説明

排気ガス制御弁の固着防止装置および方法

【課題】排気ガス制御弁を過度に開閉することなく、固着防止を図ることができる排気ガス制御弁の固着防止装置および方法を提供する。
【解決手段】車両のエンジン10の排気ガスが流通する通路3に、該通路3の流量を調整するための排気ガス制御弁4が設けられ、その排気ガス制御弁4に上記排気ガス中の煤などの汚れが堆積して該排気ガス制御弁4が固着するのを防止するために、上記エンジン10を停止する際に上記排気ガス制御弁4に開閉動作を行わせる固着防止装置1において、上記エンジン10の運転状態または上記車両の走行状態を基に、上記排気ガス制御弁4に堆積した煤などの汚れを該排気ガス制御弁4から落とすために必要な開閉回数を算出する回数算出手段66と、上記エンジン10が停止する際に、上記排気ガス制御弁4を、上記回数算出手段66により算出された開閉回数だけ開閉動作させる制御手段66とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気ガスが流通する通路に設けられた排気ガス制御弁の固着を防止するものであり、特に、排気ガスの一部を吸気系に還流するためのEGR装置のEGRバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンの排気ガスが流通する通路に設けられた排気ガス制御弁として、排ガス再循環装置(排気還流装置、以下、EGR装置という)のEGRバルブがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
EGR装置は、排気ガスに含まれるNOxを低減するために、ディーゼルエンジンの排気ガスの一部を吸気系に還流するものであり、例えば、吸気通路と排気通路とを連通するEGR通路を有する。そのEGR通路の流量を調整するために、上述したEGRバルブが、EGR通路に設けられている。
【0004】
EGRバルブは、EGR通路を流通する排気ガスに曝されているので、EGRバルブには、エンジン運転中に、排気ガス中に含まれる煤やオイルなどの汚れが付着、堆積する。その堆積した汚れは、EGRバルブの固着の原因となってしまう。
【0005】
そこで、従来の固着防止方法として、エンジン停止後に固着防止のために、所定の回数だけEGRバルブを開閉するものがある。その固着防止方法では、EGRバルブを開閉することにより、EGRバルブの摺動部(ステム)に堆積した汚れを掻き落とし、固着を防止している。
【0006】
【特許文献1】特開2007−138893公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の固着防止方法では、開閉回数が一定回数に固定されていることから、以下のような問題があった。
【0008】
エンジン停止後に、必ずEGRバルブを一定の回数開閉するため、頻繁にエンジンを停止する近距離配送車などでは、EGRバルブの動作回数が多くなりすぎ、EGRバルブの寿命を越えてしまい、エンジンや車両の寿命の前にバルブ故障に至る虞がある、という問題点がある。一方、長距離、長時間運転する車両において、数十時間のエンジン運転後に数回のバルブ開閉では、十分な汚れの掻き落としがなされない、という問題点があった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、排気ガス制御弁を過度に開閉することなく、固着防止を図ることができる排気ガス制御弁の固着防止装置および方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、車両のエンジンの排気ガスが流通する通路に、該通路の流量を調整するための排気ガス制御弁が設けられ、その排気ガス制御弁に上記排気ガス中の煤などの汚れが堆積して該排気ガス制御弁が固着するのを防止するために、上記エンジンを停止する際に上記排気ガス制御弁を開閉動作させる固着防止装置において、上記エンジンの運転状態または上記車両の走行状態を基に、上記排気ガス制御弁に堆積した煤などの汚れを該排気ガス制御弁から落とすために必要な開閉回数を求める回数算出手段と、上記エンジンが停止する際に、上記排気ガス制御弁を、上記回数算出手段により求められた開閉回数だけ開閉動作させる制御手段とを備えたものである。
【0011】
