミングの際にFno.が一定でズーム比が大きく、かつ締結機構が配される位置よりも縮小側のレンズ外径を小さくすることが可能な汎用性の高いテレセントリックな投影用ズームレンズおよびこれを用いた投写型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る投影用ズームレンズは、拡大側より順に、変倍の際に固定でフォーカシングを行う負の屈折力を有する第1レンズ群と、変倍の際に移動する正の屈折力を有する第2レンズ群と、変倍の際に移動する負の屈折力を有する第3レンズ群と、変倍の際に移動する正の屈折力を有する第4レンズ群と、変倍の際に移動する正の屈折力を有する第5レンズ群と、変倍の際に固定で正の屈折力を有し最も拡大側に絞りを備えた第6レンズ群とを配列してなり、
変倍の全領域において、開口数が一定となるように設定され、
全てのレンズが単レンズにより構成され、
縮小側がテレセントリックとなるように構成され、
下記条件式(1)を満足することを特徴とするものである。
2.5< Bf/f (1)
ただし、
Bf:全系のバックフォーカス(空気換算距離)
f:広角端における全系の焦点距離
【0019】
なお、上記「絞り」には、絞り径が固定とされたいわゆる開口の他、絞り径を変化させ得る可変絞りも含まれるものとする。
【0020】
本発明に係る投影用ズームレンズにおいて、前記第2レンズ群は、最も拡大側のレンズが、拡大側に凹面を向けた正メニスカスレンズであり、最も縮小側のレンズが、縮小側の面に比して曲率の大きい凸面を拡大側に向けた正レンズであり、下記条件式(2)を満足することが好ましい。
3.5<f2/f<4.2 (2)
ただし、
f2:前記第2レンズ群の焦点距離
【0021】
その場合、前記第2レンズ群は正レンズのみにより構成されていることが好ましい。
【0022】
また、前記第2レンズ群は、最も縮小側に開口が配されてなるとすることが好ましい。
【0023】
また、前記第5レンズ群が1枚の両凸レンズから構成され、下記条件式(3)を満足することが好ましい。
70<νdG5 (3)
ただし、
νdG5:前記第5レンズ群の前記両凸レンズのd線におけるアッベ数
【0024】
さらに、前記第6レンズ群は、拡大側より順に、拡大側に凸面を向けた負メニスカスレンズ、拡大側に凹面を向けた負レンズ、縮小側に凸面を向けた正レンズ、および少なくとも1枚の正レンズを配列してなり、下記条件式(4)を満足することが好ましい。
65<νdG6p (4)
ただし、
νdG6p:前記第6レンズ群中の各正レンズのd線におけるアッベ数
【0025】
また、下記条件式(5)、(6)を満足することが好ましい。
45<νdG6n (5)
1.8<NdG6n (6)
ただし、
νdG6n:前記第6レンズ群の前記拡大側に凹面を向けた負レンズのd線におけ
るアッベ数
NdG6n:前記第6レンズ群の前記拡大側に凹面を向けた負レンズのd線におけ
る屈折率
【0026】
さらに、下記条件式(7)を満足することが好ましい。
2.5<f6/f<3.0 (7)
ただし、
f6:前記第6レンズ群の焦点距離
【0027】
また、下記条件式(8)を満足することが好ましい。
2.1<DG6/f<2.6 (8)
ただし、
G6:前記第6レンズ群の前記絞りから該第6レンズ群の最も縮小側のレンズ面
までの距離
【0028】
さらに、下記条件式(9)を満足することが好ましい。
3.3<|f6/f6|<5.0 (9)
ただし、
f6:前記第6レンズ群の最も拡大側のレンズ面から該第6レンズ群の拡大側の
焦点までの距離
f6:前記第6レンズ群の焦点距離
【0029】
また、本発明の投写型表示装置は、光源、ライトバルブ、および該ライトバルブにより変調された光による光学像をスクリーン上に投影するための投影用レンズとして本発明に係る投影用ズームレンズを備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明の投影用ズームレンズによれば、6群構成4群移動タイプのズームレンズにおいて、拡大側から順に、変倍時において固定とされたフォーカス調整用の負の第1レンズ群と、変倍時において可動とされた正の第2レンズ群、負の第3レンズ群、正の第4レンズ群および正の第5レンズ群と、変倍時において固定とされた正の第6レンズ群を備え、この第6レンズ群の最も拡大側に絞りが配されている。また、全てのレンズが単レンズにより構成されており、広角端における全系の焦点距離fに対する全系のバックフォーカス(空気換算距離)Bfの比が2.5より大きくなるように構成され、変倍の全領域に亘ってFno.が一定となるように設定されている。
【0031】
これにより、高ズーム比を維持しつつ、ズームレンズの広角化が容易となり、広角化された状態においても、変倍の全領域においてFno.を略一定とすることが可能となる。また、全てのレンズが単レンズにより構成されているので、光量が大きく高温で使用されることとなるシネマ用として好適であり、かつ変倍時において固定の第6レンズ群の最も拡大側に絞りを配し、移動群をこの絞りよりも拡大側に配置されたレンズ群としたことにより、縮小側に配されるレンズの外径を小さくすることができるので、レンズ配設用のスペースが限られた既存の投写型表示装置に対しても取り付けることが可能となる。
【0032】
したがって、本発明の投影用ズームレンズおよびこれを用いた投写型表示装置によれば、映画館等のサイズに伴う投影距離毎に、各々専用の投影レンズを用いなくとも、ある一定範囲においては、1つの投影レンズにより汎用的に対応することが可能となり、かつ、どの映画館でも同じ大きさの画像であれば同じ明るさでスクリーン上に投影することが可能となる。また、上述した高ズーム比を利用して、ズーミングにより縦横比の違う映像を、縦高さを一定に保ちつつ、横幅だけ変化させて投影することも可能である。
【0033】
