説明

振動アクチュエータ、レンズ鏡筒及びカメラ

【課題】振動部の振動が固定部に伝達するのを防止する。
【解決手段】本発明の振動アクチュエータ10は、第1の磁石21が設けられた固定部17と、振動波が励起されるとともに、前記第1の磁石21に対して同極同士を対向させて設けられた第2の磁石22を有し、前記第1の磁石21と前記第2の磁石22との間の斥力によって、前記固定部17に対して非接触状態で保持される振動部11と、前記振動波によって前記振動部11に対して相対移動する相対移動部14と、を備えること、を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動アクチュエータ、レンズ鏡筒及びカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
振動アクチュエータは、特許文献1に記載のように、電気機械変換素子の伸縮を利用して振動部の弾性体の振動面に進行性振動波を発生させ、この進行波によって駆動面に発生する楕円運動の波頭に加圧接触した相対移動部を駆動させ、この相対移動部の駆動によって被作動部を作動するようになっている。従来の振動アクチュエータにおいて、振動部は、ひれ部を介して固定部に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−69849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の振動アクチュエータは、振動部がひれ部を介して固定部に支持されているため、振動部の振動がひれ部を介して固定部に伝達し、異音を発生することがある。
【0005】
そこで、本発明は、振動部の振動の固定部への伝達が防止された振動アクチュエータ、並びにそれを備えるレンズ鏡筒及びカメラを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするため、本発明の一実施形態を示す図面に対応する符号を付して説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0007】
請求項1に記載の発明は、第1の磁石(21)が設けられた固定部(17)と、振動波が励起されるとともに、前記第1の磁石(21)に対して同極同士を対向させて設けられた第2の磁石(22)を有し、前記第1の磁石(21)と前記第2の磁石(22)との間の斥力によって、前記固定部(17)に対して非接触状態で保持される振動部(11)と、前記振動波によって前記振動部(11)に対して相対移動する相対移動部(14)と、を備えること、を特徴とする振動アクチュエータ(10,110,210)である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の振動アクチュエータ(10,110,210)であって、前記相対移動部(14)を相対移動させるときの反作用による、前記振動部(11)の前記固定部(17)に対する移動を阻止する移動止め構造(25)を備えること、を特徴とする振動アクチュエータ(10,110,210)である。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の振動アクチュエータ(10,110,210)であって、前記移動止め構造(25)は、前記固定部(17)に設けられた第3の磁石(28)と、前記振動部(11)に設けられるとともに、前記第3の磁石(28)に対して、前記振動部(11)が受ける反作用の移動方向に斥力が発生するように同極同士を対向させて設けられた第4の磁石(29)と、を有すること、を特徴とする振動アクチュエータ(10,110,210)である。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の振動アクチュエータ(10,110,210)であって、前記磁石は、永久磁石であること、を特徴とする振動アクチュエータ(10,110,210)である。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の振動アクチュエータ(10,110,210)であって、前記磁石は、超伝導磁石であること、を特徴とする振動アクチュエータ(10,110,210)である。
請求項6に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の振動アクチュエータ(10,110,210)であって、前記磁石は、電磁石であること、を特徴とする振動アクチュエータ(110)である。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の振動アクチュエータ(110)であって、前記固定部(17)と前記振動部(11)とのいずれか一方に設けられ、前記電磁石における磁力非発生状態において、前記振動部(11)と前記固定部(17)と間の当接を防止する当接防止部(31)を備えること、を特徴とする振動アクチュエータ(110)である。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の振動アクチュエータ(110)であって、前記当接防止部(31)が、弾性部材で形成されていること、を特徴とする振動アクチュエータ(110)である。
