説明

押出装置および押出方法

【課題】シリンダの内部空間の予備加熱に要する時間を短縮可能な技術を提供する。
【解決手段】押出装置30は、筒状のシリンダ71と、シリンダ71の内部空間Vに回転自在に配置されたスクリュー73と、内部空間Vを外周側から加熱する外部ヒータ72を備える。さらに、押出装置30は、スクリュー73に脱着可能に組み込まれたヒータ装置80を備える。ヒータ装置80は、例えば、スクリュー73の中空の軸部Qに抜き差し可能なヒータ棒81を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ内で材料を溶融させるとともにスクリューで混練して押し出す押出装置、および、押出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
押出装置の構成例として、例えば特許文献1には、シリンダの外壁に配置されたヒータとスクリューの軸内に配置されたヒータとでシリンダ内部を加熱しながらシリンダ内に投入された材料を溶融させて、スクリューで材料を混練して押し出す構成が開示されている。
【0003】
ここで、スクリューを回転させて材料を押し出し吐出する押し出し動作において、スクリューは剪断熱により徐々に熱くなっていく。特許文献1のように、押し出し動作の間にスクリューを軸内からヒータで加熱する構成によると、剪断熱とヒータからの熱とによってスクリューの付近が非常に高温になるため、スクリューの周囲で一部の材料が過度に加熱され、材料の吐出が不安定になるおそれがある。
【0004】
一方で、スクリューの軸にはヒータを設けず、シリンダの外壁に配置されたヒータだけを用いて押し出し動作を行う構成も従来多く採用されている。この構成は、特許文献1のようにスクリューの軸部にヒータを設ける構成と比べると押出動作時にスクリューが昇温しにくく、安定した吐出が担保されやすいという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−309647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、押出装置において安定的な材料の吐出を担保するためには、押し出し動作の開始に先だってシリンダの内部空間を十分に予備加熱しておくことも重要である。というのも、シリンダの内部空間が十分に暖まっていない状態で押し出し動作が開始されてしまうと、シリンダ内に投入された材料の一部が溶け残り、吐出量にムラが生じてしまうからである。ところが、シリンダの外壁に配置されたヒータだけを用いて予備加熱を行おうとすると、シリンダの内部空間が十分に暖まるまでに非常に長い時間がかかってしまう。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされてものであり、シリンダの内部空間の予備加熱に要する時間を短縮可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様は、押出装置であって、筒状のシリンダと、前記シリンダの内部空間に回転自在に配置されたスクリューと、前記内部空間を外周側から加熱する外部ヒータと、前記スクリューに脱着可能に組み込まれる内部ヒータと、を備える。
【0009】
第2の態様は、第1の態様に係る押出装置であって、前記スクリューが、中空の軸部、を備え、前記内部ヒータが、前記スクリューの軸部に形成された中空部位に抜き差しされることによって、前記スクリューに脱着される。
【0010】
第3の態様は、第1または第2の態様に係る押出装置であって、前記内部ヒータとこれを制御する制御部とを含む内部ヒータユニットが、前記シリンダ、前記スクリューおよび前記外部ヒータを内部に配置する筐体と分離可能に構成される。
【0011】
第4の態様は、押出方法であって、a)筒状のシリンダの内部空間を予備加熱する工程と、b)予備加熱された前記内部空間に材料を投入するとともに、前記内部空間に配置されたスクリューを回転させて前記材料を前記内部空間から押し出す工程と、を備え、前記a)工程が、前記スクリューを介して前記内部空間を加熱しつつ、前記内部空間を外周側から加熱する工程、を備える。
【0012】
第5の態様は、第4の態様に係る押出方法であって、前記スクリューを介しての前記内部空間の加熱が、前記スクリューの軸部に形成された中空部位に差し込まれた内部ヒータで前記スクリューを加熱することによって行われる。