さらに、全系のバックフォーカスを上述のように設定しているので、クロスダイクロイックプリズム、TIRプリズム等の色合成手段としてのガラスブロック等を挿入する適切なスペースを確保することが可能となる。また、レンズ系の縮小側のテレセントリック性を良好なものとする、との要求を満足することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は本発明の実施例1に係る投影用ズームレンズの広角端におけるレンズ構成図を示すものであり、図2は実施例1に係る投影用ズームレンズの変倍操作に応じ、広角端(WIDE)、中間位置(MIDDLE)および望遠端(TELE)における、各レンズ群の移動位置を示すものである。以下、この投影用ズームレンズを代表例として本実施形態を説明する。
【0035】
この投影用ズームレンズは、映画館等において、デジタル映像を映出するための投写型表示装置に搭載されるものであって、変倍の際に固定でフォーカシング機能を有し、負の屈折力を有する第1レンズ群Gと、連続変倍およびその連続変倍によって生じる像面移動の補正のため、相互に関係をもって光軸X方向に移動する正の屈折力を有する第2レンズ群G、負の屈折力を有する第3レンズ群G、正の屈析力を有する第4レンズ群Gおよび正の屈析力を有する第5レンズ群Gと、変倍の際に固定で正の屈折力を有し、最も拡大側に絞り3を備えた第6レンズ群Gと、を拡大側よりこの順に配設してなり、その縮小側には、色合成プリズムを主とするガラスブロック(フィルタ部を含む)2および液晶表示パネル等のライトバルブの画像表示面1が配設されている。
【0036】
フォーカシング機能を有する第1レンズ群Gを、負の屈折力を有するように構成することにより、広角化を達成し易くなる。
【0037】
また、上記絞り3は、開口絞りとしての機能を有するものであるが、簡素な固定開口により構成されており、変倍の際に絞り径が不変(一定)とされることにより、レンズ系の明るさ(Fno)が変倍の全領域において一定に維持されるように構成されている。これにより、映画館の室内空間の大きさや形状等に応じて投影距離が変更される際においても、第2レンズ群G、第3レンズ群G、第4レンズ群Gおよび第5レンズ群Gを光軸X方向に移動せしめて変倍操作を行うとともに、第1レンズ群Gを光軸X方向に移動させてフォーカシングを行うことによって、良好な画質の映像を、同様の明るさにて大型スクリーン上に映出することが可能となる。一方、絞り3を可変絞りにより構成し、絞り径を変化させ得る態様とすることも可能である。
【0038】
なお、この投影用ズームレンズにおいては、ズーム比が1.38以上とされていることが好ましく、その場合には、いわゆるビスタ、シネスコといった縦横比が異なる画面サイズの切替えを行う際、ズーミングによってスクリーン映像の高さ方向を一定に保つことに対応し得るとともに、種々の使用状況に対して更に汎用的に対応することが可能となる。
【0039】
また、図示するように、第1レンズ群Gは4枚(実施例4は5枚)の単レンズ(第1レンズL〜第4レンズL)により構成され、第2レンズ群Gは2枚(実施例4は3枚)の単レンズ(第5レンズL、第6レンズL)により構成され、第3レンズ群Gは1枚の単レンズ(第7レンズL)により構成されている。さらに、第4レンズ群Gは3枚の単レンズ(第8レンズL〜第10レンズL10)により構成され、第5レンズ群Gは1枚の単レンズ(第11レンズL11)により構成され、第6レンズ群Gは5枚の単レンズ(第12レンズL12〜第16レンズL16)により構成されている。また、縮小側が略テレセントリックに構成されている。
【0040】
このように、本実施形態のものでは、接合レンズは設けられておらず、全て単レンズとされている。これは、この投影用ズームレンズを搭載する投写型表示装置が、家庭用や小規模会議用のものとは異なり、光源としてキセノンランプ等を用い2kWにも達するような極めて強い光を出力するように構成されていることに対応したものである。すなわち、接合レンズを用いた場合には、このような強い光によって、レンズ接合用の接着剤が著しく変質、劣化し、レンズ性能の低下を招く虞があるためであり、全て単レンズで構成することによって、このような事態の発生を防止することが可能となる。
【0041】
さらに、本実施形態の投影用ズームレンズは、全系のバックフォーカスBf(空気換算距離)を広角端における全系の焦点距離fで除した値が、以下の条件式(1)を満足するように構成されている。
2.5< Bf/f (1)
【0042】
このように、条件式(1)を満足するように全系のバックフォーカスが設定されていることにより、ビームスプリッタや、クロスダイクロイックプリズム、TIRプリズム等の色合成手段としてのガラスブロック等を挿入する適切なスペースを確保することが可能となる。
【0043】
また、この投影用ズームレンズは、第2レンズ群Gにおいて、最も拡大側に配されるレンズ(第5レンズL)を、拡大側に凹面を向けた正メニスカスレンズとし、最も縮小側に配されるレンズ(第6レンズL)を、縮小側の面に比して曲率の大きい凸面を拡大側に向けた正レンズとして、下記条件式(2)を満足するように構成することが好ましい。
3.5<f2/f<4.2 (2)
ただし、
f2:第2レンズ群Gの焦点距離
【0044】
第2レンズ群Gにおける最も縮小側のレンズを上述の正レンズとすることにより、縮小側から入射した光線を光軸に近づく方向に屈折させることができるので、第2レンズ群Gにおける拡大側のレンズ径を小さくすることができる。また、第2レンズ群Gにおける最も拡大側のレンズ面を凹面とすることにより、第2レンズ群Gから拡大側に出射される光線を発散させることができるので、負の屈折力を有する第1レンズ群Gの負担を軽減することが可能となる。
【0045】
また、第2レンズ群Gの構成を上述のものとすることにより、第2レンズ群Gを正レンズのみで構成することが可能となり、特に、2枚の正レンズのみで第2レンズ群Gを構成することも可能となる。第2レンズ群Gを2枚の正レンズのみで構成することにより、レンズ枚数の低減化および全系のコンパクト化を図ることができる。
【0046】
さらに、第2レンズ群Gにおける最も縮小側には、マスク等からなる開口4が配されていることが好ましい。この位置に開口4を配置することにより、ズーム広角域における不要な周辺光束を効果的にカットすることが可能となり、縮小側におけるテレセントリック性を良好なものとすることができる。
