説明

排気装置

【課題】空気が他方の排気口から排気ダクト内に入り込んで一方の排気口側に流れてしまうことを防止できるようにして、室内の空気が一方の排気口を介して排気されやすいようにした排気装置を提供する。
【解決手段】屋根に設けられた第1の排気口32及び第2の排気口32と、室内と各排気口とを連通させる排気路(排気ダクト12)と、第1の排気口及び第2の排気口のうちの一方と室内7とを連通させ、かつ、第1の排気口及び第2の排気口のうちの他方と室内との連通を遮断する開閉手段(切換弁装置51)と、第1の排気口及び第2の排気口の周囲の圧力を検出するための検出手段(センサー52)と、検出手段からの信号に基づいて第1の排気口又は第2の排気口のうち周囲の圧力が負圧側に大きい一方の排気口と室内とを連通させ、かつ、他方の排気口と室内との連通を遮断するよう開閉手段を制御する制御手段(切換制御装置53)とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を建物の室内から建物の屋根を介して建物外部に排出する排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気を建物の室内から建物の屋根に設けられた排気口を介して建物外部に排気する排気装置において、建物の屋根における互いに対向する一対の辺縁側にそれぞれ排気口を設けた構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−170273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、建物屋根面には負圧が作用することが多い。本発明の発明者は、例えば、横断面及び縦断面が長方形状である直方体形状の複数階建ての集合住宅のような建物の一方の外壁面に向けて風が吹くと、一方の外壁面側の屋上(屋根)部分には大きな負圧が作用し、一方の外壁面側の屋上部分以外のその他の屋上部分には一方の外壁面側の屋上部分よりも小さな負圧が作用することを数値シミュレーションによって確認した(図6参照)。
尚、本明細書では、風が吹いている状態において、建物の外壁面、屋上面等の建物の外表面に作用する風の圧力が建物の外表面から外表面より離れる方向に向いている状態(風により建物の外表面が建物の外側に引張られているような状態)を負圧といい、建物の外表面に作用する風の圧力が建物の外表面に向いている状態(風により建物の外表面が建物の内側に押されているような状態)を正圧という。
ここで、建物の一方の外壁面側の屋上に設けられた一方の排気口と建物の他方の外壁面側の屋上に設けられた他方の排気口とを備え、さらに、建物の室内から一方の排気口及び他方の排気口とに連通する排気ダクトのような排気路を介して排気する構成の場合において、例えば、建物の一方の外壁面に向けて風が吹いている場合、一方の外壁面側の屋上部分に設けられた一方の排気口の周囲には他方の排気口の周囲よりも大きな負圧が作用するため、空気が他方の排気口から排気ダクト内に入り込んで一方の排気口側に流れてしまい、これにより室内の空気が排気されにくくなる可能性があった。
本発明は、例えば、周囲の空気の圧力状態が負圧側に大きい側の一方の排気口と室内とを連通させ、かつ、他方の排気口と室内との連通を遮断することによって、空気が他方の排気口から排気ダクト内に入り込んで一方の排気口側に流れてしまうことを防止できるようにして、室内の空気が一方の排気口を介して排気されやすいようにした排気装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る排気装置は、空気を建物の室内から建物の屋根に設けられた排気口を介して建物外部に排気する排気装置において、屋根の第1の辺縁側に設けられた第1の排気口と、屋根の第2の辺縁側に設けられた第2の排気口と、室内と第1の排気口とを連通させる第1の排気路と、室内と第2の排気口とを連通させる第2の排気路と、第1の排気口及び第2の排気口のうちの一方と室内とを連通させ、かつ、第1の排気口及び第2の排気口のうちの他方と室内との連通を遮断する開閉手段と、第1の排気口の周囲の圧力及び第2の排気口の周囲の圧力を検出するための検出手段と、検出手段からの信号に基づいて第1の排気口又は第2の排気口のうち周囲の圧力が負圧側に大きい一方の排気口と室内とを連通させ、かつ、他方の排気口と室内との連通を遮断するよう開閉手段を制御する制御手段とを備えたので、空気が他方の排気口から排気路内に入り込んで一方の排気口側に流れてしまうことを防止できて、室内の空気は周囲の圧力が負圧側に大きい一方の排気口を介して排気されやすくなる。
