説明

振動子デバイス

【課題】振動子の重心と支持部材による支持の中心とを一致させることで、外来振動に起因するノイズの低減と、安定した振動子の支持を実現した振動子デバイスを提供する。
【解決手段】パッケージ40の内部で弾性材からなる支持部材20により振動子10が支持された振動子デバイス1であり、振動子10と異なる部材で形成した錘50を振動子10上に設けることで、支持部材20による振動子10の支持の中心位置P2と、錘50が設けられた振動子10の重心調整位置P3とを一致させる構成とした。これにより、外来振動や衝撃に起因するノイズを低減して、安定した信号を出力する振動子デバイスを提供することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動型ジャイロセンサなどに利用される耐振性に優れた振動子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラの手ぶれ防止機構やカーナビゲーションシステムの位置検出機構などで、角速度を検出するための振動型ジャイロセンサが用いられている。
【0003】
物理法則によれば、角速度Ωで回転する座標系から見て運動する物体には、その相対速度Vに比例したコリオリ力Fcが速度と直交する方向に作用し、その大きさと方向は次式で表される。
Fc=2mV×Ω ・・・・(1)
ここで、mはコリオリ力が作用する物体の質量である。
【0004】
振動型ジャイロセンサは、振動によって物体の運動を発生させることで、振動方向に直交する方向に作用するコリオリ力を捉えて回転を検出しようとする角速度センサであり、用いられる振動子には様々な形が提案されている。
【0005】
このうち、基部から同一の方向にのみ延在した複数の振動脚を有し、片持ち支持でパッケージの内部に固定される振動型ジャイロセンサが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
この特許文献1の振動型ジャイロセンサは、基部と、駆動電極を有する駆動脚及び検出電極を有する検出脚を備えた3本の脚と、基部に結合し基部及び3本の脚をパッケージに取り付けるための被支持部とを備えた三脚音叉型振動子である。この振動子は、周波数基準などの通常用途の音叉型振動子に近い形状であるので、現状の製造工程を利用でき、製造が簡単でパッケージへの組み込みも容易である。
【0007】
また、外来振動に起因するノイズを低減するため、ボンディングワイヤにより振動子を浮上状態で支持するジ振動型ジャイロセンサの構造が知られている(例えば、特許文献2参照)。この振動子は、バネ性のあるワイヤーによって支持されているので、耐振性を備え、温度変化に対する出力の安定性が改善されることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−64662号公報(6頁、図1)
【特許文献2】特開2006−105962号公報(5頁、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1の振動子は片持ち支持構造であり、振動子の被支持部は、この振動子を覆い保護するパッケージに固定しているので、外部からの振動や衝撃が直接的に振動子に伝達して、出力が外来振動に起因するノイズによって不安定になりS/N比が低下する課題がある。
【0010】
また、特許文献2の振動子は、ダブルT型構造と呼ばれる複雑な形状であるので、振動子の製造、及び、パッケージへの取り付けが困難であって、生産性に問題がある。
【0011】
このため、製造が簡単な通常用途の音叉型振動子に近い形状の三脚音叉型振動子を、特許文献2に記載のような弾性材による浮上状態で支持する構造が考えられる。しかし、この構造では外部からの振動や衝撃が、弾性材の支持部材によって緩和されたとしても、振動子の重心と弾性材の支持部材による支持の中心とが一致せず、適切な支持をすることができない問題ある。
【0012】
以下、片持ち支持の三脚音叉型振動子を弾性材の支持部材で支持した場合の不具合を図14と図15を用いて説明する。図14は、特許文献1と同様な従来の三脚音叉型の振動子10に、弾性材からなる支持部材20を貼り合わせて固着した振動型ジャイロセンサとして用いられる従来の振動子デバイス100の正面図である。また、図15は、図14の切断線F−F´で切断した振動子デバイス100の断面図である。
【0013】
図14と図15において、振動子10は駆動脚11、12と検出脚13を備え、基部14に結合し、基部14及び3本の脚をパッケージ(図示せず)に取り付けるための被支持部15とを備えた三脚音叉型振動子である。
【0014】
また、支持部材20は、弾性材からなる複数の板バネ21と、この板バネ21に密着するポリイミドからなる基板22で構成される。この支持部材20は、振動子10の被支持部15に接着によって固着され、複数の板バネ21の先端部が図示しないパッケージに固着されることで、振動子10は支持部材20によって浮上状態で支持される構造となる。
【0015】
また、P1は振動子10の重心位置を示し、P2は支持部材20の中心、すなわち、振動子10の支持の中心位置を示している。ここで図示するように、振動子10の重心位置P1と支持の中心位置P2は、振動子10の長手方向のY軸方向で距離y10離れている(図14)。また、振動子10の重心位置P1と支持の中心位置P2は、振動子10の厚み方向のZ軸方向で距離z10離れている(図15)。
【0016】
ここで図14において、振動子10と支持部材20が一体となった振動子デバイス100に、外部から一例としてY軸と直交するX軸方向の振動が伝わったとすると、振動子デバイス100は重心位置P1と支持の中心位置P2が大きく離れているので、支持の中心位置P2を支点とするX軸方向のモーメントが発生し、振動子デバイス100は、X軸方向に大きな揺れ(矢印X10)が発生する。
【0017】
また同様に図15において、振動子デバイス100に外部からZ軸方向の振動が伝わったとすると、振動子デバイス100は、支持の中心位置P2を支点とするZ軸方向のモーメントが発生し、振動子デバイス100は、Z軸方向に大きな揺れ(矢印Z10)が発生する。また、Y軸方向の振動に対しても図示しないが揺れが発生し、これらの揺れは合成されて複雑な揺れとなる。
【0018】