好ましくは、上記エンジンが始動されてから停止するまでのエンジン運転時間を求めるためのエンジン運転時間算出手段を備え、上記回数算出手段は、上記開閉回数を、上記エンジン運転時間算出手段により求められたエンジン運転時間から求めるものである。
【0012】
好ましくは、上記エンジンが始動されてから停止するまでの間に上記エンジンが消費した燃料消費量を求めるための積算燃料消費量算出手段を備え、上記回数算出手段は、上記開閉回数を、上記積算燃料消費量算出手段により求められた燃料消費量から求めるものである。
【0013】
好ましくは、上記エンジンが始動されてから停止するまでの間に上記車両が走行した走行距離を求めるための積算走行距離算出手段を備え、上記回数算出手段は、上記開閉回数を、上記積算走行距離算出手段により求められた走行距離から求めるものである。
【0014】
好ましくは、上記エンジンが始動されてから停止するまでのエンジン運転時間を求めるためのエンジン運転時間算出手段と、上記エンジンが始動されてから停止するまでの間に上記エンジンが消費した燃料消費量を求めるための積算燃料消費量算出手段と、上記エンジンが始動されてから停止するまでの間に上記車両が走行した走行距離を求めるための積算走行距離算出手段とを備え、上記回数算出手段は、上記エンジン運転時間算出手段により求められたエンジン運転時間から第一の開閉回数を求め、かつ上記積算燃料消費量算出手段により求められた燃料消費量から第二の開閉回数を求め、かつ上記積算走行距離算出手段により求められた走行距離から第三の開閉回数を求め、上記制御手段は、上記回数算出手段が求めた第一から第三の開閉回数のうちの最大回数を求め、その最大回数だけ上記排気ガス制御弁を開閉動作させるものである。
【0015】
好ましくは、上記通路が、エンジンの排気ガスの一部を吸気系に還流させるためのEGR通路であり、上記排気ガス制御弁が、上記EGR通路に設けられたEGRバルブであるものである。
【0016】
上記目的を達成するために本発明は、車両のエンジンの排気ガスが流通する通路に、該通路の流量を調整するための排気ガス制御弁が設けられ、その排気ガス制御弁に上記排気ガス中の煤などの汚れが堆積して該排気ガス制御弁が固着するのを防止するために、上記エンジンを停止する際に上記排気ガス制御弁を開閉動作させる固着防止方法において、上記エンジンの運転状態または上記車両の走行状態を基に、上記排気ガス制御弁に堆積した煤などの汚れを該排気ガス制御弁から落とすために必要な開閉回数を求め、上記エンジンが停止する際に、上記排気ガス制御弁を、上記求めた開閉回数だけ開閉動作させるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、排気ガス制御弁を過度に開閉することなく、固着防止を図ることができるという優れた効果を発揮するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0019】
本実施形態に係る排気ガス制御弁の固着防止装置(以下、固着防止装置という)は、例えば、トラックなどの大型車両に搭載され排ガス浄化のためのEGR装置を有するディーゼルエンジン(以下、エンジンという)に適用され、EGR装置のEGRバルブを対象とする。
【0020】
図1および図2に基づき本実施形態のエンジンおよび固着防止装置の概略構造を説明する。
【0021】
図1に示すように、エンジン10は、エンジン本体11と、そのエンジン本体11に燃料を噴射・供給するための燃料噴射装置12と、そのエンジン本体11に吸気を供給するための吸気通路13と、エンジン本体11からの排気を排出するための排気通路14と、エンジン10の排気の一部を吸気系に還流するEGR装置2とを備える。
【0022】
エンジン本体11は、燃焼室111を区画形成するピストン112、シリンダブロック113およびシリンダヘッド114を有する。シリンダヘッド114には、燃焼室111に連通する吸気ポート115および排気ポート116が形成される。吸気ポート115には、吸気通路13の下流端が接続され、排気ポート116には、排気通路14の上流端が接続される。
【0023】
燃料噴射装置12は、燃焼室111に燃料を噴射するためのインジェクタ121を有する。そのインジェクタ121は、燃焼室111に臨ませてエンジン本体11内に配置される。
【0024】
