説明

振動板

【課題】スピーカや楽器の振動板に求められる各種の特性をバランス良く有し、それにより、優れた音響特性を得ることができる振動板を提供する。
【解決手段】波形に成形された木製薄板から成るコア部材2と、平らな木製薄板で構成され、コア部材2の表裏面にそれぞれ接着された表側および裏側ライナー部材3、3と、を備えている。また、コア部材2は、その木製薄板の繊維方向と波形が連続する方向とが一致するように成形されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ピアノなどの電子楽器や各種の音響機器のスピーカに適用され、また、ピアノなどのアコースティックな楽器の響板としても適用可能な振動板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スピーカ用の振動板の素材として、紙やプラスチック、アルミなどの金属が使用されている。また、振動板には、優れた音響特性を得るために、軽量であること、比弾性率が高いこと、曲げ剛性が高いこと、および内部損失が大きいことなどの特性が求められる。これらの特性を有する振動板には、次のような音響上の利点がある。すなわち、振動板が軽量であると、駆動力に対して振動板が反応しやすくなるため、振動板からの再生音の音圧が向上する。また、比弾性率が高いと、振動板を伝わる音の伝搬速度が速くなり、振動板を均一に振動させることができるので、再生帯域が広がる。さらに、曲げ剛性が高いと、音質低下の原因となる振動板の歪みや分割振動が抑制される。さらにまた、内部損失が大きいと、減衰性能が高まり、キレの良い再生音が得られる。
【0003】
上記の紙製やプラスチック製の振動板では、内部損失が比較的大きいものの、比弾性率が低く、一方、金属製の振動板では、比弾性率が比較的高いものの、内部損失が小さい。そこで近年、比較的高い比弾性率および内部損失を有する素材として、木材が注目され、木材をスピーカ用の振動板に適用した木製振動板として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この木製振動板は、無垢の木材から成り、単一の木製シートをラッパ形状に成形することによって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3882762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無垢の木材は一般に、紙やプラスチックに比べて、比弾性率が高いことで、音の伝搬速度が速く、また、アルミに比べて、内部損失が大きい。しかし、無垢の木材の内部損失は、紙やプラスチックのそれに比べて十分とは言えず、このため、上記の木製振動板では、内部損失が大きいことによる利点、すなわち高い減衰性能を十分に得ることができない。また、この木製振動板は、単一の木製シートで構成されているため、軽量化と高剛性化の両立を図ることが困難である。すなわち、木製振動板の厚さを薄くした場合、軽量化を図ることはできるものの、曲げ剛性が低下してしまい、逆に、木製振動板の厚さを厚くした場合、曲げ剛性を高めることはできるものの、重くなってしまう。このため、軽量化による利点である再生音の音圧の向上と、高剛性化による利点である音質の向上の両立を図ることができない。以上のように、従来の木製振動板は、上述した各種の特性をバランス良く備えておらず、その結果、十分な音響特性を得ることができない。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、スピーカや楽器の振動板に求められる各種の特性をバランス良く有し、それにより、優れた音響特性を得ることができる振動板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に係る発明は、波形に成形された木製薄板から成るコア部材と、平らな木製薄板で構成され、コア部材の表裏面にそれぞれ接着された表側および裏側ライナー部材と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、波形に成形された木製薄板から成るコア部材の表裏面に、木製薄板で構成された表側および裏側ライナー部材が接着されることによって振動板が構成されるので、同じ材料で構成されかつ同一の形状およびサイズを有する木製の板材(例えば、無垢の板材や合板)に比べて、みかけ密度を大幅に小さくできることで、振動板の軽量化を図ることができ、また、振動板において比較的高い剛性を確保することができる。また、木材は、紙やプラスチックに比べて、比弾性率が高いので、木製薄板で構成された振動板において、高い比弾性率を確保することができる。