説明

抽斗付き筐体

【課題】前部抽斗を引出したとき後部抽斗の存在を知られることがなく、かつ後部抽斗を引出す場合の引出し操作の操作性を向上させる。
【解決手段】前部抽斗1と、この前部抽斗1より高さの低い後部抽斗2を曲折可能な連結材3により連結し、筐体4の収納部4aの開口部にはストッパ4bを設けて、筐体4の収納部4aから前部抽斗1を引出したとき、前部抽斗1の後部板1bの上端がストッパ4bに突当たって抜け止めがなされ、更に後部抽斗2を引出す場合は、前部抽斗1の前部側を持ち上げることにより前部抽斗1を回転させると、前部抽斗1の後部板1bの上端が収納部4aのストッパ4bの下側を潜り抜けて後部抽斗2を引出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小物入れや、家具、事務用品等の抽斗付きの筐体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の抽斗付き筐体として、例えば、特許文献1に示されるものがある。
この特許文献1の抽斗付き筐体(隠し抽斗つき収納家具)は、外箱の正面から出し入れする抽斗を、取っ手を有する前部抽斗と取っ手のない後部抽斗とに分離すると共に、後部抽斗は外箱の背壁内面と略同じ表面状態に見えるような材質及び色彩として、前部抽斗を外箱から引き抜いたとき、貴重品等を入れる後部抽斗の存在が気づかれないようにし、後部抽斗を引出す場合は、後部抽斗の前面に吸盤を吸着させて引出せるようにしている。
【特許文献1】実開平04−120637号公報(第3頁第18行〜第4頁26行、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来の技術においては、後部抽斗を引出す場合は、前部抽斗を外箱から引き抜いてから、吸盤を使って引出さなければならないため、操作性が悪いという問題がある。
本発明は、このような問題を解決し、後部抽斗の存在を知られることなく引出し操作の操作性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そのため、本発明は、前部抽斗と後部抽斗を筐体の収納部に収納してなる抽斗付き筐体において、前記前部抽斗の高さより前記後部抽斗の高さを低くすると共に、前記前部抽斗をその後部側上部を中心に回動し得るように前記前部抽斗の後部側上部と前記後部抽斗の前部側上部を連結材により連結し、前記収納部の開口部上部に前記前部抽斗の後部内面が突当たるストッパを設け、このストッパの突出長を前記前部抽斗を回動させたとき、前記前部抽斗の後部上端が潜り抜けられる長さとしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
このようにした本発明は、前部抽斗を引出したとき、前部抽斗の後部板の上端がストッパに突当たって抜け止めがなされるため、前部抽斗を引出しても高さの低い後部抽斗の存在を知られることがなく、また後部抽斗を引出す場合は、前部抽斗の前部側を持ち上げることにより前部抽斗を回転させると、前部抽斗の後部板の上端が収納部のストッパの下側を潜り抜けて後部抽斗を引出せるので、前部抽斗の引出し操作と連続的な操作で後部抽斗を引出すことができることになり、引出し操作の操作性が向上するという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図面を参照して本発明による抽斗付き筐体の実施例を説明する。
【実施例】
【0007】
図1は実施例を示す断面図、図2は実施例における抽斗の斜視図である。
図において1は前部抽斗、2は後部抽斗、3は前部抽斗1の後部と後部抽斗2の前部を連結している曲折可能な連結材、4は連結された前部抽斗1と後部抽斗2を収納する収納部4aを有する筐体である。
前部抽斗1の前部板の正面には把手1aが設けられ、また後部板1bの下端角部には面取り1cが施されている。この面取り1cは後述する前部抽斗1の回転を容易にするためのもので、面取り1bの代わりに湾曲面にしてもよい。
【0008】
