説明

抗菌防黴剤およびそれを含有する繊維状物質

【課題】抗菌、防黴の双方に効果的な特定の有機化合物の金属塩よりなる抗菌防黴剤を含有する繊維状物質および該繊維状物質を含む各種の物品を提供することにある。
【解決手段】繊維状物質に特定の有機化合物の金属塩よりなる抗菌防黴剤を含有させせることにより、極めて良好な抗菌防黴機能を有する繊維状物質が得られ、該繊維状物質を含む各種の物品は、良く抗菌防黴効果を発揮することが解った。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、抗菌防黴剤およびそれを含有する繊維状物質に関し、詳しくは、抗菌、防黴の双方に極めて効果的であって、しかも高濃度菌汚染にも良好に機能し、耐久性に優れ、水洗による効果の低下や脱落汚染の著しく少なく、安全性の高い抗菌防黴剤およびそれを含有する繊維状物質に関する。さらに、本発明は、抗菌防黴剤を含有する繊維状物質を含む各種の物品、例えば半導体製造工業、医薬品製造工業、食品工業、病院などの分野で使用されるクリーンルーム用エアーフィルター、オフィスの空調、家庭用エアコンなどのフィルター用濾材、特に各種の乗り物に使用される自動車用エアーフィルターの濾材に適用される抗菌防黴機能を有する濾材に関する。さらに詳しくは、抗菌、防黴の双方に極めて効果的であって、しかも高濃度菌汚染にも良好に機能し、耐久性に優れ、水洗による効果の低下や脱落汚染が著しく少なく、安全性の高い各種の物品、特に各種の濾材に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、ユーザーの清潔志向の高まりに呼応して、抗菌や防黴の機能を備えた各種繊維製品が市場に提供されている。従来から、銀、銅、亜鉛などの無機化合物金属塩が、抗菌性を有することは良く知られていた。また、ピロール系、ピリジン系、ピリミジン系、イミダゾール系、チアゾール系などの有機化合物が、防黴性を有することも、また良く知られていたことである。しかしながら、一般に無機金属塩は、抗菌効果はあるものの、防黴効果において劣り、一方、有機化合物は、防黴効果はあるが、抗菌効果が劣る傾向が大きく、抗菌・防黴の双方の機能を十分兼備したものは未だない。
【0003】最近は、抗菌・防黴の双方の機能を持った各種繊維製品の要望が一段と高まり、メーカーは、その対応に注力しているのが実情である。
【0004】これまで、抗菌や防黴の機能を付与する目的で、無機化合物金属塩や上記のような各種の有機化合物を、各種の製品に適用する試みは、数多くなされている。
【0005】特開平7−126432号公報には、チオール基含有化合物が銀イオンに配位してなる錯体を、樹脂中に分散した抗菌抗かび性樹脂組成物が開示されている。特開平7−133444号公報には、抗菌剤とビヒクルとを含有する抗菌性塗料組成物において、前記抗菌剤が分子内に金属イオンに配位可能な配位基とアルコキシシリル基とを有する配位化合物を銀イオン、銅イオン、亜鉛イオン、錫イオンまたはクロムイオンに配位させてなる金属錯体である抗菌性塗料組成物が開示されている。特開平5−7617号公報には、酸性基を有するポリマーからなる脱臭素材であって、亜鉛イオン、銅イオン、ニッケルイオン、マンガンイオン、銀イオン、鉄イオンからなる群より選ばれた少なくとも一種の金属イオンで置換された酸性基をグラムポリマー当たり特定のグラム当量含有させた脱臭素材が開示されている。特開平5−214671号公報には、少なくとも一部が抗菌作用を有する金属イオンと消臭作用を有するイオンで置換されているイオン交換繊維で構成されている消臭抗菌繊維が開示されている。特開平6−200472号公報には、イオン交換繊維と、そのイオン交換繊維にイオン交換反応により捕捉させた抗菌能を有する金属イオンとからなる抗菌性繊維が開示されている。特開昭63−270900号公報には、カルボキシメチル基置換度0.35以下のカルボキシメチル化セルロース系繊維に銅又は/及び亜鉛イオンを吸着させた脱臭性能及び抄紙性能を有するセルロース系繊維及びそれを用いたシート状物が開示されている。特開平5−106199号公報には、繊維内部に無機ケイ素化合物を担持させ、次いでこの無機ケイ素化合物担持繊維を、アルミン酸塩を含む水溶液に浸漬後、銅、銀、および亜鉛の水溶性塩から選ばれた少なくとも一種類を含む水溶液で浸漬処理した抗菌性繊維が開示されている。特開平6−248549号公報には、多数の長繊維を集積してなる長繊維不織布の表面に繊維シートを積層し、該シート側から該長繊維不織布側に貫通するように、高圧水柱流を施すことにより該シートを構成する繊維と長繊維不織布を構成する長繊維とを交絡させてなる不織布において、該繊維シートが水に不溶性、或いは溶解度が低く実質的に水に不溶性の抗菌剤を含有させたパルプ繊維からなる不織布が開示されている。特開平4−126819号公報には、2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾールまたは2−(カルボメトキシアミノ)−ベンズイミダゾールを含有する抗菌作用を有するポリビニルアルコール系繊維が開示されている。
【0006】しかしながら、これらいずれの方法においても、抗菌・防黴の双方の機能を十分兼備したものはなく、特に耐久性などには問題がある。
【0007】有機化合物の重金属塩の抗菌剤は、以前から知られており、例えば米国特許第2809971号明細書には、1−ヒドロキシ−2−ピリジンチオンの重金属塩が開示されている。そして、その重金属塩として、亜鉛塩、マンガン塩、鉄塩、コバルト塩および銅塩がクレームされている。これら有機化合物の重金属塩は、レザー、紙、塗料に用いられ、特にプラスチックスや織物に対して、含浸加工やスプレー加工などによって応用される旨、記載されている。また、明細書には、その織物に対して、ピリジンチオールで処理し、次いで、水溶性の有機化合物の重金属塩で処理することが記載されている。しかしながら、この方法では、初期的効果は得られても、脱落汚染があったり、洗浄や摩擦などにより劣化が生じるなど、永続的効果に欠ける嫌いがある。
【0008】また、最近、特にユーザーの清潔志向の高まりを背景に、抗菌や防黴の機能を備えた各種繊維状物質を含む各種の物品、特に濾材が市場に提供されている。
【0009】これまで、各種の物品に抗菌や防黴の機能を付与する目的で、抗菌防黴剤、特に無機化合物金属塩を含有する各種の繊維状物質を、例えば濾材に適用する試みは、数多くなされている。
【0010】特開平6−285314号公報には、特定の平均繊維径を有する一価の銀イオンを含有するAg含有ガラス繊維と特定の平均繊維径および特定の平均繊維長を有する銀イオンを含まないAg非含有ガラス繊維とを混抄して得られる不織布を抗菌濾紙として提供する旨、開示されている。
【0011】特開平6−285314号公報には、活性炭繊維と、一価の銀イオンを含有するAg含有ガラス繊維とを混抄して得られる不織布よりなる脱臭抗菌濾紙が開示されている。
【0012】特開平6−269619号公報には、通気性を有するシート同士が通気性の抗菌性ホットメルトシートで接合され、全体として通気性を有していることを特徴とする抗菌性ホットメルトシートが開示されている。
【0013】特開平7−108120号公報には、エアーフィルターを構成するろ材繊維の間を通過する空気流に抗菌性を有する金属ヒュームを漂わせ、前記金属ヒュームを含む空気がエアーフィルターを通過するときに、金属ヒュームが前記ろ材繊維に付着するようにしたことを特徴とする抗菌エアーフィルターの製造方法が開示されている。
【0014】しかしながら、これらいずれの方法も、抗菌や防黴の機能を備えた各種繊維状物質を含む種々の物品、特に濾材においても、抗菌・防黴の双方の機能を十分兼備したものはなく、特に耐久性などには問題がある。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、かかる現状に鑑み、鋭意検討した結果、抗菌、防黴の双方に極めて効果的で、しかも種々の優れた特性を具備した抗菌防黴剤および該抗菌防黴剤を含有する繊維状物質が極めて優れた効果を発揮することを見い出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明の目的は、抗菌・防黴の双方に極めて有効な抗菌防黴剤を提供することにあり、また、該抗菌防黴剤を繊維状物質に含有させることにより、長期的に安定で、水洗等によっても脱落することなく、高濃度の菌汚染に対しても極めて効果的な繊維状物質を提供することにある。また、有機化合物の金属塩よりなる抗菌防黴剤を含有する繊維状物質(以下、本発明における繊維状物質と呼称することがある)を各種の物品、特に濾材に適用することによって、濾材としての性能をなんら損ねることなく、抗菌・防黴の双方の機能を十分兼備した極めて優れた抗菌防黴機能を有する濾材の提供を可能ならしめたものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明の抗菌防黴剤は、基本的にそれ自体防かび性を有する特定の有機化合物の金属塩よりなり、また本発明の抗菌防かび機能に優れた繊維状物質は、有機化合物の金属塩を含有する繊維を形成することによって達成された。該有機化合物は、含窒素複素環、硫黄原子の少なくともいずれかを含む化合物から選択される。これらの有機化合物としては、例えば、ピロール系、ピリジン系、ピリミジン系、ピラゾール系、イミダゾール系、ベンズイミダゾール系、1,3,5−トリアジン系、ヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン系、トリアゾール系、イソオキサゾール系、チアゾール系、ベンゾチアゾール系、チアゾロン系、ベンゾチアゾロン系、イソチアゾロン系、ベンゾイソチアゾロン系、テトラヒドロチアジアジンチオン系などを基本骨格とするものが挙げられ、さらに、それらのアルキルアリル誘導体、メルカプト誘導体などが挙げられるが、なかでも、ベンズイミダゾール化合物、メルカプトピリジン−N−オキシド化合物、イソチアゾロン化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾチアゾロン化合物から選ばれる少なくとも一種の化合物が特に好ましい。
【0017】これらの具体例としては、例えば、2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾール、2−(カルボメトキシアミノ)−ベンズイミダゾール、2−メルカプトピリジン−N−オキシド、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンゾチアゾロン、2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール等を挙げることができる。またこれらの金属塩は銀、銅、亜鉛塩から選択される、好ましくは2種以上の複合塩で形成され、特に銀塩、銅塩、亜鉛塩の3種が複合されたものが好ましい。
【0018】さらに詳記するならば、上記の課題を解決すべく鋭意研究した結果、以下の発明に至った。
【0019】1.本発明は、有機化合物の金属塩よりなる抗菌防黴剤を含有する繊維状物質の発明である。
【0020】2.上記の発明1において、該繊維状物質が、イオン交換繊維である繊維状物質の発明である。
【0021】3.上記の発明1において、有機化合物が、含窒素複素環、硫黄原子の少なくとも1種を含む化合物である繊維状物質の発明である。
