折板屋根の音鳴り防止構造
【課題】 概ね60dBA未満の軽微な音鳴りの発生も防止でき、建物室内の用途が会議室や講堂等のように静粛性を求められる居室であっても、別に天井での遮音対策などを必要とせず、屋根のみで十分な対策が可能な、折板屋根板の熱伸縮に伴う音鳴りの発生防止に極めて有利な折板屋根の音鳴り防止構造を提供する。
【解決手段】 隣接する金属製の折板屋根板4,4の接合端4a,4a同士を下地材1の上に、折板屋根板4の長さ方向に摺動自在な可動金具6を備えた屋根板支持部材71を介して支持した折板屋根において、折板屋根板4,4の接合端4a,4a同士の接触面間に潤滑剤7を備える。潤滑剤7は、固体潤滑剤とそのバインダーからなる乾性被膜潤滑剤である。
【解決手段】 隣接する金属製の折板屋根板4,4の接合端4a,4a同士を下地材1の上に、折板屋根板4の長さ方向に摺動自在な可動金具6を備えた屋根板支持部材71を介して支持した折板屋根において、折板屋根板4,4の接合端4a,4a同士の接触面間に潤滑剤7を備える。潤滑剤7は、固体潤滑剤とそのバインダーからなる乾性被膜潤滑剤である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重葺き又は一重葺きの折板屋根において隣接する金属製折板屋根板の接合端同士の温度差による熱伸縮から生じる音鳴り現象を防止する折板屋根板の音鳴り防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製の折板屋根板は高機能でありながら経済性に優れた屋根であり、特に長尺であることから優れた防水機能を持っている。しかし、その折板屋根板は、長尺であることと、線膨張率が比較的大きいという材料特性上の理由から、熱伸縮に伴い音鳴り現象が発生し、建物使用上の問題が生じる。この音鳴り現象の発生する問題は、折板屋根板が長尺になるほど熱伸縮量が大きくなり、音鳴りの発生する可能性が高くなる。
【0003】
この折板屋根の音鳴り防止構造として、隣接する金属製の折板屋根板の接合端同士を下地材の上に吊子等の可動金具を含む屋根板支持部材で支持し、前記可動金具を折板屋根板の熱伸縮に対応すべく折板屋根板の長さ方向(棟軒方向)に摺動自在に設けて音鳴りを抑制しようとするものがある(例えば、特許文献1〜4参照。)。
また、隣接する折板屋根板の接合端同士の接触面間に、天然ゴムや合成ゴム、発泡樹脂材などの非金属性軟質材を介在させて折板屋根板の接合端同士の熱伸縮から生じる音鳴りを防止しようとするものがある(例えば、特許文献5〜8参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開平09−328869号公報
【特許文献2】特開平10−37406号公報
【特許文献3】特開2000−110307号公報
【特許文献4】特開2003−147915号公報
【特許文献5】特開平09−184255号公報
【特許文献6】特開平09−184257号公報
【特許文献7】特開2000−129866号公報
【特許文献8】特開2002−339521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、隣接する折板屋根板の接合端同士を下地材の上に支持する屋根板支持部材の可動金具を、折板屋根板の熱伸縮に対応すべく摺動自在に設けるだけの上記折板屋根の音鳴り防止構造では、折板屋根板は、日射の照射角度が原因で隣接する折板屋根板が異なる温度変動を示し、これにより隣接する折板屋根板の接合端同士に微小な異なる動きが生じることから摩擦音が発生するが、この摩擦音の問題を解消できない。
【0006】
また、隣接する折板屋根板の接合端同士の接触面間に、天然ゴムや合成ゴム、発泡樹脂材などの非金属性軟質材を介在させた上記折板屋根の音鳴り防止構造では、隣接する折板屋根板の接合端同士間での摩擦により発生する音は低減されるが、隣接する折板屋根板の接合端同士が下地材の上に緊締金具や支持金具あるいは固定式金具で固定状態に支持されているので、その固定式金具で固定された折板屋根板部分の熱伸縮に伴い蓄積された折板屋根板の内部応力が瞬時に解放されることによる折板屋根板の急激な動きに伴う音の発生問題は解消されない。
【0007】
本発明者らは、上記のような二つの音鳴り防止対策を組み合わせて実施し、その効果を検証した結果、建物室内の使用上、特に支障となる概ね60dBA以上の顕著な音鳴りの発生防止に一定の効果があることは確認しており、建物室内が作業場や一般的な事務室等のようにそれほど静粛性を必要としない用途の場合は有効であると考えられる。
しかしながら、建物室内の用途が会議室や講堂等のように静粛性を求められる居室の場合は、60dBA未満の比較的軽微な音でも使用上の支障となり、上記の音鳴り防止技術対策では不十分であり、別に天井での遮音対策などが必要となるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、概ね60dBA未満の軽微な音鳴りの発生も防止でき、建物室内の用途が会議室や講堂等のように静粛性を求められる居室であっても、別に天井での遮音対策などを必要とせず、屋根のみで十分な対策が可能な、折板屋根板の熱伸縮に伴う音鳴りの発生防止に極めて有利な折板屋根の音鳴り防止構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明の折板屋根の音鳴り防止構造は、隣接する金属製の折板屋根板の接合端同士を下地材の上に、折板屋根板の長さ方向に摺動自在な可動金具を備えた屋根板支持部材を介して支持した折板屋根において、前記折板屋根板の接合端同士の接触面間に潤滑剤を備えていることに特徴を有するものである。
【0010】
この場合において、前記折板屋根板の接合端同士の接合形態としては、請求項2に係る発明のように一方の折板屋根板の接合端と他方の折板屋根板の接合端とをはぜ締め連結したり、請求項3に係る発明のように一方の折板屋根板の接合端の外側に他方の折板屋根板の接合端を嵌合連結したり、あるいは請求項4に係る発明のように一方の折板屋根板の接合端と他方の折板屋根板の接合端を互いに突き合せ接合したりすることができる。
請求項2に記載の発明のように一方の折板屋根板の接合端と他方の折板屋根板の接合端とをはぜ締め連結したり、請求項3に記載の発明のように一方の折板屋根板の接合端の外側に他方の折板屋根板の接合端を嵌合連結したりする場合は、前記接合端同士の接触面間に潤滑剤を備える。請求項4に記載の発明のように一方の折板屋根板の接合端と他方の折板屋根板の接合端を互いに突き合せ接合する場合は該突き合せ接合面間に潤滑剤を備える。
【0011】
また、請求項5に係る発明のように前記可動金具と前記折板屋根板の接合端との接触面間にも潤滑剤を備えることができる。
【0012】
請求項6に係る発明の折板屋根の音鳴り防止構造は、請求項4に記載の折板屋根の音鳴り防止構造において、前記突き合せ接合された接合端同士にキャップが被せられ、このキャップと前記接合端近傍との接触面間にも潤滑剤を備えることに特徴を有するものである。
【0013】
前記潤滑剤としては、請求項7に記載の発明のように、固体潤滑剤とそのバインダーからなる乾性被膜潤滑剤であって、それを上記した所定の潤滑要所に塗布し、乾燥させることにより潤滑被膜が得られる。固体潤滑剤としては、ポリ四フッ化エチレンなどフッ素樹脂系の粉末、二硫化モリブデン粉末、グラファイト粉末、酸化チタン粉末、フッ化カルシウム粉末などである。そのバインダーは硬化して固体潤滑剤の被膜を形成する物質であって、各種有機樹脂系バインダーおよび無機系バインダーである。実際にそれら固体潤滑剤とバインダーの組み合わせによる各種乾性被膜潤滑剤が市販されている。本発明においても、固体潤滑剤、バインダーには各種のものを組み合わせても使用可能であるが、固体潤滑剤としては、特に、請求項8に記載の発明のように、ポリ四フッ化エチレン樹脂粉末を含むことが好ましい。また、このような乾性被膜潤滑剤は、潤滑要所への塗布性の向上を図るためにバインダーを溶解する溶媒により希釈して用いられる。