【0047】
また、第5レンズ群Gを、下記条件式(3)を満足する1枚の両凸レンズで構成することが好ましく、これにより、ズーム全領域において軸上色収差を良好に補正することが可能となる。
70<νdG5 (3)
ただし、
νdG5:第5レンズ群Gの上記両凸レンズのd線におけるアッベ数
【0048】
さらに、第6レンズ群Gを、拡大側より順に配列された、拡大側に凸面を向けた負メニスカスレンズ、拡大側に凹面を向けた負レンズ、縮小側に凸面を向けた正レンズ、および少なくとも1枚の正レンズにより構成するとともに、以下の条件式(4)を満足するように構成することが好ましく、これにより、ズーム全領域において軸上色収差および倍率色収差を共に良好に補正することが可能となる。
65<νdG6p (4)
ただし、
νdG6p:前記第6レンズ群中の各正レンズのd線におけるアッベ数
【0049】
また、下記条件式(5)、(6)を満足するように構成することが好ましく、これにより、ズーム全領域における軸上色収差および倍率色収差の補正を、より良好なものとすることが可能となる。
45<νdG6n (5)
1.8<NdG6n (6)
ただし、
νdG6n:第6レンズ群Gの上記拡大側に凹面を向けた負レンズのd線におけ
るアッベ数
NdG6n:第6レンズ群Gの上記拡大側に凹面を向けた負レンズのd線におけ
る屈折率
【0050】
さらに、本実施形態の投影用ズームレンズは、下記条件式(7)〜(9)を満足するように構成されることが望ましい。
2.5<f6/f<3.0 (7)
2.1<DG6/f<2.6 (8)
3.3<|f6/f6|<5.0 (9)
ただし、
f6:第6レンズ群Gの焦点距離
G6:第6レンズ群Gの上記絞り3から該第6レンズ群Gの最も縮小側の
レンズ面までの距離
f6:前記第6レンズ群Gの最も拡大側のレンズ面から該第6レンズ群G
拡大側の焦点までの距離
【0051】
これらの条件式(7)〜(9)は、諸収差をバランス良く補正しつつ、レンズ系の全長や径の大きさ、バックフォーカスを適切に設定するためのものであり、条件式(7)の上限を上回ると、バックフォーカスが長くなりすぎ、下限を下回ると、諸収差をバランス良く補正することが困難となる。また、条件式(8)の上限を上回ると、レンズ系の全長が長くなりすぎ、下限を下回ると、第5レンズ群Gをより縮小側に配設することとなるために、第5レンズ群Gを保持する機構やカム筒等を収容する関係上、これらの機構等を含めた、縮小側のレンズ径が大きくなってしまい、レンズ配設用のスペースが限られている既存の投写型表示装置への取り付けが困難となる。さらに、条件式(9)の上限を上回ると、レンズ系の全長が長くなりすぎ、下限を下回ると、諸収差をバランス良く補正することが困難となる。
【0052】
次に、本発明に係る投写型表示装置の実施形態について、図25および図26を用いて説明する。図25は本発明の一実施形態に係る投写型表示装置の一部を示す概略構成図であり、図26は本発明の他の実施形態に係る投写型表示装置の一部を示す概略構成図である。
【0053】
図25に示す投写型表示装置は、各色光に対応した反射型液晶表示パネル11a〜11cと、色分解のためのダイクロイックミラー12,13と、色合成のためのクロスダイクロイックプリズム14と、全反射ミラー18と、偏光分離プリズム15a〜15cを有する照明光学系10を備えている。ダイクロイックミラー12の前段には、図示を省略された光源が配されており、この光源からの白色光が、3つの色光光束(G光、B光、R光)にそれぞれ対応する液晶表示パネル11a〜11cに入射されて光変調され、上述の実施形態に係る投影用ズームレンズ19により、図示されないスクリーンに投写される。
【0054】
一方、図26に示す他の実施形態に係る投写型表示装置は、各色光に対応した反射型液晶表示素子21a〜21cと、色分解および色合成のためのTIRプリズム24a〜24cと、偏光分離プリズム25を有する照明光学系20を備えている。偏光分離プリズム25の前段は図示を省略しているが、光源からの白色光は、3つの色光光束(G光、B光、R光)にそれぞれ対応する液晶表示パネル21a〜21cに入射されて光変調され、上述の実施形態に係る投影用ズームレンズ29により図示されないスクリーンに投写される。
【0055】
なお、本発明の投影用ズームレンズとしては、種々の態様の変更が可能であり、例えば各レンズ群を構成するレンズの枚数や各レンズの曲率半径およびレンズ間隔(もしくはレンズ厚)を適宜変更することが可能である。
【0056】
また、本発明の投影用ズームレンズは反射型の液晶表示パネルを供えた投写型表示装置において使用される場合に好適であるが、その使用態様に限られるものではなく、透過型の液晶表示パネルを用いた装置の投影用ズームレンズあるいはDMD等の他の光変調手段を用いた投写型表示装置の投影用ズームレンズ等として用いることも可能である。
【実施例】
【0057】
以下、具体的な実施例を用いて、本発明の投影用ズームレンズをさらに説明する。
【0058】
<実施例1>
実施例1に係る投影用ズームレンズの概略構成を図1,2に示す。この実施例1に係る投影用ズームレンズは、前述したように、変倍の際に固定でフォーカシング機能を有し、負の屈折力を有する第1レンズ群Gと、連続変倍およびその連続変倍によって生じる像面移動の補正のため、相互に関係をもって光軸X方向に移動する正の屈折力を有する第2レンズ群G、負の屈折力を有する第3レンズ群G、正の屈析力を有する第4レンズ群Gおよび正の屈析力を有する第5レンズ群Gと、変倍の際に固定で正の屈折力を有し、最も拡大側に絞り3を備えた第6レンズ群Gと、を拡大側よりこの順に配設してなり、その縮小側には、色合成プリズムを主とするガラスブロック2および画像表示面1が配設されている。
【0059】
第1レンズ群Gは、拡大側に凸面を向けた正のメニスカスレンズからなる第1レンズLと、拡大側に凸面を向けた負のメニスカスレンズからなる第2レンズLと、縮小側に凹面を向けた平凹レンズからなる第3レンズLと、両凹レンズからなる第4レンズLとからなる。