第1の排気路の一端部及び第2の排気路の一端部は、室内と連通する共通の排気導入ダクトにより形成され、開閉手段は、排気導入ダクトから第1の排気路及び第2の排気路に分岐する部分に設けられたので、室内から第1の排気口及び第2の排気口に対する切り換えを1つの開閉手段で実現でき、開閉手段の個数を最小限にできる。
第1の排気路及び第2の排気路は、それぞれ、天井裏空間において天井に沿うように設けられた横排気ダクト部分と、建物の壁内に設けられて横排気ダクト部分と排気口とを連通させる縦排気ダクト部分とを備え、開閉手段は、縦排気ダクト部分と横排気ダクト部分との境界部分に設けられたので、横排気ダクト部分の全体を排気口に連通させることができ、横排気ダクト部分内の空気を確実に排気できるので、室内の天井側に位置する横排気ダクト部分の内に空気が停滞してしまうことを防止でき、横排気ダクト部分の内に停滞した空気が室内に漏れてしまうようなことを防止できる。
検出手段が、排気口の近傍に設けられたので、排気口の周囲の圧力をより正確に検出でき、室内の空気を周囲の圧力が負圧側に大きい排気口を介して排気させるための制御を正確に行うことができる。
検出手段が、外壁面に設けられたので、外壁面に吹く風の状態を検出して室内の空気を周囲の圧力が負圧側に大きい排気口を介して排気させるための制御を行うことができる。
検出手段が、第1の排気路内と第2の排気路内とにそれぞれ設けられたので、排気路内の風の状態を検出して室内の空気を周囲の圧力が負圧側に大きい排気口を介して排気させるための制御を行うことができる。
検出手段が、風圧計であるので、排気口の周囲の圧力をより正確に検出でき、室内の空気を周囲の圧力が負圧側に大きい排気口を介して排気させるための制御を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】建物の給排気システムを示した断面図(実施形態1)。
【図2】建物の屋上に設けられた排気口を示す斜視図(実施形態1)。
【図3】排気口が設けられた建物の屋上を上から見た平面図(実施形態1)。
【図4】数値シミュレーションの条件を示す図(実施形態1)。
【図5】数値シミュレーションの結果を示す図(実施形態1)。
【図6】数値シミュレーションの結果を示す図(実施形態1)。
【図7】建物の給排気システムを示した断面図(実施形態4)。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
まず、実施形態1の排気装置を採用した建物の給排気システムについて説明する。
図1乃至図3に示すように、建物の給排気システム1は、建物2と、吸気装置3と、排気装置4とを備える。
建物2は、例えば、横断面及び縦断面が長方形状である直方体形状の集合住宅である。
吸気装置3は、例えば、集合住宅の各戸5の壁6に設けられて外気を室内7に取り込むための吸気口8を備えた構成、又は、吸気口8と吸気口8に設けられた図外の吸気ファン等の吸気機械と吸気機械の図外の制御装置とを備えた構成である。
【0008】
排気装置4は、例えば、各戸に設けられた戸別排気部9と、屋上(屋根)10に設けられた2つの屋上排気部11;11と、各戸別排気部9;9・・・と一方の屋上排気部11とを連通させる一方の排気ダクト(第1の排気路)12と、各戸別排気部9;9・・・と他方の屋上排気部11とを連通させる他方の排気ダクト(第2の排気路)12と、排気切換装置50とを備える。
【0009】
戸別排気部9は、例えば、各戸5の天井板13に設けられた室内排気口14と、室内排気口14に設けられた排気ファン等の排気機械15と、排気機械15の図外の制御装置とを備えた構成である。室内排気口14は、例えば、浴室や洗面所等の天井に設けられる。
