説明

排水ますおよび排水ます用内副管

【課題】排水ますに用いられる内副管を、接続される排水枝管の排水本管との位置関係に関係なく、使用することのできる、すなわち、多種多様の形状の内副管を用意する必要をなくし、排水ますに用いられる内副管の種類と形状の簡素化を図る。
【解決手段】蓋体、点検筒および/またはアジャスター、ならびにインバートとからなる排水ますの上部の排水枝管用流入口の下方に配設される内副管を、漏斗状で上向きに開口した排水流入部を有する上部構造と、インバートを流れる排水の流れ方向に開口した排水流出部を有する下部構造から構成されるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、下水道などの配管に設けられる排水ます、および排水ます内に配置される内副管に関するもので、下水配管敷設技術に属するものである。
【背景技術】
【0002】
戸建住宅の下水道などの排水配管には、配管内の点検のためと、排水枝管から排水本管への合流のために排水ますが広く用いられている。この排水ますには、通常、排水枝管から流入する排水の流路を制御するために、内副管と称される管体が、排水ますの内部または外部に設けられている。
【0003】
すなわち、排水ますの設置に際し、排水本管と排水枝管との埋設レベルが一致していることはきわめて稀なため、多くの場合、排水枝管は排水本管よりも高い位置にある。そのため、排水枝管と排水本管との合流部に落差があり、この落差が大きいと、排水枝管から流入した排水が飛散するとともに、排水ますの内壁を侵食し磨耗させるため、それら汚水の飛散や排水ますの磨耗を防ぐために内副管が設けられている。
【0004】
たとえば、特開平8−109647号公報(特許文献)には、インバート部の上部に形成される立上り管を分割し、その中間に、分岐接続口が突設された接続枠体を有する小型マンホールにおいて、下端開口部をインバート部に臨ませ、上端部を前記分岐接続口の流出口に接続するための内副管を、マンホールの内部または外部に設けられることが開示されている。
【0005】
また、特開2004−278095号公報(特許文献)においては、点検筒とインバートとからなる排水ますにおいて、前記排水ますの上部に流入口を設け、前記流入口と前記インバート流出口とを、Uターン状の流れにするような案内部材を内蔵した宅内設置の排水ますが開示されている。この案内部材とは、内副管そのもののことである。
【特許文献1】特開平 8−109647号公報 (特許請求の範囲、図1、図7)
【特許文献2】特開2004−278095号公報(特許請求の範囲、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、排水本管と排水枝管との位置関係は、建物の構造変化、すなわち、排水発生箇所の多様化により、多種多様となっている。したがって、排水ますの設置に際しても、排水ますの設置箇所における排水本管の敷設方向と、排水枝管の敷設方向は種々雑多であって、一部は、その修正がエルボや曲管あるいは自在継手などで行なわれても、排水ますに取付けられる、排水本管と排水枝管との位置関係は、多岐にわたるものである。
【0007】
したがって、排水ますを構成する部材、すなわち、インバート部材、立上り管、アジャスタ、さらには内副管について、排水本管と排水枝管との位置関係に応じた、種々の形状の部材を用意しなければならないのが現状で、それらの部材の製造、流通、在庫、選択等に多大な労力が注ぎ込まれている。
【0008】
この発明はかかる現状に鑑み、敷設現場における施工性・作業性に優れた排水ますと、排水枝管の排水本管との位置関係に関係なく使用することができる排水ます用内副管を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、この発明の請求項1に記載の発明は、
蓋部材、点検筒およびインバート部とからなるものであって、
前記インバート部の上部の点検筒に開口される排水枝管の下方に、漏斗状で上向きに開口した排水流入部を有する上部構造と、前記インバート部を流れる排水の流れ方向に開口した排水流出部を有する下部構造から構成される内副管が配設されていること
を特徴とする排水ますである。
【0010】
