説明

押しボタンスイッチ

【課題】押し当て方式の接触構造において、別途、補助接点を追加することにより主接点へのアーク対策を施す機構とした押しボタンスイッチを提供する。
【解決手段】押しボタンスイッチは、ハウジング内部に配設される一対の固定接片と、前記ハウジングに進退可能に嵌合される押しボタンと、前記押しボタンに連結され、第2可動接片をガイドして、前記固定接片の第2接点に接触させる摺動体と、を備えた押しボタンスイッチであって、前記摺動体には、前記第2可動接片をガイドして前記固定接片の第2接点に接触させる前に、第1可動接片をガイドして前記固定接片の第1接点に接触させる機構を備えたことである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は押しボタンスイッチに関し、詳しくは、微小電流用押しボタンスイッチのアーク対策構造に適用されるもので、特に接触信頼性が要求される分野における押しボタンスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術における押しボタンスイッチは、図4及び図5に示すように、フレーム12とケース13からなるハウジング11内部において一対の固定接片34Aが距離を離して配置され、且つこの固定接片34Aに可動接片26Aをガイドするように配設してなる摺動体21Aと、該摺動体21Aの上部中心位置から上方向に突出形成された円柱形状の押しボタン22と、摺動体21Aの下部側中心位置に摺動体21A自身を上方向に付勢してなる復帰バネ23と、摺動体21Aの両端部で下方向に突出させた円筒形状の可動接片支持体24と、可動接片支持体24に挿通させ可動接片26Aで支持するように配置された接触バネ31Aと、可動接片支持体24に設けた可動接片用係合孔25Aに収容されている棒状の可動接片26Aと、可動接片26Aの下部位置で可動接片支持体24を挟んだ位置に設けた一対の固定接片34Aと、から大略構成されている。
【0003】
固定接片34Aは、導電性板部材を直角に折り曲げ、更に折り曲げた後端部側を更に反対方向の直角に折り曲げて形成され、基部の上端には中間位置をく字状に切欠いて可動接片当接部(固定接点)32を形成する。
【0004】
可動接片26Aは、棒状に形成され、金メッキが施されているもので、両端部の可動接片接触部36を可動接片当接部32に押し当てて電気的な接続を得る構成となっている。
【0005】
このような構成からなるスイッチにおいて、先ず、押しボタン22が押される前の状態は、押しボタン22に連設されている摺動体21Aが復帰バネ23に押されてハウジング11の内壁に押された状態を維持し、そのため、可動接片支持体24に取付けられている可動接片26Aも固定接片34Aよりも上部位置に係止した状態となっている。この状態で、押しボタン22を押すと押しボタン22に連設されている摺動体21Aが復帰バネ23の付勢力に抗して下方向に押し下がり、それに連られて可動接片支持体24も下方向に移動し、可動接片26Aも下方向に移動し、固定接片の可動接片当接部(固定接点)32に接近する。更に連続して押しボタン22を押せば、図5に示すように、更に摺動体21Aが下方向に押され、可動接片支持体24も連られて下方向に押し下げられることで、可動接片26Aの可動接片接触部36が固定接片34Aの可動接片当接部(固定接点)32に接触する。この可動接片26Aが可動接片当接部(固定接点)32に接触したとき以後においては、接触バネ31Aが可動接片26Aを押す方向に付勢することで、可動接片26Aの可動接片当接部(固定接点)32への接触状態を良好に維持するように作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−78852
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術で説明した押しボタンスイッチにおいては、金メッキを施した可動接片を固定接片の可動接片当接部(固定接点)に押し当てる方式の接触構造であるために、通電状態で押し当てて接触させることにより接触時にアークが発生する。そのため、繰り返しのアーク発生により可動接片に施した金メッキが飛散することで、素地が露出し、接触信頼性が低下するという問題がある。
【0008】
従って、従来の押し当て方式の接触構造に対して、別途、補助接点を追加することでアーク対策を施す機構とすることに解決しなければならない課題を有する。
具体的には、2つの接点機構を備えた構成にし、補助接点である第1接点部には、銀リベット接点付きの可動接点を採用し、この銀リベット接点付きの可動接点により、アークによる接触信頼性の低下を防ぐこととし、主接点である第2接点部には従来の金メッキによる可動接片を用いることで、金メッキ接片による接触信頼性の向上を図る構造を採用することである。