このように、従来の振動子デバイス100は、弾性材の支持部材20によって外来振動の伝達がある程度緩和されたとしても、重心位置P1と支持の中心位置P2が離れているために、わずかな外来振動でも揺れが発生してノイズとなって出力されるので、出力が安定せず誤差の大きなセンサとなって問題である。また、防振効果を高めるには、振動子の振動伝達率を低くする必要があるが、振動子を弾性材で支持しただけでは、振動伝達率を十分に低くすることが出来ない。
【0019】
そこで本発明は、上記課題を解決し、振動子の重心位置と支持部材による支持の中心とを一致させ、また、振動子の振動伝達率を低くすることで、外来振動に起因するノイズの低減と、安定した振動子の支持を実現した振動子デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するために、本発明の振動子デバイスは、下記記載の構成を採用する。
【0021】
本発明の振動子デバイスは、パッケージの内部で弾性材からなる支持部材により振動子が支持された振動子デバイスにおいて、振動子の複数の振動脚は、基部から同一の方向にのみ延在し、振動子は、基部と接続した被支持部で支持部材により支持され、振動子と異なる部材で形成した錘を振動子上に設けることで、支持部材による振動子の支持の中心位置と、錘が設けられた振動子の重心位置とを一致させたことを特徴とする。
【0022】
また、支持部材として複数の板バネを備え、各板バネにより振動子が支持されたことを特徴とする。
【0023】
また、各板バネはフレキシブルプリント基板からなることを特徴とする。
【0024】
また、振動子に形成された電極と、パッケージに形成された配線とが、フレキシブル基板に形成された配線を介して接続したことを特徴とする。
【0025】
また、振動子の一方の側に位置する板バネから振動子の他方の側に位置する板バネまで連続して形成された配線部を有し、該配線部上に振動子が支持されたことを特徴とする。
【0026】
また、錘は、振動子の表面に設けられた第1の錘と振動子の裏面に設けられた第2の錘とからなることを特徴とする。
【0027】
また、振動子は、水晶振動子であることを特徴とする。
【0028】
また、錘は、タングステンからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明の振動子デバイスは、振動子上に振動子と異なる部材で形成した錘を設けることで、支持部材による振動子の支持の中心位置と、錘が設けられた振動子の重心位置とを一致させることが出来る。また、支持部材は弾性材からなるので、振動子を浮上状態で支持することが出来る。また、振動子上に錘を設けることで、振動子の質量を適切な値に増やすことが出来る。
【0030】
この結果、錘による支持の中心位置と振動子の重心位置とが一致することと、振動子を適切なバネ定数の弾性材で支持し、且つ、錘によって振動子の質量を適切にすることで、振動子の振動伝達率を小さくできることの相乗効果により、優れた防振効果が発揮されて、外来振動や衝撃に起因するノイズを低減して、安定した信号を出力する振動子デバイスを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施形態の振動子デバイスの半完成の正面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の振動子デバイスの半完成の断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の振動子の電極の一例を説明する正面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の支持部材の一例を示す説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の振動子と支持部材と錘とを一体化した振動子の正面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態の振動子と支持部材と錘とを一体化した振動子の断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態の振動子デバイスの回路ブロック図である。
【図8】本発明の第2の実施形態の振動子デバイスの半完成の正面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態の振動子と支持部材と錘とを一体化した振動子の正面図と断面図である。
【図10】本発明の第3の実施形態の振動子デバイスの半完成の断面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態の振動子と支持部材と第1の錘と第2の錘とを一体化した振動子の正面図と断面図である。
【図12】本発明の第4の実施形態の支持部材の一例を示す説明図である。
【図13】本発明の第4の実施形態の振動子と支持部材と第1の錘と第2の錘とを一体化した振動子の正面図と断面図である。
【図14】従来の三脚音叉型振動子に弾性材からなる支持部材を固着した振動子とX軸方向の揺れを説明する正面図である。
【図15】従来の三脚音叉型振動子に弾性材からなる支持部材を固着した振動子とZ軸方向の揺れを説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下図面に基づいて本発明の第1から第4の実施形態を詳述する。第1の実施形態の特徴は、振動子の表面に一つの錘を設けて、支持部材による支持の中心位置と振動子の重心位置とを略一致させた振動子デバイスである。第2の実施形態の特徴は、振動子の表面に設けた錘の面積を広く厚みを薄くして、支持部材による支持の中心位置と振動子の重心位置との一致の精度を向上させた振動子デバイスである。
【0033】
第3の実施形態の特徴は、振動子の表面に第1の錘、裏面に第2の錘を設けて、支持部材による支持の中心位置と振動子の重心位置とを高い精度で一致させた振動子デバイスである。第4の実施形態の特徴は、振動子を支持する支持部材の複数の板バネの少なくとも一部を波形として、防振性を向上させた振動子デバイスである。
【実施例1】
【0034】
[第1の実施形態の振動子デバイスの構成説明:図1、図2]
第1の実施形態の振動子デバイスの全体構成を図1と図2を用いて説明する。図1は第1の実施形態の振動子デバイスの半完成の正面図であり、図2は図1の切断線A−A´で切断した振動子デバイスの半完成の断面図である。なお、従来例として示した振動子デバイス(図14、図15)と同一要素には同一番号を付し、重複する説明は一部省略する。
【0035】