【0022】4.上記の発明3において、含窒素複素環、硫黄原子の少なくとも1種を含む有機化合物が、ベンズイミダゾール化合物、メルカプトピリジン−N−オキシド化合物、イソチアゾロン化合物、ベンゾチアゾール化合物もしくはベンゾチアゾロン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物である繊維状物質の発明である。
【0023】5.上記の発明1において、金属塩が、銀塩、銅塩、亜鉛塩の少なくとも1種である繊維状物質の発明である。
【0024】6.上記の発明5において、金属塩が銀塩、銅塩、亜鉛塩の2種以上が複合されたものである繊維状物質の発明である。
【0025】7.上記の発明6において、金属塩が銀塩、銅塩、亜鉛塩の3種が複合されたものである繊維状物質の発明である。
【0026】8.上記の発明7において、銀塩、銅塩および亜鉛塩の3種について、銀、銅および亜鉛の組成比が、モル比で合計100としたとき、それぞれ、銀10〜40、亜鉛20〜60、残りが銅である(ただし、銅が0になることはない)繊維状物質の発明である。
【0027】9.上記の発明2において、イオン交換繊維が、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレンおよびセルロースから選ばれる少なくとも1種であって、スルホン酸基、ホスホン酸基およびカルボン酸基の少なくとも1種を有する繊維状物質の発明である。
【0028】10.上記の発明9において、イオン交換繊維が、カルボキシメチル変性されたものである繊維状物質の発明である。
【0029】11.上記の発明10において、イオン交換繊維が、カルボキシメチル変性セルロースである繊維状物質の発明である。
【0030】12.上記の発明11において、カルボキシメチル変性セルロースの変性度が置換度で0.5以下である繊維状物質の発明である。
【0031】13.上記の発明11において、カルボキシメチル変性セルロースに対して、有機化合物の金属塩よりなる抗菌防黴剤が、固形分重量で1%以上である繊維状物質の発明である。
【0032】14.本発明は、イオン交換繊維に金属塩を加え、続いて有機化合物を加えて得られる抗菌防黴剤を含有した繊維状物質の発明である。
【0033】15.上記の発明14において、金属塩が銀塩、銅塩、亜鉛塩の少なくとも1種である抗菌防黴剤を含有した繊維状物質の発明である。
【0034】16.上記の発明15において、金属塩が銀塩、銅塩、亜鉛塩の2種以上が複合されたものである抗菌防黴剤を含有した繊維状物質の発明である。
【0035】17.上記の発明16において、金属塩が銀塩、銅塩、亜鉛塩の3種が複合されたものである抗菌防黴剤を含有した繊維状物質の発明である。
【0036】18.上記の発明14において、有機化合物が、含窒素複素環、硫黄原子の少なくとも1種を含む化合物である抗菌防黴剤を含有した繊維状物質の発明である。
【0037】19.上記の発明18において、含窒素複素環、硫黄原子の少なくとも1種を含む有機化合物が、ベンズイミダゾール化合物、メルカプトピリジン−N−オキシド化合物、イソチアゾロン化合物、ベンゾチアゾール化合物もしくはベンゾチアゾロン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物である抗菌防黴剤を含有した繊維状物質の発明である。
【0038】20.上記の発明14において、イオン交換繊維が、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレンおよびセルロースから選ばれる少なくとも1種であって、スルホン酸基、ホスホン酸基およびカルボン酸基の少なくとも1種を有する抗菌防黴剤を含有した繊維状物質の発明である。
【0039】21.上記の発明20において、イオン交換繊維が、カルボキシメチル変性されたものである抗菌防黴剤を含有した繊維状物質の発明である。
【0040】22.上記の発明21において、イオン交換繊維が、カルボキシメチル変性セルロースである抗菌防黴剤を含有した繊維状物質の発明である。
【0041】23.上記の発明22において、カルボキシメチル変性セルロースの変性度が置換度で0.5以下である繊維状物質の発明である。
【0042】24.上記の発明14において、カルボキシメチル変性セルロースに、銀塩、銅塩、亜鉛塩の少なくとも1種を加え、pH5〜8の条件下、これにベンズイミダゾール化合物、メルカプトピリジン−N−オキシド化合物、イソチアゾロン化合物、ベンゾチアゾール化合物もしくはベンゾチアゾロン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を加えて得られる抗菌防黴剤を含有した繊維状物質の発明である。
【0043】25.上記の発明24において、カルボキシメチル変性セルロースに、銀塩、銅塩、亜鉛塩の2種以上を加え、pH5〜8の条件下、これにベンズイミダゾール化合物、メルカプトピリジン−N−オキシド化合物、イソチアゾロン化合物、ベンゾチアゾール化合物もしくはベンゾチアゾロン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を加えて得られる抗菌防黴剤を含有した繊維状物質の発明である。
【0044】26.上記の発明25において、カルボキシメチル変性セルロースに、銀塩、銅塩、亜鉛塩の3種を加え、pH5〜8の条件下、これにベンズイミダゾール化合物、メルカプトピリジン−N−オキシド化合物、イソチアゾロン化合物、ベンゾチアゾール化合物もしくはベンゾチアゾロン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を加えて得られる抗菌防黴剤を含有した繊維状物質の発明である。
【0045】27.上記の発明26において、カルボキシメチル変性セルロースに、銀塩、銅塩、亜鉛塩の3種を加え、pH5〜8の条件下、これにメルカプトピリジン−N−オキシド化合物を加えて得られる抗菌防黴剤を含有した繊維状物質の発明である。
【0046】28.上記の発明27において、カルボキシメチル変性セルロースに、銀塩を加え、pH5〜8の条件下、これにメルカプトピリジン−N−オキシド化合物を加え、さらに銅塩を加え、pH5〜8の条件下、これにさらにメルカプトピリジン−N−オキシド化合物を加え、またさらに亜鉛塩を加え、pH5〜8の条件下、これにまたさらにメルカプトピリジン−N−オキシド化合物を加えて得られる抗菌防黴剤を含有した繊維状物質の発明である。
【0047】29.上記の発明26において、カルボキシメチル変性セルロースに、銀塩、銅塩、亜鉛塩の少なくとも2種を加え、pH5〜8の条件下、これにベンズイミダゾール化合物、メルカプトピリジン−N−オキシド化合物、イソチアゾロン化合物、ベンゾチアゾール化合物もしくはベンゾチアゾロン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を加え、さらに亜鉛塩を加えて得られる抗菌防黴剤を含有した繊維状物質の発明である。
【0048】30.上記の発明29において、カルボキシメチル変性セルロースに、銀塩、銅塩、亜鉛塩の少なくとも2種を加え、pH5〜8の条件下、これにメルカプトピリジン−N−オキシド化合物を加え、さらに亜鉛塩を加えて得られる抗菌防黴剤を含有した繊維状物質の発明である。
【0049】31.上記の発明26において、カルボキシメチル変性セルロースに、銀塩、銅塩、亜鉛塩の少なくとも2種を加え、pH5〜8の条件下、これにベンズイミダゾール化合物、メルカプトピリジン−N−オキシド化合物、イソチアゾロン化合物、ベンゾチアゾール化合物もしくはベンゾチアゾロン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を加え、さらに銅塩を加えて得られる抗菌防黴剤を含有した繊維状物質の発明である。
【0050】32.上記の発明31において、カルボキシメチル変性セルロースに、銀塩、銅塩、亜鉛塩の少なくとも2種を加え、pH5〜8の条件下、これにメルカプトピリジン−N−オキシド化合物を加え、さらに銅塩を加えて得られる抗菌防黴剤を含有した繊維状物質の発明である。
【0051】33.本発明は、含窒素複素環、硫黄原子の少なくともいずれかを含む有機化合物と銀塩、銅塩、亜鉛塩の2種以上が複合された抗菌防黴剤の発明である。
【0052】34.本発明は、含窒素複素環、硫黄原子の少なくともいずれかを含む有機化合物と銀塩、銅塩、亜鉛塩の3種が複合された抗菌防黴剤の発明である。
【0053】35.本発明は、有機化合物の金属塩よりなる抗菌防黴剤を含有する繊維状物質を含む物品の発明である。
【0054】36.上記の発明35において、該繊維状物質が、イオン交換繊維である物品の発明である。
【0055】37.上記の発明35において、有機金属塩を形成する有機化合物が、含窒素複素環、硫黄原子の少なくとも1種を含む化合物である物品の発明である。
【0056】38.上記の発明37において、含窒素複素環、硫黄原子の少なくとも1種を含む有機化合物が、ベンズイミダゾール化合物、メルカプトピリジン−N−オキシド化合物、イソチアゾロン化合物、ベンゾチアゾール化合物もしくはベンゾチアゾロン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物である物品の発明である。
【0057】39.上記の発明35において、有機金属塩を形成する金属塩が銀塩、銅塩、亜鉛塩の少なくとも1種である物品の発明である。
【0058】40.上記の発明39において、金属塩が銀塩、銅塩、亜鉛塩の2種以上が複合されたものである物品の発明である。
【0059】41.上記の発明40において、金属塩が銀塩、銅塩、亜鉛塩の3種が複合されたものである物品の発明である。
【0060】42.上記の発明41において、銀塩、銅塩および亜鉛塩の3種について、銀、銅および亜鉛の組成比が、モル比で合計100としたとき、それぞれ、銀10〜40、亜鉛20〜60、残りが銅である(ただし、銅が0になることはない)物品の発明である。
【0061】43.上記の発明36において、イオン交換繊維が、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレンおよびセルロースから選ばれる少なくとも1種であって、スルホン酸基、ホスホン酸基およびカルボン酸基の少なくとも1種を有する物品の発明である。
【0062】44.上記の発明43において、イオン交換繊維が、カルボキシメチル変性されたものである物品の発明である。
【0063】45.上記の発明44において、イオン交換繊維が、カルボキシメチル変性セルロースである物品の発明である。
【0064】46.上記の発明45において、カルボキシメチル変性セルロースの変性度が置換度で0.5以下である物品の発明である。
【0065】47.上記の発明35〜46のいずれかにおいて、有機化合物の金属塩よりなる抗菌防黴剤を含有する繊維状物質と有機繊維および/または無機繊維を主体とする物品の発明である。
【0066】48.上記の発明47において、有機繊維が植物繊維、動物繊維、再成繊維、半合成繊維および合成繊維から選ばれる繊維を単独あるいは複合したものである物品の発明である。
【0067】49.上記の発明47において、無機繊維がガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維およびウイスカーから選ばれる繊維を単独あるいは複合したものである物品の発明である。
【0068】50.上記の発明47〜49のいずれかにおいて、少なくとも有機化合物の金属塩よりなる抗菌防黴剤を含有する繊維状物質と、吸着機能を有する物質とからなる物品の発明である。
