抗体をスクリーニングするための方法
本発明は、抗体スクリーニングアッセイに用いるための抗体コンジュゲートを作製するための方法及び特許請求の範囲に記載する方法により生成される抗体コンジュゲートを提供する。一局面において、上記方法は、第1及び第2の抗体含有試料を供給するステップであって、第1の試料に存在する抗体の実質的にすべてが同じ配列のものであり、かつ第2の試料に存在する抗体の実質的にすべてが同じ配列のものであるという条件で、第1及び第2の抗体含有試料が抗体量及び抗体配列に関して様々である、ステップ;ならびに抗体を固体支持体に固定化して、固定化抗体を含む第1及び第2の試料を供給するステップなどを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2010年3月2日に出願された米国仮出願第61/309,725号、および2010年4月13日に出願された米国仮出願第61/323,433号(これらの各々は、全ての目的のために、その全体が参考として援用される)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
癌細胞に対する抗体薬物コンジュゲート(ADC)の活性は、結合親和力、インターナリゼーションの速度、細胞内輸送及び標的細胞集団内の効率的な薬物放出などの多数の因子による影響を受け得る。したがって、薬物送達のための理想的な抗体の特性は、コンジュゲートしていない(unconjugated)治療用抗体の特性と必ずしも同じではない。さらに、最適なADCをスクリーニングするための、二次抗体の使用を伴う間接的アッセイは、誤認を招き得る。その理由は、細胞表面上の架橋が下流事象の変化をもたらす可能性があり、二次抗体の親和力がアッセイのダイナミックレンジに制限を与えるからである。ADC療法用の新規な抗原に対する候補抗体を探索する場合には、ADCの形の大規模な抗体パネルをスクリーニングし、それらの細胞傷害性活性を評価するのが、これらの結果が細胞傷害性活性に影響を及ぼし得るパラメーターの直接的な測定値となるので、最も望ましい。しかし、抗体発見キャンペーンによくあるようにマイクログラム量の多数の抗体を取り扱う場合、従来のコンジュゲーション法による収率は限られている。ADCとして使用するための、抗体をスクリーニングする改善された方法についての必要性がある。本発明は、この必要性及び他の必要性に対応するものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、抗体スクリーニングアッセイに用いるための抗体コンジュゲートを作製するための方法及び特許請求の範囲に記載する方法により生成される抗体コンジュゲートを提供する。
【0004】
いくつかの実施形態において、上記方法は、第1及び第2の抗体含有試料を供給するステップであって、第1の試料に存在する抗体の実質的にすべてが同じ配列のものであり、かつ第2の試料に存在する抗体の実質的にすべてが同じ配列のものであるという条件で、第1及び第2の抗体含有試料が抗体量及び抗体配列に関して様々である、ステップと;抗体を固体支持体に固定化して、固定化抗体を含む第1及び第2の試料を供給するステップと;固定化抗体の還元性ジスルフィド結合を完全に還元して、還元した固定化抗体を含む第1の試料及び還元した固定化抗体を含む第2の試料を供給するステップであって、還元が還元性ジスルフィド結合に対して選択的である、ステップと;還元した固定化抗体を、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び必要に応じて検出剤と反応させて、固定化抗体コンジュゲートを供給するステップであって、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤が反応性チオールと選択的に反応し、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤がモル過剰(molar excess)で供給され、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤の比率が、所望のレベルの薬物負荷を達成するように選択される、ステップと;抗体コンジュゲートを溶出して、遊離抗体コンジュゲートの第1の試料及び遊離抗体コンジュゲートの第2の試料を供給するステップとを含む。
【0005】
いくつかの実施形態において、上記方法は、複数のハイブリドーマクローンから産生された定量化されていない抗体を含む未精製ハイブリドーマ上清の複数の試料を供給するステップであって、ここで、複数の試料の大多数において、各試料に存在する抗体の実質的にすべてが単一ハイブリドーマクローンからのものであるという条件で、抗体量及び抗体配列に関して様々である、ステップと;定量化されていない抗体を固体支持体上に固定して、固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップと;固定化抗体の鎖間ジスルフィドを完全に還元して、還元した固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップと;還元した固定化抗体を、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び検出剤と反応させて、固定化抗体コンジュゲートを供給するステップであって、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び検出剤が反応性チオールと選択的に反応し、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤がモル過剰で供給され、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び検出剤の比率が、所望のレベルの薬物負荷を達成するように選択される、ステップと;固体支持体から抗体コンジュゲートを溶出して、複数の抗体コンジュゲート組成物を供給するステップとを含む。
【0006】
いくつかの実施形態において、上記方法は、抗体量及び抗体配列に関して様々である、複数の抗体含有試料を、複数の抗体含有試料の大多数において、単一試料に存在する抗体の実質的にすべてが同じ配列のものであるという条件で、供給するステップと;抗体を固体支持体上に固定して、固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップと;固定化抗体の還元性ジスルフィド結合を完全に還元して、還元した固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップであって、還元が還元性ジスルフィド結合に対して選択的である、ステップと;還元した固定化抗体を、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び必要に応じて検出剤と反応させて、固定化抗体コンジュゲートを含む複数の試料を供給するステップであって、ここで、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤が反応性チオールと選択的に反応し、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤がモル過剰で供給され、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤の比率が、所望のレベルの薬物負荷を達成するように選択される、ステップと;抗体コンジュゲートを溶出して、遊離抗体コンジュゲートを含む複数の抗体コンジュゲート組成物を供給するステップとを含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、上記方法は、抗体量及び抗体配列に関して様々である、複数の抗体含有試料を、複数の抗体含有試料の大多数において、単一試料に存在する抗体の実質的にすべてが同じ配列のものであるという条件で、供給するステップと;抗体を固体支持体上に固定して、固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップと;固定化抗体の還元性ジスルフィド結合を完全に還元して、還元した固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップであって、ここで、還元が還元性ジスルフィド結合に対して選択的である、ステップと;還元した固定化抗体をキャッピング剤及び検出剤と反応させて、固定化抗体コンジュゲートを含む複数の試料を供給するステップであって、キャッピング剤及び検出剤が反応性チオールと選択的に反応し、キャッピング剤及び検出剤がモル過剰で供給され、キャッピング剤及び検出剤の比率が、所望のレベルの検出剤及び/又はキャッピング剤負荷を達成するように選択される、ステップと;抗体コンジュゲートを溶出して、遊離抗体コンジュゲートを含む複数の抗体コンジュゲート組成物を供給するステップとを含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、上記方法は、抗体量及び抗体配列に関して様々である、複数の抗体含有試料を、複数の抗体含有試料の大多数において、単一試料に存在する抗体の実質的にすべてが同じ配列のものであるという条件で、供給するステップと;抗体を固体支持体上に固定して、固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップと;固定化抗体の還元性ジスルフィド結合を完全に還元して、還元した固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップであって、ここで、還元が還元性ジスルフィド結合に対して選択的である、ステップと;還元した固定化抗体を、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び必要に応じて検出剤と反応させて、固定化抗体コンジュゲートを含む複数の試料を供給するステップであって、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤が反応性チオールと選択的に反応し、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤がモル過剰で供給され、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤の比率が、所望のレベルの薬物負荷を達成するように選択される、ステップと;抗体コンジュゲートを溶出して、遊離抗体コンジュゲートを含む複数の抗体コンジュゲート組成物を供給するステップと;抗体コンジュゲートの活性についてアッセイするステップと;アッセイの結果に基づいて抗体を選択するステップとを含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、上記方法は、抗体量及び抗体配列に関して様々である、複数の抗体含有試料を、複数の抗体含有試料の大多数において、単一試料に存在する抗体の実質的にすべてが同じ配列のものであるという条件で、供給するステップと;抗体を固体支持体上に固定して、固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップと;固定化抗体の還元性ジスルフィド結合を完全に還元して、還元した固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップであって、ここで、還元が還元性ジスルフィド結合に対して選択的である、ステップと;還元した固定化抗体をキャッピング剤及び検出剤と反応させて、固定化抗体コンジュゲートを含む複数の試料を供給するステップであって、ここで、キャッピング剤及び検出剤が反応性チオールと選択的に反応し、キャッピング剤及び検出剤がモル過剰で供給され、キャッピング剤及び検出剤の比率が、所望のレベルの検出剤及び/又はキャッピング剤負荷を達成するように選択される、ステップと;抗体コンジュゲートを溶出して、遊離抗体コンジュゲートを含む複数の抗体コンジュゲート組成物を供給するステップと;抗体コンジュゲートの活性についてアッセイするステップと;アッセイの結果に基づいて抗体を選択するステップとを含む。
【0010】
本発明のこれら及び他の態様は、以下の詳細な説明、特定の実施形態の非限定的な実施例及び添付図を参照することによってより十分に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、非コンジュゲート形のマウスIgG1(破線)、完全に還元され、溶液中でmcMMAFとコンジュゲートしたマウスIgG1(太線)、及びプロテインGセファロースに固定化されながら、完全に還元され、mcMMAFとコンジュゲートしたマウスIgG1(細線)の疎水性相互作用クロマトグラムのオーバーレイを示す図である。
【図2】図2は、プロテインGに固定化され、過剰なトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンで完全に還元されたマウスIgG1への選ばれた(select)薬物負荷を達成するために必要なmcMMAF及びN−エチルマレイミドを含む、具体例としての反応混合物中のmcMMAFのモル分率を示す図である。
【図3】図3は、抗体の重鎖及び軽鎖上のmcMMAF及びNEMの分布を示す、抗体薬物コンジュゲートの試料PLRPクロマトグラムを示す図である。薬物の疎水性により、より多くの薬物が付いた種について、より遅い保持時間がもたらされる。それぞれの種について、薬物の数が示されている。
【図4】図4は、蛍光団(fluorophore)負荷の関数としての薬物−Alexa Fluor(登録商標)647コンジュゲートの蛍光出力を示す図である。抗体当たりの蛍光団の数をx軸にプロットし、蛍光をy軸にプロットする。負荷が抗体当たり約2.5〜3であるときに蛍光が最大値に急激に増加し、さらに負荷を増やすと蛍光は減少する。
【図5】図5は、混合蛍光団−mcMMAF抗体コンジュゲートにおけるAlexa Fluor(登録商標)647負荷レベルの関数としてプロットした、650nmにおける吸光度と280nmにおける吸光度の比を示す図である。
【図6】図6は、65個の試料にわたるAlexa Fluor(登録商標)647負荷の一貫性を示す図である。蛍光団負荷は、各抗体コンジュゲート試料の650nm/280nm吸光度比を得て、図5を参照して吸光度比に関連する蛍光団負荷を求めることによって決定した。
【図7】図7は、mcMMAF−AF647−NEM混合コンジュゲートのPLRPクロマトグラムを示す図である。抗体は、5つの還元性ジスルフィドを有する。この図は、2つの分析波長のオーバーレイを示すものである。細線により表された280nmの波長は、タンパク質を含むピークのすべてを検出し、太線により表された620nmの波長は、少なくとも1つのAlexa Fluor(登録商標)647を含むピークのすべてを検出する。
【図8】図8は、34個の試料にわたるmcMMAF負荷の一貫性を示す図である。
【図9】図9は、mcMMAF−AF647−NEM混合コンジュゲートのPLRPクロマトグラムを示す図である。抗体は、6つの還元性ジスルフィドを有する(例えば、マウスIgG2b)。280nmの波長は、細線により表され、620nmの波長は、太線により表されている。
【図10】図10は、ADCのプレートベースの固相合成の具体例としてのスキームを示す図である。
【図11】図11は、所望の特性を有するADCの発見への、固相コンジュゲーション技術の応用の具体例としてのスキームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
「抗体」という用語は、本明細書で用いているように、(a)免疫グロブリンポリペプチド及び免疫グロブリンポリペプチドの免疫学的に活性な部分、すなわち、免疫グロブリンファミリーのポリペプチド若しくはそのフラグメント又は(b)標的抗原に免疫特異的に結合するそのような免疫グロブリンポリペプチド若しくはフラグメントの保存的に置換された誘導体を意味する。本発明に用いる抗体(抗体フラグメントを含む)は、(i)標的抗原に免疫特異的に結合する抗原結合部位、(ii)少なくとも1つの還元性ジスルフィド結合(例えば、鎖間ジスルフィド結合)及び(iii)固相に可逆的に結合することができるドメインを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、全長Fc領域を含み、固相への結合は、Fc領域を介してなされる。いくつかの実施形態において、抗体は、抗体の1つ以上のFcドメインを含み、固相への結合は、1つ以上のFcドメインを介してなされる。いくつかの実施形態において、固相に可逆的に結合することができるドメインは、Fc領域ではなく、例えば、アフィニティタグなどの抗体上の工学技術で作製されたドメインである。抗体という用語は、非フコシル化又は低いコアフコシル化を有する抗体を含む。抗体は、例えば、Harlow & Lane、Antibodies: A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1988年)に一般的に記載されている。完全な抗体構造の基本的単位は、4つのポリペプチド、すなわち、非共有結合及びジスルフィド結合の両方により結合した2つの同一の低分子量(「軽」)鎖及び2つの同一の高分子量(「重」)鎖の複合体である。抗体のクラス及びサブクラスは、そのイソタイプである。抗体は、例えば、それらの天然の四量体(2軽鎖及び2重鎖)であってよく、公知のイソタイプIgG、IgA、IgM、IgD及びIgE並びにそれらのサブタイプ、例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4並びにマウスIgG1、IgG2a、IgG2b及びIgG3のいずれかであってよい。抗体は、好ましくはモノクローナルである。
【0013】
抗体と関連して、「還元性ジスルフィド結合」という用語は、(i)抗体が固体支持体に可逆的に結合している間に還元性であり、(ii)温和な還元条件下で還元性であるジスルフィド結合を意味する。温和な還元条件は、抗体のいかなる実質的な変性をも一般的に引き起こさず、抗体の抗原結合親和力に一般的に影響を及ぼさない条件である。温和な還元条件の例は、弱還元剤によるほぼ中性pHにおける水性条件下での還元である。弱還元剤の例は、TCEP(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン)及びDTT(ジチオトレイトール)である。したがって、温和な還元条件の1例は、約5℃〜約37℃の温度及び約5〜8のpHにおける過剰なTCEP又はDTT中での還元である。有機共溶媒は実質的にタンパク質を変性し得るので、有機共溶媒を変性及び/又はその後のコンジュゲーションステップに用いるべきである場合、それは、抗体の実質的な変性が起こらないような最小限の量の共溶媒(例えば、20%未満、好ましくは15%、10%又は5%未満)であるべきである。一般的に、還元性ジスルフィド結合は、溶媒が到達できる、すなわち、抗体の折りたたみドメイン内に埋もれないものである。(当業者は、本明細書で述べる方法による試料中の抗体の集団の還元性ジスルフィド結合を還元する場合、不可逆的に変性した状態になるより少量の抗体(例えば、一般的に10%未満、5%又は3%未満)が存在し得ることを理解する。)一般的に、抗体において、ジスルフィド結合は、2つのシステイン残基のチオール(−−SH)側基の酸化の結果として存在する。これらの残基は、異なるポリペプチド鎖(鎖間)又は同じポリペプチド鎖(鎖内)に位置し得る。酸化の結果として、ジスルフィド結合(−−S−−S−−)が元のシステイン残基のベータ炭素間に形成される。還元剤によるジスルフィド結合の処理により、ジスルフィド結合の還元的開裂が引き起こされて、2つの遊離チオール基、すなわち、反応性チオールが生ずる。いくつかの実施形態において、還元性ジスルフィド結合は、天然に存在する。いくつかの態様において、「還元性ジスルフィド結合」という用語は、抗体の天然に存在する鎖間ジスルフィド結合を意味する。いくつかの実施形態において、スルフヒドリル基(単数又は複数)は、抗体に化学的に導入される。スルフヒドリル基を導入する適切な方法は、組換えDNA技術を含む。スルフヒドリル基は、抗体に、例えば、抗体内又はカルボキシ末端に導入することができる。本明細書で述べる方法が、得られる抗体コンジュゲートの抗原結合活性に支障を来さないことが好ましいので、導入されるスルフヒドリル基が抗体の抗原結合部位以外の部位に導入されることが好ましい。好ましくは、導入されるスルフヒドリル基が重又は軽鎖可変領域以外の部位、例えば、好ましくは抗体の定常領域に導入される。いくつかの実施形態において、抗体にシステイン残基を工学的技術で作製する。システインのスルフヒドリル基は、本明細書で述べる方法を用いてその後に還元することができるジスルフィド結合を一般的に形成する。
【0014】
融合タンパク質と関連して、「還元性ジスルフィド結合」という用語は、(i)融合タンパク質が固体支持体に可逆的に結合している間に還元性であり、(ii)温和な還元条件下で還元性である、融合タンパク質のジスルフィド結合を意味する。本発明の方法で使用する融合タンパク質については、還元性ジスルフィド結合(単数又は複数)の還元の後にそれが一般的に完全なままであるべきである。温和な還元条件の例は、弱還元剤によるほぼ中性pHにおける水性条件下での還元である。いくつかの好ましい実施形態において、還元性ジスルフィド結合は、融合タンパク質のIgドメインに存在する。いくつかの実施形態において、ジスルフィド結合は、天然に存在し、融合タンパク質のIgドメインの天然に存在する鎖間ジスルフィド結合を意味する。いくつかの実施形態において、スルフヒドリル基(単数又は複数)は、融合タンパク質のIgドメインに化学的に導入される。
【0015】
「モノクローナル抗体」という用語は、真核若しくは原核細胞クローン又はファージクローンを含む単一細胞クローンに由来する抗体を意味し、それが産生される方法を意味しない。したがって、「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術により産生される抗体に限定されない。
【0016】
「Fc領域」という用語は、抗体の定常領域、例えば、CH4ドメインを必要に応じて有するCH1−ヒンジ−CH2−CH3ドメイン、又はそのようなFc領域の保存的に置換された誘導体を意味する。
【0017】
「Fcドメイン」という用語は、抗体の定常領域ドメイン、例えば、CH1、ヒンジ、CH2、CH3若しくはCH4ドメイン、又はそのようなFcドメインの保存的に置換された誘導体を意味する。
【0018】
「抗原」は、抗体が特異的に結合する分子である。
【0019】
「細胞傷害剤」は、細胞に対する細胞傷害性作用及び/又は細胞増殖抑制性作用を有する財を意味する。「細胞傷害性作用」は、標的細胞(単数又は複数)の枯渇、除去及び/又は殺滅を意味する。「細胞増殖抑制性作用」は、細胞増殖の抑制を意味する。
【0020】
抗体と関連する「鎖間ジスルフィド結合」という用語は、抗体の2つの重鎖の間又は重鎖と軽鎖の間のジスルフィド結合を意味する。
【0021】
本明細書で用いているように、「遊離抗体コンジュゲート」は、固体支持体に固定化されていない抗体コンジュゲート、例えば、固体支持体から放出された抗体を意味する。
【0022】
「AFP」という略語は、直後に示す一般式を有するジメチルバリン−バリン−ドライソロイイン−ドラプロイン−フェニルアラニン−p−フェニレンジアミンを意味する。
【0023】
【化1】
「MMAE」という略語は、直後に示す一般式を有するモノメチルアウリスタチンEを意味する。
【0024】
【化2】
「MMAF」という略語は、直後に示す一般式を有するドバリン−バリン−ドライソロイイン(dolaisoleunine)−ドラプロイン−フェニルアラニンを意味する。
【0025】
【化3】
「AEB」という略語は、アウリスタチンEをパラアセチル安息香酸と反応させることによって生成するエステルを意味する。「AEVB」という略語は、アウリスタチンEをベンゾイル吉草酸と反応させることによって生成するエステルを意味する。
【0026】
「薬学的に許容される塩」という語句は、本明細書で用いているように、分子又は高分子の薬学的に許容される有機又は無機塩を意味する。酸付加塩は、アミノ基を用いて生成させることができる。具体例としての塩は、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物の塩、臭化物の塩、ヨウ化物の塩、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩及びパモ酸塩(すなわち、1,1’メチレンビス−(2−ヒドロキシ3−ナフトエート))を含むが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩は、酢酸イオン、コハク酸イオン又は他の対イオンなどの他の分子の包含を伴い得る。対イオンは、親化合物上の電荷を安定化する任意の有機又は無機部分であり得る。さらに、薬学的に許容される塩は、その構造に1超の荷電原子を有し得る。複数の荷電原子が薬学的に許容される塩の一部である例は、複数の対イオンを有し得る。したがって、薬学的に許容される塩は、1つ以上の荷電原子及び/又は1つ以上の対イオンを有し得る。
【0027】
一般的事項
ADCとしての又はコンジュゲートしていない抗体(すなわち、裸の抗体)としてのそれらの能力に基づいて、抗体を直接的にスクリーニングする方法を発明した。試料中に存在する抗体の濃度の影響を受けず、抗体の不均質(heterogeneous)集団の個々の抗体の活性の比較を可能にする、少量の抗体に適用できる標識技術を開発した。
【0028】
スクリーニングアッセイは、所望の特性を有する抗体を同定するのに有用である。抗体は、スクリーニングされる抗体が(i)特定の抗原に免疫特異的に結合する抗原結合部位、(ii)少なくとも1つの還元性ジスルフィド結合(例えば、鎖間ジスルフィド結合)及び(iii)固相に結合することができるドメインを含むという条件で、抗体を生成させるための当技術分野で公知の任意技術により生成させることができる。
【0029】
本発明の1つの態様において、複数の抗体含有試料を提供する。「複数の試料」という語句は、2つ以上の試料を意味する。本明細書に示す方法はハイスループットスクリーニングに理想的に適しているので、本発明の1つの態様において、方法を少なくとも数十個又は少なくとも数百個の試料について同時に実施する。本明細書に示す方法の長所の1つは、抗体含有試料が同じ量の抗体を含み得ないとしても、抗体間の比較を行うことができることである。したがって、1つの態様において、試料は、抗体量に関して、及び抗体配列に関して異なる。例えば、1つの態様において、第1の試料が第1の量の第1の抗体を含み、第2の試料が第2の量の第2の抗体を含む。第1及び第2の量が異なり、第1及び第2の抗体が異なる。同じ抗原を標的とする抗体を比較することが望ましい実施形態において、抗体は、同じ抗原に免疫特異的に結合する。説明の目的のために、「複数の試料は、抗体量及び抗体配列に関して異なる」という語句は、複数の試料における試料のすべてが抗体量及び抗体配列に関して異なることを必要としないが、一方では試料間に特定のレベルの不均一性が存在する。抗体配列の不一致が存在する(例えば、第1の試料が第2の試料と異なる抗体を含む)が、単一試料が1つの抗体を含むこと、すなわち、単一試料に存在する抗体が同じ配列のものであることが好ましい。「単一試料に存在する抗体の実質的にすべてが同じ配列のものである」という語句は、いくつかの試料中に他の抗体によるある程度の夾雑が存在し得るという認識により、単一試料が1つの抗体を含むという選好を反映している。好ましくは、他の抗体によるある程度の夾雑を有するそれらの試料中に、30%未満、好ましくは20%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、4%未満又は3%未満の他の抗体による夾雑が存在する。好ましい実施形態において、複数の抗体含有試料における抗体含有試料の大多数(試料の50%を超える、さらにより好ましくは試料の60%を超える、70%を超える、75%を超える又は80%を超える)が、他の抗体による夾雑を全く有さない又は他の抗体によるより少量の夾雑(例えば、他の抗体による15%未満、好ましくはさらに10%未満又は5%未満の夾雑)を有する1つの抗体を含む。いくつかの好ましい実施形態において、抗体含有試料の大多数は、同じ抗原に免疫特異的に結合する抗体を含む。
【0030】
本方法を用いてスクリーニングする抗体は、任意の抗原を標的とすることができる。具体例としての実施形態において、本方法によりスクリーニングする抗体は、CD19、CD20、CD21、CD22、CD30、CD33、CD38、CD40、CD70、CD74、CD83、CD133、CD138、CD200又はCD276から選択される抗原に免疫特異的に結合する。他の実施形態において、抗体は、BMPR1B、LAT1(SLC7A5)、STEAP1、MUC16、MUC1、巨核球増強因子(MPF)、Napi3b、Sema5b、PSCAhlg、ETBR(エンドセリンB型受容体)、STEAP2、TrpM4、CRIPTO、CD21、CD79a、CD79b、FcRH2、HER2、HER3、HER4、NCA、MDP、IL20Rα、ブレビカン、Ephb2R、ASLG659、PSCA、PSMA、TMPRSS2、TMPRSS4、GEDA、BAFF−R、CXCR5、HLA−DOB、P2X5、CD72、LY64、FCRH1、VEGF、PLAC1、VEGFR1、VEGFR2又はIRTA2に免疫特異的に結合する。他の実施形態において、抗体は、CD2、CD3、CD3E、CD4、CD11、CD11a、CD14、CD16、CD18、CD19、CD23、CD25、CD28、CD29、CD30、CD32、CD40L、CD51、CD52、CD54、CD56、CD70、CD80、CD123、CD133、CD138、CD147、CD227又はCD276に免疫特異的に結合する。他の実施形態において、抗体は、IL−1、IL−1R、IL−2、IL−2R、IL−4、IL−5、IL−6、IL−6R、IL−8、IL−12、IL−15、IL−18又はIL−23に免疫特異的に結合する。他の実施形態において、抗体は、タンパク質の溶質キャリアファミリー(例えば、溶質キャリアファミリー44、メンバー4(SLC44A4遺伝子によりコードされるタンパク質)若しくは溶質キャリアファミリー34、メンバー2(SLC34A2遺伝子によりコードされるタンパク質))からのタンパク質;LIV−1(SLC39A6遺伝子によりコードされるタンパク質);タンパク質のSLAMファミリー(例えば、SLAMファミリーメンバー1、2、3、4、5、6、7、8若しくは9)からのタンパク質;タンパク質のムチンファミリー(例えば、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5、MUC6、MUC7、MUC8、MUC9、MUC10、MUC11、MUC12、MUC13、MUC14、MUC15若しくはMUC16)からのタンパク質;タンパク質のSTEAPファミリー(例えば、STEAP1、STEAP2、STEAP3若しくはSTEAP4)からのタンパク質;腫瘍壊死因子受容体ファミリー(例えば、TNF−RI、TNF−RII、DR1、DR2、DR3、DR4、DR5)からのタンパク質;MNタンパク質;メソセリンタンパク質;タンパク質のSlitrkファミリー(例えば、SLITRK1、SLITRK2、SLITRK3、SLITRK4、SLITRK5若しくはSLITRK6)によりコードされるタンパク質又はGPNMB遺伝子によりコードされるタンパク質に免疫特異的に結合する。
【0031】
抗体含有試料は、多くの異なる方法で生成させることができる。抗体を生成させるための当技術分野で公知の多くの技術がある。例えば、本方法に有用である抗体は、組換え発現技術、ファージディスプレイ技術により、ハイブリドーマから、骨髄腫から、他の抗体発現哺乳類細胞から、および、それらの組合せから生成させることができる。本発明に用いられる抗体は、あらゆる種(例えば、ヒト、マウス、ラット)由来のものであり得、また混合種由来のもの、例えば、キメラであり得る。本発明に用いられる抗体は、全長可変領域又はそのフラグメントを含み得る。
【0032】
様々な哺乳類細胞及び細胞系を用いて抗体を発現させることができる。例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)(例えば、DG44、Dxb11、CHO−K、CHO−K1及びCHO−S)などの哺乳類細胞を用いることができる。いくつかの実施形態において、ヒト細胞系を用いる。適切な骨髄腫細胞系は、SP2/0及びIR983F並びにNamalwaなどのヒト骨髄腫細胞系などである。他の適切な細胞は、ヒト胚腎臓細胞(例えば、HEK293)、サル腎臓細胞(例えば、COS)、ヒト上皮細胞(例えば、HeLa)、PERC6、Wil−2、Jurkat、Vero、Molt−4、BHK及びK6H6などである。他の適切な宿主細胞は、YB2/0細胞などである。
【0033】
生成した抗体が固体支持体に固定化することができ、少なくとも1つの還元性ジスルフィド結合を含むという条件で、あらゆる抗体生成技術を用いて本明細書に記載する抗体含有試料を得ることができる。いくつかの実施形態において、抗体は、当技術分野で公知の方法により生成させ、改変して、本方法に用いるための条件にそれを置く。例えば、ファージディスプレイ又は他の方法により生成させた抗体は、アフィニティタグを含むように改変することができ、且つ/又はFc領域を発現するように再構成する(reformatted)ことができる。抗体を生成させるためのファージディスプレイ技術の概要については、Schmitzら、2000年、Placenta、21巻、Supplement A、S106〜112頁を参照のこと。Lightwoodら、2006年、Journal of Immunological Methods、316巻、133〜143頁も参照のこと。
【0034】
