説明

排気マニホルド、EGR装置、および排気ガス利用装置

【課題】コンパクト且つ低コストの熱交換機能を有する排気マニホルド、当該排気マニホルドを備えたEGR装置、および排気ガス利用装置を提供する。
【解決手段】エンジンで生じた排気ガスを排出するための主流路5を有する排気マニホルド本体10と、排気ガスの少なくとも一部を主流路5から取り出すべく排気マニホルド本体10に設けた分岐部20と、分岐部20に取り出された排気ガスを排気マニホルド本体10から流出する流出口20aとを備え、排気マニホルド本体10のうち流出口20aの設置箇所よりも排気ガスの流通方向に沿った上流側に、排気ガスの熱を回収する熱交換器30を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンで生じた排気ガスを排出するための主流路を有する排気マニホルド本体と、前記排気ガスの少なくとも一部を前記主流路から取り出すべく前記排気マニホルド本体に設けた分岐部と、前記分岐部に取り出された排気ガスを前記排気マニホルド本体から流出する流出口とを備えた排気マニホルド、当該排気マニホルドを備えたEGR装置、および排気ガス利用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等のエンジンから排出される排気ガスには、環境汚染の原因物質の一つである窒素酸化物(NOx)が含まれている。排気ガス中のNOxを低減する技術の一つとして、エンジンに設けられるEGR(Exhaust Gas Recirculation)装置がある(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
EGR装置は、エンジンから排出される排気ガスを再循環させる装置である。排気ガスは、水蒸気、窒素、および二酸化炭素を主成分とする。この排気ガスをEGR装置によりエンジンの吸入空気に混合すると、吸入空気の酸素濃度が低下するため、エンジンの燃焼温度および燃焼速度が低下する。その結果、NOxの生成量を減少させることができる。
【0004】
ところが、エンジンから排出される排気ガスは高温であるため、そのままの状態の排気ガスを吸入空気に混合すると吸入空気の温度が上昇する。吸入空気の温度が高くなると燃焼温度が上昇するため、NOxの低減効果はあまり得られない。そこで、吸入空気に排気ガスを混合する前に、当該排気ガスの温度を低下させる必要がある。このための手段として、エンジンの排気マニホルドと吸気マニホルドとの間に設けられる排気ガス冷却用のクーラーがある。
【0005】
特許文献1のEGR装置では、エンジンの排気マニホルドに分岐管を設け、この分岐管を吸気マニホルドの側に接続している。分岐管の中間部付近には、排気ガスの熱を除去する熱交換器としてのEGRクーラーが設けられている。
【0006】
また、別の従来技術として、エンジンから排出される高温の排気ガスを熱源として有効に利用するための装置が開発されている。このような装置として、排気ガスが流通する排気管に熱回収器を設けた排熱回収装置がある(例えば、特許文献2を参照)。
排熱回収装置の内部にはエンジン冷却水が循環しており、当該エンジン冷却水と熱交換を行うことで排気ガスの熱を回収している。回収された熱は、例えば、車内暖房用のヒータの熱源として利用される。
【0007】
なお、特許文献2の排熱回収装置は、排気ガスの熱に加えて、排気ガス浄化用触媒の反応熱も回収している。これにより、低温時の車内の暖房効率の向上を図っている。
【0008】
【特許文献1】特開2005−9404号公報
【特許文献2】特開2005−16477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1のEGR装置は、図5に示すように、EGRクーラー80が排気マニホルド81と別体で設けられている。排気マニホルド81とEGRクーラー80とを接続している分岐管82は排気ガスの熱により高温状態になるため、分岐管の周辺にある部品に悪影響を及ぼす場合がある。これを防ぐためには、熱の影響を受けない程度に分岐管を周辺部品から一定の距離だけ離間させておかなければならない。また、EGRクーラー80を排気マニホルド81と別体で設けると、EGRクーラー80がエンジン本体83から大きく張り出してしまうため、大きなスペースを占有することになる。
【0010】
