説明

折りたたみ式車いす

【課題】軽量化とコンパクト化および携帯性に加え、安定性および安全性と折りたたんだ状態の小型・コンパクト化をはかった折りたたみ式車いすの提供。
【解決手段】背面側クロスパイプ5は左右のハンドルパイプ1間に配設され、その上端部を一対の可動アーム6を介してハンドルパイプ1に枢着され、前面側クロスパイプ7はシート部材2とフロントパイプ4間に配設され、フロントパイプ4に前輪10が、回転連結部材8に後輪11がそれぞれ取付けられ、シート部材2にステップパイプ13が取付けられ、回転連結部材8、回転連結部材8とフロントパイプ4とを前後方向につなぐ連結杆9、背面側クロスパイプ5と前面側クロスパイプ7の作用により当該本体が同時に前後方向、幅方向および上下方向に折りたたまれる構造となし、左右のハンドルパイプ1部に本体開脚状態自動ロック機構17を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車いす自体をワンタッチで前後、左右および上下に折りたたむことができる折りたたみ式車いすの改良に係り、軽量化とコンパクト化および携帯性に加え、安定性および安全性と折りたたんだ状態の小型・コンパクト化を追及した折りたたみ式車いすに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の車いすとしては、車いす自体を前後方向および左右方向に折りたたむことができる車いすが提案されている(特許文献1、2、3等参照)。これらの車いすは、いずれもX字形のクロスパイプを利用して前後、左右に折りたたまれる構造となっているもので、それまでの幅方向か、前後方向の一方向への折りたたみしかできなかった車いすに比べ、折りたたみ時の小型化がはかられ、持ち運びにも便利なものとなっている。
【0003】
しかしながら、これらの折りたたみ式車いすには、以下に記載する欠点があった。
例えば特許文献1に記載されている折りたたみ式車いすは、本体の前後方向の折りたたみ機構として、シートパイプを上方に持ち上げることによって、左右に配されている屈曲可能な突っ張り材が折りたたまれる構造となっているため、背もたれ部と座面はシート部が分離されていないと折りたたむことができない。すなわち、このような折りたたみ機構では、背もたれ部と座面のシートに一体ものをもちいることができないという不都合がある。また、後輪はリヤパイプに固定されているが、折りたたむと高さが高くなり、出し入れに不便である。さらに、フロントパイプがそのままハンドルパイプにジョイントされているため、手摺がなくサイド方向から乗り降りすることができない。
【0004】
また、特許文献1、2に記載されている車いすは、本体の前後方向の折りたたみ機構として、左右に設けたクロスパイプをスライドさせる方式を採用しているため、折りたたみ機構が比較的複雑で、多数の部品を必要とし、重量自体も重いという欠点がある。さらに、手摺は屈曲式であるため、本体の開閉時においてこの手摺の屈曲部に手を挟むおそれがあり、安全性にも問題がある。
【0005】
そこで、本出願人は、これらの問題点を解決した折りたたみ式車いすを先に提案した(特許文献4)。
この折りたたみ式車いすは、ハンドルパイプ、シートパイプ、フロントパイプ、リヤパイプと前後2組のクロスパイプを主たる構成部材とし、これらの部材と複数の連結部材を使用して、本体が前後、左右および上下方向に同時に折りたたまれる機構となしたこと、ステップを両開き式とするとともに前後方向に出し入れ可能に取付けて、当該ステップを内部に収納できるように設けたこと、前記両開き式ステップを取付けるステップパイプを本体と連動して折りたたまれるように設けたこと、さらにひじ掛けを本体に連動して折りたたまれる仕組みとなしたことを等を主な特徴とするものである。
【0006】
したがって、この折りたたみ式車いすは、本体が前後、左右および上下方向に同時に折りたたまれる構造であるから、コンパクトな車いすが得られると共に、その折りたたみ機構も比較的シンプルであるため軽量化でき、携帯、持ち運びに極めて便利であること、開脚および折りたたみ動作も円滑に行われること、ステップが本体と同時に折りたたまれる構造となっており、かつ車体の中に収めることができるので、より使いやすく便利であること、本体を折りたたんだ状態で自立させておくことができる上、スペースをとらず収納や移動に便利であること等の多くの効果が得られる点で優れている。