さらに、木材は、アルミなどの金属に比べて、内部損失が大きく、しかも、本発明の振動板は、無垢の木材に比べて内部損失が大きく、紙と同程度の内部損失を有している。以上のように、本発明の振動板は、スピーカや楽器の振動板に求められる各種の特性、すなわち軽量であること、比弾性率が高いこと、曲げ剛性が高いこと、および内部損失が大きいという特性をバランス良く有し、それにより、優れた音響特性を得ることができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の振動板において、コア部材は、その木製薄板の繊維方向と波形が連続する方向とが一致するように成形されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、コア部材を構成する木製薄板の繊維方向、すなわち、その木製薄板に含まれる繊維が延びる方向と、波形が連続する方向とが一致するので、波形に成形されたコア部材の山と谷の間に位置する、木製薄板の繊維が、表側ライナー部材と裏側ライナー部材の対向方向に延びるように配置される。通常、木材では、その繊維方向の強度が、繊維方向に直交する方向の強度に比べて非常に大きい。このため、例えば、上記構成と異なり、コア部材にすべき木製薄板を、その繊維方向と波形が連続する方向とが直交するように、換言すると、繊維方向が波形の山および谷の延びる方向に沿うように、波形に成形する場合に比べて、コア部材の厚さ方向、すなわち振動板の厚さ方向の強度を高めることができる。したがって、本発明によれば、より高い剛性を有する振動板を得ることができる。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の振動板において、コア部材は、互いに積層された複数のコア部材で構成されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、コア部材を、互いに積層した複数のコア部材で構成するので、振動板の厚さ方向の強度をより一層高めることができ、したがって、より一層高い剛性を有する振動板を得ることができる。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の振動板において、複数のコア部材のうちの隣り合うコア部材が、平らな木製薄板から成る中間ライナー部材を介して積層されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、複数のコア部材のうちの隣り合うコア部材が上記の中間ライナー部材を介して積層されるので、隣り合うコア部材を直接、積層する場合に比べて、積層すべき複数のコア部材を容易にかつ安定して積層させることができる。
【0015】
請求項5に係る発明は、請求項3または4に記載の振動板において、複数のコア部材のうちの隣り合うコア部材が、それぞれの波形の連続する方向が互いに直交するように配置されていることを特徴とする。
【0016】
波形に成形されたコア部材では通常、その波形の連続する方向に対する曲げ剛性が低いものの、波形の連続する方向と直交する方向(波形の山および谷の延びる方向)に対する曲げ剛性は、非常に大きい。したがって、本発明によれば、隣り合うコア部材のそれぞれの波形の連続する方向が互いに直交するように、複数のコア部材が配置されるので、互いに曲げ剛性が低い方向に対する剛性を補い合い、それにより、振動板全体としての曲げ剛性を高めることができる。
【0017】
請求項6に係る発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の振動板において、表側および裏側ライナー部材の一方の外方に凸に湾曲するように成形されていることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、振動板を、例えばアコースティックピアノの響板に適用する場合、外方に凸に湾曲する、表側および裏側ライナー部材の一方を、弦の振動を響板に伝える駒側に配置することにより、いわゆるムクリを有する響板を得ることができる。これにより、弦の振動を効率的に響板に伝えることができ、ピアノ特有の張りのある音色と音量を得ることができる響板を実現することができる。
【0019】
請求項7に係る発明は、請求項6に記載の振動板において、表側および裏側ライナー部材の他方の外面に、響棒が取り付けられていることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、表側および裏側ライナー部材の他方の外面に取り付けられた響棒により、響板に対し、上記のムクリを維持するとともに、響板自体の強度を高めることができる。なお、響棒は、響板における振動の伝搬速度の遅い方向に延びるよう、配置することが好ましい。これにより、弦の振動を響板全体に瞬時に伝えることができ、より優れた音響特性を有する響板を得ることができる。