EGR装置2は、排気通路14の排気ガスの一部を吸気通路13に還流させるためのEGR通路3と、そのEGR通路3に設けられたEGRバルブ4と、EGR通路3を流通する排気ガスを冷却するためのEGRクーラー21とを備える。
【0025】
EGR通路3は、一端(上流端)が排気通路14に接続され、他端(下流端)が吸気通路13に接続される。EGRバルブ4の開弁時には、排気通路14からの排気ガスがEGR通路3内を流通して吸気通路13へと戻されるようになっている。
【0026】
EGRバルブ4は、EGR通路3の一部をなすハウジング41と、そのハウジング41(EGR通路3)を流れるEGRガスの流量を調整するためのバルブ本体42と、そのバルブ本体42を開閉駆動するためのバルブアクチュエータ43とを有する。
【0027】
バルブ本体42は、ハウジング41の外部に配置されたバルブアクチュエータ43からハウジング41を貫通してハウジング41の内部まで延びるステム421と、そのステム421の先端に設けられた弁体422とを有する。ステム421は、ハウジング41に軸方向に移動可能に支持されると共に、図示しないバルブスプリングに係合する。そのバルブスプリングによりステム421を介して弁体422が閉弁側に(図1の例では下側に)付勢される。
【0028】
バルブアクチュエータ43は、例えば、バルブスプリング(図示せず)の付勢力に抗してステム421(および弁体422)を開弁側に(図1の例では上側に)移動させる電動の直動モータで構成される。
【0029】
ハウジング41には、バルブ本体42のステム421が貫通するガイド穴と、弁体422を着座させるための弁座411が形成される。
【0030】
ここで、バルブ本体42のステム421は、ハウジング41(EGR通路3)の内部に露出しており、排気ガスに曝されるため、排ガス中に含まれる煤やオイルなどの汚れがステム421に付着してしまう。
【0031】
そこで、ハウジング41には、EGRバルブ4の開閉時にステム421の外周面に摺接してステム421に付着した汚れを掻き落とすための汚れ掻き部44が設けられる。図例の汚れ掻き部44は、ハウジング41の内壁面に固定され、ガイド穴からステム421に沿って延びるほぼ円筒状に形成される。
【0032】
本実施形態の固着防止装置1は、EGRバルブ4に排気ガス中の煤などの汚れが堆積してEGRバルブ4が固着してしまうのを防止するために、エンジン10を停止する際にEGRバルブ4を開閉動作させるものであり、エンジン10の運転状態または車両の走行状態を基に、EGRバルブ4に堆積した汚れをEGRバルブ4から掻き落とすために必要な開閉回数(以下、必要開閉回数という)を求める回数算出手段と、エンジン10が停止する際に、EGRバルブ4を、回数算出手段により求められた必要開閉回数だけ開閉動作させる制御手段とを備える。
【0033】
本実施形態の回数算出手段および制御手段は、車両に搭載された電子制御ユニット6の後述するEGR制御部66からなる。
【0034】
図2に基づき、制御ユニット6について説明する。以下の説明において、エンジン10が始動されてから停止するまでの期間を、エンジン運転期間といい、そのエンジン運転期間の長さを、エンジン運転時間という。具体的には、エンジン運転期間は、イグニッションスイッチがOFFからONに切り替わってから、ONからOFFに切り替わるまでの期間である。
【0035】
図2において、6は電子制御ユニット、7はイグニッションスイッチ、8は車速センサである。車速センサ8は、例えば、図示しない変速機の出力軸に取り付けられ、その出力軸の回転数を検出する。
【0036】
電子制御ユニット6において、61は車速算出部、62は運転期間中に車両が走行した走行距離(以下、積算走行距離という)を求めるための積算走行距離算出部(積算走行距離算出手段)、63は燃料噴射量演算部、64は運転期間中にエンジン10が消費した燃料消費量(以下、積算燃料消費量という)を求めるための積算燃料消費量演算部(積算燃料消費量算出手段)、65はエンジン運転時間を求めるためのエンジン運転時間演算部(エンジン運転時間算出手段)、66は上述した回数算出手段および制御手段をなすEGR制御部である。
【0037】
車速算出部61には、車速センサ8とイグニッションスイッチ7とが接続され、車速センサ信号とイグニッションスイッチ信号とが入力される。車速算出部61は、車速センサ8からの車速センサ信号を基に車速を算出する。例えば、車速算出部61は、変速機の出力軸の回転数を車速に変換する。
