説明

拡張器ローディングカテーテル

気管切開術用拡張器を除去するためのデバイスが提供される。前記拡張器は、本体部と、本体部に対して着脱可能な先端部とを含む。気管瘻孔の拡張後、本体部は除去され、先端部のみが気管内に残される。本デバイスは、拡張器先端部の近位端に対して連結するように構成された遠位端と、近位把持部と、それらの間に位置する管状中間部とを含む。本デバイスは内部にカニューレを有している。近位把持部は、気管切開チューブの近位端に着脱可能に結合させることができる。遠位端及び中間部は、気管切開チューブのカニューレ内に嵌合するような大きさに形成されている。遠位端及び中間部を気管切開チューブに挿入した後、遠位端を拡張器先端部の近位端に連結させる。このアセンブリ全体が気管内に挿入される。気管切開チューブの挿管後、ローディングカテーテル及び拡張器先端部は気管切開チューブを通じて引き出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡張器ローディングカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
医療現場では、ベンチレータまたはレスピレータを用いて患者の肺の機械的換気が行われる。上記の人工呼吸器は、患者に換気ガスを供給するためのホースセット、すなわち換気用チューブ若しくはチューブ回路に接続される。換気用チューブの患者側端部は、通常、患者の下気道への直接的かつ確実なアクセスを可能にする気管換気カテーテル若しくはチューブに接続される。気管カテーテルは、気管壁と気管換気チューブシャフトとの間を塞ぎ、肺の陽圧換気を可能にする膨張式のシーリングバルーン要素、すなわち「カフ」を備えている。
【0003】
一般的に、患者の挿管チューブを、気管壁に形成された瘻孔から気管内に直接挿管される気管切開チューブに切り替える決定がなされるまでは、気管カテーテルの一種であり口から挿管される気管内チューブ(ETチューブ)が何日間も使用される。気管内チューブはいくつかの研究において人工呼吸器関連肺炎(VAP)の発症率の増加と関連付けられているため、気管切開術はますます増えつつあり、かつVAPの発生率を減少させるために入院中の早い時期に行われるようになってきている。
【0004】
気管切開手技は、気管へのアクセスを可能にするために、首(頸部)の皮膚に小さい横切開部を形成することを伴う。気管は生体器官としては特に高い柔軟性及び弾性を有するので、気管壁の一部を切除して開口部を形成するよりも、気管壁に小孔を形成した後にその孔を拡張する方が、早期に治癒することが分かっている。皮膚の切開後、止血鉗子または他の手段を用いて皮下組織を分離して気管へのアクセスできるようにし、その後、指診によって気管軟骨輪を見つける。通常はETチューブ内に気管支鏡を挿入し、気管支鏡の光が切開部位を経皮的に照らす位置にくるまで気管からETチューブを引き出していく。シース付きの針を用いて、通常は第2気管軟骨輪と第3の気管軟骨輪との間の気管壁を穿刺する。シースを残して針を抜去し、針の代わりに曲がりやすいガイドワイヤ(Jワイヤとも呼ばれる)を挿入して、その後シースを抜去する。気管壁を傷つけないように、気管支鏡を用いて気管内から手技の進行を観察する。ガイドワイヤに沿わせて小型(例えば14フレンチ)のイントロデューサ拡張器を導入して最初の気管拡張を行い、その後、拡張器を抜去する。次に、ガイドワイヤに沿わせてより小型(例えば8フレンチ)のガイディングカテーテルを導入する(注:フレンチは、外周寸法が同一の非円形チューブは同一の切開部に適合するという理論に基づく外周寸法である。1フレンチは、約0.33mmまたは0.013インチである)。
【0005】
ガイディングカテーテルの導入後、例えばクック・メディカル社(Cook Medical Inc.)製のブルーライノ(Blue Rhino)(登録商標)拡張器(特許文献1も参照されたい)などの第1の拡張器をガイドワイヤに沿わして配置し、ガイディングカテーテル及び第1の拡張器を一体として気管壁を通して気管内へ前進させて拡張を行う。クック・メディカル社は、気管切開チューブの挿管をより容易にするために、気管壁の若干の過拡張を推奨している。拡張後、第1の拡張器を抜去し、その後、気管切開チューブ内にぴったり嵌合し、かつ気管切開チューブの遠位端から約2cm突出するように構成された第2の拡張器(ローディング拡張器)を用いて、ガイドカテーテルに沿わせて気管切開チューブ(内側カニューレは抜去されている)を導入する。ガイドカテーテル、第2の拡張器及び気管切開チューブを一体として、気管壁を通して気管内へ前進させる。気管切開チューブが適切な挿管深さに達したら、気管切開チューブを通じて第2の拡張器、ガイドカテーテル及びガイドワイヤを抜去し、気管切開チューブ内に内側カニューレを挿入した後、気管切開チューブをベンチレータに接続する。
