説明

折畳み扉装置における扉枠の下枠構造

【課題】主に下枠の排水を確実にする。
【解決手段】扉枠の下枠1bの屋外側には折畳み扉を案内する案内溝6を形成し、案内溝6の屋内側には中間溝17を介して収納溝14を形成し、収納溝14の内部にシール用部材15を回動自在に支持し、シール用部材15の突縁部20をロック棒24で押し下げたときにシール用部材15が回動して折畳み扉の下部の屋内側面に当接して床面と折畳み扉とを連続させるようにした折畳み扉装置において、案内溝6と中間溝17の下方に中空部26を形成し、中間溝17の溝底の方を案内溝6の溝底よりも高くして中間溝17から屋外側に連通する第1の排水経路aを形成し、収納溝14の溝底の方を中空部26の底部よりも高くして収納溝14から屋外側に連通する第2の排水経路bを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物躯体に設けた扉枠の内側に配置された複数の扉体を回動自在に連結した折畳み扉を配置し、上記扉体を折り畳んで開扉させることにより上記扉枠のほぼ全体を開口することができる折畳み扉装置における扉枠の下枠構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、折畳み扉は2つの扉体を継手框を介して回動自在に連結し、一方の自由端を建物開口部のガイドレールに沿って移動可能とすることによって構成される。扉体には把手が設けられ、上記把手を屋外又は屋内側に押し引きすることで折畳み扉を開閉することができる。閉扉時には全ての扉体が面一状に並び、開扉時には扉体が折畳み状態となる。
【0003】
ところで、最近は老人や幼児などが建物の開口部を通って屋外のデッキやバルコニーに出、又はデッキやバルコニーから屋内に入るときに、段差や仕切りをなくし、移動しやすくするバリアフリー構造が採用される傾向が強い。このため、サッシの下枠の上面と屋内側の床面と屋外側のデッキ面やバルコニーの床面とを略面一に連続するように設計される例が多くなってきている。
【0004】
ところが、このようなバリアフリー構造は、引き戸サッシの例がほとんどで、建物開口部に折畳み扉を設けた開閉構造にはバリアフリー構造はなかった。
【0005】
その理由は、折畳み扉と扉枠の下枠との間の気密、水密が困難だからである。すなわち、扉枠の下枠の上面と屋内側の床面と屋外側のデッキ面やバルコニーの床面とを略面一に連続させる構造では、屋外側からの風雨が屋内に入り込むのを防止するのが難しいのである。
【0006】
従来の折畳み扉の下枠は屋内側が高く、屋外側が低くなるように段差をつけた構造となっており、このように屋外側が低い構造では、開扉時に扉体が下枠から離れることになんの問題もない。また、閉扉時には扉枠の屋内側の面を下枠の段差面に当接させることにより、屋内外の気密や水密は容易に確保することができる。
【0007】
このように、バリアフリー構造では、扉枠の下枠の上面は略水平状態となるように形成されるから、扉体と下枠との間には隙間がなければ扉体を折り畳むことができない。ところが、その逆に、隙間があると、折畳み扉と下枠との間の気密、水密を保持することができない、という問題が発生するのである。
【0008】
その改善策としては、特願2004−306750や特願2004−216660に示されるように、開扉時には扉枠の下枠周辺の床面はフラットになるが、閉扉時には上記下枠と床面とをシールするシール用部材が突出するような構造が考えられる。
【特許文献1】特開2003−193756公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、扉枠の下枠には開扉時にシール用部材を収納する収納溝やシール用部材を作動させるための作動棒が下方に移動したときにそれを受ける受け溝が必要になる。そのため、下枠の上方にはいくつかの溝が開口形成されるとともに、下枠の屋内側はシール用部材によってシールされて水密や気密が確保されているものの、上記下枠の排水処理は不十分であった。
【0010】
本発明は上記問題点を解消し、バリアフリー構造においても下枠の排水を確実にすることができる折畳み扉装置における下枠構造を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、扉枠と折畳み扉とを有し、上記扉枠の下枠上面を床面と略面一とし、上記扉枠の内側に折畳み扉を折畳み展開自在に収納し、上記下枠の屋外側には上記折畳み扉を案内する案内溝を形成し、この案内溝の屋内側には収納溝を形成し、この収納溝の内部に、上記収納溝の上方に突出可能なシール用部材を収納する一方、上記案内溝と収納溝との間には中間溝を形成し、上記シール用部材を収納溝と中間溝との隔壁の上端に回動自在に支持し、中間溝に突出したシール用部材の突縁部を上記扉枠に設けられたロック棒で押し下げたときにシール用部材が回動して収納溝から突出し、上記折畳み扉の下部の屋内側面に当接して上記床面と折畳み扉とを連続させるようにした折畳み扉装置を対象とする。