【0038】
積算走行距離算出部62には、車速算出部61が接続され、その車速算出部61が算出した車速が入力される。積算走行距離算出部62は、車速算出部61からの車速を基に積算走行距離を算出する。
【0039】
燃料噴射量演算部63には、図示しないアクセル開度センサおよびエンジン回転数センサが接続される。燃料噴射量演算部63は、それらセンサからのアクセル開度およびエンジン回転数に基づき、燃料噴射量および燃料噴射時期などを演算して求める。
【0040】
また、燃料噴射量演算部63は、燃料噴射装置12に接続され、その燃料噴射装置12に、演算した燃料噴射量および燃料噴射時期などを出力する。図例では、燃料噴射量演算部63は、演算した燃料噴射量を燃料噴射装置12に燃料噴射量情報として出力し、その燃料噴射量情報に基づきインジェクタ121の燃料噴射量が制御される。したがって、燃料噴射量情報は、インジェクタ121が実際に噴射した燃料噴射量を表すことになる。
【0041】
積算燃料消費量演算部64には、燃料噴射量演算部63とイグニッションスイッチ7とが接続され、燃料噴射量情報とイグニッションスイッチ信号とが入力される。積算燃料消費量演算部64は、燃料噴射量演算部63からの燃料噴射量情報を積算して積算燃料消費量を求める。
【0042】
エンジン運転時間演算部65には、イグニッションスイッチ7が接続され、イグニッションスイッチ信号が入力される。エンジン運転時間演算部65は、例えば、タイマーを有し、そのタイマーは、イグニッションスイッチ信号のOFFからONへの切り替えにより計時を開始し、ONからOFFへの切り替えにより計時を終了する。
【0043】
EGR制御部66は、EGRバルブ4のバルブアクチュエータ43に接続され、そのバルブアクチュエータ43にEGR駆動信号を出力する。
【0044】
EGR制御部66は、エンジン10の運転中に、エンジン10の運転状態(アクセル開度、エンジン回転数など)から決定された目標EGR開度に基づきEGRバルブ4を開閉し、かつエンジン10が停止する際に、EGRバルブ4の固着防止のためにEGRバルブ4を開閉動作させる。本実施形態のEGR制御部66は、固着防止のための開閉動作の回数を、積算走行距離、積算燃料消費量およびエンジン運転時間から決定する。
【0045】
具体的には、EGR制御部66に、積算走行距離算出部62と積算燃料消費量演算部64とエンジン運転時間演算部65とイグニッションスイッチ7とが各々接続され、積算走行距離と積算燃料消費量とエンジン運転時間とイグニッションスイッチ信号とが各々入力される。
【0046】
EGR制御部66(回数算出手段)は、エンジン運転時間演算部65により求められたエンジン運転時間から必要開閉回数Na(第一の開閉回数)を算出し、かつ積算燃料消費量演算部64により求められた積算燃料消費量から必要開閉回数Nb(第二の開閉回数)を算出し、かつ積算走行距離算出部62により求められた積算走行距離から必要開閉回数Nc(第三の開閉回数)を算出する。
【0047】
詳しくは後述するが、本実施形態では、エンジン運転時間をパラメータとした必要開閉回数Naの変数マップA(図4参照)、積算燃料消費量をパラメータとした必要開閉回数Nbの変数マップB(図5参照)、および積算走行距離をパラメータとした必要開閉回数Ncの変数マップC(図6参照)が、各々EGR制御部66内に記憶、保存され、EGR制御部66は、保存された変数マップA−Cを参照して必要開閉回数Na−Ncを各々求める。
【0048】
さらに、EGR制御部66(制御手段)は、求めた必要開閉回数Na−Ncのうちの最大回数を求め、その最大回数だけEGRバルブ4を開閉動作させる。
【0049】
ここで、1回の開閉動作とは、例えば、EGRバルブ4を、全閉から全開とした後に再び全閉とする動作をいう。開閉動作は、これに限定されず、ステム421を軸方向両側に移動させる動作であればよく、様々なものが考えられる。
【0050】
次に、本実施形態の固着防止装置1による排気ガス制御弁の固着防止方法(以下、固着防止方法という)を説明する。
【0051】