【0060】
第2レンズ群Gは、縮小側に凸面を向けた正のメニスカスレンズからなる第5レンズLと、拡大側に凸面を向けた正のメニスカスレンズからなる第6レンズLと、マスク等からなる開口4とからなり、第3レンズ群Gは、拡大側に凸面を向けた負のメニスカスレンズからなる第7レンズLのみからなる。
【0061】
第4レンズ群Gは、拡大側に凸面を向けた負のメニスカスレンズからなる第8レンズLと、両凸レンズからなる第9レンズLと、両凹レンズからなる第10レンズL10とからなり、第5レンズ群Gは、両凸レンズからなる第11レンズL11のみからなる。
【0062】
第6レンズ群Gは、固定開口の絞り3と、拡大側に凸面を向けた負のメニスカスレンズからなる第12レンズL12と、拡大側に凹面を向けた平凹レンズからなる第13レンズL13と、拡大側に凸面を向けた正のメニスカスレンズからなる第14レンズL14と、両凸レンズからなる第15レンズL15および第16レンズL16とからなる。
【0063】
この実施例1における広角端から望遠端までの全系の焦点距離f(広角端における拡大側の共役点位置無限遠状態の焦点距離を1.000として規格化されている;以下の表2〜8において同じ)、バックフォーカスBf(空気換算距離。広角端における拡大側の共役点位置無限遠状態の焦点距離を1.000として規格化された数値を小数点以下第2位まで表示;以下の表2〜8において同じ)、Fno.を表1の上段に示す。
【0064】
また、各レンズ面の曲率半径R(広角端における拡大側の共役点位置無限遠状態の焦点距離を1.000として規格化されている;以下の各表において同じ)、各レンズの中心厚および各レンズ間の空気間隔D(上記曲率半径Rと同様の焦点距離で規格化されている;以下の表2〜8において同じ)、各レンズのd線における屈折率Ndおよびアッベ数νdを表1の中段に示す。なお、この表1および後述する表2〜8において、各記号R、D、Nd、νdに対応させた数字は拡大側から順次増加するようになっている。
【0065】
さらに表1の下段に、広角端(WIDE:ズーム比1.000)、中間位置(MIDDLE:ズーム比1.301)および望遠端(TELE:ズーム比1.550)における第1レンズ群Gと第2レンズ群Gの距離D(可変1)、第2レンズ群Gと第3レンズ群Gの距離D13(可変2)、第3レンズ群Gと第4レンズ群Gの距離D15(可変3)、第4レンズ群Gと第5レンズ群Gの距離D21(可変4)および第5レンズ群Gと第6レンズ群Gの距離D23(可変5)を示す。
【0066】
【表1】

【0067】
また、後掲の表9に、実施例1における各条件式(1)〜(9)に対応する数値を示す。
【0068】
また、図17は実施例1に係る投影用ズームレンズの広角端(WIDE)、中間位置(MIDDLE)および望遠端(TELE)における、諸収差(球面収差、非点収差、ディストーションおよび倍率色収差)を示す収差図である。この図17および後述する図18〜24において、各球面収差図はd線、F線およびC線に対する収差曲線を示す。また、これらの図面において、各非点収差図にはサジタル像面およびタンジェンシャル像面に対する収差が示されており、各倍率色収差図にはd線に対するF線およびC線の収差が示されている。
【0069】
また、図17の球面収差図に示されるように、広角端(WIDE)、中間位置(MIDDLE)および望遠端(TELE)におけるFno.は2.50で一定である。
【0070】
また、この図17および上記表1から明らかなように、実施例1の投影用ズームレンズによれば、ズーム領域の全体に亘って良好な収差補正がなされ、適切なバックフォーカス量と縮小側での良好なテレセントリック性とが達成され、かつ明るさ、コンパクト性、画角の広さ、およびズーム比の大きさという各性能が最良のバランスとして発揮され得る。特に、ズーム領域の全体に亘ってFno.が2.50と明るさを一定とすることができる。
【0071】
また、広角端での半画角が28.0°と広角ながらも、ズーム比は1.550と大きく設定されているので、投影距離が比較的短い映画館用として好適であり、かつ投影距離の変化にも幅広く対応し得るものとなっている。
【0072】
<実施例2>
実施例2に係る投影用ズームレンズの概略構成を図3,4に示す。図3は実施例2に係る投影用ズームレンズの広角端におけるレンズ構成図を示すものであり、図4は実施例2に係る投影用ズームレンズの変倍操作に応じ、広角端(WIDE)、中間位置(MIDDLE)および望遠端(TELE)における、各レンズ群の移動位置を示すものである。
【0073】
この実施例2に係る投影用ズームレンズは、図3に示すように、基本的に実施例1のものと類似した構成とされているが、第1レンズ群Gにおいて、第1レンズLが両凸レンズからなる点と、第4レンズ群Gにおいて、第10レンズL10が縮小側に凸面を向けた負のメニスカスレンズからなる点とにおいて異なっている。
【0074】
この実施例2における広角端から望遠端までの全系の焦点距離f、バックフォーカスBf(空気換算距離)、Fno.を表2の上段に示す。
また、各レンズ面の曲率半径R、各レンズの中心厚および各レンズ間の空気間隔D、各レンズのd線における屈折率Ndおよびアッベ数νdを表2の中段に示す。
【0075】
さらに表2の下段に、広角端(WIDE:ズーム比1.000)、中間位置(MIDDLE:ズーム比1.224)および望遠端(TELE:ズーム比1.400)における第1レンズ群Gと第2レンズ群Gの距離D(可変1)、第2レンズ群Gと第3レンズ群Gの距離D13(可変2)、第3レンズ群Gと第4レンズ群Gの距離D15(可変3)、第4レンズ群Gと第5レンズ群Gの距離D21(可変4)および第5レンズ群Gと第6レンズ群Gの距離D23(可変5)を示す。
【0076】
【表2】

【0077】
また、後掲の表9に、実施例2における各条件式(1)〜(9)に対応する数値を示す。
【0078】
また、図18は実施例2に係る投影用ズームレンズの広角端(WIDE)、中間位置(MIDDLE)および望遠端(TELE)における、諸収差(球面収差、非点収差、ディストーションおよび倍率色収差)を示す収差図である。