【0012】
そして、このような折畳み扉装置において、上記案内溝と中間溝の下方に中空部を形成し、この中空部の屋内側に上記収納溝の下部が隣り合うように形成し、かつ上記中間溝の溝底の方を案内溝の溝底よりも高くして中間溝から屋外側に連通する第1の排水経路を形成し、上記収納溝の溝底の方を中空部の底部よりも高くして上記収納溝から屋外側に連通する第2の排水経路を形成したことを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明は、前記扉枠と折畳み扉とが、それぞれ金属部と合成樹脂部とから構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、扉枠の下枠のうち収納溝よりも屋内側はシール用部材によってシールされるが、折畳み扉や上記収納溝と中間溝との隔壁に付着した結露水が収納溝に流れ落ちてくる。また、案内溝と中間溝には折畳み扉と下枠との間の隙間から進入してきた雨水が入り込んでくる。
【0015】
これに対し、中間溝から案内溝を経て屋外側に連通する第1の排水経路が形成され、また、収納溝から屋外側に連通する第2の排水経路が形成されているので、上記雨水は上記第1の排水経路から排水され、また結露水は上記第2の排水経路から排水される。したがって、下枠の収納溝や受け溝に結露水や雨水などが溜まることがなく、常に清潔に保持される。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、前記扉枠と折畳み扉とが、それぞれ金属部と合成樹脂部とから構成されているから、さらに屋内外の断熱を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は折畳み扉装置を含むサッシの内観図、図2は図1のX−X線上の断面図、図3は図1のY−Y線上の断面図であり、建物躯体の扉枠1の内側には左右一対の折畳み扉2、3が配置されている。
【0018】
扉枠1と折畳み扉2、3は、図2、図3等に示すように、それぞれ屋外側の金属部pと屋内側の合成樹脂部qとからなる複合サッシであり、図3および図4に示されるように、閉扉時には面状に展開し、また開扉時には屋外側に折り畳まれるように構成されている。
【0019】
扉枠1は、上枠1a、下枠1b及び縦枠1cを方形に枠組みしてなり、図示しない建物躯体の扉開口部に固定されている。下枠1bの屋内側には室内の床面が、屋外側にはデッキやバルコニーの面がそれぞれほぼ面一に連続しているものとする。扉枠1の上枠1aと下枠1bにはその屋外側の長手方向に沿って折畳み扉用の案内溝5、6が形成されている。
【0020】
各折畳み扉2、3は、互いに離れた吊り元側の固定框7と互いに突合せ可能な戸先框8との間に2枚の扉体9を継手框10を介して回動自在に連結してなるものである。扉体9の内側には二重ガラス11が装着されている。固定框7と戸先框8の上部にはローラ金具12が取り付けられ、ローラ金具12を上記上枠1aの案内溝5に転動自在に係合させることにより、固定框7と戸先框8のほか2枚の扉体9と継手框10が吊り下げられている。また、下部には、下枠1bの案内溝6に沿って回転する回転ローラ13が設けられている。
【0021】
次に、上記下枠1bの案内溝6の屋内側に沿って収納溝14が形成され、この収納溝14の内部に、折畳み扉2、3に対応して2つのシール用部材15が回動自在に収納されている。2つのシール用部材15の長さは略収納溝14の長さと同じである。収納溝14の屋内側も合成樹脂部qによって覆われている。そして、合成樹脂部qの一部は延出され、下枠1bの屋内側の床面に固定するためのアングル片16が形成されている。
【0022】
下枠1bの案内溝6と収納溝14との間には中間溝17が形成され、図5に示されるように、両溝14、17の隔壁18の上端には円形の膨突部が形成されている。
【0023】
上記シール用部材15は上記隔壁18の上端に回動自在に支持されている。シール用部材15は金属製押出し型材によって扇形ベース部15aの中心下部に係合凹部19が、さらにその反対側に突縁部20が形成されている。ベース部15aの外周側には断熱性を有する樹脂製カバー21が取り付けられ、さらに上部には気密材22が、下部にはクッション材23が取り付けられている。