尚、従来から存在する補助接点付き機構の場合、第1・第2接点部は各々別の箇所に付設されているため、スイッチ機構が複雑になり、スイッチ本体が大きくなるという問題があったが、本発明においては、同一線上に第1・第2接点部を配置し、尚且つ第2接点部の可動接点で第1接点部の可動接片の脱落防止用の部材も兼ねているため、スイッチ本体が大きくなることなく、追加部品を採用することなく取り付けることができるというものである。
【0009】
更に、アークの発生が皆無の回路仕様の場合には、補助接点である第1接点部(銀リベット接点)を削除した機構が採用できるようにもなっている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本願発明の押しボタンスイッチは、次に示す構成にすることである。
【0011】
(1)押しボタンスイッチは、
ハウジング内部に配設される一対の固定接片と、
前記ハウジングに進退可能に嵌合される押しボタンと、
前記押しボタンに連結され、第2可動接片をガイドして、前記固定接片の第2接点に接触させる摺動体と、
を備えた押しボタンスイッチであって、
前記摺動体には、前記第2可動接片をガイドして前記固定接片の第2接点に接触させる前に、第1可動接片をガイドして前記固定接片の第1接点に接触させる機構を備えたことである。
(2)前記第1可動接片と第2可動接片は、同一軸上に設けたことを特徴とする(1)に記載の押しボタンスイッチ。
(3)前記第2可動接片は、第1可動接片の脱落防止用部材も兼ねていることを特徴とする(2)に記載の押しボタンスイッチ。
(4)同一部品において、前記第1可動接片を削除した機構が採用できるようにしたことを特徴とする(1)に記載の押しボタンスイッチ。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る押しボタンスイッチは、アーク対策用の補助接点機構を付設することが可能になり、主接点が接触する前に補助接点を接触させるようにしたことで主接点からのアークの発生を阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る押しボタンスイッチの一部断面して示した全体斜視図である。
【図2】同、更に主及び補助可動接点の機構の部分を断面して示した斜視図である。
【図3】同、補助可動接点が固定接点に接触した状態を示した斜視図である。
【図4】従来技術における押しボタンスイッチの一部断面して示した全体斜視図である。
【図5】同、可動接点が固定接点に接触した様子を示した斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本願発明に係る押しボタンスイッチの実施形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
本発明に係る押しボタンスイッチは、図1乃至図3に示すように、ハウジング11内部において一対の固定接片34が距離を離して配置され、且つこの固定接片34に可動接片をガイドするように配設してなる摺動体21と、該摺動体21の上部中心位置から上方向に突出形成された円柱形状の押しボタン22と、摺動体21の下部側中心位置に摺動体21自身を上方向に付勢してなる復帰バネ23と、摺動体21の両端部で下方向に突出させた円筒形状の可動接片支持体24と、可動接片支持体24に設けてある第2可動接片用係合孔25に収容されている第2可動接片26に支持され、且つ可動接片支持体24の外周を貫通する大きさに形成された摺動体用係合孔27を形成させた第1可動接片28と、可動接片支持体24の外周に周回させ第1可動接片で支持するように配置された第1可動接片用接触バネ29と、可動接片支持体24に設けた第2可動接片用係合孔25に収容され第1可動接片28を支持する棒状の第2可動接片26と、可動接片支持体24の内部に収容され、第2可動接片用係合孔25に収容されている第2可動接片26で支持するように配置された第2可動接片用接触バネ31と、第2可動接片26の下部位置で可動接片支持体24の両側に配置され、第2可動接片26と接触する第2固定接点32及び第1可動接片28の可動接点35と接触する第1固定接点33を備えた固定接片34と、から大略構成されている。
【0016】
第1可動接片28は、所謂、補助接片であり、長尺な平板部材の両先端側に銀が被覆(クラッド)されリベット状に形成された第1可動接点35を備え、中央位置に可動接片支持体24の外周を貫通する大きさの摺動体用係合孔27を備えている。
この第1可動接片28は、あくまでも、補助接片として機能するものであり、そのため仕様によっては、この第1可動接片28を機能させないようにすることが可能であり、その場合には第1可動接片28(第1可動接点35を含む)と第1固定接点33を削除した機構にしてもよい。
【0017】