いくつかの態様において、アッセイする抗体は、周知のハイブリドーマ技術を用いて生成させる。例えば、いくつかの実施形態において、宿主細胞は、ハイブリドーマ由来である。ハイブリドーマ技術は、例えば、Harlowら、Antibodies: A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press、2版、1988年);及びHammerlingら、In Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas、563〜681頁(Elsevier、N.Y.、1981年)に一般的に述べられている。抗体は、例えば、H−2Kb−tsA58マウス由来の条件的不死細胞系から生成させた抗体(Pasqualinie及びArap、PNAS、2004年、101巻(1号)、257〜259頁)を含む、ハイブリドーマ細胞系以外の不死又は条件的不死細胞系を用いて生成させることもできる。これらの技術を使用して、完全にげっ歯類、キメラげっ歯類−ヒト又はヒト抗体を生成させることができる。例えば、ハイブリドーマ技術を用いて免疫したトランスジェニックマウスからヒト抗体を産生させる技術の概要については、Lonberg及びHuszar、1995年、Int. Rev. Immunol.、13巻、65〜93頁を参照のこと。
【0035】
さらに、Amgen,Inc.(Thousdand Oaks、CA)及びBMS(Princeton、NJ)などの会社は、上で言及したものと同様な技術を用いて、選択される抗原に対するヒト抗体を得るのに従事できる。完全にヒト抗体は、内因性免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子を発現することができないが、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを用いて産生させることができる。トランスジェニックマウスは、選択される抗原、例えば、標的ポリペプチドのすべて又は一部を用いて通常の方法で免疫する。抗原に対して指向するモノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ技術を用いて得ることができる。トランスジェニックマウスによって保有されたヒト免疫グロブリントランス遺伝子は、B細胞の分化の間に再配列し、その後、クラススイッチ及び体細胞変異を受ける。したがって、そのような技術を用いて、治療上有用なIgG、IgA、IgM及びIgE抗体を産生することが可能である。ヒト抗体を産生するためのこの技術の概要については、Lonberg及びHuszar(1995年、Int. Rev. Immunol.、13巻、65〜93頁)を参照のこと。
【0036】
本方法は、固体支持体への抗体の固定化の前の精製ステップを必要としない。いくつかの態様において、抗体含有試料に含まれている抗体は、精製されていない。いくつかの実施形態において、非精製細胞培養上清又は非精製ならし培地を抗体含有試料として提供する。例えば、ハイブリドーマ技術を用いて抗体を生成させるいくつかの実施形態において、抗体含有試料は、非精製ハイブリドーマ上清試料である。いくつかの態様において、上清試料は、抗体量及び抗体配列に関して様々である。抗体含有試料は他の抗体による夾雑を含み得るが、単一ハイブリドーマ上清試料が単一ハイブリドーマクローンからの抗体を含むことが好ましい。ハイブリドーマからクローン集団を採取する方法は、ハイブリドーマ上清を得る方法と同様に当技術分野で公知である。例えば、1つの態様において、新たに融合させたハイブリドーマを、選択培地(例えば、ハイブリドーマ細胞の生存及び増殖並びに非融合B細胞及び骨髄腫細胞の除去を促進する培地)を含む半固体培地(例えば、メチルセルロース)に入れる。そのような培地の例としては、ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含むものなどがある。クローン性IgG産生コロニーを選択し、細胞系の拡大及び抗体産生を維持するための培地を含む個々のウエルに入れる。得られるハイブリドーマ上清は、本方法によりアッセイすることができる。他の態様において、限界希釈法を用いて、ハイブリドーマ細胞をクローニングする。いくつかの実施形態において、固定化及びコンジュゲーションの前に、非精製ハイブリドーマ培養上清を、所望の抗原特異性を有する抗体の存在についてスクリーニングする。いくつかの実施形態において、約1ml〜約5mlのハイブリドーマ上清が提供される。
【0037】
いくつかの実施形態において、非精製細胞培養上清は、ハイブリドーマ上清以外、例えば、CHO細胞培養上清(例えば、DG44、Dxb11、CHO−K1及びCHO−S細胞系)又は他の細胞培養上清である。
【0038】
いくつかの実施形態において、抗体含有試料中の抗体は、内因性IgGを欠く培養培地中、特にウシIgGを欠く培養培地中で産生させる。いくつかの実施形態において、培養培地は、使用前に内因性IgGが枯渇している(例えば、実施例8参照)。適切な培養培地は、成長に必要な、例えば、塩、炭素源(例えば、糖)、窒素源、アミノ酸、微量元素、抗生物質、選択剤などを含むものなどである。市販の培地並びにIgG枯渇クローニング培地を含む市販のクローニング培地を用いることができる。温度、pHなどのような培養条件は、当業者には明らかである。
【0039】
本方法は、所望の化学的実体(chemical entity)への抗体のコンジュゲーションのための固体支持体を使用する。本方法は、固相で実施し、溶液中では実施しないため、本方法は、非常に少量(例えば、1〜500μg)の抗体を含む試料を用いて実施することができる。いくつかの実施形態において、単一試料に1μg〜100μg、1μg〜50μg、1μg〜20μg、3μg〜100μg、3μg〜50μg、3μg〜20、5μg〜100μg、5μg〜50μg、5μg〜20μgの抗体が存在する。1つの態様において、複数の試料における少なくとも1つの試料は、1μg〜100μg、1μg〜50μg、1μg〜20μg、3μg〜100μg、3μg〜50μg、3μg〜20、5μg〜100μg、5μg〜50μg、5μg〜20μgの抗体が存在する。
【0040】
固体支持体は、抗体を直接的又は間接的に可逆的に結合させることができ、望まれない物質、例えば、過剰な試薬、夾雑物質及び溶媒から抗体が分離されることを可能にする,不溶性の機能化物質(functionalized material)を意味する。固体支持体の例は、例えば、機能化ポリマー材料、例えば、アガロース、若しくはそのビーズ形Sepharose(登録商標)、デキストラン、ポリスチレン及びポリプロピレン又はそれらの混合物;マイクロ流体チャネル構造を含むコンパクトディスク;タンパク質アレイチップ;ピペットチップ;膜、例えば、ニトロセルロース又はPVDF膜;並びに微小粒子、例えば、常磁性又は非常磁性ビーズなどである。いくつかの実施形態において、アフィニティ媒体を固体支持体に結合させ、アフィニティ媒体を介して抗体を固体支持体に間接的に結合させる。1つの態様において、固体支持体は、プロテインAアフィニティ媒体又はプロテインGアフィニティ媒体を含む。「プロテインAアフィニティ媒体」及び「プロテインGアフィニティ媒体」は各々、プロテインA又はプロテインGのFc結合ドメインをそれぞれ、或いはプロテインA又はプロテインGのFc結合ドメインの変異した改変体若しくはフラグメント(その変異した改変体若しくはフラグメントは抗体のFc部分に対するアフィニティを保持している)をそれぞれ、含む天然若しくは合成タンパク質が結合している固相を意味する。
【0041】
本方法は、固体支持体上に抗体を固定化して、固定化抗体を供給するステップを含む。いくつかの実施形態において、固体支持体は、抗体含有試料中に存在する量より多い抗体を結合する容量(capacity)を有し、或いは換言すれば、固定化ステップの後に固体支持体に結合する抗体の量は固体支持体の容量より少ない。試料は一般的に抗体量に関して様々であるため、他の試料と比較して1つの試料からの固定化抗体の量に対応する変動がある。
【0042】
いくつかの他の実施形態において、結合抗体の量を制限することが望ましい場合があり、固体支持体は、最大で特定の量までの抗体(例えば、5μgまでの、10μgまでの又は15μgまでのタンパク質)に結合する容量を有するのみである。これらの実施形態において、固体支持体に結合することができる抗体の最大量について制限があるが、他の試料と比較して1つの試料中の固定化抗体の量における変動がまだ存在し得る。これは、1つ以上の試料が固体支持体の最大負荷容量に満たない少量の抗体を含み得るからである。抗体に結合する限られた容量を有する固体支持体を調製するための1つのアプローチは、大容積の樹脂スラリー(例えば、20μL)が5μgの抗体を結合するのに十分な容量のみを含むような、非常に低い容量の樹脂を作製することである。代替アプローチは、樹脂を適切な容積の非機能化樹脂で希釈することによって、樹脂の有効容量を減少させることである。例えば、20μg/μLの結合容量を有するプロテインGセファロース樹脂は、1部(part)のプロテインGセファロースを40部の非機能化セファロースと混合することによって、0.5μg/μLの有効結合容量を有する混合樹脂に変換することができた。そのような樹脂希釈を実施するにあたって、いくつかの実施形態において、希釈剤は、アフィニティ樹脂と同じ基材から製造され、抗体を排除するのに十分に小さい孔径を有し、抗体コンジュゲートを調製するために用いる抗体又は化学試薬と相互作用し得る表面官能性を欠いている樹脂であるものとする。
【0043】
本発明のいくつかの態様において、抗体含有試料を固体支持体に加えるステップにより、抗体を固体支持体に固定化する。所望の場合、細胞培養上清又は抗体含有試料の他の成分から固定化抗体を分離するために、固定化後に洗浄ステップを実施することができる。
【0044】
抗体が固体支持体上に固定化された時点で、還元ステップを実施して、固定化抗体の還元性ジスルフィド結合を完全に還元し、反応性チオールを生成させる。抗体は、還元性ジスルフィド結合の完全な還元に有利な条件下で還元する。一般的に、抗体を過剰な還元剤で還元して、還元性ジスルフィド結合の実質的に完全な還元を確実にする。「抗体の還元性ジスルフィド結合を完全に還元する」という語句は、試料中の抗体の実質的にすべて(例えば、70%を超える、好ましくは80%を超える、さらにより好ましくは85%、90%又は95%を超える)がそれらの還元性ジスルフィド結合に関して完全に還元されることを意味する。換言すると、試料中の実質的な量の抗体について、抗体の還元性ジスルフィド結合のすべてが還元ステップ中に開裂する。例えば、試料中の抗体が4つの還元性ジスルフィド結合を有する場合、還元ステップの後に、実質的な量の抗体の4つの還元性ジスルフィド結合すべてが開裂して、8つの反応性チオールを生ずる。還元は、還元性ジスルフィド結合に対して選択的である還元である。「還元性ジスルフィド結合に対して選択的」という語句は、還元性ジスルフィド結合が、還元される実質的に唯一の結合であることを意味する。本発明のいくつかの実施形態において、還元性ジスルフィド結合は、抗体の天然に存在する鎖間ジスルフィドであり、抗体は、天然に存在する鎖間ジスルフィドの完全な還元に有利である条件下で還元され、還元は、天然に存在する鎖間ジスルフィドに対して選択的であるものである。「鎖間ジスルフィドに対して選択的」という語句は、鎖間ジスルフィドが選択的に還元されることを意味する。換言すると、鎖間ジスルフィドが、還元される実質的に唯一の結合である。抗体が過剰な還元剤と接触し、還元剤が還元性ジスルフィド結合に対して選択的であるため、抗体当たりの反応性チオールの生成は、一般的に試料中の抗体の量と無関係である。
【0045】
1つの態様において、還元ステップにおいて用いる還元剤はTCEP(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン)であり、TCEPを室温で30分間にわたり過剰に加える。例えば、pH7.4のTCEPの250μLの10mM溶液は、1〜100μgの抗体の鎖間ジスルフィドを室温において30分で容易に還元する。しかし、他の還元剤及び条件を用いることができる。他の還元剤の例は、DTT(ジチオトレイトール)、メルカプトエタノール及びメルカプトエチルアミンなどである。反応条件の例は、5〜8のpH範囲にわたる5℃〜37℃の温度を含む。得られた抗体チオールのコンジュゲーション及び疎水性相互作用又は逆相クロマトグラフィーによる分析(例えば、それぞれ図1及び3参照)により、様々な還元条件下で達成されるジスルフィドの還元の程度の指標が得られる。還元の後、還元剤及び抗体の捕捉ステップ中に固体支持体に非特異的に結合した可能性がある他の成分、例えば、培養培地成分を除去するために、洗浄ステップを実施することができる。
【0046】
本発明のいくつかの態様において、試料は抗体量及び抗体配列に関して様々であるが、抗体の大多数は、還元性ジスルフィド結合の数に関して実質的に異ならない。例えば、いくつかの実施形態において、第1及び第2の試料に含まれている実質的にすべての抗体は、同じ量の還元性ジスルフィド結合を有する。いくつかのそのような実施形態において、還元性ジスルフィド結合は、鎖間ジスルフィドである。第1及び第2の試料中の抗体が4つの鎖間ジスルフィド結合を有する場合(例えば、ヒトIgG1)、還元後に、両試料中の還元固定化抗体は、それぞれ8つの反応性チオールを有する。還元剤が過剰で、還元ステップが選択性であり、各抗体上の還元性結合の数が一様であるため、抗体当たり8個の反応性チオールへの還元のこのレベルは、試料中の抗体の量と無関係である。同様に、第1及び第2の試料中の抗体が5つの鎖間ジスルフィド結合を有する場合、還元後に、両試料中の還元固定化抗体は、それぞれ10個の反応性チオールを有する。還元剤が過剰で、還元ステップが選択性であり、各抗体上の還元性ジスルフィドの数が一様であるため、抗体当たり10個の反応性チオールへの還元のこのレベルは、抗体の量と無関係である。マウス抗体のパネル、例えば、ハイブリドーマからのマウス抗体のパネルをスクリーニングするいくつかの実施形態において、抗体の大多数は、主要なマウスイソ型IgG1及びIgG2aのいずれか1つである。マウスIgG1及びIgG2aイソ型は、両方が5個の鎖間ジスルフィド結合を有し、還元後に、各抗体は、10個の反応性チオールを有する。したがって、抗体の大多数は、同じ量の還元性ジスルフィド結合を有する。これらの実施形態におけるイソ型の大多数はIgG1及びIgG2aであり得るが、他のイソ型も同様に存在し得る。例えば、マウスIgG2b、マウスIgG2c及びマウスIgG3イソ型も同様に存在し得る。マウスIgG2bイソ型が存在する場合、IgG2bイソ型が6個の鎖間ジスルフィド結合を有するので、これらの抗体の還元により、12個の反応性チオールが生成する。いくつかの実施形態において、トランスジェニックマウスを抗体産生のために用い、特定のイソ型を有する抗体並びにヒトIgGイソ型を有する抗体を産生するようにマウスを遺伝子操作することができる。いくつかのそのような実施形態において、マウスは、特定のイソ型のみを発現するように操作することができる。いくつかの実施形態において、マウスは、1つのイソ型又は1つ若しくは2つの主要なイソ型のみを発現するように操作することができる。
【0047】
還元ステップの後、抗体に所望の化学的実体を負荷する(換言すると、所望の化学的実体にコンジュゲートする)。用いる化学的実体の選択は、アッセイの目的に一部は依存する。いくつかの実施形態において、ADCとして用いるための抗体を選択する目的のために抗体をスクリーニングする。これらの実施形態において、抗体が薬物にコンジュゲートされることが望ましい。抗体は、薬物に直接的に又はリンカーを介して間接的にコンジュゲートすることができる。薬物及び薬物−リンカーは、ADCとして用いるのに有効であり、チオール反応性である薬物又は薬物−リンカーであり得る。「チオール反応性」という語句は、化学的実体が、還元性ジスルフィド結合の還元により生ずる反応性チオールと反応し、それとの共有結合を形成することを意味する。チオール反応性薬物及び薬物−リンカーは、天然ではチオール反応性でないが、それらをチオール反応性にするためのチオール反応性剤で誘導体化された薬物又は薬物−リンカーを含む。コンジュゲーションに用いる条件は、薬物が反応性チオールと選択的に反応する(直接的又はそのリンカーを介して)ような条件である。反応性チオールに対して高度に選択的であるチオール反応性基の例としては、例えば、N−エチルマレイミドなどのマレイミドなどがある。N−エチルマレイミドなどのマレイミドは、特に他の基がプロトン化されている7未満のpH値でスルフヒドリル基に対してかなり特異的であるとみなされている。例えば、pH7では、単純チオールとの反応は、対応するアミンとの反応より約1000倍速い。チオールとマレイミドとの反応は、室温においてpH7.4で非常に速く、30分は、アミン基へのマレイミドのコンジュゲーションの危険を冒すことなく完全な反応を保証するのに十分である。したがって、いくつかの実施形態において、マレイミド基を介して薬物を抗体に結合させる。反応性チオールに対して高度に選択的である他の反応性基は、例えば、ヨードアセトアミド、ビニルスルホン及びアジリジンなどである。
【0048】
いくつかの実施形態において、抗体に薬物を十分に負荷することが望ましい。そのような実施形態において、望ましい薬物負荷レベルは、抗体当たりの反応性チオールの数に等しい。例えば、いくつかのそのような実施形態において、所望の薬物負荷は、抗体当たり10個の薬物であり、抗体当たりの反応性チオールの数は、10である。反応性チオールの数に等しい薬物負荷レベルが望ましいいくつかの実施形態において、チオール反応性薬物又は薬物−リンカーは、利用できる反応性チオールのすべてと反応するために、固定化抗体に対して十分に過剰に供給する。このステップに用いられる薬物及び薬物−リンカーがチオール反応性であり、用いる条件が反応性チオールへのコンジュゲーションに対して選択的であるように反応が設定されるため、薬物又は薬物−リンカーは、反応性チオールと選択的に反応する(すなわち、薬物及び薬物−リンカーは、例えば、他のアミノ酸(例えば、リシン残基)を含む、抗体上の他の部位と実質的に反応しない)。この選択性のため、薬物負荷を制御し、試料間の実質的な均一な薬物負荷があるような実験をデザインすることが可能である。「試料間の実質的な均一な薬物負荷」という語句は、試料間の平均薬物負荷が実質的に同じである、又は換言すると、試料1中の抗体当たりの薬物分子の平均数が試料2中の抗体当たりの薬物分子の平均数と実質的に同じであることを意味する。薬物負荷のある程度の変動は予想することができるが、それは、一般的に約25%の変動の範囲内、好ましくは20%又はさらに10%の変動の範囲内にある。したがって、試料の大多数がマウスIgG1及びIgG2aサブタイプの抗体を含むいくつかの実施形態において、チオール反応性薬物又は薬物−リンカーを、利用できる反応性チオールのすべてと反応するのに十分に過剰に試料に加える場合、試料の大多数において、抗体当たり平均10個の薬物分子が存在する。これらの試料は実質的な均一な薬物負荷を有するため、溶出させた時点に、精製ADCの濃度を当技術分野で公知の方法、例えば、分光光度法により測定することができ、アッセイにおいてどの抗体が多かれ少なかれ活性であるかを決定するためにそれらの活性を比較することができる。たとえ比較する抗体が可変の濃度で、またいくつかの実施形態において、未知の可変の濃度で供給されたとしても、この比較は実施することができる。未知の可変の濃度で供給される抗体間の比較は、それらに薬物又は薬物−リンカーを実質的に均一に負荷する能力によって支援される。
【0049】
いくつかの実施形態において、抗体に薬物又は薬物−リンカーを十分に負荷することは望ましくない。いくつかのそのような実施形態において、より低い薬物負荷レベルが望まれる場合、固定化抗体を薬物又は薬物−リンカー及びチオールキャッピング剤の両方と反応させることができる。「チオールキャッピング剤」という用語は、本明細書において反応性チオールを選択的にブロックする剤を指すのに用いる。薬物又は薬物−リンカー及びチオールキャッピング剤は、所望の薬物負荷をもたらす薬物又は薬物−リンカーとチオールキャッピング剤との比率で供給される。薬物又は薬物−リンカーと同様に、キャッピング剤は、反応性チオールに対して高度に選択的である。チオール反応性キャッピング剤は、天然ではチオール反応性でないが、それらをチオール反応性にするためのチオール反応性剤で誘導体化されたキャッピング剤を含む。用いることができるチオールキャッピング剤の例は、例えば、N−エチルマレイミドなどのマレイミドキャッピング剤などである。他のキャッピング剤は、例えば、ヨードアセトアミド及びヨード酢酸などである。いくつかの実施形態において、薬物又は薬物−リンカー及びチオールキャッピング剤の両方が同じタイプのチオール反応性剤を有する。例えば、いくつかの好ましい実施形態において、マレイミド基を介して薬物を抗体に結合させるべきである場合、キャッピング剤も同じタイプのマレイミド基を介して抗体に結合させる。これは、薬物−リンカー及びキャッピング剤の相対的反応速度が同様であることを保証する助けとなる。好ましくは、約100倍以下の相対的反応速度の差、より好ましくは10倍以下、さらにより好ましくは5倍以下の相対的反応速度の差がある。
【0050】
1つの態様において、選択されるキャッピング剤と薬物又は薬物−リンカーとの比率は、薬物負荷の所望のレベルに依存する。いくつかの実施形態において、固定化抗体に対して供給される薬物又は薬物−リンカーとキャッピング剤との比率は、これらの試薬を抗体にコンジュゲートさせる比率に反映される。薬物又は薬物−リンカーとキャッピング剤をモル過剰で供給する実施形態において、供給される薬物リンカー又は薬物とキャッピング剤との比率は、これらの2つの成分の固有チオール反応速度が同じである場合に、これらの試薬を抗体にコンジュゲートさせる比率に反映される。例えば、薬物又は薬物−リンカー及びキャッピング剤の固有チオール反応速度が同じであり、試料の大多数が5つの還元性ジスルフィド結合を有する抗体(例えば、マウスIgG1及びIgG2aサブタイプの抗体)を含む実施形態において、コンジュゲーションに用いる反応混合物が薬物リンカー又は薬物とキャッピング剤との1:1混合物を有する場合、反応後に、試料の大多数において、抗体当たり5個の薬物分子及び抗体当たり5個のキャッピング剤が存在する。しかし、本発明者らによって、薬物又は薬物−リンカー及びキャッピング剤の固有チオール反応速度が一般的に同じでないことが観測され、したがって、薬物又は薬物−リンカー及びキャッピング剤が過剰に供給される場合、薬物又は薬物−リンカー及びキャッピング剤が固定化抗体を含む試料に供給される比率は、それらが抗体にコンジュゲートされるのと同じ比率でない。そのような実施形態において、薬物又は薬物−リンカーとキャッピング剤との適切な比率は、薬物負荷の所望のレベルを達成するために実験的に決定することができる。特に、薬物又は薬物−リンカー及びキャッピング剤が過剰(一般的に、少なくとも約3倍の過剰)に供給され、試料中に存在する抗体が実質的に同じ数の還元性ジスルフィド結合を有する限り、比率は、固体支持体上に存在する抗体の量に無関係に、試料にわたり一貫性のある(すなわち、実質的に均一な)レベルの薬物負荷をもたらす。
【0051】
いくつかの好ましい実施形態において、薬物又は薬物−リンカー及びキャッピング剤への抗体のコンジュゲーション反応は、速度論支配下にあり、熱力学支配下にはない。例えば、固定化抗体を含む試料に供給される薬物又は薬物−リンカー及びキャッピング剤の総モルが、試料中の反応性チオールのモル数に等しいか、又は少ない条件下では、固定化還元抗体を含む試料に供給される薬物又は薬物−リンカーとキャッピング剤との比率は、抗体と薬物又は薬物−リンカー及びキャッピング剤との実際のコンジュゲーション比に反映される。そのようなコンジュゲーション反応は、熱力学支配下にあると言うことができる。例えば、100ピコモルのマウスIgG1抗体(約15μg)を過剰な還元剤で還元して、抗体当たり10個のチオールを生成した場合、1ナノモルの反応性チオールが存在することになる。各々の濃度が0.5mMであり、総濃度が1mMであるように薬物又は薬物−リンカーとキャッピング剤との1:1混合物を調製した場合、還元した抗体へのこの溶液の1μLの添加により、薬物又は薬物−リンカー及びキャッピング剤が合計1ナノモルとなる。薬物又は薬物リンカー及びキャッピング剤並びにチオール反応が高度に有利なものである(例えば、薬物又は薬物−リンカー及びキャッピング剤の両方がマレイミド誘導体である)と仮定すると、この手順により調製されたコンジュゲートは、2つの化合物の1:1混合物を有することとなる(チオール−マレイミド反応が高度に有利であり、熱力学がこの反応を完結まで効果的に促進するであろう)。たとえ化合物の1つが他の化合物より実質的に速い速度で反応したとしても、これは当てはまることとなる。複数の試料が均一に負荷されることが望ましい実施形態において、このアプローチは、試料のそれぞれに存在する抗体の量が既知であることを一般的に必要とするであろう。さらに、試料間に抗体の量の変動が存在する実施形態(ハイブリドーマからの抗体のパネルなど)において、実質的に均一に負荷される試料に到達するために、各試料に加えるべき薬物又は薬物リンカー及びキャッピング剤の量を調整する多大な努力が必要であろう。試料中の抗体の量が未知であり、且つ/又は試料間に変動が存在する実施形態において、反応が速度論支配下にあるように反応を操作し、それに応じて、過剰の薬物又は薬物−リンカー及びキャッピング剤の合計を抗体含有試料に供給することが一般的に好ましい。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態において、還元した抗体の反応性チオールにコンジュゲートされる化学的実体は、モル過剰で供給する(反応性チオールについてモル過剰)。これらの実施形態において、薬物又は薬物−リンカーがキャッピング剤より速く反応性チオールと反応する場合、薬物又は薬物−リンカーは、最終コンジュゲートにおいて不釣り合いな比率を占める(disproportionately represented)。これは、薬物又は薬物−リンカーとキャッピング剤が互いに効率的に競合して、限られた数の利用可能な反応性チオールと反応するためである。薬物又は薬物リンカー及びキャッピング剤が反応溶液中に等しい濃度で存在する場合、それらの反応速度が同じならば、それらは、等しい濃度でコンジュゲートされるのみである。薬物又は薬物リンカー及びキャッピング剤の濃度が等しくないように反応混合物の組成を変化させることにより、それらが、利用可能なチオールと反応する比率を調節することができる。例えば、遅反応性の薬物又は薬物リンカーは、より迅速反応性のキャッピング剤との1:1混合物を用いて調製したコンジュゲートにおいて不釣り合いに低い比率を占める(disproportionately underrepresented)。より遅反応性の薬物又は薬物−リンカーに有利なように比率を2:1に変化させることにより、コンジュゲートにおけるその占める割合が増加する。したがって、固定化還元抗体を含む試料に供給する薬物又は薬物リンカー及びキャッピング剤の比率を調節することにより、最終コンジュゲートにおける薬物又は薬物リンカーとキャッピング剤との所望の比率を達成することができる。薬物又は薬物リンカー及びキャッピング剤の合計が、利用可能な反応性チオールに対して過剰に存在する条件下では、最終生成物におけるそれらの分布は、出発チオール量と無関係である。このように、試料中の抗体の量が未知であり、且つ/又は試料間に変動が存在する場合でさえ、複数の試料に実質的に均一に負荷することができる。いくつかの実施形態において、総チオールに対して約2倍のモル過剰(そして、さらにより好ましくは3倍以上のモル過剰)の全反応成分が存在するような適切な容積の薬物又は薬物−リンカー及びキャッピング剤を試料に供給する。試料中の抗体の量が未知である場合、各試料は、最大量の抗体を有するかのように扱うことができる。試料の多くについて、最大量よりかなり少ない量が存在し、過剰は2倍より大きい。設定比率を有する過剰な反応成分のこの供給により、様々な量の、パネル全体にわたる抗体が、定められた大量の全薬物又は薬物リンカー及びキャッピング剤で処理されて、存在する各薬物又は薬物リンカー及びキャッピング剤に匹敵する負荷(loading)を有するコンジュゲートのパネルを生成することが可能になる。試料中に最初に存在する抗体の量に関係なく、試料の同等の処理が同等のレベルの負荷をもたらすという事実から、この方法が多数の抗体をコンジュゲートするハイスループットでの応用に好都合であるということとなる。
【0053】
本明細書で述べたように、アッセイする試料の大多数が試料に含まれる抗体に存在する還元性ジスルフィド結合の数に関して異ならないことが好ましいが、いくつかの実施形態において、ある程度の変動が存在する。いくつかの実施形態において、変動にもかかわらず、試料を同じ比率の化学的実体で処理する。データを解釈する場合、当業者は、試料の特定のサブセットが還元性ジスルフィド結合の量が異なっていたことを認識する。所望の場合、当業者は、データの解釈の助けとするためにコンジュゲーションの前又は後に抗体のイソ型を決定することができる。
【0054】
いくつかの実施形態において、コンジュゲーションステップの前に、標準的な方法を用いて、試料のそれぞれにおける抗体のイソ型及びしたがって、試料のそれぞれにおける抗体当たりの還元性ジスルフィド結合の数を決定することができる。いくつかのそのような実施形態において、同じ数の還元性ジスルフィド結合を有する抗体を含む試料を、所望の薬物負荷に達するように、薬物又は薬物リンカーとキャッピング剤との1つの比率を有する反応混合物と接触させ、異なる数の還元性ジスルフィド結合を有する抗体を含む試料を、その同じ所望の薬物負荷に達するように、薬物又は薬物リンカーとキャッピング剤との異なる比率を有する反応混合物と接触させる。例えば、いくつかの実施形態において、所望の平均薬物負荷が4である場合、マウスIgG1及びIgG2aの抗体(完全に還元した場合、抗体当たり10個の反応性チオール)を含む試料をすべて、4の平均薬物負荷及び6の平均キャッピング剤負荷に達するように、薬物又は薬物リンカーとキャッピング剤との一定の比率を有する反応混合物と接触させる。マウスIgG2bの抗体(完全に還元した場合、抗体当たり12個の反応性チオール)を含む試料を、4の同じ平均薬物負荷に達するように、薬物又は薬物リンカーとキャッピング剤との異なる比率を有する反応混合物(例えば、キャッピング剤の分率がより高い)と接触させる。他の実施形態において、イソ型及び鎖間ジスルフィドの数の間に変動が存在し得るが、負荷のある程度の変動があり、試料のすべてが薬物又は薬物リンカーとキャッピング剤との同じ比率を受けることは受け入れられる。
【0055】
いくつかの実施形態において、コンジュゲーションステップの前及び還元ステップの後に、部分再酸化ステップが存在する。例えば、いくつかの実施形態において、還元性ジスルフィド結合は、天然に存在する鎖間ジスルフィド結合並びに導入されたスルフヒドリル基から形成されたジスルフィド結合からなる。これらの実施形態の一部において、選択される化学的実体を、導入されたスルフヒドリルにコンジュゲートするが、天然に存在する鎖間ジスルフィド結合のスルフヒドリル基にはコンジュゲートしないことが望ましい。これらの実施形態において、還元性ジスルフィド結合の完全な還元の後に、所望の化学的実体に結合させるために利用可能な導入されたスルフヒドリルを残して、天然に存在する鎖間ジスルフィド結合を再酸化するための部分再酸化ステップが存在し得る。天然ジスルフィドの再酸化は、例えば、pH6.5で大モル過剰のデヒドロアスコルビン酸による還元した抗体の処理により、反応を室温で1時間進行させて達成することができる。
【0056】
本明細書に記載する実施形態のいずれかにおいて、キャッピング剤の代わりに又はそれに加えて、検出剤をコンジュゲーションのために供給する。検出剤は、例えば、一次標識又は二次標識であり得る。いくつかの実施形態において、検出剤は、直接的に検出されるものである。他の実施形態において、検出剤は、間接的に検出されるものである。いくつかの実施形態において、検出剤は、例えば、抗体の定量のために且つ/又は結合アッセイ若しくは他の望ましいアッセイのリポーターとして用いることができる任意のチオール反応性標識である。チオール反応性標識は、天然ではチオール反応性でないが、それらをチオール反応性にするためのチオール反応性剤で誘導体化された標識を含む。いくつかの実施形態において、同じタイプのチオール反応性剤を、様々な化学的実体(検出剤及び/又は薬物若しくは薬物−リンカー及び/又はキャッピング剤)を抗体に結合させるために用いる。いくつかの実施形態において、検出剤は、放射性化合物、化学発光剤、蛍光剤又は色素原である。いくつかの実施形態において、検出剤は、蛍光団などの蛍光分子である。いくつかの実施形態において、検出剤は、ビオチンである。1つの態様において、検出剤は、蛍光団であり、蛍光団をチオール反応性にするために蛍光団をマレイミド基で誘導体化する。本明細書に記載する教示は、選ばれた検出剤の好ましい負荷レベルを評価するのに用いることができる。いくつかの実施形態において、蛍光団を検出剤として用い、抗体当たり約2.5〜約3個の蛍光団の平均負荷で蛍光団を負荷する。実施例3及び4に、所望の薬物及び/又は蛍光団負荷レベルを達成するために化学的実体の比率をどのように調整するかの具体例としての記述を示す。
【0057】
本発明は、ADCとして用いるための抗体を選択する目的のためではなく、コンジュゲートしていない抗体として用いるための抗体を選択する目的のために抗体をスクリーニングする実施形態を包含する。これらの実施形態において、固定化抗体を選択される比率の検出剤及びキャッピング剤と接触させ、薬物又は薬物−リンカーは用いない。実施例3及び4の教示を含む本明細書に記載する教示を用いて、検出剤とキャッピング剤との適切な比率を決定することができる。
【0058】