後部抽斗2は前部抽斗1より奥行き方向の寸法を短くし、かつ高さも前部抽斗1より低くしてあって、後述するストッパに係合しないようにしてある。
連結材3は、繰返しの折り曲げに対して切断しにくくかつ可撓性あるいは柔軟性を有する紙、布、革、プラスチックフィルム等のシート材で形成されており、このシート材による連結材3は前部抽斗1及び後部抽斗の内寸幅と同等の幅を有し、前部抽斗1の後部板上面と後部抽斗2の前部板上面を跨がせるようにして、一端を前部抽斗1の後部板1bの内面に、他端を後部抽斗2の前部板2aの内面にそれぞれ接着剤等で固定することにより前部抽斗1と後部抽斗2を連結している。
【0009】
筐体4には、前部抽斗1と後部抽斗2の数に応じて収納部4aが設けられている。収納部4aは前部を開口し、高さ及び幅は前部抽斗1の高さ及び幅に合わせて大きな隙間が生じないように形成されており、そして収納部4aの開口部上面側には前部抽斗1の後部板の上端が突当たりかつ後部抽斗2は当たらない突出長としたストッパ4bが下方に向けて突出形成されている。
【0010】
このような構成による抽斗付き筐体の作用について説明する。
連結材3により連結された前部抽斗1と後部抽斗2を筐体4の収納部4aに収納した状態において、前部抽斗1の把手1aを持って直線的に引出してゆくと、連結材3により前部抽斗1に連結された後部抽斗2も移動し、そして前部抽斗1が収納部4aから抜ける直前で、図1に示したように前部抽斗1の後部板1bの上端が収納部4aの開口部にあるストッパ4bに突当たるため、前部抽斗1は抜け止めされて、それ以上引出せない状態になる。
【0011】
この状態では、前部抽斗1の直後に存在する後部抽斗2の高さは、前部抽斗1より若干低く形成してあるので、前部抽斗1と収納部4aの開口部との間に少々の隙間があっても、前部抽斗1側から後部抽斗2は見えず、そのため他人が前部抽斗1を引出したとしても後部抽斗2の存在が知られることはないので、後部抽斗2を貴重品等の収納に利用することができる。
【0012】
後部抽斗2を収納部4aから引出すには、前記のように前部抽斗1の後部板1bの上端が収納部4aのストッパ4bに突当たるまで引出した後、前部抽斗1の前部側を持ち上げると、連結部材4が曲折可能であるので前部抽斗1は後部板1bの上端部を中心に図1に二点鎖線で示したように回転して傾く。
このとき、前部抽斗1の後部板1bの下端部に面取り1cが施してあるので、前部抽斗1の後部板1b収納部4aの底面により回転を妨げられることなく、スムーズに回転することができる。
【0013】
これにより前部抽斗1の後部板1bの上端が収納部4aのストッパ4bの下側を潜り抜けるので、そのまま前部抽斗1を引出すと、後部抽斗2はストッパ4bに突当たることなく収納部4aから引出される。
前部抽斗1を筐体4の収納部4aに再び収納させるには、まず前部抽斗1を押して後部抽斗2を収納部4aに押し込み、前部抽斗1の後部板1bの上端が収納部4aのストッパ4bに当たる位置で前部抽斗1を図1に二点鎖線で示したように傾け、引出し時と逆に前部抽斗1を下方に回転させる。
【0014】
これにより前部抽斗1の後部板1bの上端が収納部4aのストッパ4bの下側を潜り抜けるので、そのまま前部抽斗1を押し込むことで、前部抽斗1は収納部4aに収納させることができる。
以上説明した実施例によれば、前部抽斗1と、この前部抽斗1より高さの低い後部抽斗2を曲折可能な連結材3により連結し、筐体4の収納部4aの開口部にはストッパ4bを設けて、筐体4の収納部4aから前部抽斗1を引出したとき、前部抽斗1の後部板1bの上端がストッパ4bに突当たって抜け止めがなされるようにしているため、前部抽斗1を引出しても高さの低い後部抽斗2の存在を知られることがなく、また後部抽斗2を引出す場合は、前部抽斗1の前部側を持ち上げることにより前部抽斗1を回転させると、前部抽斗1の後部板1bの上端が収納部4aのストッパ4bの下側を潜り抜けて後部抽斗2を引出せるので、前部抽斗1の引出し操作と連続的な操作で後部抽斗2を引出すことができることになり、引出し操作の操作性が向上するという効果が得られる。
【0015】