【0010】
屋上排気部11は、例えば、建物2の屋上10における長方形又は正方形の互いに対向する一対の辺縁側に設けられる。例えば、建物2の屋上10における一方の長辺縁21側(第1の辺縁側)に設けられた一方の屋上排気部11に一方の排気口32(第1の排気口)が設けられ、建物2の屋上10における他方の長辺縁22側(第2の辺縁側)に設けられた他方の屋上排気部11に他方の排気口32(第2の排気口)が設けられる。
図2に示すように、屋上排気部11は、例えば、排気ダクト12の他端開口と屋上10とを連通させるために屋上面16と建物2の壁6の内側とに連通するように形成されて屋上面16に開口する複数の排気路17;17・・・と、排気路17の屋上面開口18より屋上10に排出される空気を集合させる排気集合空間31と排気口32とを形成する囲い30とを備える。
排気路17は、建物躯体に形成された貫通路又は当該貫通路内に配置された排気ダクト12の他端部により形成される。図3では、戸5の排気を排気路17、囲い30の排気集合空間31及び排気口32を介して建物外部に排気するレイアウト構成を示した。
【0011】
囲い30は、例えば図2に示すように、各屋上面開口18;18・・・の上方に位置する上板30aと、上板30aにおける屋上10の一方の長辺縁21(又は他方の長辺縁22)側の縁面である前縁面と対向する後縁面より延長して屋上面16と連結される後板30bと、上板30aの一方側縁面及び後板30bの一方側縁面より延長して屋上面16と連結される一方側板30cと、上板30aの他方側縁面及び後板30bの他方側縁面より延長して屋上面16と連結される他方側板30dと、排気口構成板30eと、排気口構成板30eに形成された排気口32とを備える。
上板30a、後板30b、排気口構成板30eは、屋上10の長辺縁21(又は長辺縁22)に沿った方向に長い板により形成される。
排気口構成板30eは、上板30aの前縁面と一方側板30cの前縁面と他方側板30dの前縁面とより延長して屋上面16と連結された横長の壁板により形成される。
【0012】
排気口32は、例えば、排気口構成板30eにおいて一方側板30c側と他方側板30d側とに渡って連続して延長するように形成された横長貫通孔により形成される。つまり、排気口32は、排気口構成板30eの一部を貫通させた開口により形成されたものであり、上板30aの前縁面と一方側板30cの前縁面と他方側板30dの前縁面と屋上面16とで囲まれた開口よりも小さい開口により形成される。
そして、横長貫通孔により形成された排気口32における長辺縁21(又は長辺縁22)に沿った横長の開口縁33、即ち、水平方向に延長する上側開口縁33aと下側開口縁33bとが平行な直線に形成される。
互いに平行となるように形成される上側開口縁33aと下側開口縁33bとの間の間隔は、例えば、5cm〜10cm程度に形成される。
即ち、屋上排気部11は、囲い30の内面と屋上面16とで囲まれた排気集合空間31を備え、室内7からの排気が排気ダクト12、排気路17、屋上面開口18を介して囲い30の排気集合空間31内に集まった後に、排気口構成板30eに形成された排気口32を介して囲い30の外部に排気されるように構成されている。
【0013】
排気ダクト12は、例えば、一端側が分岐されて複数階建ての各階の各室内排気口14;14・・・と連通可能に連結され、かつ、他端側が分岐されて屋上面16上に設けられた屋上排気部11に連通するように構成された集合排気ダクトにより形成される。
実施形態1では、室内7と一方の排気口32とを連通させる一方の排気ダクト12(第1の排気路)の一端部及び室内7と他方の排気口32とを連通させる他方の排気ダクト12(第2の排気路)の一端部が、室内7と連通する共通の排気導入ダクト12cにより形成され、当該排気導入ダクト12cの一端が室内7と連通する室内排気口14に形成される。
即ち、一方の排気ダクト12及び他方の排気ダクト12は、それぞれ、一端に室内7と連通する室内排気口14を備えた排気導入ダクト12cと、一端が排気導入ダクト12cの他端と連通して天井裏空間において天井に沿うように設けられた横排気ダクト部分12bと、建物2内に設けられて一端が横排気ダクト部分12bの他端と連通し他端が排気口32と連通して横排気ダクト部分12bと排気口32とを連通させる縦排気ダクト部分12aとを備える。