還元した抗体を適切な量及び種類の化学的実体と接触させ(化学的実体の選択は、例えば、コンジュゲートしていない抗体又はADCとしての抗体をスクリーニングすることが望ましいのか;十分な薬物負荷又は部分的薬物負荷を有することが望ましいのか;及び混合物に検出剤を含めることが望ましいのかに依存する)、反応の完結のために十分な時間(マレイミド含有化学的実体については例えば、30分)を与えた後、未反応成分質を除去するために洗浄ステップを実施することが望ましい。その後、固定化抗体コンジュゲートを固体支持体から溶出して、抗体コンジュゲート組成物を得ることができる。タンパク質を固体支持体から溶出する方法は、当技術分野で公知であり、当業者は、溶出のための適切なバッファーを選択することができる。例えば、固体支持体がプロテインA又はプロテインG樹脂を含む実施形態において、抗体コンジュゲートは、プロテインA又はプロテインGカラムから溶出用の標準的低pHバッファーで溶出することができる。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態において、抗体コンジュゲートを調製するための本明細書に記載した方法は、実質的に均一な薬物負荷を有する複数の抗体薬物コンジュゲート組成物をもたらす(当業者は、試料にわたる還元性ジスルフィド結合の数の均一性に依存して、いくつかの域外値が存在し得ることを理解する)。これらの実施形態において、薬物負荷が試料間で実質的に均一であるため、第1及び第2の試料中の抗体の相対的特性を比較することができる。たとえ比較する抗体が可変の濃度で、またいくつかの実施形態において、未知の可変の濃度で供給されたとしても、この比較を実施することができる。未知で、可変の濃度の抗体間の比較は、薬物又は薬物−リンカーをそれらに実質的に均一に負荷することができることで、より容易になされる。
【0060】
薬物の負荷を決定する方法は、当技術分野で公知である。本明細書で用いている1つの方法は、ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー、例えば、逆相PLRP(商標)カラム上の高速液体クロマトグラフィーである。この変性技術は、様々に負荷された軽鎖及び重鎖種をすっきり分離することができる。疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)も得られたコンジュゲートからの異性体混合物を決定するために用いる分析方法として用いることができる。薬物負荷レベルは、例えば、250nmにおける吸光度と280nmにおける吸光度の比に基づいて決定することができる。例えば、米国特許公開第20090010945号を参照のこと。
【0061】
いくつかの実施形態において、抗体コンジュゲートの溶出後に、抗体コンジュゲートの特徴づけを行うために活性アッセイ及び/又は他のアッセイを実施する。いくつかの実施形態において、細胞結合、アフィニティ及び/又は細胞傷害性アッセイを実施する。ADCが対象の標的に結合するか、又は細胞に対して細胞傷害性作用を及ぼすかどうかを決定する多くの方法は、当業者に公知であり、本方法に用いることができる。例えば、細胞生存アッセイは、細胞に対するADCの細胞傷害性作用を決定するために用いることができる。例えば、それぞれがその全体として、および、例示的な細胞結合及び細胞傷害性アッセイについて、すべての目的のために本明細書に組み込まれる、米国特許第7,659,241号及び第7,498,298号を参照のこと。
【0062】
いくつかの実施形態において、抗体コンジュゲートの溶出後に、抗体コンジュゲート組成物中の抗体又は抗体コンジュゲートの量を決定することが望ましい。いくつかの実施形態において、試料中の抗体又は抗体コンジュゲートの実際の量を決定することが望ましい。他の実施形態において、複数の試料中の抗体又は抗体コンジュゲートの相対量を決定することで十分である。例えば、試料1が試料2より多くの抗体を有し、試料2が試料3より多くの抗体を有し、以下同様であることを知ることで十分であり得る。タンパク質の量を決定するための多くの方法が当技術分野で公知であり、ここに用いることができる。いくつかの実施形態において、吸光度アッセイを用いて抗体の濃度を決定することができる。蛍光団が抗体コンジュゲートの一部である実施形態において、蛍光アッセイを用いて抗体の濃度を決定することができる。蛍光をタンパク質の定量に用いる実施形態において、生蛍光値を濃度に変換するために標準物質が必要であり得る。蛍光を用い、標準曲線を作成してタンパク質濃度を決定する方法は、当技術分野で公知である。1つの例において、約200μgの標準抗体をブランク培地にスパイクした後にコンジュゲーションステップにおいてコンジュゲートする。溶出後、この標準物質の濃度を従来の方法、例えば、従来のA280吸光度アッセイにより決定し、希釈系列により作成した標準曲線をコンジュゲート試料と並行して蛍光についてアッセイする。或いは、液体取扱いロボットを用いてプレートを標準化し、それにより、系列希釈の必要をなくすことができる。
【0063】
いくつかの実施形態において、細胞傷害性アッセイの結果及び抗体コンジュゲート組成物における相対的又は実際の抗体濃度の知識を所望の特性を有する抗体を同定するのに用いる。本明細書に記載する抗体コンジュゲートを作製するための方法は、様々な濃度及びいくつかの実施形態において未知の量の複数の抗体間の比較を行うことを可能にする。本明細書に記載する抗体コンジュゲートを作製するための方法は、例えば、ハイブリドーマ融合物から得られた抗体のパネルから開始した場合、望ましい特性を有する抗体の選択を可能にする。いくつかの好ましい実施形態において、試料間の実質的な均一な薬物負荷により、試料間の適切な比較を行うことができる。実質的に均一な負荷レベルを確保できない場合、例えば、ADCとして用いるための抗体のパネルのスクリーニングから誤った結果がもたらされる可能性がある。これは、ADCとしての抗体の特性のため、又は試料が抗体当たりより多くの薬物を含むため、ADC試料がより大きい細胞傷害性を示すかどうかが不明であるからである。例えば、抗体「A」を含み、4の平均薬物負荷を有する抗体コンジュゲート組成物は、一般的に抗体「B」を含み、1の平均薬物負荷を有する抗体コンジュゲート組成物より大きい細胞傷害性を示すと予想される。このより大きい細胞傷害性は、ADCとしての抗体A及びBの相対的特性の指標ではなく、単に抗体Aへのより大きい薬物負荷の指標であることになる。両方の抗体コンジュゲート組成物が約4の平均薬物負荷を有していて、1つがより大きい細胞傷害性を示した場合、それは、抗体に帰され、単に薬物負荷に帰されない可能性がある。同様に、試料中の抗体又は抗体コンジュゲートの実際量又は相対量を決定する能力も、試料間の適切な比較を行うことを可能にする。試料中の抗体又は抗体コンジュゲートの実際量又は相対量の知識がなければ、特定の抗体のために又は単に試料中により多くの抗体若しくはADCが存在するために、ADCがより大きい細胞傷害性を示すかどうかは不明であることとなる。
【0064】
抗体スクリーニングアッセイに用いる抗体コンジュゲートを作製するための方法及び特許請求の範囲に記載する方法により生成される抗体コンジュゲートを提供することに加えて、本発明は、抗体が本明細書に記載する方法を用いて選択される、治療用の抗体及び/又は抗体コンジュゲート(例えば、抗体薬物コンジュゲート)を提供する。
【0065】
先に述べたように、本方法に用いる薬物又は薬物−リンカーは、ADCとしての使用が有効であり、チオール反応性である任意の薬物又は薬物−リンカーであり得る。薬物は、任意の細胞傷害性薬、細胞増殖抑制性薬又は免疫抑制薬であり得る。ADCとして使用するための薬物及び薬物−リンカーを選択する方法は、当技術分野で公知である。例えば、それぞれがその全体として、すべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2004010957号、国際公開第2007/038658号、米国特許第6,214,345号、米国特許第7,498,298号及び米国特許公開第2006/0024317号を参照のこと。
【0066】
有用なクラスの細胞傷害性剤又は免疫抑制剤は、例えば、抗チューブリン剤(例えば、アウリスタチン、マイタンシノイド、ビンカアルカロイド)、トポイソメラーゼ阻害薬(例えば、カンプトテシン)、DNA小溝(minor groove)結合薬(例えば、カリケアマイシン、デュオカルマイシン、エンジイン、レキシトロプシン、クロロメチルベンゾインドリン)、DNA複製阻害薬(例えば、アントラサイクリン)、アルキル化剤(例えば、シスプラチン、モノ(白金)、ビス(白金)及び三核白金錯体並びにカルボプラチンなどの白金錯体)、プロテインキナーゼ阻害薬、細胞傷害性酵素及びタンパク質毒素などである。
【0067】
いくつかの実施形態において、適切な細胞傷害剤は、例えば、抗生物質、葉酸拮抗薬、代謝拮抗薬、化学療法増感剤、エトポシド、フッ化ピリミジン、イオノフォア、ニトロソ尿素、プラチノール、プレフォーミング(pre−forming)化合物、プリン代謝拮抗薬、放射線増感剤、ステロイド、プロマイシン、ドキソルビシン及びクリプトフィシンなどである。
【0068】
個別の細胞傷害性又は免疫抑制薬は、例えば、アンドロゲン、アントラマイシン(AMC)、アスパラギナーゼ、5−アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、ブスルファン、ブチオニンスルホキシミン、ガンマカリケアマイシン、N−アセチルガンマジメチルヒドラジドカリケアマイシン、カンプトテシン、カルボプラチン、カルムスチン(BSNU)、CC−1065、セマドチン、クロラムブシル、シスプラチン、コルヒチン、シクロホスファミド、シタラビン、シチジンアラビノシド、シトカラシンB、ダカルバジン、ダクチノマイシン(旧名:アクチノマイシン)、ダウノルビシン、デカルバジン(decarbazine)、ディスコデルモリド、ドセタキセル、ドキソルビシン、モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、エキノマイシン、エロイテロビン、エポチロンA及びB、エトポシド、エストラムスチン、エストロゲン、5−フルオルデオキシウリジン、5−フルオロウラシル、ゲムシタビン、グラミシジンD、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムシチン(CCNU)、マイタンシン、メクロレタミン、メルファラン、6−メルカプトプリン、メトトレキセート、ミトラマイシン、マイトマイシンC、ミトザントロン、ネトロプシン、ニトロイミダゾール、パクリタキセル、パリトキシン、プリカマイシン、プロカルビジン、リゾキシン、ストレプトゾトシン、テノポシド、6−チオグアニン、チオTEPA、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、VP−16及びVM−26などである。
【0069】
いくつかの実施形態において、薬物は抗チューブリン剤である。抗チューブリン剤の例は、タキサン(例えば、Taxol(登録商標)(パクリタキセル)、Taxotere(登録商標)(ドセタキセル))、および、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン及びビノレルビン)を含むが、これらに限定されない。他の抗チューブリン剤は、例えば、バッカチン誘導体、タキサン類似体(例えば、エポチロンA及びB)、ノコダゾール、コルヒチン及びコルシミド、エストラムスチン、クリプトフィシン、セマドチン、コンブレタスタチン、ディスコデルモリド及びエロイテロビンなどである。
【0070】
特定の実施形態において、細胞傷害剤は、抗チューブリン剤の他の群であるマイタンシノイドである。例えば、特定の実施形態において、マイタンシノイドは、マイタンシン又はDM−1又はDM−4である(ImmunoGen,Inc.;Chariら、1992年、Cancer Res.、52巻、127〜131頁も参照のこと)。
【0071】
いくつかの実施形態において、薬物は、抗チューブリン剤の他の群であるアウリスタチンである。アウリスタチンは、アウリスタチンE及びその誘導体を含むが、これらに限定されない。AFP、AEB、AEVB、MMAF及びMMAEは、本明細書に用いることができるアウリスタチンの例である。アウリスタチンの合成及び構造は、それぞれがその全体として、すべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2003−0083263号、第2005−0238649号及び2005−0009751号;国際特許公開番号WO04/010957、国際特許公開番号WO02/088172並びに米国特許第7,498,298号;第6,323,315号;第6,239,104号;第6,034,065号;第5,780,588号;第5,665,860号;第5,663,149号;第5,635,483号;第5,599,902号;第5,554,725号;第5,530,097号;第5,521,284号;第5,504,191号;第5,410,024号;第5,138,036号;第5,076,973号;第4,986,988号;第4,978,744号;第4,879,278号;第4,816,444号;及び第4,486,414号に記載されている。
【0072】
薬物−リンカーのリンカー部分は、抗体を薬物に結合させるために用いることができる化合物である。リンカーは、1つ超の化学構成成分を含み得る。いくつかの実施形態において、リンカーの開裂が細胞内環境において抗体から薬物単位を遊離させるように、リンカーは、細胞内条件下で開裂する。いくつかの実施形態において、リンカーは、リソソームプロテアーゼ又はエンドソームプロテアーゼを含むが、これらに限定されない細胞内ペプチダーゼ又はプロテアーゼ酵素により切断されるペプチジルリンカー(例えば、2つ以上のアミノ酸を含むリンカー)である。切断剤は、すべてがジペプチド薬物誘導体を加水分解し、標的細胞内での活性薬物の放出をもたらすことが公知である、カテプシンB及びD並びにプラスミンを含み得る(例えば、Dubowchik及びWalker、1999年、Pharm. Therapeutics、83巻、67〜123頁を参照)。いくつかの実施形態において、細胞内プロテアーゼにより開裂可能なペプチジルリンカーは、Val−Citジペプチド又はPhe−Lysジペプチドを含む(例えば、その全体として、すべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,659,241号を参照)。さらにまた、他の実施形態において、リンカーは開裂性でなく、薬物は抗体の分解により放出される。
【0073】
いくつかの実施形態において、開裂性リンカーは、pH感受性である。すなわち、特定のpH値での加水分解に感受性であり、且つ/又は還元条件下で開裂性である(例えば、ジスルフィドリンカー)。例えば、SATA(N−スクシンイミジル−S−アセチルチオアセテート)、SPDP(N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート)、SPDB(N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)ブチレート)並びにSMPT(N−スクシンイミジル−オキシカルボニル−アルファ−メチル−アルファ−(2−ピリジル−ジチオ)トルエン)、SPDB及びSMPTを用いて生成させることができるものを含む様々なジスルフィドリンカーが当技術分野で公知である(例えば、Thorpeら、1987年、Cancer Res.、47巻、5924〜5931頁;Wawrzynczakら、In Immunoconjugates: Antibody Conjugates in Radioimagery and Therapy of Cancer(C. W. Vogel編、Oxford U. Press、1987年を参照。米国特許第4,880,935号も参照)。
【0074】
本方法により用いることができる具体例としてのリンカーは、それぞれがその全体として、すべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2004010957号、国際公開第2007/038658号、米国特許第6,214,345号、第7,659,241号、第7,498,298号及び米国特許公開第2006/0024317号に記載されている。
【0075】
本発明のいくつかの具体例としての実施形態において、薬物−リンカーは、Val−Citがバリン−シトルリンジペプチドを意味する、以下の式I又は式IIのものである。
【0076】
【化4】
タンパク質
抗体コンジュゲートを作製するための本明細書に記載する方法は、融合タンパク質スクリーニングアッセイに用いるための融合タンパク質を作製するためにも用いることができる。「融合タンパク質」という用語は、結合ドメイン−Ig融合物を指すために本明細書において用いるものであり、ここで、結合ドメインは、例えば、リガンド、受容体の細胞外ドメイン、ペプチド、非天然ペプチド又は同様なものであり得る。ただし、結合ドメインは、抗体の可変ドメインを含まない。本明細書に記載する抗体と同様に、融合タンパク質のIg部分は、少なくとも1つの還元性ジスルフィド結合及び固相に結合することができるドメインを含まなければならない。1つの態様において、Igドメインは、抗体のFc領域である。ドメイン−Ig融合タンパク質の例は、sTNFRIIとFc領域との融合タンパク質であるエタネルセプト(米国特許第5,605,690号)、抗原提示細胞上で発現したLFA−3とFc領域との融合タンパク質であるアレファセプト(米国特許第5,914,111号)、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA−4)とFc領域との融合タンパク質(J. Exp. Med.、181巻、1869頁(1995年))、インターロイキン15とFc領域との融合タンパク質(J. Immunol.、160巻、5742頁(1998年))、第VII因子とFc領域との融合タンパク質(Proc. Natl. Acad. Sci. USA、98巻、12180頁(2001年))、インターロイキン10とFc領域との融合タンパク質(J. Immunol.、154巻、5590頁(1995年))、インターロイキン2とFc領域との融合タンパク質(J. Immunol.、146巻、915頁(1991年))、CD40とFc領域との融合タンパク質(Surgery、132巻、149頁(2002年))、Flt−3(fms様チロシンキナーゼ)と抗体Fc領域との融合タンパク質(Acta. Haemato.、95巻、218頁(1996年))、OX40と抗体Fc領域との融合タンパク質(J. Leu. Biol.、72巻、522頁(2002年))及び他のCD分子(例えば、CD2、CD30(TNFRSF8)、CD95(Fas)、CD106(VCAM−I)、CD137)との融合タンパク質、接着分子(例えば、ALCAM(活性化白血球細胞接着分子)、カドヘリン、ICAM(細胞内接着分子)−1、ICAM−2、ICAM−3)、サイトカイン受容体(例えば、インターロイキン−4R、インターロイキン−5R、インターロイキン−6R、インターロイキン−9R、インターロイキン−10R、インターロイキン−12R、インターロイキン−13Rアルファ1、インターロイキン−13Rアルファ2、インターロイキン−15R、インターロイキン−21Rアルファ)、ケモカイン、細胞死誘発シグナル分子(例えば、B7−H1、DR6(デス(death)受容体6)、PD−1(プログラム死−1)、TRAIL R1)、共刺激分子(例えば、B7−1、B7−2、B7−H2、ICOS(誘導性共刺激物質))、成長因子(例えば、ErbB2、ErbB3、ErbB4、HGFR)、分化誘導因子(例えば、B7−H3)、活性化因子(例えば、NKG2D)並びにシグナル伝達分子(例えば、gpl30)、BCMA及びTACIなどである。
【0077】
本明細書に記載するステップのすべては、出発物質が抗体ではなく、融合タンパク質である実施形態に容易に適応することができる。例えば、いくつかの実施形態において、融合タンパク質含有試料を抗体含有試料の代わりに提供することとなる。融合タンパク質試料は、量及び配列に関して様々であることになる。好ましい実施形態において、単一試料中に存在する融合タンパク質の実質的にすべてが同じ配列であることとなる。「単一試料中に存在する融合タンパク質の実質的にすべてが同じ配列である」は、他の融合タンパク質による少量(例えば、20%まで、好ましくは15%未満、10%未満、5%未満、4%未満又は3%未満)の夾雑が存在し得るという認識であるが、単一試料が1つの融合タンパク質を含むという選択(preference)を反映している。
【0078】
抗体と同様に、本方法は、融合タンパク質の固定化の前の精製ステップを必要としない。いくつかの態様において、融合タンパク質含有試料に提供される融合タンパク質は、精製されていない。抗体と同様に、いくつかの実施形態において、非精製細胞培養上清を融合タンパク質含有試料として提供する。細胞培養で融合タンパク質を生成する方法は、当技術分野で公知であり、本明細書では述べない。いくつかの実施形態において、融合タンパク質含有試料中の融合タンパク質は、IgG枯渇培養培地、特に、ウシIgGを枯渇させた培養培地中で増殖させた。抗体と同様に、本方法は、非常に少量(例えば、1〜500μg)の融合タンパク質を含む試料を用いて実施することができる。いくつかの実施形態において、単一試料に1μg〜100μg、1μg〜50μg、1μg〜20μg、5μg〜100μg、5μg〜50μg、5μg〜20μgの融合タンパク質が存在する。
【0079】
本方法は、固体支持体上に融合タンパク質を固定化して、固定化融合タンパク質を供給するステップを含む。いくつかの実施形態において、固体支持体は、融合タンパク質含有試料中に存在する量より多くの融合タンパク質に結合する容量を有し、又は結合した融合タンパク質の量は、固体支持体の容量より少ない。他の実施形態において、固体支持体は、低い結合容量を有する。
【0080】
融合タンパク質が固体支持体上に固定化された時点で、還元ステップを実施して、固定化融合タンパク質の還元性ジスルフィド結合を完全に還元し、反応性チオールを生成させる。還元ステップの後、融合タンパク質に所望の化学的実体を負荷する(換言すると、所望の化学的実体にコンジュゲートする)。再び、用いる化学的実体の選択は、アッセイの目的に一部依存する。本発明のいくつかの実施形態において、融合タンパク質は、融合タンパク質薬物コンジュゲートとして用いるための融合タンパク質を選択する目的のためにスクリーニングする。これらの実施形態において、融合タンパク質を薬物にコンジュゲートすることが望ましい。融合タンパク質は、直接的に又はリンカーを介して間接的に薬物にコンジュゲートすることができる。薬物及び薬物−リンカーは、本明細書に記載する任意の薬物又は薬物−リンカーであり得る。抗体と同様に、融合タンパク質は、薬物、キャッピング剤及び必要に応じて検出剤を含む反応混合物と接触させることができる。抗体と同様に、本発明は、融合タンパク質薬物コンジュゲートとして用いるための融合タンパク質を選択する目的のためではなく、コンジュゲートしていない融合タンパク質として用いるための融合タンパク質を選択する目的のために、融合タンパク質をスクリーニングする実施形態を包含する。これらの実施形態において、コンジュゲーション反応混合物は、薬物又は薬物リンカーを含まないが、代わりに検出剤及びキャッピング剤の混合物を含む。抗体コンジュゲートと同様に、いくつかの実施形態において、本明細書に記載する融合タンパク質コンジュゲートを作製するための方法は、試料間で実質的な均一な負荷を有する複数の融合タンパク質コンジュゲート組成物をもたらす。融合タンパク質の溶出後、活性アッセイ及び/又は他のアッセイを実施して、融合タンパク質を特徴づけることができる。アッセイの結果及び融合タンパク質コンジュゲート組成物中の相対的又は実際のタンパク質濃度の知識を用いて、コンジュゲートしていない融合タンパク質としての又は融合タンパク質薬物コンジュゲートとしての所望の特性を有する融合タンパク質を同定することができる。
【0081】
本明細書に記載する方法を用いて、コンジュゲートしていない抗体として十分に機能する抗体及びコンジュゲートしていない融合タンパク質として十分に機能する融合タンパク質を同定することができ、さらなる開発のために選択することができる。いくつかの実施形態において、本方法により同定される抗体又は融合タンパク質は、治療及び/又は非治療適用のために処方する。同様に、薬物コンジュゲートとして所望の活性を有するものと同定された抗体又は融合タンパク質は、さらなる開発のために選択することもできる。いくつかの実施形態において、そのような抗体又は融合タンパク質は、公知の方法を用いて所望の薬物又は薬物−リンカーにコンジュゲートし、治療及び/又は非治療適用のために処方する。いくつかの実施形態において、抗体、抗体薬物コンジュゲート、融合タンパク質及び融合タンパク質コンジュゲートは、薬学的組成物として処方され、治療上又は予防上有効量の抗体、抗体−薬物コンジュゲート、融合タンパク質又は融合タンパク質コンジュゲート及び1つ以上の薬学的に適合性のある(許容される)成分を含む。例えば、薬学的組成物又は非薬学的組成物は、一般的に1つ以上のキャリア(例えば、水及び油などの滅菌液体)を含む。水は、薬学的組成物を静脈内投与する場合に、より一般的なキャリアである。食塩溶液並びに水性デキストロース及びグリセロール溶液も特に注射用溶液用の液体キャリアとして用いることができる。適切な賦形剤は、例えば、アミノ酸、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどである。組成物は、所望の場合、より少量の湿潤剤若しくは乳化剤又はpH緩衝剤も含み得る。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、持続放出処方物などの形態をとり得る。適切な薬学的キャリアの例は、E.W. Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。そのような組成物は一般的に、一般的に精製された形態の治療上有効量のタンパク質を、患者への適切な投与のための形態を与えるようにするための適切な量のキャリアとともに含む。処方物は、投与方法に対応している。
【0082】
一般的に、静脈内投与用の組成物は、滅菌等張性水性バッファー中溶液である。必要な場合、医薬品は、可溶化剤及び注射部位の疼痛を緩和するためのリグノカインなどの局所麻酔薬も含み得る。一般的に、成分は、例えば、活性薬の量を示したアンプル又はサシェなどの密閉容器入りの乾燥凍結乾燥粉末又は水不含有濃縮物として、単位剤形で別個に又は混合された状態で供給される。医薬品を注入により投与すべきである場合、滅菌の薬学的グレードの水又は食塩水を含む注入ビンを用いて投薬することができる。医薬品を注射により投与する場合、投与前に成分を混合することができるように、滅菌済み注射用水又は生理食塩水のアンプルを供給することができる。
【0083】
本発明の範囲を限定することを意図しない以下の実施例において本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0084】
(実施例1)溶液中及び固相による抗体の還元
抗体がそれらの天然の折りたたみ構造を保持する条件下では、TCEPは、水溶性試薬に接近できない免疫グロブリンドメインの鎖内ジスルフィドを還元せずに鎖間ジスルフィドを容易に還元することは、十分に認識されている。抗体がプロテインGアフィニティ媒体に結合している場合、鎖間ジスルフィドに対するこの選択性は、変化しないままである。これを図1に示す。この図にはプロテインG固定化マウス抗体を10mM TCEPで還元した後、過剰のmc−MMAFをコンジュゲートしたもののクロマトグラムを示す。これらのクロマトグラムを従来の溶液化学によりTCEPで還元し、mc−MMAFと反応させた同じ抗体のクロマトグラムと重ね合わせた。標準溶液法と固相法との同等な結果は、抗体の反応性がプロテインGアフィニティ媒体への結合により著しく変化しないことを示すものである。この特徴は、最も豊富な抗体における還元性ジスルフィドの数に対して過剰な量のTCEPを用いることによって、存在する各抗体の量に無関係に抗体の大規模パネルをすべて同じ数の反応性チオールに還元することを可能にするものである。どのような量の抗体が存在し得るかという知識がない場合、理論上最も豊富な抗体は、アフィニティ樹脂の容量(樹脂1μL当たりの抗体μg)に樹脂床の容積(μL)を乗じたものと定義することができる。
【0085】
(実施例2)所望の薬物負荷を得るための薬物コンジュゲーション反応混合物中の薬物とキャッピング剤との比率の調整
図2は、プロテインGに固定化し、過剰のTCEPで完全に還元したマウスIgG1にN−エチルマレイミド(NEM)との混合物として加えた場合の、マレイミド薬物mcMMAFの負荷の程度を示す。図に、この実施例において0.4の平均mcMMAFモル分率を有するコンジュゲート(薬物負荷4)が望ましい場合にマレイミド混合物中のmcMMAFのモル分率が0.53でなければならないような、NEMと比べてmcMMAFの反応性がわずかに低いことが示されている。各コンジュゲートにおけるmcMMAFの負荷は、薬物負荷に基づいて重鎖と軽鎖を効率よく分離する、PLRP−Sカラムを用いた逆相クロマトグラフィーにより決定した。mcMMAFの疎水性により、mcMMAFコンジュゲーションの程度が増加した種についてのより遅い保持時間がもたらされる(図3)。mcMMAFとNEMとの混合物をこの比率で調製し、マウス抗体の小パネルに加えて、異なるIgGイソ型にわたるこの比率の一般性を評価した。下表に示すように、両方が5個の鎖間ジスルフィドを有するマウスIgG1及びIgG2aは、PLRP−Sクロマトグラフィーにより決定したとき3.9から4.2の間のmcMMAF薬物負荷レベルを示した。6個の鎖間ジスルフィドを有するマウスIgG2bは、完全な還元に起因する、抗体当たりの反応性チオールの数がより大きい結果として、対応するより大きい平均mcMMAF負荷を示した。この結果は、特定の負荷レベルが望まれる場合に還元性抗体のジスルフィドの数に応じてマレイミド混合物を調整することの重要性を示すものである。
【0086】
【表1】
(実施例3)具体例としての蛍光団の負荷レベルを決定するための方法及び抗体コンジュゲートにおける蛍光団の負荷を決定するための標準物質を調製するための方法
コンジュゲートに存在する薬物及び蛍光団の両方を含む混合コンジュゲートを制御できる方法で調製することができる。蛍光団の存在は、抗体の大パネルから得られるコンジュゲートのより感度の高い定量を可能にし、或いは当パネルについて実施される結合アッセイ又は他のアッセイについてのリポーター基となり得る。Alexa Fluor(登録商標)647及びmcMMAFの所望の平均負荷を有する抗体コンジュゲートのパネルを作製するために、Alexa Fluor(登録商標)647マレイミドをmcMMAF及びNEMとともにマレイミドの混合物に含めることができる。Alexa Fluor647の標的負荷レベルを評価するために、Alexa Fluor647マレイミド及びmcMMAFの二成分混合物を用いて一連のマウスIgG1コンジュゲートを調製した。これらのコンジュゲート上のmcMMAFの平均負荷をPLRP−Sクロマトグラフィーにより決定し、完全に還元されたマウスIgG1上の総コンジュゲーション部位は10であるので、Alexa Fluor(登録商標)647の負荷を(10−mcMMAF負荷)と計算した。次にこれらのコンジュゲートの蛍光出力を、蛍光プレートリーダーを用いて決定し、Alexa Fluor(登録商標)647の負荷の関数としてプロットした(図4)。図4では、蛍光が負荷レベルの増加とともに抗体当たり約2.5から約3個の蛍光団に対応する最大値まで急激に増加し、その後はさらなる蛍光団の負荷に伴って間断なく減少することが示される。蛍光団の負荷の増加に伴う蛍光出力のこの低下は、おそらく、抗体の還元ジスルフィドにコンジュゲートしたときの蛍光団の密な空間的近接によって生ずる自己消光に起因する。この結果に基づいて、抗体当たり約3個の蛍光団負荷を選択した。この負荷レベルでは、蛍光出力が最大となる(蛍光アッセイにおける最大感度をもたらす)だけでなく、蛍光団負荷の関数としての蛍光の変動も最小となる。これは、抗体パネルにわたる蛍光団負荷の小さい変動が蛍光出力の大きい差をもたらさないという、コンジュゲートの濃度を定量化するために蛍光を用いる場合に重要な点を保証する。
【0087】
650nmと280nmの吸光度の比も上記の蛍光団−薬物コンジュゲートのそれぞれについて決定した。これらの比を、抗体当たりの蛍光団データに対してプロットして図5に示す。抗体当たり2.5〜3個の蛍光団の領域において、650nm/280nm吸光度比の変化が負荷レベルの変化とともに直線的であり、この直線の式は、実測吸光度値から混合AF647−mcMMAF抗体コンジュゲートにおける蛍光団負荷を定量するのに用いることができる。
【0088】
(実施例4)所望の薬物負荷レベルを達成するために化学的実体の比率を調整するための具体例としての方法
実施例3に記載したように、抗体当たりの蛍光団の具体例としての数は約3である。抗体含有試料がマウスIgG1及びIgG2aイソ型を含むものであり、蛍光団についての所望の負荷レベルが3であると仮定すると、AF647マレイミド及びmcMMAFの適切な混合物を調製することにより、7の薬物負荷レベルを達成することができる。しかし、N−エチルマレイミド(NEM)のようなキャッピング試薬を含めることにより、より低いレベルの薬物負荷を達成することができる。したがって、AF647及びmcMMAF負荷の所望のレベル(2つの合計がマウスIgG1又はIgG2aについて10以下であるという条件で)を達成するために、AF647、mcMMAF及びNEMの三成分混合物を適切な比率で調製することができる。所望の負荷レベルを達成するために必要なこれらの3つの試薬の正確な混合物を決定するために、それらの相対的な反応性を決定した。これは、mcMMAF:NEM及びAF647:NEMの1:1混合物を調製し、これらの混合物をプロテインG上に固定化した完全に還元したマウスIgG1と反応させることによって行った。得られたAF647コンジュゲートにおける蛍光団負荷のレベルを、図5を参照することによりその650nm/280nm吸光度比から決定し、一方、得られた薬物コンジュゲートにおけるmcMMAF負荷をPLRPクロマトグラフィーにより決定した。これらのデータを下表に示す。抗体におけるモル分率は、還元マウスIgG1にコンジュゲートするマレイミドの総数である10で割った各試薬(AF647又はmcMMAF)の負荷であり、NEMモル分率は、1から試薬のモル分率を差し引いたものであり、相対的反応性は、試薬のモル分率とNEMのモル分率との比である。この解析においては、NEMに相対的反応性値1を割り当てる。
【0089】
【表2】