図1及び図2において、符号1は、第1の実施形態の振動子デバイスである。振動子デバイス1は、角速度を検出するための振動型ジャイロセンサであり、振動子10と制御IC30と、パッケージ40などによって構成される。振動子10は、2本の駆動脚11、12と検出脚13と基部14及び被支持部15とを備えた水晶で成る三脚音叉型の水晶振動子であり、水晶ウェハーからエッチング加工によって切り出されて形成されるものである。
【0036】
振動子10は、被支持部15の表面に支持部材20が接着等によって固着されている。支持部材20は、従来例と同様に、弾性材からなる複数の板バネ21と、この板バネ21に密着する絶縁材のポリイミドからなる基板で構成されるが詳細は後述する。
【0037】
パッケージ40は、振動子10を機械的に覆うために箱形であり、振動子10と接続する複数の接続部41と制御IC30を実装する実装部42を備えている。接続部41の表面は、導電性の配線電極43が形成されており、この配線電極43は、図示しないがスルホール構造によってパッケージ40の裏面に繋がっている。
【0038】
また、支持部材20の複数の板バネ21の先端は、パッケージ40の接続部41に導電性接着剤等で固着される。この構成によって、振動子10はパッケージ40の内部で、パッケージ40のどの箇所にも接触せず、弾性を有する支持部材20によって浮上状態で支持される。また、ここでは図示しないが振動子10の各電極は、固着される支持部材20の板バネ21を配線として、パッケージ40の配線電極43と電気的に接続される。
【0039】
また、符号50はタングステンからなる錘であり、振動子10の被支持部15の表面の支持部材20に接着剤等によって固着される。錘50は薄い直方体形状であり、タングステンは極めて重い金属であるので、小さな形状であっても振動子10の重心位置を移動させることが出来る。なお、錘50の材料はタングステンに限定されず、比重が振動子より大きく加工性に問題がなければ、他の材料でもよい。例えば、純タングステンの他、タングステン含有の合金等の金属材料等、または、酸化物などの絶縁材料でもよい。
【0040】
ここで、P1は前述したように、振動子10の重心位置を示し、P2は支持部材20の中心、すなわち、支持部材20による振動子10の支持の中心位置を示している。なお、重心位置P1は、振動子10の図面上、右側に細い検出脚13が位置していることなどにより、振動子10の中心からわずかに右側(+X軸方向)にずれている。
【0041】
また、P3は錘50を振動子10に固着したことによって移動した振動子10の新たな重心位置であり、重心調整位置P3と定義する。このように、錘50を振動子10の被支持部15に固着することによって、振動子10の重心位置は錘50の重さによって大きく移動し、重心調整位置P3は支持の中心位置P2に近接して略一致する。
【0042】
制御IC30は、パッケージ40の内部の実装部42に実装され、金属細線からなるワイヤー31によって制御IC30とパッケージ40の配線パターン(図示せず)と電気的接続される。そして、配線パターンの一部は、スルホール構造(図示せず)によってパッケージ40の裏面に繋がり、外部と電気的に接続するための電極となる。また、他の配線パターンは、接続部41の配線電極43と繋がって、制御IC30と振動子10の電極とを電気的に接続する。
【0043】
パッケージ40は、図示しないが平面状の蓋体をパッケージ40の開口部44に被せて接着剤等によって固着することで、振動子10と制御IC30を機械的に覆い、振動子デバイス1が完成する。
【0044】
[第1の実施形態の振動子の電極パターンの説明:図3]
次に、第1の実施形態の振動子の電極パターンの一例を図3を用いて説明する。図3において、振動子10は前述したように、基部14から同一の方向にのみ延在する複数の振動脚を有しており、振動脚は2本の駆動脚11、12と1本の検出脚13によって構成され、また、基部14と接続する被支持部15を有している。
【0045】
振動子10の2本の駆動脚11、12は、駆動電極16a、16bで覆われており、1本の検出脚13は、検出電極17a、17bで覆われている。これらの駆動電極16a、16bと検出電極17a、17bは、それぞれ配線パターンによって基部14を経由して被支持部15に伝達され、被支持部15の表面に図示するような所定の面積を有する電極パターンが形成される。
【0046】
すなわち、被支持部15の図面上の左側に駆動電極16a、16bの電極パターンが形成され、被支持部15の図面上の右側に検出電極17a、17bの電極パターンが形成される。この被支持部15のそれぞれの電極バターンは、被支持部15に固着される支持部材20の板バネ21と電気的に接続し、この支持部材20の板バネ21を配線としてパッ
ケージ40の配線電極43に接続されて、パッケージ40の配線パターンとワイヤー31を介して制御IC30に接続される(図1参照)。
【0047】
また、VSSはグランド電極であり、振動子10の所定の箇所に引き回されて、駆動電極16a、16bと検出電極17a、17bを電気的にシールドする。このグランド電極VSSは、図示するように被支持部15の中心付近に所定の面積の電極が形成され、被支持部15に固着される支持部材20の特定の板バネ21と電気的に接続して、パッケージ40の配線パターンとワイヤー31を介して制御IC30に接続される。
【0048】
振動子10のこれらの電極パターンは、すべての実施形態の振動子に共通であるが、図3以外で示す振動子10は、図面を見やすくするために各電極の図示を省略している。なお、振動子10に形成される電極パターンは、図3に限定されず、振動子の仕様に応じて任意に変更してよい。また、振動子10の各電極と制御IC30の接続の詳細は後述する。
【0049】
[第1の実施形態の支持部材の構成説明:図4]
次に、振動子10を浮上状態で支持する支持部材20の詳細を図4を用いて説明する。なお、支持部材20は、後述する第2、第3の実施形態においても同一のものが用いられる。ここで、図4(a)は支持部材20の正面図、図4(b)は側面図、図4(c)は背面図である。図4(a)〜図4(c)において、支持部材20は、フレキシブルプリント基板からなり、弾性材による複数の板バネ21と、この板バネに密着する薄いシート状のポリイミドからなる基板22で構成される。
【0050】