さらに、EGRクーラー80は構造上、内部に冷却用の冷媒を含むため、重量が比較的大きくなる。このため、EGRクーラー80を排気マニホルド81と別体で設けると、EGRクーラー80を確実に固定するために多くの取付部材84を使用する必要があり、コストがかかる。
【0011】
一方、特許文献2の排熱回収装置は、図6に示すように、排気ガスと冷媒との間で熱交換を行う熱交換器85を備えている。しかし、この排熱回収装置も熱交換器85が排気マニホルドから離れた位置に設けられているため、上記特許文献1のEGR装置と同様に、設置スペースが大きくなるという問題がある。
【0012】
本発明の目的は上記従来技術の課題に鑑み、コンパクトな熱交換機能を有する排気マニホルド、当該排気マニホルドを備えたEGR装置、および排気ガス利用装置を提供することにある。また、本発明の目的は、低コストな熱交換機能を有する排気マニホルド、当該排気マニホルドを備えたEGR装置、および排気ガス利用装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る排気マニホルドの特徴構成は、エンジンで生じた排気ガスを排出するための主流路を有する排気マニホルド本体と、前記排気ガスの少なくとも一部を前記主流路から取り出すべく前記排気マニホルド本体に設けた分岐部と、前記分岐部に取り出された排気ガスを前記排気マニホルド本体から流出する流出口とを備え、前記排気マニホルド本体のうち前記流出口の設置箇所よりも排気ガスの流通方向に沿った上流側に、前記排気ガスの熱を回収する熱交換器を設けたことにある。
【0014】
本構成の排気マニホルドでは、排気マニホルド本体のうち、分岐部に取り出された排気ガスを排気マニホルド本体から流出する流出口の設置箇所よりも排気ガスの流通方向に沿った上流側に、排気ガスの熱を回収する熱交換器を設けている。つまり、本構成では、熱交換器を従来のように分岐部から延出する分岐路に設けるのではなく、排気マニホルド本体に一体に設けてある。このため、排気マニホルドの分岐部から分岐する分岐路には既に熱交換が行われた比較的低温の排気ガスが流通し、分岐路が高温状態となることはない。
このように、本構成の排気マニホルドであれば、周辺部品が熱の影響を受けないため、排気マニホルドの分岐部から分岐する分岐路を、周辺部品からそれ程離間させずに配設することができる。その結果、熱交換器および分岐路がエンジンから大きく張り出すことなくコンパクトな構成となる。
また、重量物である熱交換器を排気マニホルド本体に設けることにより、例えば、熱交換器の取付部品と排気マニホルド本体の取付部品とを兼用することができる。このため、多くの取付部材を使用する必要がなく、製造コストを低減することができる。
【0015】
本発明に係る排気マニホルドにおいて、前記排気マニホルド本体が、前記エンジンが有する複数のシリンダに各別に接続される各別流路を備え、前記主流路は前記各別流路を統合するものであり、当該主流路の周囲に前記熱交換器を備えることが好ましい。
【0016】
本構成の排気マニホルドでは、排気マニホルド本体が、エンジンが有する複数のシリンダに各別に接続される各別流路を備え、当該各別流路を統合して主流路とし、当該主流路の周囲に熱交換器を設置してある。このため、熱交換器にエンジンから排出される全ての排気ガスを通過させることも可能である。排気ガスの全量が熱交換器を通過した場合、排気ガスと冷媒との間における熱交換量が大きくなり、熱交換効率が向上する。また、熱交換器は主流路の周囲に設置されていることから、主流路内の排気ガスの流通が阻害されることなく、スムーズに熱交換を行うことができる。
【0017】
本発明に係る排気マニホルドにおいて、前記主流路から前記分岐部に分流する排気ガスの流量を調節するバルブを前記主流路に設けることが好ましい。
【0018】
本構成の排気マニホルドでは、主流路から分岐部に分流する排気ガスの流量を調節するバルブを主流路に設けてある。このため、熱交換を積極的に行う場合には、バルブを絞って分岐部に分流する排気ガスの流量を増大させるように調整し、熱交換をあまり行う必要がない場合には、バルブを開放して分岐部に分流する排気ガスの流量を減少させればよい。このように、本構成では、簡単なバルブ操作を行うだけで、熱交換の調節を容易に行うことができる。
【0019】
本発明に係る排気マニホルドにおいて、前記熱交換器が、前記排気ガスを前記エンジンの吸気マニホルドに還流させるためのEGRクーラーの機能を有することが好ましい。
【0020】