【0006】
上記の説明から理解されるように、現在最先端の気管切開術は、手技が成功裏に完了するまでに、多数のステップと、多数の部品の挿入及び抜去を伴う。そのほとんどの期間、患者はベンチレータから切り離されており、従って呼吸していない。さらに、現在の気管切開術キットでは多数の部品が用いられているため、前記部品が誤って非無菌状態にされ使用不能となる可能性が増している。そのような場合には、患者はETチューブの再挿管を受けなければばならない。また、たとえ手技が順調に進行したとしても、患者が呼吸していない期間はかなり長く、約7分間またはそれ以上にも及ぶ。このことは、特に最適な健康状態にない患者(たいがいの患者はそうである)にとっては、重大な出来事であることは明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,637,435号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
気管切開チューブの挿管をより迅速にかつ安全に成功させることができるデバイスが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、新規な気管切開術用の拡張器ローディングカテーテル(「本デバイス」)が提供される。このローディングカテーテルは、本出願人により本願と同日に出願された「握りやすい先細の拡張器(Easy Grip Tapered Dilator)」に説明されているツーピース型拡張器と併用される。前記拡張器は、本体部と、前記本体部に対して着脱可能な先端部とを含む。気管瘻孔の拡張後、前記本体部は除去され、前記先端部のみが気管内に残される。拡張器先端部ローディングカテーテル(本デバイス)は、前記拡張器先端部の近位端に対して連結するように構成された遠位端と、近位把持部と、前記遠位端及び前記近位把持部の間に位置する管状中間部とを含む。本デバイスは内部にカニューレを有している。前記近位把持部は、気管切開チューブの近位端に着脱可能に結合させることができる。本デバイスの前記遠位端及び前記中間部は、気管切開チューブのカニューレ内に嵌合するような大きさに形成されている。本デバイスの前記遠位端及び前記中間部は、気管切開チューブに挿入され、前記遠位端はその後、拡張器先端部の近位端と連結させられる。このアセンブリ全体が、気管内に挿入される。気管切開チューブが挿管されたら、ローディングカテーテル及び拡張器先端部は、気管切開チューブを通じて引き出される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来技術のブルーライノ(Blue Rhino)(登録商標)拡張器を示す図である。
【図2】握りやすい先細の拡張器を示す図である。
【図3】握りやすい先細の拡張器の本体部すなわち把持部を示す図である。
【図4】握りやすい先細の拡張器の先端部及び内側部分を示す図である。
【図5】拡張器、ガイディングカテーテル及びJワイヤを気管壁を通じて気管内に導入した状態を示す図である。
【図6】拡張器先端部、ガイディングカテーテル及びJワイヤを残して、矢印に示すようにして拡張器本体部を除去する様子を示す図である。
【図7】拡張器本体部の除去後に、拡張器の先端部、ガイディングカテーテル及びJワイヤが気管内に残された状態を示す図である。
【図8】拡張器ローディングカテーテル50を示す図である。
【図9】患者の喉部に取り付けるためのフランジを備えた気管切開チューブ26を示す図である。チューブ26の内側カニューレは除去されている。
【図10】ローディングカテーテル10を気管切開チューブ26に装着した状態を示す図である。
【図11】気管瘻孔内に挿入されている拡張器先端部12の内側部分に沿わして気管切開チューブ26及びローディングカテーテル50を拡張器先端部の近位端に到達するまで導入し、拡張器先端部の近位端と結合させた状態を示す図である。
【図12】気管切開チューブ26、ローディングカテーテル50及び拡張器先端部12を一体として気管内に挿入した状態を示す図である。
【図13】気管内に挿管された気管切開チューブを通じて、ローディングカテーテル、拡張器先端部、ガイディングカテーテル及びJワイヤを引き出す様子を示す図である。