【0014】
排気切換装置50は、開閉手段としての切換弁装置51と、検出手段としてのセンサー52と、制御手段としての切換制御装置53とを備える。
切換弁装置51は、例えば、共通の排気導入ダクト12cから一方の排気ダクト12及び他方の排気ダクト12に分岐する部分に設けられる。当該切換弁装置51は、切換制御装置53からの制御信号により作動する弁を備え、当該弁により、室内7と一方の排気口32との連通を遮断したり、室内7と他方の排気口32との連通を遮断することにより、一方の排気口32及び他方の排気口32のうちの一方と室内7とを連通させ、一方の排気口32及び他方の排気口32のうちの他方と室内7との連通を遮断する装置である。
センサー52は、一方の排気口32の周囲及び他方の排気口32の周囲の圧力を検出するためのセンサーであり、例えば、一方の排気口32の近傍に設けられた一方の風圧計52a、及び、他方の排気口32の近傍に設けられた他方の風圧計52bである。
切換制御装置53は、センサー52からの信号に基づいて一方の排気口32及び他方の排気口32のうち周囲の圧力が負圧側に大きい例えば一方の排気口32と室内7とを連通させ、かつ、他方の排気口32と室内7との連通を遮断するよう切換弁装置51を制御することにより、空気が他方の排気口32から排気ダクト12内に入り込んで一方のの排気口32側に流れてしまうことを防止できて、室内7の空気は周囲の圧力が負圧側に大きい一方の排気口32を介して排気されやすくなる。
【0015】
以上の給排気システム1によれば、建物2の外部から吸気口8を介して室内7に空気が導入され、かつ、排気機械15が駆動されて室内7の空気が排気ダクト12及び屋上排気部11を介して建物2の外部に排出される。
【0016】
尚、発明者らは建物2の外壁面35に風圧が作用した場合に屋上10での圧力分布がどのようになるかを数値シミュレーションで求めた。
図4に示すように、数値シミュレーションでは、横断面及び縦断面が長方形状である直方体形状の建物2の一方の外壁面35Aに直交する方向から建物2の一方の外壁面35Aに向けて風が吹いた場合(図4に白抜き矢印で示すように風向0°で風が吹いた場合(図4の紙面上において下から上に向けて風が吹いた場合))を想定して、建物2の周囲の圧力分布を解析するとともに、図4の紙面上において建物2の中心2Cを中心として風向き0°の位置より右回りに45°回転させた位置から建物2の中心2Cに向けて風が吹いた場合(図4に白抜き矢印で示すように風向45°で風が吹いた場合)を想定して、建物2の周囲の圧力分布を解析した。
尚、図4に示すように、屋上10における長方形の長辺縁21及び長辺縁22が庇23の長辺で構成されている建物2を想定して数値シミュレーションを行った。
【0017】
図5(a)は、上記風向0°で風が吹いたと想定した場合の建物横幅方向の中央の部分X(図4参照)での建物2の高さ方向における建物2の周囲の圧力分布を解析した結果を示す図である。
図5(b)は、上記風向45°で風が吹いたと想定した場合の建物横幅方向の中央の部分Xでの建物2の高さ方向における建物2の周囲の圧力分布を解析した結果を示す図である。
図6(a)は、上記風向0°で風が吹いたと想定した場合の屋上面16から500mm上方の位置での建物2の周囲の圧力分布を解析した結果を示す図である。
図6(b)は、上記風向45°で風が吹いたと想定した場合の屋上面16から500mm上方の位置での建物2の周囲の圧力分布を解析した結果を示す図である。
また、図5;図6において、等圧線40に付した数字は圧力係数であり、等圧線40の1間隔は、圧力係数0.1間隔である。尚、圧力係数Cpは、風が吹くことによって建物2の外表面に作用する圧力pを建物頂部高さHにおける速度圧qで除した値(Cp=p/q)である。
【0018】
図5;図6から、建物2の外壁面35に向けて風が吹いたと想定した場合に、建物2の屋上10は負圧となることがわかった。