【0013】
第6の態様は、第5の態様に係る押出方法であって、前記b)工程を、前記内部ヒータを前記スクリューの軸部から抜き出した状態で行う。
【発明の効果】
【0014】
第1〜第3の態様によると、シリンダの内部空間を外周側から加熱する外部ヒータと、スクリューに脱着可能に組み込まれた内部ヒータとを備える。この構成によると、外部ヒータと内部ヒータとを用いてシリンダの内部空間の予備加熱を行うことができるので、シリンダの内部空間を速やかに予備加熱することができる。また、内部ヒータをスクリューから取り外せば、スクリューに余熱がこもらずスクリューの加熱状態を速やかに停止することができる。
【0015】
特に、第2の態様によると、内部ヒータが、スクリューの軸部に形成された中空部位に抜き差しされることによってスクリューに脱着されるので、内部ヒータをスクリューの軸部から引き抜いた状態とすれば、スクリューの熱が中空部位から放散されるため、スクリューが昇温しにくい。
【0016】
特に、第3の態様によると、内部ヒータとこれを制御する制御部とを含む内部ヒータユニットが、シリンダ、スクリューおよび外部ヒータを内部に配置する筐体と分離可能に構成されるので、内部ヒータユニットを、複数の押出装置の間で共用することができる。
【0017】
第4〜6の態様によると、シリンダの内部空間を予備加熱する工程が、スクリューを介して内部空間を加熱しつつ内部空間を外周側から加熱する工程を備える。この構成によると、内部空間をスクリュー側と外周側との両方から温めるので、シリンダの内部空間を速やかに予備加熱することができる。
【0018】
特に、第6の態様によると、スクリューの軸部に形成された中空部位から内部ヒータが抜き出された状態で、スクリューを回転させて材料を内部空間から押し出す工程が行われる。この構成によると、回転されるスクリューの熱が中空部位から放散されるため、スクリューが昇温しにくい。これによって、材料を常に安定して押し出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】電線被覆装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】スクリューシリンダの構成を模式的に示す側面図である。
【図3】スクリューシリンダの正面図である。
【図4】内部ヒータユニットの構成を模式的に示す図である。
【図5】ヒータ棒がスクリューに組み込まれた状態を示す図である。
【図6】押出装置において実行される処理の流れを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0021】
<1.全体構成>
電線被覆装置1の全体構成について、図1を参照しながら説明する。図1は、電線被覆装置1の構成を模式的に示す図である。
【0022】
電線被覆装置1は、被覆電線を製造する装置であり、例えば、導体91を引き伸ばして小径化する伸線機10と、導体91をアニール(焼鈍)する焼鈍機20と、導体91に絶縁被覆を施して被覆電線92とする押出装置30と、被覆電線92を冷却する冷却機40と、被覆電線92を巻き取る巻取機50とを備える。
【0023】
この電線被覆装置1においては、まず、導体91を例えば巻回状態で収容する金属線収容部(図示省略)から引き出された導体91が、伸線機10にて小径化され、さらに、焼鈍機20でアニールされる。アニールされた導体91は、続いて、押出装置30にて絶縁被覆を施されて被覆電線92とされる。被覆電線92は、冷却機40にて冷却された後に、巻取機50に巻き取られる。
【0024】
<2.押出装置30の構成>
押出装置30の構成について、引き続き図1を参照しながら説明する。
【0025】
押出装置30は、ペレット状の樹脂あるいはペレット状の樹脂組成物(以下単に「ペレット状樹脂」という)9を入れるホッパ31と、ホッパ31を介して投入されたペレット状樹脂9を溶融させるとともに混練して押し出すスクリューシリンダ32と、スクリューシリンダ32から押し出された樹脂を導体91の外側に被覆するクロスヘッド33とを備える。これら各部31,32,33は筐体300内の定位置に配置される。また、押出装置30は、筐体300内に配置され、ホッパ31、スクリューシリンダ32、および、クロスヘッド33の各部を制御する制御部34を備える。さらに、押出装置30は、筐体300と分離可能に構成された(具体的には、スクリューシリンダ32に脱着可能に設けられた)内部ヒータユニット35(図4、図5)を備える。内部ヒータユニット35が備える各部は、制御部34とは別の制御部(内部ヒータ制御部)85により独立して制御される。