複数の板バネ21は、銅箔にニッケルを下地とした金メッキを施しており、板バネ21a〜21eの複数に別れて構成されている。このように板バネ21a〜21eは個々に別れているが、以降の説明において、板バネ21と記載する場合は板バネ全体を意味するものとする。板バネ21a、21c、及び板バネ21bの一方の端部は、振動子10の一方の側に位置し、板バネ21d、21e、及び板バネ21bの他方の端部は、振動子10の他方の側に位置するように、支持部材20は振動子10に固着される。
【0051】
そして、板バネ21bは、振動子10の一方の側から振動子10の他方の側まで連続して形成された配線部21b´を有しており、この配線部21b´上に振動子10が固着して支持される。なお、この板バネ21bは、支持部材20が振動子10の被支持部15に固着されたとき、前述した振動子10のグランド電極VSSに接続される(図3参照)。
【0052】
また、板バネ21a、21c、21d、21eは、振動子10の駆動電極と検出電極にそれぞれ接続される。すなわち、支持部材20の板バネ21は、振動子10の各電極とパッケージ40の配線パターンとを電気的に接続する配線としての機能を有しており、振動子10に形成された各電極とパッケージ40内の制御IC30とは、フレキシブルプリント基板の配線である支持部材20の板バネ21を介して接続されるのである。
【0053】
そして、各板バネ21は、絶縁性のポリイミドからなる基板22によって固定され一体化しており、きわめて薄いフレキシブルプリント基板の形態を有している。また、支持部材20の板バネ21は弾性体であるので、振動子10を浮上状態で支持する機能を備えており、支持部材20によって外部からの振動や衝撃は緩和される。また、各板バネ21の先端部分をパッケージ40に固着した場合(図1参照)、支持部材20は上下左右が対象であるので、支持部材20の中心が支持の中心位置P2そのものとなる。なお、支持部材20の背面側(図4(c))が、振動子10の被支持部15に固着されて、支持部材20の板バネ21と振動子10の電極が接続される。
【0054】
このように、振動子10を支持する支持部材20は、複数の板バネ21を備えるので、振動子を安定して支持することが出来る。また、支持部材20を構成する各板バネ21はフレキシブルプリント基板からなるので、極めて小型の支持部材を高精度に一括して製造でき、振動子デバイスの小型化と、形状や特性のばらつきが少ない高性能な振動子デバイスを提供できる。
【0055】
[第1の実施形態の振動子の構成説明:図5、図6]
次に、第1の実施形態の振動子の構成の詳細を図5と図6を用いて説明する。図5は、振動子10の正面図であり、図6は図5の正面図の切断線B−B´で切断した振動子10の断面図である。図5及び図6において、振動子10は前述したように、基部14と2本の駆動脚11、12と1本の検出脚13を有しており、被支持部15で支持部材20によって支持される。
【0056】
また、振動子10の被支持部15の表面に固着された支持部材20の基板22(図4(a)参照)上には、錘50が固着しており、この錘50によって、前述したように、振動子10の重心位置P1が調整されて、支持部材20の支持の中心位置P2に略一致した重心調整位置P3に移動する。なお、錘50は振動子10の被支持部15からはみ出さない形状に設計され、振動子10を覆うパッケージ40の小型化を優先している。
【0057】
ここで図5に示すように、支持の中心位置P2と重心調整位置P3は近接するが、細かくは振動子10の支持の中心位置P2と重心調整位置P3は、Y軸方向で距離y1だけずれている。これは、一つの錘50の大きさ(重さ)と固着位置では、振動子10の重心位置P1を調整しきれないからである。
【0058】
また、図6において振動子10の厚み方向のZ軸方向に着目すると、重心位置P1を調整するための錘50は、振動子10の表面の片側に固着しているので、重心調整位置P3は、錘50が固着されている方向(+Z軸方向)に移動してしまう。このため、振動子10の支持の中心位置P2と重心調整位置P3は、Z軸方向で距離z1だけずれている。
【0059】
このように、第1の実施形態においては、振動子10の重心調整位置P3は、錘50によって調整されて支持の中心位置P2に近接し略一致するが、Y軸方向においてもZ軸方向においても、それぞれ距離y1、距離z1だけずれている。なお、X軸方向も前述したように、重心位置P1が検出脚13側(+X軸方向)にずれていることによって、支持の中心位置P2と重心調整位置P3は、わずかにずれているが、ずれ量は極めて小さいので無視できる。
【0060】
以上のことから、振動子10に外部からパッケージ40(図1参照)を介して振動や衝撃が伝わると、振動子10は支持の中心位置P2と重心調整位置P3のずれ量に応じたモーメントが、支持の中心位置P2を支点として発生し、振動子10は、矢印X1(X軸方向、図5)や矢印Z1(Z軸方向、図6)のような揺れが発生する。
【0061】
また、これらの揺れX1、Z1は合成されて複雑な揺れとなるが、前述したように、重心調整位置P3は錘50によって調整されて支持の中心位置P2に近接しているので、外部からの振動によって発生するモーメントは従来例(図14、図15参照)と比較して小さくなり、従って揺れ量はわずかであって、振動子デバイス1の安定性は大きく改善される。
【0062】
[第1の実施形態の振動子デバイスの回路構成の説明:図7]
次に、第1の実施形態の振動子デバイスの回路構成の概略を図7のブロック図を用いて説明する。図7において、振動子デバイス1は、振動子10と、この振動子10を発振さ
せて角速度を検出する制御IC30によって構成される。振動子10は、2本の駆動脚11、12と1本の検出脚13を有するが、このブロック図では、便宜上、駆動脚11、12をひとつとして図示している。
【0063】
制御IC30は、振動子10を発振させる発振回路32と、振動子10に印加された角速度に起因して発生する検出信号を入力して角速度に相当する信号を外部に出力する検出回路33を有している。
【0064】
制御IC30の発振回路32は、図示しないが、電流電圧変換回路、移相回路、振幅検出回路、利得可変増幅回路等によって構成され、これらの回路の動作によって、振動子10を発振させ、帰還信号に応じて駆動信号の大きさを調整し、振動子10の振動振幅を常に一定状態に保持する機能を備えている。
【0065】
また、検出回路33は、図示しないが、二つの変位検出回路、差動増幅回路、同期検波回路、増幅回路、ローパスフィルタ等によって構成される。ここで、二つの変位検出回路は、振動子10の検出電極に接続されて検出信号を出力し、各回路の動作によって振動子10に印加された角速度に応じた角速度出力信号OUT1を出力する。