また、請求項9に記載の発明のように前記潤滑剤としては、下塗りされるポリ四フッ化エチレン樹脂粉末を含まない乾性被膜潤滑剤と、これに上塗りされるポリ四フッ化エチレン樹脂粉末を含む乾性被膜潤滑剤とからなるものを使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
請求項1ないし4に記載の発明によれば、隣接する折板屋根板の接合端同士が熱伸縮により相対摺動しても、該接合端同士の接触面間に備えた潤滑剤による摩擦低減作用により相対摺動による摩擦音の発生を防止できる。また同時に、折板屋根板の接合端同士を下地材の上に折板屋根板の長さ方向に摺動自在な可動金具を備えた屋根板支持部材を介して支持しているので、折板屋根板は可動金具と共に比較的自由に熱伸縮することができ、このため折板屋根板に内部応力が発生し難く、屋根板支持部材による支持固定部分での拘束を超える応力が発生した時の急激な動きに伴う衝撃音を低減でき、顕著な音鳴り発生をも防止できる。このように潤滑剤による摩擦低減作用と可動金具の摺動作用との相乗効果により、折板屋根全体として音鳴り発生を防止する極めて高い効果があり、概ね60dBA未満の軽微な音鳴りの発生も防止でき、建物内部が静粛性を求められる用途の場合でも、別に天井等による遮音対策を必要としなくなるに至った。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、屋根板支持部材の可動金具と折板屋根板の接合端との接触面間にも潤滑剤を備えているので、折板屋根板の接合端と前記可動金具との間での微小な摩擦による摺動音の発生をも抑制することができ、軽微な音鳴り減少効果を更に高めることができる。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、隣接する折板屋根板の突き合せ接合された接合端とキャップとの接触面間にも潤滑剤を備えているので、折板屋根板の接合端とキャップとの間での微小な摩擦をも低減でき当該箇所での音鳴りを低減することができる。
【0017】
請求項7に記載の発明によれば、潤滑剤に固体潤滑剤を含む乾性被膜潤滑剤を使用するので、潤滑性、摩擦低減特性と耐熱・耐寒性に優れ、またオイルやグリースのように流れたり塵埃を付着したりすることがない。請求項8に記載の発明のように摩擦係数の小さいポリ四フッ化エチレン樹脂粉末等のフッ素樹脂を使用する場合においては潤滑性、摩擦低減特性と耐熱・耐寒性に優れるとともに長期間にわたりそれら特性を維持することができる。
【0018】
特に、請求項9に記載の発明のように下塗りされるポリ四フッ化エチレン樹脂粉末を含まない乾性被膜潤滑剤と、これに上塗りされるポリ四フッ化エチレン樹脂粉末を含む乾性被膜潤滑剤の二種類を併用すると、上塗りの乾性被膜潤滑剤で下塗りの乾性被膜潤滑剤が脱落するのを防止でき、上塗りの乾性被膜潤滑剤が経年劣化に伴い脱落しても下塗りの乾性被膜潤滑剤が存在するので、潤滑性をより長期にわたり持続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の好適な実施形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の一実施例を示す折板屋根の音鳴り防止構造の要部の縦断正面図、図2はその上葺折板屋根板のはぜ締め部分の断面図、図3は音鳴り防止構造に備えた可動金具を含む屋根板支持部材の斜視図である。
この折板屋根の音鳴り防止構造は、はぜ締めタイプの下葺折板屋根1の上に、はぜ締めタイプの上葺折板屋根2を葺いた室内と屋外の温度差が激しい二重葺折板屋根に適用した一実施例を示す。上葺折版屋根2は隣接する金属製の折板屋根板4,4の一方の「3」の数字形状に折り曲げられた接合端(小はぜ)4aと、他方の円弧形状に折り曲げられた接合端(大はぜ)4aとをはぜ締め機ではぜ締めして連結してあり、このはぜ締め連結された接合端4a,4a同士は下葺折板屋根(下地材)1の折板屋根板5,5と同じようにはぜ締めされた接合端5a、5aの上に、折板屋根板4の長さ方向(棟軒方向)に摺動自在な可動金具6を備えた屋根板支持部材71を介して支持されている。上葺折板屋根2の隣接する折板屋根板4の接合端4a,4a同士の接触面間には、図2に示すように、摩擦による音の発生を低減する潤滑剤7を備えている。
【0020】
図1、図3に示すように、屋根板支持部材71は、下葺折板屋根1の折板屋根板5,5のはぜ締めされた接合端5a、5aを挟持し1対の固定部材8,8と、この固定部材8,8の接合端5a,5aより上方へ延設した固定部材上端部8a,8a間で挟持される断面T字形状の断熱部材10と、断熱部材10を固定部材上端部8a,8a間に締め付け固定するボルト・ナット等による締結具9とを備える。断熱部材10の上部にはレール部11が一体に形成され、このレール部11を1対の摺動部材12,12で摺動自在に挟持し、この摺動部材12,12より上方へ延設した摺動部材上端部12a,12a間で可動金具(吊子)6を挟持しボルト・ナット等による締結具13で締め付け固定している。上葺折板屋根2の隣接する折板屋根板4,4の接合端4a,4a同士は可動金具6のフック形状の上端部6aを挟んではぜ締めされている。因みに、断熱部材10は、上葺折板屋根2の熱が下葺折板屋根1に伝導するのを遮断するために設けられている。
【0021】
上葺折板屋根2の隣接する折板屋根板4,4のはぜ締めされた接合端4a,4a同士を下葺折板屋根(下地材)1の上に折板屋根板4の長さ方向に摺動自在な可動金具6を備えた屋根板支持部材71で支持しているので、上葺折板屋根2に温度変化が起こって折板屋根板4が熱伸縮すると、屋根板支持部材71の可動金具6は、折板屋根板4とはぜ締めを介して一体的であるので、折板屋根板4の熱伸縮に伴って、断熱部材10のレール部11上を摺動する。この摺動により、折板屋根板4に内部応力が発生し難く、屋根板支持部材71による支持固定部分での拘束を超える応力が発生した時の急激な動きに伴う音鳴りの発生を防止できる。
【0022】
潤滑剤7は、隣接する折板屋根板4,4のはぜ締めされる一方の接合端(小はぜ)4aの外側と、他方の接合端(大はぜ)4aの内側の双方またはその片方に塗布することで備えられる。これにより隣接する折板屋根板4,4の接合端4a,4a同士が熱伸縮により相対摺動しても、該接合端4a,4a同士の接触面間に備えた潤滑剤7による摩擦低減作用により相対摺動による摩擦音の発生を防止できる。
また、可動金具6と折板屋根板4の接合端4aとの接触面間での摺動摩擦による音の発生を低減するために、図1の部分拡大図に示すように、可動金具6の上端部6aの内外両面またはその片面にも潤滑剤7を塗布する。
なお、潤滑剤7は塗布するに代えて、図4のように潤滑剤7を発泡シート等の基材16に塗布し、この基材16を折板屋根板4の接合端4aや可動金具6の所定の潤滑箇所に貼付することで備えることもできる。
【0023】
潤滑剤7は、固体潤滑剤とそのバインダーからなる乾性被膜潤滑剤である潤滑剤の被膜である。いま、使用可能な乾性被膜潤滑剤としては、常温硬化型ポリウレタン樹脂バインダー4重量%と、ポリ四フッ化エチレン樹脂粉末42重量%と、水54重量%とからなるポリ四フッ化エチレン樹脂粉末含有の乾性被膜潤滑剤(以下、「乾性被膜潤滑剤A」という。)がある。また、その乾性被膜潤滑剤Aが上塗りされるポリ四フッ化エチレン樹脂粉末を含まない下塗り用の乾性被膜潤滑剤としては、二硫化モリブデン粉末20重量%、グラファイト粉末5重量%、ポリブチルチタネート12重量%、ブチルアセテートとナフサの混合溶媒63重量%からなる常温硬化型乾性被膜潤滑剤(以下、「乾性被膜潤滑剤B」という。)がある。これら乾性被膜潤滑剤Aおよび乾性被膜潤滑剤Bは、常温で加熱することもなく30分〜数時間で硬化し、潤滑被膜を形成することができる。
【0024】