【図14】気管カフを膨張させた状態の、気管内における気管切開チューブの最終位置を示す図である。
【図15】気管切開チューブと共に使用される交換可能型(使い捨て式)のカニューレを示す図でる。
【図16】気管切開チューブに交換可能型のカニューレを装着した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
気管切開術は、患者が気管を通じて直接的に呼吸することを可能にする救命手技である。気管切開術はまた、人工呼吸器関連肺炎(VAP)の発症を予防または抑制すると、多くの人々に考えられている。しかし残念ながら、この救命手技は、比較的時間がかかり、現在の技術では多数のステップ及び器具を必要とし、かつ、手技を成功裏に完了させるためには前記器具を無菌状態に維持しかつ適切に機能させなればならない。上記の「課題を解決するための手段」に記載したローディングカテーテルを前述した新規な握りやすい先細の拡張器と併用することにより、気管切開手技を大幅に向上させることができる。
【0012】
アメリカン・ヘリテイジ・ステッドマン医学辞典2001年版(American Heritage Stedman's Medical dictionary 2001)によれば、拡張器は、管、腔、血管または開口部を拡張するための器具または物質である。図1は、ブルーライノ(Blue Rhino)(登録商標)拡張器と呼ばれる、クック・メディカル社(Cook Medical Inc.)製の従来の拡張器を示す図である(特許文献1も参照されたい)。特許文献1には、略直線状のシャフトと短い遠位先端部分とが湾曲したテーパ部分で互いに連結されたワンピース型の拡張器が記載されている。
【0013】
握りやすい先細の拡張器10の一実施形態は、本体部20と、内側部分18を有する遠位先端部12(図2)とを含む。拡張器10は、少なくとも2つの部分または部品を有しており、先端部12が本体部20に着脱可能に連結されるように構成されている。図3に示すように、本体部20は、拡張手技のための挿管深さの目印すなわち挿管停止位置を表示するための、直径が約42フレンチのマーク線(marking line)22若しくは稜線部(ridge)を有している。本体部20は、遠位部分44及びハンドル部分46を有している。本体部は、先端部12の内側部分18が貫通可能なカニューレをなしている。
【0014】
遠位先端部12は、その近位端28(図4参照)において本体部20と連結される。先端部12は、先端部12と本体部20とを互いに連結させて拡張器10を構成した際に拡張器本体部20を貫通する(本体部によって取り囲まれる)内側部分18を有している。図4に示すように内側部分18を通したJワイヤ16を先端部12から入れて先端部12の遠位端から出すことができるように、先端部12は、Jワイヤ16に沿わせたガイディングカテーテル14に適合する大きさのカニューレを有している。
【0015】
上述したように、Jワイヤ16が切開部32及び気管壁34を通じて気管24内に挿入されると、Jワイヤ16に沿わせてガイディングカテーテル14が導入される。拡張器10を使用する気管切開手技では、Jワイヤ16が通されているガイディングカテーテル14に沿わせて、拡張器10の先端部12を滑らせて移動させる。また、拡張器10の先端部12をガイディングカテーテルを内蔵するように作製することも可能であり、その場合は、別個のガイディングカテーテルは必要としない。拡張器10、ガイディングカテーテル14及びJワイヤ16はその後、「停止」マークまたは挿管深さゲージとしての役割を果たす拡張器10のマーク線22が切開部32の位置に来るまで、気管壁34を通じて気管24内に挿入される(図5)。気管瘻孔の拡張の実際の手技では、拡張器10の挿入及び除去は段階的に徐々に行われる。そのため、拡張器10に潤滑コーティングを適用することにより、気管切開手技が医療従事者にとって容易になると共に、患者の外傷をより少なくすることができる。また、潤滑コーティングは、Jワイヤ16との摩擦や抵抗を低減させることができると共に、切開部32及び気管壁34の領域に対する外傷を減少させることができる。潤滑コーティングは例えばポリ(N−ビニル)ラクタムであり得、そのようなものとしては、例えば、米国ニュージャージー州ブランチブルグ・インダストリアルパークウェイ35所在のハイドロマー社(Hydromer Inc.)から市販されているものや、米国特許第5,156,601号、第5,258,421号、第5,420,197号及び第5,420,197号に記載されているものなどがある。拡張器にJワイヤを挿入する直前に拡張器をコーティング溶液中に浸漬させることにより、拡張器の内側及び外側にコーティングを形成する。内側のコーティングは、Jワイヤが拡張器の内側に沿って極めて容易に摺動することを可能にし、外側のコーティングは、皮膚や気管が傷つくことを防止する。