第2可動接片26は、所謂、主接片であり、棒状に形成され、金メッキが施されているもので、両端部が第2固定接点32に押し当てて電気的な接続を得る第2可動接片接触部36を形成する。
そして、第2可動接片用係合孔25に収容されている第2可動接片26は、可動接片支持体24に嵌合している第1可動接片28を下部側で支持することで第1可動接片28の脱落を防止する構造となっている。
【0018】
固定接片34は、第1可動接片28の第1可動接点35及び第2可動接片26の第2可動接片接触部36とを同じ部材で接触するようにしたもので、従来技術で採用したものと同じく、導電性板部材を直角に折り曲げ、更に折り曲げた後端部側を更に反対方向の直角に折り曲げて形成され、基部の上端には中間位置をく字状に切欠いて第2可動接片26の第2可動接片接触部36と接触する可動接片当接部(第2固定接点)32を形成する。同様に、直角に折り曲げた水平位置部分に第1可動接片28のリベット状に形成した第1可動接点35に接触するリベット状の第1固定接点33を備えている。
【0019】
このような構成からなるスイッチにおいて、先ず、押しボタン22が押される前の状態は、押しボタン22に連設されている摺動体21が復帰バネ23に押されてハウジング11の内壁に押された状態を維持する。そのため、可動接片支持体24に取付けられている第1可動接片28及び第2可動接片26は固定接片34よりも上部位置に係止した状態となっている。
【0020】
この状態で、押しボタン22を押すと押しボタン22に連設されている摺動体21が復帰バネ23の付勢力に抗して下方向に押し下がり、それに連られて可動接片支持体24も下方向に移動し、先ず、第1可動接片28も下方向に移動し、第1可動接点35が第1固定接点33に接触する。
【0021】
更に連続して押しボタン22を押せば、更に摺動体21が下方向に押され、可動接片支持体24も連られて下方向に押し下げられることで、第2可動接片26の第2可動接片接触部36が固定接片34の第2固定接点32に接触する。この第2可動接片26の第2可動接片接触部36が第2固定接点32に接触したとき以後においては、第2可動接片用接触バネ31が第2可動接片28を押す方向に付勢することで、第2可動接片26の第2固定接点32への接触状態を良好に維持するように作用する。
【0022】
同様に、第1可動接片28の第1可動接点35が第1固定接点33に接触したとき以後においても、第1可動接片用接触バネ29が第1可動接片28を押す方向に付勢することで、第1可動接片28の第1固定接点33への接触状態を良好に維持する。
【産業上の利用可能性】
【0023】
押し当て方式の接点接触構造において、別途、補助接点を追加することにより主接点でのアーク対策を施す機構とした押しボタンスイッチを提供する。
【符号の説明】
【0024】
11 ハウジング
12 フレーム
13 ケース
21 摺動体
22 押しボタン
23 復帰バネ
24 可動接片支持体
25 第2可動接片用係合孔
26 第2可動接片
27 摺動体用係合孔
28 第1可動接片
29 第1可動接片用接触バネ
31 第2可動接片用接触バネ
32 第2固定接点
33 第1固定接点
34 固定接片
35 第1可動接点
36 第2可動接片接触部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内部に配設される一対の固定接片と、
前記ハウジングに進退可能に嵌合される押しボタンと、
前記押しボタンに連結され、第2可動接片をガイドして、前記固定接片の第2接点に接触させる摺動体と、
を備えた押しボタンスイッチであって、
前記摺動体には、前記第2可動接片をガイドして前記固定接片の第2接点に接触させる前に、第1可動接片をガイドして前記固定接片の第1接点に接触させる機構を備えたことを特徴とする押しボタンスイッチ。
【請求項2】
前記第1可動接片と第2可動接片は、同一軸上に設けたことを特徴とする請求項1に記載の押しボタンスイッチ。
【請求項3】
前記第2可動接片は、第1可動接片の脱落防止用部材も兼ねていることを特徴とする請求項2に記載の押しボタンスイッチ。
【請求項4】
同一部品において、前記第1可動接片を削除した機構が採用できるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の押しボタンスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−134036(P2012−134036A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285802(P2010−285802)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(301040796)佐鳥エス・テック株式会社 (26)
【Fターム(参考)】