本構成の排気マニホルドでは、熱交換器が、排気ガスをエンジンの吸気マニホルドに還流させるためのEGRクーラーの機能を有している。従って、排気ガス中のNOxを低減するために設けられる、エンジンから排出される排気ガスを吸気側に再循環させるEGR装置に好適に使用することができる。
【0021】
本発明に係るEGR装置の特徴構成は、上記の排気マニホルドを前記エンジンに接続すると共に、前記分岐部から延出する分岐路を前記吸気マニホルドに接続したことにある。
【0022】
本構成のEGR装置では、上記のEGRクーラーの機能を有する排気マニホルドを採用し、当該排気マニホルドをエンジンに接続すると共に、排気マニホルド本体の分岐部から延出する分岐路をエンジンの吸気マニホルドに接続している。これにより、EGR装置によるNOxの低減を実現しつつ、分岐路を周辺部品からそれ程離間させずに配設可能としたEGR装置を構築することができる。このEGR装置は省スペース化に優れるとともに、コスト面でも有利である。
【0023】
本発明に係る排気ガス利用装置の特徴構成は、上記の排気マニホルドが前記エンジンに接続され、前記分岐部から延出する分岐路が、前記吸気マニホルドに接続される第1分岐路と、前記主流路の下流側に再び接続される第2分岐路とを備えていることにある。
【0024】
本構成の排気ガス利用装置では、上記のEGRクーラーの機能を有する排気マニホルドを採用し、当該排気マニホルドをエンジンに接続し、さらに排気マニホルド本体の分岐部から延出する分岐路が、エンジンの吸気マニホルドに接続される第1分岐路と、主流路の下流側に再び接続される第2分岐路とを備えている。これにより、排気ガス利用装置をEGR装置として使用することを可能にしつつ、分岐路を周辺部品からそれ程離間させずに配設可能とした排ガス利用装置を構築することができる。この排ガス利用装置は省スペース化に優れるとともに、コスト面でも有利である。
なお、本構成の排気ガス利用装置において、排気ガスの循環(EGR)を行わない場合は、排気ガスを第2分岐路のみに流通させればよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、コンパクトな熱交換機能を有する排気マニホルド、当該排気マニホルドを備えたEGR装置、および排気ガス利用装置を提供することが可能となる。また、本発明により、低コストな熱交換機能を有する排気マニホルド、当該排気マニホルドを備えたEGR装置、および排気ガス利用装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は以下の実施形態および図面に記載される構成に限定されるものではなく、これらと均等な構成も含む。
【0027】
〔第1実施形態〕
図1aおよび図1bは、本発明の第1実施形態であり、排気マニホルド50を備えたEGR装置100の概略構成図である。図2は、排気マニホルド50の縦断面図である。図3は、図2のIII−IIIにおける排気マニホルド50の横断面図である。
【0028】
排気マニホルド50は、エンジンEで生じた排気ガスを排出する排気マニホルド本体10を備える。排気マニホルド本体10は、エンジンEの各シリンダS1,S2,S3,S4に各別に接続される各別流路1,2,3,4と、これら各別流路1,2,3,4を統合した主流路5とを備える。
【0029】
主流路5には第1触媒装置6を設けてある。第1触媒装置6は、エンジンEから排出される排気ガス中の有害物質(例えば、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC))を、一次的にある程度まで除去する三元触媒である。排気ガス中の上記有害物質は、排気マニホルド50の下流に設置される図示しない第2触媒装置により、所定の値(例えば、自動車排出ガス規制値)以下に低減される。
第1触媒装置6は、後述する熱交換器30より上流側であれば、主流路5または各別流路1,2,3,4の任意の位置に設けることができる。ただし、第1触媒装置6を省略し、第2触媒装置のみで上記有害物質を除去する構成でも構わない。
【0030】
本実施形態の排気マニホルド本体10は、4つの各別流路1,2,3,4を主流路5で一つに統合する構成であるが、初めに各別流路1,2および3,4を夫々統合し、次いでこれらを主流路5で一つに統合する構成であってもよい。また、排気マニホルド50を取り付けているエンジンEとして、直列4気筒エンジンを図示しているが、他の多気筒エンジンであってもよい。この場合、各別流路の構成は、エンジンの形状や気筒数等に応じて適宜変更可能である。
【0031】