【0024】
上記シール用部材15の係合凹部19は上記収納溝14の隔壁18上端に係合され、この係合部を中心に回動自在になっている。シール用部材15は、通常は収納溝14内に収納され、この状態では突縁部20の先端は中間溝17に略水平の状態で突出している。なお、突縁部20の表面には色落ちを防ぐためのステンレスカバー(図示せず)を装着しておくのが好ましい。
【0025】
図2および図5に示されるように、継手框10の内側には外部から操作可能なロック棒24が上下動可能に収納されている。このロック棒24の下部は、屋外側のロック部24aと屋内側の作動棒24bとの二股に分岐されている。ロック部24aは下枠1bの案内溝6の内部に挿入可能に配置され、作動棒24bは中間溝17に挿入可能に配置されている。
【0026】
上記構成において、折畳み扉2、3を折り畳んで開扉したときは、図5に示されるように、シール用部材15は収納溝14の内部に納まっており、その上側の側面部の一部と気密材22が屋内側に面している。折畳み扉9を展開して閉扉したときは、同図のように、各折畳み扉のロック棒24を下げて屋外側のロック部24aを下枠1bの案内溝6の内部に挿入させる。これにより、折畳み扉2、3は折り畳むことができなくなる。同時に、作動棒24bも下がり、下枠1bの中間溝17に入り込んでシール用部材15の突縁部20に係合して押し下げるので、シール用部材15は回動して収納溝14の上方に突出し、気密材22が折畳み扉2、3の下框9bの屋内側面に当接し、これにより、床面と折畳み扉とが連続し、シール用部材15が折畳み扉と屋内側の床面との間の隙間を塞ぐことになるので、バリアフリー構造であっても、外部との気密や水密を確保することができる。
【0027】
次に、上述のように、案内溝6と収納溝14との間には中間溝17が形成されているが、図5および図6に示されるように、案内溝6と中間溝17の下方に中空部26が形成されている。この中空部26は、収納溝14と中間溝17との隔壁18を介して収納溝14と隣り合うように形成されている。また、上記中間溝17の溝底の方が案内溝6の溝底よりも高く形成され、上記収納溝14の溝底の方が中空部26の底部よりも高く形成されている。さらに、中間溝17と案内溝6の屋外側の側壁の下部には貫通孔27、28が形成され、受け溝の下部を屋内側から屋外側に向って低くなって中間溝17から案内溝6を経て屋外側に連通する第1の排水経路aが形成されている。同様に、収納溝14と中空部26との間の隔壁18と中空部26の屋外側の側壁の下部にも貫通孔29、30が形成され、収納溝14から中空部26を経て屋内側から屋外側に向って低くなって屋外側に連通する第2の排水経路bが形成されている。32は排水弁である。
【0028】
また、案内溝6と中間溝17との間の隔壁18の中間部から屋内側斜め下方に傾斜縁31が張り出し形成されている。そして、図7に示されるように、中間溝17の上端開口部の幅w1を9〜10mmとし、傾斜縁31の下端部における中間溝17の幅w2を5mm以下となるように設定されている。
【0029】
上述の下枠構造によれば、扉枠1の下枠1bのうち収納溝14よりも屋内側はシール用部材15によってシールされるが、折畳み扉2、3や上記収納溝14と中間溝17との隔壁18に付着した結露水が収納溝14に流れ落ちてくる。案内溝6と中間溝17には折畳み扉2、3と下枠1bとの間の隙間から進入してきた雨水が入り込んでくる。しかし、上記雨水は上記第1の排水経路aから排水され、結露水は上記第2の排水経路bから排水されるので、下枠1bの収納溝14や中間溝17に結露水や雨水などが溜まることがなく、清潔に保持される。
【0030】
また、中間溝17の上端開口部の幅w1を9〜10mmとしたので、ロック棒24が有効に落ち込んで有効にシール用部材15を回動させることができるとともに、子供が中間溝17に誤って指を入れても容易に抜き出すことができる。また、傾斜縁31の下端部における中間溝17の幅w2を5mm以下としたので、子供が中間溝17に指を入れても、上記傾斜縁31よりも下までは入れることができない。したがって、事故を未然に防止することができる。
【0031】
なお、上記傾斜縁31が上記隔壁18から屋内側に張り出し、また傾斜縁31により中間溝17の溝幅が小さくなっているので、屋外から上記第1の排水経路aを通って吹き込んでくる雨水などが傾斜縁31の裏側に当って落ち、中間溝17の上方に吹き上がるのを有効に防止することができる。
【0032】