【0021】
請求項8に係る発明は、請求項1ないし7のいずれかに記載の振動板において、コア部材ならびに表側および裏側ライナー部材を構成する少なくとも一つの木製薄板は、複数の木材単板を積層することによって構成されていることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、コア部材ならびに表側および裏側ライナー部材を構成する少なくとも一つの木製薄板が、複数の木材単板を積層することによって構成されているので、コア部材ならびに表側および裏側ライナー部材をいずれも木材単板のみで構成する振動板に比べて、高い剛性を有する振動板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態による振動板を示しており、(a)は斜視図、(b)は分解斜視図、(c)は部分断面図である。
【図2】図1(c)と同様の振動板の部分断面図であり、コア部材において採用可能な各種の波形を示している。
【図3】本発明の第2実施形態による、コア部材を積層した振動板を示しており、(a)は斜視図、(b)は分解斜視図である。
【図4】振動板をアコースティックピアノの響板に適用する場合の説明図であり、(a)は全体が平らな振動板、(b)はムクリを有する響板、(c)は(b)の響板に響棒を取り付けた状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1(a)は、本発明の第1実施形態による振動板を示している。この振動板1Aは、電子ピアノなどの電子楽器や各種の音響機器のスピーカに適用され、また、ピアノなどのアコースティックな楽器の響板としても適用可能なものである。
【0025】
なお、図示の便宜上、振動板1Aについて、平面形状が矩形のものを示しているが、その平面形状は、適用されるスピーカの形状や楽器に応じて、矩形以外に、各種の形状(円形や多角形、異形など)に成形される。また、図示は省略するが、振動板1Aがスピーカに適用される場合、その振動板1Aの一方の面側には、入力された電気信号に応じて駆動され、振動板1を加振するアクチュエータが取り付けられる。
【0026】
図1(a)〜(c)に示すように、振動板1Aは、波形に成形されたコア部材2と、このコア部材2の表裏面にそれぞれ接着された、平らなライナー部材3、3(表側および裏側ライナー部材)とを備えている。コア部材2および各ライナー部材3はいずれも、木製薄板から成り、平面形状が互いに同一でかつ所定厚さ(例えば0.4〜1.5mm)を有している。また、コア部材2および各ライナー部材3の木製薄板は、木材の表面をスライサやロータリーレースなどで切削加工することによって得られる木材単板で構成されている。
【0027】
なお、これらのコア部材2およびライナー部材3の木材の種類は特に限定されるものではないが、例えば、スプルース、スギ、ヒノキ、エゾマツ、またはトドマツなどの針葉樹、カエデ、メープル、ブナ、バスウッド、パイン、ポプラ、またはキリなどの広葉樹、さらにはタケなどを採用することが可能である。
【0028】
波形に成形されたコア部材2は、所定のピッチP(例えば10mm)および高さH(例えば4mm)を有しており、コア部材2を構成する木製薄板の繊維方向と、波形が連続する方向(図1(c)の左右方向)とが一致するように成形されている。
【0029】
なお、コア部材2の波形は、図1(c)に示す正弦波のような形状に限定されるものではなく、例えば鋸波や矩形波など、各種の形状を採用することが可能である。図2(a)〜(d)は、コア部材2において採用可能な各種の波形を例示しており、(a)は図1の波形に比べてピッチが短い波形、(b)は三角形状の波形、(c)は台形状の波形、(d)は矩形状の波形を示している。なお、これらの波形のうち、(c)の台形状および(d)の矩形状の波形では、コア部材2とライナー部材3との接触面積、すなわち接着面積を大きくできるので、両者2および3を強固に接着することができる。
【0030】
一方、各ライナー部材3は、平らな木材単板から成る木製薄板で構成されている。また、図示は省略するが、各ライナー部材3を構成する木製薄板の繊維方向は、コア部材2のそれと一致している。
【0031】
なお、コア部材2および/または各ライナー部材3を構成する木製薄板は、複数枚の木材単板を積層することによって構成してもよく、この場合、各木材単板の繊維方向を、同一方向に揃えるように積層する他、交互に直交するように積層してもよい。また、複数の木材単板の間に紙製シートや樹脂製シートを挟むように積層した木製薄板を、コア部材2やライナー部材3に採用してもよい。