【0079】
この図18および上記表2から明らかなように、実施例2の投影用ズームレンズによれば、ズーム領域の全体に亘って良好な収差補正がなされ、適切なバックフォーカス量と縮小側での良好なテレセントリック性とが達成され、かつ明るさ、コンパクト性、画角の広さ、およびズーム比の大きさという各性能が最良のバランスとして発揮され得る。特に、ズーム領域の全体に亘ってFno.が2.50と明るさを一定とすることができる。
【0080】
また、広角端での半画角が28.0°と広角ながらも、ズーム比は1.400と大きく設定されているので、投影距離が比較的短い映画館用として好適であり、かつ投影距離の変化にも幅広く対応し得るものとなっている。
【0081】
<実施例3>
実施例3に係る投影用ズームレンズの概略構成を図5,6に示す。図5は実施例3に係る投影用ズームレンズの広角端におけるレンズ構成図を示すものであり、図6は実施例3に係る投影用ズームレンズの変倍操作に応じ、広角端(WIDE)、中間位置(MIDDLE)および望遠端(TELE)における、各レンズ群の移動位置を示すものである。
【0082】
この実施例3に係る投影用ズームレンズは、図5に示すように、基本的に実施例1のものと類似した構成とされているが、第2レンズ群Gにおいて、第6レンズLが両凸レンズからなる点において異なっている。
【0083】
この実施例3における広角端から望遠端までの全系の焦点距離f、バックフォーカスBf(空気換算距離)、Fno.を表3の上段に示す。
また、各レンズ面の曲率半径R、各レンズの中心厚および各レンズ間の空気間隔D、各レンズのd線における屈折率Ndおよびアッベ数νdを表3の中段に示す。
【0084】
さらに表3の下段に、広角端(WIDE:ズーム比1.000)、中間位置(MIDDLE:ズーム比1.301)および望遠端(TELE:ズーム比1.550)における第1レンズ群Gと第2レンズ群Gの距離D(可変1)、第2レンズ群Gと第3レンズ群Gの距離D13(可変2)、第3レンズ群Gと第4レンズ群Gの距離D15(可変3)、第4レンズ群Gと第5レンズ群Gの距離D21(可変4)および第5レンズ群Gと第6レンズ群Gの距離D23(可変5)を示す。
【0085】
【表3】

【0086】
また、後掲の表9に、実施例3における各条件式(1)〜(9)に対応する数値を示す。
【0087】
また、図19は実施例3に係る投影用ズームレンズの広角端(WIDE)、中間位置(MIDDLE)および望遠端(TELE)における、諸収差(球面収差、非点収差、ディストーションおよび倍率色収差)を示す収差図である。
【0088】
この図19および上記表3から明らかなように、実施例3の投影用ズームレンズによれば、ズーム領域の全体に亘って良好な収差補正がなされ、適切なバックフォーカス量と縮小側での良好なテレセントリック性とが達成され、かつ明るさ、コンパクト性、画角の広さ、およびズーム比の大きさという各性能が最良のバランスとして発揮され得る。特に、ズーム領域の全体に亘ってFno.が2.50と明るさを一定とすることができる。
【0089】
また、広角端での半画角が26.1°と広角ながらも、ズーム比は1.550と大きく設定されているので、投影距離が比較的短い映画館用として好適であり、かつ投影距離の変化にも幅広く対応し得るものとなっている。
【0090】
<実施例4>
実施例4に係る投影用ズームレンズの概略構成を図7,8に示す。図7は実施例4に係る投影用ズームレンズの広角端におけるレンズ構成図を示すものであり、図8は実施例4に係る投影用ズームレンズの変倍操作に応じ、広角端(WIDE)、中間位置(MIDDLE)および望遠端(TELE)における、各レンズ群の移動位置を示すものである。
【0091】
この実施例4に係る投影用ズームレンズは、図7に示すように、基本的に実施例1のものと類似した構成とされているが、第1レンズ群Gが4枚の負レンズ(拡大側に凸面を向けた負のメニスカスレンズからなる第2レンズL、縮小側に凹面を向けた平凹レンズからなる第3レンズL、両凹レンズからなる第4レンズL、および拡大側に凸面を向けた負のメニスカスレンズからなる第5レンズL)を備えてなる点と、第2レンズ群Gが3枚の正レンズ(縮小側に凸面を向けた正のメニスカスレンズからなる第5レンズLおよび第6レンズLと、拡大側に凸面を向けた正のメニスカスレンズからなる第7レンズL)を備えてなる点と、第4レンズ群Gにおいて、最も縮小側に位置するレンズ(第11レンズL10)が縮小側に凸面を向けた負のメニスカスレンズからなる点とにおいて異なっている。
【0092】
この実施例4における広角端から望遠端までの全系の焦点距離f、バックフォーカスBf(空気換算距離)、Fno.を表4の上段に示す。
【0093】
また、各レンズ面の曲率半径R、各レンズの中心厚および各レンズ間の空気間隔D、各レンズのd線における屈折率Ndおよびアッベ数νdを表4の中段に示す。
【0094】
さらに表4の下段に、広角端(WIDE:ズーム比1.000)、中間位置(MIDDLE:ズーム比1.301)および望遠端(TELE:ズーム比1.550)における第1レンズ群Gと第2レンズ群Gの距離D10(可変1)、第2レンズ群Gと第3レンズ群Gの距離D17(可変2)、第3レンズ群Gと第4レンズ群Gの距離D19(可変3)、第4レンズ群Gと第5レンズ群Gの距離D25(可変4)および第5レンズ群Gと第6レンズ群Gの距離D27(可変5)を示す。
【0095】
【表4】

【0096】
また、後掲の表9に、実施例4における各条件式(1)〜(9)に対応する数値を示す。
【0097】
また、図20は実施例4に係る投影用ズームレンズの広角端(WIDE)、中間位置(MIDDLE)および望遠端(TELE)における、諸収差(球面収差、非点収差、ディストーションおよび倍率色収差)を示す収差図である。
【0098】
この図20および上記表4から明らかなように、実施例4の投影用ズームレンズによれば、ズーム領域の全体に亘って良好な収差補正がなされ、適切なバックフォーカス量と縮小側での良好なテレセントリック性とが達成され、かつ明るさ、コンパクト性、画角の広さ、およびズーム比の大きさという各性能が最良のバランスとして発揮され得る。特に、ズーム領域の全体に亘ってFno.が2.50と明るさを一定とすることができる。
