説明

折り返し逆Lアンテナおよび折り返し逆Lアンテナ装置

【課題】 低姿勢でありながら導体に近接して配置されてもインピーダンス整合を行えるようにする。
【解決手段】 中途に中間折曲部10cが形成されている延伸部10aと折曲部10bからなるL字状の第1素子10と、中途に中間折曲部11cが形成されている延伸部11aと折曲部11bからなるL字状の折り返し素子11との先端が接続素子12で接続されている。折曲部10b,11bが地板15上に立設された立上素子13に接続されている。折曲部10bの下端と立上素子13との間に給電部14が設けられている。第1素子10および折り返し素子11の幅と間隔や中間折曲部10c,11cを形成する位置を調整することにより、給電部14のインピーダンスを調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信機器内に設置することのできる低姿勢の折り返し逆Lアンテナおよび折り返し逆Lアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信機器に搭載される送受信用のアンテナとして、携帯に便利なように小型のアンテナが望まれている。また、無線通信機器の内部空間は限られていることから、無線通信機器内の導体に近接して設置することができるアンテナが望まれている。従来の無線通信機器内に設置される小型のアンテナとして折り返し逆Lアンテナが提案されており、従来の折り返し逆Lアンテナの構成を示す斜視図を図26に、従来の折り返し逆Lアンテナの構成を示す上面図を図27に、従来の折り返し逆Lアンテナの構成を示す右側面図を図28に示す。
これらの図に示す折り返し逆Lアンテナ100は、L字状に折曲された第1素子110および折り返し素子111とを有しており、平面状の地板115上に立設して配置されている。第1素子110は、地板115にほぼ平行に配置された細長い線状の延伸部110aと、延伸部110aの端部からほぼ直角に折曲されて地板115上にほぼ垂直に立設されている折曲部110bとから構成されている。また、折り返し素子111は第1素子110にほぼ平行に配置されており、地板115にほぼ平行に配置された細長い線条の延伸部111aと、延伸部111aの端部からほぼ直角に折曲されて地板115上にほぼ垂直に立設されている折曲部111bとから構成されている。第1素子110における延伸部110aの先端と折り返し素子111における延伸部111aの先端部とは接続素子112により接続されて、第1素子110と折り返し素子111とが所定の間隔を持ってほぼ平行に配置されるようになる。
【0003】
第1素子110における折曲部110bの先端と地板115との間に給電部114が設けられて、給電部114から折り返し逆Lアンテナ100に給電されている。ここで、以下の条件とされた場合の従来の折り返し逆Lアンテナ100の電圧定在波比(VSWR)の周波数特性を図29に示す。条件としては、折り返し逆Lアンテナ100を電気的に無限大と見なせる大きさの地板115上に設置し、1000MHz(波長λ:約300mm)の設計周波数で設計する。この場合、折り返し逆Lアンテナ100の各部の寸法は以下の通りとなる。延伸部110a,111aの長さEL001は約0.141λ(約42.3mm)、第1素子110と折り返し素子111との間隔Ed0は約0.024λ(約7.2mm)、第1素子110の幅Ew001、折り返し素子111の幅Ew002、接続素子112の幅Ew003は約0.003λ(約0.9mm)、延伸部110a,111aの地板115からの高さEh0は約0.097λ(約29.1mm)、給電部114から給電される折曲部110bの先端の地板115からの高さGp0は約0.013λ(約3.9mm)、折曲部110bの長さEL002は約0.084λ(約25.2mm)となる。なお、折り返し逆Lアンテナ100の各素子の厚さは約0.9mmとされている。
図29を参照すると、従来の折り返し逆Lアンテナ100においては設計周波数(1000MHz)においてVSWRは約1.2の良好な特性が得られており、逆三角マーク2で示す962MHzおよび逆三角マーク3で示す1040MHzにおいてVSWRは約2.0となっており、VSWR2.0の周波数帯域の中心周波数は逆三角マーク1で示す約1001MHzとなっている。この場合の比共振帯域は、約7.8%が得られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−290138号公報