【0032】
以上のように構成されたコア部材2および2つのライナー部材3、3を用いて、コア部材2の表裏面にそれぞれ、ライナー部材3、3を接着させることによって、振動板1Aが構成される。なお、コア部材2とライナー部材3を接着させる接着剤には、両者を強固に接着し、長期間にわたって良好な接着状態を維持するものであればよい。そのような接着剤として、例えば、水溶性ビニルウレタン系、酢酸ビニル系、溶剤タイプの接着剤、エマルジョンタイプの接着剤、合成ゴム系、ホットメルトタイプの接着剤、尿素系樹脂、尿素メラミン共重合樹脂、フェノール系樹脂、レゾルシノール系樹脂、エポキシ系などの熱硬化性樹脂系接着剤を採用可能である。
【0033】
以上のように構成された振動板1Aによれば、両ライナー部材3、3間のコア部材2が波形に成形されているので、同じ材料で構成されかつ同一の形状およびサイズを有する木製の板材、例えば無垢の板材や合板に比べて、みかけ密度を大幅に小さくできることで、振動板1Aの軽量化を図ることができ、また、振動板1Aにおいて比較的高い剛性を確保することができる。また、木材は、紙やプラスチックに比べて、比弾性率が高いので、木製薄板で構成された振動板1Aにおいて、高い比弾性率を確保することができる。さらに、木材は、アルミなどの金属に比べて、内部損失が大きく、しかも、試験データは省略するが、振動板1Aは、無垢の木材に比べて、内部損失が大きく、紙と同程度の内部損失を有することが確認された。
【0034】
以上のように、振動板1Aは、スピーカや楽器の振動板に求められる各種の特性、すなわち軽量であること、比弾性率が高いこと、曲げ剛性が高いこと、および内部損失が大きいという特性をバランス良く有し、それにより、優れた音響特性を得ることができる。
【0035】
また、コア部材2を構成する木製薄板の繊維方向と、波形が連続する方向とが一致するので、波形に成形されたコア部材2の山と谷の間に位置する、木製薄板の繊維が、両ライナー部材3、3の対向方向に延びるように配置される。前述したように、木材では、その繊維方向の強度が、繊維方向に直交する方向の強度に比べて非常に大きいので、振動板1Aの厚さ方向の強度を高めることができる。したがって、コア部材にすべき木製薄板を、その繊維方向が波形の山および谷の延びる方向に沿うように、波形に成形する場合に比べて、より高い剛性を有する振動板1Aを得ることができる。
【0036】
さらに、この振動板1Aを用いたスピーカでは、低音から高音までフルレンジの帯域を効率良く出力することが可能であり、また、ライナー部材3の表面に現れる木目を活かすことにより、良好な外観を有するスピーカを実現することができる。
【0037】
図3(a)は、本発明の第2実施形態による振動板1Bを示している。この振動板1Bは、2つのコア部材2、2’を接着によって2層に積層したものである。具体的には、前記振動板1Aに対し、そのコア部材2と一方(図3では上側)のライナー部材3との間に、コア部材2と同様のコア部材2’が配置されるとともに、両コア部材2、2’の間に、ライナー部材3と同様の中間ライナー部材3’が配置されている。
【0038】
コア部材2’は、振動板1Aのコア部材2と同じ木製薄板を波形に成形したものであり、波形の連続する方向がコア部材2のそれに対して直交するように配置されている。一方、中間ライナー部材3’は、ライナー部材3と同じ平らな木製薄板で構成されている。
【0039】
このように構成された振動板1Bによれば、その厚さ方向の強度をより一層高めることができる。また、2つのコア部材2、2’を、中間ライナー部材3’を介して積層するので、振動板1Bの製造時において、両コア部材2、2’を互いに直接、積層する場合に比べて、両コア部材2、2’を容易にかつ安定して積層させることができる。さらに、両コア部材2、2’は、それぞれの波形の連続する方向が互いに直交するように配置されているので、互いに曲げ剛性が低い方向に対する剛性を補い合い、それにより、振動板1B全体としての曲げ剛性を高めることができる。
【0040】
なお、本実施形態では、2つのコア部材2、2’を有する2層構造の振動板1Bを例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、3つ以上のコア部材2を用いて、3層以上の振動板としてもよい。また、中間ライナー部材3’を省略し、隣り合うコア部材2、2’同士を直接、積層したり、中間ライナー部材3’の両側のコア部材2、2’の配置状態を同じ(波形の連続する方向が互いに同じ)にしたりすることも可能である。
【0041】