上記した潤滑剤7は、常温硬化型バインダーを用いることにより、施工現場にて容易に硬化させることができて施工性の向上を図るうえで有利である。常温硬化型バインダーとしては、上記したもの以外に、例えば、アルキッド樹脂、アクリル、シリケートなども使用することができる。しかし、そのような常温硬化型バインダーに限定されるものではなく、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アミドイミド樹脂、イミド樹脂など熱硬化型バインダーを使用することもできる。
潤滑剤7の固体潤滑剤としては、上記ポリ四フッ化エチレン樹脂粉末や二硫化モリブデン粉末、グラファイト粉末以外に、四フッ化エチレン‐エチレン共重合体、フッ化ビニリデン樹脂等のフッ素樹脂系の粉末、酸化チタン粉末、フッ化カルシウム粉末などが挙げられる。
【0025】
音鳴りの発生している或る建物のはぜ締めタイプの二重葺折板屋根において、実際に上記のように上葺折板屋根2の折板屋根板4,4の接合端4a,4a同士の接触面間に上記潤滑剤7を塗布し、その折板屋根板4,4の接合端4a,4a同士を折板屋根板4の長さ方向に摺動自在な可動金具6を備えた屋根板支持部材71で下葺折板屋根1の上に支持するという対策工事を行って実施した結果、その対策前に最大75dBAまでの音鳴りが発生していたのに対し、対策後は50dBA程度の軽微な音鳴りを含め、発生しないことが確認された。
【0026】
本発明の折板屋根の音鳴り防止構造は、図5〜図7に示すように、はぜ締めタイプの一重葺折板屋根にも適用することができる。この場合、図5に示すように、一重葺折版屋根は隣接する金属製の折板屋根板4,4の接合端4a,4a同士をはぜ締め連結してあり、このはぜ締めされた接合端4a,4a同士は梁(下地材)20の上に、折板屋根板4の長さ方向(棟軒方向)に摺動自在な可動金具(吊子)21を備えた屋根板支持部材72を介して支持されている。隣接する折板屋根板4の接合端4a,4a同士の接触面間には、図7に示すように、上記潤滑剤7を備えている。
【0027】
屋根板支持部材72は、梁20の上に固定した1対の挟持片22,22を有する二股形状の固定部材23と、この固定部材23の挟持片22,22間に下端部が挟持された可動金具21と、固定部材23の挟持片22,22間に可動金具21の下端部を締め付け固定したボルト・ナット等による締結具24とを備える。図6に示すように、可動金具21には長孔26が形成され、この長孔26に締結具24を遊嵌させることで可動金具21が折板屋根板4の長さ方向に摺動可能に取り付けられている。図5の部分拡大図に示すように、隣接する折板屋根板4,4の接合端4a,4a同士は可動金具21のフック形状の上端部21aを挟んではぜ締めされている。
【0028】
この実施例においても、隣接する折板屋根板4,4のはぜ締めされた接合端4a,4a同士を梁20の上に折板屋根板4の長さ方向に摺動自在な可動金具21を備えた屋根板支持部材72で支持しているので、折板屋根板4に温度変化が起こって熱伸縮すると、屋根板支持部材72の可動金具21は、折板屋根板4とはぜ締めを介して一体的であるので、折板屋根板4の熱伸縮に伴って、固定部材23上を摺動する。この摺動により、折板屋根板4に内部応力が発生し難く、屋根板支持部材72による支持固定部分での拘束を超える応力が発生した時の急激な動きに伴う音鳴りの発生を防止できる。
潤滑剤7は、隣接する折板屋根板4,4のはぜ締めされる一方の接合端(小はぜ)4aの外側と、他方の接合端(大はぜ)4aの内側の双方またはその片方に塗布することで備えられる。これにより隣接する折板屋根板4,4の接合端4a,4a同士が熱伸縮により相対摺動しても、該接合端4a,4a同士の接触面間に備えた潤滑剤7による摩擦低減作用により相対摺動による摩擦音鳴りの発生を防止できる。
また、図5の部分拡大図に示すように、可動金具21と折板屋根板4の接合端4aとの接触面間での摺動摩擦による音の発生を低減するために可動金具21の上端部21aの内外両面またはその片面にも上記潤滑剤7を塗布する。
【0029】
本発明の折板屋根の音鳴り防止構造は、図8〜図12に示すように、嵌合タイプの下葺折板屋根31の上に、嵌合タイプの上葺折板屋根32を葺いた二重葺折板屋根にも適用できる。図8、図9に示すように、上葺折版屋根32は隣接する金属製の折板屋根板34,34の一方の断面山形状に折り曲げられた接合端34aの外側に、他方の断面山形状に折り曲げられた接合端34aを嵌合して連結してあり、この嵌合された接合端34a,34a同士は下地材としての下葺折板屋根31の折板屋根板35,35の嵌合された接合端35a、35aの上に、折板屋根板34の長さ方向に摺動自在な可動金具36を備えた屋根板支持部材73を介して支持されている。上葺折板屋根32の隣接する折板屋根板34の接合端34a,34a同士の接触面間には、図11に示すように、上記潤滑剤7を備えている。
【0030】
図8、図9に示すように、屋根板支持部材73は、下葺折板屋根31の折板屋根板35,35の嵌合連結された接合端35a、35aを挟持した1対の固定部材38,38と、この固定部材38,38の接合端35a,35aより上方へ延設した固定部材上端部38a,38a間に挟持された合成樹脂製の断熱部材40と、固定部材上端部38a,38a間に断熱部材40を締め付け固定したボルト・ナット等による締結具39とを備える。断熱部材40の上端面には可動金具36をボルト・ナット等による締結具41で摺動自在に取り付けている。可動金具36はウェブ36a、ウェブ36aの両側端から立ち上がるフランジ36b,36b、及び各フランジ36bの上端から外側下方へ張り出した係止縁36cを有する断面「ひ」の字形状に形成され、図10に示すごとくウェブ36aには長孔43が形成され、この長孔43に締結具41を遊嵌させることで可動金具36が断熱部材40の上端面に折板屋根板34の長さ方向に摺動可能に取り付けられている。図12に示すように、上葺折板屋根32の隣接する折板屋根板34,34の嵌合された接合端34a,34a同士は可動金具36に嵌係合されている。
【0031】
この実施例においても、隣接する折板屋根板34,34の嵌合された接合端34a,34a同士を下葺折板屋根31の上に折板屋根板34の長さ方向に摺動自在な可動金具36を備えた屋根板支持部材73で支持しているので、折板屋根板34に温度変化が起こって熱伸縮すると、屋根板支持部材73の可動金具36は、折板屋根板34と嵌係合することで一体的であるので、折板屋根板34の熱伸縮に伴って、断熱部材40上を摺動する。この摺動により、折板屋根板34に内部応力が発生し難く、屋根板支持部材73との係合固定部分での拘束を超える応力が発生した時の急激な動きに伴う音鳴りの発生を防止できる。
【0032】
潤滑剤7は、隣接する折板屋根板34,34の嵌合される一方の接合端34aの外側と、他方の接合端34aの内側の双方またはその一方に潤滑剤7を塗布等により備える。これにより隣接する折板屋根板34,34の接合端34a,34a同士が熱伸縮により相対摺動しても、潤滑剤7による摩擦低減作用により該接合端34a,34a同士の相対摺動による摩擦音鳴りを防止できる。
また、可動金具36と折板屋根板34の接合端34aとの接触面間での摺動摩擦による音の発生を低減するために可動金具36の係止縁36cの外面、又は該接合端34aの内側に潤滑剤7を塗布する。
【0033】
本発明の折板屋根の音鳴り防止構造は、図13〜図17に示すように、嵌合タイプの一重葺折板屋根にも適用することができる。この場合、図13、図14に示すように、一重葺折版屋根は隣接する金属製の折板屋根板34,34の断面山形状に折り曲げられた接合端34a,34a同士を嵌合して連結してあり、この嵌合された接合端34a,34a同士は下地材としての梁20の上に、折板屋根板34の長さ方向に摺動自在な可動金具51を備えた屋根板支持部材74を介して支持されている。隣接する折板屋根板34,34の接合端34a,34a同士の接触面間には、図16に示すように、上記潤滑剤7を備えている。
【0034】