これらの相対的反応性値を三成分混合物に用いるためのマレイミドの適切な比率に変換するために、最初に、最終のコンジュゲートした抗体(conjugated antibody)における各試薬の所望の負荷レベルを定めることが必要である。この実施例については、抗体コンジュゲートが還元されたとき10個の利用可能なチオールを有すると再び仮定して、4.5mcMMAF、3AF647及び2.5NEMの目標負荷を用いる。これは、それぞれ0.45、0.3及び0.25のコンジュゲートされたときのモル分率(conjugated mole fraction)に対応する。必要な計算を下表に要約する。
【0090】
【表3】
簡単に述べると、各試薬の、コンジュゲートされたときのモル分率についての目標値を、異なる試薬の1:1混合物を用いて上で決定したその相対的反応性係数で割る。次に、この値をすべての試薬についての値の合計で割ることによって、この値をマレイミド混合物中の必要なモル分率に変換する。例えば、mcMMAFについては、0.45/0.6=0.75;0.75/(0.75+0.74+0.25)=0.43。このように、0.43:0.43:0.14の比率のmcMMAF、AF647及びNEMの混合物は、それぞれ3つの試薬についての平均負荷4.5、3及び2.5を有する抗体コンジュゲートを生成すると予測される。同様な方法で、コンジュゲートにおける異なる負荷レベルを達成するために試薬の異なる比率を計算することができ、又はそれらの相対的反応性が決定されたならば、他の試薬についての比率を計算することができる。
【0091】
(実施例5)試料にわたる薬物負荷の一貫性の実証
mcMMAF、AF647、マレイミド及びNEMの溶液を0.43:0.43:0.14の比率で調製し、本方法により抗体のパネルをコンジュゲートするために用いた。これらの抗体は、マウス免疫付与キャンペーンから得られた新たに融合させたハイブリドーマを用いた1.5mLのウシIgG枯渇ハイブリドーマ培養培地から生成させた。得られた混合コンジュゲートの薬物及び蛍光団負荷の一貫性を決定するために、試料の1枚の96ウエルプレートを分析に供した。蛍光団負荷は、吸光度プレートリーダーで測定した各試料の650nm/280nm吸光度比により、図5に示す直線関係を参照して決定した。得られたデータを、各試料が生成したコンジュゲートの量に対してプロットして図6に示す。データは、少なくとも2.5μgのコンジュゲートを生成した試料についてのみ示す。その理由は、これより低い量は、ベースラインを有意に上回る280nm吸光度値をもたらさなかったからである。この2.5μg閾値に適合した65の試料がプレート上に存在しており、それらを図6に示す。図においてわかるように、負荷は、抗体当たりの蛍光団として2から4の間に散在しており、計算平均値が3.26、変動係数が10.2%である。3.26の平均負荷は、目標負荷3から10%未満異なっている。重要なことに、観測された蛍光団負荷レベルの範囲は、自己消光現象のために蛍光が著しく変化しない蛍光対負荷曲線(図4)の領域内に入っていた。換言すれば、抗体当たり2、3又は4個の蛍光団を有する抗体間の観測される蛍光の差は、20%未満であると予想される。mcMMAF負荷は、PLRPクロマトグラフィーにより決定した。mcMMAF−AF647−NEM抗体コンジュゲートの試料PLRPクロマトグラムを図7に示す。この図は、タンパク質を含むピークのすべてを検出するための280nmと少なくとも1つのAlexa Fluor(登録商標)647を含むピークを検出するための620nmの2つの分析波長のオーバーレイである。この図においてわかるように、NEMを含む軽鎖(2.2分)はAlexa Fluor(登録商標)647を含む軽鎖(2.5分)からわずかに分離されているが、両方ともmcMMAFを含む軽鎖(3.8分)から十分に分離されており、これにより、PLRPカラムはmcMMAF負荷に基づいて種を十分に分離するが、AF647負荷には基づかないことが示される。軽鎖は、TCEP処理によって還元される1つのシステインのみを含むので、これらは、存在する唯一の軽鎖種であり、NEM及びmcMMAFピークは、それらがAF647を含まないので、620nmでの吸光度を有さない。重鎖ピーククラスターは、4個の利用可能なチオールを含み、各ピークが単一種でないという事実のため、より複雑である。例えば、mcMMAFの2コピーを有する重鎖に対応するピーク(7.7分)は、2AF647、2NEM又は1AF647及び1NEMも含む重鎖種の集合であり、これらの様々な種は、PLRPカラムにより分離されない。分離のこのような特徴は、AF647又はNEMの存在による影響を受けずにmcMMAFの負荷を厳密に評価するためにこれらのデータを用いることを可能にするものである。この方法を用いて、mcMMAFの負荷レベルをハイブリドーマ上清のプレートからの34個の試料について決定し、各試料が生成したコンジュゲートの量に対して図8にプロットする。図においてわかるように、負荷は、抗体当たりmcMMAFの4から6コピーの間に散在しており、計算平均値は4.51、変動係数は7.75%である。4.51の平均負荷は、正確に4.5の目標レベルである。図においてわかるように、5より大きい負荷レベルを有する3つの域外値が存在しており、これらの試料のPLRPクロマトグラムは、mcMMAFの5コピーを有する重鎖種を含み、これは、これらの抗体の重鎖上にさらなる還元性ジスルフィドの存在を示すものであり(例として図9参照)、これらの抗体がマウスIgG2bイソ型であることが示唆される。したがって、これらの試料に認められたより高い負荷は、他の抗体と比較してmcMMAFの不釣り合いな負荷に起因するのではなく、むしろ、これらの抗体は、20%多くの利用可能なチオール(10個でなく12個)を有し、したがって、20%より高いレベルで各試薬を負荷されると予想されよう。これらの3つを解析から除外し、10個の利用可能なチオールを有する抗体のみを考慮する場合、31個の抗体の平均mcMMAF負荷は4.42であり、変動係数は3.45%となる。これらの結果は、可変のイソ型の抗体のパネルにわたる、また新たに融合させたハイブリドーマのパネルの可変の量での、本方法によって達成された試薬負荷(mcMMAF及びAF647)の一貫性を示している。
【0092】
(実施例6)薬物−リンカー及びキャッピング剤を負荷した抗体コンジュゲートを作製するための具体例としての方法
ハイブリドーマ上清を5mL丸底チューブ中で4.5mL溶液として調製した。150μLプロテインG樹脂スラリー(Millipore ProSep−G)をそれぞれに加えた。チューブにキャップをし、5℃で一夜回転させた。2つの対照チューブも調製し、1つはウシIgG枯渇増殖培地(ブランクとするため)を含み、1つは100μgの対照抗体をスパイクした同じ培地を含んでいた。
【0093】
翌朝、1250μL Matrixピペッターを用いて樹脂をチューブから2.5μmポリプロピレンフリット付き2mLの96ウエルフィルタープレート(Seahorse Bioscience)に移した。フィルタープレート中の上清を短時間にわたり真空をかけることによって吸引した(pulled through)。すべてのウエルを乾燥した(<30秒)後、すべての流体及び樹脂の完全な低減を保証するためにプレートを500×gで3分間遠心分離した。遠心後、フィルタープレートをマニホールドに戻し、各ウエルに500μLのPBSを入れた。次に、プレートをThermomixer上で1200RPM、30秒間振とうして、樹脂をスラリーとした。次に、PBSを真空により吸引した。この過程を2回繰り返し、合計3回PBS洗浄した。次に、この過程を3xPBSで繰り返し、次に、PBSでさらに洗浄した。この最終洗浄の後、プレートを前のように遠心した。
【0094】
次に、250mM KPO4、150mM NaCl、pH7、1mM EDTA中20mM TCEPを500μL加え、Thermomixer上で37℃において2時間振とうすることにより、結合抗体を還元した。還元後、TCEP溶液を真空により吸引し、次に上のように遠心し、上記のようにPBS+1mM EDTAで洗浄した。これを4回繰り返し、合計5回洗浄した。
【0095】
次に、結合抗体を4:6のモル比のNEM及びmc−MMAFの混合物にコンジュゲートした。12mMの総マレイミド濃度のNEM+mc−MMAFのストックをあらかじめ調製した。1.1mLのこの溶液を55mLの10%DMSOに加え、マルチチャネル容器に移し、500μLをフィルタープレートの各ウエルに加え、これを22℃で30分間振とうした。コンジュゲーションの後、マレイミド溶液を真空により吸引し、上記のように遠心した。遠心速度を1500×gに増加させて乾燥を完結した。次に、ウエルをPBS中10%DMSO 500μLで2回洗浄し、次にPBSで3回洗浄した。
【0096】
次に、200μLの100mMグリシン、pH2.0を各ウエルに加え、Thermomixer上で22℃において1200RPM、3分間振とうすることにより、結合ADCを溶出した。振とうしながら、20μLの中和バッファー(1M二塩基性リン酸塩+0.1%Tween−20)を350μL収集プレートの各ウエルに加えた。3分経過したとき、1500×gで6分間遠心することにより、ADCを収集プレート中に溶出した。
【0097】
200μLの各ADC溶液をCostar UVアッセイプレートに移した。中和溶出バッファーを含む第2のプレートを準備して、ブランクとした。Molecular Devices SpectraMaxプレートリーダーを用いてA280を測定し、タンパク質濃度を決定した。
【0098】
最後に、ADCを滅菌ろ過した。BSC内で、滅菌0.2μmフィルタープレート(Millipore)を、ラボテープを用いて滅菌1mL収集プレート(Matrix)に固定した。次に、ADC溶液をフィルタープレートに加え、500×gで3分間遠心した。次に、アセンブリをBSCに移し、分解し、次に収集プレートに滅菌済みキャップマット(Matrix)で蓋をした。
【0099】
(実施例7)薬物−リンカー、キャッピング剤及び蛍光団を負荷した抗体コンジュゲートを作製するための具体例としての方法
新たに融合させたハイブリドーマをHAT及び蛍光標識抗マウスIgG(Genetix)を含むメチルセルロース培地(Genetix)中でプレート培養した。クローン性IgG産生コロニーを選択し、HSFM(InVitrogen)+IgG枯渇クローニング因子(Roche)を含む96Wプレート中に沈積させた。100ng/mlのCy5標識抗マウス二次抗体(Jackson Labs)を含む均質アッセイ中で、非精製ハイブリドーマ培養上清の4倍希釈物を、標的腫瘍細胞とともにインキュベートした。腫瘍細胞へのハイブリドーマの結合をFMAT8200(Applied Biosystems)を用いて検出し、陽性ウエルを2mlのHSFM(InVitrogen)+IgG枯渇クローニング因子を含む48Wディッシュ中に拡大した。48Wの消滅した(extinguished)上清からの抗体を固相精製及びコンジュゲーションに用いた。
【0100】
ハイブリドーマ上清(1.5mL)を0.45μmポリプロピレンフリット付きの96ウエルディープウエルプレート(Seahorse Bioscience)に移した。蛍光によるコンジュゲート濃度の定量を可能にするために、標準マウス抗体をコンジュゲーションに含めた。50μgの標準抗体を、ブランク培地(合計200μg)を含むプレートの4ウエルに入れた。さらに、3ウエルに、バックグラウンド蛍光の決定のためにブランク培地のみを含めた。
【0101】
100μLのPBSを2.5μmポリプロピレンフィルター付きの96ウエルディープウエルフィルタープレート(Seahorse Bioscience)の各ウエルに入れた。20μLのプロテインG樹脂スラリー(GE Life Sciences GammaBind Plus)を各ウエルに加えた。
【0102】
プロテインG樹脂を含むフィルタープレートをレシーバープレートとして真空マニホールドに入れ、マニホールドを組み立てた。抗体試料及び標準物質を含む0.45μmフィルタープレートをマニホールドの上部にのせ、上清をそれに移した。真空をかけることにより、上清を、0.45μmフィルターを通してプロテインG樹脂を含むプレート中にろ過した。次に、樹脂プレートをEppendorf Thermomixerを用いて室温において1200RPM、2時間振とうして、プロテインGへの結合を達成した。残存上清は、500×gで5分間の遠心分離により2mLディープウエルレシーバープレート中にろ過した。
【0103】
100mMリン酸カリウム、pH7.4、150mM NaCl中10mMトリカルボキシエチルホスフィン(TCEP)の溶液をプレートに加えた(1ウエル当たり150μL)。プレートを上記のように30分間振とうし、次に振とう機から取り出し、500×gで2分間遠心分離した。樹脂を1mM EDTAを含む500μLのPBSで4回洗浄し、毎回の洗浄後に真空ろ過した。最終洗浄後、さらに500μLのPBS/EDTAを加え、500×gで3分間の遠心分離により除去した。
【0104】
薬物−リンカー(mcMMAF)、Alexa Fluor(登録商標)647及びNEMの個々のストックをDMSO中10mMで調製した。次に、これらのストックをコンジュゲーションのために以下の比率で混合して単一溶液にした。
【0105】
3:3:1 mcMMAF:Alexa Fluor(登録商標)647:NEM
140μLのこの溶液を15mLのPBS/EDTAに溶解し、150μLを洗浄済みプレートの各ウエルに加えた。次いで、プレートを上記のように15分間振とうし、次に振とう機から取り出し、500×gで2分間遠心分離した。樹脂を500μLのPBSで4回洗浄し、毎回の洗浄後に真空ろ過した。最終洗浄後に、さらに500μLのPBSを加え、500×gで3分間の遠心分離により除去した。
【0106】
10μLの1Mリン酸カリウムpH7.4を350μLの96ウエル透明底アッセイプレートの各ウエルに加えた。樹脂プレートをアッセイプレートの上におき、100μLの溶出バッファー(50mMグリシンpH2.5+0.08%Tween−20)を各ウエルに加えた。プレートを用手揺動により2分間緩やかにかき混ぜ、次に、500×gで2分間遠心分離して、溶出抗体コンジュゲートをアッセイプレートに収集した。アッセイプレートを直ちに蛍光プレートリーダー(Molecular Devices)に入れ、中和バッファーの溶出バッファー中への完全な混合を保証するためにプレートリーダーシェーカーを用いて10秒間振とうした。次に675nmでの各ウエルの蛍光を、665nmカットオフフィルターを用いた635nmの励起を用いて測定した。標準物質を含むウエル中の溶液を除去し、単一標準溶液にプールし、この標準物質の濃度を1cmキュベット中で従来のA280吸光度法により決定した。次に、この標準物質の1μg/mLの濃度までの希釈系列を調製した(中和溶出バッファーを希釈剤として用いた)。次に110μLの各標準物質を清浄な350μL透明底アッセイプレートに移し、プレートリーダーで蛍光を再び測定した。二次多項式曲線を標準物質の蛍光値に適合させ、この標準曲線への内挿法により試料の濃度を割り当てた。
【0107】
最後に、ADCを滅菌ろ過した。BSC内で、滅菌0.2μmフィルタープレート(Millipore)を、ラボテープを用いて滅菌1mL収集プレート(Matrix)に固定した。ADC溶液をフィルタープレートに加え、500×gで3分間遠心した。次に、アセンブリをBSCに移し、分解し、次に収集プレートに滅菌キャップマット(Matrix)で蓋をした。
【0108】
蛍光団及び薬物を含む混合抗体コンジュゲートを細胞結合アッセイ及び細胞傷害性アッセイにおいて試験した。細胞ベースの結合アッセイのために、抗体パネルをPBS+2%血清で1:200及び1:1000に希釈し、96W黒色プレート中の標的細胞上で室温において2時間インキュベートした。対照抗体を各プレートに用いて、ヒト及びシノ(cyno)形の抗原に対する飽和結合曲線を作成した。次に、プレートをFMAT8200で分析し、各希釈物についての平均蛍光強度値を飽和結合曲線上にプロットして、ヒト及びシノ形の抗原に対する試験抗体の親和性を推定した。ヒト及びシノ抗原への同等の結合を示したハイブリドーマを細胞傷害性試験に提出した。細胞傷害性試験は、適切な増殖培地中でウエル当たり5,000個の細胞を蒔くことによって行った。混合したコンジュゲートをそれぞれ1:100及び1:1000の最終希釈物に加えた。腫瘍細胞を薬物/蛍光団コンジュゲートとともに37℃で96時間インキュベートした。Cell Titer Glo(Promega)を用いて細胞生存率を測定し、無処理対照細胞に対する生存率の百分率に基づいて薬物/蛍光団コンジュゲートの効力を評価した。1nMの濃度で腫瘍細胞の70%未満の生存率をもたらした薬物/蛍光団コンジュゲートをさらなる試験に提出した。
【0109】
(実施例8)IgG枯渇
クローニング因子は、マウスB細胞との融合の後のハイブリドーマ細胞系を拡大する際に培地成分として一般的に用いられる。クローニング因子は、健常成長細胞の上清から採取される重要な細胞メディエーターを含み、これらは、新たなハイブリドーマ融合物が回復して、より頑健に成長し始めることを促進する。クローニング因子を構成する健常成長細胞から採取された上清は、培地成分として、ウシアルブミン、IgG及び他の血清タンパク質を含むと思われるウシ血清を含むと考えられる。少量の夾雑IgGでさえ抗体の定量的回収及び得られるADCの定量に影響を与え得るため、この場合に問題となるものはウシIgGである。
【0110】
クローニング因子からウシIgGを除去するための方法は、次の通りである。5mlのプロテインGカラムを1XPBS(5カラム容積、CV)25mlで平衡化する。ハイブリドーマクローニング因子の内容物を60cc注射器に充填する。注射器をプロテインGカラムに取り付け、シリンジポンプに接続する。ポンプを3ml/分に設定し、クローニング因子をプロテインGカラムに通し、流出物(effluent)を収集する。流出物は、IgG枯渇クローニング因子を含む。ウシIgGは、プロテインGカラムに結合する。IgG枯渇ハイブリドーマクローニング因子をバイオセーフティキャビネット内で0.22μmシリンジフィルターを用いて滅菌ろ過する。
【技術分野】
【0001】
この出願は、2010年3月2日に出願された米国仮出願第61/309,725号、および2010年4月13日に出願された米国仮出願第61/323,433号(これらの各々は、全ての目的のために、その全体が参考として援用される)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
癌細胞に対する抗体薬物コンジュゲート(ADC)の活性は、結合親和力、インターナリゼーションの速度、細胞内輸送及び標的細胞集団内の効率的な薬物放出などの多数の因子による影響を受け得る。したがって、薬物送達のための理想的な抗体の特性は、コンジュゲートしていない(unconjugated)治療用抗体の特性と必ずしも同じではない。さらに、最適なADCをスクリーニングするための、二次抗体の使用を伴う間接的アッセイは、誤認を招き得る。その理由は、細胞表面上の架橋が下流事象の変化をもたらす可能性があり、二次抗体の親和力がアッセイのダイナミックレンジに制限を与えるからである。ADC療法用の新規な抗原に対する候補抗体を探索する場合には、ADCの形の大規模な抗体パネルをスクリーニングし、それらの細胞傷害性活性を評価するのが、これらの結果が細胞傷害性活性に影響を及ぼし得るパラメーターの直接的な測定値となるので、最も望ましい。しかし、抗体発見キャンペーンによくあるようにマイクログラム量の多数の抗体を取り扱う場合、従来のコンジュゲーション法による収率は限られている。ADCとして使用するための、抗体をスクリーニングする改善された方法についての必要性がある。本発明は、この必要性及び他の必要性に対応するものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、抗体スクリーニングアッセイに用いるための抗体コンジュゲートを作製するための方法及び特許請求の範囲に記載する方法により生成される抗体コンジュゲートを提供する。
【0004】
いくつかの実施形態において、上記方法は、第1及び第2の抗体含有試料を供給するステップであって、第1の試料に存在する抗体の実質的にすべてが同じ配列のものであり、かつ第2の試料に存在する抗体の実質的にすべてが同じ配列のものであるという条件で、第1及び第2の抗体含有試料が抗体量及び抗体配列に関して様々である、ステップと;抗体を固体支持体に固定化して、固定化抗体を含む第1及び第2の試料を供給するステップと;固定化抗体の還元性ジスルフィド結合を完全に還元して、還元した固定化抗体を含む第1の試料及び還元した固定化抗体を含む第2の試料を供給するステップであって、還元が還元性ジスルフィド結合に対して選択的である、ステップと;還元した固定化抗体を、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び必要に応じて検出剤と反応させて、固定化抗体コンジュゲートを供給するステップであって、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤が反応性チオールと選択的に反応し、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤がモル過剰(molar excess)で供給され、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤の比率が、所望のレベルの薬物負荷を達成するように選択される、ステップと;抗体コンジュゲートを溶出して、遊離抗体コンジュゲートの第1の試料及び遊離抗体コンジュゲートの第2の試料を供給するステップとを含む。
【0005】
いくつかの実施形態において、上記方法は、複数のハイブリドーマクローンから産生された定量化されていない抗体を含む未精製ハイブリドーマ上清の複数の試料を供給するステップであって、ここで、複数の試料の大多数において、各試料に存在する抗体の実質的にすべてが単一ハイブリドーマクローンからのものであるという条件で、抗体量及び抗体配列に関して様々である、ステップと;定量化されていない抗体を固体支持体上に固定して、固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップと;固定化抗体の鎖間ジスルフィドを完全に還元して、還元した固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップと;還元した固定化抗体を、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び検出剤と反応させて、固定化抗体コンジュゲートを供給するステップであって、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び検出剤が反応性チオールと選択的に反応し、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤がモル過剰で供給され、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び検出剤の比率が、所望のレベルの薬物負荷を達成するように選択される、ステップと;固体支持体から抗体コンジュゲートを溶出して、複数の抗体コンジュゲート組成物を供給するステップとを含む。
【0006】
いくつかの実施形態において、上記方法は、抗体量及び抗体配列に関して様々である、複数の抗体含有試料を、複数の抗体含有試料の大多数において、単一試料に存在する抗体の実質的にすべてが同じ配列のものであるという条件で、供給するステップと;抗体を固体支持体上に固定して、固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップと;固定化抗体の還元性ジスルフィド結合を完全に還元して、還元した固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップであって、還元が還元性ジスルフィド結合に対して選択的である、ステップと;還元した固定化抗体を、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び必要に応じて検出剤と反応させて、固定化抗体コンジュゲートを含む複数の試料を供給するステップであって、ここで、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤が反応性チオールと選択的に反応し、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤がモル過剰で供給され、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤の比率が、所望のレベルの薬物負荷を達成するように選択される、ステップと;抗体コンジュゲートを溶出して、遊離抗体コンジュゲートを含む複数の抗体コンジュゲート組成物を供給するステップとを含む。
【0007】
いくつかの実施形態において、上記方法は、抗体量及び抗体配列に関して様々である、複数の抗体含有試料を、複数の抗体含有試料の大多数において、単一試料に存在する抗体の実質的にすべてが同じ配列のものであるという条件で、供給するステップと;抗体を固体支持体上に固定して、固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップと;固定化抗体の還元性ジスルフィド結合を完全に還元して、還元した固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップであって、ここで、還元が還元性ジスルフィド結合に対して選択的である、ステップと;還元した固定化抗体をキャッピング剤及び検出剤と反応させて、固定化抗体コンジュゲートを含む複数の試料を供給するステップであって、キャッピング剤及び検出剤が反応性チオールと選択的に反応し、キャッピング剤及び検出剤がモル過剰で供給され、キャッピング剤及び検出剤の比率が、所望のレベルの検出剤及び/又はキャッピング剤負荷を達成するように選択される、ステップと;抗体コンジュゲートを溶出して、遊離抗体コンジュゲートを含む複数の抗体コンジュゲート組成物を供給するステップとを含む。
【0008】
いくつかの実施形態において、上記方法は、抗体量及び抗体配列に関して様々である、複数の抗体含有試料を、複数の抗体含有試料の大多数において、単一試料に存在する抗体の実質的にすべてが同じ配列のものであるという条件で、供給するステップと;抗体を固体支持体上に固定して、固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップと;固定化抗体の還元性ジスルフィド結合を完全に還元して、還元した固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップであって、ここで、還元が還元性ジスルフィド結合に対して選択的である、ステップと;還元した固定化抗体を、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び必要に応じて検出剤と反応させて、固定化抗体コンジュゲートを含む複数の試料を供給するステップであって、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤が反応性チオールと選択的に反応し、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤がモル過剰で供給され、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤の比率が、所望のレベルの薬物負荷を達成するように選択される、ステップと;抗体コンジュゲートを溶出して、遊離抗体コンジュゲートを含む複数の抗体コンジュゲート組成物を供給するステップと;抗体コンジュゲートの活性についてアッセイするステップと;アッセイの結果に基づいて抗体を選択するステップとを含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、上記方法は、抗体量及び抗体配列に関して様々である、複数の抗体含有試料を、複数の抗体含有試料の大多数において、単一試料に存在する抗体の実質的にすべてが同じ配列のものであるという条件で、供給するステップと;抗体を固体支持体上に固定して、固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップと;固定化抗体の還元性ジスルフィド結合を完全に還元して、還元した固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップであって、ここで、還元が還元性ジスルフィド結合に対して選択的である、ステップと;還元した固定化抗体をキャッピング剤及び検出剤と反応させて、固定化抗体コンジュゲートを含む複数の試料を供給するステップであって、ここで、キャッピング剤及び検出剤が反応性チオールと選択的に反応し、キャッピング剤及び検出剤がモル過剰で供給され、キャッピング剤及び検出剤の比率が、所望のレベルの検出剤及び/又はキャッピング剤負荷を達成するように選択される、ステップと;抗体コンジュゲートを溶出して、遊離抗体コンジュゲートを含む複数の抗体コンジュゲート組成物を供給するステップと;抗体コンジュゲートの活性についてアッセイするステップと;アッセイの結果に基づいて抗体を選択するステップとを含む。
【0010】
本発明のこれら及び他の態様は、以下の詳細な説明、特定の実施形態の非限定的な実施例及び添付図を参照することによってより十分に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、非コンジュゲート形のマウスIgG1(破線)、完全に還元され、溶液中でmcMMAFとコンジュゲートしたマウスIgG1(太線)、及びプロテインGセファロースに固定化されながら、完全に還元され、mcMMAFとコンジュゲートしたマウスIgG1(細線)の疎水性相互作用クロマトグラムのオーバーレイを示す図である。
【図2】図2は、プロテインGに固定化され、過剰なトリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンで完全に還元されたマウスIgG1への選ばれた(select)薬物負荷を達成するために必要なmcMMAF及びN−エチルマレイミドを含む、具体例としての反応混合物中のmcMMAFのモル分率を示す図である。
【図3】図3は、抗体の重鎖及び軽鎖上のmcMMAF及びNEMの分布を示す、抗体薬物コンジュゲートの試料PLRPクロマトグラムを示す図である。薬物の疎水性により、より多くの薬物が付いた種について、より遅い保持時間がもたらされる。それぞれの種について、薬物の数が示されている。
【図4】図4は、蛍光団(fluorophore)負荷の関数としての薬物−Alexa Fluor(登録商標)647コンジュゲートの蛍光出力を示す図である。抗体当たりの蛍光団の数をx軸にプロットし、蛍光をy軸にプロットする。負荷が抗体当たり約2.5〜3であるときに蛍光が最大値に急激に増加し、さらに負荷を増やすと蛍光は減少する。
【図5】図5は、混合蛍光団−mcMMAF抗体コンジュゲートにおけるAlexa Fluor(登録商標)647負荷レベルの関数としてプロットした、650nmにおける吸光度と280nmにおける吸光度の比を示す図である。
【図6】図6は、65個の試料にわたるAlexa Fluor(登録商標)647負荷の一貫性を示す図である。蛍光団負荷は、各抗体コンジュゲート試料の650nm/280nm吸光度比を得て、図5を参照して吸光度比に関連する蛍光団負荷を求めることによって決定した。
【図7】図7は、mcMMAF−AF647−NEM混合コンジュゲートのPLRPクロマトグラムを示す図である。抗体は、5つの還元性ジスルフィドを有する。この図は、2つの分析波長のオーバーレイを示すものである。細線により表された280nmの波長は、タンパク質を含むピークのすべてを検出し、太線により表された620nmの波長は、少なくとも1つのAlexa Fluor(登録商標)647を含むピークのすべてを検出する。
【図8】図8は、34個の試料にわたるmcMMAF負荷の一貫性を示す図である。
【図9】図9は、mcMMAF−AF647−NEM混合コンジュゲートのPLRPクロマトグラムを示す図である。抗体は、6つの還元性ジスルフィドを有する(例えば、マウスIgG2b)。280nmの波長は、細線により表され、620nmの波長は、太線により表されている。
【図10】図10は、ADCのプレートベースの固相合成の具体例としてのスキームを示す図である。
【図11】図11は、所望の特性を有するADCの発見への、固相コンジュゲーション技術の応用の具体例としてのスキームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
定義
「抗体」という用語は、本明細書で用いているように、(a)免疫グロブリンポリペプチド及び免疫グロブリンポリペプチドの免疫学的に活性な部分、すなわち、免疫グロブリンファミリーのポリペプチド若しくはそのフラグメント又は(b)標的抗原に免疫特異的に結合するそのような免疫グロブリンポリペプチド若しくはフラグメントの保存的に置換された誘導体を意味する。本発明に用いる抗体(抗体フラグメントを含む)は、(i)標的抗原に免疫特異的に結合する抗原結合部位、(ii)少なくとも1つの還元性ジスルフィド結合(例えば、鎖間ジスルフィド結合)及び(iii)固相に可逆的に結合することができるドメインを含む。いくつかの実施形態において、抗体は、全長Fc領域を含み、固相への結合は、Fc領域を介してなされる。いくつかの実施形態において、抗体は、抗体の1つ以上のFcドメインを含み、固相への結合は、1つ以上のFcドメインを介してなされる。いくつかの実施形態において、固相に可逆的に結合することができるドメインは、Fc領域ではなく、例えば、アフィニティタグなどの抗体上の工学技術で作製されたドメインである。抗体という用語は、非フコシル化又は低いコアフコシル化を有する抗体を含む。抗体は、例えば、Harlow & Lane、Antibodies: A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press、1988年)に一般的に記載されている。完全な抗体構造の基本的単位は、4つのポリペプチド、すなわち、非共有結合及びジスルフィド結合の両方により結合した2つの同一の低分子量(「軽」)鎖及び2つの同一の高分子量(「重」)鎖の複合体である。抗体のクラス及びサブクラスは、そのイソタイプである。抗体は、例えば、それらの天然の四量体(2軽鎖及び2重鎖)であってよく、公知のイソタイプIgG、IgA、IgM、IgD及びIgE並びにそれらのサブタイプ、例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4並びにマウスIgG1、IgG2a、IgG2b及びIgG3のいずれかであってよい。抗体は、好ましくはモノクローナルである。