【0026】
この押出装置30において、ホッパ31にペレット状樹脂9が投入されると、当該ペレット状樹脂9はスクリューシリンダ32にて溶融され、さらに撹拌・混練されて、クロスヘッド33に押し出され、クロスヘッド33において導体91の外側に被覆される。
【0027】
<2−1.スクリューシリンダ32>
押出装置30が備えるスクリューシリンダ32の構成について、図2、図3を参照しながら説明する。図2は、スクリューシリンダ32の構成を模式的に示す側面図である。図3は、スクリューシリンダ32を図2の矢印K方向からみた正面図である。なお、説明をわかりやすくするため、図2においてシリンダ71は断面状態で示されている。
【0028】
スクリューシリンダ32は、円筒形のシリンダ71と、外部ヒータ72と、スクリュー73と、駆動部74とを備える。外部ヒータ72および駆動部74は、制御部34と電気的に接続されており、制御部34からの指示に応じて動作する。
【0029】
シリンダ71は、長尺の円筒状の外形を有し、その筒内部に内部空間Vを形成する。内部空間Vの先端側は窄まりながらクロスヘッド33(図1)に連なっている。
【0030】
外部ヒータ72は、内部空間Vを外周側から加熱する加熱装置であり、例えば、通電により発熱する抵抗加熱体により構成される。外部ヒータ72は、例えば、シリンダ71の周壁に埋設された円筒状のヒータにより構成される。ただし、外部ヒータ72の態様はこれに限られるものではなく、例えば、シリンダ71の外周に巻回されたバンドヒータにより構成してもよい。
【0031】
外部ヒータ72は、制御部34において例えばマイクロコンピュータにより構成される温度制御部によって温度制御される。制御部34は、具体的には、例えばシリンダ71の内壁に設けられた温度センサ(図示省略)が検出した温度が目標温度より高いか低いかを判断し、検出された温度が目標温度よりも低い場合は外部ヒータ72をオン状態(通電状態)とし、検出された温度が目標温度よりも高い場合は外部ヒータ72をオフ状態(非通電状態)とする。
【0032】
スクリュー73は、例えば金属により形成される長尺部材であり、シリンダ71の内部空間Vに配置される。スクリュー73は、回転軸Tに沿って延在する長尺円筒状のシャフト部731と、シャフト部731の外周に螺旋状に配設されたフライト732とを備える。シャフト部731の軸部Qは中空とされ、この中空の軸部Qに後述するヒータ棒81が挿入可能とされる。
【0033】
駆動部74は、スクリュー73を回転軸Tを中心に回転させる回転駆動力を与える。駆動部74は、例えば、スクリュー73の中空の軸部Qの開口を塞がないような位置に配置されたモータ741と、モータ741の回転駆動力をスクリュー73に伝達する機構(具体的には、例えば、モータの回転軸部とスクリュー73との間に巻掛されたベルト742)とから構成することができる。
【0034】
<2−2.内部ヒータユニット35>
内部ヒータユニット35の構成について、図4を参照しながら説明する。図4は、内部ヒータユニット35の構成を模式的に示す図である。
【0035】
内部ヒータユニット35は、ヒータ棒81と、グリップ部82と、ツバ部83と、温度センサ84と、内部ヒータ制御部85とを備える。
【0036】
ヒータ棒81は、スクリュー73に脱着可能に組み込まれる加熱装置であり、例えば、通電により発熱する抵抗加熱体により構成される。ヒータ棒81は、長尺円柱形状に形成され、その外径サイズは、スクリュー73の中空の軸部Qの径サイズよりも僅かに小さく形成されている。これによって、ヒータ棒81は、スクリュー73の軸部Qに形成された中空部位に抜き差し可能となり、中空の軸部Qに抜き差しされることによってスクリュー73に脱着される。
【0037】
グリップ部82は、ヒータ棒81の長尺方向に沿う端部につなぎ部820を介して連ねられている。グリップ部82は断熱性の高い部材により形成されており、ヒータ棒81が昇温した状態においても、オペレータが安全にグリップ部82を把持できるようになっている。
【0038】