【0069】51.本発明は、有機繊維および/または無機繊維からなる物品および吸着機能を有する物質を含む物品を組み合わせた複合物品において、該複合物品を構成する少なくとも一つの物品中に有機化合物の金属塩よりなる抗菌防黴剤を含有する繊維状物質を含む複合物品の発明である。
【0070】52.上記の発明50または51において、吸着機能を有する物質が、活性炭および/または活性炭素繊維である物品の発明である。
【0071】53.本発明は、上記発明35〜52のいずれかの物品を用いた濾材の発明である。
【0072】54.本発明は、上記の発明53の濾材を用いたエアーフィルターの発明である。
【0073】55.本発明は、上記の発明53の濾材を用いた空調用エアーフィルターの発明である。
【0074】56.本発明は、上記の発明53の濾材を用いた自動車用エアーフィルターの発明である。
【0075】57.本発明は、上記の発明35〜52のいずれかの物品を用いた壁材の発明である。
【0076】58.本発明は、上記の発明35〜52のいずれかの物品を用いた靴用中敷材の発明である。
【0077】
【発明の実施の形態】以下、本発明の抗菌防黴剤およびそれを含有する繊維状物質について、詳細に説明する。
【0078】本発明に用いられる繊維状物質は、通常、直径が0.1〜100ミクロンの糸状の形状を有するものをいう。本発明を好ましく実施するには、本発明の抗菌防黴剤を繊維構造内もしくは表面に強固かつ密に形成させねばならない。また防菌防黴剤を有効に機能させる為には、繊維が適度な膨潤性、イオン浸透性、イオン捕獲性を有することが必要である。
【0079】このような繊維として、いわゆるイオン交換繊維が用いられ、例えばポリスチレン、ポリアクリル、ポリアミド、ポリエチレン、セルロース等のベースポリマーにスルホン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基等を適度に導入する事によって得られる。
【0080】また通常パルプと称せられる天然のセルロース系繊維を部分的に化学変性する事により好ましく使用出来る。化学変性処理としては、硫酸化、リン酸化、硝酸化、カルボキシメチル化、カルボキシエチル化、カルボキシプロピル化処理が挙げられる。中でも、カルボキシメチル化処理はプロセスが容易で、経済性、安全性も良く、かつ膨潤性、イオン浸透性等に優れており本発明の実施に極めて好適であり、特に該セルロース系繊維の部変性物の置換度が0.5以下のものが好ましい。
【0081】本発明で好ましく使用されるカルボキシメチル変性繊維状物質の素材となるパルプとしては、適度にカルボキシメチル化された木材パルプ(針葉樹パルプ、広葉樹パルプなど)は、本発明の実施に好適であるが、この他、レーヨンなどの再生セルロースも同様に使用可能である。さらには、前記主旨に沿って適度に変性されたイオン交換能を有する合成繊維、アルギン酸繊維や水可溶性ポリマーの湿式紡糸繊維であっても良い。また、本発明における抗菌・防黴能を有する有機金属複合塩を含有するポリマー液から製造された湿式紡糸繊維であっても良い。
【0082】本発明の好ましい一具体例としては、天然セルロース系繊維のカルボキシメチル化加工によって達成される。
【0083】カルボキシメチル化パルプの製造法は、既に技術確立されており、例えばシーエムシー社、1985.8.30出版の「機能性セルロースの開発」60〜61頁に記載されている水媒法、溶媒法のいずれの方法によっても実施可能である。
【0084】所望のカルボキシメチル化度を持つ繊維状物質を得るには、基本的には、セルロース系繊維に対するモノクロル酢酸ナトリウム量、アルカリ量および水の量、その他反応条件を調整することによって可能である。
【0085】一般的に、カルボキシメチル基置換度(カルボキシメチル化度と同義)は、グルコース単位当たりのカルボキシメチル基の置換度(DS)で定義され、その置換率は、一旦、酸型カルボキシメチルセルロースに変換後、過剰量のアルカリを加えて中和した後、酸で逆滴定することによって求められる。
【0086】本発明における各種のカルボキシメチル化度を持つ繊維状物質は、置換度が大きくなるにつれて、金属イオン捕獲能は高まり、したがって、本発明における抗菌・防黴能を有する有機金属複合塩の充填密度は高くなるが、高置換度では膨潤が過度に進み、繊維強度の低下および、ひいては可溶化に至り、本発明の実施には好ましくない。一般的に、置換度はおよそ0.6で可溶性となる。強度低下はあるが置換度はおよそ0.5が繊維形状が維持できる高限レベルであり、0.5以下が好ましい。
【0087】本発明の好ましい態様におけるセルロース繊維の置換度の低限値を規定することは、比較的難しい。例えば、置換度が0.4のカルボキシメチル化パルプは、2.5mmol/gの1価金属イオンを捕獲できるが、本発明によれば、現実的に有効な捕獲量、およびその後の有機化合物との反応で、繊維内および少なくとも表面付近に、脱落の少ない形で複合塩を形成させるには、イオン交換容量の50%程度に見積るのが妥当との実験結果がある。
【0088】したがって、置換度が0.5のカルボキシメチル化パルプで、1〜1.5mmol/g相当の有機金属複合塩が形成できる。これは、仮に有機金属塩の分子量を150〜250に見積もれば、固形分として約15〜40%の抗菌防黴剤が形成されることを示し、抗菌防黴能を得るに十分な量である。
【0089】パルプ自身の抗菌防黴能は、抗菌防黴剤がパルプに対し固形分重量%で1%程度、あるいはそれ以下でも十分な作用を発揮するので、それのみでみればかなり低い置換度の変性でも利用可能であるが、例えば、かくして加工された抗菌防黴パルプを、樹脂業界で言われているいわゆるマスターバッチとして一部用い、長網抄紙機、円網抄紙機、傾斜型抄紙機、あるいはこれらを組合わせたコンビネーションマシンを用いて、他の未加工繊維と混抄して用いる実施態様は、産業的には各種の物品、特に濾材への適用が可能となり、また、管理も容易で実用性が極めて高い。
【0090】かかる用に供するには、パルプに対し固形分重量%で1%以上、好ましくは5%以上、特に好ましくは5〜30%の抗菌防黴剤を含有させ得る程度の置換率が必要であり、そのためには、置換度で表せば、少なくとも0.2以上(0.5以下)、好ましくは0.35以上(0.5以下)のものが好ましい。
【0091】しかしながら、金属イオン置換処理、有機化合物処理を単一ではなく、複数回繰り返すこともでき、それは、より高い密度での抗菌防黴剤の充填を可能にする。したがって、上記範囲より低限の領域を決して排除するものではない。
【0092】パルプに対する本発明に係る抗菌防黴剤の含有量は、上述のように、固形分重量%で1%以上、好ましくは5%以上、特に5〜30%が好ましく、この範囲より多くなると繊維の強度劣化や抗菌防黴剤の繊維からの脱落などが生じるので好ましくない。
【0093】先の項でも触れたが、抗菌防黴剤を高密度に充填したパルプを一部用いることの利点について述べる。抗菌防黴剤を低密度に充填したパルプを均一に分布させたものと、高密度に充填したパルプを島状に分布させたものとを比較すると、少なくとも高濃度菌汚染耐性、耐久性において、後者の方が明らかに優位性を示した。
【0094】自然界においては、雑多な菌が共存しており、また、各種の耐性菌の存在も良く知られている事実である。それらを含めて、全体的な有効性を発揮させるには、極度に濃化された抗菌防黴剤分布を有する島状構造は、経済的にも非常に有効な手段である。
【0095】このようにして作られた本発明の抗菌防黴剤を含有する繊維状物質を用いた各種のシート状物もまた、優れた抗菌防黴機能を有しており、各種の物品、例えば濾材などの用途に使用され、特に自動車用エアーフィルターに好適である。本発明における繊維状物質は、初期的抗菌防黴効果はもとより、永続的抗菌防黴機能も卓越している。したがって、乗車時、カークーラーを作動した際に、ドライバーが体験する特有の黴臭を効果的に排除することができ、しかも長期に亘ってその機能は維持される。また、本発明の抗菌防黴剤を含有する繊維状物質を壁材や靴用中敷材として使用した場合には、優れた抗菌防黴効果を発揮するものである。
【0096】本発明における繊維状物質と併用される有機繊維および/または無機繊維は、有機繊維としては、植物繊維、動物繊維、再成繊維、半合成繊維および合成繊維から選ばれる繊維を単独あるいは混合したものが使用され、無機繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維およびウイスカーから選ばれる繊維を単独あるいは混合したものが使用される。
【0097】植物繊維としては、綿、麻(亜麻、ラミー)が、動物繊維としては、絹、羊毛などの繊維が挙げられる。
【0098】再生繊維としては、レーヨン、キュプラが、半合成繊維としては、アセテート、トリアセテート、プロミックスが、合成繊維としては、ナイロン、アクリル、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ベンゾエート、ポリクラール、フェノール系などの繊維が挙げられる。
【0099】先の項で記載した本発明における繊維の定義は、繊維ハンドブック(1993年度版)に拠った。
【0100】なお、本発明においては、上記の繊維の他に、植物繊維として、針葉樹パルプ、広葉樹パルプなどの木材パルプや藁パルプなどの木本類、草本類を含むものとする。さらに、古紙、損紙などから得られるパルプ繊維も含まれる。
【0101】次に、イオン交換繊維に金属塩を加え、続いて有機化合物を加えて得られる抗菌防黴剤を含有した繊維状物質の製造方法の具体例として、本発明における部分カルボキシメチル化繊維状物質の金属イオン置換処理と抗菌防黴有機化合物について述べる。一例として、置換度が0.4のNa型カルボキシメチルセルロースを使った例を用いて説明する。
1)上記パルプ固形分100g相当量に攪拌が可能な程度に水を加える。
2)硝酸銀100mmol/相当量(17g)を添加する。
3)系のpHが5.5〜6.0となるようにアルカリを添加する。
4)室温下で30分攪拌し、十分に置換(吸着)させる。
5)2−メルカプトピリジン−N−オキシドナトリウム塩の0.1M/l液1000mlを攪拌しながら少しずつ添加する。銀電極もしくは白金電極を用いて、電位計測すると、反応終了点を検知することができる。
6)添加終了後、30分間攪拌し、十分に反応させる。
7)0.1M/lの硫酸液を加えて、系のpHを約4まで下げた後、脱水プレスにて脱水する。
【0102】上記の手順により、メルカプトピリジン−N−オキシド銀塩を含有するパルプが得られる。必要ならば、再度水中に分散し、水洗することにより、脱落分をあらかじめ除くことができる。実験結果によれば、一部脱落はするが90%以上の高収率で繊維内および表面固着の形で塩が形成されていることが認められた。
【0103】メルカプトピリジン−N−オキシド銀塩を繊維内もしくは表面に収率良く形成させるには、pHコントロール、攪拌、薬品添加濃度および速度などの最適化が必要である。
【0104】本発明において、最も効果的に抗菌防黴機能を発揮する有機化合物の複合塩の作製方法について述べる。
【0105】基本的には、前記の単一金属塩の場合と同様に、カルボキシメチルセルロースに対して添加する金属塩組成を、計算量配合することによって達成できるし、また、銀電極もしくは白金電極を用いた電位計測により、各イオンとの反応をモニターできる。