【0099】
また、広角端での半画角が28.1°と広角ながらも、ズーム比は1.550と大きく設定されているので、投影距離が比較的短い映画館用として好適であり、かつ投影距離の変化にも幅広く対応し得るものとなっている。
【0100】
<実施例5>
実施例5に係る投影用ズームレンズの概略構成を図9,10に示す。図9は実施例5に係る投影用ズームレンズの広角端におけるレンズ構成図を示すものであり、図10は実施例5に係る投影用ズームレンズの変倍操作に応じ、広角端(WIDE)、中間位置(MIDDLE)および望遠端(TELE)における、各レンズ群の移動位置を示すものである。
【0101】
この実施例5に係る投影用ズームレンズは、図9に示すように、基本的に実施例1のものと類似した構成とされている。
【0102】
この実施例5における広角端から望遠端までの全系の焦点距離f、バックフォーカスBf(空気換算距離)、Fno.を表5の上段に示す。
また、各レンズ面の曲率半径R、各レンズの中心厚および各レンズ間の空気間隔D、各レンズのd線における屈折率Ndおよびアッベ数νdを表5の中段に示す。
【0103】
さらに表5の下段に、広角端(WIDE:ズーム比1.000)、中間位置(MIDDLE:ズーム比1.286)および望遠端(TELE:ズーム比1.520)における第1レンズ群Gと第2レンズ群Gの距離D(可変1)、第2レンズ群Gと第3レンズ群Gの距離D13(可変2)、第3レンズ群Gと第4レンズ群Gの距離D15(可変3)、第4レンズ群Gと第5レンズ群Gの距離D21(可変4)および第5レンズ群Gと第6レンズ群Gの距離D23(可変5)を示す。
【0104】
【表5】

【0105】
また、後掲の表9に、実施例5における各条件式(1)〜(9)に対応する数値を示す。
【0106】
また、図21は実施例5に係る投影用ズームレンズの広角端(WIDE)、中間位置(MIDDLE)および望遠端(TELE)における、諸収差(球面収差、非点収差、ディストーションおよび倍率色収差)を示す収差図である。
【0107】
この図21および上記表5から明らかなように、実施例5の投影用ズームレンズによれば、ズーム領域の全体に亘って良好な収差補正がなされ、適切なバックフォーカス量と縮小側での良好なテレセントリック性とが達成され、かつ明るさ、コンパクト性、画角の広さ、およびズーム比の大きさという各性能が最良のバランスとして発揮され得る。特に、ズーム領域の全体に亘ってFno.が2.50と明るさを一定とすることができる。
【0108】
また、広角端での半画角が27.9°と広角ながらも、ズーム比は1.520と大きく設定されているので、投影距離が比較的短い映画館用として好適であり、かつ投影距離の変化にも幅広く対応し得るものとなっている。
【0109】
<実施例6>
実施例6に係る投影用ズームレンズの概略構成を図11,12に示す。図11は実施例6に係る投影用ズームレンズの広角端におけるレンズ構成図を示すものであり、図12は実施例6に係る投影用ズームレンズの変倍操作に応じ、広角端(WIDE)、中間位置(MIDDLE)および望遠端(TELE)における、各レンズ群の移動位置を示すものである。
【0110】
この実施例6に係る投影用ズームレンズは、図11に示すように、基本的に実施例1のものと類似した構成とされている。
【0111】
この実施例6における広角端から望遠端までの全系の焦点距離f、バックフォーカスBf(空気換算距離)、Fno.を表6の上段に示す。
【0112】
また、各レンズ面の曲率半径R、各レンズの中心厚および各レンズ間の空気間隔D、各レンズのd線における屈折率Ndおよびアッベ数νdを表6の中段に示す。
【0113】
さらに表6の下段に、広角端(WIDE:ズーム比1.000)、中間位置(MIDDLE:ズーム比1.286)および望遠端(TELE:ズーム比1.520)における第1レンズ群Gと第2レンズ群Gの距離D(可変1)、第2レンズ群Gと第3レンズ群Gの距離D13(可変2)、第3レンズ群Gと第4レンズ群Gの距離D15(可変3)、第4レンズ群Gと第5レンズ群Gの距離D21(可変4)および第5レンズ群Gと第6レンズ群Gの距離D23(可変5)を示す。
【0114】
【表6】

【0115】
また、後掲の表9に、実施例6における各条件式(1)〜(9)に対応する数値を示す。
【0116】
また、図22は実施例6に係る投影用ズームレンズの広角端(WIDE)、中間位置(MIDDLE)および望遠端(TELE)における、諸収差(球面収差、非点収差、ディストーションおよび倍率色収差)を示す収差図である。
【0117】
この図22および上記表6から明らかなように、実施例6の投影用ズームレンズによれば、ズーム領域の全体に亘って良好な収差補正がなされ、適切なバックフォーカス量と縮小側での良好なテレセントリック性とが達成され、かつ明るさ、コンパクト性、画角の広さ、およびズーム比の大きさという各性能が最良のバランスとして発揮され得る。特に、ズーム領域の全体に亘ってFno.が2.50と明るさを一定とすることができる。
【0118】
また、広角端での半画角が27.8°と広角ながらも、ズーム比は1.520と大きく設定されているので、投影距離が比較的短い映画館用として好適であり、かつ投影距離の変化にも幅広く対応し得るものとなっている。
【0119】
<実施例7>
実施例7に係る投影用ズームレンズの概略構成を図13,14に示す。図13は実施例7に係る投影用ズームレンズの広角端におけるレンズ構成図を示すものであり、図14は実施例7に係る投影用ズームレンズの変倍操作に応じ、広角端(WIDE)、中間位置(MIDDLE)および望遠端(TELE)における、各レンズ群の移動位置を示すものである。
【0120】
この実施例7に係る投影用ズームレンズは、図13に示すように、基本的に実施例1のものと類似した構成とされている。
【0121】
この実施例7における広角端から望遠端までの全系の焦点距離f、バックフォーカスBf(空気換算距離)、Fno.を表7の上段に示す。