そして、上記風向0°で風が吹いたと想定した場合、図6(a)に示すように、屋上10に作用する負圧の等圧線40は、屋上面16より上方でかつ屋上面16と平行な面上において上記一方の外壁面35Aの上端部に位置する屋上面16の一方の長辺縁(縁)21に沿った湾曲線となることがわかった。即ち、屋上10の一方の長辺縁21の中央側の部分での負圧の等圧線40が建物2の中心2C側(図4参照)に張り出すように湾曲する湾曲線となることがわかった。
また、上記風向45°で風が吹いたと想定した場合も、図6(b)に示すように、屋上10に作用する負圧の等圧線40は、屋上面16より上方でかつ屋上面16と平行な面上において上記一方の外壁面35Aの上端部に位置する屋上面16の一方の長辺縁(縁)21に沿った湾曲線(屋上10の一方の長辺縁21の中央側の部分での負圧の等圧線40が建物2の中心2C側に張り出すように湾曲する湾曲線)となるとともに、建物2の一方の外壁面35Aと直角に隣り合う外壁面35B(図4参照)の上端縁に沿った湾曲線(外壁面35Bの上端縁の中央側の部分での負圧の等圧線40が建物2の中心2C側に張り出すように湾曲する湾曲線)となることがわかった。
さらに、上記風向0°で風が吹いたと想定した場合、図5(a)に示すように、屋上10に作用する負圧の等圧線40は、屋上面16と直交する面上においても上記一方の外壁面35Aの上端部に位置する屋上10の一方の長辺縁21から上方に移動して屋上面16に到達するような湾曲線となることがわかった。
また、上記風向45°で風が吹いたと想定した場合、図5(b)に示すように、屋上10に作用する負圧の等圧線40は、屋上面16と直交する面上においても上記一方の外壁面35Aの上端部に位置する屋上10の一方の長辺縁21から上方に移動して屋上面16に到達するような湾曲線となり、かつ、上記風向0°で風が吹いたと想定した場合と比べて、負圧値の値が小さく、また、負圧の等圧線40の間隔も広くなることがわかった。
【0019】
図5;図6からわかることは、例えば、建物2の一方の外壁面35Aに向けて風が吹くと、一方の外壁面35A側の屋上部分には大きな負圧が作用し、一方の外壁面35A側の屋上部分以外のその他の屋上部分には一方の外壁面側の屋上部分よりも小さな負圧しか作用しないことである。
そこで、実施形態1では、建物2の外壁面35に向けて風が吹いた場合に当該外壁面35側の屋上部分に大きな負圧が作用することに鑑み、排気切換装置50を設け、切換制御装置53が、一方の排気口32の近傍に設けた一方の風圧計52a及び他方の排気口32の近傍に設けた他方の風圧計52bからの風圧値を入力して、風圧値の大きい方の排気口32と室内7との連通を遮断し、かつ、風圧値の小さい方の排気口32と室内7と連通させるように切換弁装置51を制御することによって、空気が風圧値の大きい方の排気口32から排気ダクト12内に入り込んで風圧値の小さい方の排気口32側に流れてしまうことを防止できて、室内7の空気は周囲の圧力が負圧側に大きい排気口32(風圧値の小さい方の排気口32)を介して排気されやすくなるようにした。
【0020】
実施形態1の排気装置4によれば、排気切換装置50を備えたことにより、例えば、建物2の一方の外壁面35Aに向けて風が吹いている場合において、風圧値の大きい方の排気口32と風圧値の小さい方の排気口32との連通を遮断させ、かつ、一方の外壁面35A側の屋上10に設けられた風圧値の小さい方の排気口32と室内7とを連通させることによって、風圧値の大きい方の排気口32から風圧値の小さい方の排気口32側への空気の移動を防止でき、室内7の空気は風圧値の小さい方の排気口32を介して排気されやすくなる。
また、一方の排気口32及び他方の排気口32と複数階建ての各階の各室内排気口14;14・・・とが排気ダクト12により連通可能に連結された構成において、排気切換装置50を備えない場合には、周囲の圧力が負圧側に大きい例えば一方の排気口32に他方の排気口32から流入してきた空気が移動する(空気が他方の排気口32側から一方の排気口32側に引張られやすくなるので)ので、下階の室内7からの空気が一方の排気口32まで移動しにくくなり、下階の室内7からの空気が排気されにくくなる恐れがある。これに対して、実施形態1では、排気切換装置50を備えたので、他方の排気口32側から一方の排気口32側への空気の移動が遮断され、下階の室内7からの空気が一方の排気口32を介して排気されやすくなる。