【0016】
気管24の切開部が十分に拡張されたら、先端部12が気管24内に部分的に残されるようにして(例えば、気管24内に先端部の約半分が残されるようにして)、拡張器10を気管24から部分的に除去する。このときの図は図5と実質的に同一であるが、気管切開部の拡張後であることに留意されたい。気管切開部の拡張後、拡張器本体部20は図6において矢印で示されるように除去され、先端部12、ガイディングカテーテル14及びJワイヤ16が気管内に残される(図7)。先端部12の内側部分18は、図7にも見ることができる。
【0017】
図8は、ローディングカテーテル50を示す。ローディングカテーテルは、その近位端に回転可能な把持部52を、遠位端に先端部54を有している。把持部52は、360度回転可能である必要はなく、後述するようなローディングカテーテル50を気管切開チューブ26に装着させるための係合機構の係合を解除するのに十分なだけ回転することができればよい。中間部56(把持部52と先端部54との間)は管状であり、気管切開チューブ26へ挿入するときや気管切開チューブ26から除去するときに曲げることができるように柔軟性を有している。中間部54に適切な材料は、ポリウレタンや一部のポリオレフンなどの柔性のプラスチックである。先端部54及び把持部52に適切な材料は、ナイロンや一部のポリオレフィンなどの硬性のプラスチックである。本デバイスは、生体適合性を有し、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)(DEHP)を含まず、かつ好適には動物由来産物を含まないものであるべきである。ポリ塩化ビニルもまた、前記部品を作製するのに使用することができる。
【0018】
ローディングカテーテルの先端部54は、拡張器先端部12の近位端との係止機構を有している。使用可能な係止機構は、カテーテル遠位端すなわちカテーテル先端部54にまたはその近傍に設けられた、係止アーム(locking arm)もしくはスナップディテント(snap detent)58である。ディテント58は外側に開いて、例えば図4に示すような、先端部12の近位端28の近傍に位置するに内側部分18に設けられた係止部すなわち突起部60と係止して、先端部12をローディングカテーテル50に強固に連結させることができる。ローディングカテーテル50を先端部12に連結させる機構は脱離可能に構成することもできるが、後ほど詳述するように、チューブ26を通じて先端部12を引き出すときに先端部12がローディングカテーテル50から外れないことを確実にするためには強固な連結が望ましいため、脱離不能に構成する方がより好ましい。ローディングカテーテルは、拡張器先端部と連結したときに、カチッと音と立てるように構成されることが望ましい。
【0019】
気管切開チューブが図9に示されている。気管切開チューブ26を患者の喉部に取り付けるためのフランジ70が、気管切開チューブ26の近位端に設けられている。フランジ70は、ベンチレーター連結部72が設けられているチューブ26の近位端の近傍においてチューブ26の左右両側に延出している。フランジ70は、柔軟性を有し、非刺激性であり、かつチューブ26を固定するために患者の喉部に縫合することができる。フランジのサイズは、患者の身体サイズ及びニーズに応じて様々であり得る。チューブ26はまた、チューブ近位端から遠位端31まで延在する中空シャフト74を含む。気管を塞ぐためにバルーンカフ30を膨張させることができるように、膨張ライン76がチューブ近位端からバルーンカフ30へ延びている。
【0020】
使用時は、ローディングカテーテル50は、気管切開チューブ26内に滑入される(図10)。ローディングカテーテル把持部52は、例えば、図8及び図9に示すようなスロット64とタブ62とを有する係合機構によって、気管切開チューブ26の近位端に対して着脱可能に係合される。タブ62は把持部52の左右両側に設けられており、気管切開チューブ26の近位端に設けられたスロット64と互いに係合される。いったん係合されると、把持部は自由に回転できなくなる。当業者であれば、把持部52をチューブ26に係合させる別の方法を容易に考えつくことができるであろう。
【0021】