図13、図14に示すように、屋根板支持部材74は、梁20の上に固定され、山形状に折曲形成された固定部材53と、この固定部材53の頂部に折板屋根板34の長さ方向に摺動自在にボルト・ナット等による締結具54を介して取り付けている、図6の可動金具36と同じ形状の可動金具51とを備える。可動金具51はウェブ51a、ウェブ51aの両側端から立ち上がるフランジ51b,51b、及び各フランジ51bの上端から外側下方へ張り出した係止縁51cを有する断面「ひ」の字形状に形成され、ウェブ51aには長孔55が形成され、この長孔55に締結具54を遊嵌させることで可動金具51が固定部材53の頂部上に折板屋根板34の長さ方向に摺動可能に取り付けられている。図17に示すように、隣接する折板屋根板34,34の接合端34a,34a同士は可動金具51に嵌係合されている。
【0035】
この実施例においても、隣接する折板屋根板34,34の嵌合連結された接合端34a,34a同士を梁20の上に可動金具51を備えた屋根板支持部材74で支持しているので、折板屋根板34に温度変化が起こって熱伸縮すると、屋根板支持部材74の可動金具51は、折板屋根板34と嵌係合することで一体的であるので、折板屋根板34の熱伸縮に伴って、固定部材53上を摺動する。この摺動により、折板屋根板34に内部応力が発生し難く、屋根板支持部材74による支持固定部分での拘束を超える応力が発生した時の急激な動きに伴う音鳴りを防止できる。
【0036】
潤滑剤7は、隣接する折板屋根板34,34の嵌合される一方の接合端34aの外側と、他方の接合端34aの内側の双方またはその一方に塗布することで備えられる。これにより隣接する折板屋根板34,34の接合端34a,34a同士が熱伸縮により相対摺動しても、潤滑剤7による摩擦低減作用により該接合端34a,34a同士の相対摺動による摩擦音鳴りを防止できる。
また、図17に示すように、可動金具51の係止縁51cと折板屋根板34の接合端34aとの接触面間での摺動摩擦による音の発生を低減するために可動金具51の係止縁51cの外面にも潤滑剤7を塗布する。
【0037】
本発明の折板屋根の音鳴り防止構造は、図18、図19に示すように、隣接する折板屋根板60,60の一方の接合端60aと他方の接合端60aを互いに突き合せ接合し、かつ突き合せ接合された接合端60a,60a同士に、折板屋根板60の長さ方向に長い長尺の断面部分円弧形状のキャップ61を被せており、この突き合せ接合された接合端60a,60a同士は下地材としての梁20の上に、折板屋根板60の長さ方向に摺動自在な可動金具62を備えた屋根板支持部材75を介して支持されるという折板屋根の形態にも適用できる。
【0038】
図18に示すように、屋根板支持部材75は、梁20の上に固定した山形状の固定部材63と、この固定部材63の頂部に、ボルト・ナット等による締結具64で折板屋根板60の長さ方向に摺動自在に取り付けている、図13〜図15の可動金具51の形状及び取付要領と同じにする可動金具62とを備える。
図19に示すように、隣接する折板屋根60,60の接合端60a,60a同士の突き合せ接合面間には上記潤滑剤7を備えて接合端60a,60a同士の接触面間での摺動摩擦による音の発生を防止している。また、キャップ61の内面のみ、又は接合端60a,60a近傍のキャップ61との接触面及びキャップ61の内面にも上記潤滑剤7を備えて該キャップ61と接合端60aとの接触面間での摩擦による音鳴りを防止している。さらに、図18の部分拡大図に示すように、可動金具62と折板屋根板60の接合端60aとの接触面間での摺動摩擦による音の発生を低減するために、可動金具62の外面又は接合端60a近傍の可動金具62との接触面にも潤滑剤7を塗布する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施例を示す折板屋根の音鳴り防止構造の要部の縦断正面図である。
【図2】図1の折板屋根板の接合端同士のはぜ締め部分の断面図である。
【図3】図1の音鳴り防止構造に備えた可動金具を含む屋根板支持部材の斜視図である。
【図4】潤滑剤塗布基材の斜視図である。
【図5】他の実施例を示す折板屋根の音鳴り防止構造の要部の縦断正面図である。
【図6】図5の音鳴り防止構造に備えた可動金具の側面図である。
【図7】図5の折板屋根板の接合端同士のはぜ締め部分の断面図である。
【図8】更に他の実施例を示す折板屋根の音鳴り防止構造の要部の縦断正面図である。
【図9】図8の音鳴り防止構造に備えた可動金具を含む屋根板支持部材の側面図である。
【図10】図8の音鳴り防止構造に備えた可動金具の平面図である。
【図11】図8の折板屋根板の接合端同士の嵌合部分の断面図である。
【図12】図8のA部における拡大図である。
【図13】更に又、他の実施例を示す折板屋根の音鳴り防止構造の要部の縦断正面図である。
【図14】図13の音鳴り防止構造に備えた可動金具を含む屋根板支持部材の側面図である。
【図15】図13の音鳴り防止構造に備えた可動金具を含む屋根板支持部材の平面図である。
【図16】図13の折板屋根板の接合端同士の嵌合部分の断面図である。
【図17】図13のB部における拡大図である。
【図18】更に又、他の実施例を示す折板屋根の音鳴り防止構造の要部の縦断正面図である。
【図19】図18の折板屋根板の接合端同士の突き合せ接合部分及びキャップの断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1,31 下葺折板屋根(下地材)
4,34,60 折板屋根板
4a,34a,60a 接合端
71〜75 屋根板支持部材
6,21,36,51,62 可動金具
7 潤滑剤
20 梁(下地材)
61 キャップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、二重葺き又は一重葺きの折板屋根において隣接する金属製折板屋根板の接合端同士の温度差による熱伸縮から生じる音鳴り現象を防止する折板屋根板の音鳴り防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製の折板屋根板は高機能でありながら経済性に優れた屋根であり、特に長尺であることから優れた防水機能を持っている。しかし、その折板屋根板は、長尺であることと、線膨張率が比較的大きいという材料特性上の理由から、熱伸縮に伴い音鳴り現象が発生し、建物使用上の問題が生じる。この音鳴り現象の発生する問題は、折板屋根板が長尺になるほど熱伸縮量が大きくなり、音鳴りの発生する可能性が高くなる。
【0003】
この折板屋根の音鳴り防止構造として、隣接する金属製の折板屋根板の接合端同士を下地材の上に吊子等の可動金具を含む屋根板支持部材で支持し、前記可動金具を折板屋根板の熱伸縮に対応すべく折板屋根板の長さ方向(棟軒方向)に摺動自在に設けて音鳴りを抑制しようとするものがある(例えば、特許文献1〜4参照。)。
また、隣接する折板屋根板の接合端同士の接触面間に、天然ゴムや合成ゴム、発泡樹脂材などの非金属性軟質材を介在させて折板屋根板の接合端同士の熱伸縮から生じる音鳴りを防止しようとするものがある(例えば、特許文献5〜8参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開平09−328869号公報
【特許文献2】特開平10−37406号公報
【特許文献3】特開2000−110307号公報
【特許文献4】特開2003−147915号公報
【特許文献5】特開平09−184255号公報
【特許文献6】特開平09−184257号公報
【特許文献7】特開2000−129866号公報
【特許文献8】特開2002−339521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、隣接する折板屋根板の接合端同士を下地材の上に支持する屋根板支持部材の可動金具を、折板屋根板の熱伸縮に対応すべく摺動自在に設けるだけの上記折板屋根の音鳴り防止構造では、折板屋根板は、日射の照射角度が原因で隣接する折板屋根板が異なる温度変動を示し、これにより隣接する折板屋根板の接合端同士に微小な異なる動きが生じることから摩擦音が発生するが、この摩擦音の問題を解消できない。