また、この発明の請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載の排水ますにおいて、
前記点検筒は、
前記インバート部に形成された立上り部に接続される所要長さと径を有する円筒体からなるもので、所要部位に開口される排水枝管の下方の、円筒体の内周部に前記上部構造を係止するための係止部を有すること
を特徴とするものである。
【0011】
また、この発明の請求項3に記載の発明は、
請求項1に記載の排水ますにおいて、
前記点検筒は、
前記インバート部に形成された立上り部に接続される所要長さと径を有する円筒体から立上り管と、この立上り管に接続される円筒状のアジャスタからなるもので、前記アジャスタの所要部位に開口される排水枝管の下方の、アジャスタの内周部に、前記上部構造を係止するための係止部を有すること
を特徴とするものである。
【0012】
また、この発明の請求項4に記載の発明は、
請求項1に記載の排水ますにおいて、
前記内副管は、
上部構造部材と、下部構造部材との分離可能な2部材からなるもので、両者の結合状態を変化させることにより、インバート部内を流れる排水の流れ方向に、前記下部構造部材の排水流出部の開口を合わせられるよう構成されていること
を特徴とするものである。
【0013】
また、この発明の請求項5に記載の発明は、
請求項1に記載の排水ますにおいて、
前記内副管は、
上部構造部材と、下部構造部材との分離可能な2部材からなるもので、前記下部構造部材が、自重もしくはインバート部を流れる排水の流力及び/又は流量に応じて変形可能な材質で形成されていること
を特徴とするものである。
【0014】
また、この発明の請求項6に記載の発明は、
請求項5に記載の排水ますにおいて、
前記内副管の下部構造部材は、
軟質の樹脂製又は布製の筒状体であること
を特徴とするものである。
【0015】
また、この発明の請求項7に記載の発明は、
請求項6に記載の排水ますにおいて、
前記筒状体は、
インバート部の排水流出口上部に設けられた止め具により、前記止め具と対応する下端部が固定されていること
を特徴とするものである。
【0016】
また、この発明の請求項8に記載の発明は、
請求項1〜3のいずれかに記載の排水ますにおいて、
前記点検筒は、
前記排水枝管からの排水を受け入れるための開口が複数設けられていること
を特徴とするものである。
【0017】
また、この発明の請求項9に記載の発明は、
請求項1に記載の排水ますにおいて、
前記排水枝管は、
前記点検筒に対し、その開口が前記点検筒の軸心に対し偏心させて接続されていること
を特徴とするものである。
【0018】
また、この発明の請求項10に記載の発明は、
請求項1に記載の排水ますにおいて、
前記内副管は、
前記点検筒の内部に設けられた張出し縁に脱着自在の状態で取付けられていること
を特徴とするものである。
【0019】
また、この発明の請求項11に記載の発明は、
請求項1に記載の排水ますにおいて、
前記排水ますは、
排水本管と連通する底部のインバート部材と、このインバート部材の上部に連接される点検筒と、この点検筒の上部開口に装着される蓋部とからなるもので、前記インバート部材の立上り部もしくは前記点検筒の上下端の、いずれかの内側面または外側面に、それら部材の埋設位置を調節するための調節用螺子が設けられていること
を特徴とするものである。
【0020】
また、この発明の請求項12に記載の発明は、
請求項11に記載の排水ますにおいて、
前記点検筒は、
前記インバート部材の上部と連接する立上り管と、この立上り管に連接されるアジャスタとで構成されたもので、前記アジャスタの上下端のいずれかの内側面または外側面に、埋設位置を調節するための調節用螺子が設けられていること
を特徴とするものである。
【0021】
また、この発明の請求項13に記載の発明は、
請求項11又は12に記載の排水ますは、
前記点検筒は、
そのいずれもが上端部に蓋受枠部と蓋からなる蓋部を有し、前記蓋受枠部の上下端のいずれかの内側面または外側面に、埋設位置を調節するための調節用螺子が設けられていること
を特徴とするものである。
【0022】
また、この発明の請求項14に記載の発明は、
請求項11〜13のいずれかに記載の排水ますにおいて、
前記外側面に螺子を有するインバート部材、点検筒、点検筒を構成するアジャスタ、蓋受枠部は、