【特許文献2】特開2006−25412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図26ないし図28に示す従来の折り返し逆Lアンテナ100を無線通信機器内に設置する際には、内部空間の大きさが限られている無線通信機器内に設置されることになる。無線通信機器内には、無線通信機器に使用する回路基板等があり、回路基板等の導電体の影響を受けて折り返し逆Lアンテナ100のインピーダンスが変化することになる。これによりインピーダンス整合が行えなくなって、折り返し逆Lアンテナ100のVSWRが劣化すると共に共振帯域も狭くなってしまうという問題点があった。
そこで、本発明は低姿勢でありながら導体に近接して配置されてもインピーダンス整合を行うことができる折り返し逆Lアンテナおよび折り返し逆Lアンテナ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の折り返し逆Lアンテナは、導電性の地板にほぼ垂直に立設された板状の立上素子と、該立上素子の一側部の上端から給電部を介して伸びる板状の第1の折曲部と、前記立上素子の他側部の上端から伸びる板状の第2の折曲部と、前記第1の折曲部の先端にほぼ直角になるよう接続され、前記地板にほぼ平行に延伸されると共に中途に折曲部が形成されている板状の第1の延伸部と、前記第2の折曲部の先端にほぼ直角になるよう接続され、前記地板にほぼ平行に延伸されると共に中途に折曲部が形成されている板状の第2の延伸部と、前記第1の延伸部と前記第2の延伸部との先端同士を接続する板状の接続素子とを備え、前記第1の延伸部と前記第1の折曲部とにより第1素子が構成されると共に、前記第2の延伸部と前記第2の折曲部とにより折り返し素子が構成され、前記第1素子および前記折り返し素子の幅、前記第1の延伸部および前記第2の延伸部の中途に形成されている前記折曲部の位置を調節することでインピーダンス調整を行うようにしたことを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の折り返し逆Lアンテナでは、第1素子および折り返し素子の幅と第1の延伸部および第2の延伸部の中途に形成されている折曲部の位置に応じてアンテナ素子自体のインピーダンスを広範囲で調整することが可能となり、導体に近接して配置されても広帯域な共振帯域を実現することができる。このため、低姿勢で小型化された折り返し逆Lアンテナとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施例にかかる折り返し逆Lアンテナの構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施例にかかる折り返し逆Lアンテナの構成を示す正面図である。
【図3】本発明の第1実施例にかかる折り返し逆Lアンテナの構成を示す上面図である。
【図4】本発明の第1実施例にかかる折り返し逆Lアンテナの構成を示す右側面図である。
【図5】本発明の第1実施例にかかる折り返し逆Lアンテナの寸法の表記を示す図である。
【図6】本発明の第1実施例にかかる折り返し逆LアンテナにおけるVSWR特性を示す図である。
【図7】本発明の第1実施例にかかる折り返し逆Lアンテナにおいて中間折曲部の高さパラメータとした際のインピーダンス特性を示す図である。
【図8】本発明の第1実施例にかかる折り返し逆Lアンテナにおいて中間折曲部の高さパラメータとした際のVSWR特性を示す図である。
【図9】本発明の第1実施例にかかる折り返し逆Lアンテナにおいて中間折曲部の高さパラメータとした際の共振帯域幅特性を示す図である。
【図10】本発明の第1実施例にかかる折り返し逆Lアンテナにおいて中間折曲部の位置をパラメータとした際のインピーダンス特性示す図である。
【図11】本発明の第1実施例にかかる折り返し逆Lアンテナにおいて中間折曲部の位置をパラメータとした際のVSWR特性を示す図である。
【図12】本発明の第1実施例にかかる折り返し逆Lアンテナにおいて第1素子の延伸部の幅をパラメータとした際のインピーダンス特性を示す図である。
【図13】本発明の第1実施例にかかる折り返し逆Lアンテナにおいて第1素子の延伸部の幅をパラメータとした際のVSWR特性を示す図である。
【図14】本発明の第1実施例にかかる折り返し逆Lアンテナにおいて第2素子の延伸部の幅をパラメータとした際のインピーダンス特性を示す図である。
【図15】本発明の第1実施例にかかる折り返し逆Lアンテナにおいて第2素子の延伸部の幅をパラメータとした際のVSWR特性を示す図である。
【図16】本発明の第1実施例にかかる折り返し逆Lアンテナを、回路基板が設けられた地板上に設置した構成を示す斜視図である。