【0006】
また、隣接する折板屋根板の接合端同士の接触面間に、天然ゴムや合成ゴム、発泡樹脂材などの非金属性軟質材を介在させた上記折板屋根の音鳴り防止構造では、隣接する折板屋根板の接合端同士間での摩擦により発生する音は低減されるが、隣接する折板屋根板の接合端同士が下地材の上に緊締金具や支持金具あるいは固定式金具で固定状態に支持されているので、その固定式金具で固定された折板屋根板部分の熱伸縮に伴い蓄積された折板屋根板の内部応力が瞬時に解放されることによる折板屋根板の急激な動きに伴う音の発生問題は解消されない。
【0007】
本発明者らは、上記のような二つの音鳴り防止対策を組み合わせて実施し、その効果を検証した結果、建物室内の使用上、特に支障となる概ね60dBA以上の顕著な音鳴りの発生防止に一定の効果があることは確認しており、建物室内が作業場や一般的な事務室等のようにそれほど静粛性を必要としない用途の場合は有効であると考えられる。
しかしながら、建物室内の用途が会議室や講堂等のように静粛性を求められる居室の場合は、60dBA未満の比較的軽微な音でも使用上の支障となり、上記の音鳴り防止技術対策では不十分であり、別に天井での遮音対策などが必要となるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、概ね60dBA未満の軽微な音鳴りの発生も防止でき、建物室内の用途が会議室や講堂等のように静粛性を求められる居室であっても、別に天井での遮音対策などを必要とせず、屋根のみで十分な対策が可能な、折板屋根板の熱伸縮に伴う音鳴りの発生防止に極めて有利な折板屋根の音鳴り防止構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明の折板屋根の音鳴り防止構造は、隣接する金属製の折板屋根板の接合端同士を下地材の上に、折板屋根板の長さ方向に摺動自在な可動金具を備えた屋根板支持部材を介して支持した折板屋根において、前記折板屋根板の接合端同士の接触面間に潤滑剤を備えていることに特徴を有するものである。
【0010】
この場合において、前記折板屋根板の接合端同士の接合形態としては、請求項2に係る発明のように一方の折板屋根板の接合端と他方の折板屋根板の接合端とをはぜ締め連結したり、請求項3に係る発明のように一方の折板屋根板の接合端の外側に他方の折板屋根板の接合端を嵌合連結したり、あるいは請求項4に係る発明のように一方の折板屋根板の接合端と他方の折板屋根板の接合端を互いに突き合せ接合したりすることができる。
請求項2に記載の発明のように一方の折板屋根板の接合端と他方の折板屋根板の接合端とをはぜ締め連結したり、請求項3に記載の発明のように一方の折板屋根板の接合端の外側に他方の折板屋根板の接合端を嵌合連結したりする場合は、前記接合端同士の接触面間に潤滑剤を備える。請求項4に記載の発明のように一方の折板屋根板の接合端と他方の折板屋根板の接合端を互いに突き合せ接合する場合は該突き合せ接合面間に潤滑剤を備える。
【0011】
また、請求項5に係る発明のように前記可動金具と前記折板屋根板の接合端との接触面間にも潤滑剤を備えることができる。
【0012】
請求項6に係る発明の折板屋根の音鳴り防止構造は、請求項4に記載の折板屋根の音鳴り防止構造において、前記突き合せ接合された接合端同士にキャップが被せられ、このキャップと前記接合端近傍との接触面間にも潤滑剤を備えることに特徴を有するものである。
【0013】
前記潤滑剤としては、請求項7に記載の発明のように、固体潤滑剤とそのバインダーからなる乾性被膜潤滑剤であって、それを上記した所定の潤滑要所に塗布し、乾燥させることにより潤滑被膜が得られる。固体潤滑剤としては、ポリ四フッ化エチレンなどフッ素樹脂系の粉末、二硫化モリブデン粉末、グラファイト粉末、酸化チタン粉末、フッ化カルシウム粉末などである。そのバインダーは硬化して固体潤滑剤の被膜を形成する物質であって、各種有機樹脂系バインダーおよび無機系バインダーである。実際にそれら固体潤滑剤とバインダーの組み合わせによる各種乾性被膜潤滑剤が市販されている。本発明においても、固体潤滑剤、バインダーには各種のものを組み合わせても使用可能であるが、固体潤滑剤としては、特に、請求項8に記載の発明のように、ポリ四フッ化エチレン樹脂粉末を含むことが好ましい。また、このような乾性被膜潤滑剤は、潤滑要所への塗布性の向上を図るためにバインダーを溶解する溶媒により希釈して用いられる。
また、請求項9に記載の発明のように前記潤滑剤としては、下塗りされるポリ四フッ化エチレン樹脂粉末を含まない乾性被膜潤滑剤と、これに上塗りされるポリ四フッ化エチレン樹脂粉末を含む乾性被膜潤滑剤とからなるものを使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
請求項1ないし4に記載の発明によれば、隣接する折板屋根板の接合端同士が熱伸縮により相対摺動しても、該接合端同士の接触面間に備えた潤滑剤による摩擦低減作用により相対摺動による摩擦音の発生を防止できる。また同時に、折板屋根板の接合端同士を下地材の上に折板屋根板の長さ方向に摺動自在な可動金具を備えた屋根板支持部材を介して支持しているので、折板屋根板は可動金具と共に比較的自由に熱伸縮することができ、このため折板屋根板に内部応力が発生し難く、屋根板支持部材による支持固定部分での拘束を超える応力が発生した時の急激な動きに伴う衝撃音を低減でき、顕著な音鳴り発生をも防止できる。このように潤滑剤による摩擦低減作用と可動金具の摺動作用との相乗効果により、折板屋根全体として音鳴り発生を防止する極めて高い効果があり、概ね60dBA未満の軽微な音鳴りの発生も防止でき、建物内部が静粛性を求められる用途の場合でも、別に天井等による遮音対策を必要としなくなるに至った。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、屋根板支持部材の可動金具と折板屋根板の接合端との接触面間にも潤滑剤を備えているので、折板屋根板の接合端と前記可動金具との間での微小な摩擦による摺動音の発生をも抑制することができ、軽微な音鳴り減少効果を更に高めることができる。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、隣接する折板屋根板の突き合せ接合された接合端とキャップとの接触面間にも潤滑剤を備えているので、折板屋根板の接合端とキャップとの間での微小な摩擦をも低減でき当該箇所での音鳴りを低減することができる。
【0017】
請求項7に記載の発明によれば、潤滑剤に固体潤滑剤を含む乾性被膜潤滑剤を使用するので、潤滑性、摩擦低減特性と耐熱・耐寒性に優れ、またオイルやグリースのように流れたり塵埃を付着したりすることがない。請求項8に記載の発明のように摩擦係数の小さいポリ四フッ化エチレン樹脂粉末等のフッ素樹脂を使用する場合においては潤滑性、摩擦低減特性と耐熱・耐寒性に優れるとともに長期間にわたりそれら特性を維持することができる。
【0018】
特に、請求項9に記載の発明のように下塗りされるポリ四フッ化エチレン樹脂粉末を含まない乾性被膜潤滑剤と、これに上塗りされるポリ四フッ化エチレン樹脂粉末を含む乾性被膜潤滑剤の二種類を併用すると、上塗りの乾性被膜潤滑剤で下塗りの乾性被膜潤滑剤が脱落するのを防止でき、上塗りの乾性被膜潤滑剤が経年劣化に伴い脱落しても下塗りの乾性被膜潤滑剤が存在するので、潤滑性をより長期にわたり持続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の好適な実施形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の一実施例を示す折板屋根の音鳴り防止構造の要部の縦断正面図、図2はその上葺折板屋根板のはぜ締め部分の断面図、図3は音鳴り防止構造に備えた可動金具を含む屋根板支持部材の斜視図である。