【0007】
【特許文献1】実公昭61−25784号公報
【特許文献2】特開昭53−13384号公報
【特許文献3】特公昭61−107号公報
【特許文献4】特公平5−11989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献4に記載されている折りたたみ式車いすは、前記したごとく多くの優れた効果を有し、極めて実用性に優れたものであるが、折りたたみ機構の構成上の問題によりいす本体を折りたたんだ状態における上下方向のボリュウムが比較的大きく、また、いす本体を開脚した状態において横方向からの押圧力に対して若干弱く、開脚したいす本体に対して横方向から押圧力が加わると車輪が内側に寄ってしまい安定性および安全性が損なわれる、等の若干の難点を有していた。
【0009】
本発明は上記した特許文献4に記載されている折りたたみ式車いすの前記問題点を解消するためになされたもので、軽量化とコンパクト化および携帯性に加え、安定性および安全性と折りたたんだ状態の小型・コンパクト化をはかった折りたたみ式車いすを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る折りたたみ式車いすは、基本的には前記した特許文献4に記載されている従来の車いすと同様、ハンドルパイプ、シート部材、フロントパイプ、リヤパイプと前後2組のクロスパイプを主たる構成部材とし、これらの部材と複数の連結部材を使用して、本体が前後方向、幅方向および上下方向に同時に折りたたまれる構造となしたもので、その要旨は、所定の間隔を隔てて相平行する一対のハンドルパイプに座面を形成するための一対のシート部材を上下方向に回動可能に枢着し、該シート部材の下方において、シート部材にリヤパイプの上端を前後方向に回動可能に枢着し、かつハンドルパイプの下端に前後方向に回動可能に枢着した回転連結部材を介してリヤパイプとハンドルパイプとを相互に前後方向に回動可能に連結するとともに、リヤパイプの上部に略L字形のフロントパイプを上下方向に回動可能に枢着し、2本のパイプをX形にクロスさせかつ該クロス部を回動可能に枢着したクロスパイプを左右のハンドルパイプ間に配設して背面側クロスパイプとなし、該背面側クロスパイプの上端部はハンドルパイプの上部に背面に沿って上下方向に回動可能に枢着した相対向する一対の可動アームを介して当該ハンドルパイプに枢着し、該背面側クロスパイプの下端部は前記回転連結部材と同枢軸に枢着して左右のハンドルパイプを幅方向に開閉可能に連結し、さらに前記と同様のクロスパイプをシート部材とフロントパイプ間に配設して前面側クロスパイプとなし、該前面側クロスパイプの上端部はシート部材に、
下端部はフロントパイプにそれぞれ枢着して左右のシート部材とフロントパイプを幅方向に開閉可能に連結し、かつ前記回転連結部材とフロントパイプとを前後方向につなぐ連結杆を介してハンドルパイプとフロントパイプが前後方向に開閉可能となし、フロントパイプ下部に回転式前輪を、ハンドルパイプの下部に取付けた前記回転連結部材に後輪をそれぞれ取付けて本体を構成し、前記左右のリヤパイプ間に横設した中央部より屈曲可能なリンクと、該リンクとフロントパイプ間に掛けた左右一対の突っ張り棒とから構成されて本体に連動するごとく配設した本体開脚状態保持部材を備え、上端を左右のシート部材に前後方向に回動可能に枢着し、かつ下部を左右のフロントパイプに当該支持部材を介して接続していす本体と連動するごとく設けた左右一対のステップパイプに、前後方向に出し入れ可能に取付けた両開き式ステップを有し、本体のハンドルパイプとシート部材を把持し、シート部材を上方向に回動させることにより、ハンドルパイプに枢着した回転連結部材、前記回転連結部材とフロントパイプとを前後方向につなぐ連結杆、背面側クロスパイプと前面側クロスパイプの作用により当該本体が同時に前後方向、幅方向および上下方向に折りたたまれる構造となし、左右のハンドルパイプ部に本体開脚状態自動ロック機構を備えたことを特徴とするものである。
【0011】