【図17】本発明の第1実施例にかかる折り返し逆Lアンテナを、回路基板が設けられた地板上に設置した構成を示す正面図である。
【図18】本発明の第1実施例にかかる折り返し逆Lアンテナを、回路基板が設けられた地板上に設置した構成を示す上面図である。
【図19】本発明の第1実施例にかかる折り返し逆Lアンテナを、回路基板が設けられた地板上に設置した構成を示す右側面図である。
【図20】本発明の第1実施例にかかる折り返し逆Lアンテナを、回路基板が設けられた地板上に設置した際のVSWR特性を示す図である。
【図21】本発明の第2実施例にかかる折り返し逆Lアンテナを備える折り返し逆Lアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
【図22】本発明の折り返し逆Lアンテナ装置における素子ベース部の構成を示す斜視図である。
【図23】本発明の第2実施例にかかる折り返し逆Lアンテナの構成を示す斜視図である。
【図24】本発明の折り返し逆Lアンテナ装置における給電基板の構成を示す斜視図である。
【図25】本発明の折り返し逆Lアンテナ装置における保持金具の構成を示す斜視図である。
【図26】従来の折り返し逆Lアンテナの構成を示す斜視図である。
【図27】従来の折り返し逆Lアンテナの構成を示す上面図である。
【図28】従来の折り返し逆Lアンテナの構成を示す右側面図である。
【図29】従来の折り返し逆LアンテナのVSWR特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1実施例にかかる折り返し逆Lアンテナ1の構成を示す斜視図を図1に、第1実施例の折り返し逆Lアンテナ1の構成を示す正面図を図2に、第1実施例の折り返し逆Lアンテナ1の構成を示す上面図を図3に、第1実施例の折り返し逆Lアンテナ1の構成を示す右側面図を図4に示す。
これらの図に示す第1実施例の折り返し逆Lアンテナ1は金属板を加工して作成されており、L字状に折曲された第1素子10および折り返し素子11とを有しており、平面状の地板15上に立設して配置されている。第1素子10は、地板15にほぼ平行に配置される細長い板状とされ中途に中間折曲部10cの段差が形成されている延伸部10aと、延伸部10aの端部にほぼ直角に折曲されて接続されている所定長の折曲部10bとから構成されている。また、折り返し素子11は第1素子10にほぼ平行に配置されており、地板15にほぼ平行に配置される細長い板状とされ中途に中間折曲部11cの段差が形成されている延伸部11aと、延伸部11aの端部にほぼ直角に折曲されて接続されている折曲部11bとから構成されている。さらに、地板15に下端が接続されていると共に、地板15上にほぼ垂直に立設されている板状の立上素子13を有しており、立上素子13の一側部の上端と折曲部10bの先端との間が給電部14とされ、立上素子13の他側部の上端に折曲部11bの下端が接続されている。第1素子10における延伸部10aの先端と折り返し素子11における延伸部11aの先端とは板状の所定幅の接続素子12を介して接続されて、第1素子10と折り返し素子11とが所定の間隔を持ってほぼ平行に配置されている。
【0010】
第1素子10における折曲部10bの先端と立上素子13の上端との間の給電部14には、図示しない同軸ケーブルが導入されて折曲部10bの端部に同軸ケーブルの芯線が接続されると共に同軸ケーブルのシールド部が立上素子13の上端に接続されて、折り返し逆Lアンテナ1が給電されるようになる。
第1実施例の折り返し逆Lアンテナ1の各部の寸法の表記を図5に示し、折り返し逆Lアンテナ1の各部の寸法が、下記の寸法とされた場合の第1実施例の折り返し逆Lアンテナ1の電圧定在波比(VSWR)の周波数特性を図6に示す。なお、第1実施例の折り返し逆Lアンテナ1は電気的に無限大と見なせる大きさの地板15上に設置されているものとし、設計周波数を900MHz(自由空間の波長λ:約333.3mm)とする。この場合、第1実施例の折り返し逆Lアンテナ1の各部の寸法は以下の通りとなる。延伸部10aおよび延伸部11aの長さEL01は約0.141λ(約47mm)、第1素子10と折り返し素子11との間隔Edは約0.015λ(約5mm)、第1素子10の幅Ew01は約0.023λ(約7.5mm)、折り返し素子11の幅Ew02は約0.003λ(約1mm)、接続素子12の長さEw03は約0.030λ(約10mm)、中間折曲部10c、11cの接続素子12の端部からの長さEs01は約0.027λ(約9mm)、中間折曲部10c、11cの折曲部10b、11bの上端からの長さEs02は約0.084λ(約28mm)、延伸部10aおよび延伸部11aの接続素子12側の地板15からの高さEhは約0.101λ(約33.5mm)、中間折曲部10c、11cの高さHsは約0.012λ(約4mm)、給電部14における立上素子13の高さGhは約0.053λ(約17.5mm)、立上素子13の上端と折曲部10bの先端との間隔Gpは約0.012λ(約4mm)、折曲部10bの長さEL02は約0.036λ(約12mm)となる。このように、第1実施例の折り返し逆Lアンテナ1は低姿勢の小型のアンテナとされ、折り返し逆Lアンテナ1の各部は厚さ約0.3mmの金属板製とされている。