請求項9に記載の発明は、請求項1から8のいずれか1項に記載の振動アクチュエータ(10,110,210)を備えたこと、特徴とするレンズ鏡筒(3)である。
請求項10に記載の発明は、請求項1から8のいずれか1項に記載の振動アクチュエータ(10,110,210)を備えたこと、特徴とするカメラ(1)である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、振動部の振動の固定部への伝達が防止された振動アクチュエータ、並びにそれを備えるレンズ鏡筒及びカメラを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態のカメラの概略断面図である。
【図2】振動体の分解斜視図である。
【図3】(A)は、図2の矢印A方向から見た図である。(B)は、図3(A)の矢印B方向から見た図である。図である。
【図4】本発明の第2実施形態の振動アクチュエータとしての振動アクチュエータの概略断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態の振動アクチュエータとしての振動アクチュエータの概略断面図である。
【図6】(A)は、第2の磁石の平面図である。(B)は、他の形状の第2の磁石の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態の振動アクチュエータ、レンズ鏡筒及び振動アクチェータを図面に基づいて説明する。なお、本発明の実施の形態における振動アクチュエータは、カメラ1に設けられた振動アクチュエータ10を例にして説明する。
【0011】
図1は、第1実施形態のカメラの概略断面図である。
カメラ1は、撮像素子6を有するカメラボディ2と、レンズ鏡筒3とを備えている。レンズ鏡筒3は、カメラボディ2に着脱可能な交換レンズである。なお、レンズ鏡筒3は、カメラボディ2と一体であってもよい。
【0012】
レンズ鏡筒3は、レンズ4、カム筒5、後述する振動アクチュエータ10等を備えている。振動アクチュエータ10は、カメラ1のフォーカス動作時にレンズ4を駆動する駆動源として用いられている。振動アクチュエータ10から得られた駆動力は、カム筒5に伝えられる。レンズ4は、カム筒5とカム係合し、振動アクチュエータの駆動力によってカム筒5が回転すると、カム筒5とのカム係合によって光軸方向へ移動して、焦点調節が行われる。
【0013】
図2は、振動アクチュエータ10の断面図である。
振動アクチュエータ10は、振動体11と、移動体14と、緩衝部材15と、第1支持体16と、第2支持体17と、加圧部18等を備えている。
【0014】
振動体11は、弾性体12と圧電体13とが接着剤により接着されて一体構造になっている。
弾性体12は、弾性変形可能な金属材料であり、リング状に形成されている。弾性体12の圧電体13が接合される反対側の面には、櫛歯状に突起部12bが等間隔で複数形成されている。突起部12b同士の間は、溝12aになっている。突起部12bの先端面は、駆動面12cになっている。また、弾性体12の外周には、鍔状にひれ部23が設けられ、さらに、ひれ部23の外周における互いに対称となる2箇所には、突部26が延設されている。
【0015】
圧電体13は、弾性体12の溝12aと反対側の面に接合され、電気エネルギを機械エネルギに変換する電気機械変換素子である。圧電体13は、交流電圧等の駆動信号によって励磁されて、弾性体12に振動を生じさせ、駆動面12cに進行波を生じさせる。
移動体14は、略円環形状をしており、弾性体12の駆動面12cに発生する進行波(振動波)により移動される。
【0016】
緩衝部材15は、ゴム等により略円環形状に形成されており、移動体14の振動を第1支持体16側に伝えないようにする部材であり、移動体14と第1支持体16との間に設けられている。
第1支持体16は、移動体14を支持する部材である。第1支持体16と移動体14は、一体となって回転するように係合しており、移動体14の回転運動をカム筒5に伝達する。
【0017】
第2支持体17は、振動アクチュエータ10をカメラボディ2に支持する支持フレームである。
第2支持体17は、円環状であって、径方向に三段階の厚み部分を有する。最も内径側の部分が最も薄い第1部分17A、真ん中の部分が第2部分17B、最も外径側の部分が最も厚い第3部分17Cとなっている。第3部分17Cにおける、互いに180度離れた軸対称となる2箇所には、凹部17Caが設けられている。
第1部分17Aは弾性体12と回転軸A方向に重なり、第2部分17Bはひれ部23と軸方向に重なり、第3部分17Cは突部26と軸方向に重なっている。
【0018】
第2部分17Bの、ひれ部23と対向する面には、円環状の第1の磁石21が設けられている。