また、前記本体開脚状態自動ロック機構は、シート部材のハンドルパイプ付け根部下面に形成した段付き部と、上面に前記段付き部に下から係合可能な突起部を有し、前記ハンドルパイプに内蔵されたばねにより常時上方向に付勢されて一定ストローク上下動するごとく当該ハンドルパイプに外嵌された筒形レバーと、該筒形レバーの側面に回動可能に枢着され、かつ該筒形レバーとの間に掛けたばねにより常に一定方向に回動力を付勢され、その先端部が前記シート部材付け根部下面に摺接する回転アームとから構成され、本体開脚時には前記段付き部に突起部が自動的に係合して本体開脚状態がロックされ、前記筒形レバーをハンドルパイプに内蔵されたばねに抗して下げると、前記段付き部と突起部が分離されてロックが解除されると同時に前記回転アームが前記筒形レバーとの間に掛けたばねにより回動して当該ロック開放状態が保持される仕組みとなしたことを特徴とするものである。
【0012】
さらに、本発明の車いすは、前記ハンドルパイプとリヤパイプに後輪制動方式のハンドブレーキを設けたことを特徴とし、またさらに、この車いすには、左右のハンドルパイプに一端を上下方向に回動自在に取付けられ、左右のリヤパイプに固着した突起に凹凸嵌合し、かつ回動式L形ストッパーを有する着脱式支持パイプを介してほぼ水平に支持され、かつ本体と連動して折りたたまれるごとく設けた左右一対の跳ね上げ式ひじ掛けが設けられている。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上記のごとく構成してなるから、特に背面側クロスパイプと可動アームおよび、ハンドルパイプとリヤパイプおよび背面側クロスパイプをつなぐ回転連結部材の作用により、いす本体を折りたたんだ状態における上下方向のボリュウムを縮小することができ、折りたたんだ状態の小型・コンパクト化がはかられること、また、ハンドルパイプ間に横設したリンクと、該リンクとフロントパイプ間に配設した左右一対の突っ張り棒とからなる本体開脚状態保持部材の作用により、開脚したいす本体に対する横方向からの押圧力に強く、車輪が内側に寄ってしまうことがなくなること、いす本体が不用意に開脚しないようにするための自動ロック機構を設けたことにより、本体開脚状態の安定性および安全性がより高められるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明に係る車いすの構造例を示す斜視図、図2は同上車いすの側面図、図3は同上車いすの背面図、図4は同上車いすの背面側のハンドルパイプの下部を拡大して示す斜視図、図5は同上車いすの本体開脚状態保持部材の一部を示す平面図、図6は本体開脚状態自動ロック機構部を示し、(A)はロック状態を示す側面図、(B)はロック開放状態を示す側面図、図7は同上車いすを折りたたんだ状態を示す側面図、図8は折りたたんだ車いすの背面図であり、1はハンドルパイプ、2はシート部材、3はリヤパイプ、4はフロントパイプ、5は背面側クロスパイプ、6は可動アーム、7は前面側クロスパイプ、8は回転連結部材、9は連結杆、10は前輪、11は後輪、12は本体開脚状態保持部材、13はステップパイプ、14はステップパイプ支持部材、15は両開き式ステップ、16は肘掛け、17は本体開脚状態自動ロック機構、18はハンドブレーキの後輪制動機構部である。
【0015】
本発明に係る車いすの基本的な構成としては、相平行する左右一対のハンドルパイプ1、該ハンドルパイプにブラケットB1を介して枢軸S1にて上下方向に回動可能に枢着した左右一対のシート部材2、ハンドルパイプ1とシート部材2との間に配設され、ハンドルパイプ1側の端部は当該ハンドルパイプの下部に枢軸S2にて上下方向に回動可能に枢着した回転連結部材8に固着され、シート部材2側の端部は当該シート部材2にブラケットB2を介して枢軸S3にて上下方向に回動可能に枢着した左右一対のリヤパイプ3、該リヤーパイプ3に一端をブラケットB3を介して枢軸S4にて上下方向に回動可能に枢着した左右一対の略L字形のフロントパイプ4、2本のパイプをX形にクロスさせそのクロス部を結合ピンP1にて回動自在に結合してなり、上端をハンドルパイプ1に可動アーム6を介して枢軸S5にて回動自在に連結され、下端を前記回転連結部材8に枢軸S6にて回動自在に枢着されたブラケットB4を介して連結された幅方向に開閉自在となす背面側クロスパイプ5、同じく2本のパイプをX形にクロスさせそのクロス部を結合ピンP2にて回動自在に結合してなり、上端をシート部材2にブラケットB6を介して枢軸S7にて回動自在に連結され、下端をフロントパイプ4にブラケットB7を介して枢軸S8にて回動自在に連結された幅方向に開閉自在となす前面側クロスパイプ7とからいす本体の骨格が構成されている。