この折板屋根の音鳴り防止構造は、はぜ締めタイプの下葺折板屋根1の上に、はぜ締めタイプの上葺折板屋根2を葺いた室内と屋外の温度差が激しい二重葺折板屋根に適用した一実施例を示す。上葺折版屋根2は隣接する金属製の折板屋根板4,4の一方の「3」の数字形状に折り曲げられた接合端(小はぜ)4aと、他方の円弧形状に折り曲げられた接合端(大はぜ)4aとをはぜ締め機ではぜ締めして連結してあり、このはぜ締め連結された接合端4a,4a同士は下葺折板屋根(下地材)1の折板屋根板5,5と同じようにはぜ締めされた接合端5a、5aの上に、折板屋根板4の長さ方向(棟軒方向)に摺動自在な可動金具6を備えた屋根板支持部材71を介して支持されている。上葺折板屋根2の隣接する折板屋根板4の接合端4a,4a同士の接触面間には、図2に示すように、摩擦による音の発生を低減する潤滑剤7を備えている。
【0020】
図1、図3に示すように、屋根板支持部材71は、下葺折板屋根1の折板屋根板5,5のはぜ締めされた接合端5a、5aを挟持し1対の固定部材8,8と、この固定部材8,8の接合端5a,5aより上方へ延設した固定部材上端部8a,8a間で挟持される断面T字形状の断熱部材10と、断熱部材10を固定部材上端部8a,8a間に締め付け固定するボルト・ナット等による締結具9とを備える。断熱部材10の上部にはレール部11が一体に形成され、このレール部11を1対の摺動部材12,12で摺動自在に挟持し、この摺動部材12,12より上方へ延設した摺動部材上端部12a,12a間で可動金具(吊子)6を挟持しボルト・ナット等による締結具13で締め付け固定している。上葺折板屋根2の隣接する折板屋根板4,4の接合端4a,4a同士は可動金具6のフック形状の上端部6aを挟んではぜ締めされている。因みに、断熱部材10は、上葺折板屋根2の熱が下葺折板屋根1に伝導するのを遮断するために設けられている。
【0021】
上葺折板屋根2の隣接する折板屋根板4,4のはぜ締めされた接合端4a,4a同士を下葺折板屋根(下地材)1の上に折板屋根板4の長さ方向に摺動自在な可動金具6を備えた屋根板支持部材71で支持しているので、上葺折板屋根2に温度変化が起こって折板屋根板4が熱伸縮すると、屋根板支持部材71の可動金具6は、折板屋根板4とはぜ締めを介して一体的であるので、折板屋根板4の熱伸縮に伴って、断熱部材10のレール部11上を摺動する。この摺動により、折板屋根板4に内部応力が発生し難く、屋根板支持部材71による支持固定部分での拘束を超える応力が発生した時の急激な動きに伴う音鳴りの発生を防止できる。
【0022】
潤滑剤7は、隣接する折板屋根板4,4のはぜ締めされる一方の接合端(小はぜ)4aの外側と、他方の接合端(大はぜ)4aの内側の双方またはその片方に塗布することで備えられる。これにより隣接する折板屋根板4,4の接合端4a,4a同士が熱伸縮により相対摺動しても、該接合端4a,4a同士の接触面間に備えた潤滑剤7による摩擦低減作用により相対摺動による摩擦音の発生を防止できる。
また、可動金具6と折板屋根板4の接合端4aとの接触面間での摺動摩擦による音の発生を低減するために、図1の部分拡大図に示すように、可動金具6の上端部6aの内外両面またはその片面にも潤滑剤7を塗布する。
なお、潤滑剤7は塗布するに代えて、図4のように潤滑剤7を発泡シート等の基材16に塗布し、この基材16を折板屋根板4の接合端4aや可動金具6の所定の潤滑箇所に貼付することで備えることもできる。
【0023】
潤滑剤7は、固体潤滑剤とそのバインダーからなる乾性被膜潤滑剤である潤滑剤の被膜である。いま、使用可能な乾性被膜潤滑剤としては、常温硬化型ポリウレタン樹脂バインダー4重量%と、ポリ四フッ化エチレン樹脂粉末42重量%と、水54重量%とからなるポリ四フッ化エチレン樹脂粉末含有の乾性被膜潤滑剤(以下、「乾性被膜潤滑剤A」という。)がある。また、その乾性被膜潤滑剤Aが上塗りされるポリ四フッ化エチレン樹脂粉末を含まない下塗り用の乾性被膜潤滑剤としては、二硫化モリブデン粉末20重量%、グラファイト粉末5重量%、ポリブチルチタネート12重量%、ブチルアセテートとナフサの混合溶媒63重量%からなる常温硬化型乾性被膜潤滑剤(以下、「乾性被膜潤滑剤B」という。)がある。これら乾性被膜潤滑剤Aおよび乾性被膜潤滑剤Bは、常温で加熱することもなく30分〜数時間で硬化し、潤滑被膜を形成することができる。
【0024】
上記した潤滑剤7は、常温硬化型バインダーを用いることにより、施工現場にて容易に硬化させることができて施工性の向上を図るうえで有利である。常温硬化型バインダーとしては、上記したもの以外に、例えば、アルキッド樹脂、アクリル、シリケートなども使用することができる。しかし、そのような常温硬化型バインダーに限定されるものではなく、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アミドイミド樹脂、イミド樹脂など熱硬化型バインダーを使用することもできる。
潤滑剤7の固体潤滑剤としては、上記ポリ四フッ化エチレン樹脂粉末や二硫化モリブデン粉末、グラファイト粉末以外に、四フッ化エチレン‐エチレン共重合体、フッ化ビニリデン樹脂等のフッ素樹脂系の粉末、酸化チタン粉末、フッ化カルシウム粉末などが挙げられる。
【0025】
音鳴りの発生している或る建物のはぜ締めタイプの二重葺折板屋根において、実際に上記のように上葺折板屋根2の折板屋根板4,4の接合端4a,4a同士の接触面間に上記潤滑剤7を塗布し、その折板屋根板4,4の接合端4a,4a同士を折板屋根板4の長さ方向に摺動自在な可動金具6を備えた屋根板支持部材71で下葺折板屋根1の上に支持するという対策工事を行って実施した結果、その対策前に最大75dBAまでの音鳴りが発生していたのに対し、対策後は50dBA程度の軽微な音鳴りを含め、発生しないことが確認された。
【0026】
本発明の折板屋根の音鳴り防止構造は、図5〜図7に示すように、はぜ締めタイプの一重葺折板屋根にも適用することができる。この場合、図5に示すように、一重葺折版屋根は隣接する金属製の折板屋根板4,4の接合端4a,4a同士をはぜ締め連結してあり、このはぜ締めされた接合端4a,4a同士は梁(下地材)20の上に、折板屋根板4の長さ方向(棟軒方向)に摺動自在な可動金具(吊子)21を備えた屋根板支持部材72を介して支持されている。隣接する折板屋根板4の接合端4a,4a同士の接触面間には、図7に示すように、上記潤滑剤7を備えている。
【0027】
屋根板支持部材72は、梁20の上に固定した1対の挟持片22,22を有する二股形状の固定部材23と、この固定部材23の挟持片22,22間に下端部が挟持された可動金具21と、固定部材23の挟持片22,22間に可動金具21の下端部を締め付け固定したボルト・ナット等による締結具24とを備える。図6に示すように、可動金具21には長孔26が形成され、この長孔26に締結具24を遊嵌させることで可動金具21が折板屋根板4の長さ方向に摺動可能に取り付けられている。図5の部分拡大図に示すように、隣接する折板屋根板4,4の接合端4a,4a同士は可動金具21のフック形状の上端部21aを挟んではぜ締めされている。
【0028】
この実施例においても、隣接する折板屋根板4,4のはぜ締めされた接合端4a,4a同士を梁20の上に折板屋根板4の長さ方向に摺動自在な可動金具21を備えた屋根板支持部材72で支持しているので、折板屋根板4に温度変化が起こって熱伸縮すると、屋根板支持部材72の可動金具21は、折板屋根板4とはぜ締めを介して一体的であるので、折板屋根板4の熱伸縮に伴って、固定部材23上を摺動する。この摺動により、折板屋根板4に内部応力が発生し難く、屋根板支持部材72による支持固定部分での拘束を超える応力が発生した時の急激な動きに伴う音鳴りの発生を防止できる。