【0066】
また、振動子10の各電極と制御IC30とは、前述したように、支持部材20の板バネ21を配線として接続される。たとえば、振動子10の駆動脚11、12の駆動電極16a、16bは、板バネ21aと21cを介して制御IC30の発振回路32に接続される。また、振動子10の検出脚13の検出電極17a、17bは、板バネ21dと21eを介して制御IC30の検出回路33に接続される。また、振動子10のVSS(図示せず)は、板バネ21bを介して、回路のVSSに接続される。
【0067】
なお、図1の説明で前述したように、制御IC30は、ワイヤー31を介してパッケージ40の配線パターンに接続されるが、このブロック図では、ワイヤー31は図示を省略している。また、制御IC30は、外部から電源供給を受けて動作するが、電源関係の配線も図示を省略している。
【0068】
以上のように、第1の実施形態は、振動子10の表面の片側に一つの錘50を配置し、この錘50によって振動子10の重心位置P1を移動させ、支持部材20による支持の中心位置P2と移動した重心調整位置P3とを近接し略一致させることが出来るので、防振マウントの理想形に近い構造を得ることが出来る。また、支持部材20は弾性材の板バネ21からなるので、振動子10を浮上状態で支持することができ、また、振動子10上に錘50を設けることで、振動子10の質量を適切な値に増やすことが出来る。
【0069】
この結果、錘50によって支持の中心位置P2と振動子10の重心調整位置P3とを近接させることと、振動子10を適切なバネ定数を有する弾性材の支持部材20で支持し、且つ、錘50によって振動子10の質量を適切にすることで、振動子の振動伝達率を小さくできることの相乗効果により、優れた防振効果が発揮されて、外部から振動や衝撃による外乱が加えられたとしても、外乱を緩和し、更に外乱によって発生するモーメントを小さくできるので、外来振動や衝撃に起因するノイズを低減して、安定した信号を出力する振動子デバイスを提供することが出来る。
【0070】
また、上下左右が対称である複数の板バネ21を備えた支持部材20によって振動子10を支持しているので、振動子10を安定して支持することが出来る。また、支持部材20の板バネ21はフレキシブルプリント基板からなるので、極めて小型の支持部材を高精度に一括して製造でき、振動子デバイスの小型化と、特性ばらつきの少ない高性能な振動子デバイスを提供できる。
【0071】
また、振動子10の複数の振動脚は、基部14から同一の方向にのみ延在する音叉型であり、周波数基準などの通常用途の音叉型振動子に近い形状であるので、現状の製造工程をそのままで利用でき、製造が簡単でパッケージへの組み込みも容易である。
【0072】
また、第1の実施形態の振動子10に固着される錘50は、振動子10の片面に一つだけ配置されているので、錘の取り付けが容易であり、また、錘50は振動子10からはみ出さないので、小型のパッケージの中に振動子を組み込むことが出来、小型化の要求が強い携帯型電子機器への搭載に好適な振動子デバイスを提供できる。
【実施例2】
【0073】
[第2の実施形態の振動子デバイスの構成説明:図8]
次に、第2の実施形態の振動子デバイスの全体構成を図8を用いて説明する。図8は第2の実施形態の振動子デバイスの半完成の正面図である。なお、第1の実施形態の振動子デバイス(図1参照)と同一要素には同一番号を付し、重複する説明は一部省略する。
【0074】
図8において、符号2は第2の実施形態の振動子デバイスである。振動子デバイス2は、第1の実施形態と同様に角速度を検出するための振動型ジャイロセンサであり、振動子10と制御IC30と、パッケージ40´などによって構成される。振動子10は、2本の駆動脚11、12と検出脚13と基部14及び被支持部15とを備えた水晶で成る三脚音叉型の水晶振動子である。
【0075】
振動子10は、第1の実施形態と同様に被支持部15の表面に支持部材20が接着等によって固着されている。弾性材から成る支持部材20の複数の板バネ21は、振動子10の被支持部15の表面に固着されることで、振動子10の電極(図3参照)と電気的に接続される。
【0076】
パッケージ40´は、第1の実施形態のパッケージ40と同様であるが、パッケージ40´のY軸方向(長手方向)は、第1の実施形態のパッケージ40よりも所定の長さだけ長く設計されている。これについて詳細は後述するが、振動子10に固着される第2の実施形態の錘が、第1の実施形態の錘50より、Y軸方向に長いからである。
【0077】
また、支持部材20の複数の板バネ21の先端は、第1の実施形態と同様に、パッケージ40´の接続部41に導電性接着剤等で固着される。これにより、振動子10は、パッケージ40´のどの箇所にも接触せず、振動子10は支持部材20によって浮上状態で支持される。また、振動子10の各電極(図3参照)は、固着される板バネ21を介して、パッケージ40´の配線電極43と電気的に接続される。
【0078】
符号51はタングステンからなる錘であり、振動子10の被支持部15の表面の支持部材20上に接着剤等によって固着される。この錘51は、第1の実施形態の錘50よりもY軸方向に長いために面積が広く、且つ厚みが薄い形状である。この錘51の形状によって、第2の実施形態の振動子10の重心調整位置は、第1の実施形態の重心調整位置P3と異なるが、この第2の実施形態の重心調整位置の詳細は後述する。
【0079】
制御IC30は、パッケージ40´の内部の実装部42に実装され、金属細線からなるワイヤー31によって制御IC30とパッケージ40´は電気的に接続されるが、この形態は、第1の実施形態と同様であるので説明は省略する。また、振動子10と制御IC30の配線および、制御IC30の内部回路構成も第1の実施形態(図7参照)と同様であるので説明は省略する。
【0080】
[第2の実施形態の振動子の構成説明:図9]
次に、第2の実施形態の振動子の構成の詳細を図9を用いて説明する。図9は第2の実施形態の振動子10の正面図(図面上左側)と、正面図を切断線C−C´で切断した振動子10の断面図(図面上右側)である。図9において、振動子10は第1の実施形態と同様の形状であり、被支持部15に固着された支持部材20によって支持され、支持部材20の中心が振動子10の支持の中心位置P2となる。
【0081】