【0013】
抗体と関連して、「還元性ジスルフィド結合」という用語は、(i)抗体が固体支持体に可逆的に結合している間に還元性であり、(ii)温和な還元条件下で還元性であるジスルフィド結合を意味する。温和な還元条件は、抗体のいかなる実質的な変性をも一般的に引き起こさず、抗体の抗原結合親和力に一般的に影響を及ぼさない条件である。温和な還元条件の例は、弱還元剤によるほぼ中性pHにおける水性条件下での還元である。弱還元剤の例は、TCEP(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン)及びDTT(ジチオトレイトール)である。したがって、温和な還元条件の1例は、約5℃〜約37℃の温度及び約5〜8のpHにおける過剰なTCEP又はDTT中での還元である。有機共溶媒は実質的にタンパク質を変性し得るので、有機共溶媒を変性及び/又はその後のコンジュゲーションステップに用いるべきである場合、それは、抗体の実質的な変性が起こらないような最小限の量の共溶媒(例えば、20%未満、好ましくは15%、10%又は5%未満)であるべきである。一般的に、還元性ジスルフィド結合は、溶媒が到達できる、すなわち、抗体の折りたたみドメイン内に埋もれないものである。(当業者は、本明細書で述べる方法による試料中の抗体の集団の還元性ジスルフィド結合を還元する場合、不可逆的に変性した状態になるより少量の抗体(例えば、一般的に10%未満、5%又は3%未満)が存在し得ることを理解する。)一般的に、抗体において、ジスルフィド結合は、2つのシステイン残基のチオール(−−SH)側基の酸化の結果として存在する。これらの残基は、異なるポリペプチド鎖(鎖間)又は同じポリペプチド鎖(鎖内)に位置し得る。酸化の結果として、ジスルフィド結合(−−S−−S−−)が元のシステイン残基のベータ炭素間に形成される。還元剤によるジスルフィド結合の処理により、ジスルフィド結合の還元的開裂が引き起こされて、2つの遊離チオール基、すなわち、反応性チオールが生ずる。いくつかの実施形態において、還元性ジスルフィド結合は、天然に存在する。いくつかの態様において、「還元性ジスルフィド結合」という用語は、抗体の天然に存在する鎖間ジスルフィド結合を意味する。いくつかの実施形態において、スルフヒドリル基(単数又は複数)は、抗体に化学的に導入される。スルフヒドリル基を導入する適切な方法は、組換えDNA技術を含む。スルフヒドリル基は、抗体に、例えば、抗体内又はカルボキシ末端に導入することができる。本明細書で述べる方法が、得られる抗体コンジュゲートの抗原結合活性に支障を来さないことが好ましいので、導入されるスルフヒドリル基が抗体の抗原結合部位以外の部位に導入されることが好ましい。好ましくは、導入されるスルフヒドリル基が重又は軽鎖可変領域以外の部位、例えば、好ましくは抗体の定常領域に導入される。いくつかの実施形態において、抗体にシステイン残基を工学的技術で作製する。システインのスルフヒドリル基は、本明細書で述べる方法を用いてその後に還元することができるジスルフィド結合を一般的に形成する。
【0014】
融合タンパク質と関連して、「還元性ジスルフィド結合」という用語は、(i)融合タンパク質が固体支持体に可逆的に結合している間に還元性であり、(ii)温和な還元条件下で還元性である、融合タンパク質のジスルフィド結合を意味する。本発明の方法で使用する融合タンパク質については、還元性ジスルフィド結合(単数又は複数)の還元の後にそれが一般的に完全なままであるべきである。温和な還元条件の例は、弱還元剤によるほぼ中性pHにおける水性条件下での還元である。いくつかの好ましい実施形態において、還元性ジスルフィド結合は、融合タンパク質のIgドメインに存在する。いくつかの実施形態において、ジスルフィド結合は、天然に存在し、融合タンパク質のIgドメインの天然に存在する鎖間ジスルフィド結合を意味する。いくつかの実施形態において、スルフヒドリル基(単数又は複数)は、融合タンパク質のIgドメインに化学的に導入される。
【0015】
「モノクローナル抗体」という用語は、真核若しくは原核細胞クローン又はファージクローンを含む単一細胞クローンに由来する抗体を意味し、それが産生される方法を意味しない。したがって、「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術により産生される抗体に限定されない。
【0016】
「Fc領域」という用語は、抗体の定常領域、例えば、CH4ドメインを必要に応じて有するCH1−ヒンジ−CH2−CH3ドメイン、又はそのようなFc領域の保存的に置換された誘導体を意味する。
【0017】
「Fcドメイン」という用語は、抗体の定常領域ドメイン、例えば、CH1、ヒンジ、CH2、CH3若しくはCH4ドメイン、又はそのようなFcドメインの保存的に置換された誘導体を意味する。
【0018】
「抗原」は、抗体が特異的に結合する分子である。
【0019】
「細胞傷害剤」は、細胞に対する細胞傷害性作用及び/又は細胞増殖抑制性作用を有する財を意味する。「細胞傷害性作用」は、標的細胞(単数又は複数)の枯渇、除去及び/又は殺滅を意味する。「細胞増殖抑制性作用」は、細胞増殖の抑制を意味する。
【0020】
抗体と関連する「鎖間ジスルフィド結合」という用語は、抗体の2つの重鎖の間又は重鎖と軽鎖の間のジスルフィド結合を意味する。
【0021】
本明細書で用いているように、「遊離抗体コンジュゲート」は、固体支持体に固定化されていない抗体コンジュゲート、例えば、固体支持体から放出された抗体を意味する。
【0022】
「AFP」という略語は、直後に示す一般式を有するジメチルバリン−バリン−ドライソロイイン−ドラプロイン−フェニルアラニン−p−フェニレンジアミンを意味する。
【0023】
【化1】
「MMAE」という略語は、直後に示す一般式を有するモノメチルアウリスタチンEを意味する。
【0024】
【化2】
「MMAF」という略語は、直後に示す一般式を有するドバリン−バリン−ドライソロイイン(dolaisoleunine)−ドラプロイン−フェニルアラニンを意味する。
【0025】
【化3】
「AEB」という略語は、アウリスタチンEをパラアセチル安息香酸と反応させることによって生成するエステルを意味する。「AEVB」という略語は、アウリスタチンEをベンゾイル吉草酸と反応させることによって生成するエステルを意味する。
【0026】
「薬学的に許容される塩」という語句は、本明細書で用いているように、分子又は高分子の薬学的に許容される有機又は無機塩を意味する。酸付加塩は、アミノ基を用いて生成させることができる。具体例としての塩は、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物の塩、臭化物の塩、ヨウ化物の塩、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩及びパモ酸塩(すなわち、1,1’メチレンビス−(2−ヒドロキシ3−ナフトエート))を含むが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩は、酢酸イオン、コハク酸イオン又は他の対イオンなどの他の分子の包含を伴い得る。対イオンは、親化合物上の電荷を安定化する任意の有機又は無機部分であり得る。さらに、薬学的に許容される塩は、その構造に1超の荷電原子を有し得る。複数の荷電原子が薬学的に許容される塩の一部である例は、複数の対イオンを有し得る。したがって、薬学的に許容される塩は、1つ以上の荷電原子及び/又は1つ以上の対イオンを有し得る。
【0027】
一般的事項
ADCとしての又はコンジュゲートしていない抗体(すなわち、裸の抗体)としてのそれらの能力に基づいて、抗体を直接的にスクリーニングする方法を発明した。試料中に存在する抗体の濃度の影響を受けず、抗体の不均質(heterogeneous)集団の個々の抗体の活性の比較を可能にする、少量の抗体に適用できる標識技術を開発した。
【0028】
スクリーニングアッセイは、所望の特性を有する抗体を同定するのに有用である。抗体は、スクリーニングされる抗体が(i)特定の抗原に免疫特異的に結合する抗原結合部位、(ii)少なくとも1つの還元性ジスルフィド結合(例えば、鎖間ジスルフィド結合)及び(iii)固相に結合することができるドメインを含むという条件で、抗体を生成させるための当技術分野で公知の任意技術により生成させることができる。
【0029】
本発明の1つの態様において、複数の抗体含有試料を提供する。「複数の試料」という語句は、2つ以上の試料を意味する。本明細書に示す方法はハイスループットスクリーニングに理想的に適しているので、本発明の1つの態様において、方法を少なくとも数十個又は少なくとも数百個の試料について同時に実施する。本明細書に示す方法の長所の1つは、抗体含有試料が同じ量の抗体を含み得ないとしても、抗体間の比較を行うことができることである。したがって、1つの態様において、試料は、抗体量に関して、及び抗体配列に関して異なる。例えば、1つの態様において、第1の試料が第1の量の第1の抗体を含み、第2の試料が第2の量の第2の抗体を含む。第1及び第2の量が異なり、第1及び第2の抗体が異なる。同じ抗原を標的とする抗体を比較することが望ましい実施形態において、抗体は、同じ抗原に免疫特異的に結合する。説明の目的のために、「複数の試料は、抗体量及び抗体配列に関して異なる」という語句は、複数の試料における試料のすべてが抗体量及び抗体配列に関して異なることを必要としないが、一方では試料間に特定のレベルの不均一性が存在する。抗体配列の不一致が存在する(例えば、第1の試料が第2の試料と異なる抗体を含む)が、単一試料が1つの抗体を含むこと、すなわち、単一試料に存在する抗体が同じ配列のものであることが好ましい。「単一試料に存在する抗体の実質的にすべてが同じ配列のものである」という語句は、いくつかの試料中に他の抗体によるある程度の夾雑が存在し得るという認識により、単一試料が1つの抗体を含むという選好を反映している。好ましくは、他の抗体によるある程度の夾雑を有するそれらの試料中に、30%未満、好ましくは20%未満、好ましくは15%未満、より好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、4%未満又は3%未満の他の抗体による夾雑が存在する。好ましい実施形態において、複数の抗体含有試料における抗体含有試料の大多数(試料の50%を超える、さらにより好ましくは試料の60%を超える、70%を超える、75%を超える又は80%を超える)が、他の抗体による夾雑を全く有さない又は他の抗体によるより少量の夾雑(例えば、他の抗体による15%未満、好ましくはさらに10%未満又は5%未満の夾雑)を有する1つの抗体を含む。いくつかの好ましい実施形態において、抗体含有試料の大多数は、同じ抗原に免疫特異的に結合する抗体を含む。
【0030】
本方法を用いてスクリーニングする抗体は、任意の抗原を標的とすることができる。具体例としての実施形態において、本方法によりスクリーニングする抗体は、CD19、CD20、CD21、CD22、CD30、CD33、CD38、CD40、CD70、CD74、CD83、CD133、CD138、CD200又はCD276から選択される抗原に免疫特異的に結合する。他の実施形態において、抗体は、BMPR1B、LAT1(SLC7A5)、STEAP1、MUC16、MUC1、巨核球増強因子(MPF)、Napi3b、Sema5b、PSCAhlg、ETBR(エンドセリンB型受容体)、STEAP2、TrpM4、CRIPTO、CD21、CD79a、CD79b、FcRH2、HER2、HER3、HER4、NCA、MDP、IL20Rα、ブレビカン、Ephb2R、ASLG659、PSCA、PSMA、TMPRSS2、TMPRSS4、GEDA、BAFF−R、CXCR5、HLA−DOB、P2X5、CD72、LY64、FCRH1、VEGF、PLAC1、VEGFR1、VEGFR2又はIRTA2に免疫特異的に結合する。他の実施形態において、抗体は、CD2、CD3、CD3E、CD4、CD11、CD11a、CD14、CD16、CD18、CD19、CD23、CD25、CD28、CD29、CD30、CD32、CD40L、CD51、CD52、CD54、CD56、CD70、CD80、CD123、CD133、CD138、CD147、CD227又はCD276に免疫特異的に結合する。他の実施形態において、抗体は、IL−1、IL−1R、IL−2、IL−2R、IL−4、IL−5、IL−6、IL−6R、IL−8、IL−12、IL−15、IL−18又はIL−23に免疫特異的に結合する。他の実施形態において、抗体は、タンパク質の溶質キャリアファミリー(例えば、溶質キャリアファミリー44、メンバー4(SLC44A4遺伝子によりコードされるタンパク質)若しくは溶質キャリアファミリー34、メンバー2(SLC34A2遺伝子によりコードされるタンパク質))からのタンパク質;LIV−1(SLC39A6遺伝子によりコードされるタンパク質);タンパク質のSLAMファミリー(例えば、SLAMファミリーメンバー1、2、3、4、5、6、7、8若しくは9)からのタンパク質;タンパク質のムチンファミリー(例えば、MUC1、MUC2、MUC3、MUC4、MUC5、MUC6、MUC7、MUC8、MUC9、MUC10、MUC11、MUC12、MUC13、MUC14、MUC15若しくはMUC16)からのタンパク質;タンパク質のSTEAPファミリー(例えば、STEAP1、STEAP2、STEAP3若しくはSTEAP4)からのタンパク質;腫瘍壊死因子受容体ファミリー(例えば、TNF−RI、TNF−RII、DR1、DR2、DR3、DR4、DR5)からのタンパク質;MNタンパク質;メソセリンタンパク質;タンパク質のSlitrkファミリー(例えば、SLITRK1、SLITRK2、SLITRK3、SLITRK4、SLITRK5若しくはSLITRK6)によりコードされるタンパク質又はGPNMB遺伝子によりコードされるタンパク質に免疫特異的に結合する。
【0031】
抗体含有試料は、多くの異なる方法で生成させることができる。抗体を生成させるための当技術分野で公知の多くの技術がある。例えば、本方法に有用である抗体は、組換え発現技術、ファージディスプレイ技術により、ハイブリドーマから、骨髄腫から、他の抗体発現哺乳類細胞から、および、それらの組合せから生成させることができる。本発明に用いられる抗体は、あらゆる種(例えば、ヒト、マウス、ラット)由来のものであり得、また混合種由来のもの、例えば、キメラであり得る。本発明に用いられる抗体は、全長可変領域又はそのフラグメントを含み得る。
【0032】
様々な哺乳類細胞及び細胞系を用いて抗体を発現させることができる。例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)(例えば、DG44、Dxb11、CHO−K、CHO−K1及びCHO−S)などの哺乳類細胞を用いることができる。いくつかの実施形態において、ヒト細胞系を用いる。適切な骨髄腫細胞系は、SP2/0及びIR983F並びにNamalwaなどのヒト骨髄腫細胞系などである。他の適切な細胞は、ヒト胚腎臓細胞(例えば、HEK293)、サル腎臓細胞(例えば、COS)、ヒト上皮細胞(例えば、HeLa)、PERC6、Wil−2、Jurkat、Vero、Molt−4、BHK及びK6H6などである。他の適切な宿主細胞は、YB2/0細胞などである。
【0033】
生成した抗体が固体支持体に固定化することができ、少なくとも1つの還元性ジスルフィド結合を含むという条件で、あらゆる抗体生成技術を用いて本明細書に記載する抗体含有試料を得ることができる。いくつかの実施形態において、抗体は、当技術分野で公知の方法により生成させ、改変して、本方法に用いるための条件にそれを置く。例えば、ファージディスプレイ又は他の方法により生成させた抗体は、アフィニティタグを含むように改変することができ、且つ/又はFc領域を発現するように再構成する(reformatted)ことができる。抗体を生成させるためのファージディスプレイ技術の概要については、Schmitzら、2000年、Placenta、21巻、Supplement A、S106〜112頁を参照のこと。Lightwoodら、2006年、Journal of Immunological Methods、316巻、133〜143頁も参照のこと。
【0034】
いくつかの態様において、アッセイする抗体は、周知のハイブリドーマ技術を用いて生成させる。例えば、いくつかの実施形態において、宿主細胞は、ハイブリドーマ由来である。ハイブリドーマ技術は、例えば、Harlowら、Antibodies: A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press、2版、1988年);及びHammerlingら、In Monoclonal Antibodies and T−Cell Hybridomas、563〜681頁(Elsevier、N.Y.、1981年)に一般的に述べられている。抗体は、例えば、H−2Kb−tsA58マウス由来の条件的不死細胞系から生成させた抗体(Pasqualinie及びArap、PNAS、2004年、101巻(1号)、257〜259頁)を含む、ハイブリドーマ細胞系以外の不死又は条件的不死細胞系を用いて生成させることもできる。これらの技術を使用して、完全にげっ歯類、キメラげっ歯類−ヒト又はヒト抗体を生成させることができる。例えば、ハイブリドーマ技術を用いて免疫したトランスジェニックマウスからヒト抗体を産生させる技術の概要については、Lonberg及びHuszar、1995年、Int. Rev. Immunol.、13巻、65〜93頁を参照のこと。
【0035】
さらに、Amgen,Inc.(Thousdand Oaks、CA)及びBMS(Princeton、NJ)などの会社は、上で言及したものと同様な技術を用いて、選択される抗原に対するヒト抗体を得るのに従事できる。完全にヒト抗体は、内因性免疫グロブリン重鎖及び軽鎖遺伝子を発現することができないが、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを用いて産生させることができる。トランスジェニックマウスは、選択される抗原、例えば、標的ポリペプチドのすべて又は一部を用いて通常の方法で免疫する。抗原に対して指向するモノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ技術を用いて得ることができる。トランスジェニックマウスによって保有されたヒト免疫グロブリントランス遺伝子は、B細胞の分化の間に再配列し、その後、クラススイッチ及び体細胞変異を受ける。したがって、そのような技術を用いて、治療上有用なIgG、IgA、IgM及びIgE抗体を産生することが可能である。ヒト抗体を産生するためのこの技術の概要については、Lonberg及びHuszar(1995年、Int. Rev. Immunol.、13巻、65〜93頁)を参照のこと。
【0036】
本方法は、固体支持体への抗体の固定化の前の精製ステップを必要としない。いくつかの態様において、抗体含有試料に含まれている抗体は、精製されていない。いくつかの実施形態において、非精製細胞培養上清又は非精製ならし培地を抗体含有試料として提供する。例えば、ハイブリドーマ技術を用いて抗体を生成させるいくつかの実施形態において、抗体含有試料は、非精製ハイブリドーマ上清試料である。いくつかの態様において、上清試料は、抗体量及び抗体配列に関して様々である。抗体含有試料は他の抗体による夾雑を含み得るが、単一ハイブリドーマ上清試料が単一ハイブリドーマクローンからの抗体を含むことが好ましい。ハイブリドーマからクローン集団を採取する方法は、ハイブリドーマ上清を得る方法と同様に当技術分野で公知である。例えば、1つの態様において、新たに融合させたハイブリドーマを、選択培地(例えば、ハイブリドーマ細胞の生存及び増殖並びに非融合B細胞及び骨髄腫細胞の除去を促進する培地)を含む半固体培地(例えば、メチルセルロース)に入れる。そのような培地の例としては、ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含むものなどがある。クローン性IgG産生コロニーを選択し、細胞系の拡大及び抗体産生を維持するための培地を含む個々のウエルに入れる。得られるハイブリドーマ上清は、本方法によりアッセイすることができる。他の態様において、限界希釈法を用いて、ハイブリドーマ細胞をクローニングする。いくつかの実施形態において、固定化及びコンジュゲーションの前に、非精製ハイブリドーマ培養上清を、所望の抗原特異性を有する抗体の存在についてスクリーニングする。いくつかの実施形態において、約1ml〜約5mlのハイブリドーマ上清が提供される。
【0037】
いくつかの実施形態において、非精製細胞培養上清は、ハイブリドーマ上清以外、例えば、CHO細胞培養上清(例えば、DG44、Dxb11、CHO−K1及びCHO−S細胞系)又は他の細胞培養上清である。
【0038】
いくつかの実施形態において、抗体含有試料中の抗体は、内因性IgGを欠く培養培地中、特にウシIgGを欠く培養培地中で産生させる。いくつかの実施形態において、培養培地は、使用前に内因性IgGが枯渇している(例えば、実施例8参照)。適切な培養培地は、成長に必要な、例えば、塩、炭素源(例えば、糖)、窒素源、アミノ酸、微量元素、抗生物質、選択剤などを含むものなどである。市販の培地並びにIgG枯渇クローニング培地を含む市販のクローニング培地を用いることができる。温度、pHなどのような培養条件は、当業者には明らかである。
【0039】
本方法は、所望の化学的実体(chemical entity)への抗体のコンジュゲーションのための固体支持体を使用する。本方法は、固相で実施し、溶液中では実施しないため、本方法は、非常に少量(例えば、1〜500μg)の抗体を含む試料を用いて実施することができる。いくつかの実施形態において、単一試料に1μg〜100μg、1μg〜50μg、1μg〜20μg、3μg〜100μg、3μg〜50μg、3μg〜20、5μg〜100μg、5μg〜50μg、5μg〜20μgの抗体が存在する。1つの態様において、複数の試料における少なくとも1つの試料は、1μg〜100μg、1μg〜50μg、1μg〜20μg、3μg〜100μg、3μg〜50μg、3μg〜20、5μg〜100μg、5μg〜50μg、5μg〜20μgの抗体が存在する。
【0040】
固体支持体は、抗体を直接的又は間接的に可逆的に結合させることができ、望まれない物質、例えば、過剰な試薬、夾雑物質及び溶媒から抗体が分離されることを可能にする,不溶性の機能化物質(functionalized material)を意味する。固体支持体の例は、例えば、機能化ポリマー材料、例えば、アガロース、若しくはそのビーズ形Sepharose(登録商標)、デキストラン、ポリスチレン及びポリプロピレン又はそれらの混合物;マイクロ流体チャネル構造を含むコンパクトディスク;タンパク質アレイチップ;ピペットチップ;膜、例えば、ニトロセルロース又はPVDF膜;並びに微小粒子、例えば、常磁性又は非常磁性ビーズなどである。いくつかの実施形態において、アフィニティ媒体を固体支持体に結合させ、アフィニティ媒体を介して抗体を固体支持体に間接的に結合させる。1つの態様において、固体支持体は、プロテインAアフィニティ媒体又はプロテインGアフィニティ媒体を含む。「プロテインAアフィニティ媒体」及び「プロテインGアフィニティ媒体」は各々、プロテインA又はプロテインGのFc結合ドメインをそれぞれ、或いはプロテインA又はプロテインGのFc結合ドメインの変異した改変体若しくはフラグメント(その変異した改変体若しくはフラグメントは抗体のFc部分に対するアフィニティを保持している)をそれぞれ、含む天然若しくは合成タンパク質が結合している固相を意味する。
【0041】
本方法は、固体支持体上に抗体を固定化して、固定化抗体を供給するステップを含む。いくつかの実施形態において、固体支持体は、抗体含有試料中に存在する量より多い抗体を結合する容量(capacity)を有し、或いは換言すれば、固定化ステップの後に固体支持体に結合する抗体の量は固体支持体の容量より少ない。試料は一般的に抗体量に関して様々であるため、他の試料と比較して1つの試料からの固定化抗体の量に対応する変動がある。
【0042】
いくつかの他の実施形態において、結合抗体の量を制限することが望ましい場合があり、固体支持体は、最大で特定の量までの抗体(例えば、5μgまでの、10μgまでの又は15μgまでのタンパク質)に結合する容量を有するのみである。これらの実施形態において、固体支持体に結合することができる抗体の最大量について制限があるが、他の試料と比較して1つの試料中の固定化抗体の量における変動がまだ存在し得る。これは、1つ以上の試料が固体支持体の最大負荷容量に満たない少量の抗体を含み得るからである。抗体に結合する限られた容量を有する固体支持体を調製するための1つのアプローチは、大容積の樹脂スラリー(例えば、20μL)が5μgの抗体を結合するのに十分な容量のみを含むような、非常に低い容量の樹脂を作製することである。代替アプローチは、樹脂を適切な容積の非機能化樹脂で希釈することによって、樹脂の有効容量を減少させることである。例えば、20μg/μLの結合容量を有するプロテインGセファロース樹脂は、1部(part)のプロテインGセファロースを40部の非機能化セファロースと混合することによって、0.5μg/μLの有効結合容量を有する混合樹脂に変換することができた。そのような樹脂希釈を実施するにあたって、いくつかの実施形態において、希釈剤は、アフィニティ樹脂と同じ基材から製造され、抗体を排除するのに十分に小さい孔径を有し、抗体コンジュゲートを調製するために用いる抗体又は化学試薬と相互作用し得る表面官能性を欠いている樹脂であるものとする。
【0043】
本発明のいくつかの態様において、抗体含有試料を固体支持体に加えるステップにより、抗体を固体支持体に固定化する。所望の場合、細胞培養上清又は抗体含有試料の他の成分から固定化抗体を分離するために、固定化後に洗浄ステップを実施することができる。
【0044】
抗体が固体支持体上に固定化された時点で、還元ステップを実施して、固定化抗体の還元性ジスルフィド結合を完全に還元し、反応性チオールを生成させる。抗体は、還元性ジスルフィド結合の完全な還元に有利な条件下で還元する。一般的に、抗体を過剰な還元剤で還元して、還元性ジスルフィド結合の実質的に完全な還元を確実にする。「抗体の還元性ジスルフィド結合を完全に還元する」という語句は、試料中の抗体の実質的にすべて(例えば、70%を超える、好ましくは80%を超える、さらにより好ましくは85%、90%又は95%を超える)がそれらの還元性ジスルフィド結合に関して完全に還元されることを意味する。換言すると、試料中の実質的な量の抗体について、抗体の還元性ジスルフィド結合のすべてが還元ステップ中に開裂する。例えば、試料中の抗体が4つの還元性ジスルフィド結合を有する場合、還元ステップの後に、実質的な量の抗体の4つの還元性ジスルフィド結合すべてが開裂して、8つの反応性チオールを生ずる。還元は、還元性ジスルフィド結合に対して選択的である還元である。「還元性ジスルフィド結合に対して選択的」という語句は、還元性ジスルフィド結合が、還元される実質的に唯一の結合であることを意味する。本発明のいくつかの実施形態において、還元性ジスルフィド結合は、抗体の天然に存在する鎖間ジスルフィドであり、抗体は、天然に存在する鎖間ジスルフィドの完全な還元に有利である条件下で還元され、還元は、天然に存在する鎖間ジスルフィドに対して選択的であるものである。「鎖間ジスルフィドに対して選択的」という語句は、鎖間ジスルフィドが選択的に還元されることを意味する。換言すると、鎖間ジスルフィドが、還元される実質的に唯一の結合である。抗体が過剰な還元剤と接触し、還元剤が還元性ジスルフィド結合に対して選択的であるため、抗体当たりの反応性チオールの生成は、一般的に試料中の抗体の量と無関係である。
【0045】
1つの態様において、還元ステップにおいて用いる還元剤はTCEP(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン)であり、TCEPを室温で30分間にわたり過剰に加える。例えば、pH7.4のTCEPの250μLの10mM溶液は、1〜100μgの抗体の鎖間ジスルフィドを室温において30分で容易に還元する。しかし、他の還元剤及び条件を用いることができる。他の還元剤の例は、DTT(ジチオトレイトール)、メルカプトエタノール及びメルカプトエチルアミンなどである。反応条件の例は、5〜8のpH範囲にわたる5℃〜37℃の温度を含む。得られた抗体チオールのコンジュゲーション及び疎水性相互作用又は逆相クロマトグラフィーによる分析(例えば、それぞれ図1及び3参照)により、様々な還元条件下で達成されるジスルフィドの還元の程度の指標が得られる。還元の後、還元剤及び抗体の捕捉ステップ中に固体支持体に非特異的に結合した可能性がある他の成分、例えば、培養培地成分を除去するために、洗浄ステップを実施することができる。
【0046】
本発明のいくつかの態様において、試料は抗体量及び抗体配列に関して様々であるが、抗体の大多数は、還元性ジスルフィド結合の数に関して実質的に異ならない。例えば、いくつかの実施形態において、第1及び第2の試料に含まれている実質的にすべての抗体は、同じ量の還元性ジスルフィド結合を有する。いくつかのそのような実施形態において、還元性ジスルフィド結合は、鎖間ジスルフィドである。第1及び第2の試料中の抗体が4つの鎖間ジスルフィド結合を有する場合(例えば、ヒトIgG1)、還元後に、両試料中の還元固定化抗体は、それぞれ8つの反応性チオールを有する。還元剤が過剰で、還元ステップが選択性であり、各抗体上の還元性結合の数が一様であるため、抗体当たり8個の反応性チオールへの還元のこのレベルは、試料中の抗体の量と無関係である。同様に、第1及び第2の試料中の抗体が5つの鎖間ジスルフィド結合を有する場合、還元後に、両試料中の還元固定化抗体は、それぞれ10個の反応性チオールを有する。還元剤が過剰で、還元ステップが選択性であり、各抗体上の還元性ジスルフィドの数が一様であるため、抗体当たり10個の反応性チオールへの還元のこのレベルは、抗体の量と無関係である。マウス抗体のパネル、例えば、ハイブリドーマからのマウス抗体のパネルをスクリーニングするいくつかの実施形態において、抗体の大多数は、主要なマウスイソ型IgG1及びIgG2aのいずれか1つである。マウスIgG1及びIgG2aイソ型は、両方が5個の鎖間ジスルフィド結合を有し、還元後に、各抗体は、10個の反応性チオールを有する。したがって、抗体の大多数は、同じ量の還元性ジスルフィド結合を有する。これらの実施形態におけるイソ型の大多数はIgG1及びIgG2aであり得るが、他のイソ型も同様に存在し得る。例えば、マウスIgG2b、マウスIgG2c及びマウスIgG3イソ型も同様に存在し得る。マウスIgG2bイソ型が存在する場合、IgG2bイソ型が6個の鎖間ジスルフィド結合を有するので、これらの抗体の還元により、12個の反応性チオールが生成する。いくつかの実施形態において、トランスジェニックマウスを抗体産生のために用い、特定のイソ型を有する抗体並びにヒトIgGイソ型を有する抗体を産生するようにマウスを遺伝子操作することができる。いくつかのそのような実施形態において、マウスは、特定のイソ型のみを発現するように操作することができる。いくつかの実施形態において、マウスは、1つのイソ型又は1つ若しくは2つの主要なイソ型のみを発現するように操作することができる。
【0047】
還元ステップの後、抗体に所望の化学的実体を負荷する(換言すると、所望の化学的実体にコンジュゲートする)。用いる化学的実体の選択は、アッセイの目的に一部は依存する。いくつかの実施形態において、ADCとして用いるための抗体を選択する目的のために抗体をスクリーニングする。これらの実施形態において、抗体が薬物にコンジュゲートされることが望ましい。抗体は、薬物に直接的に又はリンカーを介して間接的にコンジュゲートすることができる。薬物及び薬物−リンカーは、ADCとして用いるのに有効であり、チオール反応性である薬物又は薬物−リンカーであり得る。「チオール反応性」という語句は、化学的実体が、還元性ジスルフィド結合の還元により生ずる反応性チオールと反応し、それとの共有結合を形成することを意味する。チオール反応性薬物及び薬物−リンカーは、天然ではチオール反応性でないが、それらをチオール反応性にするためのチオール反応性剤で誘導体化された薬物又は薬物−リンカーを含む。コンジュゲーションに用いる条件は、薬物が反応性チオールと選択的に反応する(直接的又はそのリンカーを介して)ような条件である。反応性チオールに対して高度に選択的であるチオール反応性基の例としては、例えば、N−エチルマレイミドなどのマレイミドなどがある。N−エチルマレイミドなどのマレイミドは、特に他の基がプロトン化されている7未満のpH値でスルフヒドリル基に対してかなり特異的であるとみなされている。例えば、pH7では、単純チオールとの反応は、対応するアミンとの反応より約1000倍速い。チオールとマレイミドとの反応は、室温においてpH7.4で非常に速く、30分は、アミン基へのマレイミドのコンジュゲーションの危険を冒すことなく完全な反応を保証するのに十分である。したがって、いくつかの実施形態において、マレイミド基を介して薬物を抗体に結合させる。反応性チオールに対して高度に選択的である他の反応性基は、例えば、ヨードアセトアミド、ビニルスルホン及びアジリジンなどである。
【0048】