ツバ部83は、ヒータ棒81の外周からはみ出すように出っ張って形成されたフランジ状の部分であり、ヒータ棒81の自由端部から定められた長さdの位置に設けられる。ツバ部83の配設位置を規定する長さdは、スクリュー73の中空の軸部Qの長尺方向に沿う長さよりも短いものとされる。ヒータ棒81がスクリュー73の軸部Qに差し込まれた状態において、ツバ部83がスクリュー73の開口端に当接することによって、ヒータ棒81がそれ以上軸部Qの奥側に深く差し込まれないように規制される。
【0039】
温度センサ84は、ヒータ棒81の温度を検出するセンサであり、ヒータ棒81の所定箇所に設けられる。温度センサ84は、その検出信号を内部ヒータ制御部85に出力可能に構成されている。
【0040】
内部ヒータ制御部85は、グリップ部82の端部に設けられたコネクタ850を介して、ヒータ棒81への給電線および温度センサ84からの導線(いずれも図示省略)と接続されている。また、内部ヒータ制御部85は、オペレータからの各種の指示を受け付ける操作パネル851を備えており、オペレータから各種の入力を受け付ける。内部ヒータ制御部85は、例えば、マイクロコンピュータを含む構成され、オペレータから入力された指示、温度センサ84からの検出情報等に応じて、ヒータ棒81の温度を制御する。より具体的には、内部ヒータ制御部85は、温度センサ84が検出しヒータ棒81の温度が目標温度より高いか低いかを判断し、検出された温度が目標温度よりも低い場合はヒータ棒81をオン状態(通電状態)とし、検出された温度が目標温度よりも高い場合はヒータ棒81をオフ状態(非通電状態)とする。これによって、ヒータ棒81は常に目標温度とほぼ一致した状態に保たれることになる。
【0041】
<2−3.ヒータ棒81の組み込み>
ヒータ棒81がスクリュー73に組み込まれた状態について、図5を参照しながら説明する。図5は、ヒータ棒81がスクリュー73に組み込まれた状態を模式的に示す断面図である。なお、説明をわかりやすくするため、図5においてシリンダ71は断面状態で示されている。
【0042】
オペレータは、グリップ部82を把持して、ヒータ棒81をスクリュー73の軸部Qに差し込み、その開口端にツバ部83が当接した状態とすることによって、ヒータ棒81をスクリュー73に組み込むことができる。ヒータ棒81がスクリュー73に組み込まれた状態において、内部ヒータ制御部85がヒータ棒81をオン状態(通電状態)とすると、ヒータ棒81からの熱を受けてスクリュー73が昇温し、スクリュー73を介してシリンダ71の内部空間Vが温められる。
【0043】
なお、ヒータ棒81は、上述したとおり、中空の軸部Qから抜き差し可能に構成されている。オペレータは、グリップ部82を把持して軸部Qに差し込まれたヒータ棒81を軸部Qから引き抜くことによって、ヒータ棒81をシリンダ71から取り外すことができる。また、ヒータ棒81をシリンダ71から取り外した状態とすれば、内部ヒータユニット35を押出装置30と分離させることができる。
【0044】
<3.押出装置30の動作>
押出装置30において実行される処理の流れについて、図6を参照しながら説明する。図6は、当該処理の流れを説明するための図である。
【0045】
まず、内部空間Vの予備加熱が行われる。内部空間Vの予備加熱においては、まず、ヒータ棒81がスクリュー73に組み込まれた状態(すなわち、ヒータ棒81がスクリュー73の中空の軸部Qに差し込まれた状態)とされ(図4)、この状態で、内部ヒータ制御部85がヒータ棒81をオン状態として、これを定められた設定温度まで昇温させる(ステップS11)。すると、ヒータ棒81からの熱を受けてスクリュー73が暖機される。さらに、スクリュー73からの熱を受けてシリンダ71の内部空間Vが中心軸側から温められる。つまり、内部空間Vは、スクリュー73を介して加熱される。
【0046】
ヒータ棒81がオン状態とされてから定められた時間が経過すると、内部ヒータ制御部85がヒータ棒81を定められた設定温度に維持し続ける一方で、制御部34が外部ヒータ72をオン状態としてこれを定められた設定温度まで昇温させる(ステップS12)。すると、内部空間Vは、スクリュー73を介して加熱されるとともに、外部ヒータ72からの熱を受けて外周側からも加熱される。これによって、内部空間Vは、速やかに均一な温度分布で予備加熱された状態となる。
【0047】