次に、図4を参照して、前述した振動板1Aを、アコースティックピアノの響板に適用する場合について説明する。同図(a)に示す振動板1A、すなわち全体が平らな振動板1Aを、ピアノの響板に適用する場合、同図(b)に示すように、一方(図4では上側)のライナー部材3の外方に凸に湾曲するように成形する。そして、凸に湾曲するライナー部材3を、弦(図示せず)の振動を響板1Cに伝える駒(図示せず)側に配置することにより、いわゆるムクリを有する響板1Cを得ることができる。これにより、弦の振動を効率的に響板1Cに伝えることができ、ピアノ特有の張りのある音色と音量を得ることができる響板1Cを実現することができる。
【0042】
図4(c)は、響板1Cの他方(図4では下側)のライナー部材3の外面に、響棒4を取り付けた状態を示している。外方に凸に湾曲するライナー部材3と反対側のライナー部材3に、複数(図4(c)では1つのみ図示)の響棒4を取り付けることにより、響板1Cに対し、上記のムクリを維持するとともに、響板1C自体の強度を高めることができる。なお、響棒4は、響板1Cにおける振動の伝搬速度の遅い方向に延びるよう、配置することが好ましい。これにより、弦の振動を響板1C全体に瞬時に伝えることができ、より音響特性に優れた響板1Cを得ることができる。
【0043】
なお、本発明は、説明した上記実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、第1および第2実施形態では、コア部材2、2’として、それらの木製薄板の繊維方向と、波形が連続する方向とが一致するように成形したものを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、コア部材2、2’に代えて、繊維方向が波形の山および谷の延びる方向に沿うように成形されたコア部材を用いることも可能である。また、実施形態では、本発明の振動板を適用可能なアコースティックな楽器としてピアノを例示したが、ピアノ以外に、バイオリンやギターなどにも適用可能であり、それらの表板などに採用することが可能である。さらに、実施形態で示した振動板1A、1Bの細部の構成などは、あくまで例示であり、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することができる。
【符号の説明】
【0044】
1A 振動板
1B 振動板
1C 響板
2 コア部材
2’ コア部材
3 ライナー部材(表側および裏側ライナー部材)
3’ 中間ライナー部材
4 響棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波形に成形された木製薄板から成るコア部材と、
平らな木製薄板で構成され、前記コア部材の表裏面にそれぞれ接着された表側および裏側ライナー部材と、
を備えていることを特徴とする振動板。
【請求項2】
前記コア部材は、その木製薄板の繊維方向と前記波形が連続する方向とが一致するように成形されていることを特徴とする請求項1に記載の振動板。
【請求項3】
前記コア部材は、互いに積層された複数のコア部材で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の振動板。
【請求項4】
前記複数のコア部材のうちの隣り合うコア部材が、平らな木製薄板から成る中間ライナー部材を介して積層されていることを特徴とする請求項3に記載の振動板。
【請求項5】
前記複数のコア部材のうちの隣り合うコア部材が、それぞれの前記波形の連続する方向が互いに直交するように配置されていることを特徴とする請求項3または4に記載の振動板。
【請求項6】
前記表側および裏側ライナー部材の一方の外方に凸に湾曲するように成形されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の振動板。
【請求項7】
前記表側および裏側ライナー部材の他方の外面に、響棒が取り付けられていることを特徴とする請求項6に記載の振動板。
【請求項8】
前記コア部材ならびに前記表側および裏側ライナー部材を構成する少なくとも一つの木製薄板は、複数の木材単板を積層することによって構成されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の振動板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−211623(P2011−211623A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79151(P2010−79151)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【Fターム(参考)】