いくつかの実施形態において、抗体に薬物を十分に負荷することが望ましい。そのような実施形態において、望ましい薬物負荷レベルは、抗体当たりの反応性チオールの数に等しい。例えば、いくつかのそのような実施形態において、所望の薬物負荷は、抗体当たり10個の薬物であり、抗体当たりの反応性チオールの数は、10である。反応性チオールの数に等しい薬物負荷レベルが望ましいいくつかの実施形態において、チオール反応性薬物又は薬物−リンカーは、利用できる反応性チオールのすべてと反応するために、固定化抗体に対して十分に過剰に供給する。このステップに用いられる薬物及び薬物−リンカーがチオール反応性であり、用いる条件が反応性チオールへのコンジュゲーションに対して選択的であるように反応が設定されるため、薬物又は薬物−リンカーは、反応性チオールと選択的に反応する(すなわち、薬物及び薬物−リンカーは、例えば、他のアミノ酸(例えば、リシン残基)を含む、抗体上の他の部位と実質的に反応しない)。この選択性のため、薬物負荷を制御し、試料間の実質的な均一な薬物負荷があるような実験をデザインすることが可能である。「試料間の実質的な均一な薬物負荷」という語句は、試料間の平均薬物負荷が実質的に同じである、又は換言すると、試料1中の抗体当たりの薬物分子の平均数が試料2中の抗体当たりの薬物分子の平均数と実質的に同じであることを意味する。薬物負荷のある程度の変動は予想することができるが、それは、一般的に約25%の変動の範囲内、好ましくは20%又はさらに10%の変動の範囲内にある。したがって、試料の大多数がマウスIgG1及びIgG2aサブタイプの抗体を含むいくつかの実施形態において、チオール反応性薬物又は薬物−リンカーを、利用できる反応性チオールのすべてと反応するのに十分に過剰に試料に加える場合、試料の大多数において、抗体当たり平均10個の薬物分子が存在する。これらの試料は実質的な均一な薬物負荷を有するため、溶出させた時点に、精製ADCの濃度を当技術分野で公知の方法、例えば、分光光度法により測定することができ、アッセイにおいてどの抗体が多かれ少なかれ活性であるかを決定するためにそれらの活性を比較することができる。たとえ比較する抗体が可変の濃度で、またいくつかの実施形態において、未知の可変の濃度で供給されたとしても、この比較は実施することができる。未知の可変の濃度で供給される抗体間の比較は、それらに薬物又は薬物−リンカーを実質的に均一に負荷する能力によって支援される。
【0049】
いくつかの実施形態において、抗体に薬物又は薬物−リンカーを十分に負荷することは望ましくない。いくつかのそのような実施形態において、より低い薬物負荷レベルが望まれる場合、固定化抗体を薬物又は薬物−リンカー及びチオールキャッピング剤の両方と反応させることができる。「チオールキャッピング剤」という用語は、本明細書において反応性チオールを選択的にブロックする剤を指すのに用いる。薬物又は薬物−リンカー及びチオールキャッピング剤は、所望の薬物負荷をもたらす薬物又は薬物−リンカーとチオールキャッピング剤との比率で供給される。薬物又は薬物−リンカーと同様に、キャッピング剤は、反応性チオールに対して高度に選択的である。チオール反応性キャッピング剤は、天然ではチオール反応性でないが、それらをチオール反応性にするためのチオール反応性剤で誘導体化されたキャッピング剤を含む。用いることができるチオールキャッピング剤の例は、例えば、N−エチルマレイミドなどのマレイミドキャッピング剤などである。他のキャッピング剤は、例えば、ヨードアセトアミド及びヨード酢酸などである。いくつかの実施形態において、薬物又は薬物−リンカー及びチオールキャッピング剤の両方が同じタイプのチオール反応性剤を有する。例えば、いくつかの好ましい実施形態において、マレイミド基を介して薬物を抗体に結合させるべきである場合、キャッピング剤も同じタイプのマレイミド基を介して抗体に結合させる。これは、薬物−リンカー及びキャッピング剤の相対的反応速度が同様であることを保証する助けとなる。好ましくは、約100倍以下の相対的反応速度の差、より好ましくは10倍以下、さらにより好ましくは5倍以下の相対的反応速度の差がある。
【0050】
1つの態様において、選択されるキャッピング剤と薬物又は薬物−リンカーとの比率は、薬物負荷の所望のレベルに依存する。いくつかの実施形態において、固定化抗体に対して供給される薬物又は薬物−リンカーとキャッピング剤との比率は、これらの試薬を抗体にコンジュゲートさせる比率に反映される。薬物又は薬物−リンカーとキャッピング剤をモル過剰で供給する実施形態において、供給される薬物リンカー又は薬物とキャッピング剤との比率は、これらの2つの成分の固有チオール反応速度が同じである場合に、これらの試薬を抗体にコンジュゲートさせる比率に反映される。例えば、薬物又は薬物−リンカー及びキャッピング剤の固有チオール反応速度が同じであり、試料の大多数が5つの還元性ジスルフィド結合を有する抗体(例えば、マウスIgG1及びIgG2aサブタイプの抗体)を含む実施形態において、コンジュゲーションに用いる反応混合物が薬物リンカー又は薬物とキャッピング剤との1:1混合物を有する場合、反応後に、試料の大多数において、抗体当たり5個の薬物分子及び抗体当たり5個のキャッピング剤が存在する。しかし、本発明者らによって、薬物又は薬物−リンカー及びキャッピング剤の固有チオール反応速度が一般的に同じでないことが観測され、したがって、薬物又は薬物−リンカー及びキャッピング剤が過剰に供給される場合、薬物又は薬物−リンカー及びキャッピング剤が固定化抗体を含む試料に供給される比率は、それらが抗体にコンジュゲートされるのと同じ比率でない。そのような実施形態において、薬物又は薬物−リンカーとキャッピング剤との適切な比率は、薬物負荷の所望のレベルを達成するために実験的に決定することができる。特に、薬物又は薬物−リンカー及びキャッピング剤が過剰(一般的に、少なくとも約3倍の過剰)に供給され、試料中に存在する抗体が実質的に同じ数の還元性ジスルフィド結合を有する限り、比率は、固体支持体上に存在する抗体の量に無関係に、試料にわたり一貫性のある(すなわち、実質的に均一な)レベルの薬物負荷をもたらす。
【0051】
いくつかの好ましい実施形態において、薬物又は薬物−リンカー及びキャッピング剤への抗体のコンジュゲーション反応は、速度論支配下にあり、熱力学支配下にはない。例えば、固定化抗体を含む試料に供給される薬物又は薬物−リンカー及びキャッピング剤の総モルが、試料中の反応性チオールのモル数に等しいか、又は少ない条件下では、固定化還元抗体を含む試料に供給される薬物又は薬物−リンカーとキャッピング剤との比率は、抗体と薬物又は薬物−リンカー及びキャッピング剤との実際のコンジュゲーション比に反映される。そのようなコンジュゲーション反応は、熱力学支配下にあると言うことができる。例えば、100ピコモルのマウスIgG1抗体(約15μg)を過剰な還元剤で還元して、抗体当たり10個のチオールを生成した場合、1ナノモルの反応性チオールが存在することになる。各々の濃度が0.5mMであり、総濃度が1mMであるように薬物又は薬物−リンカーとキャッピング剤との1:1混合物を調製した場合、還元した抗体へのこの溶液の1μLの添加により、薬物又は薬物−リンカー及びキャッピング剤が合計1ナノモルとなる。薬物又は薬物リンカー及びキャッピング剤並びにチオール反応が高度に有利なものである(例えば、薬物又は薬物−リンカー及びキャッピング剤の両方がマレイミド誘導体である)と仮定すると、この手順により調製されたコンジュゲートは、2つの化合物の1:1混合物を有することとなる(チオール−マレイミド反応が高度に有利であり、熱力学がこの反応を完結まで効果的に促進するであろう)。たとえ化合物の1つが他の化合物より実質的に速い速度で反応したとしても、これは当てはまることとなる。複数の試料が均一に負荷されることが望ましい実施形態において、このアプローチは、試料のそれぞれに存在する抗体の量が既知であることを一般的に必要とするであろう。さらに、試料間に抗体の量の変動が存在する実施形態(ハイブリドーマからの抗体のパネルなど)において、実質的に均一に負荷される試料に到達するために、各試料に加えるべき薬物又は薬物リンカー及びキャッピング剤の量を調整する多大な努力が必要であろう。試料中の抗体の量が未知であり、且つ/又は試料間に変動が存在する実施形態において、反応が速度論支配下にあるように反応を操作し、それに応じて、過剰の薬物又は薬物−リンカー及びキャッピング剤の合計を抗体含有試料に供給することが一般的に好ましい。
【0052】
本発明のいくつかの実施形態において、還元した抗体の反応性チオールにコンジュゲートされる化学的実体は、モル過剰で供給する(反応性チオールについてモル過剰)。これらの実施形態において、薬物又は薬物−リンカーがキャッピング剤より速く反応性チオールと反応する場合、薬物又は薬物−リンカーは、最終コンジュゲートにおいて不釣り合いな比率を占める(disproportionately represented)。これは、薬物又は薬物−リンカーとキャッピング剤が互いに効率的に競合して、限られた数の利用可能な反応性チオールと反応するためである。薬物又は薬物リンカー及びキャッピング剤が反応溶液中に等しい濃度で存在する場合、それらの反応速度が同じならば、それらは、等しい濃度でコンジュゲートされるのみである。薬物又は薬物リンカー及びキャッピング剤の濃度が等しくないように反応混合物の組成を変化させることにより、それらが、利用可能なチオールと反応する比率を調節することができる。例えば、遅反応性の薬物又は薬物リンカーは、より迅速反応性のキャッピング剤との1:1混合物を用いて調製したコンジュゲートにおいて不釣り合いに低い比率を占める(disproportionately underrepresented)。より遅反応性の薬物又は薬物−リンカーに有利なように比率を2:1に変化させることにより、コンジュゲートにおけるその占める割合が増加する。したがって、固定化還元抗体を含む試料に供給する薬物又は薬物リンカー及びキャッピング剤の比率を調節することにより、最終コンジュゲートにおける薬物又は薬物リンカーとキャッピング剤との所望の比率を達成することができる。薬物又は薬物リンカー及びキャッピング剤の合計が、利用可能な反応性チオールに対して過剰に存在する条件下では、最終生成物におけるそれらの分布は、出発チオール量と無関係である。このように、試料中の抗体の量が未知であり、且つ/又は試料間に変動が存在する場合でさえ、複数の試料に実質的に均一に負荷することができる。いくつかの実施形態において、総チオールに対して約2倍のモル過剰(そして、さらにより好ましくは3倍以上のモル過剰)の全反応成分が存在するような適切な容積の薬物又は薬物−リンカー及びキャッピング剤を試料に供給する。試料中の抗体の量が未知である場合、各試料は、最大量の抗体を有するかのように扱うことができる。試料の多くについて、最大量よりかなり少ない量が存在し、過剰は2倍より大きい。設定比率を有する過剰な反応成分のこの供給により、様々な量の、パネル全体にわたる抗体が、定められた大量の全薬物又は薬物リンカー及びキャッピング剤で処理されて、存在する各薬物又は薬物リンカー及びキャッピング剤に匹敵する負荷(loading)を有するコンジュゲートのパネルを生成することが可能になる。試料中に最初に存在する抗体の量に関係なく、試料の同等の処理が同等のレベルの負荷をもたらすという事実から、この方法が多数の抗体をコンジュゲートするハイスループットでの応用に好都合であるということとなる。
【0053】
本明細書で述べたように、アッセイする試料の大多数が試料に含まれる抗体に存在する還元性ジスルフィド結合の数に関して異ならないことが好ましいが、いくつかの実施形態において、ある程度の変動が存在する。いくつかの実施形態において、変動にもかかわらず、試料を同じ比率の化学的実体で処理する。データを解釈する場合、当業者は、試料の特定のサブセットが還元性ジスルフィド結合の量が異なっていたことを認識する。所望の場合、当業者は、データの解釈の助けとするためにコンジュゲーションの前又は後に抗体のイソ型を決定することができる。
【0054】
いくつかの実施形態において、コンジュゲーションステップの前に、標準的な方法を用いて、試料のそれぞれにおける抗体のイソ型及びしたがって、試料のそれぞれにおける抗体当たりの還元性ジスルフィド結合の数を決定することができる。いくつかのそのような実施形態において、同じ数の還元性ジスルフィド結合を有する抗体を含む試料を、所望の薬物負荷に達するように、薬物又は薬物リンカーとキャッピング剤との1つの比率を有する反応混合物と接触させ、異なる数の還元性ジスルフィド結合を有する抗体を含む試料を、その同じ所望の薬物負荷に達するように、薬物又は薬物リンカーとキャッピング剤との異なる比率を有する反応混合物と接触させる。例えば、いくつかの実施形態において、所望の平均薬物負荷が4である場合、マウスIgG1及びIgG2aの抗体(完全に還元した場合、抗体当たり10個の反応性チオール)を含む試料をすべて、4の平均薬物負荷及び6の平均キャッピング剤負荷に達するように、薬物又は薬物リンカーとキャッピング剤との一定の比率を有する反応混合物と接触させる。マウスIgG2bの抗体(完全に還元した場合、抗体当たり12個の反応性チオール)を含む試料を、4の同じ平均薬物負荷に達するように、薬物又は薬物リンカーとキャッピング剤との異なる比率を有する反応混合物(例えば、キャッピング剤の分率がより高い)と接触させる。他の実施形態において、イソ型及び鎖間ジスルフィドの数の間に変動が存在し得るが、負荷のある程度の変動があり、試料のすべてが薬物又は薬物リンカーとキャッピング剤との同じ比率を受けることは受け入れられる。
【0055】
いくつかの実施形態において、コンジュゲーションステップの前及び還元ステップの後に、部分再酸化ステップが存在する。例えば、いくつかの実施形態において、還元性ジスルフィド結合は、天然に存在する鎖間ジスルフィド結合並びに導入されたスルフヒドリル基から形成されたジスルフィド結合からなる。これらの実施形態の一部において、選択される化学的実体を、導入されたスルフヒドリルにコンジュゲートするが、天然に存在する鎖間ジスルフィド結合のスルフヒドリル基にはコンジュゲートしないことが望ましい。これらの実施形態において、還元性ジスルフィド結合の完全な還元の後に、所望の化学的実体に結合させるために利用可能な導入されたスルフヒドリルを残して、天然に存在する鎖間ジスルフィド結合を再酸化するための部分再酸化ステップが存在し得る。天然ジスルフィドの再酸化は、例えば、pH6.5で大モル過剰のデヒドロアスコルビン酸による還元した抗体の処理により、反応を室温で1時間進行させて達成することができる。
【0056】
本明細書に記載する実施形態のいずれかにおいて、キャッピング剤の代わりに又はそれに加えて、検出剤をコンジュゲーションのために供給する。検出剤は、例えば、一次標識又は二次標識であり得る。いくつかの実施形態において、検出剤は、直接的に検出されるものである。他の実施形態において、検出剤は、間接的に検出されるものである。いくつかの実施形態において、検出剤は、例えば、抗体の定量のために且つ/又は結合アッセイ若しくは他の望ましいアッセイのリポーターとして用いることができる任意のチオール反応性標識である。チオール反応性標識は、天然ではチオール反応性でないが、それらをチオール反応性にするためのチオール反応性剤で誘導体化された標識を含む。いくつかの実施形態において、同じタイプのチオール反応性剤を、様々な化学的実体(検出剤及び/又は薬物若しくは薬物−リンカー及び/又はキャッピング剤)を抗体に結合させるために用いる。いくつかの実施形態において、検出剤は、放射性化合物、化学発光剤、蛍光剤又は色素原である。いくつかの実施形態において、検出剤は、蛍光団などの蛍光分子である。いくつかの実施形態において、検出剤は、ビオチンである。1つの態様において、検出剤は、蛍光団であり、蛍光団をチオール反応性にするために蛍光団をマレイミド基で誘導体化する。本明細書に記載する教示は、選ばれた検出剤の好ましい負荷レベルを評価するのに用いることができる。いくつかの実施形態において、蛍光団を検出剤として用い、抗体当たり約2.5〜約3個の蛍光団の平均負荷で蛍光団を負荷する。実施例3及び4に、所望の薬物及び/又は蛍光団負荷レベルを達成するために化学的実体の比率をどのように調整するかの具体例としての記述を示す。
【0057】
本発明は、ADCとして用いるための抗体を選択する目的のためではなく、コンジュゲートしていない抗体として用いるための抗体を選択する目的のために抗体をスクリーニングする実施形態を包含する。これらの実施形態において、固定化抗体を選択される比率の検出剤及びキャッピング剤と接触させ、薬物又は薬物−リンカーは用いない。実施例3及び4の教示を含む本明細書に記載する教示を用いて、検出剤とキャッピング剤との適切な比率を決定することができる。
【0058】
還元した抗体を適切な量及び種類の化学的実体と接触させ(化学的実体の選択は、例えば、コンジュゲートしていない抗体又はADCとしての抗体をスクリーニングすることが望ましいのか;十分な薬物負荷又は部分的薬物負荷を有することが望ましいのか;及び混合物に検出剤を含めることが望ましいのかに依存する)、反応の完結のために十分な時間(マレイミド含有化学的実体については例えば、30分)を与えた後、未反応成分質を除去するために洗浄ステップを実施することが望ましい。その後、固定化抗体コンジュゲートを固体支持体から溶出して、抗体コンジュゲート組成物を得ることができる。タンパク質を固体支持体から溶出する方法は、当技術分野で公知であり、当業者は、溶出のための適切なバッファーを選択することができる。例えば、固体支持体がプロテインA又はプロテインG樹脂を含む実施形態において、抗体コンジュゲートは、プロテインA又はプロテインGカラムから溶出用の標準的低pHバッファーで溶出することができる。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態において、抗体コンジュゲートを調製するための本明細書に記載した方法は、実質的に均一な薬物負荷を有する複数の抗体薬物コンジュゲート組成物をもたらす(当業者は、試料にわたる還元性ジスルフィド結合の数の均一性に依存して、いくつかの域外値が存在し得ることを理解する)。これらの実施形態において、薬物負荷が試料間で実質的に均一であるため、第1及び第2の試料中の抗体の相対的特性を比較することができる。たとえ比較する抗体が可変の濃度で、またいくつかの実施形態において、未知の可変の濃度で供給されたとしても、この比較を実施することができる。未知で、可変の濃度の抗体間の比較は、薬物又は薬物−リンカーをそれらに実質的に均一に負荷することができることで、より容易になされる。
【0060】
薬物の負荷を決定する方法は、当技術分野で公知である。本明細書で用いている1つの方法は、ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマー、例えば、逆相PLRP(商標)カラム上の高速液体クロマトグラフィーである。この変性技術は、様々に負荷された軽鎖及び重鎖種をすっきり分離することができる。疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)も得られたコンジュゲートからの異性体混合物を決定するために用いる分析方法として用いることができる。薬物負荷レベルは、例えば、250nmにおける吸光度と280nmにおける吸光度の比に基づいて決定することができる。例えば、米国特許公開第20090010945号を参照のこと。
【0061】
いくつかの実施形態において、抗体コンジュゲートの溶出後に、抗体コンジュゲートの特徴づけを行うために活性アッセイ及び/又は他のアッセイを実施する。いくつかの実施形態において、細胞結合、アフィニティ及び/又は細胞傷害性アッセイを実施する。ADCが対象の標的に結合するか、又は細胞に対して細胞傷害性作用を及ぼすかどうかを決定する多くの方法は、当業者に公知であり、本方法に用いることができる。例えば、細胞生存アッセイは、細胞に対するADCの細胞傷害性作用を決定するために用いることができる。例えば、それぞれがその全体として、および、例示的な細胞結合及び細胞傷害性アッセイについて、すべての目的のために本明細書に組み込まれる、米国特許第7,659,241号及び第7,498,298号を参照のこと。
【0062】
いくつかの実施形態において、抗体コンジュゲートの溶出後に、抗体コンジュゲート組成物中の抗体又は抗体コンジュゲートの量を決定することが望ましい。いくつかの実施形態において、試料中の抗体又は抗体コンジュゲートの実際の量を決定することが望ましい。他の実施形態において、複数の試料中の抗体又は抗体コンジュゲートの相対量を決定することで十分である。例えば、試料1が試料2より多くの抗体を有し、試料2が試料3より多くの抗体を有し、以下同様であることを知ることで十分であり得る。タンパク質の量を決定するための多くの方法が当技術分野で公知であり、ここに用いることができる。いくつかの実施形態において、吸光度アッセイを用いて抗体の濃度を決定することができる。蛍光団が抗体コンジュゲートの一部である実施形態において、蛍光アッセイを用いて抗体の濃度を決定することができる。蛍光をタンパク質の定量に用いる実施形態において、生蛍光値を濃度に変換するために標準物質が必要であり得る。蛍光を用い、標準曲線を作成してタンパク質濃度を決定する方法は、当技術分野で公知である。1つの例において、約200μgの標準抗体をブランク培地にスパイクした後にコンジュゲーションステップにおいてコンジュゲートする。溶出後、この標準物質の濃度を従来の方法、例えば、従来のA280吸光度アッセイにより決定し、希釈系列により作成した標準曲線をコンジュゲート試料と並行して蛍光についてアッセイする。或いは、液体取扱いロボットを用いてプレートを標準化し、それにより、系列希釈の必要をなくすことができる。
【0063】
いくつかの実施形態において、細胞傷害性アッセイの結果及び抗体コンジュゲート組成物における相対的又は実際の抗体濃度の知識を所望の特性を有する抗体を同定するのに用いる。本明細書に記載する抗体コンジュゲートを作製するための方法は、様々な濃度及びいくつかの実施形態において未知の量の複数の抗体間の比較を行うことを可能にする。本明細書に記載する抗体コンジュゲートを作製するための方法は、例えば、ハイブリドーマ融合物から得られた抗体のパネルから開始した場合、望ましい特性を有する抗体の選択を可能にする。いくつかの好ましい実施形態において、試料間の実質的な均一な薬物負荷により、試料間の適切な比較を行うことができる。実質的に均一な負荷レベルを確保できない場合、例えば、ADCとして用いるための抗体のパネルのスクリーニングから誤った結果がもたらされる可能性がある。これは、ADCとしての抗体の特性のため、又は試料が抗体当たりより多くの薬物を含むため、ADC試料がより大きい細胞傷害性を示すかどうかが不明であるからである。例えば、抗体「A」を含み、4の平均薬物負荷を有する抗体コンジュゲート組成物は、一般的に抗体「B」を含み、1の平均薬物負荷を有する抗体コンジュゲート組成物より大きい細胞傷害性を示すと予想される。このより大きい細胞傷害性は、ADCとしての抗体A及びBの相対的特性の指標ではなく、単に抗体Aへのより大きい薬物負荷の指標であることになる。両方の抗体コンジュゲート組成物が約4の平均薬物負荷を有していて、1つがより大きい細胞傷害性を示した場合、それは、抗体に帰され、単に薬物負荷に帰されない可能性がある。同様に、試料中の抗体又は抗体コンジュゲートの実際量又は相対量を決定する能力も、試料間の適切な比較を行うことを可能にする。試料中の抗体又は抗体コンジュゲートの実際量又は相対量の知識がなければ、特定の抗体のために又は単に試料中により多くの抗体若しくはADCが存在するために、ADCがより大きい細胞傷害性を示すかどうかは不明であることとなる。
【0064】
抗体スクリーニングアッセイに用いる抗体コンジュゲートを作製するための方法及び特許請求の範囲に記載する方法により生成される抗体コンジュゲートを提供することに加えて、本発明は、抗体が本明細書に記載する方法を用いて選択される、治療用の抗体及び/又は抗体コンジュゲート(例えば、抗体薬物コンジュゲート)を提供する。
【0065】
先に述べたように、本方法に用いる薬物又は薬物−リンカーは、ADCとしての使用が有効であり、チオール反応性である任意の薬物又は薬物−リンカーであり得る。薬物は、任意の細胞傷害性薬、細胞増殖抑制性薬又は免疫抑制薬であり得る。ADCとして使用するための薬物及び薬物−リンカーを選択する方法は、当技術分野で公知である。例えば、それぞれがその全体として、すべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2004010957号、国際公開第2007/038658号、米国特許第6,214,345号、米国特許第7,498,298号及び米国特許公開第2006/0024317号を参照のこと。
【0066】
有用なクラスの細胞傷害性剤又は免疫抑制剤は、例えば、抗チューブリン剤(例えば、アウリスタチン、マイタンシノイド、ビンカアルカロイド)、トポイソメラーゼ阻害薬(例えば、カンプトテシン)、DNA小溝(minor groove)結合薬(例えば、カリケアマイシン、デュオカルマイシン、エンジイン、レキシトロプシン、クロロメチルベンゾインドリン)、DNA複製阻害薬(例えば、アントラサイクリン)、アルキル化剤(例えば、シスプラチン、モノ(白金)、ビス(白金)及び三核白金錯体並びにカルボプラチンなどの白金錯体)、プロテインキナーゼ阻害薬、細胞傷害性酵素及びタンパク質毒素などである。
【0067】
いくつかの実施形態において、適切な細胞傷害剤は、例えば、抗生物質、葉酸拮抗薬、代謝拮抗薬、化学療法増感剤、エトポシド、フッ化ピリミジン、イオノフォア、ニトロソ尿素、プラチノール、プレフォーミング(pre−forming)化合物、プリン代謝拮抗薬、放射線増感剤、ステロイド、プロマイシン、ドキソルビシン及びクリプトフィシンなどである。
【0068】
個別の細胞傷害性又は免疫抑制薬は、例えば、アンドロゲン、アントラマイシン(AMC)、アスパラギナーゼ、5−アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、ブスルファン、ブチオニンスルホキシミン、ガンマカリケアマイシン、N−アセチルガンマジメチルヒドラジドカリケアマイシン、カンプトテシン、カルボプラチン、カルムスチン(BSNU)、CC−1065、セマドチン、クロラムブシル、シスプラチン、コルヒチン、シクロホスファミド、シタラビン、シチジンアラビノシド、シトカラシンB、ダカルバジン、ダクチノマイシン(旧名:アクチノマイシン)、ダウノルビシン、デカルバジン(decarbazine)、ディスコデルモリド、ドセタキセル、ドキソルビシン、モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、エキノマイシン、エロイテロビン、エポチロンA及びB、エトポシド、エストラムスチン、エストロゲン、5−フルオルデオキシウリジン、5−フルオロウラシル、ゲムシタビン、グラミシジンD、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムシチン(CCNU)、マイタンシン、メクロレタミン、メルファラン、6−メルカプトプリン、メトトレキセート、ミトラマイシン、マイトマイシンC、ミトザントロン、ネトロプシン、ニトロイミダゾール、パクリタキセル、パリトキシン、プリカマイシン、プロカルビジン、リゾキシン、ストレプトゾトシン、テノポシド、6−チオグアニン、チオTEPA、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、VP−16及びVM−26などである。
【0069】
いくつかの実施形態において、薬物は抗チューブリン剤である。抗チューブリン剤の例は、タキサン(例えば、Taxol(登録商標)(パクリタキセル)、Taxotere(登録商標)(ドセタキセル))、および、ビンカアルカロイド(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン及びビノレルビン)を含むが、これらに限定されない。他の抗チューブリン剤は、例えば、バッカチン誘導体、タキサン類似体(例えば、エポチロンA及びB)、ノコダゾール、コルヒチン及びコルシミド、エストラムスチン、クリプトフィシン、セマドチン、コンブレタスタチン、ディスコデルモリド及びエロイテロビンなどである。
【0070】
特定の実施形態において、細胞傷害剤は、抗チューブリン剤の他の群であるマイタンシノイドである。例えば、特定の実施形態において、マイタンシノイドは、マイタンシン又はDM−1又はDM−4である(ImmunoGen,Inc.;Chariら、1992年、Cancer Res.、52巻、127〜131頁も参照のこと)。
【0071】
いくつかの実施形態において、薬物は、抗チューブリン剤の他の群であるアウリスタチンである。アウリスタチンは、アウリスタチンE及びその誘導体を含むが、これらに限定されない。AFP、AEB、AEVB、MMAF及びMMAEは、本明細書に用いることができるアウリスタチンの例である。アウリスタチンの合成及び構造は、それぞれがその全体として、すべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2003−0083263号、第2005−0238649号及び2005−0009751号;国際特許公開番号WO04/010957、国際特許公開番号WO02/088172並びに米国特許第7,498,298号;第6,323,315号;第6,239,104号;第6,034,065号;第5,780,588号;第5,665,860号;第5,663,149号;第5,635,483号;第5,599,902号;第5,554,725号;第5,530,097号;第5,521,284号;第5,504,191号;第5,410,024号;第5,138,036号;第5,076,973号;第4,986,988号;第4,978,744号;第4,879,278号;第4,816,444号;及び第4,486,414号に記載されている。
【0072】
薬物−リンカーのリンカー部分は、抗体を薬物に結合させるために用いることができる化合物である。リンカーは、1つ超の化学構成成分を含み得る。いくつかの実施形態において、リンカーの開裂が細胞内環境において抗体から薬物単位を遊離させるように、リンカーは、細胞内条件下で開裂する。いくつかの実施形態において、リンカーは、リソソームプロテアーゼ又はエンドソームプロテアーゼを含むが、これらに限定されない細胞内ペプチダーゼ又はプロテアーゼ酵素により切断されるペプチジルリンカー(例えば、2つ以上のアミノ酸を含むリンカー)である。切断剤は、すべてがジペプチド薬物誘導体を加水分解し、標的細胞内での活性薬物の放出をもたらすことが公知である、カテプシンB及びD並びにプラスミンを含み得る(例えば、Dubowchik及びWalker、1999年、Pharm. Therapeutics、83巻、67〜123頁を参照)。いくつかの実施形態において、細胞内プロテアーゼにより開裂可能なペプチジルリンカーは、Val−Citジペプチド又はPhe−Lysジペプチドを含む(例えば、その全体として、すべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,659,241号を参照)。さらにまた、他の実施形態において、リンカーは開裂性でなく、薬物は抗体の分解により放出される。
【0073】
いくつかの実施形態において、開裂性リンカーは、pH感受性である。すなわち、特定のpH値での加水分解に感受性であり、且つ/又は還元条件下で開裂性である(例えば、ジスルフィドリンカー)。例えば、SATA(N−スクシンイミジル−S−アセチルチオアセテート)、SPDP(N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート)、SPDB(N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)ブチレート)並びにSMPT(N−スクシンイミジル−オキシカルボニル−アルファ−メチル−アルファ−(2−ピリジル−ジチオ)トルエン)、SPDB及びSMPTを用いて生成させることができるものを含む様々なジスルフィドリンカーが当技術分野で公知である(例えば、Thorpeら、1987年、Cancer Res.、47巻、5924〜5931頁;Wawrzynczakら、In Immunoconjugates: Antibody Conjugates in Radioimagery and Therapy of Cancer(C. W. Vogel編、Oxford U. Press、1987年を参照。米国特許第4,880,935号も参照)。
【0074】
本方法により用いることができる具体例としてのリンカーは、それぞれがその全体として、すべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2004010957号、国際公開第2007/038658号、米国特許第6,214,345号、第7,659,241号、第7,498,298号及び米国特許公開第2006/0024317号に記載されている。
【0075】
本発明のいくつかの具体例としての実施形態において、薬物−リンカーは、Val−Citがバリン−シトルリンジペプチドを意味する、以下の式I又は式IIのものである。
【0076】
【化4】
タンパク質
抗体コンジュゲートを作製するための本明細書に記載する方法は、融合タンパク質スクリーニングアッセイに用いるための融合タンパク質を作製するためにも用いることができる。「融合タンパク質」という用語は、結合ドメイン−Ig融合物を指すために本明細書において用いるものであり、ここで、結合ドメインは、例えば、リガンド、受容体の細胞外ドメイン、ペプチド、非天然ペプチド又は同様なものであり得る。ただし、結合ドメインは、抗体の可変ドメインを含まない。本明細書に記載する抗体と同様に、融合タンパク質のIg部分は、少なくとも1つの還元性ジスルフィド結合及び固相に結合することができるドメインを含まなければならない。1つの態様において、Igドメインは、抗体のFc領域である。ドメイン−Ig融合タンパク質の例は、sTNFRIIとFc領域との融合タンパク質であるエタネルセプト(米国特許第5,605,690号)、抗原提示細胞上で発現したLFA−3とFc領域との融合タンパク質であるアレファセプト(米国特許第5,914,111号)、細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA−4)とFc領域との融合タンパク質(J. Exp. Med.、181巻、1869頁(1995年))、インターロイキン15とFc領域との融合タンパク質(J. Immunol.、160巻、5742頁(1998年))、第VII因子とFc領域との融合タンパク質(Proc. Natl. Acad. Sci. USA、98巻、12180頁(2001年))、インターロイキン10とFc領域との融合タンパク質(J. Immunol.、154巻、5590頁(1995年))、インターロイキン2とFc領域との融合タンパク質(J. Immunol.、146巻、915頁(1991年))、CD40とFc領域との融合タンパク質(Surgery、132巻、149頁(2002年))、Flt−3(fms様チロシンキナーゼ)と抗体Fc領域との融合タンパク質(Acta. Haemato.、95巻、218頁(1996年))、OX40と抗体Fc領域との融合タンパク質(J. Leu. Biol.、72巻、522頁(2002年))及び他のCD分子(例えば、CD2、CD30(TNFRSF8)、CD95(Fas)、CD106(VCAM−I)、CD137)との融合タンパク質、接着分子(例えば、ALCAM(活性化白血球細胞接着分子)、カドヘリン、ICAM(細胞内接着分子)−1、ICAM−2、ICAM−3)、サイトカイン受容体(例えば、インターロイキン−4R、インターロイキン−5R、インターロイキン−6R、インターロイキン−9R、インターロイキン−10R、インターロイキン−12R、インターロイキン−13Rアルファ1、インターロイキン−13Rアルファ2、インターロイキン−15R、インターロイキン−21Rアルファ)、ケモカイン、細胞死誘発シグナル分子(例えば、B7−H1、DR6(デス(death)受容体6)、PD−1(プログラム死−1)、TRAIL R1)、共刺激分子(例えば、B7−1、B7−2、B7−H2、ICOS(誘導性共刺激物質))、成長因子(例えば、ErbB2、ErbB3、ErbB4、HGFR)、分化誘導因子(例えば、B7−H3)、活性化因子(例えば、NKG2D)並びにシグナル伝達分子(例えば、gpl30)、BCMA及びTACIなどである。