排気マニホルド本体10には、排気ガスの少なくとも一部を主流路5から取り出すための分岐部20が設けてある。さらに、排気マニホルド本体10には、分岐部20に取り出された排気ガスを排気マニホルド本体10から流出する流出口20aが設けてある。排気マニホルド本体10から取り出された排気ガスは、分岐部20に流出口20aを介して接続される分岐路60を通って、エンジンEの吸気マニホルドIに送られる。つまり、本実施形態の排気マニホルド50は、エンジンEで生じた排気ガスを吸気側に再循環させるEGR装置に好適に使用できるものである。
【0032】
分岐部20は、排気マニホルド本体10のうち、主流路5または各別流路1,2,3,4のいずれに設けてもよいが、主流路5に設ければ、各別流路1,2,3,4の間での排気ガス流量が略均等となってエンジンEからの排気が安定するため好ましい。また、図2に示すように、分岐部20にエンジンEから排出される排気ガスがスムーズに流入するように、分岐部20の開口方向を排気ガスの流通方向に概ね沿わせた状態で設けることが好ましい。
【0033】
排気マニホルド本体10のうち、流出口20aの設置箇所よりも排気ガスの流通方向に沿った上流側(すなわち、エンジンE側)に、排気ガスの熱を回収する熱交換器30を設けてある。熱交換機30の内部には、排気ガスとの熱交換を行う冷媒(例えば、エンジン冷却水)が循環する冷媒循環路31が通っている。
【0034】
熱交換器30は、従来のように分岐部20から延出する分岐路60に設けるのではなく、排気マニホルド本体10に一体に設けてある。排気マニホルド50の分岐部20から分岐する分岐路60には、排気マニホルド本体10の側で既に熱交換が行われた比較的低温の排気ガスが流通し、分岐部20の流出口20aより下流側にある分岐路60が高温状態になることはない。このため、排気マニホルド50の周辺部品が熱の影響を受けることはなく、排気マニホルド50の分岐部20から分岐する分岐路60を、周辺部品からそれ程離間させずに配設することが可能となる。そして、熱交換器30がエンジンEから大きく張り出すこともない。その結果、排気マニホルド50を備えたエンジンEがコンパクトになり、省スペース化を実現することができる。
また、本実施形態の排気マニホルド50では、重量物である熱交換器30を排気マニホルド本体10に設けることにより、例えば、熱交換器30の取付部品と排気マニホルド本体10の取付部品とを兼用することができる。このため、多くの取付部品を使用する必要もなく、製造コストを低減することができる。
【0035】
熱交換器30は、第1触媒装置6より下流側であれば、主流路5または各別流路1,2,3,4の任意の位置に設けることができるが、主流路5に設けることにより、熱交換器30にエンジンEから排出される全ての排気ガスを通過させることが可能となる。排気ガスの全量が熱交換器30を通過した場合、排気ガスと冷媒との間における熱交換量が大きくなり、熱交換効率が向上する。また、各別流路1,2,3,4の間での排気ガスの流量は略均等となるので、排気が安定する。
熱交換器30は、図3に示すように、円筒状に形成して主流路5の周囲に設置することが好ましい。このように構成すれば、主流路5内の排気ガスの流通が阻害されることなく、スムーズに熱交換を行うことができる。
【0036】
熱交換器30は、各種装置の熱源(マルチパーパスヒータ)として利用可能であるが、本実施形態では、特に排気ガスをエンジンEの吸気マニホルドIに還流させるEGRクーラーとして機能する。
そこで次に、排気マニホルド50をエンジンEに接続し、排気マニホルド本体10の分岐部20から延出する分岐路60を吸気マニホルドIに接続したEGR装置100の構成および動作について説明する。
【0037】
EGR装置100は、上述したように排気マニホルド50および分岐路60を備え、さらに、図示しない消音器へと続くセンターパイプ70を主流路5の下流に備える。分岐路60には、排気ガスを循環させる「EGR起動状態」と、循環させない「EGR停止状態」との2状態の間で切り換え可能なEGRバルブ61が設けてある。以下、EGR装置100の各状態について説明する。
【0038】
<EGR起動状態>
図1aは、EGR起動状態にあるEGR装置100を示す。この状態では、EGRバルブ61は開に設定される。