そのいずれか一つもしくは複数が、その外周部に前記調節用の螺子と噛み合う螺子が設けられているリング体を有すること
を特徴とするものである。
【0023】
また、この発明の請求項15に記載の発明は、
請求項11〜13のいずれかに記載の排水ますにおいて、
前記外側面に螺子を有するインバート部材、点検筒、点検筒を構成するアジャスタ、蓋受枠部は、
そのいずれかもしくは複数が、その内側面に前記調節用の螺子に噛み合う螺子が設けられていること
を特徴とするものである。
【0024】
また、この発明の請求項16に記載の発明は、
請求項11〜13のいずれかに記載の排水ますにおいて、
前記外側面に螺子を有するインバート部材、点検筒、点検筒を構成するアジャスタ、蓋受枠部は、
そのいずれかもしくは複数が、その外側面に前記螺子に噛み合う螺子が設けられていること
を特徴とするものである。
【0025】
また、この発明の請求項17に記載の発明は、
請求項11〜16のいずれかに記載の排水ますにおいて、
前記外側面に螺子を有するインバート部材、点検筒、点検筒を構成するアジャスタ、蓋受枠部は、
そのいずれかもしくは複数が、形成された螺子の末端部にシールリングが設けられていること
を特徴とするものである。
【0026】
さらに、この発明の請求項18に記載の発明は、
漏斗状で上向きに開口した排水流入部と、この排水流入部の下部に分離可能に接続される排水放出用の開口を有する排水流出部とからなること
を特徴とする排水ます用内副管である。
【0027】
また、この発明の請求項19に記載の発明は、
請求項18に記載の排水ます用内副管において、
前記排水流出部は、
その自重もしくはインバート部を流れる排水の流力及び/又は流量に応じて変形可能な材質で形成されていること
を特徴とするものである。
【0028】
また、この発明の請求項20に記載の発明は、
請求項18に記載の排水ます用内副管において、
前記排水流出部は、
軟質の樹脂製または布製の筒状体で形成されたものであること
を特徴とするものである。
【0029】
また、この発明の請求項21に記載の発明は、
請求項18に記載の排水ます用内副管において、
前記排水流入部は、
その外周部に排水ますへの脱着用の把持部を有するとともに、上部開口部の外周に点検筒内に形成された張出し縁に係止するための係止縁を有していること
を特徴とするものである。

【発明の効果】
【0030】
この発明の排水ますは、漏斗状で上向きに開口した排水流入部と、その排水流入部の下部に接続され、インバート部を流れる排水の流れ方向に開口した排水流出部とで構成された内副管を採用しているので、内副管の設置に際して、排水枝管、延いては排水ますの枝管取付け部の位置を考慮する必要はなく、インバート部を流れる排水の流れ方向に排水流出部の開口部を合わせるだけで、排水枝管からの排水を排水本管に容易に合流させることができるものである。
【0031】
また、この発明の排水ます用内副管は、漏斗状で上向きに開口した排水流入部と、その排水流入部の下部に接続され、インバート部を流れる排水の流れ方向に開口した排水流出部とで構成されいるので、排水枝管や枝管取付け部の取付け位置に制限されることなく排水ますに取付けることができるので、従来のような、多種多様の内副管を揃えるという必要がなく、製品在庫の管理や、排水ますの施工性を著しく高めることができる。
【0032】
さらに、この内副管は、下部の排水流出部を、自重もしくはインバート部を流れる排水の流力及び/又は流量に応じて変形可能な材質で形成すれば、内副管内を排水が流れないときは、排水流出部が縮形し、インバート部を流れる排水の流れを阻害することがなく、内副管内を排水が流れるときは、その流力及び/又は流量に応じて排水流出部が膨張し、排水流出部から流出する排水を、排水ますのインバート部を流れる排水の流れ方向に合わせることができるという優れた効果をも奏するものである。
【0033】
さらにまた、内副管の排水流出部を、軟質の樹脂製または布製の筒状体とし、その下端部の一端を、インバート部の排水流出口の上部に設けられた止め具により、排水流出口上部に係止させることによって、内副管の排水流出部を、きわめて容易に、排水ますのインバート部を流れる排水の流れ方向に向けることができる。また、前記の排水流入部と合わせることにより、排水枝管の取付け位置など関係なく内副管を取付けることができ、排水ますの設置における制約の一つを消失させるという効果を奏するのである。