また、切換弁装置51を、共通の排気導入ダクト12cから一方の排気ダクト12及び他方の排気ダクト12に分岐する部分に設けたので、室内7から一方の排気口32及び他方の排気口32に対する切り換えを1つの切換弁装置51で実現でき、切換弁装置51の個数を最小限にできる。
また、排気口32の近傍に風圧計を設けたので、排気口32の周囲の圧力をより正確に検出でき、室内7の空気を周囲の圧力が負圧側に大きい排気口32を介して排気させるための制御を正確に行うことができる。
センサー52として風圧計を用いたので、排気口32の周囲の圧力をより正確に検出でき、室内7の空気を周囲の圧力が負圧側に大きい排気口32を介して排気させるための制御を正確に行うことができる。
また、排気口32が、囲い30における屋上10の辺縁側に位置する面34(図2参照)に形成されたので、排気口32が建物2の外側を向くように設けられ、また、屋上10の辺縁に近いほど負圧が大きくなるので、建物2の外側に向けて効率的に排気できる。
また、一対の囲い30が、屋根における一対の長辺縁のそれぞれに沿うように設けられたので、排気口32の水平方向の長さを長くでき、また、それぞれの長辺縁のどちらに向けて風が吹いた場合でも、建物2の外側に向けて効率的に排気できる。
尚、実施形態1においては、センサー52として風速計を用いてもよい。図5;図6から、等圧線40が密であるところは風速値が大きく負圧となっていると考えることができるので、この場合、切換制御装置53が、一方の排気口32の近傍に設けた一方の風速計及び他方の排気口32の近傍に設けた他方の風速計からの風速値を入力して、風速値の小さい方の排気口32と室内7との連通を遮断し、かつ、風速値の大きい方の排気口32と室内7と連通させるように切換弁装置51を制御すればよい。
【0021】
実施形態2
実施形態1では、センサー52としての風圧計52a;52bを排気口32の近傍に設置したが、屋上排気部11が設けられている屋上10の辺縁側の一方の外壁面35A及び他方の外壁面35Cのそれぞれに風圧計を設置してもよい。この場合、切換制御装置53が、一方の外壁面35Aに設けた一方の風圧計52a及び他方の外壁面35Cに設けた他方の風圧計52bからの風圧値を入力して、風圧値の小さい方の外壁面側の屋上部分に設けられている排気口32と室内7との連通を遮断し、かつ、風圧値の大きい方の外壁面側の屋上部分に設けられている排気口32と室内7と連通させるように切換弁装置51を制御することによって、室内7の空気を周囲の圧力が負圧側に大きい排気口32を介して排気させることができる。つまり、実施形態2では、外壁面に設けられた風圧計の風圧値が大きいということは、当該外壁面側の屋上部分には大きな負圧が作用していると推定できるので、当該屋上部分に設けられている排気口32を介して排気させるようにしたものである。
実施形態2によれば、外壁面35A;35Cにそれぞれ風圧計を設けたので、外壁面に加わる風圧値を検出して室内7の空気を周囲の圧力が負圧側に大きい排気口32を介して排気させるための制御を行うことができる。
尚、実施形態2においては、センサー52として風向計を用いてもよい。図5;図6から、風上側が負圧となっていると考えることができるので、この場合、切換制御装置53が、1つの外壁面35に設けられた1つの風向計からの値を入力して、排気口32が風上に位置するか風下に位置するかを判定し、風下側に位置する排気口32と室内7との連通を遮断し、かつ、風上側に位置する排気口32と室内7と連通させるように切換弁装置51を制御すればよい。
【0022】
実施形態3