一方、ひれ部23における第2部分17Bと対向する面、円環状の第2の磁石22が設けられている。第1の磁石21と第2の磁石22は、永久磁石であって、この第1の磁石と第2の磁石とで加圧部18を構成している。
第1の磁石21と第2の磁石22は、径方向の寸法が略同じであり、同極同士が対向して設けられている。
【0019】
このように、第1の磁石21と第2の磁石22とが、同極同士を対向して配置されているため、弾性体12は、第1の磁石21と第2の磁石22とが反発する斥力によって第2支持体17から浮き上がって、移動体14に圧接されている。
【0020】
ここで、振動体11は、第1の磁石21と第2の磁石22との斥力によって第2支持体17から浮き上がっているため、移動体14を回転させるとき反作用を受ける。このため、振動体11の第2支持体17に対する移動(回転)を阻止する移動止め構造25(図3(A))が設けられている。
【0021】
回転止め部25は、凹部17Caの側面に(径方向に延びる面)に設けられた2つの第3の磁石28と、突部26の側面において第3の磁石28のそれぞれに対向して設けられた2つの第4の磁石29とを備えている。第3の磁石28と第4の磁石29は、永久磁石であり、振動体11が受ける反作用の移動方向に斥力が発生するように同極同士を対向させて配置されている。
【0022】
本実施形態において、圧電体13に電圧が加わると、振動波が励起されて弾性体12の駆動面12cに進行波が生じる。進行波は、弾性体12の駆動面12cが圧接されている移動体14を回転させる駆動力となって、移動体14を回転させる。この結果、振動アクチュエータ10は、カム筒5を回転させて、レンズ4の位置を調節して、カメラの焦点距離の調節をする。
【0023】
(1)このように振動アクチュエータ10が作動する際に、振動アクチュエータ10は、第1の磁石21と第2の磁石22との間の斥力によって、振動体11が第2支持体17に対して非接触状態で保持されている。このため、振動体11の振動の第2支持体17への伝達が防止され、異音の発生を低減することができる。
【0024】
(2)また、振動アクチュエータ10は、振動体11が第2支持体17に対して非接触状態で保持されているので、振動体11の振動の第2支持体17における吸収が生じず、駆動効率を高くすることができ、移動体14を効率良く回転させることができる。
【0025】
(3)第3の磁石28と第4の磁石29が、互いに斥力が作用するように同極同士を対向して配置されている。このため、移動体14を回転させるときの反作用を受けても、振動体11における第2支持体17に対する相対回転が防止される。したがって、移動体14を確実に回転させることができる。この場合、第3の磁石28と第4の磁石29は、非接触状態になっているため、振動体11の浮き上がりに支障を与えることがなく、振動体11は移動体14に確実に圧接される。
【0026】
(第2実施形態)
第1実施形態では、第1磁石21及び第2磁石22は、永久磁石を用いた。しかし、第2実施形態で第1磁石21及び第2磁石22は、電磁石を用いる。図5は第2実施形態における振動アクチュエータの断面図である。
第2実施形態において、第1磁石21及び第2磁石22に電流が流れていない磁力非発生状態において、振動体11が移動体14から離れて第2支持体17に当接するか、或いは、第2の磁石22が第1の磁石21に当接して、振動体11、第2支持体17、第1、第2の磁石21,22に損傷が生じるおそれがある。
【0027】
そこで、第2実施形態では、振動体11と第2支持体17との当接と、第2の磁石22と第1の磁石21との当接を回避する構造を有する。図4は、第2実施形態の振動アクチュエータ110の断面図である。第1実施形態の振動アクチュエータ10と同様な部分は、同一符号を付して、その部分の説明は省略する。
【0028】
第2実施形態では、第2支持体17の第2部分17Bに振動体11を受け止める当接防止部としての受け止め片31が、ひれ部23に向けて突設されている。この場合、先端にゴム32やバネ等の弾性体を設けるのが好ましい。また、受け止め片31の先端とひれ部23との隙間G1は、第1の磁石21と第2の磁石22との隙間G2よりも狭く(G1<G2)設定されている。
【0029】
第2実施形態によると、第1実施形態の効果に加え、受け止め片31が設けられているので、第1磁石21及び第2磁石22が電磁石である場合においても、振動体11と第2支持体17との当接と、第1磁石21と第2磁石22との当接とが回避され、当接による異音の発生や、これらの部品の損傷を防止することができる。
【0030】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態の振動アクチュエータ210の断面図である。第1実施形態の振動アクチュエータ10と同様な部分は、同一符号を付して、その部分の説明は省略する。
【0031】
第3実施形態においては、ひれ部23における、突部26が設けられていない部分の外周面には第5の磁石36が設けられ、第2支持体17の第3部分17Cの内周面には第6の磁石37が設けられ、中心位置決め部35を構成している。第5の磁石36と第6の磁石37とは、リング状で互い同極同士が向き合って設けられている。