【0106】一例として、2−メルカプトピリジン−N−オキシドの複合塩の作製方法を例示すれば、銀、銅、亜鉛の複合系に2−メルカプトピリジン−N−オキシドを添加することにより得られる。銀25モル%、銅25モル%、亜鉛50モル%と2−メルカプトピリジン−N−オキシドの複合塩を形成させるための具体例を挙げれば、 Na型カルボキシメチルセルロース(DS=0.4)固形分 100g 水 5000g 硝酸銀 25mmol 硫酸銅 15mmol 硝酸亜鉛 30mmol 水 1000g 2−メルカプトピリジン−N−オキシドナトリウム0.1m/l溶液1000gとなる。また、本発明の好ましい1実施態様として、硝酸銀添加後、以下、2−メルカプトピリジン−N−オキシド化合物添加→硫酸銅添加→2−メルカプトピリジン−N−オキシド化合物添加→硝酸亜鉛添加→2−メルカプトピリジン−N−オキシド化合物添加など、各種の添加方法により行うことができる。
【0107】含窒素有機複素環化合物およびチオール化合物、チオン化合物などの含硫黄化合物の多くは、同様の思想で形成できる。
【0108】イソチアゾリン−3−オン系化合物も同様に可能であり、また、イミダゾール誘導体にも、それ自身(抗菌)防黴作用があるものが多いが、中でも、2−(4−チアゾリル)ベンツイミダゾール(TBZ)は良く知られている。この場合、水への溶解度は低く、水溶液の形で添加することはできないが、水混和性の有機溶剤、例えば、アルコール類、グリコール類、DMSOなどの溶剤には可溶であり、それらの溶液として添加することにより、金属塩をパルプ内に形成できる。
【0109】本発明の実施に当たり、例えば具体的な一例として、前記の置換度が0.4のNa型カルボキシメチルセルロースを使った例で記載したようなpHを下げる目的は、パルプの過剰な膨潤を抑制させるためのものであり、必須の条件ではない。また、膨潤を抑制するための別の方法は、多価金属イオンの添加によっても可能であり、また大きな効果が得られる。アルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム、シリケート、亜鉛、銅などの塩類の添加が有効である。なかでも、亜鉛イオン、銅イオンの添加は、それ自体抗菌防黴の機能を有すること、またアンモニア、アミン類、硫化性ガスなどの吸収剤としての機能を兼ねることもできる。銅イオンを過剰に加えることの別の利点は、上記ガスを吸収して、変色することであり、変色表示(インジケーター)などの用途に有用である。
【0110】本発明の抗菌防黴剤を含有する繊維状物質は、従来技術の前記問題点を解決し、下記のような種々の優れた効果を発揮するものである。
(1)抗菌、防黴の双方に極めて効果的である。
(2)高濃度菌汚染にも良好に機能する。
(3)耐久性に優れている。
(4)水洗による効果の低下が極めて少ない。
(5)難溶性で、安定性が高い。
(6)揮散性が非常に低く、また脱落汚染が著しく少なく、しかも抗菌、防黴の双方に極めて有効なものが得られる。
【0111】本発明における繊維状物質は、各種のシート状物として種々の物品、例えば各種濾材、具体例として各種のエアーフィルターはもとより、放電加工機用フィルター濾材などの水処理用およびエンジンオイルや燃料などの液体濾過用濾材としても適用することができる。
【0112】本出願人の特許出願である特願平7−20315号、発明の名称「濾材、及びその製造方法」に記載されているような各種合成繊維および合成バインダーからなる濾材中の構成繊維の一部として、本発明における繊維状物質を使用することにより、濾材としての機能を低下させることなく、抗菌・防黴の双方に優れた効果を発揮する濾材を提供することができる。
【0113】また、本出願人の特許出願である特願平7−221247号、発明の名称「濾材およびエアーフィルター」に記載されているような特定のアクリル系繊維と金属架橋繊維およびフィブリル化有機繊維からなる濾材中の構成繊維の一部として、本発明における繊維状物質を使用することにより、濾材としての機能を低下させることなく、抗菌・防黴の双方に優れた効果を発揮する濾材を提供することができる。
【0114】さらに、特開平5−123513号公報に記載されているような特定のガラス繊維を抄き合わせたエアーフィルター用ガラス繊維シート中に、本発明における繊維状物質を使用することにより、濾材としての機能を低下させることなく、抗菌・防黴の双方に優れた効果を発揮する濾材を提供することができる。
【0115】特開平7−163818号公報に開示されているような、少なくとも一方が熱可塑性繊維を含む繊維シート間に、部分的な超音波融着により、粒状脱臭剤(ヤシ殻活性炭)が挟持されている脱臭フィルタ中に、本発明における繊維状物質を使用することにより、濾材としての機能を低下させることなく、抗菌・防黴の双方に優れた効果を発揮する濾材を提供することができる。
【0116】特開平6−343809号公報に開示されているような、疎水性繊維を主体とし、低密度の繊維構造体からなる外層と、親水性繊維を主体とし、高密度の繊維構造体からなる中間層と、高密度の不織布からなる内層とを含み、前記の各層がポリエステル系樹脂で含浸されている3層構造からなるエアークリーナー用濾材中の少なくとも1層中に、本発明における繊維状物質を使用することにより、濾材としての機能を低下させることなく、抗菌・防黴の双方に優れた効果を発揮する濾材を提供することができる。このような態様によって製造された濾材は、抗菌防黴機能を有する自動車用エアーフィルターとして好適に使用される。
【0117】本発明における繊維状物質は、そのもの自体のみでシート状物として、濾材に適用することもできるが、他の併用される各種繊維と混抄して使用することが、より実用的である。さらに、前述したとおり、本発明における繊維状物質中に、抗菌防黴剤を高濃度に吸着させて、いわゆるマスターバッチ的に本発明における繊維状物質を適用することは、より効果的であり、且つ、操業上でも大きな利点がある。
【0118】本発明における繊維状物質を使用した濾材には、捕集効率を向上させるために、有機繊維および/または無機繊維の極細繊維を用いることができる。本発明に用いられる極細繊維としては、平均繊維径5μm以下の繊維であることが好ましいが、特に限定されるものではなく、有機繊維、無機繊維、フィラーなどが挙げられる。中でも、極細繊維が平均繊維径3μm以下のマイクロガラス繊維、もしくは少なくとも一部が繊維径1μm以下にフィブリル化された有機繊維が好ましい。
【0119】マイクロガラス繊維とは、蒸気吹付法、スピニング法、火焔挿入法、ロータリー法などで製造される極細ガラス繊維であり、平均繊維径が、一般的には5μm以下であるものを指している。本発明においては3μm以下がより好ましい。
【0120】少なくとも一部が繊維径1μm以下にフィブリル化された有機繊維としては、以下に示す方法などで処理されたものなどが挙げられる。
1)合成高分子溶液を該高分子の貧溶媒中にせん断力をかけながら流下させ、繊維状フィブイルを沈澱させる方法(フィブリッド法、特公昭35−11851号公報)。
2)合成モノマーを重合させながらせん断をかけフィブリルを析出させる方法(重合せん断法、特公昭47−21898号公報)。
3)二種以上の非相溶性高分子を混合し、溶融押出し、または紡糸し、切断後機械的な手段で繊維状にフィブリル化する方法(スプリット法、特公昭35−9651号公報)。
4)二種以上の非相溶性高分子を混合し、溶融押出し、または紡糸し、切断後溶剤に浸漬して一方の高分子を溶解し、繊維状にフィブリル化する方法(ポリマーブレンド溶解法、米国特許3、382、305号明細書)。
5)合成高分子をその溶媒の沸点以上で、かつ高圧測から低圧測へ爆発的に噴出させた後、繊維状にフィブリル化する方法(フラッシュ紡糸法、特公昭36−16460号公報)。
6)繊維を適当な繊維長に切断後、水中に分散させ、ホモジナイザー、叩解機などを用いてフィブリル化する方法(特開昭56−100801号公報、特開昭59−92011号公報)。
【0121】フィブリル化有機繊維の具体的な例としては、ポリ−p−フェニレンテレフタルアミド繊維を均質化装置でフィブリル化したKY−400S(ダイセル化学工業製)、パルプを均質化装置でフィブリル化したセリッシュKY−100S(ダイセル化学工業製)、リンターを均質化装置でフィブリル化したPC−310S(ダイセル化学工業製)、アクリル繊維を均質化装置でフィブリル化したKY−410S(ダイセル化学工業製)、ポリエチレン繊維を均質化装置でフィブリル化したKY−420S(ダイセル化学工業製)、ポリプロピレン繊維を均質化装置でフィブリル化したKY−430S(ダイセル化学工業製)などが挙げられる。また、コートルズ社のセルロースステープル(商品名:リヨセル)をビーターやディスクリファイナーなどの叩解機でフィブリル化した繊維などが挙げられる。
【0122】本発明における繊維状物質を他の併用される各種繊維と混抄して使用する場合、必要に応じて、各種のバインダーを用いることができる。
【0123】本発明に用いられる繊維状のバインダーは、芯鞘タイプ(コアシェルタイプ)、並列タイプ(サイドバイサイドタイプ)などの複合繊維が挙げられる。例えば、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ(商品名:ダイワボウNBF−H:大和紡績製)、ポリプロピレン(芯)とエチレンビニルアルコール(鞘)の組み合わせ(商品名:ダイワボウNBF−E:大和紡績製)、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の組み合わせ(商品名:チッソESC:チッソ製)、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の組み合わせ(商品名:メルテイ4080:ユニチカ製)などが挙げられる。また、ビニロンバインダー繊維(VPB107×1:クラレ製)などの熱水溶融タイプなども使用できる。
【0124】繊維状のバインダーの繊維径は特に限定されないが、0.3〜5デニールであることが好ましく、より好ましくは1〜2デニールである。繊維径が0.3デニール未満では濾材の圧力損失が高くなり、フィルターのライフが短くなってしまう。また、繊維径が5デニールを超えると濾材中の繊維の段階的な繊維径分布に空洞部が出来、濾材の圧力損失は低くなるものの、捕集効率が低下してしまう。また、その他の繊維との融着面積が少なくなり濾材の強度向上が少ない。
【0125】良好な引張り強度、折り適性を抄造段階で付与させるために繊維状のバインダーを配合することにより、濾材の内部強度を強くでき、抄造後の撥水剤や接着剤の付与工程、スリット工程でテンションが加わった際に起こり易い断紙や、スリット工程、プリーツ加工工程で濾材がこすられた時に起こり易い面剥けを抑える役割を果たす。
【0126】本発明における繊維状物質を使用した濾材を湿式抄紙法で製造する際、地合を良好にするためには、各種繊維例えば合成繊維、フィブリル化有機繊維、繊維状のバインダーなどをパルパーなどの分散タンク内で分散水に均一に分散する必要があり、そのために界面活性剤を用いることが望ましい。
【0127】界面活性剤は、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性に分類される。アニオン系界面活性剤としては、例えば、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩などが挙げられる。カチオン系界面活性剤としては、アミン塩、アンモニウム塩などが挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、エーテル型、エステル型、アミノエーテル型などが挙げられる。両性界面活性剤としては、ベタイン型などが挙げられる。これらの中から、繊維の分散性の良好なものを適宜選択して用いればよい。また、これら例示したものから外れるものであっても、繊維の分散性の良好なものであれば問題ない。