風圧計を一方の排気ダクト12内と他方の排気ダクト12内とにそれぞれ設けた構成としてもよい。この場合、切換制御装置53が、一方の排気ダクト12内に設けた一方の風圧計52a及び他方の排気ダクト12内に設けた他方の風圧計52bからの風圧値を入力して、風圧値の小さい方の風圧計が設けられている排気ダクト12側の排気口32と室内7との連通を遮断し、かつ、風圧値の大きい方の風圧計が設けられている排気ダクト12側の排気口32と室内7とを連通させるように切換弁装置51を制御することによって、室内7の空気を周囲の圧力が負圧側に大きい排気口32を介して排気させることができる。つまり、実施形態3では、排気ダクト12内に設けられた風圧計の風圧値が大きいということは、当該排気ダクト12の排気端側の屋上部分には負圧が作用していると推定できるので、当該屋上部分に設けられている排気口32を介して集中的に排気させるようにしたものである。
尚、排気ダクト12をバイパスするダミーの排気ダクトを設け、このダミーの排気ダクト内に風圧計を設けてもよい。
実施形態3によれば、一方の排気ダクト12内及び他方の排気ダクト12内、又は、これらをバイパスするダミーの排気ダクト内にそれぞれ風圧計を設けたので、排気ダクト内の風圧値を検出して室内7の空気を周囲の圧力が負圧側に大きい排気口32を介して排気させるための制御を行うことができる。
尚、実施形態3においては、センサー52として風速計を用いてもよい。この場合、切換制御装置53が、一方の排気ダクト(ダミーの排気ダクト)12内に設けた一方の風速計及び他方の一方の排気ダクト(ダミーの排気ダクト)12内に設けた他方の風速計からの風速値を入力して、風速値の小さい方の風速計が設けられている排気ダクト12側の排気口と室内との連通を遮断し、かつ、風速値の大きい方の風速計が設けられている排気ダクト12側の排気口32と室内7とを連通させるように切換弁装置51を制御すればよい。つまり、排気口32の周囲の圧力が負圧側に大きい場合、排気ダクト12内の空気の流れは室内7側から排気口32に向けて速くなると考えられるので、風速値を測定することで、囲の圧力が負圧側に大きい排気口32を特定できる。
【0023】
実施形態1乃至3によれば、切換制御装置53が、排気口の近傍の風の状態、外壁面に吹く風の状態、排気ダクト内の風の状態を検出して、周囲の圧力が負圧側に大きい排気口32を特定できるので、室内7の空気を周囲の圧力が負圧側に大きい排気口32を介して排気させるための制御を正確に行うことができる。
尚、一方の外壁面35A又は他方の外壁面35Cのいずれかにのみ風圧計を設ける構成としてもよい。
【0024】
実施形態4
図7に示すように、開閉手段として、一方の排気ダクト12の縦排気ダクト部分12aと横排気ダクト部分12bとの境界部分、及び、他方の排気ダクト12の縦排気ダクト部分12aと横排気ダクト部分12bとの境界部分に、それぞれ開閉弁装置51Aを設けてもよい。
この場合、横排気ダクト部分12bの全体を排気口32に連通させることができ、横排気ダクト部分12b内の空気を確実に排気できるので、室内7の天井側に位置する横排気ダクト部分12bの内に空気が停滞してしまうことを防止でき、横排気ダクト部分12bの内に停滞した空気が室内7に漏れてしまうようなことを防止できる。
【0025】
実施形態5
一方の排気口32及び他方の排気口32のそれぞれに、排気口を開閉する開閉手段としての開閉弁を設けた構成としてもよい。
【0026】
また、横長貫通孔により形成された排気口32は、囲い30の排気口構成板30eの面34に1つ又は面34の上下方向に複数並ぶように設ければよい。
また、排気口32は、縦長貫通孔、又は、屋上面16に対して斜め方向に延長する貫通孔により形成してもよい。
また、囲い30は、上下方向に排気口32を形成する複数の貫通孔が平行に並ぶように設けられたガラリ戸のような排気口構成板30eを備えた構成としてもよい。
【0027】
上記では、排気口32が、囲いにおける屋上の一辺縁側に位置する排気口構成板30eの面34に形成された例を示したが、排気口32は、囲い30の排気口構成板30e、後板30b、上板30aのうちのいずれか1つに形成されていればよい。
【0028】
尚、屋上排気部11は、建物2の屋上10の3つの辺縁側にそれぞれ設けられたり、建物2の屋上10の4つの辺縁側にそれぞれ設けられた構成としてもよい。このようにすれば、どの方向から風が吹いた場合でも屋上排気部11の排気口32を介して効率的な排気が行われる。