【0034】
また、この発明の排水ますにおいては、嵌合により、また必要により接着剤を用いて接合されていたインバート部、立上り管あるいはアジャスタなどからなる点検筒について、それらの組立てにおいて螺合手段を併用すること、特にリング体を用いることにより、組立ての作業性を著しく向上させることができ、インバート部の排水管接続部とそれに接続する排水管との心合わせや蓋部表面を地表面(GL)に面合わせ、特にアジャスタに設けられた接続部と排水枝管との心合わせも、きわめて簡単に行なえる。したがって、埋設現場における排水ますの埋設位置の調整作業を、熟練を要しない、きわめて容易なものにすることができる。
【0035】
さらに、この発明において、内副管の排水ますへの取付けを脱着自在に行なえることにすれば、排水ますの点検、掃除を容易にすることができ、また、組立ても容易にするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、この発明の排水ますと排水ます用内副管について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0037】
図1に示す排水ます1は、相対する壁面にそれぞれ排水本管2,2をそれぞれ接続したインバート部3と、このインバート部3の上部に一体的に形成された立上り部4に接続される短い円筒状の立上り管6と、この立上り管6に接続されるアジャスタ7と、このアジャスタ7の上部に装着される蓋部9とから構成されるもので、前記排水ます1内には、内副管13が着脱自在に取付けられたものである。なお、前記蓋部9は、前記アジャスタ7の上端部に装着される蓋受枠部10と、この蓋受枠部10に開閉自在に設けられる蓋11とから構成されるものである。
【0038】
この実施例においては、前記立上り管6と、この立上り管6に接続されるアジャスタ7とで点検筒5を構成しているもので、前記アジャスタ7の所要部位には、排水枝管12を接続するための接続部8が一体的に成形されている。なお、この点検筒5は、排水枝管12の接続部8を有するものであれば、所要長さの1本の円筒体で構成してもよいことは当然である。なお、前記接続部8は、実質的に排水枝管12からの排水流入口となるものであるので、この明細書においては、必要に応じて「枝管流入口」という場合もある。
【0039】
前記内副管13は、漏斗状で上向きに開口した排水流入部14と、この排水流入部14の下部に接続される、開口17を有する排水流出部16とから構成されるもので、いずれも塩ビ樹脂などの比較的硬質の合成樹脂で形成されている。前記排水流入部14は、上端開口部に点検筒5、この実施例においては、前記アジャスタ7の内径とほぼ等しい外径の張出し縁15を有し、この張出し縁15を前記アジャスタ7の下端開口部内に形成されたリング状の係止縁18に上方から当接させることによって、点検筒5内に保持するよう構成されている。
【0040】
かかる内副管13は、図1に示すように、前記排水流入部14の張出し縁15を、アジャスタ7の下端開口部内に設けた係止縁18上に載置するというきわめて簡便な手段で排水ます1内に装着することができる。また、前記排水流入部14の上部に把持部19を一体的に付設し、この把持部19を利用することにより、排水ます1内への内副管13の脱着を簡単に行なうことができる。
【0041】
なお、図1の内副管13は、上部に設けた張出し縁15を利用して固定するものであるが、固定方法としては、これに限定されることはなく、図示はしないが、内副管13の外壁に設けた突起と、それを受けるアジャスタ7の内壁に設けられる、前記突起を受け入れる溝状突起や平板状突起などにより固定することもできるものである。
【0042】
図1に示されるように、この発明の内副管13の排水流入部14は、上面円形の漏斗状で、方向性がないものであるので、下部の排水流出口16の開口17を、アジャスタ7内を流れる排水の方向を排水本管2の流れ方向に合わせるだけで良いので、従来、排水枝管の位置、すなわち、排水枝管12を接続するための接続部8の位置に合せた内副管を用意しなければならない、という手間を完全に消滅させることができる。しかも、従来、接続部8が、配管の多様性に対応できないときは、自在継手や曲管などを利用していたが、この発明の内副管では、そのような副資材を必要とするものでもないのである。