ローディングカテーテル50が装着された気管切開チューブ26はその後、拡張器先端部12の内側部分18に沿わして先端部12の近位端28に届くまで挿入される(図11)。上述したように、ローディングカテーテル50の遠位先端部54は、先端部12の近位端28と結合される。その後、ローディングカテーテル50、先端部12及びチューブ26は一体として、チューブ26に設けられたフランジ70が患者の喉部の位置にくるまで気管24内に挿入される。チューブ26が気管内に挿管されたら、先端部12が装着されたローディングカテーテル50、ガイディングカテーテル14及びJワイヤ16は気管チューブ26を通じて引き出され、チューブ26のみが気管24内に留置される(図13)。このことは、気管切開チューブ26に対して着脱可能に係合されている把持部52の気管切開チューブ26の近位端に対する係合を解除し、把持部52をチューブ26から引き出すことにより実現される。この係合解除を実現するための1つの方法は、ローディングカテーテル把持部52を回転させることである。この回転動作によって、この系に存在し得る静止摩擦に打ち勝って、タブ62及びスロット64によるローディングカテーテル把持部52をチューブ26に係合させている係合機構が解除され、ローディングカテーテル把持部52が気管切開チューブ26の近位端から外れる。この回転動作は、チューブ26のみを留置して、気管切開チューブ26の内側ルーメンを通じて全てのローディング部品をユーザが引き出すことを可能にする。明らかなことであるが、先端部12が気管切開チューブ26を通過することができるように、先端部12の最大直径は気管切開チューブ26の直径よりも若干小さくある必要がある。気管切開チューブ26が挿管されたら、チューブカフ30を膨張させ、チューブ26をベンチレータ(図示しない)に接続して、使用する(図14)。
【0022】
気管切開チューブ26は、その下側(遠位)部分の外周面上にバルーンカフ30を備えている。バルーンカフ30は、ベンチレータを使用して気管切開チューブを介して人工呼吸を行うために、気管内の通常の空気の流れを遮断する役割を果たす。前記カフは、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタラート(PETP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)またはポリオレフィンなどの、柔軟で曲げやすいポリマーから作製することが望ましい。前記カフはとても薄くすべきであり、約25マイクロメートル以下の厚さ、例えば20マイクロメートル、15マイクロメートル、10マイクロメートル、さらには5マイクロメートル程度の厚さにすべきである。また、前記カフは、約30mmHO以下の圧力、例えば25mmHO、20mmHO、15mmHOまたはそれ以下の圧力で作動する低圧カフであることが望ましい。そのようなカフは米国特許第6,802,317号に記載されている。米国特許第6,802,317号には、患者の気管を可能な限り密閉的に塞ぐためのカフが記載されており、前記カフは、患者の声門の下方の気管を塞ぐためのカフバルーンと、空気チューブとを含んでいる。カフバルーンは、空気チューブと接続されており、完全膨張状態のときは気管の直径よりも大きいサイズに膨張する。また、カフバルーンは、柔軟で曲げやすい壁厚が0.01mm以下の箔材から作製されており、患者の気管内でカフバルーンを膨張させたときに少なくとも1つの垂れ状のひだ部(draped fold)が形成されるように構成されている。少なくとも1つの垂れ状のひだ部は、その端部にループ(loop)を有している。ループの直径は、分泌物がループを通過して自由に流れるのを妨げることができるような小径に形成されている。そのようなカフの別の説明は、米国特許第6,526,977号に記載されている。米国特許第6,802,317号には、患者の気管を可能な限り密閉的に塞ぐための拡張器が記載されている。前記カフは、患者の声門の下方の気管を塞ぐためのカフバルーンと、空気チューブとを含んでいる。カフバルーンは、空気チューブと接続されており、完全膨張状態のときは気管の直径よりも大きいサイズに膨張する。また、カフバルーンは、柔軟で曲げやすい箔材から作製されており、患者の気管内でカフバルーンを完全に膨張させたときに少なくとも1つの垂れ状のひだ部が形成されるように構成されている。少なくとも1つの垂れ状のひだ部は、分泌物が肺に吸い込まれて分泌物吸引に関連する感染症が発症することを防止すべく、ひだ部によって生じる毛細管力によってバルーンの表面を通過する分泌物の自由な流れを捕えることができるような毛細管サイズを有している。