この場合、例えば、一番大きな負圧が作用している屋上部分に設けられた屋上排気部11の排気口32以外の排気口と室内との連通を遮断し、一番大きな負圧が作用している屋上部分に設けられた屋上排気部11の排気口32を介して集中的に排気を行わせる構成とすればよい。
【0029】
また、制御手段による開閉手段の制御は、制御手段がセンサーからの出力をリアルタイムに入力してリアルタイムに制御を行ってもよいし、制御手段が所定時間間隔でセンサーからの出力を読み込んで所定時間間隔で制御を行ってもよい。
【符号の説明】
【0030】
2 建物、4 排気装置、7 室内、10 屋上(屋根)、
12 一方の排気ダクト(第1の排気路)、12 他方の排気ダクト(第2の排気路)、12a 縦排気ダクト部分、12b 横排気ダクト部分、12c 排気導入ダクト、
21 一方の長辺縁(第1の辺縁)、22 他方の長辺縁(第2の辺縁)、
32 一方の排気口(第1の排気口)、32 他方の排気口(第2の排気口)、
35A 一方の外壁面、35C 他方の外壁面、50 排気切換装置、
51 切換弁装置(開閉手段)、51A 開閉弁装置(開閉手段)、
52 センサー(検出手段)、52a;52b 風圧計(検出手段)、
53 切換制御装置(制御手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を建物の室内から建物の屋根に設けられた排気口を介して建物外部に排気する排気装置において、
屋根の第1の辺縁側に設けられた第1の排気口と、屋根の第2の辺縁側に設けられた第2の排気口と、室内と第1の排気口とを連通させる第1の排気路と、室内と第2の排気口とを連通させる第2の排気路と、第1の排気口及び第2の排気口のうちの一方と室内とを連通させ、かつ、第1の排気口及び第2の排気口のうちの他方と室内との連通を遮断する開閉手段と、第1の排気口の周囲の圧力及び第2の排気口の周囲の圧力を検出するための検出手段と、検出手段からの信号に基づいて第1の排気口又は第2の排気口のうち周囲の圧力が負圧側に大きい一方の排気口と室内とを連通させ、かつ、他方の排気口と室内との連通を遮断するよう開閉手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする排気装置。
【請求項2】
第1の排気路の一端部及び第2の排気路の一端部は、室内と連通する共通の排気導入ダクトにより形成され、
開閉手段は、排気導入ダクトから第1の排気路及び第2の排気路に分岐する部分に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の排気装置。
【請求項3】
第1の排気路及び第2の排気路は、それぞれ、天井裏空間において天井に沿うように設けられた横排気ダクト部分と、建物の壁内に設けられて横排気ダクト部分と排気口とを連通させる縦排気ダクト部分とを備え、
開閉手段は、縦排気ダクト部分と横排気ダクト部分との境界部分に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の排気装置。
【請求項4】
検出手段が、排気口の近傍に設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項5】
検出手段が、外壁面に設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項6】
検出手段が、第1の排気路内と第2の排気路内とにそれぞれ設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の排気装置。
【請求項7】
検出手段が、風圧計であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の排気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−211747(P2012−211747A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78428(P2011−78428)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】