【0128】均一に混合分散した繊維の分散安定性を向上させるためにアニオン性のポリアクリルアミド系粘剤を繊維分散液、または抄紙ヘッドに添加することにより、湿式抄造後の濾材の地合はさらに向上する。
【0129】本発明の濾材は、一般紙や湿式不織布を製造するための湿式抄紙機、例えば、長網抄紙機、円網抄紙機、傾斜ワイヤー式抄紙機を単独で一層であっても、同機種同士、異機種を組み合わせた二層以上の多層であっても良い。2層以上の場合、上流側を粗層とし下流を密層とすることにより濾材のライフは良好になる。
【0130】乾燥には、シリンダードライヤー、スルードライヤー、赤外線ドライヤーなどの乾燥機を用いることが可能である。
【0131】本発明の濾材は、湿式抄紙後乾燥した時点で、強度および腰が良好であるが、用途によりさらに強度、腰を向上させるために、湿式抄紙し、乾燥した後、各種バインダーを付与することが可能である。
【0132】バインダーとしては、例えば、アクリル系ラテックス、酢ビ系ラテックス、ウレタン系ラテックス、エポキシ系ラテックス、ポリエステル系ラテックス、SBR系ラテックス、NBR系ラテックス、エポキシ系バインダー、フェノール系バーンダー、PVA、デンプン、一般的に製紙工程で使用される紙力剤などが挙げられ、これらを単独、もしくは架橋剤と併用して使用できる。
【0133】湿式抄紙して乾燥した後、付与するバインダー量は、濾材の坪量に対して20重量%未満である。20重量%を超えると、強度、腰は強くなるものの捕集性能が低下するばかりでなく、圧力損失が高くなってしまいフィルターのライフを短くしてしまう。
【0134】また、用途に応じて、さらに濾材には、撥水剤や難燃剤を加えても良い。
【0135】
【実施例】
<実施例I>以下では、本発明における抗菌防黴剤を含有した繊維状物質およびその製造方法を実施例により、具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0136】実施例1(1)カルボキシメチル化度(DS)の異なる変性パルプの作製NBKPパルプ162グラム(固形分換算)に苛性ソーダ49グラム、イソプロピルアルコール1リットルおよび水100ミリリットルを加え、常温で約30分間攪拌してから、モノクロル酢酸ソーダ70グラムを加え、温度を70〜80℃に上げて、2時間反応させた。冷却、濾別、脱水プレス後、水:イソプロピルアルコールが1:1の混合液1リットルを加え、硫酸でpH3.5とし、2時間攪拌し濾別した。さらに、水洗を2回繰り返し脱水した。試料の一部を用い、pH約1の硫酸水溶液で処理して酸型に変換後、カルボキシメチル化度(DS)を測定した。本試料は、DS=0.48を示した。これを変性パルプAとする。基本的には上記と同様であるが、モノクロル酢酸ソーダの量を変化させて、DSの異なるパルプを得た。用いたモノクロル酢酸ソーダ量と得られたこれを変性パルプのDSを合わせて下表に示す。
変性パルプ モノクロル酢酸ソーダ量(グラム) DS B 60 0.38 C 50 0.22 D 40 0.12
【0137】(2)カルボキシメチル化パルプへの銀イオンの吸着前記A〜Dの変性パルプおよび未処理パルプへの銀イオンの吸着量を測定した。各パルプの絶乾重量1グラム相当量を水100ml中に分散し、1規定硝酸銀5mlを加え、pHを5.5に調節し、室温下で2時間攪拌し濾別した。濾液を1規定のヨウ化カリウム液で電位適定し、吸着銀量を求めた。得られた結果を下表に示す。
DS 銀イオン吸着量mmol/g 変性パルプA 0.48 2.84 変性パルプB 0.38 2.26 変性パルプC 0.22 1.13 変性パルプD 0.12 0.66 未変性パルプ ──── 0.013銀イオン吸着量(置換量)は、そのDSから予想される計算量より微かに少ない量であったが、大略一致しており、また、DSに依存することが確認できた。未処理パルプでも、若干の吸着は示した。カルボキシメチル化度に応じて、水中膨潤度は高くなり、変性パルプAは、pHを5.5に調節した時点で顕著に膨潤したが、顕微鏡観察では繊維形態を維持していた。本実施例でDS約0.5が特別な処理(既存技術として種々の方法、例えばエピクロルヒドリンで架橋して、本来可溶性のものを不溶性に変えるなど)なしに繊維形状を維持し得る限界であろうと判断できる。
【0138】(3)銀イオン吸着(置換)パルプ、2−メルカプトピリジン−N−オキシド複合化パルプの作製とそれらを用いたシートの作製銀化パルプ(比較例)
前記試作変性パルプA〜Dおよび未処理パルプを絶乾重量で10グラク相当量を計算し、水500ミリリットルを加えて分散させた。それぞれに、1規定硝酸銀を加え、pHを5.5に調節した。硝酸銀添加量は、前記実験より求めた飽和吸着量の約1/2量とした。
N−AgN03 添加量 変性パルプA 10グラム 15.0 変性パルプB 10グラム 10.0 変性パルプC 10グラム 5.0 変性パルプD 10グラム 3.0 未変性パルプ 10グラム 3.0未変性パルプは、銀イオン吸着容量は非常に小さいが、十分に過剰量を加えた。30分間室温下で攪拌後濾別し、500ミリリットルの水中に再分散させ、水洗した。これらは、銀化パルプとし、それぞれ下記のように表示し、比較例とする。
CP48Ag ただし、CP:変性パルプを表し、数字はDS度 CP38Ag を相対的に示したもの CP22Ag P:未変性パルプ CP12Ag PAg
【0139】(4)銀/2−メルカプトピリジン−N−オキシド複合化パルプの作製前記、銀化パルプの作製と同様にして、各パルプ分散液に硝酸銀を加え、pHを5.5に調節してから、30分間攪拌する。0.1M/lの2−メルカプトピリジン−N−オキシドナトリウム液(以下、MPと略記する)を、各パルプ分散液それぞれに加られた硝酸銀と等モル相当量を添加した。30分間攪拌してから、硫酸でpHを4まで下げた後、脱水した。パルプA〜Dを用いたバッチの脱水液は、わずかな濁りを呈する程度であったが、未変性パルプの系は、比較的高い白色の濁りを呈していた(パルプ繊維外での反応が多いことを示す)。脱水パルプに、再び500ミリリットルの水を加え、攪拌水洗して脱水した。これらを、銀・MP化パルプとし、それぞれ下記のように表示する。
CP48AgMP 本発明CP38AgMP 本発明CP22AgMP 本発明CP12AgMP 本発明PAgPM 比較例
【0140】(5)抗菌・防黴紙の作製比較例を含む各種加工パルプそれぞれ10重量部と、NBKP未処理パルプ90重量部とを混合し、適当量の水を加え、ミキサーで叩解した後、タッピイ・スタンダード手抄器を用いて、坪量100グラムで抄紙した。このようにして得られた比較例を含む各種加工パルプそれぞれ10重量部含有抗菌・防黴紙について、以下の方法で抗菌(殺菌)性および防黴性を評価した。
【0141】試験法−■(抗菌(殺菌)性)
大腸菌(E−coli IFO3301)を液体培地(ペプトン・イースト)で24時間前培養し、希釈して2×108 セル/mlの試験液を調整した。試験片を2cm×2cmにカットして、ペトリ皿上に配置し、パスツールピペットで上記菌液を5滴(約0.1ml)滴下し、乾燥しないようにカバーして38℃で24時間経時した。経時後、試験片のそれぞれをNutrient Broth寒天培地上に押し当て、試験片上の菌を転写させて剥離し、再度38℃で24時間培養し、観察した。評価は、次のとおりとした。
評価グレード−− 殆ど完全に殺菌し、菌の成育がない。
− 2cm×2cm転写面に5コロニー以下の成育はあるが、殆ど完全に殺菌。
+ 2cm×2cm転写面に100コロニー以下で良好な抗・殺菌作用。
++ 2cm×2cm転写面に効果は認められるが、弱いか、少ない。
+++ 2cm×2cm転写面に実質的効果なし。
【0142】試験法−■(防黴性)
試験菌株として、黒カビ(Aspergillus niger)を用いた。斜面培地から胞子を5白金耳採り、少量の湿潤剤(スルホコハク酸ジオクチルナトリウム液)を加え、激しく振って胞子を分散させ、ガーゼで濾過し、全量を50mlに調整した。1.5%の寒天を加えたGP培地(日本製薬社製)を作り、上記菌液を均一に噴霧し、一旦、表面を乾燥させ、2cm×2cmにカットした試料片を乗せ、十分に圧着させ、再度試験菌を全面に噴霧して、28℃で経時培養し、最高4週間まで経時観察した。評価は、次のとおりとした。
評価グレード−− 黴の生育を完全に阻害。
− 黴の生育か否か判断がつきかねる。
+ かなり良好な制御力を示すが表面積1/5以下にカビの生育を認める。
++ 表面積1/3位にカビの生育が認められる。
+++ 全面に黴が生育する。
【0143】上記の抗菌(殺菌)性試験結果および防黴性試験結果を、それぞれ表1および表2に示す。
【0144】
【表1】


【0145】
【表2】


【0146】表1および表2の結果から、次のことが解る。すなわち、大腸菌に対しては、銀イオンは非常に有効に作用する。化学変性なしに、単に銀イオンと接触させたパルプを用いたシートでも(試料番号2)、多少の効果が認められ、また、試料番号3〜6の変性パルプでは、明確な効果があった。しかしながら、防黴能については、初期に多少の抑制力はあるが、実質的な効果は小さいか、ない。一方、本発明のCPAgMP系は、いずれも良好な結果を示した(試料番号8〜11)。特に、試料番号9〜11は、抗菌(殺菌)能はもとより、防黴能については、2週間以上の長期テストの結果でも、極めて良好な結果を示した。
【0147】実施例2(1)各種金属塩化パルプの作製およびMP化パルプの作製実施例1の変性パルプBと同条件にて再度作製した。このもののDSは0.40であった。ここで得られたカルボキシメチル化パルプをCP40と表示する。このパルプの水中での膨潤性をチェックした。パルプの一部を取り、再度水中に分散させ、硫酸でpH=4としたもの、苛性ソーダでpH=6としたものを脱水プレスし、固形分含量を測定したところ、それぞれ19.5%、6.6%の値を示した。カルボキシル基の導入により、H型からNa型への変換で顕著な膨潤があることが解った。また、顕微鏡観察の結果、Na型では繊維の全体的な膨潤と球状に大きく膨らんだ箇所とが混在していたが、十分に繊維形状は維持されていた。CP40の乾燥重量で10g相当分を取り、水500ミリリットルを加え分散させた。これに1規定硝酸銀10ミリリットルを加え、pH=5.5に調節して30分攪拌後、0.1M/LのMP液を100ミリリットル加え、30分攪拌してから、硫酸でpHを4まで下げた後脱水し、水洗して再度脱水した。これを試料番号27とし、CP40AgMPと表示した。試料番号28、29は、硝酸銀の代わりにそれぞれ硫酸銅、硝酸亜鉛液を用いて同様に作製した。試料番号30は、1規定硝酸銀5ミリリットルと1規定硫酸銅5ミリリットルを加え同様に作製し、CP40Ag50Cu50MPと表示した。試料番号31、32も2種の金属イオンの併用で作製したものであり、また、試料番号33は、3種の金属イオンを併用して同様に作製した。ただし、ここでは1規定硝酸銀2.5ミリリットル、1規定硫酸銅3.0ミリリットル、1規定硝酸亜鉛5.0ミリリットルを加えた。
【0148】
【表3】


【0149】試料番号21の比較例は、DS=0.40の未処理パルプを示す。試料番号22の比較例は、前記と同様の方法で、カルボキシメチル化パルプ10グラムに対して、0.1M/lの塩化ベンザルコニウム液100mlを加え、pH5.5に調整後、攪拌し、脱水、水洗した後、再び脱水を行ったものである。試料番号23の比較例は、上記と同じく、カルボキシメチル化パルプ10グラムに対して、0.1M/lのMP液100mlを加え、pH5.5に調整後、攪拌し、脱水、水洗した後、再び脱水を行ったものである。試料番号24、25、26は、それぞれ試料番号27、28、29に対応する比較例で、MP液の添加および硫酸でのpH調節を省略して作製した。また、金属原子の次に示した数字はモル分率を表わす。