【0043】
さらに、この発明の内副管13は、従来のものとは異なり、排水枝管12と個々に対応するものでないため、排水ます1に接続する排水枝管12が複数存在しても、何ら問題なく、それらの数に影響されることなく、単一の内副管13で対応可能であるので、従来の構造のものに比較して、その取り扱いをきわめて簡単にするものである。
【0044】
なお、複数の排水枝管12を排水ます1に接続する際は、図2に示すように、複数の排水枝管12の取付けを、サイクロンタイプにすると、排水枝管12から流入する排水の内副管13内での流れが円滑になるので、接続方法として好ましい方法である。
【0045】
なお、図1に示される排水ます1は、立上り管6がインバート部3の立上り部4に内嵌する形態を有し、立上り管6の下端外側面に螺子を形成し、この螺子に螺合する螺子をインバート部3の立上り部4の内側面に設けているので、螺子同士を噛合させながら、立上り管6を回転させると、立上り管6が上下動し、立上り管6とインバート部3の立上り部4における嵌合部の増減、すなわち、アジャスタ7の位置(高さ)を任意に決定することができ、地表面(GL)との面合わせ、さらには排水枝管12との心合わせなどの埋設位置の調整が、煩雑な作業を伴わずに、簡単に行なうことができ、かつ微調整も容易にできる。
【0046】
また、従来行なわれてきた埋設位置の調整、すなわち、立上り管6、アジャスタ7、さらには、前記蓋受枠部10などの切断により概略調整し、微調整は上記螺子を利用することにすると、部材の種類を少なくすることができ、より効率的な作業が可能となる。
【0047】
なお、立上り管6やインバート部3の立上り部4に設けられる螺子については、大きさや形状に格別の制限はなく、多条螺子や角螺子などの螺子も用いられる。また、立上り管6をインバート部3の立上り部4に内嵌させて螺子を設けてあるが、その嵌合状態を逆にして、螺子を設ける形態とすることもできる。
【0048】
さらに、蓋受枠部10の下端部とアジャスタ7の上端部、アジャスタ7の下端部と立上り管6の嵌合面にも同様な措置を取ることができ、蓋11と地表面(GL)との面合わせを容易に行なうことができる。
【0049】
各部材に設けられる螺子については、大きさや形状に格別の制限はなく、多条螺子や角螺子などの螺子も用いられる。また、各部材を螺子によって嵌合させた際、従来の嵌合でも採用されている、接着剤を併用し、液密をより完全なものにすることもできる。
【0050】
図3および図4で示される排水ます20は、基本的に前記図1に示した排水ます1と同一の構成を有するので、同一部位については同一符号で示すが、排水ます20内に装着する内副管21の構成が異なるものである。
【0051】
すなわち、排水ます20内に装着される内副管21は、漏斗状で上向きに開口した樹脂製の排水流入部22と、この排水流入部22の下部に接続される、開口25を有する排水流出部24とから構成されるもので、前記排水流入部22の上端開口部には、前記点検筒5を構成するアジャスタ7の内径とほぼ等しい外径の張出し縁23を有し、この張出し縁23を前記アジャスタ7の下端開口部内に形成されたリング状の係止縁29に上方から当接させることによって、点検筒5内に保持するよう構成されている。
【0052】
その際、前記排水流出部24を、前記実施例における塩ビなどの樹脂材料に代えて、排水本管2内を流れる排水の流力及び/又は流量、さらには前記排水流出部24自体の自重に応じて変形が可能な軟質の樹脂製または布製の筒状体で形成したものである。
【0053】
かかる排水本管2内を流れる排水の流力及び/又は流量、さらには自重に応じて変形が可能な材質で形成されている前記排水流出部24は、下部の開口部25の一端が、排水ます20内の排水流出口Xの上部に設けられた止め具26に係止されている。
【0054】
上記構成の内副管21は、漏斗状で上向きに開口した排水流入部22を介して、排水枝管12からの排水が流入してくると、図3に示すように膨張して排水を通過させ、下部開口25部の一端が、排水流出口Xの上部に係止されているため、排水の流れる方向を、排水本管2を流れる排水の流れ方向に一致させ、それらを合流させるものである。