その固着防止方法は、エンジン10の運転状態または車両の走行状態を基に、EGRバルブ4に堆積した煤などの汚れをEGRバルブ4から落とすために必要な開閉回数を算出し、エンジン10が停止する際に、EGRバルブ4を、算出した開閉回数だけ開閉動作させるものである。
【0052】
すなわち、EGRバルブ4への汚れ堆積度合いを、エンジン運転時間、積算燃料消費量、積算走行距離から推定し、従来の一定回数ではなく、汚れ堆積度合いに応じた回数の、固着防止のための開閉動作を行う。
【0053】
本実施形態では、EGRバルブ4への汚れ堆積度合いをエンジン停止時に推定するために、予め実験などにより、エンジン運転時間、積算燃料消費量および積算燃料消費量と、EGRバルブ4の汚れの堆積量との関係が各々求められる。
【0054】
さらに、求められたエンジン運転時間、積算燃料消費量および積算走行距離と汚れの堆積量との関係から、汚れ堆積度合いに応じた開閉回数を決定するために、EGRバルブ4の汚れの堆積量と、その堆積量の汚れを落とすのに必要な開閉回数(つまり、固着を防止するために必要な開閉回数)との関係が求められる。
【0055】
この堆積量と開閉回数との関係、および上述したエンジン運転時間と堆積量との関係から、エンジン運転時間と必要開閉回数Naとの関係が求められる。
【0056】
同様に、堆積量と開閉回数との関係、および積算燃料消費量と堆積量との関係から、積算燃料消費量と必要開閉回数Nbとの関係が求められる。また、堆積量と開閉回数との関係、および積算走行距離と堆積量との関係から、積算走行距離と必要開閉回数Ncとの関係が求められる。
【0057】
図例では、これらエンジン運転時間と必要開閉回数Naとの関係、積算燃料消費量と必要開閉回数Nbとの関係および積算走行距離と必要開閉回数Ncとの関係から、EGR制御部66が必要開閉回数Na−Ncを算出するための変数マップA−C(図4から図6参照)が各々作成される。
【0058】
次に、図3から図6に基づき、固着防止方法の一例を説明する。図3から図6のフローチャートは、制御ユニット6により実行される。
【0059】
図3のフローチャートに示すように、ステップS1では、制御ユニット6は、イグニッションスイッチ信号がOFFからONに変化したことをもって、車両の運転開始(エンジン始動)と判断する。
【0060】
ステップS2では、制御ユニット6内の、積算走行距離算出部62、積算燃料消費量演算部64、エンジン運転時間演算部65が、それぞれ演算を開始する。
【0061】
ステップS3で、自動車の運転が終了して、イグニッション信号がONからOFFに変化すると(エンジン停止)、積算走行距離算出部62、積算燃料消費量演算部64、エンジン運転時間演算部65が、それぞれ演算を終了する。さらに、ステップS3では、制御ユニット6内のEGR制御部66が、積算走行距離算出部62、積算燃料消費量演算部64、エンジン運転時間演算部65の演算結果から、汚れの掻き落としに必要十分なEGRバルブ4の開閉回数を計算する。
【0062】
この必要開閉回数の演算にあたって、EGR制御部66は、エンジン運転時間(始動後経過時間)に対する変数マップAを用いて必要開閉回数Naを求め(ステップS4)、積算燃料消費量に対する変数マップBを用いて必要開閉回数Nbを求め(ステップS5)、積算走行距離に対する変数マップCを用いて必要開閉回数Ncを求める(ステップS6)。
【0063】
より具体的には、ステップS4では、図4に示すように、エンジン運転時間演算部65からのエンジン運転時間がEGR制御部66に入力され、EGR制御部66は、入力されたエンジン運転時間と保存された変数マップAとから必要開閉回数Naを求める。
【0064】
ステップS5では、図5に示すように、積算燃料消費量演算部64からの積算燃料消費量がEGR制御部66に入力され、EGR制御部66は、入力された積算燃料消費量と変数マップBとから必要開閉回数Nbを求める。
【0065】
ステップS6では、図6に示すように、積算走行距離算出部62からの積算走行距離がEGR制御部66に入力され、EGR制御部66は、入力された積算走行距離と変数マップCとから必要開閉回数Ncを求める。
【0066】
図3に戻り、ステップS7では、EGR制御部66は、ステップS4−S6で求めた必要開閉回数Na−Ncの最大値(最大回数)を求める。こうして必要な開閉回数の最大回数を求めた後、EGR制御部66は、EGRバルブ4を算出した最大回数だけ開閉する。
【0067】