内部空間Vが定められた予備加熱温度まで昇温すると、内部空間Vの予備加熱が終了する。内部空間Vの予備加熱が終了すると、内部ヒータ制御部85がヒータ棒81をオフ状態(非通電状態)とする。さらに、ヒータ棒81がスクリュー73の中空の軸部Qから引き抜かれた状態とされる(図2)(ステップS13)。ヒータ棒81をスクリュー73から取り外すと、スクリュー73に余熱がこもらずスクリュー73の加熱状態を速やかに停止することができる。ただし、この間も、制御部34は外部ヒータ72を定められた設定温度に維持し続ける。
【0048】
続いて、押出動作が行われる(ステップS14)。押出動作においては、制御部34が外部ヒータ72を定められた設定温度に維持し続ける一方で、予備加熱された内部空間Vにホッパ31を介してペレット状樹脂9が投入されるとともに、制御部34が駆動部74にスクリュー73の回転を開始させる(ステップS14)。ホッパ31から投入されたペレット状樹脂9は、内部空間Vにおいて溶融され、回転するフライト732とシリンダ71の内壁面とから剪断応力を受けて撹拌および混練されながら、シリンダ71の先端から押し出される。シリンダ71から押し出された溶融樹脂は、クロスヘッド33の内部に圧入され、クロスヘッド33において導体91の外側に被覆されることになる(図1)。
【0049】
上述したとおり、内部空間Vは予め定められた予備加熱温度まで昇温されており、スクリュー73も予め暖機された状態となっているため、押出動作が開始されると、ペレット状樹脂9は速やかかつ確実に溶融されてクロスヘッド33に押し出される。つまり、スクリュー73の回転が開始されてから、ごく短い時間(例えば15分程度)で、クロスヘッド33から樹脂が安定的に吐出されはじめる。
【0050】
なお、スクリュー73は、回転が開始されてから時間が経過するにつれて剪断熱により熱を持ってくる。ただし、押出動作において、スクリュー73は、その中空の軸部Qからヒータ棒81が引き抜かれて空芯状態となっているため、この中空部位から熱が放散されてスクリュー73の昇温が抑制される。スクリュー73が過度に昇温してしまうと、スクリュー73の付近だけで樹脂が高温になりすぎ、安定的に樹脂が吐出されない可能性があるところ、上記の構成においては、スクリュー73が昇温しにくいためにこのような好ましくない温度分布が形成されにくい。したがって、時間が経過しても、クロスヘッド33から樹脂が安定的に吐出され続ける。
【0051】
<4.効果>
上記の実施の形態によると、シリンダ71の内部空間Vを外周側から加熱する外部ヒータ72と、スクリュー73に脱着可能に組み込まれた内部ヒータユニット35とを備える。この構成によると、外部ヒータ72と内部ヒータユニット35が備えるヒータ棒81とを用いて内部空間Vの予備加熱を行うことができるので、内部空間Vを速やかに予備加熱することができる。内部空間Vを速やかかつ十分に予備加熱することによって、材料の溶け残りが生じやすい条件(例えば、ウレタン等の比較的溶けにくい材料を用いる場合、スクリュー73の長尺方向の長さが比較的短い押出装置30を用いる場合等)においても、材料を確実に溶融させることができる。
【0052】
特に、上記の実施の形態においては、ヒータ棒81がスクリュー73に脱着可能に形成されており、予備加熱が完了すると、ヒータ棒81がスクリュー73から取り外される。したがって、予備加熱が完了するとスクリュー73の加熱状態を速やかに停止することができる。
【0053】
また、上記の実施の形態においては、ヒータ棒81が、スクリュー73の軸部Qに形成された中空部位に抜き差しされることによってスクリュー73に脱着されるので、ヒータ棒81をスクリュー73の軸部Qから引き抜いた状態とすれば、スクリュー73の熱が中空部位から放散される。したがって、上述したように、押し出し動作の実行中はヒータ棒81をスクリュー73から取り外した状態としておけば、回転されるスクリュー73の熱が中空部位から放散されるため、スクリュー73が昇温しにくく、これによって樹脂を常に安定して押し出すことができる。
【0054】
また、上記の実施の形態においては、内部ヒータユニット35は、シリンダ71、スクリュー73および外部ヒータ72等を内部に配置する筐体300と分離可能に構成されるので、内部ヒータユニット35を、複数の押出装置30の間で共用することができる。すなわち、第1の押出装置30において、内部ヒータユニット35を用いた予備加熱が完了し、内部ヒータユニット35を取り外して押出動作が開始されると、当該内部ヒータユニット35を用いて今度は第2の押出装置30の予備加熱を行うことができる。