【0032】
このように、中心位置決め部35を設けると、第5の磁石36と第6の磁石37との斥力によって、振動体11の回転中心が定まり、振動体11の回転中心と移動体14の回転中心とが一致して、振動体11は、弾性体12を円滑に回転させることができる。
【0033】
(変形例)
上述した各実施形態は、以下の変形も可能である。
(1)第2の磁石22は、図6(A)に示すように、リング状に形成されている。しかし、これに限定されず、図6(B)に示すように第2の磁石122のように複数に分割してもよい。
【0034】
(2)回転止め部25の第3の磁石28と第4の磁石29は、突部26の回転方向の両側に設けてあるが、振動体11が反作用を受けたとき受け止める片側だけに設けもよい。
【0035】
(3)回転止め部25は、180度間隔で一対設けてあるが、少なくとも1箇所に設けてあればよい。
また、回転止め部25は、ひれ部23の外周に設けてあるが、弾性体12と第2支持体17との対向部分であるならば、どこに設けてもよい。
【0036】
(4)中心位置決め部35の第5の磁石36は、第3部分17Cとひれ部23の間に設けられているが、これに限定されず、第2部分Bと弾性体12の間に設けてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1:カメラ、3:レンズ鏡筒、10,110,210:振動アクチュエータ、1:振動体(振動部)、12:弾性体、13:圧電体、14:移動体、17:第2支持体、18:加圧部、21:第1の磁石、22:第2の磁石、23:ひれ部、25:回転止め部、26:突部、27:一対の回転止め片、28:第3の磁石、29:第4の磁石、31:受け止め片、35:中心位置決め部、36:第5の磁石、37:第6の磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の磁石が設けられた固定部と、
振動波が励起されるとともに、前記第1の磁石に対して同極同士を対向させて設けられた第2の磁石を有し、前記第1の磁石と前記第2の磁石との間の斥力によって、前記固定部に対して非接触状態で保持される振動部と、
前記振動波によって前記振動部に対して相対移動する相対移動部と、を備えること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の振動アクチュエータであって、
前記相対移動部を相対移動させるときの反作用による、前記振動部の前記固定部に対する移動を阻止する移動止め構造を備えること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項3】
請求項2に記載の振動アクチュエータであって、
前記移動止め構造は、
前記固定部に設けられた第3の磁石と、
前記振動部に設けられるとともに、前記第3の磁石に対して、前記振動部が受ける反作用の移動方向に斥力が発生するように同極同士を対向させて設けられた第4の磁石と、を有すること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の振動アクチュエータであって、
前記磁石は、永久磁石であること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項5】
請求項4に記載の振動アクチュエータであって、
前記磁石は、超伝導磁石であること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか1項に記載の振動アクチュエータであって、
前記磁石は、電磁石であること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項7】
請求項6に記載の振動アクチュエータであって、
前記固定部と前記振動部とのいずれか一方に設けられ、前記電磁石における磁力非発生状態において、前記振動部と前記固定部と間の当接を防止する当接防止部を備えること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項8】
請求項7に記載の振動アクチュエータであって、
前記当接防止部が、弾性部材で形成されていること、
を特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の振動アクチュエータを備えたこと、を特徴とするレンズ鏡筒。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載の振動アクチュエータを備えたこと、を特徴とするカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−213305(P2012−213305A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78534(P2011−78534)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】