また、支持部材20上には前述したように錘51が固着しており、この錘51によって、第1の実施形態と同様に振動子10の重心位置P1が調整される。ここで錘51の形状は、第1の実施形態の錘50よりも、支持の中心位置P2を基点として−Y軸方向に所定の長さだけ長く、その分だけ面積が広い。これにより、錘51は振動子10の被支持部15より−Y軸方向にはみ出している。また、錘51の厚みは錘50よりも薄い形状である。
【0082】
錘51のこのような形状によって、錘51の単体の重心は、第1の実施形態の錘50の重心よりも−Y軸方向に移動するので、錘51が固着された振動子10の重心調整位置P4は、第1の実施形態の重心調整位置P3よりも−Y軸方向に移動できて、錘51のY軸方向の長さを調整することで、重心調整位置P4は、Y軸方向で支持の中心位置P2に一致させることが出来る。なお、支持の中心位置P2と重心調整位置P4のX軸方向のずれは、極めて小さいので無視できる。
【0083】
また、図9の断面図から振動子10のZ軸方向に着目すると、錘51は第1の実施形態の錘50よりも薄いので、Z軸方向の錘51の重心は、支持の中心位置P2に近づくことができる。これにより、錘51が固着された振動子10のZ軸方向の重心調整位置P4は、第1の実施形態の重心調整位置P3よりも支持の中心位置P2に近接して、振動子10の支持の中心位置P2と重心調整位置P4は、Z軸方向でほぼ一致させることが出来る。
【0084】
すなわち、第2の実施形態の振動子10の重心調整位置P4は、錘51の形状を−Y軸方向に長くして、且つ、厚みを薄くすることで、X軸Y軸Z軸のすべての方向で支持の中心位置P2に、ほぼ一致させることが出来る。
【0085】
これにより、振動子10に外部からパッケージ40´(図8参照)を介して振動が伝わったとしても、振動子10のX軸Y軸Z軸のすべての方向で支持の中心位置P2と重心調整位置P4が、ほぼ一致しているので、支持の中心位置P2を支点とするモーメントの発生は極めて小さくなり、これによって振動子10の揺れ量は、更にわずかになる。
【0086】
以上のように、第2の実施形態は、振動子10の表面の片側に一つの錘51を配置し、この錘51の形状を−Y軸方向に長くし、且つ、薄くすることで、支持部材20による支持の中心位置P2と移動した重心調整位置P4とをほぼ一致させることが出来る。また、支持部材20は弾性材の板バネ21からなるので、振動子10を浮上状態で支持することができ、また、振動子10上に錘51を設けることで、振動子10の質量を適切な値に増やすことが出来る。
【0087】
この結果、錘51によって支持の中心位置P2と重心調整位置P4とをほぼ一致させることと、振動子10を適切なバネ定数を有する弾性材の支持部材20で支持し、且つ、錘51によって振動子10の質量を適切にすることで、振動子の振動伝達率を小さくできることの相乗効果により、優れた防振効果が発揮されて、外部から振動や衝撃による外乱が加えられたとしても、外乱を緩和し、更に外乱によって発生するモーメントは極めて小さいので、外来振動や衝撃に起因するノイズを低減して、安定した信号を出力する振動子デバイスを提供することが出来る。
【0088】
なお、前述したように、錘51は、−Y軸方向に所定の長さだけ長くなるので、この錘51の−Y軸方向の延長分に応じて、振動子10を組み込むパッケージ40´のY軸方向の長さを長くする必要がある(図8参照)。このため、第2の実施形態の振動子デバイスは、外形サイズが多少大きくなるが、外乱による影響を受けにくい安定性が優先されるジャイロセンサなどに好適である。
【実施例3】
【0089】
[第3の実施形態の振動子デバイスの構成説明:図1、図10]
次に、第3の実施形態の振動子デバイスの構成を図1と図10を用いて説明する。なお、図1は前述の第1の実施形態の振動子デバイスの半完成の正面図であるが、第3の実施形態の振動子デバイスの半完成の正面図は、図1と一部の符号は異なるが構成は同様であるので図1を用いて説明する。また、図10は図1の切断線A−A´で切断した第3の実施形態の振動子デバイスの半完成の断面図である。なお、第1の実施形態の振動子デバイス1と同一要素には同一番号を付し、重複する説明は一部省略する。
【0090】
図1および図10において、符号3は第3の実施形態の振動子デバイスである。振動子デバイス3は、第1の実施形態と同様に角速度を検出するための振動型ジャイロセンサであり、振動子10と制御IC30と、パッケージ40などによって構成される。振動子10は、2本の駆動脚11、12と検出脚13と基部14及び被支持部15とを備えた三脚音叉型の水晶振動子である。
【0091】
振動子10は、第1の実施形態と同様に被支持部15の表面に支持部材20が接着等によって固着されている。弾性材から成る支持部材20の複数の板バネ21は、振動子10の被支持部15の表面に固着されることで、振動子10の電極(図3参照)と電気的に接続される。
【0092】
パッケージ40は、第1の実施形態のパッケージ40と同様の仕様であり、外形サイズも第1の実施形態と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0093】
また、支持部材20の複数の板バネ21の先端は、第1の実施形態と同様にパッケージ40の接続部41に導電性接着剤等で固着される。これにより、振動子10は、パッケージ40のどの箇所にも接触せず、振動子10は支持部材20によって浮上状態で支持される。
【0094】
符号52は、第1の実施形態と同様にタングステンからなる錘であり、振動子10の被支持部15の表面の支持部材20に接着剤等によって固着される。また、符号53は、錘52と同様にタングステンからなる錘であり、振動子10の被支持部15の裏面に接着剤等によって固着される。ここで、錘52を第1の錘と定義し、錘53を第2の錘と定義する。
【0095】
この第1の錘52は、第1の実施形態の錘50と同等の形状であり、第2の錘53の形状は第1の錘52より小さい。この二つの第1の錘52と第2の錘53によって、振動子10の重心位置P1は移動するが、詳細は後述する。なお、第2の錘53は、振動子10の裏側のパッケージ40の隙間45に置かれるので、パッケージの厚みに影響しない。
【0096】
制御IC30は、パッケージ40の内部の実装部42に実装され、金属細線からなるワイヤー31によって制御IC30とパッケージ40は電気的に接続されるが、この形態は、第1の実施形態と同様であるので説明は省略する。また、振動子10と制御IC30の配線および、制御IC30の内部回路構成も第1の実施形態(図7参照)と同様であるの