潤滑剤7は、隣接する折板屋根板4,4のはぜ締めされる一方の接合端(小はぜ)4aの外側と、他方の接合端(大はぜ)4aの内側の双方またはその片方に塗布することで備えられる。これにより隣接する折板屋根板4,4の接合端4a,4a同士が熱伸縮により相対摺動しても、該接合端4a,4a同士の接触面間に備えた潤滑剤7による摩擦低減作用により相対摺動による摩擦音鳴りの発生を防止できる。
また、図5の部分拡大図に示すように、可動金具21と折板屋根板4の接合端4aとの接触面間での摺動摩擦による音の発生を低減するために可動金具21の上端部21aの内外両面またはその片面にも上記潤滑剤7を塗布する。
【0029】
本発明の折板屋根の音鳴り防止構造は、図8〜図12に示すように、嵌合タイプの下葺折板屋根31の上に、嵌合タイプの上葺折板屋根32を葺いた二重葺折板屋根にも適用できる。図8、図9に示すように、上葺折版屋根32は隣接する金属製の折板屋根板34,34の一方の断面山形状に折り曲げられた接合端34aの外側に、他方の断面山形状に折り曲げられた接合端34aを嵌合して連結してあり、この嵌合された接合端34a,34a同士は下地材としての下葺折板屋根31の折板屋根板35,35の嵌合された接合端35a、35aの上に、折板屋根板34の長さ方向に摺動自在な可動金具36を備えた屋根板支持部材73を介して支持されている。上葺折板屋根32の隣接する折板屋根板34の接合端34a,34a同士の接触面間には、図11に示すように、上記潤滑剤7を備えている。
【0030】
図8、図9に示すように、屋根板支持部材73は、下葺折板屋根31の折板屋根板35,35の嵌合連結された接合端35a、35aを挟持した1対の固定部材38,38と、この固定部材38,38の接合端35a,35aより上方へ延設した固定部材上端部38a,38a間に挟持された合成樹脂製の断熱部材40と、固定部材上端部38a,38a間に断熱部材40を締め付け固定したボルト・ナット等による締結具39とを備える。断熱部材40の上端面には可動金具36をボルト・ナット等による締結具41で摺動自在に取り付けている。可動金具36はウェブ36a、ウェブ36aの両側端から立ち上がるフランジ36b,36b、及び各フランジ36bの上端から外側下方へ張り出した係止縁36cを有する断面「ひ」の字形状に形成され、図10に示すごとくウェブ36aには長孔43が形成され、この長孔43に締結具41を遊嵌させることで可動金具36が断熱部材40の上端面に折板屋根板34の長さ方向に摺動可能に取り付けられている。図12に示すように、上葺折板屋根32の隣接する折板屋根板34,34の嵌合された接合端34a,34a同士は可動金具36に嵌係合されている。
【0031】
この実施例においても、隣接する折板屋根板34,34の嵌合された接合端34a,34a同士を下葺折板屋根31の上に折板屋根板34の長さ方向に摺動自在な可動金具36を備えた屋根板支持部材73で支持しているので、折板屋根板34に温度変化が起こって熱伸縮すると、屋根板支持部材73の可動金具36は、折板屋根板34と嵌係合することで一体的であるので、折板屋根板34の熱伸縮に伴って、断熱部材40上を摺動する。この摺動により、折板屋根板34に内部応力が発生し難く、屋根板支持部材73との係合固定部分での拘束を超える応力が発生した時の急激な動きに伴う音鳴りの発生を防止できる。
【0032】
潤滑剤7は、隣接する折板屋根板34,34の嵌合される一方の接合端34aの外側と、他方の接合端34aの内側の双方またはその一方に潤滑剤7を塗布等により備える。これにより隣接する折板屋根板34,34の接合端34a,34a同士が熱伸縮により相対摺動しても、潤滑剤7による摩擦低減作用により該接合端34a,34a同士の相対摺動による摩擦音鳴りを防止できる。
また、可動金具36と折板屋根板34の接合端34aとの接触面間での摺動摩擦による音の発生を低減するために可動金具36の係止縁36cの外面、又は該接合端34aの内側に潤滑剤7を塗布する。
【0033】
本発明の折板屋根の音鳴り防止構造は、図13〜図17に示すように、嵌合タイプの一重葺折板屋根にも適用することができる。この場合、図13、図14に示すように、一重葺折版屋根は隣接する金属製の折板屋根板34,34の断面山形状に折り曲げられた接合端34a,34a同士を嵌合して連結してあり、この嵌合された接合端34a,34a同士は下地材としての梁20の上に、折板屋根板34の長さ方向に摺動自在な可動金具51を備えた屋根板支持部材74を介して支持されている。隣接する折板屋根板34,34の接合端34a,34a同士の接触面間には、図16に示すように、上記潤滑剤7を備えている。
【0034】
図13、図14に示すように、屋根板支持部材74は、梁20の上に固定され、山形状に折曲形成された固定部材53と、この固定部材53の頂部に折板屋根板34の長さ方向に摺動自在にボルト・ナット等による締結具54を介して取り付けている、図6の可動金具36と同じ形状の可動金具51とを備える。可動金具51はウェブ51a、ウェブ51aの両側端から立ち上がるフランジ51b,51b、及び各フランジ51bの上端から外側下方へ張り出した係止縁51cを有する断面「ひ」の字形状に形成され、ウェブ51aには長孔55が形成され、この長孔55に締結具54を遊嵌させることで可動金具51が固定部材53の頂部上に折板屋根板34の長さ方向に摺動可能に取り付けられている。図17に示すように、隣接する折板屋根板34,34の接合端34a,34a同士は可動金具51に嵌係合されている。
【0035】
この実施例においても、隣接する折板屋根板34,34の嵌合連結された接合端34a,34a同士を梁20の上に可動金具51を備えた屋根板支持部材74で支持しているので、折板屋根板34に温度変化が起こって熱伸縮すると、屋根板支持部材74の可動金具51は、折板屋根板34と嵌係合することで一体的であるので、折板屋根板34の熱伸縮に伴って、固定部材53上を摺動する。この摺動により、折板屋根板34に内部応力が発生し難く、屋根板支持部材74による支持固定部分での拘束を超える応力が発生した時の急激な動きに伴う音鳴りを防止できる。
【0036】
潤滑剤7は、隣接する折板屋根板34,34の嵌合される一方の接合端34aの外側と、他方の接合端34aの内側の双方またはその一方に塗布することで備えられる。これにより隣接する折板屋根板34,34の接合端34a,34a同士が熱伸縮により相対摺動しても、潤滑剤7による摩擦低減作用により該接合端34a,34a同士の相対摺動による摩擦音鳴りを防止できる。
また、図17に示すように、可動金具51の係止縁51cと折板屋根板34の接合端34aとの接触面間での摺動摩擦による音の発生を低減するために可動金具51の係止縁51cの外面にも潤滑剤7を塗布する。
【0037】
本発明の折板屋根の音鳴り防止構造は、図18、図19に示すように、隣接する折板屋根板60,60の一方の接合端60aと他方の接合端60aを互いに突き合せ接合し、かつ突き合せ接合された接合端60a,60a同士に、折板屋根板60の長さ方向に長い長尺の断面部分円弧形状のキャップ61を被せており、この突き合せ接合された接合端60a,60a同士は下地材としての梁20の上に、折板屋根板60の長さ方向に摺動自在な可動金具62を備えた屋根板支持部材75を介して支持されるという折板屋根の形態にも適用できる。
【0038】
図18に示すように、屋根板支持部材75は、梁20の上に固定した山形状の固定部材63と、この固定部材63の頂部に、ボルト・ナット等による締結具64で折板屋根板60の長さ方向に摺動自在に取り付けている、図13〜図15の可動金具51の形状及び取付要領と同じにする可動金具62とを備える。
図19に示すように、隣接する折板屋根60,60の接合端60a,60a同士の突き合せ接合面間には上記潤滑剤7を備えて接合端60a,60a同士の接触面間での摺動摩擦による音の発生を防止している。また、キャップ61の内面のみ、又は接合端60a,60a近傍のキャップ61との接触面及びキャップ61の内面にも上記潤滑剤7を備えて該キャップ61と接合端60aとの接触面間での摩擦による音鳴りを防止している。さらに、図18の部分拡大図に示すように、可動金具62と折板屋根板60の接合端60aとの接触面間での摺動摩擦による音の発生を低減するために、可動金具62の外面又は接合端60a近傍の可動金具62との接触面にも潤滑剤7を塗布する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施例を示す折板屋根の音鳴り防止構造の要部の縦断正面図である。