【0011】
図6に示すVSWRの周波数特性を参照すると、第1実施例の折り返し逆Lアンテナ1では設計周波数f(900MHz)におけるVSWRは約1.0の良好なVSWR値が得られており、逆三角マーク1で示す860MHzおよび逆三角マーク3で示す947MHzにおいて約2.0のVSWRが得られており、VSWR2.0の周波数帯域の中心周波数は逆三角マーク2で示す約903.5MHzとなっている。中心周波数約903.5MHzにおけるVSWRは約1.1と良好なVSWRが得られている。この場合の比共振帯域は、約9.6%の広帯域が得られている。このように、小型で低姿勢のアンテナとしても広帯域となるのは、第1素子10に中間折曲部10cを形成すると共に、折り返し素子11に中間折曲部11cを形成したことによるものと考えられる。
【0012】
次に、第1実施例の折り返し逆Lアンテナ1における各部の寸法をパラメータとした場合のインピーダンス特性とVSWR特性とを次に示す。まず、中間折曲部10c、11cの高さHsをパラメータとして0λ(0mm)〜0.075λ(約25mm)の間で変化させた時の折り返し逆Lアンテナ1の給電部14のインピーダンス特性を図7に、900MHzにおけるVSWR特性を図8に示す。図7を参照すると、高さHsを0λから0.075λまで高くするに従って、レジスタンス成分が約45Ωから約60Ωに上昇するようになるが、リアクタンス成分は約0Ωで一定となる。高さHsを約0.012λ(約4mm)としたときに、給電部14のインピーダンスはほぼ50Ωに整合するようになる。なお、高さHsの高さを変えることにより折り返し逆Lアンテナ1のインピーダンスを細かく調整することができ、これによりインピーダンス整合を行うことが可能となる。
また、図8を参照すると高さHsを0λから0.075λまで高くするに従ってVSWRは約1.1から約1.0、そして約1.2まで変化していくが、良好なVSWR特性が得られている。高さHsを逆三角マークで示す約0.012λ(約4mm)としたときに、約1.0のVSWRの最良値が得られる。
さらに、中間折曲部10c、11cの高さHsをパラメータとして0λ(0mm)〜0.075λ(約25mm)の間で変化させた時の折り返し逆Lアンテナ1の共振帯域幅特性を図9に示す。図9を参照すると、高さHsを0λから0.075λまで高くするに従って共振帯域幅は約84MHz(約9.3%)から約95MHz(10.6%)に増加するようになる。高さHsを逆三角マークで示す約0.012λ(約4mm)としたときに、約87MHz(約9.6%)の広帯域が得られ、約0.06λ(約20mm)としたときに最も広い約95MHzの広帯域を得ることができるようになる。
【0013】
次に、中間折曲部10c、11cの折曲部10b、11bの上端からの長さEs02を0.003λ(約1mm)から0.138λ(約46mm)まで変化させたときの、給電部14のインピーダンス特性を図10に、900MHzにおけるVSWR特性を図11に示す。図10を参照すると、長さEs02を0.003λから0.138λまで長くしていくと、レジスタンス成分は約50Ωで一定となるが、リアクタンス成分は約20Ωから約0Ωに減少する。長さEs02を逆三角マークで示す約0.084λ(約28mm)としたときに、給電部14のインピーダンスはほぼ50Ωに整合するようになる。なお、長さEs02の長さを変えることにより折り返し逆Lアンテナ1のインピーダンスを細かく調整することができ、これによりインピーダンス整合を行うことが可能となる。
また、図11を参照すると長さEs02を0.003λから0.138λまで長くするに従ってVSWRは約1.4から約1.0、そして約1.1と変化していくが、良好なVSWR特性が得られている。長さEs02を逆三角マークで示す約0.084λ(約28mm)としたときに、約1.0のVSWRの最良値が得られる。
【0014】