【0055】
内副管21への、排水枝管12からの排水の流入が停止すると、内副管21は、図4に示すように、自重により変形して縮小する。縮小した内副管21の下部、すなわち排水流出部24はインバート部3に残存していても、材質的にインバート部3を流れる排水に逆らうものではなく、排水の流れを阻害するものではない。
【0056】
また、この内副管21は取外しが自由にできるものであるから、排水ます20の点検や清掃の際は、把持部27を利用して内副管21を点検筒5内から取外すことによって、内部の点検が簡単にでき、清掃も容易に行なうことができる。
【0057】
この排水ます20においても、前記立上り管6がインバート部3の立上り部4に内嵌する形態を有し、立上り管6の下端部の外側面には螺子が設けられるとともに、当該螺子に螺合するリング体28が立上り管6の外周部に設けられている。したがって、螺子同士を噛合させながら、リング体28を回転させると、リング体28が上下動し、立上り管6とインバート部3の立上り部4の嵌合部の増減、すなわち、アジャスタ7の位置(高さ)を任意に決定することができ、地表面(GL)との面合わせ、さらには排水枝管との心合わせなどの埋設位置の調整が、煩雑な作業を伴わずに、簡単に行なうことができ、かつ微調整も容易にできる。
【0058】
また、従来行われてきた埋設位置の調整、すなわち、立上り管6、アジャスタ7、さらには蓋受枠部10などの切断により概略調整し、微調整は上記リング体28を利用することにすると、部材の種類を少なくすることができ、より効率的な作業が可能となる。
【0059】
前記立上り管6とリング体28に設けられる螺子については、大きさや形状に格別の制限はなく、多条螺子や角螺子などの螺子も用いられる。また、図3においては、立上り管6をインバート部3の立上り部4に内嵌させ、立上り管6の下端部の外側面に螺子を設けてあるが、その嵌合状態を逆にして、インバート部3に設けられた立上り部4の上端部の外側面に螺子を設け、それに螺合するリング体28を設ける形態とすることもできる。
【0060】
さらに、蓋受枠部10の下端部とアジャスタ7の上端部、アジャスタ7の下端部と立上り管6の上端部の嵌合面にも同様な措置を取ることができ、蓋11と地表面(GL)との面合わせを容易に行なうことができる。
【0061】
さらにまた、各部材に設けられる螺子については、大きさや形状に格別の制限はなく、多条螺子や角螺子などの螺子も用いられる。また、各部材を螺子によって嵌合させた際、従来の嵌合でも採用されている、接着剤を併用し、液密をより完全なものにすることもできることは上記と同様である。
【0062】
なお、螺子を用いて、上記部材を嵌合させる際には、嵌合面にシール性を付与するために、シールリング材30を用いることが望ましく、シールリング材30により嵌合部の液密性が維持され、排水の漏洩が防止される。さらに、それら部材を螺子で嵌合させた際も、従来の嵌合でも採用されている、接着剤を併用し、液密をより完全なものにすることもできる。
【0063】
以上述べたように、この発明の排水ますにおける内副管13又は21は、漏斗状で上向きに開口した排水流入部と、この排水流入部の下部に連設される開口を有する排水流出部とから構成され、さらには、内副管を形成する下部の排水流出部を、軟質の樹脂製または布製の筒状体などの自重もしくはインバート部を流れる排水の流力及び/又は流量に応じてで変形可能な材質で形成することによって、排水枝管の取付け位置に関係なく内副管を取付けることが可能となる。
【0064】
特に、インバート部3の排水流出口Xの上部に設けられた止め具26に、軟質の樹脂製または布製の筒状体などからなる排水流出部の下端部の一端を、固定することにより、排水枝管12の位置がどのようであれ、排水枝管12に接続された排水流入部(接続部8)から流入してくる排水の流れを、インバート部3を流れる排水の流れ方向に合わせることができるので、排水枝管12の位置に応じて多種類の内副管を用意する必要がない上、排水枝管の位置や数に制限されることなく、幅広く適用可能なものである。
【0065】