【図2】図1の折板屋根板の接合端同士のはぜ締め部分の断面図である。
【図3】図1の音鳴り防止構造に備えた可動金具を含む屋根板支持部材の斜視図である。
【図4】潤滑剤塗布基材の斜視図である。
【図5】他の実施例を示す折板屋根の音鳴り防止構造の要部の縦断正面図である。
【図6】図5の音鳴り防止構造に備えた可動金具の側面図である。
【図7】図5の折板屋根板の接合端同士のはぜ締め部分の断面図である。
【図8】更に他の実施例を示す折板屋根の音鳴り防止構造の要部の縦断正面図である。
【図9】図8の音鳴り防止構造に備えた可動金具を含む屋根板支持部材の側面図である。
【図10】図8の音鳴り防止構造に備えた可動金具の平面図である。
【図11】図8の折板屋根板の接合端同士の嵌合部分の断面図である。
【図12】図8のA部における拡大図である。
【図13】更に又、他の実施例を示す折板屋根の音鳴り防止構造の要部の縦断正面図である。
【図14】図13の音鳴り防止構造に備えた可動金具を含む屋根板支持部材の側面図である。
【図15】図13の音鳴り防止構造に備えた可動金具を含む屋根板支持部材の平面図である。
【図16】図13の折板屋根板の接合端同士の嵌合部分の断面図である。
【図17】図13のB部における拡大図である。
【図18】更に又、他の実施例を示す折板屋根の音鳴り防止構造の要部の縦断正面図である。
【図19】図18の折板屋根板の接合端同士の突き合せ接合部分及びキャップの断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1,31 下葺折板屋根(下地材)
4,34,60 折板屋根板
4a,34a,60a 接合端
71〜75 屋根板支持部材
6,21,36,51,62 可動金具
7 潤滑剤
20 梁(下地材)
61 キャップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する金属製の折板屋根板の接合端同士を下地材の上に、折板屋根板の長さ方向に摺動自在な可動金具を備えた屋根板支持部材を介して支持した折板屋根において、
前記折板屋根板の接合端同士の接触面間に潤滑剤を備えていることを特徴とする、折板屋根の音鳴り防止構造。
【請求項2】
前記折板屋根板の接合端同士が、一方の折板屋根板の接合端と他方の折板屋根板の接合端とをはぜ締め連結しており、前記接合端同士の接触面間に潤滑剤を備えている、請求項1記載の折板屋根の音鳴り防止構造。
【請求項3】
前記折板屋根板の接合端同士が、一方の折板屋根板の接合端の外側に他方の折板屋根板の接合端を嵌合連結しており、前記接合端同士の接触面間に潤滑剤を備えている、請求項1記載の折板屋根の音鳴り防止構造。
【請求項4】
前記折板屋根板同士が、一方の折板屋根板の接合端と他方の折板屋根板の接合端を互いに突き合せ接合しており、該突き合せ接合面間に潤滑剤を備えている、請求項1記載の折板屋根の音鳴り防止構造。
【請求項5】
前記可動金具と前記折板屋根板の接合端との接触面間にも、前記潤滑剤を備えている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の折板屋根の音鳴り防止構造。
【請求項6】
前記突き合せ接合された接合端同士にキャップが被せられ、このキャップと前記接合端近傍との接触面間にも前記潤滑剤を備えている、請求項4記載の折板屋根の音鳴り防止構造。
【請求項7】
前記潤滑剤が固体潤滑剤とそのバインダーからなる乾性被膜潤滑剤である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の折板屋根の音鳴り防止構造。
【請求項8】
前記潤滑剤が固体潤滑剤としてポリ四フッ化エチレン樹脂粉末を含んでいる、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の折板屋根の音鳴り防止構造。
【請求項9】
前記潤滑剤が、下塗りされるポリ四フッ化エチレン樹脂粉末を含まない乾性被膜潤滑剤と、これに上塗りされるポリ四フッ化エチレン樹脂粉末を含む乾性被膜潤滑剤とからなる、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の折板屋根の音鳴り防止構造。
【請求項1】
隣接する金属製の折板屋根板の接合端同士を下地材の上に、折板屋根板の長さ方向に摺動自在な可動金具を備えた屋根板支持部材を介して支持した折板屋根において、
前記折板屋根板の接合端同士の接触面間に潤滑剤を備えていることを特徴とする、折板屋根の音鳴り防止構造。
【請求項2】
前記折板屋根板の接合端同士が、一方の折板屋根板の接合端と他方の折板屋根板の接合端とをはぜ締め連結しており、前記接合端同士の接触面間に潤滑剤を備えている、請求項1記載の折板屋根の音鳴り防止構造。
【請求項3】
前記折板屋根板の接合端同士が、一方の折板屋根板の接合端の外側に他方の折板屋根板の接合端を嵌合連結しており、前記接合端同士の接触面間に潤滑剤を備えている、請求項1記載の折板屋根の音鳴り防止構造。
【請求項4】
前記折板屋根板同士が、一方の折板屋根板の接合端と他方の折板屋根板の接合端を互いに突き合せ接合しており、該突き合せ接合面間に潤滑剤を備えている、請求項1記載の折板屋根の音鳴り防止構造。
【請求項5】
前記可動金具と前記折板屋根板の接合端との接触面間にも、前記潤滑剤を備えている、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の折板屋根の音鳴り防止構造。
【請求項6】
前記突き合せ接合された接合端同士にキャップが被せられ、このキャップと前記接合端近傍との接触面間にも前記潤滑剤を備えている、請求項4記載の折板屋根の音鳴り防止構造。
【請求項7】
前記潤滑剤が固体潤滑剤とそのバインダーからなる乾性被膜潤滑剤である、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の折板屋根の音鳴り防止構造。
【請求項8】
前記潤滑剤が固体潤滑剤としてポリ四フッ化エチレン樹脂粉末を含んでいる、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の折板屋根の音鳴り防止構造。
【請求項9】
前記潤滑剤が、下塗りされるポリ四フッ化エチレン樹脂粉末を含まない乾性被膜潤滑剤と、これに上塗りされるポリ四フッ化エチレン樹脂粉末を含む乾性被膜潤滑剤とからなる、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の折板屋根の音鳴り防止構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2006−97293(P2006−97293A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−283309(P2004−283309)
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000006910)株式会社淀川製鋼所 (34)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月29日(2004.9.29)
【出願人】(000006910)株式会社淀川製鋼所 (34)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】
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