【0016】
前記回転連結部材8は、図4に拡大して示すごとく、左右一対の側板8−1と該側板8−1間に固着した背面板8−2とで本体が構成され、該本体の上部には前記したごとく背面側クロスパイプ5を連結するためのブラケットB4が枢軸S6にて枢着され、同本体の下部にはリヤパイプ3の下端を連結するための接続筒部8−3が設けられている。なお、前記ブラケットB4にはその背面側にクロスパイプ5の下端を連結するための接続筒部B4−1が回動自在に枢着されている。
【0017】
また、前記回転連結部材8とフロントパイプ4との間には、当該いす本体を前後方向に折りたたむ際にその動きに連動してフロントパイプ4をハンドルパイプ1側に引き寄せ、かついす本体を開脚する際にその動きに連動してフロントパイプ4を前方へ押し出すための作用を行わせる左右一対の連結杆9が設けられている。この連結杆9の一端は回転連結部材8に枢軸S9により回動可能に枢着され、他端はフロントパイプ4に前記前面側クロスパイプ7の下端連結用ブラケットB7と同枢軸S7により枢着されている。なお、前記回転連結部材8の下端には、車いすを段差等に乗り上げ易くするために本体の前部を持ち上げて傾斜させる際に使用する足踏みレバー19を回動可能に軸着している。
【0018】
前輪10は、左右のフロントパイプ4にキャスター10−1を介して取付けられ、大輪の後輪11は左右のリヤパイプ3の下部に固着した軸受11−1に軸着されている。
【0019】
本体開脚状態保持部材12は、前記左右のリヤパイプ3間に横設した中央部より屈曲可能なリンク12−1と、該リンク12−1とフロントパイプ4間に掛けた左右一対の突っ張り棒12−2とから構成されて本体に連動するごとく配設されており、前記リンク12−1は2本の棒を継手12−3にて回動自在に接続して当該継手部を介して屈曲可能となし、かつその両端部は前記後輪11の軸受11−1と一体に設けたブラケットB8に枢軸S10により回動可能に枢着され、該リンク12−1の継手12−3の近傍に設けた左右一対のブラケットB9と、フロントパイプ4に設けた左右一対のブラケットB10に左右一対の突っ張り棒12−2の両端部が引っ掛けられて構成され、前記リンク12−1と突っ張り棒12−2によりいす本体の開脚状態が保持され、横方向からの押圧力に抗する仕組みとなっている。
【0020】
ステップパイプ13は、上端をシート部材2の先端部にブラケットB11を介して枢軸S10にて前後方向に回動可能に連結され、さらにその下部とフロントパイプ4との間に掛け渡されて両端部をそれぞれ枢軸S11、S12にて回動可能に枢着されたステップパイプ支持部材14を介して支持され、いす本体に連動して前後方向に可動となしている。両開き式ステップ15は、このステップパイプ13の下端に枢軸S13にて前後方向に回動自在に取付けられたブラケットB12に左右に開閉自在に取付けられ(両開き式)、かつ使用時は当該ステップが水平に支持される構造となっている。
【0021】
肘掛け16は、後端をハンドルパイプ1に前記背面側クロスパイプ5の可動アーム6の付け根部に枢軸S14にて上下方向に回動自在に取付けられ、シート部材2に取付けられたブラケットB2のリヤパイプ取付用枢軸S3と同軸に設けた支軸16−2に凹凸嵌合するごとく当該肘掛け16の先端部にブラケットB13を介して枢軸S15にて回動自在に枢着された着脱式支持パイプ16−1にてほぼ水平に支持されるように取付けられ、さらに前記着脱式支持パイプ16−1の下部に一定方向に付勢されて回動自在に枢着されたL形ストッパー16−3にて当該支持パイプと支軸16−2とが着脱可能となしている。
【0022】
本体開脚状態自動ロック機構17は、図6に示すごとく、シート部材2のハンドルパイプ付け根部のブラケットB1に下面に形成した段付き部B1−1と、上面に前記段付き部B1−1に下から係合可能な突起部17−2を有し、前記ハンドルパイプ1に縦方向に穿設された長孔1−1に緩貫通して設けた軸ピン17−3に取付けられ、同ハンドルパイプ1内に設けたばね座17−4a、17−4b間に嵌装したスプリング17−4により常時上方向に付勢されて前記長孔1−1で規定される一定ストローク上下動するごとく当該ハンドルパイプ1に外嵌された筒形レバー17−1と、該筒形レバー17−1の側面に回動可能に枢着され、かつ該筒形レバー17−1との間に掛けたスプリング17−5により常に一定方向に回動力を付勢され、その先端部が前記シート部材付け根部下面に摺接する回転アーム17−6とから構成されている。17−7は筒形レバー17−1の側面に設けた突起状の押圧レバー部である。