次に、延伸部10aおよび折曲部10bの幅である第1素子10の幅Ew01を0.005λ(約1.65mm)から0.030λ(約10mm)まで変化させたときの、給電部14のインピーダンス特性を図12に、900MHzにおけるVSWR特性を図13に示す。図12を参照すると、幅Ew01を0.005λから0.030λまで広くするに従って、レジスタンス成分は約75Ωから約40Ωに減少していくが、リアクタンス成分は約0Ωで一定となる。幅Ew01を逆三角マークで示す約0.023λ(約7.5mm)としたときに、給電部14のインピーダンスはほぼ50Ωに整合するようになる。なお、幅Ew01の長さを変えることにより折り返し逆Lアンテナ1のインピーダンスを細かく調整することができ、これによりインピーダンス整合を行うことが可能となる。
また、図13を参照すると幅Ew01を0.005λから0.030λまで長くするに従ってVSWRは約1.4から約1.0、そして約1.1まで変化していくが、良好なVSWR特性が得られている。幅Ew01を逆三角マークで示す約0.023λ(約7.5mm)としたときに、約1.0のVSWRの最良値が得られる。
【0015】
次に、延伸部11aおよび折曲部11bの幅である折り返し素子11の幅Ew02を0.003λ(約1mm)から0.015λ(約5mm)まで変化させたときの、給電部14のインピーダンス特性を図14に、900MHzにおけるVSWR特性を図15に示す。図14を参照すると、幅Ew02を0.003λから0.015λまで広くするに従って、レジスタンス成分は約50Ωから約70Ωに増加していき、リアクタンス成分も約0Ωから約20Ωに増加するようになる。幅Ew02を逆三角マークで示す約0.003λ(約1mm)としたときに、給電部14のインピーダンスはほぼ50Ωに整合するようになる。なお、幅Ew02の長さを変えることにより折り返し逆Lアンテナ1のインピーダンスを細かく調整することができ、これによりインピーダンス整合を行うことが可能となる。
また、図15を参照すると幅Ew02を0.003λから0.015λまで長くするに従ってVSWRは約1.0から約1.5まで変化していくが、良好なVSWR特性が得られている。幅Ew02を逆三角マークで示す約0.003λ(約1mm)としたときに、約1.0のVSWRの最良値が得られる。
【0016】
本発明の第1実施例にかかる折り返し逆Lアンテナ1は、内部空間の大きさが限られている無線通信機器内に設置することができる。この場合、無線通信機器内には回路基板等が内蔵されており、回路基板等の導体に、折り返し逆Lアンテナ1が近接して設置される場合がある。無線通信機器内に設置された本発明の第1実施例にかかる折り返し逆Lアンテナ1が導体に近接して配置されて、導体の影響を受けた場合は、寸法を調整することにより導体の影響を極力受けないようにすることができる。そこで、第1実施例の折り返し逆Lアンテナ1を回路基板20に近接して配置した構成を示す斜視図を図16に、第1実施例の折り返し逆Lアンテナ1を回路基板20に近接して配置した構成を示す正面図を図17に、第1実施例の折り返し逆Lアンテナ1を回路基板20に近接して配置した構成を示す上面図を図18に、第1実施例の折り返し逆Lアンテナ1を回路基板20に近接して配置した構成を示す右側面図を図19に示す。
【0017】
これらの図に示すように、第1実施例の折り返し逆Lアンテナ1は、無線通信機器内に内蔵された地板15上に立設して配置される。この場合、折り返し逆Lアンテナ1は地板15上に基板支持部21により両側が支持された回路基板20に近接して配置されている。この際に、第1素子10の延伸部10aおよび折返し素子11の延伸部11aは、狭い間隔で回路基板20の上面とほぼ平行に対向し、第1素子10の折曲部10bおよび折返し素子11の折曲部11bは、狭い間隔で回路基板20とほぼ平行に対向するようになる。なお、地板15は、電気的に無限大と見なせる大きさとされている。
【0018】
ここでは、回路基板20の横幅が約20mmとされ、配置された回路基板20の高さが約15mmとされているとする。この場合、中間折曲部10c,11cより先の延伸部10a,11aと回路基板20との間隔は約18.5mmとなり、中間折曲部10c,11cより前の延伸部10a,11aと回路基板20との間隔は約14.5mmとなる。そして、第1実施例の折り返し逆Lアンテナ1の設計周波数を900MHzとした際に、第1素子10の延伸部10aおよび折曲部10bの幅Ew01を約0.012λ(約4mm)、折り返し素子11の延伸部11aおよび折曲部11bの幅Ew02を約0.012λ(約4mm)、第1素子10と折り返し素子11との間隔Edを約0.017λ(約5.5mm)に変更している。