【0023】
また、気管切開チューブ26と共に、使い捨て式のカニューレ80(図15)を使用することもできる。カニューレ80は、チューブ近位端から気管切開チューブ内に挿入される。このような使い捨て式カニューレ80は、細菌増殖を最小限に抑えるために、定期的に交換される。カニューレ80は、ポリオレフィン、ポリウレタン、ナイロンなどのプラスチック材料から作製される。カニューレ80は、曲げやすいことが望ましい。カニューレ80は、抗細菌及び/または抗ウイルスコーティング、あるいは、有害生物の増殖を減少させるのを助ける他の活性物質で処理され得る。カニューレ80は、ローディングカテーテル50の装着方法と同様の方法によって、すなわち、カニューレのタブ84をチューブのスロット64と係合させることによって、カニューレ端部82だけをチューブ近位端に露出させるようにして気管切開チューブ26に装着される。カニューレの遠位端は、気管切開チューブの遠位端31と同一平面をなしてもよいし、遠位端31からごく短い長さで突出するようにしてもよい。
【0024】
この拡張器除去デバイスの様々な部品の例示的なサイズは次の通りである。
【0025】
拡張器(本体部20及び先端部21)は、例えば、全長が30cm未満、重量は35gm未満であるべきである。拡張器先端部12は、長さは約25〜80mm、もっと限定すれば約35mmであり、近位端から遠位端にかけて直径が約5〜16mmから約3〜6mmへテーパ状に縮小するように形成されており、もっと限定すれば近位端から遠位端にかけて直径が8mmから4mmへテーパ状に縮径するように形成されている。先端部の内側部分18の長さは、15〜30cmであり、もっと限定すれば約24cmである。
【0026】
フランジ70から気管切開チューブ26の遠位端31までの距離は、曲線距離で70mmないし100mmであり、望ましくは約75mmないし95mmであり、より望ましくは80mmないし90mmである。気管切開チューブにおけるフランジから遠位端までのなす角度は、85度ないし120度、望ましくは95度ないし115度、より望ましくは100度ないし110度である。フランジ70は、幅が6cmないし12cmで高さが1cmないし6cm、より具体的には幅が7cmないし10cmで高さが2cmないし5cm、さらに具体的には幅が8cmないし9cmで高さが2cmないし4cmであることが望ましい。
【0027】
ローディングカテーテル50の管状中間部は、曲線長さが約8cmないし13cm、より具体的には約11cmであることが望ましく、気管切開チューブの遠位先端部から20mm程度突出して終端するかまたは前記遠位先端部内に終端する。ハンドル部52の長さは2cmないし7cm、具体的には約5cmであり得る。ローディングカテーテルの遠位端すなわち先端部54の内径は、3mmないし10mm、具体的には約6mmであり得る。いずれの場合でも、ローディングカテーテルの中間部56及び先端部12は、気管切開チューブ26を通過することができるような大きさに形成されるべきである。
【0028】
この出願は、同一出願人により同日に出願された特許出願グループのうちの1つである。このグループには、Brian J. Cuevasによる米国特許出願第12/147,817号明細書(標題:握りやすい先細の拡張器)、Brian J. Cuevasによる米国特許出願第12/147,873号明細書(標題:気管切開術の実施方法)、Brian J. Cuevasによる米国特許出願第12/163,065号明細書(標題:拡張器ローディングカテーテル)、Brian J. Cuevasによる米国特許出願第12/147,952号明細書(標題:気管切開チューブ用のバタフライ型フランジ)、Brian J. Cuevasによる米国特許出願第12/163,173号明細書(標題:気管切開チューブ)、Brian J. Cuevasによる米国意匠出願第29/320,497号の(標題:バタフライ型フランジ)、Brian J. Cuevasによる米国意匠出願第29/320,492号の(標題:先細の拡張器ハンドル)、Brian J. Cuevasによる米国意匠出願第29/320,500号の(標題:瘻孔パッド)が含まれる。これらの文献は、この参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0029】