また、各レンズ面の曲率半径R、各レンズの中心厚および各レンズ間の空気間隔D、各レンズのd線における屈折率Ndおよびアッベ数νdを表7の中段に示す。
【0122】
さらに表7の下段に、広角端(WIDE:ズーム比1.000)、中間位置(MIDDLE:ズーム比1.286)および望遠端(TELE:ズーム比1.520)における第1レンズ群Gと第2レンズ群Gの距離D(可変1)、第2レンズ群Gと第3レンズ群Gの距離D13(可変2)、第3レンズ群Gと第4レンズ群Gの距離D15(可変3)、第4レンズ群Gと第5レンズ群Gの距離D21(可変4)および第5レンズ群Gと第6レンズ群Gの距離D23(可変5)を示す。
【0123】
【表7】

【0124】
また、後掲の表9に、実施例7における各条件式(1)〜(9)に対応する数値を示す。
【0125】
また、図23は実施例7に係る投影用ズームレンズの広角端(WIDE)、中間位置(MIDDLE)および望遠端(TELE)における、諸収差(球面収差、非点収差、ディストーションおよび倍率色収差)を示す収差図である。
【0126】
この図23および上記表7から明らかなように、実施例7の投影用ズームレンズによれば、ズーム領域の全体に亘って良好な収差補正がなされ、適切なバックフォーカス量と縮小側での良好なテレセントリック性とが達成され、かつ明るさ、コンパクト性、画角の広さ、およびズーム比の大きさという各性能が最良のバランスとして発揮され得る。特に、ズーム領域の全体に亘ってFno.が2.50と明るさを一定とすることができる。
【0127】
また、広角端での半画角が27.7°と広角ながらも、ズーム比は1.520と大きく設定されているので、投影距離が比較的短い映画館用として好適であり、かつ投影距離の変化にも幅広く対応し得るものとなっている。
【0128】
<実施例8>
実施例8に係る投影用ズームレンズの概略構成を図15,16に示す。図15は実施例8に係る投影用ズームレンズの広角端におけるレンズ構成図を示すものであり、図16は実施例8に係る投影用ズームレンズの変倍操作に応じ、広角端(WIDE)、中間位置(MIDDLE)および望遠端(TELE)における、各レンズ群の移動位置を示すものである。
【0129】
この実施例8に係る投影用ズームレンズは、図15に示すように、基本的に実施例1のものと類似した構成とされているが、第1レンズ群Gにおいて、第1レンズLが両凸レンズからなる点において異なっている。
【0130】
この実施例8における広角端から望遠端までの全系の焦点距離f、バックフォーカスBf(空気換算距離)、Fno.を表8の上段に示す。
【0131】
また、各レンズ面の曲率半径R、各レンズの中心厚および各レンズ間の空気間隔D、各レンズのd線における屈折率Ndおよびアッベ数νdを表8の中段に示す。
【0132】
さらに表8の下段に、広角端(WIDE:ズーム比1.000)、中間位置(MIDDLE:ズーム比1.224)および望遠端(TELE:ズーム比1.400)における第1レンズ群Gと第2レンズ群Gの距離D(可変1)、第2レンズ群Gと第3レンズ群Gの距離D13(可変2)、第3レンズ群Gと第4レンズ群Gの距離D15(可変3)、第4レンズ群Gと第5レンズ群Gの距離D21(可変4)および第5レンズ群Gと第6レンズ群Gの距離D23(可変5)を示す。
【0133】
【表8】

【0134】
また、後掲の表9に、実施例8における各条件式(1)〜(9)に対応する数値を示す。
【0135】
また、図24は実施例8に係る投影用ズームレンズの広角端(WIDE)、中間位置(MIDDLE)および望遠端(TELE)における、諸収差(球面収差、非点収差、ディストーションおよび倍率色収差)を示す収差図である。
【0136】
この図24および上記表8から明らかなように、実施例8の投影用ズームレンズによれば、ズーム領域の全体に亘って良好な収差補正がなされ、適切なバックフォーカス量と縮小側での良好なテレセントリック性とが達成され、かつ明るさ、コンパクト性、画角の広さ、およびズーム比の大きさという各性能が最良のバランスとして発揮され得る。特に、ズーム領域の全体に亘ってFno.が2.50と明るさを一定とすることができる。
【0137】
また、広角端での半画角が28.0°と広角ながらも、ズーム比は1.400と大きく設定されているので、投影距離が比較的短い映画館用として好適であり、かつ投影距離の変化にも幅広く対応し得るものとなっている。
【0138】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0139】
【図1】実施例1に係る投影用ズームレンズのレンズ構成図
【図2】実施例1に係る投影用ズームレンズの広角端(WIDE)、中間位置(MIDDLE)および望遠端(TELE)における、各レンズ群の移動位置を示す図
【図3】実施例2に係る投影用ズームレンズのレンズ構成図
【図4】実施例2に係る投影用ズームレンズの広角端(WIDE)、中間位置(MIDDLE)および望遠端(TELE)における、各レンズ群の移動位置を示す図
【図5】実施例3に係る投影用ズームレンズのレンズ構成図
【図6】実施例3に係る投影用ズームレンズの広角端(WIDE)、中間位置(MIDDLE)および望遠端(TELE)における、各レンズ群の移動位置を示す図
【図7】実施例4に係る投影用ズームレンズのレンズ構成図
【図8】実施例4に係る投影用ズームレンズの広角端(WIDE)、中間位置(MIDDLE)および望遠端(TELE)における、各レンズ群の移動位置を示す図
【図9】実施例5に係る投影用ズームレンズのレンズ構成図
【図10】実施例5に係る投影用ズームレンズの広角端(WIDE)、中間位置(MIDDLE)および望遠端(TELE)における、各レンズ群の移動位置を示す図
【図11】実施例6に係る投影用ズームレンズのレンズ構成図
【図12】実施例6に係る投影用ズームレンズの広角端(WIDE)、中間位置(MIDDLE)および望遠端(TELE)における、各レンズ群の移動位置を示す図
【図13】実施例7に係る投影用ズームレンズのレンズ構成図