図3及び図4は本発明の別の実施例を示す要部側面図である。
上述した図1、図2の実施例では、曲折可能な連結材3の前端側を前部抽斗1の後部板1bの内面に、後端側を後部抽斗2の前部板2aの内面にそれぞれ接着剤等で固定することにより前部抽斗1と後部抽斗2を連結しているため、前部抽斗1を引出したとき、連結材3が見える恐れがある。
【0016】
これを解決するには前部抽斗1の内面と連結材3に同一の彩色を施すことが有効であるが、図3に示したように連結材3の前端側を前部抽斗1の後部板1bの外面に接着剤等で固定し、後端側を後部抽斗2の前部板2aの上面を跨ぐように内面に導いて接着剤等で固定すれば、前部抽斗1を引出したときに連結材3は見えなくなるので、彩色の必要はなくなる。
【0017】
また、前部抽斗1と後部抽斗2及び筐体4が大型である場合、連結材3に強度が求められるので、このような場合図4に示したように連結材3として蝶番を用い、中心軸3aを境とした一方の回転可能な取付け板3bを前部抽斗1の後部板1bの外面に固定し、他方の回転可能な取付け板3cを後部抽斗2の前部板2aの外面に固定する構成としてもよい。
【0018】
この場合中心軸は後部抽斗2の前部板2aの上端にくるようにする。
図3及び図4のいずれの構造においても、上述した図1および図2の実施例と同様の操作で、前部抽斗1と後部抽斗2の引出し収納を行うことができ、同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】発明の実施例を示す断面図
【図2】実施例における抽斗の斜視図
【図3】発明の別の実施例を示す要部側面図
【図4】発明の別の実施例を示す要部側面図
【符号の説明】
【0020】
1 前部抽斗
1a 把手
1b 後部板
1c 面取り
2 後部抽斗
2a 前部板
3 連結材
3a 中心軸
3b 取付け板
4 筐体
4a 収納部
4b ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前部抽斗と後部抽斗を筐体の収納部に収納してなる抽斗付き筐体において、
前記前部抽斗の高さより前記後部抽斗の高さを低くすると共に、前記前部抽斗をその後部側上部を中心に回動し得るように前記前部抽斗の後部側上部と前記後部抽斗の前部側上部を連結材により連結し、
前記収納部の開口部上部に前記前部抽斗の後部上端が突当たるストッパを設け、このストッパの突出長を前記前部抽斗を回動させたとき、前記前部抽斗の後部上端が潜り抜けられる長さとしたことを特徴とする抽斗付き筐体。
【請求項2】
請求項1記載の抽斗付き筐体において、
前記連結材は折曲可能なシート材とし、このシート材を前記前部抽斗の後部側上端と前記後部抽斗の前部側上端を跨がせるようにして一端を前記前部抽斗の後部側内面に固定すると共に他端を前記後部抽斗の前部側内面に固定したことを特徴とする抽斗付き筐体。
【請求項3】
請求項1記載の抽斗付き筐体において、
前記連結材は折曲可能なシート材とし、このシート材を前記後部抽斗の前部側上端を跨がせるようにして一端を前記前部抽斗の後部側外面に固定すると共に他端を前記後部抽斗の前部側内面に固定したことを特徴とする抽斗付き筐体。
【請求項4】
請求項1記載の抽斗付き筐体において、
前記連結材は折曲可能な蝶番とし、この蝶番の一方の取付け板を前記前部抽斗の後部側外面に固定すると共に他方の取付け板を前記後部抽斗の前部側外面に固定したことを特徴とする抽斗付き筐体。
【請求項5】
請求項1記載の抽斗付き筐体において、
前記前部抽斗の後部側下端の角部を面取りするか曲面にしたことを特徴とする抽斗付き筐体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−151710(P2007−151710A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−348850(P2005−348850)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【出願人】(505447685)
【Fターム(参考)】