【0019】
このような寸法とされた第1実施例の折り返し逆Lアンテナ1が図16ないし図19に示すように回路基板20と接近して配置された際のVSWRの周波数特性を図20に示す。
図20を参照すると、第1実施例の折り返し逆Lアンテナ1においては設計周波数(900MHz)においてVSWRは約1.2と若干劣化しているが良好なVSWR値が得られている。また、逆三角マーク1で示す873MHzおよび逆三角マーク3で示す938MHzにおいてVSWRは約2.0となり、VSWR2.0の周波数帯域の中心周波数は逆三角マーク2で示す約905.5MHzとなる。中心周波数約905.5MHzにおけるVSWRは約1.2と良好な値が得られている。この場合の比共振帯域は、約7.2%と回路基板20がない場合よりやや狭くなるが、回路基板20の影響を受けても十分広い共振帯域が得られていることが分かる。このように、回路基板20等の導体に接近して第1実施例の折り返し逆Lアンテナ1が配置された際には、幅Ew01,幅Ew02,間隔Edの寸法を調整することによりインピーダンス整合が行われて、VSWR特性や共振帯域を劣化させる回路基板20の影響を極力抑制できることができることがわかる。
【0020】
次に、本発明の折り返し逆Lアンテナ装置2の構成を示す斜視図を図21に示す。この折り返し逆Lアンテナ装置2は、基板支持部21により両側が支持された回路基板20を備える地板15上に配置されるアンテナ装置とされており、本発明にかかる第2実施例の折り返し逆Lアンテナ3を備えている。
図21に示す本発明の折り返し逆Lアンテナ装置2は、合成樹脂製とされた絶縁性の素子ベース部25と、本発明にかかる第2実施例の折り返し逆Lアンテナ3と、給電基板38と、保持金具39とから構成されている。
【0021】
素子ベース部25の構成を示す斜視図を図22に示す。図22に示すように合成樹脂製の素子ベース部25は、第1段部25bと第2段部25cとからなる素子支持部25aと、脚部25dとから構成されている。素子支持部25aは細長い矩形板状とされており、第1段部25bと第2段部25cとの間に段差が形成されて、第2段部25cは第1段部より一段低く形成されている。第2段部25cの上面の四隅にそれぞれ細い円柱状のボス25fが突出して形成されている。また、第1段部25bの先端部に一段高くなる低い段差が形成されており、この段差より中央よりに一対のボス25fが形成されている。さらに、第1段部25bの先端部の裏面からほぼ垂直に円柱状の脚部25dが延伸して形成されている。この脚部25dの先端には円錐状の嵌入部25eが形成されており、嵌入部25eの根元の径は細くくびれて形成されている。この嵌入部25eは、回路基板20に形成されている取付孔に嵌入された際に、嵌入部25eの根元のくびれた部位により取付孔から容易に抜け出ないように嵌入される。
【0022】
第2実施例の折り返し逆Lアンテナ3の構成を示す斜視図を図23に示す。第2実施例の折り返し逆Lアンテナ3は金属板を加工して作成されており、図23に示すように、細長い板状とされ中途に中間折曲部30cの段差が形成されている延伸部30aと、延伸部30aから直角に折曲された所定長の折曲部30bとからなるL字状の第1素子30と、細長い板状とされ中途に中間折曲部31cの段差が形成されている延伸部31aと、延伸部31aから直角に折曲された折曲部31bとからなる第1素子30にほぼ平行に配置されたL字状の折り返し素子31とを有している。また、地板15に固着される折曲されて形成された固着部36と、地板15上にほぼ垂直に立設される板状の立上素子33とを有しており、立上素子33の他側部は折曲部31bとほぼ同じ幅に形成されている。立上素子33と折曲部31bとの境界部から横方向に延伸して中央が膨出されている山形部33bが形成されている。また、立上素子33の下部の両側面にほぼ直角に折曲された細長い矩形状の固着片33aがそれぞれ形成されている。さらに、折曲部30bの外側面の下部にほぼ直角に折曲された細長い固着片33aが形成されていると共に、折曲部31bの内側面にほぼ直角に折曲された細長い固着片33aが形成されている。これらの4つの固着片33aは、ほぼ平行になるよう形成されている。
【0023】