【図14】実施例7に係る投影用ズームレンズの広角端(WIDE)、中間位置(MIDDLE)および望遠端(TELE)における、各レンズ群の移動位置を示す図
【図15】実施例8に係る投影用ズームレンズのレンズ構成図
【図16】実施例8に係る投影用ズームレンズの広角端(WIDE)、中間位置(MIDDLE)および望遠端(TELE)における、各レンズ群の移動位置を示す図
【図17】実施例1に係る投影用ズームレンズの各収差図
【図18】実施例2に係る投影用ズームレンズの各収差図
【図19】実施例3に係る投影用ズームレンズの各収差図
【図20】実施例4に係る投影用ズームレンズの各収差図
【図21】実施例5に係る投影用ズームレンズの各収差図
【図22】実施例6に係る投影用ズームレンズの各収差図
【図23】実施例7に係る投影用ズームレンズの各収差図
【図24】実施例8に係る投影用ズームレンズの各収差図
【図25】本実施形態に係る投写型表示装置の一部を示す概略図
【図26】本実施形態に係る他の投写型表示装置の一部を示す概略図
【符号の説明】
【0140】
〜G レンズ群
〜L18 レンズ
〜R40 レンズ面等の曲率半径
〜D39 レンズ面等の間隔(レンズ厚)
X 光軸
1 画像表示面
2 ガラスブロック
3 絞り
4 開口
10,20 照明光学系
11a〜11c,21a〜21c 反射型液晶表示パネル
12,13 ダイクロイックミラー
14 クロスダイクロイックプリズム
15a〜15c,25 偏光ビームスプリッタ
18 全反射ミラー
19、29 投影用ズームレンズ
24a〜24c TIRプリズム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡大側より順に、変倍の際に固定でフォーカシングを行う負の屈折力を有する第1レンズ群と、変倍の際に移動する正の屈折力を有する第2レンズ群と、変倍の際に移動する負の屈折力を有する第3レンズ群と、変倍の際に移動する正の屈折力を有する第4レンズ群と、変倍の際に移動する正の屈折力を有する第5レンズ群と、変倍の際に固定で正の屈折力を有し最も拡大側に絞りを備えた第6レンズ群とを配列してなり、
変倍の全領域において、開口数が一定となるように設定され、
全てのレンズが単レンズにより構成され、
縮小側がテレセントリックとなるように構成され、
下記条件式(1)を満足することを特徴とする投影用ズームレンズ。
2.5< Bf/f (1)
ただし、
Bf:全系のバックフォーカス(空気換算距離)
f:広角端における全系の焦点距離
【請求項2】
前記第2レンズ群は、最も拡大側のレンズが、拡大側に凹面を向けた正メニスカスレンズであり、最も縮小側のレンズが、縮小側の面に比して曲率の大きい凸面を拡大側に向けた正レンズであり、
下記条件式(2)を満足することを特徴とする請求項1記載の投影用ズームレンズ。
3.5<f2/f<4.2 (2)
ただし、
f2:前記第2レンズ群の焦点距離
【請求項3】
前記第2レンズ群は正レンズのみにより構成されていることを特徴とする請求項2記載の投影用ズームレンズ。
【請求項4】
前記第2レンズ群は、最も縮小側に開口が配されてなることを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか1項記載の投影用ズームレンズ。
【請求項5】
前記第5レンズ群は1枚の両凸レンズから構成され、
下記条件式(3)を満足することを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項記載の投影用ズームレンズ。
70<νdG5 (3)
ただし、
νdG5:前記第5レンズ群の前記両凸レンズのd線におけるアッベ数
【請求項6】
前記第6レンズ群は、拡大側より順に、拡大側に凸面を向けた負メニスカスレンズ、拡大側に凹面を向けた負レンズ、縮小側に凸面を向けた正レンズ、および少なくとも1枚の正レンズを配列してなり、
以下の条件式(4)を満足することを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項記載の投影用ズームレンズ。
65<νdG6p (4)
ただし、
νdG6p:前記第6レンズ群中の各正レンズのd線におけるアッベ数
【請求項7】
下記条件式(5)、(6)を満足することを特徴とする請求項6記載の投影用ズームレンズ。
40<νdG6n (5)
1.8<NdG6n (6)
ただし、
νdG6n:前記第6レンズ群の前記拡大側に凹面を向けた負レンズのd線におけ
るアッベ数
NdG6n:前記第6レンズ群の前記拡大側に凹面を向けた負レンズのd線におけ
る屈折率
【請求項8】
下記条件式(7)を満足することを特徴とする請求項6または7記載の投影用ズームレンズ。
2.5<f6/f<3.0 (7)
ただし、
f6:前記第6レンズ群の焦点距離
【請求項9】
下記条件式(8)を満足することを特徴とする請求項6〜8のうちいずれか1項記載の投影用ズームレンズ。
2.1<DG6/f<2.6 (8)
ただし、
G6:前記第6レンズ群の前記絞りから該第6レンズ群の最も縮小側のレンズ面
までの距離
【請求項10】
下記条件式(9)を満足することを特徴とする請求項6〜9のうちいずれか1項記載の投影用ズームレンズ。
3.3<|f6/f6|<5.0 (9)
ただし、
f6:前記第6レンズ群の最も拡大側のレンズ面から該第6レンズ群の拡大側の
焦点までの距離
f6:前記第6レンズ群の焦点距離
【請求項11】
光源、ライトバルブ、および該ライトバルブにより変調された光による光学像をスクリーン上に投影する投影用レンズとして請求項1〜10のうちいずれか1項記載の投影用ズームレンズを備えたことを特徴とする投写型表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2010−152277(P2010−152277A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333111(P2008−333111)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】