【0150】(2)耐水性シートの作製0.5デニール、繊維長5mmのポリエステル繊維(テイジン社製)50重量部と2デニール、繊維長5mmの熱融着型バインダー繊維(ユニチカ社製)40重量部に、適量の水を加え、ミキサーで叩解し、比較例を含めた前記試作パルプをそれぞれ10重量部加え、再度、混合、叩解した後、ブフナー濾斗を用いて濾紙上に分散液を展開し、脱水後、シート化した。温度約120℃の家庭用アイロンを用いて、プレス乾燥させた。坪量は100グラムとした。このようにして、水中でも離解しないシートを作製した。
【0151】前記試験法−■および■に加え、下記の如き試験法を入れ、実用的な観点からの評価を行った。またさらに、シートの耐久性を評価する目的で、それぞれ下記の処理を行った後の抗菌防黴能の評価も行った。
1)UV耐性・・・・・・・・・・100W高圧水銀灯下10cmの距離下8時間で3回、計24時間照射。
2)耐熱テスト・・・・・・・・100℃,10時間3)耐水洗性テスト・・・・水道水流水下2日間洗浄。
4)ドロ水浸漬テスト・・研究所内土壌表層土100グラムに水500ミリリットルを加えた懸濁水の中に試験片を入れ、一か月間経時させた。
【0152】試験法−■(大腸菌液への繰り返し浸漬テスト)
シェークフラスコ法に準じ、100mlの三角フラスコに0.5M/lのKH2PO4液を800倍に希釈した液20mlを入れ、試験法−■で調整した菌液2mlを加え、試験片2cm×2cm,4枚を入れて38℃で1日振とうし、試験液を採取し、1滴(約0.02ml)をNutrient Broth寒天培地上約2×3cmに展開、殖菌し、38℃で1日培養観察して、生菌状態をチェックした。試験片は再び新たな菌液中に入れ換え、同様の操作を繰り返す。これを最高5回迄実施した。
【0153】試験法−■(雑菌テスト)
室内倉庫より塵埃0.3グラムを採取し、水100ミリリットル中に加え、ホモミキサーで分散した液をガーゼで濾過して試験菌とした。評価は、試験法−■と同様であるが、菌液を1週間毎に繰り返し噴霧した。
【0154】上記の実験結果を表4、表5および表6に示す。
【0155】
【表4】


【0156】
【表5】


【0157】
【表6】


【0158】表4、表5および表6の実験結果から、本発明の優れた効果が確認された。試料番号22の塩化ベンザルコニウムは、代表的な抗菌防黴剤の一つとして知られているが持続力および耐久性において、本発明の方が遥かに優れていることが解る。試料番号23の2−メルカプトピリジン−N−オキシドは、本来非常に優れた防黴能を発揮するが、単純な浸漬加工では、その後の水洗処理により流失し、その効果は発揮されない。試料番号24、25、26は、それぞれ金属イオンを単体で担持させたもので、本発明の比較例である。明らかに抗菌防黴性を示すが、持続力、耐久性は良くない。本発明に属する試料番号27〜33の結果から、以下のことが明らかである。銀、銅および亜鉛と、2−メルカプトピリジン−N−オキシドとの複合は、抗菌能と防黴能の両者の両方の性質を確保する上で、重要であることが確認された。かかる複合系における銀イオンの作用は、抗菌能を著しく向上させる。銅イオンは、抗菌能では銀イオンの作用と比べ若干劣るが、効果の持続力、耐久力において特徴を示した。亜鉛イオンは、抗菌能、防黴能において、銀、銅のそれより幾分低い性能を示したが、少なくとも防黴能の初期的な効果(試験法−■の1〜2週間観察)は、試料表面の変色、汚染などが全く観察されず、良好であった。試料番号30、31、32は、2種金属イオンの複合系、試料番号33は、銀、銅および亜鉛3種の複合系である。少なくとも2種金属イオンの複合系は、抗菌能、防黴能およびそれらの持続力、耐久性の点で、良好な結果が得られた。最良の結果は、上記3者の複合系で得られた。また、本発明の各試料は、UV照射耐熱試験後も能力低下はなかった。
【0159】実施例3実施例2と同様に行った。ただし、2−メルカプトピリジン−N−オキシドの代わりに、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンを用いた(以下、BITと略記する)。実施例2と同様に、CP40AgBITCP40CuBITCP40ZnBITCP40Ag25Cu25Zn50BITを作製し、シート化した。実施例2の結果と同様、良好な抗菌(殺菌)防黴効果を示した。
【0160】実施例4実施例2と同様に行った。ただし、2−メルカプトピリジン−N−オキシドの代わりに、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合液(以下、MITと略記する)を用いた。この混合液は、あらかじめ電位滴定により力価を検定し、0.1M/l相当液を調整して用いた。実施例2と同様に、CP40AgMITCP40CuMITCP40ZnMITCP40Ag25Cu25Zn50MITを作製し、シート化した。実施例2の結果と同様、良好な抗菌(殺菌)防黴効果を示した。
【0161】実施例5(銀、銅、亜鉛)の2−メルカプトピリジン−N−オキシド複合化系において、金属イオン組成を変えて下記のパルプを作製した。表示は、前記に従った。また、シート作製も実施例2と同様に行った。
Ag5Cu45Zn50MPAg10Cu40Zn50MPAg20Cu30Zn50MPAg40Cu10Zn50MPAg20Cu75Zn5MPAg20Cu70Zn10MPAg20Cu60Zn20MPAg20Cu5Zn20MP上記系の中で、抗菌性に関する銀イオンの効果は、5モル%の含有でも良好な効果を発現した。銀含有量に関する、より好ましい領域は、10モル%〜30モル%である。亜鉛イオンの含有量も、少なくとも5モル%の含有で十分に効果を現した。好ましい領域は、5モル%〜90モル%程度の範囲内で選択できる。銅イオン量は、銀イオン量および亜鉛イオン量の残りの部分を構成する。銅の有機化合物塩は、緑色系の着色を呈するので、実用面において、着色の観点から制限を受けることもある。それらを加味しつつ、約10モル%〜75モル%範囲で選択できる。
【0162】実施例6実施例2で作製したCP40Ag25Cu25Zn50MPパルプを用い、実施例2におけるシート化において、その配合量を変化させて、下記のシートを得た。いずれも坪量は100グラムとした。これらについて、試験法■による大腸菌に対する抗菌(殺菌)効果、試験法■のAspergills riger に対する4週間後観察での防黴効果および試験法■の雑菌繰り返し噴霧の耐性評価結果を、配合量表示と併せて、表7に示した。
【0163】
【表7】


【0164】表7の結果より、高密度に抗菌防黴剤を充填したパルプは、少量配合するだけで、実用的には非常に高い効果が得られることが認められた。
【0165】実施例7複合金属のMP化パルプを下記のように攪拌しながら順次混合して作製した。
カルボキシメチル化パルプ CP40(固形分換算) 10g 水 500g 1規定 硝酸銀溶液 2.5ml pHを5.5にあわせる。
0.1M/L 2−メルカプトピリジン−N−オキシドナトリウム 溶液(0.1M/L MP溶液) 25ml 1規定 硫酸銅溶液 2.5ml pHを5.5にあわせる。
0.1M/L MP溶液 25ml 1規定 硝酸亜鉛溶液 5ml pHを5.5にあわせる。
0.1M/L MP溶液 50ml硫酸でpHを4にして脱水プレスで脱水した。本方法で作製したパルプも、試料番号33と同様の良好な抗菌防黴性を有していた。
【0166】実施例8実施例2の試料番号33と同様にして作製した。ただし、MP溶液添加後の処理を変えて、下記のように作製した。
■試料番号33と同様、pH=4にして脱水、水洗、脱水した。(CP40Ag25Cu25Zn50MP/pH4)
■pH=5.5で脱水、水洗、脱水した。(CP40Ag25Cu25Zn50MP/pH5.5)
■pH=5.5でさらに、1規定硫酸銅溶液15ミリリットルを加え、30分攪拌後脱水、水洗、脱水した。(CP40Ag25Cu25Zn50MP/pH5.5Cu)
■pH=5.5でさらに、1規定硝酸亜鉛溶液15ミリリットルを加え、30分攪拌後脱水、水洗、脱水した。(CP40Ag25Cu25Zn50MP/pH5.5Zn)
それぞれ加工パルプのプレス脱水後の含水収量と乾燥固形分率を下表に示す。
【0167】
【表8】


後処理で添加した銅および亜鉛イオンが、加工パルプの膨潤を著しく低下させたことが解る。
【0168】実施例2の「耐水性シートの作製」の項に記載と同様の方法で、シートを作製した。ただし、ポリエステル繊維40重量部、バインダー繊維40重量部、上記パルプ■〜■をそれぞれ20重量部使用した。上記パルプの中で■および■は、叩解時の破断が少なく、濾水性が良好で、濾紙からの剥離性、さらには乾燥も迅速であった。各シートは、いずれも良好な抗菌(殺菌)防黴効果を示した。また、各シートをアンモニアガスまたは硫化水素ガスを含む密閉容器中に入れ、経時させたところ■のシートは、アンモニアガス中で青緑色に変色した。硫化水素ガス中では、いずれも黒褐色に変色したが、中でも■のシートの変色が顕著であった。抗菌防黴性と消臭性(ガス吸収性)、変色表示(インジケーター)の機能を有している。
【0169】<実施例II>以下に、本発明における抗菌防黴剤を含有した繊維状物質を含む濾材について、実施例により、具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例中の「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を示す。
【0170】実施例A前記の発明の実施の形態の記載に準じて、カルボキシメチル基置換度0・22(DS=0・22)の変性NBKPに、銀/2−メルカプトピリジン−N−オキシドを吸着させた有機化合物の金属塩よりなる抗菌防黴剤を含有する繊維状物質を作製した(以下、CP22AgMPと略記する)。上記の変性NBKP分散液に硝酸銀を加え、pHを5.5に調節してから、30分間攪拌する。0.1M/lの2−メルカプトピリジン−N−オキシドナトリウム液を、変性NBKP分散液に加えられた硝酸銀と等モル相当量を添加した。30分間攪拌してから、硫酸でpHを4まで下げた後、脱水した。脱水パルプに、再び500mlの水を加え、攪拌水洗して脱水した。これを、銀/2−メルカプトピリジン−N−オキシドを吸着させた有機化合物の金属塩よりなる抗菌防黴剤を含有するカルボキシメチル基置換度0・22(DS=0・22)の変性NBKPとした。
【0171】比較例12m3の分散タンクにアクリル酸ソーダ系アニオン性界面活性剤(日本アクリル化学社製、プライマル850)を全繊維に対して1%になるように添加し、ポリプロピレン繊維(繊維径約7μm)(PZ0.5デニール、5mm:大和紡績製)、複合繊維のNBF−E(芯:ポリプロピレン、鞘:エチレンビニルアルコール:大和紡績製)、水中溶解温度が70℃のビニロンバインダー繊維(VPB107×1、3mm:クラレ製)を各々50:44:6の比率で配合し、分散濃度0.2%で30分間分散した後、乾燥重量で70g/m2になるように円網抄紙機で抄紙後、表面温度130℃のシリンダードライヤーで乾燥し、濾材を得た。
【0172】実施例1〜5比較例1のポリプロピレン繊維の一部を、上記実施例Aで得られた本発明における繊維状物質であるCP22AgMPに、表1記載の配合量に置き換えた外は、比較例1と同様にして、実施例1〜5の濾材を得た。