で、説明は省略する。
【0097】
[第3の実施形態の振動子の構成説明:図11]
次に、第3の実施形態の振動子の構成の詳細を図11を用いて説明する。図11は第3の実施形態の振動子10の正面図(図面上左側)と、正面図を切断線D−D´で切断した振動子10の断面図(図面上右側)である。図11において、振動子10は第1の実施形態と同様の形状であり、被支持部15で支持部材20によって支持され、支持部材20の中心が振動子10の支持の中心位置P2となる。
【0098】
また、振動子10の表面の支持部材20には、前述したように第1の錘52が固着しており、また、振動子10の裏面には第2の錘53が固着している。なお、第2の錘53は、図11の正面図では破線で示している。第3の実施形態においては、この二つの錘である第1の錘52と第2の錘53によって、振動子10の重心位置P1が調整される。
【0099】
ここで第1の錘52は、第1の実施形態の錘50と同等の形状の錘であり、この第1の錘52によって、振動子10の重心は第1の実施形態の重心調整位置P3と同等の位置に調整される(図5、図6参照)。また、振動子10の裏面の第2の錘53の形状と固着位置を調整することで、第3の実施形態の振動子10の重心調整位置P5は、X軸Y軸Z軸のすべてにおいて、支持部材20の支持の中心位置P2と一致させることが出来る。
【0100】
すなわち、第3の実施形態の重心調整位置P5のY軸方向は、第2の錘53を第1の錘52より−Y軸方向にずらして振動子10の裏面に固着することで、第1の実施形態で支持の中心位置P2より+Y軸方向にy1だけずれていた重心調整位置P3(図5参照)を、−Y軸方向に調整して支持の中心位置P2に一致させることが出来る。
【0101】
また、第3の実施形態の重心調整位置P5のZ軸方向においても、第2の錘53を振動子10の裏面に固着することで、第1の実施形態で+Z軸方向にz1だけずれていたZ軸の重心調整位置P3(図6参照)を、−Z軸方向に調整して支持の中心位置P2に一致させることが出来る。なお、X軸方向のずれについては、前述したようにわずかであるので無視できるが、完全に一致させる場合は、錘52または錘53を図面上左側(−X軸方向)に、わずかにずらして固着するとよい。
【0102】
以上のように、第3の実施形態は、振動子10の両面に第1の錘52と第2の錘53を一つずつ配置し、これらの錘52、53の形状(重さ)と固着位置を調整することで、支持部材20による支持の中心位置P2と重心調整位置P5とをX軸Y軸Z軸のすべてにおいて一致させることができ、防振マウントの理想形の構造を得ることが出来る。また、支持部材20は弾性材の板バネ21からなるので、振動子10を浮上状態で支持することができ、また、振動子10上に第1の錘52と第2の錘53を設けることで、振動子10の質量を適切な値に増やすことが出来る。
【0103】
この結果、第1の錘52と第2の錘53によって支持の中心位置P2と重心調整位置P5とを一致させることと、振動子10を適切なバネ定数を有する弾性材の支持部材20で支持し、且つ、第1の錘52と第2の錘53によって振動子10の質量を適切にすることで、振動子の振動伝達率を小さくできることの相乗効果により、優れた防振効果が発揮されて、外部から振動や衝撃による外乱が加えられたとしても、外乱を緩和し、更に外乱によって発生するモーメントをほぼ零にできるので、外来振動や衝撃に起因するノイズを低減して、安定した信号を出力する振動子デバイスを提供することが出来る。
【0104】
また、第3の実施形態の振動子デバイスは、第1の錘52と第2の錘53とを調整することで、支持の中心位置P2と重心調整位置P5とをX軸Y軸Z軸のすべてで一致させる
ことができるので、振動子デバイスをどのような姿勢で使用しても誤差の少ない安定した性能を得ることが出来、また、様々な方向からの外来振動や衝撃に対して耐振性に優れ、高いS/N比を有する高精度な振動子デバイスを提供出来る。
【0105】
また、第3の実施形態の振動子デバイスは、錘を二つに分けて振動子に固着することで、パッケージ内の限られたスペースを有効に活用でき、パッケージの小型化を実現できる。このため、外形サイズが小さく、且つ、優れた安定性が要求されるジャイロセンサに好適である。
【実施例4】
【0106】
[第4の実施形態の支持部材の構成説明:図12]
次に、第4の実施形態の振動子に固着される支持部材の構成を図12を用いて説明する。ここで、図12(a)は第4の実施形態の支持部材25の正面図、図12(b)は側面図、図12(c)は背面図である。図12(a)〜図12(c)において、支持部材25は、第1〜第3の実施形態の支持部材20と同様に、フレキシブルプリント基板からなり、弾性材による複数の板バネ26と、この板バネ26に密着するシート状のポリイミドからなる基板27で構成される。
【0107】
複数の板バネ26は、銅箔にニッケルを下地とした金メッキを施しており、26a〜26eの複数に別れて構成されている。板バネ26a、26c、及び板バネ26bの一方の端部は、振動子10の一方の側に位置し、板バネ26d、26e、及び板バネ26bの他方の端部は、振動子10の他方の側に位置するように、支持部材25は振動子10に固着される。
【0108】
そして、板バネ26bは、第1の実施形態の板バネ21bと同様に、振動子10の一方の側から振動子10の他方の側まで連続して形成された配線部26b´を有している。この板バネ26bは、振動子10と制御IC30のグランド電極VSSに接続される。
【0109】
また、板バネ26a、26c、26d、26eは、図示するように、各板バネの端部から基板27に繋がる領域が、図示するように波形の形状を有している。なお、板バネ26bは、直線形状であるが、板バネ26bも波形でもよい。このように、第4の実施形態は板バネ26の形状を波形、または波形に近い形状にすることで、弾性材である板バネ26のバネ定数を第1〜第3の実施形態の支持部材20より小さくできる特徴を備えている。
【0110】
[第4の実施形態の振動子の構成説明:図13]
次に、第4の実施形態の振動子の構成を図13を用いて説明する。なお、第4の実施形態の振動子は、前述した第3の実施形態の振動子の構成で、支持部材20を波形の板バネ26を有する支持部材25に変更したものである。ここで図13は、振動子10の正面図(図面上左側)と、正面図を切断線E−E´で切断した振動子10の断面図(図面上右側)である。
【0111】