【0077】
本明細書に記載するステップのすべては、出発物質が抗体ではなく、融合タンパク質である実施形態に容易に適応することができる。例えば、いくつかの実施形態において、融合タンパク質含有試料を抗体含有試料の代わりに提供することとなる。融合タンパク質試料は、量及び配列に関して様々であることになる。好ましい実施形態において、単一試料中に存在する融合タンパク質の実質的にすべてが同じ配列であることとなる。「単一試料中に存在する融合タンパク質の実質的にすべてが同じ配列である」は、他の融合タンパク質による少量(例えば、20%まで、好ましくは15%未満、10%未満、5%未満、4%未満又は3%未満)の夾雑が存在し得るという認識であるが、単一試料が1つの融合タンパク質を含むという選択(preference)を反映している。
【0078】
抗体と同様に、本方法は、融合タンパク質の固定化の前の精製ステップを必要としない。いくつかの態様において、融合タンパク質含有試料に提供される融合タンパク質は、精製されていない。抗体と同様に、いくつかの実施形態において、非精製細胞培養上清を融合タンパク質含有試料として提供する。細胞培養で融合タンパク質を生成する方法は、当技術分野で公知であり、本明細書では述べない。いくつかの実施形態において、融合タンパク質含有試料中の融合タンパク質は、IgG枯渇培養培地、特に、ウシIgGを枯渇させた培養培地中で増殖させた。抗体と同様に、本方法は、非常に少量(例えば、1〜500μg)の融合タンパク質を含む試料を用いて実施することができる。いくつかの実施形態において、単一試料に1μg〜100μg、1μg〜50μg、1μg〜20μg、5μg〜100μg、5μg〜50μg、5μg〜20μgの融合タンパク質が存在する。
【0079】
本方法は、固体支持体上に融合タンパク質を固定化して、固定化融合タンパク質を供給するステップを含む。いくつかの実施形態において、固体支持体は、融合タンパク質含有試料中に存在する量より多くの融合タンパク質に結合する容量を有し、又は結合した融合タンパク質の量は、固体支持体の容量より少ない。他の実施形態において、固体支持体は、低い結合容量を有する。
【0080】
融合タンパク質が固体支持体上に固定化された時点で、還元ステップを実施して、固定化融合タンパク質の還元性ジスルフィド結合を完全に還元し、反応性チオールを生成させる。還元ステップの後、融合タンパク質に所望の化学的実体を負荷する(換言すると、所望の化学的実体にコンジュゲートする)。再び、用いる化学的実体の選択は、アッセイの目的に一部依存する。本発明のいくつかの実施形態において、融合タンパク質は、融合タンパク質薬物コンジュゲートとして用いるための融合タンパク質を選択する目的のためにスクリーニングする。これらの実施形態において、融合タンパク質を薬物にコンジュゲートすることが望ましい。融合タンパク質は、直接的に又はリンカーを介して間接的に薬物にコンジュゲートすることができる。薬物及び薬物−リンカーは、本明細書に記載する任意の薬物又は薬物−リンカーであり得る。抗体と同様に、融合タンパク質は、薬物、キャッピング剤及び必要に応じて検出剤を含む反応混合物と接触させることができる。抗体と同様に、本発明は、融合タンパク質薬物コンジュゲートとして用いるための融合タンパク質を選択する目的のためではなく、コンジュゲートしていない融合タンパク質として用いるための融合タンパク質を選択する目的のために、融合タンパク質をスクリーニングする実施形態を包含する。これらの実施形態において、コンジュゲーション反応混合物は、薬物又は薬物リンカーを含まないが、代わりに検出剤及びキャッピング剤の混合物を含む。抗体コンジュゲートと同様に、いくつかの実施形態において、本明細書に記載する融合タンパク質コンジュゲートを作製するための方法は、試料間で実質的な均一な負荷を有する複数の融合タンパク質コンジュゲート組成物をもたらす。融合タンパク質の溶出後、活性アッセイ及び/又は他のアッセイを実施して、融合タンパク質を特徴づけることができる。アッセイの結果及び融合タンパク質コンジュゲート組成物中の相対的又は実際のタンパク質濃度の知識を用いて、コンジュゲートしていない融合タンパク質としての又は融合タンパク質薬物コンジュゲートとしての所望の特性を有する融合タンパク質を同定することができる。
【0081】
本明細書に記載する方法を用いて、コンジュゲートしていない抗体として十分に機能する抗体及びコンジュゲートしていない融合タンパク質として十分に機能する融合タンパク質を同定することができ、さらなる開発のために選択することができる。いくつかの実施形態において、本方法により同定される抗体又は融合タンパク質は、治療及び/又は非治療適用のために処方する。同様に、薬物コンジュゲートとして所望の活性を有するものと同定された抗体又は融合タンパク質は、さらなる開発のために選択することもできる。いくつかの実施形態において、そのような抗体又は融合タンパク質は、公知の方法を用いて所望の薬物又は薬物−リンカーにコンジュゲートし、治療及び/又は非治療適用のために処方する。いくつかの実施形態において、抗体、抗体薬物コンジュゲート、融合タンパク質及び融合タンパク質コンジュゲートは、薬学的組成物として処方され、治療上又は予防上有効量の抗体、抗体−薬物コンジュゲート、融合タンパク質又は融合タンパク質コンジュゲート及び1つ以上の薬学的に適合性のある(許容される)成分を含む。例えば、薬学的組成物又は非薬学的組成物は、一般的に1つ以上のキャリア(例えば、水及び油などの滅菌液体)を含む。水は、薬学的組成物を静脈内投与する場合に、より一般的なキャリアである。食塩溶液並びに水性デキストロース及びグリセロール溶液も特に注射用溶液用の液体キャリアとして用いることができる。適切な賦形剤は、例えば、アミノ酸、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどである。組成物は、所望の場合、より少量の湿潤剤若しくは乳化剤又はpH緩衝剤も含み得る。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、持続放出処方物などの形態をとり得る。適切な薬学的キャリアの例は、E.W. Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。そのような組成物は一般的に、一般的に精製された形態の治療上有効量のタンパク質を、患者への適切な投与のための形態を与えるようにするための適切な量のキャリアとともに含む。処方物は、投与方法に対応している。
【0082】
一般的に、静脈内投与用の組成物は、滅菌等張性水性バッファー中溶液である。必要な場合、医薬品は、可溶化剤及び注射部位の疼痛を緩和するためのリグノカインなどの局所麻酔薬も含み得る。一般的に、成分は、例えば、活性薬の量を示したアンプル又はサシェなどの密閉容器入りの乾燥凍結乾燥粉末又は水不含有濃縮物として、単位剤形で別個に又は混合された状態で供給される。医薬品を注入により投与すべきである場合、滅菌の薬学的グレードの水又は食塩水を含む注入ビンを用いて投薬することができる。医薬品を注射により投与する場合、投与前に成分を混合することができるように、滅菌済み注射用水又は生理食塩水のアンプルを供給することができる。
【0083】
本発明の範囲を限定することを意図しない以下の実施例において本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0084】
(実施例1)溶液中及び固相による抗体の還元
抗体がそれらの天然の折りたたみ構造を保持する条件下では、TCEPは、水溶性試薬に接近できない免疫グロブリンドメインの鎖内ジスルフィドを還元せずに鎖間ジスルフィドを容易に還元することは、十分に認識されている。抗体がプロテインGアフィニティ媒体に結合している場合、鎖間ジスルフィドに対するこの選択性は、変化しないままである。これを図1に示す。この図にはプロテインG固定化マウス抗体を10mM TCEPで還元した後、過剰のmc−MMAFをコンジュゲートしたもののクロマトグラムを示す。これらのクロマトグラムを従来の溶液化学によりTCEPで還元し、mc−MMAFと反応させた同じ抗体のクロマトグラムと重ね合わせた。標準溶液法と固相法との同等な結果は、抗体の反応性がプロテインGアフィニティ媒体への結合により著しく変化しないことを示すものである。この特徴は、最も豊富な抗体における還元性ジスルフィドの数に対して過剰な量のTCEPを用いることによって、存在する各抗体の量に無関係に抗体の大規模パネルをすべて同じ数の反応性チオールに還元することを可能にするものである。どのような量の抗体が存在し得るかという知識がない場合、理論上最も豊富な抗体は、アフィニティ樹脂の容量(樹脂1μL当たりの抗体μg)に樹脂床の容積(μL)を乗じたものと定義することができる。
【0085】
(実施例2)所望の薬物負荷を得るための薬物コンジュゲーション反応混合物中の薬物とキャッピング剤との比率の調整
図2は、プロテインGに固定化し、過剰のTCEPで完全に還元したマウスIgG1にN−エチルマレイミド(NEM)との混合物として加えた場合の、マレイミド薬物mcMMAFの負荷の程度を示す。図に、この実施例において0.4の平均mcMMAFモル分率を有するコンジュゲート(薬物負荷4)が望ましい場合にマレイミド混合物中のmcMMAFのモル分率が0.53でなければならないような、NEMと比べてmcMMAFの反応性がわずかに低いことが示されている。各コンジュゲートにおけるmcMMAFの負荷は、薬物負荷に基づいて重鎖と軽鎖を効率よく分離する、PLRP−Sカラムを用いた逆相クロマトグラフィーにより決定した。mcMMAFの疎水性により、mcMMAFコンジュゲーションの程度が増加した種についてのより遅い保持時間がもたらされる(図3)。mcMMAFとNEMとの混合物をこの比率で調製し、マウス抗体の小パネルに加えて、異なるIgGイソ型にわたるこの比率の一般性を評価した。下表に示すように、両方が5個の鎖間ジスルフィドを有するマウスIgG1及びIgG2aは、PLRP−Sクロマトグラフィーにより決定したとき3.9から4.2の間のmcMMAF薬物負荷レベルを示した。6個の鎖間ジスルフィドを有するマウスIgG2bは、完全な還元に起因する、抗体当たりの反応性チオールの数がより大きい結果として、対応するより大きい平均mcMMAF負荷を示した。この結果は、特定の負荷レベルが望まれる場合に還元性抗体のジスルフィドの数に応じてマレイミド混合物を調整することの重要性を示すものである。
【0086】
【表1】
(実施例3)具体例としての蛍光団の負荷レベルを決定するための方法及び抗体コンジュゲートにおける蛍光団の負荷を決定するための標準物質を調製するための方法
コンジュゲートに存在する薬物及び蛍光団の両方を含む混合コンジュゲートを制御できる方法で調製することができる。蛍光団の存在は、抗体の大パネルから得られるコンジュゲートのより感度の高い定量を可能にし、或いは当パネルについて実施される結合アッセイ又は他のアッセイについてのリポーター基となり得る。Alexa Fluor(登録商標)647及びmcMMAFの所望の平均負荷を有する抗体コンジュゲートのパネルを作製するために、Alexa Fluor(登録商標)647マレイミドをmcMMAF及びNEMとともにマレイミドの混合物に含めることができる。Alexa Fluor647の標的負荷レベルを評価するために、Alexa Fluor647マレイミド及びmcMMAFの二成分混合物を用いて一連のマウスIgG1コンジュゲートを調製した。これらのコンジュゲート上のmcMMAFの平均負荷をPLRP−Sクロマトグラフィーにより決定し、完全に還元されたマウスIgG1上の総コンジュゲーション部位は10であるので、Alexa Fluor(登録商標)647の負荷を(10−mcMMAF負荷)と計算した。次にこれらのコンジュゲートの蛍光出力を、蛍光プレートリーダーを用いて決定し、Alexa Fluor(登録商標)647の負荷の関数としてプロットした(図4)。図4では、蛍光が負荷レベルの増加とともに抗体当たり約2.5から約3個の蛍光団に対応する最大値まで急激に増加し、その後はさらなる蛍光団の負荷に伴って間断なく減少することが示される。蛍光団の負荷の増加に伴う蛍光出力のこの低下は、おそらく、抗体の還元ジスルフィドにコンジュゲートしたときの蛍光団の密な空間的近接によって生ずる自己消光に起因する。この結果に基づいて、抗体当たり約3個の蛍光団負荷を選択した。この負荷レベルでは、蛍光出力が最大となる(蛍光アッセイにおける最大感度をもたらす)だけでなく、蛍光団負荷の関数としての蛍光の変動も最小となる。これは、抗体パネルにわたる蛍光団負荷の小さい変動が蛍光出力の大きい差をもたらさないという、コンジュゲートの濃度を定量化するために蛍光を用いる場合に重要な点を保証する。
【0087】
650nmと280nmの吸光度の比も上記の蛍光団−薬物コンジュゲートのそれぞれについて決定した。これらの比を、抗体当たりの蛍光団データに対してプロットして図5に示す。抗体当たり2.5〜3個の蛍光団の領域において、650nm/280nm吸光度比の変化が負荷レベルの変化とともに直線的であり、この直線の式は、実測吸光度値から混合AF647−mcMMAF抗体コンジュゲートにおける蛍光団負荷を定量するのに用いることができる。
【0088】
(実施例4)所望の薬物負荷レベルを達成するために化学的実体の比率を調整するための具体例としての方法
実施例3に記載したように、抗体当たりの蛍光団の具体例としての数は約3である。抗体含有試料がマウスIgG1及びIgG2aイソ型を含むものであり、蛍光団についての所望の負荷レベルが3であると仮定すると、AF647マレイミド及びmcMMAFの適切な混合物を調製することにより、7の薬物負荷レベルを達成することができる。しかし、N−エチルマレイミド(NEM)のようなキャッピング試薬を含めることにより、より低いレベルの薬物負荷を達成することができる。したがって、AF647及びmcMMAF負荷の所望のレベル(2つの合計がマウスIgG1又はIgG2aについて10以下であるという条件で)を達成するために、AF647、mcMMAF及びNEMの三成分混合物を適切な比率で調製することができる。所望の負荷レベルを達成するために必要なこれらの3つの試薬の正確な混合物を決定するために、それらの相対的な反応性を決定した。これは、mcMMAF:NEM及びAF647:NEMの1:1混合物を調製し、これらの混合物をプロテインG上に固定化した完全に還元したマウスIgG1と反応させることによって行った。得られたAF647コンジュゲートにおける蛍光団負荷のレベルを、図5を参照することによりその650nm/280nm吸光度比から決定し、一方、得られた薬物コンジュゲートにおけるmcMMAF負荷をPLRPクロマトグラフィーにより決定した。これらのデータを下表に示す。抗体におけるモル分率は、還元マウスIgG1にコンジュゲートするマレイミドの総数である10で割った各試薬(AF647又はmcMMAF)の負荷であり、NEMモル分率は、1から試薬のモル分率を差し引いたものであり、相対的反応性は、試薬のモル分率とNEMのモル分率との比である。この解析においては、NEMに相対的反応性値1を割り当てる。
【0089】
【表2】
これらの相対的反応性値を三成分混合物に用いるためのマレイミドの適切な比率に変換するために、最初に、最終のコンジュゲートした抗体(conjugated antibody)における各試薬の所望の負荷レベルを定めることが必要である。この実施例については、抗体コンジュゲートが還元されたとき10個の利用可能なチオールを有すると再び仮定して、4.5mcMMAF、3AF647及び2.5NEMの目標負荷を用いる。これは、それぞれ0.45、0.3及び0.25のコンジュゲートされたときのモル分率(conjugated mole fraction)に対応する。必要な計算を下表に要約する。
【0090】
【表3】
簡単に述べると、各試薬の、コンジュゲートされたときのモル分率についての目標値を、異なる試薬の1:1混合物を用いて上で決定したその相対的反応性係数で割る。次に、この値をすべての試薬についての値の合計で割ることによって、この値をマレイミド混合物中の必要なモル分率に変換する。例えば、mcMMAFについては、0.45/0.6=0.75;0.75/(0.75+0.74+0.25)=0.43。このように、0.43:0.43:0.14の比率のmcMMAF、AF647及びNEMの混合物は、それぞれ3つの試薬についての平均負荷4.5、3及び2.5を有する抗体コンジュゲートを生成すると予測される。同様な方法で、コンジュゲートにおける異なる負荷レベルを達成するために試薬の異なる比率を計算することができ、又はそれらの相対的反応性が決定されたならば、他の試薬についての比率を計算することができる。
【0091】
(実施例5)試料にわたる薬物負荷の一貫性の実証
mcMMAF、AF647、マレイミド及びNEMの溶液を0.43:0.43:0.14の比率で調製し、本方法により抗体のパネルをコンジュゲートするために用いた。これらの抗体は、マウス免疫付与キャンペーンから得られた新たに融合させたハイブリドーマを用いた1.5mLのウシIgG枯渇ハイブリドーマ培養培地から生成させた。得られた混合コンジュゲートの薬物及び蛍光団負荷の一貫性を決定するために、試料の1枚の96ウエルプレートを分析に供した。蛍光団負荷は、吸光度プレートリーダーで測定した各試料の650nm/280nm吸光度比により、図5に示す直線関係を参照して決定した。得られたデータを、各試料が生成したコンジュゲートの量に対してプロットして図6に示す。データは、少なくとも2.5μgのコンジュゲートを生成した試料についてのみ示す。その理由は、これより低い量は、ベースラインを有意に上回る280nm吸光度値をもたらさなかったからである。この2.5μg閾値に適合した65の試料がプレート上に存在しており、それらを図6に示す。図においてわかるように、負荷は、抗体当たりの蛍光団として2から4の間に散在しており、計算平均値が3.26、変動係数が10.2%である。3.26の平均負荷は、目標負荷3から10%未満異なっている。重要なことに、観測された蛍光団負荷レベルの範囲は、自己消光現象のために蛍光が著しく変化しない蛍光対負荷曲線(図4)の領域内に入っていた。換言すれば、抗体当たり2、3又は4個の蛍光団を有する抗体間の観測される蛍光の差は、20%未満であると予想される。mcMMAF負荷は、PLRPクロマトグラフィーにより決定した。mcMMAF−AF647−NEM抗体コンジュゲートの試料PLRPクロマトグラムを図7に示す。この図は、タンパク質を含むピークのすべてを検出するための280nmと少なくとも1つのAlexa Fluor(登録商標)647を含むピークを検出するための620nmの2つの分析波長のオーバーレイである。この図においてわかるように、NEMを含む軽鎖(2.2分)はAlexa Fluor(登録商標)647を含む軽鎖(2.5分)からわずかに分離されているが、両方ともmcMMAFを含む軽鎖(3.8分)から十分に分離されており、これにより、PLRPカラムはmcMMAF負荷に基づいて種を十分に分離するが、AF647負荷には基づかないことが示される。軽鎖は、TCEP処理によって還元される1つのシステインのみを含むので、これらは、存在する唯一の軽鎖種であり、NEM及びmcMMAFピークは、それらがAF647を含まないので、620nmでの吸光度を有さない。重鎖ピーククラスターは、4個の利用可能なチオールを含み、各ピークが単一種でないという事実のため、より複雑である。例えば、mcMMAFの2コピーを有する重鎖に対応するピーク(7.7分)は、2AF647、2NEM又は1AF647及び1NEMも含む重鎖種の集合であり、これらの様々な種は、PLRPカラムにより分離されない。分離のこのような特徴は、AF647又はNEMの存在による影響を受けずにmcMMAFの負荷を厳密に評価するためにこれらのデータを用いることを可能にするものである。この方法を用いて、mcMMAFの負荷レベルをハイブリドーマ上清のプレートからの34個の試料について決定し、各試料が生成したコンジュゲートの量に対して図8にプロットする。図においてわかるように、負荷は、抗体当たりmcMMAFの4から6コピーの間に散在しており、計算平均値は4.51、変動係数は7.75%である。4.51の平均負荷は、正確に4.5の目標レベルである。図においてわかるように、5より大きい負荷レベルを有する3つの域外値が存在しており、これらの試料のPLRPクロマトグラムは、mcMMAFの5コピーを有する重鎖種を含み、これは、これらの抗体の重鎖上にさらなる還元性ジスルフィドの存在を示すものであり(例として図9参照)、これらの抗体がマウスIgG2bイソ型であることが示唆される。したがって、これらの試料に認められたより高い負荷は、他の抗体と比較してmcMMAFの不釣り合いな負荷に起因するのではなく、むしろ、これらの抗体は、20%多くの利用可能なチオール(10個でなく12個)を有し、したがって、20%より高いレベルで各試薬を負荷されると予想されよう。これらの3つを解析から除外し、10個の利用可能なチオールを有する抗体のみを考慮する場合、31個の抗体の平均mcMMAF負荷は4.42であり、変動係数は3.45%となる。これらの結果は、可変のイソ型の抗体のパネルにわたる、また新たに融合させたハイブリドーマのパネルの可変の量での、本方法によって達成された試薬負荷(mcMMAF及びAF647)の一貫性を示している。
【0092】
(実施例6)薬物−リンカー及びキャッピング剤を負荷した抗体コンジュゲートを作製するための具体例としての方法
ハイブリドーマ上清を5mL丸底チューブ中で4.5mL溶液として調製した。150μLプロテインG樹脂スラリー(Millipore ProSep−G)をそれぞれに加えた。チューブにキャップをし、5℃で一夜回転させた。2つの対照チューブも調製し、1つはウシIgG枯渇増殖培地(ブランクとするため)を含み、1つは100μgの対照抗体をスパイクした同じ培地を含んでいた。
【0093】
翌朝、1250μL Matrixピペッターを用いて樹脂をチューブから2.5μmポリプロピレンフリット付き2mLの96ウエルフィルタープレート(Seahorse Bioscience)に移した。フィルタープレート中の上清を短時間にわたり真空をかけることによって吸引した(pulled through)。すべてのウエルを乾燥した(<30秒)後、すべての流体及び樹脂の完全な低減を保証するためにプレートを500×gで3分間遠心分離した。遠心後、フィルタープレートをマニホールドに戻し、各ウエルに500μLのPBSを入れた。次に、プレートをThermomixer上で1200RPM、30秒間振とうして、樹脂をスラリーとした。次に、PBSを真空により吸引した。この過程を2回繰り返し、合計3回PBS洗浄した。次に、この過程を3xPBSで繰り返し、次に、PBSでさらに洗浄した。この最終洗浄の後、プレートを前のように遠心した。
【0094】
次に、250mM KPO4、150mM NaCl、pH7、1mM EDTA中20mM TCEPを500μL加え、Thermomixer上で37℃において2時間振とうすることにより、結合抗体を還元した。還元後、TCEP溶液を真空により吸引し、次に上のように遠心し、上記のようにPBS+1mM EDTAで洗浄した。これを4回繰り返し、合計5回洗浄した。
【0095】
次に、結合抗体を4:6のモル比のNEM及びmc−MMAFの混合物にコンジュゲートした。12mMの総マレイミド濃度のNEM+mc−MMAFのストックをあらかじめ調製した。1.1mLのこの溶液を55mLの10%DMSOに加え、マルチチャネル容器に移し、500μLをフィルタープレートの各ウエルに加え、これを22℃で30分間振とうした。コンジュゲーションの後、マレイミド溶液を真空により吸引し、上記のように遠心した。遠心速度を1500×gに増加させて乾燥を完結した。次に、ウエルをPBS中10%DMSO 500μLで2回洗浄し、次にPBSで3回洗浄した。
【0096】
次に、200μLの100mMグリシン、pH2.0を各ウエルに加え、Thermomixer上で22℃において1200RPM、3分間振とうすることにより、結合ADCを溶出した。振とうしながら、20μLの中和バッファー(1M二塩基性リン酸塩+0.1%Tween−20)を350μL収集プレートの各ウエルに加えた。3分経過したとき、1500×gで6分間遠心することにより、ADCを収集プレート中に溶出した。
【0097】
200μLの各ADC溶液をCostar UVアッセイプレートに移した。中和溶出バッファーを含む第2のプレートを準備して、ブランクとした。Molecular Devices SpectraMaxプレートリーダーを用いてA280を測定し、タンパク質濃度を決定した。
【0098】
最後に、ADCを滅菌ろ過した。BSC内で、滅菌0.2μmフィルタープレート(Millipore)を、ラボテープを用いて滅菌1mL収集プレート(Matrix)に固定した。次に、ADC溶液をフィルタープレートに加え、500×gで3分間遠心した。次に、アセンブリをBSCに移し、分解し、次に収集プレートに滅菌済みキャップマット(Matrix)で蓋をした。
【0099】
(実施例7)薬物−リンカー、キャッピング剤及び蛍光団を負荷した抗体コンジュゲートを作製するための具体例としての方法
新たに融合させたハイブリドーマをHAT及び蛍光標識抗マウスIgG(Genetix)を含むメチルセルロース培地(Genetix)中でプレート培養した。クローン性IgG産生コロニーを選択し、HSFM(InVitrogen)+IgG枯渇クローニング因子(Roche)を含む96Wプレート中に沈積させた。100ng/mlのCy5標識抗マウス二次抗体(Jackson Labs)を含む均質アッセイ中で、非精製ハイブリドーマ培養上清の4倍希釈物を、標的腫瘍細胞とともにインキュベートした。腫瘍細胞へのハイブリドーマの結合をFMAT8200(Applied Biosystems)を用いて検出し、陽性ウエルを2mlのHSFM(InVitrogen)+IgG枯渇クローニング因子を含む48Wディッシュ中に拡大した。48Wの消滅した(extinguished)上清からの抗体を固相精製及びコンジュゲーションに用いた。
【0100】
ハイブリドーマ上清(1.5mL)を0.45μmポリプロピレンフリット付きの96ウエルディープウエルプレート(Seahorse Bioscience)に移した。蛍光によるコンジュゲート濃度の定量を可能にするために、標準マウス抗体をコンジュゲーションに含めた。50μgの標準抗体を、ブランク培地(合計200μg)を含むプレートの4ウエルに入れた。さらに、3ウエルに、バックグラウンド蛍光の決定のためにブランク培地のみを含めた。
【0101】
100μLのPBSを2.5μmポリプロピレンフィルター付きの96ウエルディープウエルフィルタープレート(Seahorse Bioscience)の各ウエルに入れた。20μLのプロテインG樹脂スラリー(GE Life Sciences GammaBind Plus)を各ウエルに加えた。
【0102】
プロテインG樹脂を含むフィルタープレートをレシーバープレートとして真空マニホールドに入れ、マニホールドを組み立てた。抗体試料及び標準物質を含む0.45μmフィルタープレートをマニホールドの上部にのせ、上清をそれに移した。真空をかけることにより、上清を、0.45μmフィルターを通してプロテインG樹脂を含むプレート中にろ過した。次に、樹脂プレートをEppendorf Thermomixerを用いて室温において1200RPM、2時間振とうして、プロテインGへの結合を達成した。残存上清は、500×gで5分間の遠心分離により2mLディープウエルレシーバープレート中にろ過した。
【0103】
100mMリン酸カリウム、pH7.4、150mM NaCl中10mMトリカルボキシエチルホスフィン(TCEP)の溶液をプレートに加えた(1ウエル当たり150μL)。プレートを上記のように30分間振とうし、次に振とう機から取り出し、500×gで2分間遠心分離した。樹脂を1mM EDTAを含む500μLのPBSで4回洗浄し、毎回の洗浄後に真空ろ過した。最終洗浄後、さらに500μLのPBS/EDTAを加え、500×gで3分間の遠心分離により除去した。
【0104】
薬物−リンカー(mcMMAF)、Alexa Fluor(登録商標)647及びNEMの個々のストックをDMSO中10mMで調製した。次に、これらのストックをコンジュゲーションのために以下の比率で混合して単一溶液にした。
【0105】
3:3:1 mcMMAF:Alexa Fluor(登録商標)647:NEM
140μLのこの溶液を15mLのPBS/EDTAに溶解し、150μLを洗浄済みプレートの各ウエルに加えた。次いで、プレートを上記のように15分間振とうし、次に振とう機から取り出し、500×gで2分間遠心分離した。樹脂を500μLのPBSで4回洗浄し、毎回の洗浄後に真空ろ過した。最終洗浄後に、さらに500μLのPBSを加え、500×gで3分間の遠心分離により除去した。
【0106】
10μLの1Mリン酸カリウムpH7.4を350μLの96ウエル透明底アッセイプレートの各ウエルに加えた。樹脂プレートをアッセイプレートの上におき、100μLの溶出バッファー(50mMグリシンpH2.5+0.08%Tween−20)を各ウエルに加えた。プレートを用手揺動により2分間緩やかにかき混ぜ、次に、500×gで2分間遠心分離して、溶出抗体コンジュゲートをアッセイプレートに収集した。アッセイプレートを直ちに蛍光プレートリーダー(Molecular Devices)に入れ、中和バッファーの溶出バッファー中への完全な混合を保証するためにプレートリーダーシェーカーを用いて10秒間振とうした。次に675nmでの各ウエルの蛍光を、665nmカットオフフィルターを用いた635nmの励起を用いて測定した。標準物質を含むウエル中の溶液を除去し、単一標準溶液にプールし、この標準物質の濃度を1cmキュベット中で従来のA280吸光度法により決定した。次に、この標準物質の1μg/mLの濃度までの希釈系列を調製した(中和溶出バッファーを希釈剤として用いた)。次に110μLの各標準物質を清浄な350μL透明底アッセイプレートに移し、プレートリーダーで蛍光を再び測定した。二次多項式曲線を標準物質の蛍光値に適合させ、この標準曲線への内挿法により試料の濃度を割り当てた。
【0107】
最後に、ADCを滅菌ろ過した。BSC内で、滅菌0.2μmフィルタープレート(Millipore)を、ラボテープを用いて滅菌1mL収集プレート(Matrix)に固定した。ADC溶液をフィルタープレートに加え、500×gで3分間遠心した。次に、アセンブリをBSCに移し、分解し、次に収集プレートに滅菌キャップマット(Matrix)で蓋をした。
【0108】
蛍光団及び薬物を含む混合抗体コンジュゲートを細胞結合アッセイ及び細胞傷害性アッセイにおいて試験した。細胞ベースの結合アッセイのために、抗体パネルをPBS+2%血清で1:200及び1:1000に希釈し、96W黒色プレート中の標的細胞上で室温において2時間インキュベートした。対照抗体を各プレートに用いて、ヒト及びシノ(cyno)形の抗原に対する飽和結合曲線を作成した。次に、プレートをFMAT8200で分析し、各希釈物についての平均蛍光強度値を飽和結合曲線上にプロットして、ヒト及びシノ形の抗原に対する試験抗体の親和性を推定した。ヒト及びシノ抗原への同等の結合を示したハイブリドーマを細胞傷害性試験に提出した。細胞傷害性試験は、適切な増殖培地中でウエル当たり5,000個の細胞を蒔くことによって行った。混合したコンジュゲートをそれぞれ1:100及び1:1000の最終希釈物に加えた。腫瘍細胞を薬物/蛍光団コンジュゲートとともに37℃で96時間インキュベートした。Cell Titer Glo(Promega)を用いて細胞生存率を測定し、無処理対照細胞に対する生存率の百分率に基づいて薬物/蛍光団コンジュゲートの効力を評価した。1nMの濃度で腫瘍細胞の70%未満の生存率をもたらした薬物/蛍光団コンジュゲートをさらなる試験に提出した。
【0109】
(実施例8)IgG枯渇
クローニング因子は、マウスB細胞との融合の後のハイブリドーマ細胞系を拡大する際に培地成分として一般的に用いられる。クローニング因子は、健常成長細胞の上清から採取される重要な細胞メディエーターを含み、これらは、新たなハイブリドーマ融合物が回復して、より頑健に成長し始めることを促進する。クローニング因子を構成する健常成長細胞から採取された上清は、培地成分として、ウシアルブミン、IgG及び他の血清タンパク質を含むと思われるウシ血清を含むと考えられる。少量の夾雑IgGでさえ抗体の定量的回収及び得られるADCの定量に影響を与え得るため、この場合に問題となるものはウシIgGである。
【0110】