また、第1素子30における延伸部30aの先端と折り返し素子31における延伸部31aの先端とは板状の所定幅の接続素子32により接続されて、第1素子30と折り返し素子31とが所定の間隔を持ってほぼ平行に配置されるようになる。さらに、接続素子32の両側に2つの嵌合孔32aが形成されていると共に、中間折曲部30cの手前の延伸部30aの2ヶ所と、中間折曲部31cの手前の延伸部31aの2ヶ所に嵌合孔32aがそれぞれ形成されている。嵌合孔32aについて説明すると、折り返し逆Lアンテナ3は素子ベース部25に固着されるが、素子ベース部25の上面に折り返し逆Lアンテナ3を載置した際に、6つの嵌合孔32aのそれぞれに素子ベース部25の上面に形成されている6つのボス25fがそれぞれ嵌入するようになる。この際に、接続素子32の先端は第1段部25bの上面に形成されている段差に当接するようになる。そして、嵌合孔32aに挿通されて上部が突出しているボス25fを押しつぶすよう溶着することにより、折り返し逆Lアンテナ3を素子ベース部25に固着することができる。
【0024】
プリント基板とされた給電基板38の構成を図24に示す。給電基板38は、図24に示すように長方形状とされており、給電基板38の表面には上部にほぼ矩形状の接続パターン38bが形成されていると共に、接続パターン38bの下部にアースパターン38cが形成されている。給電基板38の中央よりやや下の両側に縦長の挿通孔38dが形成されている。また、給電基板38の上部側面と下部側面の両側に浅い溝が形成されている。接続パターン38bには、導入された同軸ケーブル35の芯線35aがハンダ付けされる。また、同軸ケーブル35のシールド部35bはアースパターン38cにハンダ付けされる。さらに、同軸ケーブル35を保持する保持金具39が給電基板38に固着される。
保持金具39の構成を示す斜視図を図25に示す。この図に示すように、保持金具39は細長い矩形状の金属板を加工することにより作成されている。保持金具39の両端には、ほぼ直角に折曲されている折曲片39bが形成されていると共に、中央部に半円形状に膨出するよう屈曲された山形部39aが形成されている。この保持金具39の2つの折曲片39bを、同軸ケーブル35が接続されている給電基板38の挿通孔38dに挿入して、給電基板38の挿通孔38dから裏側に突出した折曲片39bの先端部を破線で示すように内側に折り曲げる。これにより、同軸ケーブル35は、保持金具39の山形部39a内に保持されるようになる。
【0025】
このように組み立てられた給電基板38を、折り返し逆Lアンテナ3における固着片33aの間に挿入して、4つの固着片33aを給電基板38の両側部に形成されている浅い溝内に嵌挿する。そして、図23に破線で示すように4つの固着片33aをそれぞれ給電基板38の裏面を挟持するよう折曲することにより、給電基板38がほぼ垂直に折り返し逆Lアンテナ3の立上素子33および折曲部30b,31の内側に沿って固着されるようになる。次いで、接続パターン38bの上部に折曲部30bの下端をハンダ付けすると共に、アースパターン38cに立上素子33の上端をハンダ付けする。これにより、給電部34が構成されて、同軸ケーブル35から折り返し逆Lアンテナ3に、給電基板38を介して給電されるようになる。また、立上素子33と折曲部31bとの境界部から横方向に延伸して形成されている山形部33b内に同軸ケーブル35のシールド部35bが保持されるようになり、山形部33bの先端はアースパターン38cにハンダ付けされる。
【0026】
これにより、本発明にかかる折り返し逆Lアンテナ装置2が組み立てられる。この折り返し逆Lアンテナ装置2を、基板支持部21により両側が地板15上に支持された回路基板20が設けられている無線通信機器内に取り付ける場合は、折り返し逆Lアンテナ3における立上素子33の下端に折曲されて形成されている固着部36の一対の挿通孔36aにそれぞれネジ37を挿通する。また、素子ベース部25の脚部25dの先端の嵌入部25eを、回路基板20に形成されている取付孔に嵌入する。次いで、挿通孔36aに挿入されているネジ37を地板15に螺着することにより、折り返し逆Lアンテナ装置2を無線通信機器内の地板15に取り付けることができる。
本発明の折り返し逆Lアンテナ装置2は、折り返し逆Lアンテナ3の延伸部30a,31aに中間折曲部30c,31cが設けられて長軸方向の長さを短くすることができることから、より小型化することができる。また、折り返し逆Lアンテナ3を素子ベース部25に固着して保護を行えることから、精度良く量産性に適したアンテナを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上説明した本発明にかかる第2実施例の折り返し逆Lアンテナ3は、第1実施例の折り返し逆Lアンテナ1が示す電気的特性と同様の電気的特性を示すようになる。本発明の各実施例にかかる折り返し逆Lアンテナは、各部の寸法を連動させて最適化することにより、小型で低姿勢のアンテナでありながら広帯域を実現することができる。