また、この発明にかかる内副管21の下部の排水流出部24を、軟質の樹脂製または布製の筒状体などの材質で形成すれば、その長さの調整も、切断などにより容易に行なうことができる。さらに、排水流出口Xの上部に設けられた止め具26への係止のための孔等も簡単に調整できるものである。なお、内副管21の下端部を形成する排水流出部24にあらかじめ、係止用に適した複数の孔を設けておくことも可能で、孔部の補強などもできるため好ましい方法である。
【産業上の利用可能性】
【0066】
この発明の排水ますおよび排水ます用内副管は、汚水の飛散や排水ますの磨耗を防ぐという内副管本来の目的達成するに際し、内副管の排水ますへの枝管取付け部、さらには、排水枝管の取付け位置に関係なく設置することができ、排水ますの設置における制約の一つを消失させるという効果、インバート部を流れる排水の流れを阻害することがないという優れた効果、さらには、排水ますのインバート部の排水管接続部と、それに接続する排水管との心合わせや、蓋部表面を地表面(GL)への面合わせ、特に、アジャスタに設けられた枝管接続部と排水枝管との心合わせも、極めて簡単に行なうことができる。また、下水道敷設現場における排水ますの埋設位置の調整作業を、熟練を要しない、きわめて容易なものにすることができるので、土木建築関係の業界で広く利用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】この発明にかかる排水ますの一例を示す断面図であって、排水枝管からの排水が流入している状態を表すものである。
【図2】図1における排水ますの平面図である。
【図3】この発明にかかる排水ますの他の一例を示す断面図であって、排水枝管からの排水が流入している状態を表すものである。
【図4】図3における排水ますにおいて、排水枝管からの排水が非流入の状態を表すものである。
【符号の説明】
【0068】
1,20 排水ます
2 排水本管
3 インバート部材
4 立上り部
5 点検筒
6 立上り管
7 アジャスタ
8 排水枝管の接続口
9 蓋部
10 蓋受枠部
11 蓋
12 排水枝管
13,21 内副管
14,22 排水流入部
15,23 張出し縁
16,24 排水流出口
17,25 排水流出口の開口
18,29 係止縁
19,27 把持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋部材、点検筒およびインバート部とからなるものであって、
前記インバート部の上部の点検筒に開口される排水枝管の下方に、漏斗状で上向きに開口した排水流入部を有する上部構造と、前記インバート部を流れる排水の流れ方向に開口した排水流出部を有する下部構造から構成される内副管が配設されていること
を特徴とする排水ます。
【請求項2】
前記点検筒は、
前記インバート部に形成された立上り部に接続される所要長さと径を有する円筒体からなるもので、所要部位に開口される排水枝管の下方の、円筒体の内周部に前記上部構造を係止するための係止部を有すること
を特徴とする請求項1に記載の排水ます。
【請求項3】
前記点検筒は、
前記インバート部に形成された立上り部に接続される所要長さと径を有する円筒体から立上り管と、この立上り管に接続される円筒状のアジャスタからなるもので、前記アジャスタの所要部位に開口される排水枝管の下方の、アジャスタの内周部に、前記上部構造を係止するための係止部を有すること
を特徴とする請求項1に記載の排水ます。
【請求項4】
前記内副管は、
上部構造部材と、下部構造部材との分離可能な2部材からなるもので、両者の結合状態を変化させることにより、インバート部内を流れる排水の流れ方向に、前記下部構造部材の排水流出部の開口を合わせられるよう構成されていること
を特徴とする請求項1に記載の排水ます。
【請求項5】
前記内副管は、
上部構造部材と、下部構造部材との分離可能な2部材からなるもので、前記下部構造部材が、自重もしくはインバート部を流れる排水の流力及び/又は流量に応じて変形可能な材質で形成されていること
を特徴とする請求項1に記載の排水ます。
【請求項6】
前記内副管の下部構造部材は、
軟質の樹脂製又は布製の筒状体であること
を特徴とする請求項5に記載の排水ます。
【請求項7】
前記筒状体は、
インバート部の排水流出口上部に設けられた止め具により、前記止め具と対応する下端部が固定されていること
を特徴とする請求項6に記載の排水ます。