【0023】
この自動ロック機構17は、いす本体開脚時には前記ブラケットB1の下面に形成した段付き部B1−1に筒形レバー17−1の突起部17−2が係合して本体開脚状態がロックされ、前記筒形レバー17−1の突起状の押圧レバー部17−7をハンドルパイプ1に内蔵されたスプリング17−4に抗して下方に押圧して当該筒形レバー17−1を一定ストローク下げると、前記段付き部B1−1と突起部17−2が分離されてロックが解除されると同時に、前記回転アーム17−6が前記筒形レバー17−1との間に掛けたスプリング17−5により回動して立ち上がり、当該ロック開放状態が保持される仕組みとなしている。
【0024】
すなわち、いす本体開脚時にはブラケットB1の下面に形成した段付き部B1−1に押圧されて回転アーム17−6が軸ピン17−3を支点に回動して後方に倒れると同時に、ハンドルパイプ1に内蔵されたスプリング17−4により筒形レバー17−1が上昇して段付き部B1−1に筒形レバー17−1の突起部17−2が係合して本体開脚状態がロックされ、筒形レバー17−1を下に下げると回転アーム17−6がスプリング17−5に引っ張られて立ち上がり、段付き部B1−1と突起部17−2とが分離してロックが解除され、いす本体が折りたたみ可能な状態となる。
【0025】
ハンドブレーキは、自転車などに使用されているワイヤブレーキを用いてハンドル部とリヤパイプ3側で後輪11を制動する方式を採用したもので、その後輪制動機構部18は、左右のリヤパイプ3にスライド可能に外嵌されかつ該リヤパイプ3内に嵌装したスプリング(図示せず)にて常時一定方向に付勢された制動用筒体18−1と、この制動用筒体の側面に取付けた制動ピン18−2と、ハンドルパイプ1のハンドル部に設けたブレーキレバー18−3と、前記制動用筒体18−1とブレーキレバー18−3とをつなぐワイヤ18−4とからなり、前記ワイヤ18−4が引張られると制動用筒体18−1が前記スプリングに抗して下方に移動し、制動ピン12−3が後輪11を押圧する機構となっている。
【0026】
なお、シート部材3およびハンドルパイプ1には、図示していないが座面シートおよび背もたれシートを着脱可能に取付ける。座面シート14と背もたれシート15はそれぞれ別体物、あるいは座面と背もたれ部がつながった一体物のいずれでもよい。
【0027】
上記構造の車いすにおいて、開脚した状態における幅方向の間隔は左右のハンドルパイプ1間に配した背面側クロスパイプ5と、左右のシート部材3とフロントパイプ4間に配した前面側クロスパイプ7の作用により保持され、前後方向はリヤパイプ3、回転連結部材8および連結杆9により保持される。さらに左右のリヤパイプ3間に横設した中央部より屈曲可能なリンク12−1と、該リンク12−1とフロントパイプ4間に掛けた左右一対の突っ張り棒12−2とから構成された本体開脚状態保持部材12により開脚状態が堅固に保持される。
【0028】
いす本体を折りたたむ場合は、前記自動ロック機構17の筒形レバー17−1を下げてロックを解除した状態で、ハンドルパイプ1とシート部材3を把持してシート部材3を上方へ回動させることによって、背面側クロスパイプ5と前面側クロスパイプ7の作用および連結杆9によりワンタッチ動作でいす本体が前後方向、幅方向および上下方向に同時に折りたたまれる。
すなわち、いす本体のロックを解除した状態で、シート部材3を下側から上側に押し上げると、回転連結部材8が枢軸S2を支点に前方に回動するに伴い背面側クロスパイプ5と前面側クロスパイプ7が幅方向に閉じられると同時にリヤパイプ3が前方に回動し、さらに連結杆9によりフロントパイプ4がリヤパイプ3側に引っ張られながら前後方向に折りたたまれていく。この折りたたみ動作に伴い、背面側クロスパイプ5は回転連結部材8が枢軸S2を支点に前方へ回動することにより下方へ移動して上下方向へ折りたたまれていく。またこの時、本体開脚状態保持部材12は、この折りたたみ動作に伴いリンク12−1が突っ張り棒12−2を介して中央部より屈曲して内側に折りたたまれていく。そして、いす本体を完全に閉じると図7、図8に示すように、背面側クロスパイプ5は幅方向に閉じられて左右のハンドルパイプ1が最も接近した状態となると同時に、可動アーム6によりその上方への移動を阻止されてさらに下方へ移動してその下端を接続しているブラケットB4が接地面近傍位置まで移動した状態となり、また同時にハンドルパイプ1、シート部材2、リヤパイプ3およびフロントパイプ4の順でそれぞれ前後方向に閉じられてほぼ垂直状態に相重なり、さらにステップパイプ13がフロントパイプ4に重なり、肘掛け16もほぼ垂直状態に回動位置した状態となる。したがって、完全に閉じた状態のいす本体は全体的に背丈が低くかつ小さくコンパクトに折りたたまれた状態となる。