上記した説明では、第1素子および折り返し素子の幅と間隔を調整することにより給電部のインピーダンスを調整するようにしたが、延伸部に形成する中間折曲部の位置を調整することにより給電部のインピーダンスを調整するようにしてもよい。また、折り返し逆Lアンテナの下方に回路基板等の導体が近接してもインピーダンス調整が行えるので、小型アンテナを実現することができると共に、回路基板等の形状に応じてアンテナ素子形状を変化させてもインピーダンス調整が行えるので、内蔵アンテナとしても最適とすることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 折り返し逆Lアンテナ、2 折り返し逆Lアンテナ装置、3 折り返し逆Lアンテナ、10 第1素子、10a 延伸部、10b 折曲部、10c 中間折曲部、11 折り返し素子、11a 延伸部、11b 折曲部、11c 中間折曲部、12 接続素子、13 立上素子、14 給電部、15 地板、20 回路基板、21 基板支持部、25 素子ベース部、25a 素子支持部、25b 第1段部、25c 第2段部、25d 脚部、25e 嵌入部、25f ボス、30 第1素子、30a 延伸部、30b 折曲部、30c 中間折曲部、31 折り返し素子、31a 延伸部、31b 折曲部、31c 中間折曲部、32 接続素子、32a 嵌合孔、33 立上素子、33a 固着片、33b 山形部、34 給電部、35 同軸ケーブル、35a 芯線、35b シールド部、36 固着部、36a 挿通孔、37 ネジ、38 給電基板、38b 接続パターン、38c アースパターン、38d 挿通孔、39 保持金具、39a 山形部、39b 折曲片、100 折り返し逆Lアンテナ、110 第1素子、110a 延伸部、110b 折曲部、111 折り返し素子、111a 延伸部、111b 折曲部、112 接続素子、114 給電部、115 地板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の地板にほぼ垂直に立設された板状の立上素子と、
該立上素子の一側部の上端から給電部を介して伸びる板状の第1の折曲部と、
前記立上素子の他側部の上端から伸びる板状の第2の折曲部と、
前記第1の折曲部の先端にほぼ直角になるよう接続され、前記地板にほぼ平行に延伸されると共に中途に折曲部が形成されている板状の第1の延伸部と、
前記第2の折曲部の先端にほぼ直角になるよう接続され、前記地板にほぼ平行に延伸されると共に中途に折曲部が形成されている板状の第2の延伸部と、
前記第1の延伸部と前記第2の延伸部との先端同士を接続する板状の接続素子とを備え、
前記第1の延伸部と前記第1の折曲部とにより第1素子が構成されると共に、前記第2の延伸部と前記第2の折曲部とにより折り返し素子が構成され、前記第1素子および前記折り返し素子の幅、前記第1の延伸部および前記第2の延伸部の中途に形成されている前記折曲部の位置を調節することでインピーダンス調整を行うようにしたことを特徴とする折り返し逆Lアンテナ。
【請求項2】
前記請求項1記載の折り返し逆Lアンテナと、
矩形板状とされ中途に段差が形成されている素子支持部と、該素子支持部の裏面の先端部からほぼ垂直に延伸されている脚部とからなる絶縁性の素子ベース部と、
前記給電部が構成される給電基板とを備え、
前記第1の延伸部と前記第2の延伸部と前記接続素子とが、前記素子ベース部の前記素子支持部の上面に密着されて支持されると共に、前記立上素子と前記第1の折曲部と前記第2の折曲部の裏側に前記給電基板が固着されることを特徴とする折返し逆Lアンテナ装置。
【請求項3】
前記地板上に配置された回路基板に、前記素子ベース部における前記脚部の先端が固着されると共に、前記立上素子の下端に形成された固着部が前記地板に固着されることを特徴とする請求項2に記載の折り返し逆Lアンテナ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate


【公開番号】特開2013−17038(P2013−17038A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148398(P2011−148398)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(000220907)東光電気株式会社 (73)
【出願人】(303043601)GKBテクノロジー株式会社 (1)
【出願人】(000227892)日本アンテナ株式会社 (176)
【Fターム(参考)】