【請求項8】
前記点検筒は、
前記排水枝管からの排水を受け入れるための開口が複数設けられていること
を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の排水ます。
【請求項9】
前記排水枝管は、
前記点検筒に対し、その開口が前記点検筒の軸心に対し偏心させて接続されていること
を特徴とする請求項1に記載の排水ます。
【請求項10】
前記内副管は、
前記点検筒の内部に設けられた張出し縁に脱着自在の状態で取付けられていること
を特徴とする請求項1に記載の排水ます。
【請求項11】
前記排水ますは、
排水本管と連通する底部のインバート部材と、このインバート部材の上部に連接される点検筒と、この点検筒の上部開口に装着される蓋部とからなるもので、前記インバート部材の立上り部もしくは前記点検筒の上下端の、いずれかの内側面または外側面に、それら部材の埋設位置を調節するための調節用螺子が設けられていること
を特徴とする請求項1に記載の排水ます。
【請求項12】
前記点検筒は、
前記インバート部材の上部と連接する立上り管と、この立上り管に連接されるアジャスタとで構成されたもので、前記アジャスタの上下端のいずれかの内側面または外側面に、埋設位置を調節するための調節用螺子が設けられていること
を特徴とする請求項11に記載の排水ます。
【請求項13】
前記点検筒は、
そのいずれもが上端部に蓋受枠部と蓋からなる蓋部を有し、前記蓋受枠部の上下端のいずれかの内側面または外側面に、埋設位置を調節するための調節用螺子が設けられていること
を特徴とする請求項11又は12に記載の排水ます。
【請求項14】
前記外側面に螺子を有するインバート部材、点検筒、点検筒を構成するアジャスタ、蓋受枠部は、
そのいずれか一つもしくは複数が、その外周部に前記調節用の螺子と噛み合う螺子が設けられているリング体を有すること
を特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の排水ます。
【請求項15】
前記外側面に螺子を有するインバート部材、点検筒、点検筒を構成するアジャスタ、蓋受枠部は、
そのいずれかもしくは複数が、その内側面に前記調節用の螺子に噛み合う螺子が設けられていること
を特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の排水ます。
【請求項16】
前記外側面に螺子を有するインバート部材、点検筒、点検筒を構成するアジャスタ、蓋受枠部は、
そのいずれかもしくは複数が、その外側面に前記螺子に噛み合う螺子が設けられていること
を特徴とする請求項11〜13のいずれかに記載の排水ます。
【請求項17】
前記外側面に螺子を有するインバート部材、点検筒、点検筒を構成するアジャスタ、蓋受枠部は、
そのいずれかもしくは複数が、形成された螺子の末端部にシールリングが設けられていること
を特徴とする請求項11〜16のいずれかに記載の排水ます。
【請求項18】
漏斗状で上向きに開口した排水流入部と、この排水流入部の下部に分離可能に接続される排水放出用の開口を有する排水流出部とからなること
を特徴とする排水ます用内副管。
【請求項19】
前記排水流出部は、
その自重もしくはインバート部を流れる排水の流力及び/又は流量に応じて変形可能な材質で形成されていること
を特徴とする請求項18に記載の排水ます用内副管。
【請求項20】
前記排水流出部は、
軟質の樹脂製または布製の筒状体で形成されたものであること
を特徴とする請求項18に記載の排水ます用内副管。
【請求項21】
前記排水流入部は、
その外周部に排水ますへの脱着用の把持部を有するとともに、上部開口部の外周に点検筒内に形成された張出し縁に係止するための係止縁を有していること
を特徴とする請求項18に記載の排水ます用内副管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−265819(P2006−265819A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−69008(P2005−69008)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】