図13において、第4の実施形態の振動子10の形態は、前述の第3の実施形態の振動子10と同一であり、振動子10は、基部14と接続した被支持部15で支持部材25によって支持される。
【0112】
また、振動子10の表面の支持部材25上には、第3の実施形態と同様な第1の錘52が固着しており、また、振動子10の裏面には、第2の錘53が固着している。すなわち、第4の実施形態においても、第1の錘52と第2の錘53によって、振動子10の重心位置P1が調整され、支持部材25の支持の中心位置P2とX軸Y軸Z軸のすべてにおいて一致している重心調整位置P5が存在する。
【0113】
以上のように、第4の実施形態は、振動子10の両面に第1の錘52と第2の錘53を一つずつ配置し、これらの錘52、53の形状と固着位置を調整することで、支持部材25による支持の中心位置P2と移動した重心調整位置P5とを一致させることが出来る。また、支持部材25は波形の板バネ26によって柔らかくなり、バネ定数を小さく出来る。また、振動子10上に第1の錘52と第2の錘53を設けることで、振動子10の質量を適切な値に増やすことが出来る。
【0114】
この結果、第1の錘52と第2の錘53によって支持の中心位置P2と重心調整位置P5とを一致させることと、波形の板バネ26によってバネ定数を適切に小さくした支持部材25で振動子10を支持し、且つ、第1の錘52と第2の錘53によって振動子10の質量を適切にすることで、振動子の振動伝達率を小さくできることの相乗効果により、優れた防振効果が発揮されて、外部から振動や衝撃による外乱が加えられたとしても、外乱を大幅に緩和し、更に外乱によって発生するモーメントをほぼ零にできるので、外来振動や衝撃に起因するノイズを更に低減して、安定した信号を出力する振動子デバイスを提供することが出来る。
【0115】
なお、第4の実施形態の振動子の錘は二つに限定されず、波形のバネ材26を有する支持部材25は、錘が一つである第1の実施形態の振動子、または、錘の形状が異なる第2実施形態の振動子と組み合わせても良い。ここで、第4の実施形態の波形のバネ材26を有する支持部材25を、第1または第2の実施形態の振動子と組み合わせるならば、支持部材25のバネ定数が小さくなる分、振動伝達率が小さくなるので、第1または第2の実施形態より更に安定した振動子デバイスを実現することが出来る。
【0116】
以上のように、本発明の振動子デバイスは、振動子上にタングステンの錘を固着し、弾性材の支持部材による振動子の支持の中心位置と振動子の重心位置とを、錘の形状や取り付け位置、数量等で調整して一致させると共に、振動子の振動伝達率を小さくすることにより、外来振動や衝撃に起因するノイズを低減して、外来振動による影響を受けにくい安定した信号を出力する振動子デバイスを提供することが出来るので、その効果はきわめて大きい。なお、本発明の振動子デバイスは、実施例において振動型ジャイロセンサとして説明したが、本発明はこれに限定されず、周波数基準用の振動子などにも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の振動子デバイスは、小型で耐振性に優れているので、デジタルカメラの手ぶれ防止機能や、カーナビゲーションシステムの位置検出機構など、角速度を高精度に検出するための振動型ジャイロセンサとして好適である。
【符号の説明】
【0118】
1、2、3 振動子デバイス
10 振動子
11、12 駆動脚
13 検出脚
14 基部
15 被支持部
16a、16b 駆動電極
17a、17b 検出電極
20、25 支持部材
21、26 バネ材
22、27 基板
30 制御IC
31 ワイヤー
32 発振回路
33 検出回路
40、40´ パッケージ
41 接続部
42 実装部
43 配線電極
44 開口部
45 隙間
50、51 錘
52 第1の錘
53 第2の錘
P1 振動子の重心位置
P2 振動子の支持の中心位置
P3、P4、P5 重心調整位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージの内部で弾性材からなる支持部材により振動子が支持された振動子デバイスにおいて、
前記振動子の複数の振動脚は、基部から同一の方向にのみ延在し、
前記振動子は、前記基部と接続した被支持部で前記支持部材により支持され、
前記振動子と異なる部材で形成した錘を前記振動子上に設けることで、前記支持部材による前記振動子の支持の中心位置と、前記錘が設けられた振動子の重心位置とを一致させた
ことを特徴とする振動子デバイス。
【請求項2】
前記支持部材として複数の板バネを備え、前記各板バネにより前記振動子が支持された
ことを特徴とする請求項1に記載の振動子デバイス。
【請求項3】
前記各板バネはフレキシブルプリント基板からなる
ことを特徴とする請求項2に記載の振動子デバイス。
【請求項4】
前記振動子に形成された電極と、前記パッケージに形成された配線とが、前記フレキシブル基板に形成された配線を介して接続した
ことを特徴とする請求項3に記載の振動子デバイス。
【請求項5】
前記振動子の一方の側に位置する板バネから前記振動子の他方の側に位置する板バネまで連続して形成された配線部を有し、
該配線部上に前記振動子が支持された
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の振動子デバイス。
【請求項6】
前記錘は、前記振動子の表面に設けられた第1の錘と前記振動子の裏面に設けられた第2の錘とからなる
ことを特徴とする請求項5に記載の振動子デバイス。
【請求項7】
前記振動子は、水晶振動子である
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の振動子デバイス。
【請求項8】
前記錘は、タングステンからなる
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の振動子デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−104806(P2013−104806A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249525(P2011−249525)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(000166948)シチズンファインテックミヨタ株式会社 (438)
【Fターム(参考)】