エンジンEから排気マニホルド50の側に排出された高温の排気ガス(図中の実線矢印)は、排気マニホルド本体10の各別流路1,2,3,4から主流路5に集められ、第1触媒装置6を通過する。その後、排気ガスの一部は主流路5から外れて周囲に配置した熱交換器30および分岐部20を通過し(図中の点線矢印)、流出口20aから分岐路60を通って吸気マニホルドIに戻される。
このように、EGR起動状態では排気ガスが分岐路60に流入するので、EGRが有効状態(スイッチON)となる。熱交換器30を通過した後の排気ガスは、熱交換により温度が低下しているため、吸気マニホルドIの側の吸入空気と混合しても燃焼温度が顕著に上昇することはない。
【0039】
なお、熱交換器30には排気ガスの流動抵抗が存在するが、吸気マニホルドIと分岐路60との接続部がアスピレータとして作用し、分岐路60から排気ガスを吸い込む負圧が発生するため、排気ガスの再循環が妨げられることはない。
【0040】
図示しないが、主流路5から分岐部20に分流する排気ガスの流量を調節するために、後で説明する第2実施形態と同様のバルブを主流路5に設けることもできる。ここで、熱交換(EGR)を積極的に行う場合には、バルブを絞って分岐部20に分流する排気ガスの流量を増大させるように調節する。熱交換(EGR)をあまり行う必要がない場合には、バルブを開いて分岐部20に分流する排気ガスの流量を減少させる。このようにバルブを設ければ、簡単な操作で熱交換(EGR)の調節を容易に行うことができる。
【0041】
<EGR停止状態>
図1bは、EGR停止状態にあるEGR装置100を示す。この状態では、EGRバルブ61は閉に設定される。
エンジンEから排気マニホルド50の側に排出された高温の排気ガス(図中の実線矢印)は、排気マニホルド本体10の各別流路1,2,3,4、主流路5、第1触媒装置6を通過した後、熱交換器30を通過することなくセンターパイプ70に送られる。その後、図示しない第2触媒装置、消音器等を経て外部に排出される。
このように、EGR停止状態では排気ガスは分岐路60に流入しないので、EGRは無効状態(スイッチOFF)となる。つまり、通常の排気マニホルドと同じように機能する。
【0042】
〔第2実施形態〕
図4a〜図4dは、本発明の第2実施形態であり、排気マニホルド50を備えた排気ガス利用装置200の概略構成図である。この第2実施形態では、第1実施形態と同様の構成については同じ参照符号を付すとともに、詳細な説明を省略する。
【0043】
第2実施形態の排気マニホルド50は、エンジンEで生じた排気ガスを再循環させるための分岐路60を排気マニホルド本体10の分岐部20に流出口20aを介して接続してある。排気マニホルド50の主流路5には、分岐部20から分岐路60の側へと分流する排気ガスの流量を調節するバルブ40を設けてある。
排気マニホルド50を備えた排気ガス利用装置200は、分岐路60が吸気マニホルドIに接続される第1分岐路62と、主流路5の下流側に再び接続される第2分岐路63とを備えている。
【0044】
この第2実施形態においても、熱交換器30は従来のように分岐部20から延出する分岐路60に設けるのではなく、排気マニホルド本体10に一体に設けてある。従って、排気マニホルド50の分岐部20から分岐する分岐路60ならびに第1分岐路62および第2分岐路63には、排気マニホルド本体10の側で既に熱交換が行われた比較的低温の排気ガスが流通し、分岐路60ならびに第1分岐路62および第2分岐路63が高温状態となることはない。このため、排気マニホルド50の周辺部品が熱の影響を受けることはなく、排気マニホルド50の分岐路60ならびに第1分岐路62および第2分岐路63を、周辺部品からそれ程離間させずに配設することが可能となる。そして、熱交換器30がエンジンEから大きく張り出すこともない。その結果、排気マニホルド50を備えたエンジンEがコンパクトになり、省スペース化を実現することができる。
また、本実施形態の排気マニホルド50では、重量物である熱交換器30を排気マニホルド本体10に設けることにより、例えば、熱交換器30の取付部品と排気マニホルド本体10の取付部品とを兼用することができる。このため、多くの取付部品を使用する必要もなく、製造コストを低減することができる。
【0045】
排気マニホルド50を備えた排気ガス利用装置200は、各種装置の熱源(マルチパーパスヒータ)として利用することもできる。第2実施形態では特に、排気ガスをエンジンEの吸気マニホルドIに還流させるEGR装置、および排気ガスの熱を回収して再利用する排熱回収装置の2つの機能を有する。
そこで次に、本実施形態における排気ガス利用装置200の構成および動作について説明する。