当業者に理解されるように、本発明の変更形態及び変形形態は当業者の能力の範囲内にあると考えられる。本発明者は、そのような変更形態及び変形形態が本発明の範囲内にあることを意図している。また、本発明の範囲は、本明細書に開示されている特定の実施形態に限定されるものと解釈されるべきではなく、先述の開示を踏まえて添付の請求項にのみ従うものであると理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張器ローディングカテーテルであって、
拡張器先端部の近位端に対して結合するように構成された遠位端と、
近位把持部と、
前記遠位端及び前記近位把持部の間に位置する管状中間部とを含み、
当該カテーテルが内部にカニューレを有することを特徴とするローディングカテーテル。
【請求項2】
請求項1に記載のローディングカテーテルであって、
前記遠位端及び前記中間部が、気管切開チューブのカニューレ内に嵌合するような大きさに形成されていることを特徴とするローディングカテーテル。
【請求項3】
請求項2に記載のローディングカテーテルであって
前記近位把持部が、前記気管切開チューブの近位端に着脱可能に結合するように構成されたことを特徴とするローディングカテーテル。
【請求項4】
請求項3に記載のローディングカテーテルであって、
前記チューブを通じて前記拡張器先端部を除去し得るように構成したことを特徴とするローディングカテーテル。
【請求項5】
請求項3に記載のローディングカテーテルであって
タブとスロットとの係合によって前記把持部を前記チューブに結合させるようにしたことを特徴とするローディングカテーテル。
【請求項6】
請求項5に記載のローディングカテーテルであって
前記拡張器先端部の除去前に、当該カテーテルを前記チューブから分離し得るように構成したことを特徴とするローディングカテーテル。
【請求項7】
請求項1に記載のローディングカテーテルであって
ディテント機構によって前記遠位端を前記拡張器近位端に結合させるようにしたことを特徴とするローディングカテーテル。
【請求項8】
請求項1に記載のローディングカテーテルであって
前記中間部が前記拡張器先端部と同程度またはそれ以上の曲げやすさを有することを特徴とするローディングカテーテル。
【請求項9】
請求項8に記載のローディングカテーテルであって
前記中間部をポリウレタンから作製したことを特徴とするローディングカテーテル。
【請求項10】
拡張器ローディングカテーテルであって、
拡張器先端部の近位端に対して脱離不能に結合するように構成された遠位端と、
気管切開チューブの近位端に対して着脱可能に結合するように構成された近位把持部と、
前記遠位端及び前記近位把持部の間に位置する管状中間部とを含み、
当該カテーテルが内部にカニューレを有していることを特徴とするローディングカテーテル。
【請求項11】
請求項10に記載の拡張器用のローディングカテーテルであって、
前記管状中間部が約8cmないし13cmの長さを有し、
前記把持部が約2cmないし7cmの長さを有し、かつ
前記遠位端が3mmないし10mmの内径を有することを特徴とするローディングカテーテル。
【請求項12】
内側チューブをなす拡張器ローディングカテーテルと外側チューブをなす気管切開チューブとのアセンブリであって、
前記気管切開チューブが、近位フランジ及び遠位バルーンを有し、かつ気管内に留置され得るように構成されており、
前記拡張器ローディングカテーテルが、前記気管切開チューブの近位端に対して着脱可能に結合するように構成されていることを特徴とするアセンブリ。
【請求項13】
請求項12に記載のアセンブリであって、
前記近位フランジが、患者の首部に縫合され得るように構成されていることを特徴とするアセンブリ。
【請求項14】
請求項12に記載のアセンブリであって、
前記外側チューブの遠位端に設けられた前記遠位バルーンが、25マイクロメートル未満の厚さを有するポリウレタン製バルーンであることを特徴とするアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2011−525830(P2011−525830A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515685(P2011−515685)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【国際出願番号】PCT/IB2009/052583
【国際公開番号】WO2009/156909
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(310007106)キンバリー クラーク ワールドワイド インコーポレイテッド (19)
【Fターム(参考)】