なお、断熱性を高めたサッシとしては、上述の扉枠と折畳み扉の例のように、屋外側に面する部分をアルミニウム等の金属の押出型材から、屋内側に面する部分を合成樹脂から構成したもののほか、扉枠と折畳み扉とをそれぞれ金属の押出型材からなる室内部材と室外部材とを合成樹脂製の断熱部材を介して連結した構成のものも知られている。上記扉枠の下枠構造は後者の折畳み扉装置にも適用することができる。また、上記扉枠の下枠構造は断熱サッシだけでなく、アルミニウム等の金属のみからなる金属サッシにも適用できるのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】折畳み扉装置に係るサッシの内観図である。
【図2】図1のX−X線上の断面図である。
【図3】図1のY−Y線上の断面図である。
【図4】折畳み扉が開いた状態の横断面図である。
【図5】扉枠の下枠の拡大断面図である。
【図6】シール用部材が回動時の拡大断面図である。
【図7】図5の一部拡大図
【符号の説明】
【0034】
a 第1の排水経路
b 第2の排水経路
1b 下枠
2、3 折畳み扉
6 案内溝
14 収納溝
15 シール用部材
17 中間溝
26 中空部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉枠と折畳み扉とを有し、上記扉枠の下枠上面を床面と略面一とし、上記扉枠の内側に折畳み扉を折畳み展開自在に収納し、上記下枠の屋外側には上記折畳み扉を案内する案内溝を形成し、この案内溝の屋内側には収納溝を形成し、この収納溝の内部に、上記収納溝の上方に突出可能なシール用部材を収納する一方、上記案内溝と収納溝との間には中間溝を形成し、上記シール用部材を収納溝と中間溝との隔壁の上端に回動自在に支持し、中間溝に突出したシール用部材の突縁部を上記扉枠に設けられたロック棒で押し下げたときにシール用部材が回動して収納溝から突出し、上記折畳み扉の下部の屋内側面に当接して上記床面と折畳み扉とを連続させるようにした折畳み扉装置において、
上記案内溝と中間溝の下方に中空部を形成し、この中空部の屋内側に上記収納溝の下部が隣り合うように形成し、かつ上記中間溝の溝底の方を案内溝の溝底よりも高くして中間溝から屋外側に連通する第1の排水経路を形成し、上記収納溝の溝底の方を中空部の底部よりも高くして上記収納溝から屋外側に連通する第2の排水経路を形成したことを特徴とする折畳み扉装置における扉枠の下枠構造。
【請求項2】
前記扉枠と折畳み扉とが、それぞれ金属部と合成樹脂部とから構成されていることを特徴とする、請求項1記載の折畳み扉装置における扉枠の下枠構造。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉枠と折畳み扉とを有し、上記扉枠の下枠上面を床面と略面一とし、上記扉枠の内側に折畳み扉を折畳み展開自在に収納し、上記下枠の屋外側には上記折畳み扉を案内する案内溝を形成し、この案内溝の屋内側には収納溝を形成し、この収納溝の内部に、上記収納溝の上方に突出可能なシール用部材を収納する一方、上記案内溝と収納溝との間には中間溝を形成し、上記シール用部材を収納溝と中間溝との隔壁の上端に回動自在に支持し、中間溝に突出したシール用部材の突縁部を上記折畳み扉に設けられたロック棒で押し下げたときにシール用部材が回動して収納溝から突出し、上記折畳み扉の下部の屋内側面に当接して上記床面と折畳み扉とを連続させるようにした折畳み扉装置において、
上記案内溝と中間溝の下方に中空部を形成し、この中空部の屋内側に上記収納溝の下部が隣り合うように形成し、かつ上記中間溝の溝底の方を案内溝の溝底よりも高くして中間溝から屋外側に連通する第1の排水経路を形成し、上記収納溝の溝底の方を中空部の底部よりも高くして上記収納溝から屋外側に連通する第2の排水経路を形成したことを特徴とする折畳み扉装置における扉枠の下枠構造。
【請求項2】
前記扉枠と折畳み扉とが、それぞれ金属部と合成樹脂部とから構成されていることを特徴とする、請求項1記載の折畳み扉装置における扉枠の下枠構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−188908(P2006−188908A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−2499(P2005−2499)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(000191065)新日軽株式会社 (545)
【出願人】(000220929)東工シャッター株式会社 (26)
【Fターム(参考)】