【0046】
排気ガス利用装置200は、上述したように排気マニホルド50および分岐路60を備え、さらに、図示しない消音器へと続くセンターパイプ70を主流路5の下流に備える。分岐路60には切換バルブ64が設けられる。切換バルブ64は、排気ガスを、吸気マニホルドIおよびセンターパイプ70の双方に送る「EGR・排熱利用状態」と、吸気マニホルドIのみに送る「EGR起動状態」と、センターパイプ70のみに送る「排熱利用状態」と、吸気マニホルドIおよびセンターパイプ70の何れにも送らない「完全停止状態」との4状態の間で切り換えることができる。切換バルブ64は三方バルブで構成されている。以下、排気ガス利用装置200の各状態について説明する。
【0047】
<EGR・排熱利用状態>
図4aは、EGR・排熱利用状態にある排気ガス利用装置200を示す。この状態では、切換バルブ64は分岐部20、吸気マニホルドI、およびセンターパイプ70に夫々通じる状態に設定され、バルブ40は閉に設定される。
エンジンEから排気マニホルド50の側に排出された高温の排気ガス(図中の実線矢印)は、排気マニホルド本体10の各別流路1,2,3,4から主流路5に集められ、第1触媒装置6を通過する。その後、排気ガスは主流路5から外れて周囲に配置した熱交換器30および分岐部20を通過し(図中の点線矢印)、流出口20aから分岐路60に流入する。排気ガスは、切換バルブ64でさらに二つに分流し、一方は第1分岐路62を通って吸気マニホルドIに戻される。他方は第2分岐路63を通ってセンターパイプ70に送られ、その後、図示しない第2触媒装置、消音器等を経て外部に排出される。
このEGR・排熱利用状態では、熱交換器30には排気ガスの略全量が通過するため、回収される排熱量は大きい。また、熱交換器30で熱交換された排気ガスは第1分岐路62にも流入する。従って、EGR装置および排熱回収装置の両方が有効状態(スイッチON)にされる。
【0048】
<EGR起動状態>
図4bは、EGR起動状態にある排気ガス利用装置200を示す。この状態では、切換バルブ64は分岐部20および吸気マニホルドIには通じるが、センターパイプ70には通じない状態に設定され、バルブ40は開に設定される。
エンジンEから排気マニホルド50の側に排出された高温の排気ガス(図中の実線矢印)は、排気マニホルド本体10の各別流路1,2,3,4から主流路5に集められ、第1触媒装置6を通過する。その後、排気ガスの一部は主流路5から外れて周囲に配置した熱交換器30および分岐部20を通過し(図中の点線矢印)、流出口20aから分岐路60に流入する。この排気ガスは、切換バルブ64を経由して第1分岐路62を通り、吸気マニホルドIに戻される。また、排気ガスの残部(EGRに使用されない実線矢印で示された排気ガス)は、主流路5から下流のセンターパイプ70に送られ、その後、図示しない第2触媒装置、消音器等を経て外部に排出される。
このEGR起動状態では、熱交換器30には排気ガスの一部だけが通過するため、回収される排熱量は小さい。また、熱交換器30で熱交換された一部の排気ガスが第1分岐路62に流入する。従って、EGR装置は有効状態(スイッチON)にあるが、排熱回収装置は実質的に無効状態(スイッチOFF)にされる。
このEGR起動状態では、バルブ40の開度を適宜調節することも可能である。EGRを行う場合、通常バルブ40を全開状態にするが、EGRを多めに行いたい場合には、バルブ40を絞って分岐部20に分流する排気ガスの流量を増大させればよい。このように簡単なバルブ操作だけで、EGRの調節を容易に行うことができる。
【0049】
<排熱利用状態>
図4cは、排熱利用状態にある排気ガス利用装置200を示す。この状態では、切換バルブ64は分岐部20およびセンターパイプ70には通じるが、吸気マニホルドIには通じない状態に設定され、バルブ40は閉に設定される。
エンジンEから排気マニホルド50の側に排出された高温の排気ガス(図中の実線矢印)は、排気マニホルド本体10の各別流路1,2,3,4から主流路5に集められ、第1触媒装置6を通過する。その後、排気ガスは主流路5から外れて周囲に配置した熱交換器30および分岐部20を通過し(図中の点線矢印)、流出口20aから分岐路60に流入する。この排気ガスは、切換バルブ64を経由して第2分岐路63を通り、下流のセンターパイプ70に送られ、その後、図示しない第2触媒装置、消音器等を経て外部に排出される。