【0029】
折りたたんだ状態にある車いすを使用する場合は、折りたたみ時と逆の動作、すなわちハンドルパイプ1およびシート部材2を前後方向に開くことによって、背面側クロスパイプ5と前面側クロスパイプ7および連結杆9の作用により前後方向、幅方向および上下方向に同時に開脚する。またこの時、開脚動作に伴い本体開脚状態保持部材12もリンク12−1が突っ張り棒12−2を介して完全に開いた状態となる。そして、いす本体が完全に開脚すると、前記自動ロック機構17のブラケットB1の下面に形成した段付き部B1−1に筒形レバー17−1の突起部17−2が係合して本体開脚状態がロックされる。
【0030】
車いす使用時において、肘掛け16をはね上げてシート部材2で構成される座面のサイドを開放する場合は、L形ストッパー16−3を外方へ回動させて支持パイプ16−1を支軸16−2より離脱させる。そして、再び肘掛け16を使用する場合は、該肘掛け16を前側に倒して当該支持パイプ16−1の下端を支軸16−2に凹凸嵌合させた後、L形ストッパー16−3を内方へ回動させてその底部を支軸16−2の真下に位置させてロックする。
【0031】
両開き式ステップ15は、使用時には水平状態にして使用し、折りたたみ時は垂直状態にして収納する。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の折りたたみ式車いすは、車体がワンタッチ操作で前後、左右および上下方向に折りたたまれるのみならず、特に背面側クロスパイプと可動アームおよび、ハンドルパイプとリヤパイプおよび背面側クロスパイプをつなぐ回転連結部材の作用により折りたたんだ状態におけるいす本体の小型・コンパクト化がはかられることから、収納、携帯および持ち運びに極めて便利である。また、本体開脚状態をより堅固に保持するための本体開脚状態保持部材を組込んだことにより、開脚したいす本体に対する横方向からの押圧力に強く、車輪が内側に寄ってしまうことがなくなることや、いす本体が不用意に開脚しないようにするためのロック機構を設けたことにより、本体開脚状態の安定性および安全性がより高められ、極めて実用性に富むものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る車いすの構造例を示す斜視図である。
【図2】同上車いすの側面図である。
【図3】同上車いすの背面図である。
【図4】同上車いすの背面側のハンドルパイプの下部を拡大して示す斜視図である。
【図5】同上車いすの本体開脚状態保持部材の一部を示す平面図である。
【図6】本体開脚状態自動ロック機構部を示し、(A)はロック状態を示す側面図、(B)はロック開放状態を示す側面図である。
【図7】同上車いすを折りたたんだ状態を示す側面図である。
【図8】同上車いすを折りたたんだ状態を示す背面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 ハンドルパイプ
2 シート部材
3 リヤパイプ
4 フロントパイプ
5 背面側クロスパイプ
6 可動アーム
7 前面側クロスパイプ
8 回転連結部材
9 連結杆
10 前輪
11 後輪
12 本体開脚状態保持部材
13 ステップパイプ
14 ステップパイプ支持部材
15 両開き式ステップ
16 肘掛け
17 本体開脚状態自動ロック機構
18 ハンドブレーキの後輪制動機構部