このEGRバルブ4の開閉動作はエンジン停止後に行われるため、この動作によりエンジン10の性能に影響を及ぼすことはない。開閉動作は、例えば、燃料噴射が停止された後や、エンジン回転数が実質的に0になったときに行われる。
【0068】
ここで、もし、ステップS7で、必要開閉回数Na、Nb、Ncとも1未満の場合は、最大回数を1として1回だけEGRバルブ4を開閉する。すなわち、変数マップA−Cの開閉回数(図4−6の縦軸)が実数(整数でない)の場合には、変数マップA−Cから読みとった値を整数化(四捨五入、切り捨てなど)して必要開閉回数Na、Nb、Ncが求められる。この場合、車両が短時間、短距離、少燃料消費量の走行を繰り返したときには、必要開閉回数Na、Nb、Nc<1となり得る。
【0069】
そこで、本実施形態では、車両が短時間、短距離、少燃料消費量の走行を繰り返した場合でも必ず最低1回はEGRバルブ4を開閉することにより、汚れの体積を防止するために、必要開閉回数Na、Nb、Ncとも1未満の場合は、最大回数を1とする。なお、これに限定されず、例えば、変数マップA−Cの開閉回数の1から始める(最低値を1に設定する)ようにしてもよい。
【0070】
以上のように、本実施形態によれば、EGRバルブ4を過度に開閉することないのでEGRバルブ4の寿命を越えず、かつ十分な汚れの掻き落としを行うことができ、EGRバルブ4の固着防止を図ることができる。
【0071】
より具体的には、例えば、従来の固着防止方法では、近距離配送車において、1kmごとにエンジン10を停止し、停止ごとにEGRバルブ4を3回開閉する場合、積算走行距離が50万km走行に達した時には、50万×3=150万回の固着防止のための開閉を行うことになる。この回数では、固着防止の開閉だけで一般的なEGRバルブ4の開閉回数の耐久寿命の7〜8割を消費してしまう。
【0072】
これに対して、本実施形態では、1km走行では、約10分程度、燃料消費量も少量とすると、1km走行後の固着防止動作は1回に制限される。
【0073】
この結果、たとえ50万km走行しても、耐久寿命の2〜3割程度を固着防止動作に割り当てる程度ですむ。
【0074】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、様々な変形例や応用例が考えられるものである。
【0075】
例えば、対象とする排気ガス制御弁は、EGRバルブ4に限定されず、様々なものが考えられる。例えば、排気ガス制御弁は、エンジン10の暖気や排気ブレーキのために排気通路14に設けられるエキゾーストスロットルバルブや、などでもよい。
【0076】
また、必要開閉回数を決定するためのパラメータ(エンジン10の運転状態、車両の走行状態)は、エンジン運転時間、積算燃料消費量、積算走行距離に限定されず、様々なものが可能である。
【0077】
また、上述の実施形態では、必要開閉回数を、エンジン運転時間、積算燃料消費量、積算走行距離から求まる必要開閉回数Na−Ncの最大回数としたが、これに限定されず、例えば、必要開閉回数Na−Ncのいずれかのみを用いてもよい。その他にも、エンジン運転時間、積算燃料消費量および積算走行距離の全てをパラメータとした、必要開閉回数の4次元の変数マップを作成して、必要開閉回数を求めるようにしてもよい。
【0078】
また、エンジン運転期間中に、通常のEGR制御に基づきEGRバルブ4を開閉動作した場合には、その開閉動作により汚れが落ちる(堆積量が減少する)と考えられる。そこで、必要開閉回数を、通常のEGR制御に基づくEGRバルブ4の開閉回数に基づき、減算補正することも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】図1は、本発明に係る一実施形態による排気ガス制御弁の固着防止装置が適用されるエンジンの概略構造図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る排気ガス制御弁の固着防止装置のシステム図である。
【図3】図3は、本実施形態に係る排気ガス制御弁の固着防止方法によるフローチャートの一例である。
【図4】図4は、エンジン運転時間による必要開閉回数Naの求め方を説明するための図である。
【図5】図5は、積算燃料消費量による必要開閉回数Nbの求め方を説明するための図である。