この排熱利用状態では、熱交換器30には排気ガスの略全量が通過するため、回収される排熱量は大きい。また、熱交換器30で熱交換された排気ガスは第1分岐路62に流入しない。従って、EGR装置は無効状態(スイッチOFF)にあるが、排熱回収装置は有効状態(スイッチON)にされる。
【0050】
<完全停止状態>
図4dは、完全停止状態にある排気ガス利用装置200を示す。この状態では、切換バルブ64は分岐部20、吸気マニホルドI、およびセンターパイプ70のいずれにも通じない状態に設定され、バルブ40は開に設定される。
エンジンEから排気マニホルド50の側に排出された高温の排気ガス(図中の実線矢印)は、排気マニホルド本体10の各別流路1,2,3,4から主流路5に集められ、第1触媒装置6を通過する。そして、排気ガスは、分岐部20の側に分流することなく、主流路5から下流のセンターパイプ70に送られ、その後、図示しない第2触媒装置、消音器等を経て外部に排出される。
この完全停止状態では、熱交換器30に排気ガスは全く通過しないため、排熱回収は行われない。また、第1分岐路62に排気ガスが流入することもない。従って、EGR装置および排熱回収装置の両方が無効状態(スイッチOFF)にされる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1a】本発明の第1実施形態によるEGR装置の概略構成図
【図1b】本発明の第1実施形態によるEGR装置の概略構成図
【図2】排気マニホルドの縦断面図
【図3】排気マニホルドの横断面図
【図4a】本発明の第2実施形態による排気ガス利用装置の概略構成図
【図4b】本発明の第2実施形態による排気ガス利用装置の概略構成図
【図4c】本発明の第2実施形態による排気ガス利用装置の概略構成図
【図4d】本発明の第2実施形態による排気ガス利用装置の概略構成図
【図5】従来技術によるEGR装置の概略構成図
【図6】従来技術による排熱回収装置の概略構成図
【符号の説明】
【0052】
1,2,3,4 各別流路
5 主流路
10 マニホルド本体
20 分岐部
20a 流出口
30 熱交換器
40 バルブ
50 排気マニホルド
60 分岐路
62 第1分岐路
63 第2分岐路
100 EGR装置
200 排気ガス利用装置
E エンジン
I 吸気マニホルド
S1,S2,S3,S4 シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンで生じた排気ガスを排出するための主流路を有する排気マニホルド本体と、
前記排気ガスの少なくとも一部を前記主流路から取り出すべく前記排気マニホルド本体に設けた分岐部と、
前記分岐部に取り出された排気ガスを前記排気マニホルド本体から流出する流出口と、
を備え、
前記排気マニホルド本体のうち前記流出口の設置箇所よりも排気ガスの流通方向に沿った上流側に、前記排気ガスの熱を回収する熱交換器を設けてある排気マニホルド。
【請求項2】
前記排気マニホルド本体が、前記エンジンが有する複数のシリンダに各別に接続される各別流路を備え、前記主流路は前記各別流路を統合するものであり、
当該主流路の周囲に前記熱交換器を備えてある請求項1に記載の排気マニホルド。
【請求項3】
前記主流路から前記分岐部に分流する排気ガスの流量を調節するバルブを前記主流路に設けてある請求項1または2に記載の排気マニホルド。
【請求項4】
前記熱交換器が、前記排気ガスを前記エンジンの吸気マニホルドに還流させるためのEGRクーラーの機能を有する請求項1から3の何れか一項に記載の排気マニホルド。
【請求項5】
請求項4に記載の排気マニホルドを前記エンジンに接続すると共に、
前記分岐部から延出する分岐路を前記吸気マニホルドに接続してあるEGR装置。
【請求項6】
請求項4に記載の排気マニホルドが前記エンジンに接続され、
前記分岐部から延出する分岐路が、前記吸気マニホルドに接続される第1分岐路と、前記主流路の下流側に再び接続される第2分岐路とを備えている排気ガス利用装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−163773(P2008−163773A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351624(P2006−351624)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000100805)アイシン高丘株式会社 (202)
【Fターム(参考)】