クローニング因子からウシIgGを除去するための方法は、次の通りである。5mlのプロテインGカラムを1XPBS(5カラム容積、CV)25mlで平衡化する。ハイブリドーマクローニング因子の内容物を60cc注射器に充填する。注射器をプロテインGカラムに取り付け、シリンジポンプに接続する。ポンプを3ml/分に設定し、クローニング因子をプロテインGカラムに通し、流出物(effluent)を収集する。流出物は、IgG枯渇クローニング因子を含む。ウシIgGは、プロテインGカラムに結合する。IgG枯渇ハイブリドーマクローニング因子をバイオセーフティキャビネット内で0.22μmシリンジフィルターを用いて滅菌ろ過する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗体スクリーニングアッセイに用いるための抗体コンジュゲートを作製するための方法であって、
第1及び第2の抗体含有試料を供給するステップであって、ここで、該第1の試料に存在する抗体の実質的にすべてが同じ配列のものであり、かつ該第2の試料に存在する抗体の実質的にすべてが同じ配列のものであるという条件で、該第1及び第2の抗体含有試料が抗体量及び抗体配列に関して様々である、ステップと、
該抗体を固体支持体上に固定して、固定化抗体を含む第1及び第2の試料を供給するステップと、
該固定化抗体の還元性ジスルフィド結合を完全に還元して、還元した固定化抗体を含む第1の試料及び還元した固定化抗体を含む第2の試料を供給するステップであって、ここで、該還元が該還元性ジスルフィド結合に対して選択的である、ステップと、
該還元した固定化抗体を、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び必要に応じて検出剤と反応させて、固定化抗体コンジュゲートを供給するステップであって、ここで、該キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤が反応性チオールと選択的に反応し、該キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤がモル過剰で供給され、該キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤の比率が、所望のレベルの薬物負荷を達成するように選択される、ステップと、
該抗体コンジュゲートを溶出して、第1及び第2の抗体薬物コンジュゲート組成物を供給するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記還元性ジスルフィド結合が、前記抗体の天然に存在する鎖間ジスルフィド結合である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1及び第2の抗体含有試料中の前記抗体が同じ数の前記還元性ジスルフィド結合を有し、前記還元した固定化抗体を同じ比率の前記キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤と接触させる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1及び第2の抗体含有試料中の前記抗体が異なる数の還元性ジスルフィド結合を有し、前記還元した固定化抗体を異なる比率のキャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤と接触させる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記還元した固定化抗体を検出剤と反応させる、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記検出剤が蛍光団であり、得られる抗体コンジュゲート組成物が抗体当たり約3個の蛍光団の平均蛍光団負荷を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体コンジュゲートの溶出後に、前記抗体コンジュゲート組成物中に存在する抗体の実際量又は相対量を決定する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
固定化の前の前記抗体含有試料中に存在する前記抗体が不純である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
固定化、還元、コンジュゲーション及び溶出の前の前記抗体含有試料中に存在する前記抗体の量が既知でない、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体含有試料が前記試料に存在する1μg〜100μgの抗体を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体含有試料が前記試料に存在する1μg〜50μgの抗体を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体含有試料が前記試料に存在する1μg〜20μgの抗体を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体含有試料中の前記抗体が同じ種からのものである、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び検出剤がマレイミド基を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
試料間の薬物−リンカー負荷が実質的に均一である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体コンジュゲート組成物が抗体当たり約4個の薬物−リンカーの平均薬物−リンカー負荷を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体含有試料が細胞培養上清試料である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞培養上清が非精製ハイブリドーマ細胞培養上清である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞培養上清が非精製CHO細胞培養上清である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
抗体産生に用いた細胞培養培地の実質的にすべてがIgG枯渇培地であった、請求項17、18又は19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記固体支持体を前記細胞培養上清に加える、請求項17、18、19又は20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体コンジュゲートの活性についてアッセイするステップをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体コンジュゲート組成物を構成する前記抗体間の比較を、対応する前記抗体コンジュゲートの活性に基づいて行うステップを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記活性が細胞傷害性である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ハイスループットスクリーニングアッセイに用いるための抗体コンジュゲートを作製するための方法であって、
複数のハイブリドーマクローンから産生される定量化されていない抗体を含む未精製ハイブリドーマ上清の複数の試料を供給するステップであって、ここで、該複数の該試料の大多数において各試料に存在する抗体の実質的にすべてが単一ハイブリドーマクローンからのものであるという条件で、該複数の試料が抗体量及び抗体配列に関して様々である、ステップと、
該定量化されていない抗体を固体支持体上に固定して、固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップと、
該固定化抗体の鎖間ジスルフィドを完全に還元して、還元した固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップと、
該還元した固定化抗体を、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び検出剤と反応させて、固定化抗体コンジュゲートを供給するステップであって、ここで、該キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び検出剤が反応性チオールと選択的に反応し、該キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤がモル過剰で供給され、該キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び検出剤の比率が、所望のレベルの薬物負荷を達成するように選択される、ステップと、
該固体支持体から該固定化抗体コンジュゲートを溶出して、複数の抗体コンジュゲート組成物を供給するステップと
を含む方法。
【請求項26】
前記抗体コンジュゲート組成物中に存在する前記抗体の実際量又は相対量を決定するステップと、前記抗体コンジュゲートの活性をアッセイするステップと、該アッセイの結果及び該抗体コンジュゲート組成物中に存在する該抗体の実際量又は相対量に基づいて、所望の特性を有する抗体を選択するステップとをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
抗体産生のために用いた細胞培養培地の実質的にすべてがIgG枯渇培地であった、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
1μg〜100μgの抗体がハイブリドーマ上清の各試料中に存在する、請求項25又は26又は27に記載の方法。
【請求項29】
1μg〜50μgの抗体がハイブリドーマ上清の各試料中に存在する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
1μg〜20μgの抗体がハイブリドーマ上清の各試料中に存在する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記検出剤が蛍光標識である、請求項25から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び検出剤がマレイミド基を含む、請求項25から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
抗体スクリーニングアッセイに用いるための抗体コンジュゲートを作製するための方法であって、
抗体量及び抗体配列に関して様々である、複数の抗体含有試料を、該複数の該抗体含有試料の大多数において、単一試料に存在する該抗体の実質的にすべてが同じ配列のものであるという条件で、供給するステップと、
該抗体を固体支持体上に固定して、固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップと、
該固定化抗体の還元性ジスルフィド結合を完全に還元して、還元した固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップであって、ここで、該還元が還元性ジスルフィド結合に対して選択的である、ステップと、
該還元した固定化抗体を、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び必要に応じて検出剤と反応させて、固定化抗体コンジュゲートを含む複数の試料を供給するステップであって、ここで、該キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤が反応性チオールと選択的に反応し、該キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤がモル過剰で供給され、該キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤の比率が、所望のレベルの薬物負荷を達成するように選択される、ステップと、
前記抗体コンジュゲートを溶出して、複数の抗体コンジュゲート組成物を供給するステップと
を含む方法。
【請求項34】
抗体スクリーニングアッセイに用いるための抗体コンジュゲートを作製するための方法であって、
抗体量及び抗体配列に関して様々である、複数の抗体含有試料を、該複数の該抗体含有試料の大多数において、単一試料に存在する該抗体の実質的にすべてが同じ配列のものであるという条件で、供給するステップと、
該抗体を固体支持体上に固定して、固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップと、
該固定化抗体の還元性ジスルフィド結合を完全に還元して、還元した固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップであって、ここで、該還元が還元性ジスルフィド結合に対して選択的である、ステップと、
該還元した固定化抗体をキャッピング剤及び検出剤と反応させて、固定化抗体コンジュゲートを含む複数の試料を供給するステップであって、ここで、該キャッピング剤及び検出剤が反応性チオールと選択的に反応し、該キャッピング剤及び検出剤がモル過剰で供給され、該キャッピング剤及び検出剤の比率が、所望のレベルのキャッピング剤及び/又は検出剤負荷を達成するように選択される、ステップと、
該抗体コンジュゲートを溶出して、複数の抗体コンジュゲート組成物を供給するステップと
を含む方法。
【請求項35】
抗体薬物コンジュゲートに用いるための抗体を選択するための方法であって、
抗体量及び抗体配列に関して様々である、複数の抗体含有試料を、該複数の該抗体含有試料の大多数において、単一試料に存在する該抗体の実質的にすべてが同じ配列のものであるという条件で、供給するステップと、
該抗体を固体支持体上に固定して、固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップと、
該固定化抗体の還元性ジスルフィド結合を完全に還元して、還元した固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップであって、ここで、該還元が還元性ジスルフィド結合に対して選択的である、ステップと、
該還元した固定化抗体をキャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び必要に応じて検出剤と反応させて、固定化抗体コンジュゲートを含む複数の試料を供給するステップであって、ここで、該キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤が反応性チオールと選択的に反応し、該キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤がモル過剰で供給され、該キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤の比率が、所望のレベルの薬物負荷を達成するように選択される、ステップと、
該抗体コンジュゲートを溶出して、遊離抗体コンジュゲートを含む複数の抗体コンジュゲート組成物を供給するステップと、
該抗体コンジュゲートの活性についてアッセイするステップと、
該アッセイの結果に基づいて抗体を選択するステップと
を含む方法。
【請求項36】
抗体薬物コンジュゲートに用いるための抗体を選択するための方法であって、
抗体量及び抗体配列に関して様々である、複数の抗体含有試料を、該複数の該抗体含有試料の大多数において、単一試料に存在する抗体の実質的にすべてが同じ配列のものであるという条件で、供給するステップと、
該抗体を固体支持体上に固定して、固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップと、
該固定化抗体の還元性ジスルフィド結合を完全に還元して、還元した固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップであって、ここで、該還元が還元性ジスルフィド結合に対して選択的である、ステップと、
該還元した固定化抗体をキャッピング剤及び検出剤と反応させて、固定化抗体コンジュゲートを含む複数の試料を供給するステップであって、ここで、該キャッピング剤及び検出剤が反応性チオールと選択的に反応し、該キャッピング剤及び検出剤がモル過剰で供給され、該キャッピング剤及び検出剤の比率が、所望のレベルのキャッピング剤及び/又は検出剤負荷を達成するように選択される、ステップと、
該抗体コンジュゲートを溶出して、遊離抗体コンジュゲートを含む複数の抗体コンジュゲート組成物を供給するステップと、
該抗体コンジュゲートの活性についてアッセイするステップと、
該アッセイの結果に基づいて抗体を選択するステップと
を含む方法。
【請求項1】
抗体スクリーニングアッセイに用いるための抗体コンジュゲートを作製するための方法であって、
第1及び第2の抗体含有試料を供給するステップであって、ここで、該第1の試料に存在する抗体の実質的にすべてが同じ配列のものであり、かつ該第2の試料に存在する抗体の実質的にすべてが同じ配列のものであるという条件で、該第1及び第2の抗体含有試料が抗体量及び抗体配列に関して様々である、ステップと、
該抗体を固体支持体上に固定して、固定化抗体を含む第1及び第2の試料を供給するステップと、
該固定化抗体の還元性ジスルフィド結合を完全に還元して、還元した固定化抗体を含む第1の試料及び還元した固定化抗体を含む第2の試料を供給するステップであって、ここで、該還元が該還元性ジスルフィド結合に対して選択的である、ステップと、
該還元した固定化抗体を、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び必要に応じて検出剤と反応させて、固定化抗体コンジュゲートを供給するステップであって、ここで、該キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤が反応性チオールと選択的に反応し、該キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤がモル過剰で供給され、該キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤の比率が、所望のレベルの薬物負荷を達成するように選択される、ステップと、
該抗体コンジュゲートを溶出して、第1及び第2の抗体薬物コンジュゲート組成物を供給するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記還元性ジスルフィド結合が、前記抗体の天然に存在する鎖間ジスルフィド結合である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1及び第2の抗体含有試料中の前記抗体が同じ数の前記還元性ジスルフィド結合を有し、前記還元した固定化抗体を同じ比率の前記キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤と接触させる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1及び第2の抗体含有試料中の前記抗体が異なる数の還元性ジスルフィド結合を有し、前記還元した固定化抗体を異なる比率のキャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤と接触させる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記還元した固定化抗体を検出剤と反応させる、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記検出剤が蛍光団であり、得られる抗体コンジュゲート組成物が抗体当たり約3個の蛍光団の平均蛍光団負荷を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体コンジュゲートの溶出後に、前記抗体コンジュゲート組成物中に存在する抗体の実際量又は相対量を決定する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
固定化の前の前記抗体含有試料中に存在する前記抗体が不純である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
固定化、還元、コンジュゲーション及び溶出の前の前記抗体含有試料中に存在する前記抗体の量が既知でない、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体含有試料が前記試料に存在する1μg〜100μgの抗体を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体含有試料が前記試料に存在する1μg〜50μgの抗体を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記抗体含有試料が前記試料に存在する1μg〜20μgの抗体を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記抗体含有試料中の前記抗体が同じ種からのものである、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び検出剤がマレイミド基を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
試料間の薬物−リンカー負荷が実質的に均一である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体コンジュゲート組成物が抗体当たり約4個の薬物−リンカーの平均薬物−リンカー負荷を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体含有試料が細胞培養上清試料である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記細胞培養上清が非精製ハイブリドーマ細胞培養上清である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記細胞培養上清が非精製CHO細胞培養上清である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
抗体産生に用いた細胞培養培地の実質的にすべてがIgG枯渇培地であった、請求項17、18又は19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記固体支持体を前記細胞培養上清に加える、請求項17、18、19又は20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体コンジュゲートの活性についてアッセイするステップをさらに含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体コンジュゲート組成物を構成する前記抗体間の比較を、対応する前記抗体コンジュゲートの活性に基づいて行うステップを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記活性が細胞傷害性である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ハイスループットスクリーニングアッセイに用いるための抗体コンジュゲートを作製するための方法であって、
複数のハイブリドーマクローンから産生される定量化されていない抗体を含む未精製ハイブリドーマ上清の複数の試料を供給するステップであって、ここで、該複数の該試料の大多数において各試料に存在する抗体の実質的にすべてが単一ハイブリドーマクローンからのものであるという条件で、該複数の試料が抗体量及び抗体配列に関して様々である、ステップと、
該定量化されていない抗体を固体支持体上に固定して、固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップと、
該固定化抗体の鎖間ジスルフィドを完全に還元して、還元した固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップと、
該還元した固定化抗体を、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び検出剤と反応させて、固定化抗体コンジュゲートを供給するステップであって、ここで、該キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び検出剤が反応性チオールと選択的に反応し、該キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤がモル過剰で供給され、該キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び検出剤の比率が、所望のレベルの薬物負荷を達成するように選択される、ステップと、
該固体支持体から該固定化抗体コンジュゲートを溶出して、複数の抗体コンジュゲート組成物を供給するステップと
を含む方法。
【請求項26】
前記抗体コンジュゲート組成物中に存在する前記抗体の実際量又は相対量を決定するステップと、前記抗体コンジュゲートの活性をアッセイするステップと、該アッセイの結果及び該抗体コンジュゲート組成物中に存在する該抗体の実際量又は相対量に基づいて、所望の特性を有する抗体を選択するステップとをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
抗体産生のために用いた細胞培養培地の実質的にすべてがIgG枯渇培地であった、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
1μg〜100μgの抗体がハイブリドーマ上清の各試料中に存在する、請求項25又は26又は27に記載の方法。
【請求項29】
1μg〜50μgの抗体がハイブリドーマ上清の各試料中に存在する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
1μg〜20μgの抗体がハイブリドーマ上清の各試料中に存在する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記検出剤が蛍光標識である、請求項25から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び検出剤がマレイミド基を含む、請求項25から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
抗体スクリーニングアッセイに用いるための抗体コンジュゲートを作製するための方法であって、
抗体量及び抗体配列に関して様々である、複数の抗体含有試料を、該複数の該抗体含有試料の大多数において、単一試料に存在する該抗体の実質的にすべてが同じ配列のものであるという条件で、供給するステップと、
該抗体を固体支持体上に固定して、固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップと、
該固定化抗体の還元性ジスルフィド結合を完全に還元して、還元した固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップであって、ここで、該還元が還元性ジスルフィド結合に対して選択的である、ステップと、
該還元した固定化抗体を、キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び必要に応じて検出剤と反応させて、固定化抗体コンジュゲートを含む複数の試料を供給するステップであって、ここで、該キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤が反応性チオールと選択的に反応し、該キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤がモル過剰で供給され、該キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤の比率が、所望のレベルの薬物負荷を達成するように選択される、ステップと、
前記抗体コンジュゲートを溶出して、複数の抗体コンジュゲート組成物を供給するステップと
を含む方法。
【請求項34】
抗体スクリーニングアッセイに用いるための抗体コンジュゲートを作製するための方法であって、
抗体量及び抗体配列に関して様々である、複数の抗体含有試料を、該複数の該抗体含有試料の大多数において、単一試料に存在する該抗体の実質的にすべてが同じ配列のものであるという条件で、供給するステップと、
該抗体を固体支持体上に固定して、固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップと、
該固定化抗体の還元性ジスルフィド結合を完全に還元して、還元した固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップであって、ここで、該還元が還元性ジスルフィド結合に対して選択的である、ステップと、
該還元した固定化抗体をキャッピング剤及び検出剤と反応させて、固定化抗体コンジュゲートを含む複数の試料を供給するステップであって、ここで、該キャッピング剤及び検出剤が反応性チオールと選択的に反応し、該キャッピング剤及び検出剤がモル過剰で供給され、該キャッピング剤及び検出剤の比率が、所望のレベルのキャッピング剤及び/又は検出剤負荷を達成するように選択される、ステップと、
該抗体コンジュゲートを溶出して、複数の抗体コンジュゲート組成物を供給するステップと
を含む方法。
【請求項35】
抗体薬物コンジュゲートに用いるための抗体を選択するための方法であって、
抗体量及び抗体配列に関して様々である、複数の抗体含有試料を、該複数の該抗体含有試料の大多数において、単一試料に存在する該抗体の実質的にすべてが同じ配列のものであるという条件で、供給するステップと、
該抗体を固体支持体上に固定して、固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップと、
該固定化抗体の還元性ジスルフィド結合を完全に還元して、還元した固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップであって、ここで、該還元が還元性ジスルフィド結合に対して選択的である、ステップと、
該還元した固定化抗体をキャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び必要に応じて検出剤と反応させて、固定化抗体コンジュゲートを含む複数の試料を供給するステップであって、ここで、該キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤が反応性チオールと選択的に反応し、該キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤がモル過剰で供給され、該キャッピング剤、薬物又は薬物−リンカー及び任意選択の検出剤の比率が、所望のレベルの薬物負荷を達成するように選択される、ステップと、
該抗体コンジュゲートを溶出して、遊離抗体コンジュゲートを含む複数の抗体コンジュゲート組成物を供給するステップと、
該抗体コンジュゲートの活性についてアッセイするステップと、
該アッセイの結果に基づいて抗体を選択するステップと
を含む方法。
【請求項36】
抗体薬物コンジュゲートに用いるための抗体を選択するための方法であって、
抗体量及び抗体配列に関して様々である、複数の抗体含有試料を、該複数の該抗体含有試料の大多数において、単一試料に存在する抗体の実質的にすべてが同じ配列のものであるという条件で、供給するステップと、
該抗体を固体支持体上に固定して、固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップと、
該固定化抗体の還元性ジスルフィド結合を完全に還元して、還元した固定化抗体を含む複数の試料を供給するステップであって、ここで、該還元が還元性ジスルフィド結合に対して選択的である、ステップと、
該還元した固定化抗体をキャッピング剤及び検出剤と反応させて、固定化抗体コンジュゲートを含む複数の試料を供給するステップであって、ここで、該キャッピング剤及び検出剤が反応性チオールと選択的に反応し、該キャッピング剤及び検出剤がモル過剰で供給され、該キャッピング剤及び検出剤の比率が、所望のレベルのキャッピング剤及び/又は検出剤負荷を達成するように選択される、ステップと、
該抗体コンジュゲートを溶出して、遊離抗体コンジュゲートを含む複数の抗体コンジュゲート組成物を供給するステップと、
該抗体コンジュゲートの活性についてアッセイするステップと、
該アッセイの結果に基づいて抗体を選択するステップと
を含む方法。
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図1】
【図3】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図1】
【図3】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2013−521498(P2013−521498A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556142(P2012−556142)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【国際出願番号】PCT/US2011/026534
【国際公開番号】WO2011/109308
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(505314468)シアトル ジェネティックス, インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【国際出願番号】PCT/US2011/026534
【国際公開番号】WO2011/109308
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(505314468)シアトル ジェネティックス, インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】
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