【図6】図6は、積算走行距離による必要開閉回数Ncの求め方を説明するための図である。
【符号の説明】
【0080】
1 固着防止装置
3 EGR通路(通路)
4 EGRバルブ(排気ガス制御弁)
6 制御ユニット6(回数算出手段、制御手段)
10 エンジン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンの排気ガスが流通する通路に、該通路の流量を調整するための排気ガス制御弁が設けられ、その排気ガス制御弁に上記排気ガス中の煤などの汚れが堆積して該排気ガス制御弁が固着するのを防止するために、上記エンジンを停止する際に上記排気ガス制御弁を開閉動作させる固着防止装置において、
上記エンジンの運転状態または上記車両の走行状態を基に、上記排気ガス制御弁に堆積した煤などの汚れを該排気ガス制御弁から落とすために必要な開閉回数を求める回数算出手段と、
上記エンジンが停止する際に、上記排気ガス制御弁を、上記回数算出手段により求められた開閉回数だけ開閉動作させる制御手段とを備えたことを特徴とする排気ガス制御弁の固着防止装置。
【請求項2】
上記エンジンが始動されてから停止するまでのエンジン運転時間を求めるためのエンジン運転時間算出手段を備え、
上記回数算出手段は、上記開閉回数を、上記エンジン運転時間算出手段により求められたエンジン運転時間から求める請求項1記載の排気ガス制御弁の固着防止装置。
【請求項3】
上記エンジンが始動されてから停止するまでの間に上記エンジンが消費した燃料消費量を求めるための積算燃料消費量算出手段を備え、
上記回数算出手段は、上記開閉回数を、上記積算燃料消費量算出手段により求められた燃料消費量から求める請求項1記載の排気ガス制御弁の固着防止装置。
【請求項4】
上記エンジンが始動されてから停止するまでの間に上記車両が走行した走行距離を求めるための積算走行距離算出手段を備え、
上記回数算出手段は、上記開閉回数を、上記積算走行距離算出手段により求められた走行距離から求める請求項1記載の排気ガス制御弁の固着防止装置。
【請求項5】
上記エンジンが始動されてから停止するまでのエンジン運転時間を求めるためのエンジン運転時間算出手段と、上記エンジンが始動されてから停止するまでの間に上記エンジンが消費した燃料消費量を求めるための積算燃料消費量算出手段と、上記エンジンが始動されてから停止するまでの間に上記車両が走行した走行距離を求めるための積算走行距離算出手段とを備え、
上記回数算出手段は、上記エンジン運転時間算出手段により求められたエンジン運転時間から第一の開閉回数を求め、かつ上記積算燃料消費量算出手段により求められた燃料消費量から第二の開閉回数を求め、かつ上記積算走行距離算出手段により求められた走行距離から第三の開閉回数を求め、
上記制御手段は、上記回数算出手段が求めた第一から第三の開閉回数のうちの最大回数を求め、その最大回数だけ上記排気ガス制御弁を開閉動作させる請求項1記載の排気ガス制御弁の固着防止装置。
【請求項6】
上記通路が、エンジンの排気ガスの一部を吸気系に還流させるためのEGR通路であり、上記排気ガス制御弁が、上記EGR通路に設けられたEGRバルブである請求項1から5いずれかに記載の排気ガス制御弁の固着防止装置。
【請求項7】
車両のエンジンの排気ガスが流通する通路に、該通路の流量を調整するための排気ガス制御弁が設けられ、その排気ガス制御弁に上記排気ガス中の煤などの汚れが堆積して該排気ガス制御弁が固着するのを防止するために、上記エンジンが停止する際に上記排気ガス制御弁を開閉動作させる固着防止方法において、
上記エンジンの運転状態または上記車両の走行状態を基に、上記排気ガス制御弁に堆積した煤などの汚れを該排気ガス制御弁から落とすために必要な開閉回数を求め、
上記エンジンが停止する際に、上記排気ガス制御弁を、上記求めた開閉回数だけ開閉動作させることを特徴とする排気ガス制御弁の固着防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−281285(P2009−281285A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134252(P2008−134252)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】