【0173】実施例B実施例Aと同様であるが、前記の発明の実施の形態の記載に準じて、CP22AgMPの代わりに、カルボキシメチル基置換度0・40(DS=0・40)の変性NBKPに銅/1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンを吸着させた有機化合物の金属塩よりなる抗菌防黴剤を含有する繊維状物質を作製した(以下、CP40CuBITと略記する)。
【0174】比較例22m3の分散タンクにアクリル酸ソーダ系アニオン性界面活性剤(日本アクリル化学社製、プライマル850)を全繊維に対して1%になるように添加し、繊維径0.1デニール×3mmのアクリル繊維、フィブリル化有機繊維(KY−400S:ダイセル化学工業社製)、繊維径0.5デニール×5mmポリエステル繊維(帝人社製)、繊維径2デニール×5mmポリエステル繊維状バインダー(メルテイ4080、ユニチカ社製)、を各々50:5:20:25の比率で配合し、分散濃度0.2%で30分間分散した後、乾燥重量で80g/m2になるように円網抄紙機で抄紙後、表面温度130℃のシリンダードライヤーで乾燥した後、撥水剤とアクリルラテックスをサイズプレス装置で付与し乾燥させて、濾材を得た。
【0175】実施例6〜10比較例2のアクリル繊維の一部を、上記実施例Bで得られた本発明における繊維状物質であるCP40CuBITに、表1記載の配合量に置き換えた外は、比較例2と同様にして、実施例6〜10の濾材を得た。
【0176】実施例C実施例Aと同様であるが、前記の発明の実施の形態の記載に準じて、CP22AgMPの代わりに、カルボキシメチル基置換度0・40(DS=0・40)の変性NBKPに(銀、銅、亜鉛)/2−メルカプトピリジン−N−オキシドを吸着させた有機化合物の3種の金属塩よりなる抗菌防黴剤を含有する繊維状物質を作製した(以下、CP40Ag25Cu25Zn50MPと略記する)。なお、括弧内金属原子の次の数字は、モル%比を表わす。
【0177】比較例32m3の分散タンクにアクリル酸ソーダ系アニオン性界面活性剤(日本アクリル化学社製、プライマル850)を全繊維に対して1%になるように添加し、ポリエステル繊維(繊維径約7μm)(0.5デニール、5mm:帝人社製)、繊維径2デニール×5mmポリエステル繊維状バインダー(メルテイ4080、ユニチカ社製)、平均繊維径約0.65μmのマイクロガラス繊維(シュラー社製、#106)を各々50:35:15の比率で配合し、分散濃度0.2%で30分間分散した後、乾燥重量で100g/m2になるように円網抄紙機で抄紙後、表面温度130℃のシリンダードライヤーで乾燥し、濾材を得た。
【0178】実施例11〜15比較例3の繊維径0.5デニールのポリエステル繊維の一部を、上記実施例Cで得られた本発明における繊維状物質であるCP40Ag25Cu25Zn50MPに、表1記載の配合量に置き換えた外は、比較例3と同様にして、実施例11〜15の濾材を得た。
【0179】実施例16実施例13と同様であるが、繊維径0.5デニールのポリエステル繊維の代わりに、活性炭素繊維(平均繊維径15μm、繊維長8mm、比表面積1000m2/g)20重量部置き換えたものを使用して、実施例16の濾材を得た。
【0180】比較例4実施例16と同様であるが、本発明における繊維状物質であるCP40Ag25Cu25Zn50MPを用いずに、比較例4の濾材を得た。
【0181】比較例5実施例13と同様であるが、本発明における3金属塩併用系のCP40Ag25Cu25Zn50MP含有繊維状物質の代わりに、塩化ベンザルコニウム含有繊維状物質10%を使用して、比較例5の濾材を得た。なお、塩化ベンザルコニウム含有繊維状物質は、実施例13で用いたカルボキシメチル基置換度0・40(DS=0・40)の変性NBKP10グラムに対して、0.1M/lの塩化ベンザルコニウム液100mlを加え、pH5.5に調整後、攪拌し、脱水、水洗した後、再び脱水を行って作製した。
【0182】実施例17活性炭素繊維70重量部、NBKP(カナダ標準濾水度550ml)20重量部および複合繊維のNBF−E(芯:ポリプロピレン、鞘:エチレンビニルアルコール:大和紡績製)10重量部からなるパルプスラリーと実施例13からなるパルプスラリーとを乾燥重量で200g/m2(それぞれ100g/m2)になるように円網抄紙機と長網抄紙機で抄き合わせ抄紙後、表面温度130℃のシリンダードライヤーで乾燥し、濾材を得た。
【0183】実施例18実施例18は、実施例14の濾材をひだ折り加工して、ユニットに組み込み、自動車室内循環系にセットした。
【0184】比較例6比較例6は、比較例3の濾材をひだ折り加工して、ユニットに組み込み、自動車室内循環系にセットした。
【0185】このようにして得られた実施例および比較例の各濾材について、圧力損失、捕集効率および抗菌性能、防黴性能につき、測定した。得られた結果を表9に示す。
【0186】<圧力損失>圧力損失(Pa)は、濾材に空気を風速5.3cm/秒で通気させた時の通気抵抗を水中マノメーターで測定した。
【0187】<捕集効率>捕集効率(%)は、DOPエアロゾル(フタル酸ジオクチル、粒径0.3μm)粒子を発生させ、この粒子を含有する空気を風速5.3cm/秒で通気させ、濾材の前後で空気をサンプリングし、それぞれの粒子濃度をマルチダストカウンターで測定し下記数1より算出した。
【0188】
【数1】捕集効率={(濾過前の粒子数−濾過後の粒子数)/濾過前の粒子数}×100
【0189】<試験法−■(抗菌(殺菌)性)>実施例1の「試験法−■(抗菌(殺菌)性)」と同じ試験方法により行った。
【0190】<試験法−■(防黴性)>実施例1の「試験法−■(防黴性)」と同じ試験方法により行った。なお、表9には、4週間経時の観察結果を記載した。
【0191】
【表9】


【0192】註) 比較5の10*は、本発明における3金属塩併用系のCP40Ag25Cu25Zn50MP含有繊維状物質の代わりに、塩化ベンザルコニウム含有繊維状物質10%使用したものを示す。
【0193】表9の結果から、次のことが解る。
【0194】実施例Aに記載した抗菌防黴剤(CP22AgMP)を含む本発明における繊維状物質を、濾材の構成繊維の一つであるポリプロピレン繊維の一部に置き換えて使用した場合、抗菌防黴剤を含まない比較例1に比べて、抗菌性能および防黴性能とも優れていることが解った。その配合量は、3%から効果が認められ、また5%から相当良好な抗菌・防黴効果が認められ、さらに10%以上では極めて良好な抗菌・防黴効果が認められた。濾材特性である捕集効率は、比較例1に比べて、配合量30%から、若干低下する傾向がみられたが、実用上は支障ない程度のものが得られた。
【0195】実施例Bに記載した抗菌防黴剤(CP40CuBIT)を含む本発明における繊維状物質を、濾材の構成繊維の一つであるアクリル繊維の一部に置き換えて使用した場合の実施例6〜10も、実施例1〜5と同様に、抗菌性能および防黴性能とも良好な抗菌・防黴効果が認められた。
【0196】実施例Cに記載した抗菌防黴剤(CP40Ag25Cu25Zn50MP )を含む本発明における繊維状物質を、濾材の構成繊維の一つである0.5デニールのポリエステル繊維の一部に置き換えて使用した場合の実施例11〜15は、ガラス繊維を配合した系であるが、実施例6〜10と同様に、濾材特性は良好であり、また、3金属塩併用系の効果により、極めて良好な抗菌性能および防黴性能が得られることが解った。
【0197】実施例16は、実施例13の0.5デニールのポリエステル繊維の一部を、活性炭素繊維に代え、抗菌防黴剤は3金属塩併用系を使用した場合であるが、濾材特性は良好であり、抗菌性能および防黴性能とも極めて良好であることが解った。また、脱臭効果も認められた。
【0198】実施例17は、実施例13と活性炭素繊維との抄き合わせ濾材であるが、極めて良好な抗菌・防黴性能の外に、脱臭効果が一段と優れ、しかも試験法−■(雑菌テスト)の試験結果では、抜群の効果を示した。したがって、本実施態様は、自動車用のエアーフィルターとして、最適に使用される。
【0199】比較例5実施例13と同様であるが、本発明における3金属塩併用系のCP40Ag25Cu25Zn50MP含有繊維状物質の代わりに、塩化ベンザルコニウム含有繊維状物質10%を使用したものであるが、初期的な抗菌・防黴効果は認められたが、長期的(4週間経時)な効果では、実施例13と比較して、非常に劣るものであった。
【0200】実施例18実施例18は、実施例14の濾材をひだ折り加工して、ユニットに組み込み、自動車室内循環系にセットしたものであるが、乗車時、吹き出し口からの空気に黴臭はなかった。
【0201】比較例6比較例6は、比較例3の濾材をひだ折り加工して、ユニットに組み込み、自動車室内循環系にセットしたものであるが、実施例18と同様のテストをした結果、黴臭はあった。
【0202】実施例19また、本発明における有機化合物の金属塩よりなる抗菌防黴剤を含有する繊維状物質を含む壁材は、それを含まない壁材と比較して、格段に長期間黴の発生を抑制することができた。
【0203】実施例20さらに、本発明における有機化合物の金属塩よりなる抗菌防黴剤を含有する繊維状物質を含む靴用中敷材は、それを含まない靴用中敷材と比較して、黴の発生が抑制され、また悪臭の発生もよく抑制されることが解った。
【0204】
【発明の効果】本発明に使用される抗菌防黴剤を含有した繊維状物質は、以上詳述したように、繊維状物質が有する特有の多孔性を巧妙に利用して、親水性マトリックスを形成したものであって、それ故、菌補足性が良く、また、水分維持機能も有しており、各種のイオン拡散性も良好である。さらに、本発明で使用される抗菌防黴剤は、難溶性であって、しかも適度な解離性を有しているために、徐放性である。それ故、抗菌防黴効果が持続されて、ポットライフが長く、耐久性に優れている。また、本発明において、抗菌防黴剤を含有して最も効果的に機能を発揮する繊維状物質は、セルロース系繊維の部分変性物がカルボキシメチル変性されたものであって、さらにその置換度(DS)が0.5以下である繊維状物質を用いた場合である。このような繊維状物質よりなるパルプを用いると、パルプを構成するセルロース繊維中に高密度で充填できるので、極めて抗菌防黴剤含有量の高いパルプが得られる。しかも、本発明に使用される抗菌防黴剤を含有した繊維状物質は、シート状物とした場合でも、生産性は良好である。上記のパルプをシート状物、例えば紙、各種織物などの素材の一部として適用した場合でも、抗菌防黴剤が高密度充填されているために、シート状物中に島状に分布させても、十分に効果が発揮され、結果的に少量の使用で目的が達成される。それ故、抗菌防黴効果が高いにもかかわらず、比較的安全性の高いシート状物が得られる。したがって、本発明に使用される抗菌防黴剤を含有した繊維状物質を含む各種の物品は、例えば種々の濾材、特に各種のエアーフィルター、就中、自動車用エアーフィルターに好適に用いられる。また、本発明に使用される抗菌防黴剤を含有した繊維状物質を壁材や靴用中敷材に適用した場合は、良く抗菌防黴効果が発揮されることが解った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 有機化合物の金属塩よりなる抗菌防黴剤を含有する繊維状物質。
【請求項2】 該繊維状物質が、イオン交換繊維である請求項1記載の繊維状物質。
【請求項3】 有機化合物が、含窒素複素環、硫黄原子の少なくとも1種を含む化合物である請求項1記載の繊維状物質。