19 足踏みレバー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の間隔を隔てて相平行する一対のハンドルパイプに座面を形成するための一対のシート部材を上下方向に回動可能に枢着し、該シート部材の下方において、シート部材にリヤパイプの上端を前後方向に回動可能に枢着し、かつハンドルパイプの下端に前後方向に回動可能に枢着した回転連結部材を介してリヤパイプとハンドルパイプとを相互に前後方向に回動可能に連結するとともに、リヤパイプの上部に略L字形のフロントパイプを上下方向に回動可能に枢着し、2本のパイプをX形にクロスさせかつ該クロス部を回動可能に枢着したクロスパイプを左右のハンドルパイプ間に配設して背面側クロスパイプとなし、該背面側クロスパイプの上端部はハンドルパイプの上部に背面に沿って上下方向に回動可能に枢着した相対向する一対の可動アームを介して当該ハンドルパイプに枢着し、該背面側クロスパイプの下端部は前記回転連結部材と同枢軸に枢着して左右のハンドルパイプを幅方向に開閉可能に連結し、さらに前記と同様のクロスパイプをシート部材とフロントパイプ間に配設して前面側クロスパイプとなし、該前面側クロスパイプの上端部はシート部材に、下端部はフロントパイプにそれぞれ枢着して左右のシート部材とフロントパイプを幅方向に開閉可能に連結し、かつ前記回転連結部材とフロントパイプとを前後方向につなぐ連結杆を介してハンドルパイプとフロントパイプが前後方向に開閉可能となし、フロントパイプ下部に回転式前輪を、ハンドルパイプの下部に取付けた前記回転連結部材に後輪をそれぞれ取付けて本体を構成し、前記左右のリヤパイプ間に横設した中央部より屈曲可能なリンクと、該リンクとフロントパイプ間に掛けた左右一対の突っ張り棒とから構成されて本体に連動するごとく配設した本体開脚状態保持部材を備え、上端を左右のシート部材に前後方向に回動可能に枢着し、かつ下部を左右のフロントパイプに当該支持部材を介して接続していす本体と連動するごとく設けた左右一対のステップパイプに、前後方向に出し入れ可能に取付けた両開き式ステップを有し、本体のハンドルパイプとシート部材を把持し、シート部材を上方向に回動させることにより、ハンドルパイプに枢着した回転連結部材、前記回転連結部材とフロントパイプとを前後方向につなぐ連結杆、背面側クロスパイプと前面側クロスパイプの作用により当該本体が同時に前後方向、幅方向および上下方向に折りたたまれる構造となし、左右のハンドルパイプ部に本体開脚状態自動ロック機構を備えた折りたたみ式車いす。
【請求項2】
前記本体開脚状態ロック機構は、シート部材のハンドルパイプ付け根部下面に形成した段付き部と、上面に前記段付き部に下から係合可能な突起部を有し、前記ハンドルパイプに内蔵されたばねにより常時上方向に付勢されて一定ストローク上下動するごとく当該ハンドルパイプに外嵌された筒形レバーと、該筒形レバーの側面に回動可能に枢着され、かつ該筒形レバーとの間に掛けたばねにより常に一定方向に回動力を付勢され、その先端部が前記シート部材付け根部下面に摺接する回転アームとから構成され、本体開脚時には前記段付き部に突起部が係合して本体開脚状態がロックされ、前記筒形レバーをハンドルパイプに内蔵されたばねに抗して下げると、前記段付き部と突起部が分離されてロックが解除されると同時に前記回転アームが前記筒形レバーとの間に掛けたばねにより回動して当該ロック開放状態が保持される仕組みとなしたことを特徴とする請求項1に記載の折りたたみ式車いす。
【請求項3】
前記ハンドルパイプとリヤパイプに後輪制動方式のハンドブレーキを設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の折りたたみ式車いす。
【請求項4】
左右のハンドルパイプに一端を上下方向に回動自在に取付けられ、左右のリヤパイプに固着した突起に凹凸嵌合し、かつ回動式L形ストッパーを有する着脱式支持パイプを介してほぼ水平に支持され、かつ本体と連動して折りたたまれるごとく設けた左右一対の跳ね上げ式ひじ掛けを有する請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の折りたたみ式車いす。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−288559(P2006−288559A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−111437(P2005−111437)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(000102234)ウチヱ株式会社 (6)
【Fターム(参考)】