【0055】
また例えば、スクリュー73がシリンダ71に対して脱着可能に構成されている場合、シリンダ71から取り外された状態のスクリュー73において、スクリュー73の暖機を行うことも可能である。例えば、押出装置30において材料となる樹脂を第1の樹脂(樹脂A)から第2の樹脂(樹脂B)に変更する場合、押出装置30で樹脂Aの押出動作が行われている間に、これとは別の場所で、樹脂Aの押出動作に用いられているスクリュー73とは別のスクリュー73の中空の軸部Qにヒータ棒81を挿入してこれをオン状態として、スクリュー73の暖機を開始することができる。こうしておけば、押出装置30において樹脂Aの押出動作が終了し、シリンダ71の洗浄が完了すると、別の場所で予め暖機されているスクリュー73をこのシリンダ71に装着して予備加熱を行うことができる。ここではスクリュー73が予め暖機されているので、予備加熱に要する時間が短縮される。
【0056】
<5.変形例>
上記の実施形態においては、内部ヒータユニット35は、筐体300と分離可能に構成されており、制御部34と内部ヒータ制御部85とは、互いに別体に構成されるものとしたが、各制御部34,85は一体に形成されてもよい。また、各制御部34,85を統括的に制御する統括制御部をさらに設ける構成としてもよい。
【0057】
また、上記の実施の形態においては、スクリュー73は一軸のものを例示したが、二軸あるいは三軸のものであってもよい。
【0058】
また、上記の実施の形態においては、押出装置30は、被覆電線の製造に供されるとしたが、押出装置30はそれ以外の用途に用いられてもよい。
【符号の説明】
【0059】
30 押出装置
32 スクリューシリンダ
34 制御部
35 内部ヒータユニット
71 シリンダ
72 外部ヒータ
73 スクリュー
74 駆動部
81 ヒータ棒
82 グリップ部
83 ツバ部
84 温度センサ
85 内部ヒータ制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のシリンダと、
前記シリンダの内部空間に回転自在に配置されたスクリューと、
前記内部空間を外周側から加熱する外部ヒータと、
前記スクリューに脱着可能に組み込まれる内部ヒータと、
を備える押出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の押出装置であって、
前記スクリューが、中空の軸部、を備え、
前記内部ヒータが、前記スクリューの軸部に形成された中空部位に抜き差しされることによって、前記スクリューに脱着される、
押出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の押出装置であって、
前記内部ヒータとこれを制御する制御部とを含む内部ヒータユニットが、前記シリンダ、前記スクリューおよび前記外部ヒータを内部に配置する筐体と分離可能に構成される、
押出装置。
【請求項4】
a)筒状のシリンダの内部空間を予備加熱する工程と、
b)予備加熱された前記内部空間に材料を投入するとともに、前記内部空間に配置されたスクリューを回転させて前記材料を前記内部空間から押し出す工程と、
を備え、
前記a)工程が、
前記スクリューを介して前記内部空間を加熱しつつ、前記内部空間を外周側から加熱する工程、
を備える、押出方法。
【請求項5】
請求項4に記載の押出方法であって、
前記スクリューを介しての前記内部空間の加熱が、前記スクリューの軸部に形成された中空部位に差し込まれた内部ヒータで前記スクリューを加熱することによって行われる、押出方法。
【請求項6】
請求項5に記載の押出方法であって、
前記b)工程を、前記内部ヒータを前記スクリューの軸部から抜き出した状態で行う、押出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−22928(P2013−22928A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162677(P2011−162677)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】