【請求項4】 含窒素複素環、硫黄原子の少なくとも1種を含む有機化合物が、ベンズイミダゾール化合物、メルカプトピリジン−N−オキシド化合物、イソチアゾロン化合物、ベンゾチアゾール化合物もしくはベンゾチアゾロン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項3記載の繊維状物質。
【請求項5】 金属塩が、銀塩、銅塩、亜鉛塩の少なくとも1種である請求項1記載の繊維状物質。
【請求項6】 金属塩が銀塩、銅塩、亜鉛塩の2種以上が複合されたものである請求項5記載の繊維状物質。
【請求項7】 金属塩が銀塩、銅塩、亜鉛塩の3種が複合されたものである請求項6記載の繊維状物質。
【請求項8】 銀塩、銅塩および亜鉛塩の3種について、銀、銅および亜鉛の組成比が、モル比で合計100としたとき、それぞれ、銀10〜40、亜鉛20〜60、残りが銅である(ただし、銅が0になることはない)請求項7記載の繊維状物質。
【請求項9】 イオン交換繊維が、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレンおよびセルロースから選ばれる少なくとも1種であって、スルホン酸基、ホスホン酸基およびカルボン酸基の少なくとも1種を有する請求項2記載の繊維状物質。
【請求項10】 イオン交換繊維が、カルボキシメチル変性されたものである請求項9記載の繊維状物質。
【請求項11】 イオン交換繊維が、カルボキシメチル変性セルロースである請求項10記載の繊維状物質。
【請求項12】 カルボキシメチル変性セルロースの変性度が置換度で0.5以下である請求項11記載の繊維状物質。
【請求項13】 カルボキシメチル変性セルロースに対して、有機化合物の金属塩よりなる抗菌防黴剤が、固形分重量で1%以上である請求項11記載の繊維状物質。
【請求項14】 イオン交換繊維に金属塩を加え、続いて有機化合物を加えて得られる抗菌防黴剤を含有した繊維状物質。
【請求項15】 金属塩が銀塩、銅塩、亜鉛塩の少なくとも1種である請求項14記載の抗菌防黴剤を含有した繊維状物質。
【請求項16】 金属塩が銀塩、銅塩、亜鉛塩の2種以上が複合されたものである請求項15記載の抗菌防黴剤を含有した繊維状物質。
【請求項17】 金属塩が銀塩、銅塩、亜鉛塩の3種が複合されたものである請求項16記載の抗菌防黴剤を含有した繊維状物質。
【請求項18】 有機化合物が、含窒素複素環、硫黄原子の少なくとも1種を含む化合物である請求項14記載の抗菌防黴剤を含有した繊維状物質。
【請求項19】 含窒素複素環、硫黄原子の少なくとも1種を含む有機化合物が、ベンズイミダゾール化合物、メルカプトピリジン−N−オキシド化合物、イソチアゾロン化合物、ベンゾチアゾール化合物もしくはベンゾチアゾロン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項18記載の抗菌防黴剤を含有した繊維状物質。
【請求項20】 イオン交換繊維が、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレンおよびセルロースから選ばれる少なくとも1種であって、スルホン酸基、ホスホン酸基およびカルボン酸基の少なくとも1種を有する請求項14記載の抗菌防黴剤を含有した繊維状物質。
【請求項21】 イオン交換繊維が、カルボキシメチル変性されたものである請求項20記載の抗菌防黴剤を含有した繊維状物質。
【請求項22】 イオン交換繊維が、カルボキシメチル変性セルロースである請求項21記載の抗菌防黴剤を含有した繊維状物質。
【請求項23】 カルボキシメチル変性セルロースの変性度が置換度で0.5以下である請求項22記載の抗菌防黴剤を含有した繊維状物質。
【請求項24】 カルボキシメチル変性セルロースに、銀塩、銅塩、亜鉛塩の少なくとも1種を加え、pH5〜8の条件下、これにベンズイミダゾール化合物、メルカプトピリジン−N−オキシド化合物、イソチアゾロン化合物、ベンゾチアゾール化合物もしくはベンゾチアゾロン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を加えて得られる請求項14記載の抗菌防黴剤を含有した繊維状物質。
【請求項25】 カルボキシメチル変性セルロースに、銀塩、銅塩、亜鉛塩の2種以上を加え、pH5〜8の条件下、これにベンズイミダゾール化合物、メルカプトピリジン−N−オキシド化合物、イソチアゾロン化合物、ベンゾチアゾール化合物もしくはベンゾチアゾロン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を加えて得られる請求項24記載の抗菌防黴剤を含有した繊維状物質。
【請求項26】 カルボキシメチル変性セルロースに、銀塩、銅塩、亜鉛塩の3種を加え、pH5〜8の条件下、これにベンズイミダゾール化合物、メルカプトピリジン−N−オキシド化合物、イソチアゾロン化合物、ベンゾチアゾール化合物もしくはベンゾチアゾロン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を加えて得られる請求項25記載の抗菌防黴剤を含有した繊維状物質。
【請求項27】 カルボキシメチル変性セルロースに、銀塩、銅塩、亜鉛塩の3種を加え、pH5〜8の条件下、これにメルカプトピリジン−N−オキシド化合物を加えて得られる請求項26記載の抗菌防黴剤を含有した繊維状物質。
【請求項28】 カルボキシメチル変性セルロースに、銀塩を加え、pH5〜8の条件下、これにメルカプトピリジン−N−オキシド化合物を加え、さらに銅塩を加え、pH5〜8の条件下、これにさらにメルカプトピリジン−N−オキシド化合物を加え、またさらに亜鉛塩を加え、pH5〜8の条件下、これにまたさらにメルカプトピリジン−N−オキシド化合物を加えて得られる請求項27記載の抗菌防黴剤を含有した繊維状物質。
【請求項29】 カルボキシメチル変性セルロースに、銀塩、銅塩、亜鉛塩の少なくとも2種を加え、pH5〜8の条件下、これにベンズイミダゾール化合物、メルカプトピリジン−N−オキシド化合物、イソチアゾロン化合物、ベンゾチアゾール化合物もしくはベンゾチアゾロン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を加え、さらに亜鉛塩を加えて得られる請求項26記載の抗菌防黴剤を含有した繊維状物質。
【請求項30】 カルボキシメチル変性セルロースに、銀塩、銅塩、亜鉛塩の少なくとも2種を加え、pH5〜8の条件下、これにメルカプトピリジン−N−オキシド化合物を加え、さらに亜鉛塩を加えて得られる請求項29記載の抗菌防黴剤を含有した繊維状物質。
【請求項31】 カルボキシメチル変性セルロースに、銀塩、銅塩、亜鉛塩の少なくとも2種を加え、pH5〜8の条件下、これにベンズイミダゾール化合物、メルカプトピリジン−N−オキシド化合物、イソチアゾロン化合物、ベンゾチアゾール化合物もしくはベンゾチアゾロン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を加え、さらに銅塩を加えて得られる請求項26記載の抗菌防黴剤を含有した繊維状物質。
【請求項32】 カルボキシメチル変性セルロースに、銀塩、銅塩、亜鉛塩の少なくとも2種を加え、pH5〜8の条件下、これにメルカプトピリジン−N−オキシド化合物を加え、さらに銅塩を加えて得られる請求項31記載の抗菌防黴剤を含有した繊維状物質。
【請求項33】 含窒素複素環、硫黄原子の少なくともいずれかを含む有機化合物と銀塩、銅塩、亜鉛塩の2種以上が複合された抗菌防黴剤。
【請求項34】 含窒素複素環、硫黄原子の少なくともいずれかを含む有機化合物と銀塩、銅塩、亜鉛塩の3種が複合された抗菌防黴剤。
【請求項35】 有機化合物の金属塩よりなる抗菌防黴剤を含有する繊維状物質を含む物品。
【請求項36】 該繊維状物質が、イオン交換繊維である請求項35記載の物品。
【請求項37】 有機金属塩を形成する有機化合物が、含窒素複素環、硫黄原子の少なくとも1種を含む化合物である請求項35記載の物品。
【請求項38】 含窒素複素環、硫黄原子の少なくとも1種を含む有機化合物が、ベンズイミダゾール化合物、メルカプトピリジン−N−オキシド化合物、イソチアゾロン化合物、ベンゾチアゾール化合物もしくはベンゾチアゾロン化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項37記載の物品。
【請求項39】 有機金属塩を形成する金属塩が銀塩、銅塩、亜鉛塩の少なくとも1種である請求項35記載の物品。
【請求項40】 金属塩が銀塩、銅塩、亜鉛塩の2種以上が複合されたものである請求項39記載の物品。
【請求項41】 金属塩が銀塩、銅塩、亜鉛塩の3種が複合されたものである請求項40記載の物品。
【請求項42】 銀塩、銅塩および亜鉛塩の3種について、銀、銅および亜鉛の組成比が、モル比で合計100としたとき、それぞれ、銀10〜40、亜鉛20〜60、残りが銅である(ただし、銅が0になることはない)請求項41記載の物品。
【請求項43】 イオン交換繊維が、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレンおよびセルロースから選ばれる少なくとも1種であって、スルホン酸基、ホスホン酸基およびカルボン酸基の少なくとも1種を有する請求項36記載の物品。
【請求項44】 イオン交換繊維が、カルボキシメチル変性されたものである請求項43記載の物品。
【請求項45】 イオン交換繊維が、カルボキシメチル変性セルロースである請求項44記載の物品。
【請求項46】 カルボキシメチル変性セルロースの変性度が置換度で0.5以下である請求項45記載の物品。
【請求項47】 有機化合物の金属塩よりなる抗菌防黴剤を含有する繊維状物質と有機繊維および/または無機繊維を主体とする請求項35〜46のいずれか1項に記載の物品。
【請求項48】 有機繊維が植物繊維、動物繊維、再生繊維、半合成繊維および合成繊維から選ばれる繊維を単独あるいは複合したものである請求項47記載の物品。
【請求項49】 無機繊維がガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維およびウイスカーから選ばれる繊維を単独あるいは複合したものである請求項47記載の物品。
【請求項50】 少なくとも有機化合物の金属塩よりなる抗菌防黴剤を含有する繊維状物質と、吸着機能を有する物質とからなる請求項47〜49のいずれか1項に記載の物品。
【請求項51】 有機繊維および/または無機繊維からなる物品および吸着機能を有する物質を含む物品を組み合わせた複合物品において、該複合物品を構成する少なくとも一つの物品中に有機化合物の金属塩よりなる抗菌防黴剤を含有する繊維状物質を含む複合物品。
【請求項52】 吸着機能を有する物質が、活性炭および/または活性炭素繊維である請求項50または51記載の物品。
【請求項53】 請求項35〜52のいずれか1項に記載の物品を用いた濾材。
【請求項54】 請求項53に記載の濾材を用いたエアーフィルター。
【請求項55】 請求項53に記載の濾材を用いた空調用エアーフィルター。
【請求項56】 請求項53に記載の濾材を用いた自動車用エアーフィルター。
【請求項57】 請求項35〜52のいずれか1項に記載の物品を用いた壁材。
【請求項58】 請求項35〜52のいずれか1項に記載の物品を用いた靴用中敷材。

【公開番号】特開平9−328402
【公開日】平成9年(1997)12月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−45930
【出願日】平成9年(1997)2月28日
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)